以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
(摺動材料)
本実施形態に係る摺動材料は、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、シリコーン化合物、及び、平均粒子径が100μm以下の微粒子を含有している。本実施形態において、エチレン系ポリマーのうち少なくとも一部は架橋体を形成していてよく、プロピレン系ポリマーのうち10〜70質量%は非晶性プロピレン系ポリマーであってよい。
上記摺動材料は、ウェザーストリップ本体部等の接合に用いられる接合材料(好適には、プロピレン系ポリマーを15質量%以上含有する接合材料)と優れた接合強度で接合することができる。このため、上記摺動材料で構成される摺動部材は、接合部材との接面において優れた接合強度を有するものとなる。また、上記摺動材料によれば、摺動部材と接合部材との接面の接合強度に優れ、耐屈折性及び耐衝撃性に優れたウェザーストリップが実現できる。
また、上記摺動材料は、摺動材料が微粒子を含むことでシリコーン化合物のブリードが抑制され、ブリードに起因する外観の悪化及び接合強度の低下が抑制される。さらに上記摺動材料は、成形性に優れており、外観形状及び均一性に優れた摺動部材を実現できる。
摺動材料の全量基準で、プロピレン系ポリマーの含有量は15〜60質量%であってよく、エチレン系ポリマーの含有量は10〜60質量%であってよく、シリコーン化合物の含有量は5〜30質量%であってよい。このような含有量で各成分を含有する場合、摺動材料としての要求特性と接合材料に対する優れた接合強度とを、より高水準で達成することができる。
プロピレン系ポリマーの含有量は、摺動材料の全量基準で20質量%以上であることがより好ましい。また、プロピレン系ポリマーの含有量は、摺動材料の全量基準で55質量%以下であることがより好ましい。
エチレン系ポリマーの含有量は、摺動材料の全量基準で15質量%以上であることがより好ましい。また、エチレン系ポリマーの含有量は、摺動材料の全量基準で55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
シリコーン化合物の含有量は、摺動材料の全量基準で6質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリコーン化合物の含有量は、摺動材料の全量基準で28質量%以下であることがより好ましい。シリコーン化合物の含有量を上記下限値以上とすることで、摺動部材の摺動耐久性及び水の除去性能が一層向上し、摺動時の異音の発生が一層低減される傾向がある。また、シリコーン化合物の含有量を上記上限値以下とすることで、摺動材料の成形性が一層良好となり、またブリードの発生による外観悪化が一層抑制される傾向がある。
摺動材料における微粒子の含有量は、摺動材料の全量基準で0.1〜20質量%であることが好ましい。また、微粒子の含有量は、摺動材料の全量基準で18質量%であることがより好ましく、17質量%以下であることがさらに好ましい。微粒子の含有量を上記範囲とすることで、シリコーン化合物が摺動材料の内部により均一に保持され、摺動部材と接合部材との接合強度が一層優れたものとなる傾向がある。また、微粒子の含有量を上記範囲とすることで、ブリードの発生による接合強度の悪化がより一層抑制される傾向がある。
プロピレン系ポリマーは、例えば、プロピレン単位の含有量が50質量%を超えるポリマーであってよく、プロピレン単位の含有量が55質量%以上のポリマーであってもよい。
プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレン(すなわちプロピレンの単独重合体)であってよく、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。プロピレンと共重合体を成す他のモノマーとしては、エチレン、α−オレフィン等が挙げられる。
プロピレンと共重合体を成すα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の、炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。
プロピレン系ポリマーの具体例としては、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。
本実施形態に係る摺動材料中、プロピレン系ポリマーは、その5〜30質量%が非晶性プロピレン系ポリマーであり、残部が結晶性プロピレン系ポリマーである。
なお、本明細書中、結晶性プロピレン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーのうち、示差走査熱量計(DSC)の測定結果において、その融解温度と結晶化温度が70〜170℃の範囲にあり、その転移熱量が、融解熱量及び結晶化熱量共に60mJ/mgを超えるものを示す。また、非晶性プロピレン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーのうち、示差走査熱量計(DSC)の測定結果において、10〜170℃の範囲にその融解温度と結晶化温度を持ち、その転移熱量が、融解熱量及び結晶化熱量共に60mJ/mg以下のものを示す。
非晶性プロピレン系ポリマーは、融解熱量及び結晶化熱量の少なくとも一方の転移熱量が5〜60mJ/mgであることが好ましく、5〜55mJ/mgであることがより好ましい。このような転移熱量を有する非晶性プロピレン系ポリマーを用いることで、接合部材との融着性に一層優れた摺動材料が得られる。
融解温度、結晶化温度、融解時の転移熱量、及び結晶化時の転移熱量は、JIS K7122に基づいて、昇降レイト10℃/min、0℃→200℃→0℃と、0℃から昇温し200℃で折り返して冷却して0℃まで降温して測定する。融解温度と融解時の転移熱量は、昇温時に測定され、結晶化温度と結晶化時の転移熱量は冷却時に測定される。
プロピレン系ポリマーの融解・結晶化の挙動は、観測温度0〜200℃で、1乃至複数観測される。例えば、昇温時、複数の吸熱転移熱量が観測される場合は、複数の融解温度が存在することを意味する。
非晶性プロピレン系ポリマーは、上記条件で測定したとき、昇温時に全ての融解温度が10〜170℃の範囲に存在し、且つ各融解温度で計測される転移熱量の合計が60mJ/mg以下であり、また、降温時に全ての結晶化温度が10〜170℃の範囲に存在し、且つ各結晶化温度で計測される転移熱量の合計が60mJ/mg以下となるプロピレン系ポリマーを示す。
また、結晶性プロピレン系ポリマーは、上記条件で測定したとき、昇温時に全ての融解温度が70〜170℃の範囲に存在し、且つ各融解温度で計測される転移熱量の合計が60mJ/mgを超え、また、降温時に全ての結晶化温度が70〜170℃の範囲に存在し、且つ各結晶化温度で計測される転移熱量の合計が60mJ/mgを超えるプロピレン系ポリマーを示す。
非晶性プロピレン系ポリマーとしては、本発明の効果がより顕著に得られる観点から、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体が挙げられ、これらのうち、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体がより好適である。プロピレン−エチレン共重合体としては、例えば、プライムポリマー社製「プライムTPO」、ダウケミカル社製「VERSIFY」、エクソンモービルケミカル社製「Vistamaxx」等が挙げられる。プロピレン−1−ブテン共重合体としては、例えば、住友化学社製「TAFTHREN」、三井化学社製「TAFMER PN」「TAFMER XM」等が挙げられる。プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体としては、例えば、三井化学社製「TAFMER XM」等が挙げられる。なお、非晶性プロピレン系ポリマーには、例えば任意に結晶核剤が添加されていてもよい。
非晶性プロピレン系ポリマーの硬度は、接合部材との融着性の観点からは特に限定されないが、摺動抵抗上昇の抑制、耐摩耗性の向上、可撓性等のウェザーストリップの摺動材料としての特性により優れる観点からは、JIS−A硬度60以上であることが好ましく、JIS−A硬度70以上であることがより好ましい。また、非晶性プロピレン系ポリマーは、Shore D硬度が60未満であると、後述の摺動材料の硬度を後述の好適な範囲に調整し易くなる点で好ましい。
非晶性プロピレン系ポリマーは、曲げ弾性率が0.5×102MPa以上であることが好ましく、1.0×102MPa以上であることがより好ましい。また、非晶性プロピレン系ポリマーの曲げ弾性率は、5×102MPa未満であってよい。このような接合部材は、摺動抵抗上昇の抑制、耐摩耗性の向上、可撓性等のウェザーストリップの摺動材料としての特性に一層優れる傾向がある。
非晶性プロピレン系ポリマーは、密度が0.855g/cm3以上であることが好ましく、0.86g/cm3以上であることがより好ましい。また、非晶性プロピレン系ポリマーの密度は、0.90g/cm3未満であってよい。このような非晶性プロピレン系ポリマーを含む摺動材料は、摺動抵抗が抑制され、耐摩耗性が向上し、可撓性等のウェザーストリップの摺動材料としての特性に一層優れる傾向がある。なお、硬度、曲げ弾性率及び密度は、互いに比較的相関があり、硬度、曲げ弾性率及び密度のいずれかの値を上記好適な範囲に調整することで、容易に他の値も上記好適な範囲に調整できる。
非晶性プロピレン系ポリマーは、転移熱量が、融解時及び結晶化時のそれぞれで5mJ/mg以上であることが好ましい。この転移熱量が5mJ/mg以上であることで、接合材料、特にプロピレン系ポリマーを15質量%以上含有する接合材料との接合強度が一層向上し、また摺動材料からのシリコーン化合物のブリードが一層抑制される。シリコーンブリード防止の観点からは、上記転移熱量は、10mJ/mg以上であることがより好ましく、13mJ/mg以上であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態に係る摺動材料において、シリコーン化合物は、エチレン系ポリマーの少なくとも一部を動的架橋して得られた架橋体ドメインとマトリックスとの界面、又は、マトリックス中に、集中して高濃度に配置されるため、シリコーンブリードが起こり難い構造となっている。しかし、本発明者らの知見によれば、上記転移熱量が5mJ/mg未満の非晶性プロピレン系ポリマーが摺動材料中に多く存在する場合、シリコーンブリードが生じ易くなる傾向がある。これは、非晶性の強い(転移熱量が5mJ/mg未満の)非晶性プロピレン系ポリマーが、シリコーン化合物を溶解・含浸し易いため、摺動材料中でシリコーン化合物が拡散し易くなるためと考えられる。
結晶性プロピレン系ポリマーとしては、プロピレン単独重合体及びプロピレン・α−オレフィン共重合体が挙げられ、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーを用いることができる。結晶性プロピレン系ポリマーとしては、接合材料との接着力、摺動材料の摺動性、摺動部材におけるシリコーンブリードの抑制の観点からは、ホモポリマー及びブロックコポリマーが好ましい。なお、結晶性プロピレン系ポリマーには、例えば任意に結晶核剤が添加されていてもよい。
上述のとおり、結晶性プロピレン系ポリマーは、融解時及び結晶化時の転移熱量が60mJ/mgを超えるものであり、該転移熱量は、接着力、摺動性及びシリコーンブリード抑制の観点からは70mJ/mg以上であることが好ましい。
本実施形態において、プロピレン系ポリマー中の非晶性プロピレン系ポリマーの割合は10質量%以上であってよく、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、プロピレン系ポリマー中の非晶性プロピレン系ポリマーの割合は70質量%以下であってよく、65質量%以下であることが好ましい。非晶性プロピレン系ポリマーの割合が10質量%未満であると、摺動部材と接合部材との接合強度が十分に得られず、接合界面が剥離し易くなる傾向がある。また、70質量%を超えると、摺動部材から過剰なシリコーンブリードが発生して、製品外観の悪化や周囲の汚染の懸念が生じる。
また、非晶性プロピレン系ポリマーの含有量は、摺動材料の全量基準で2質量%以上であってよく、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、非晶性プロピレン系ポリマーの含有量は、摺動材料の全量基準で40質量%以下であってよく、30質量%以下であることが好ましい。これにより、接合材料との接着力に一層優れ、シリコーンブリードを一層抑制できる摺動材料が得られる傾向がある。
シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンガム(シリコーンゴムともいう。)等のポリシロキサン;シロキサンと他のモノマーとの共重合体、又はシロキサンと他のポリマーとを結合させた反応物であるシリコーン共重合体;等が挙げられる。
ポリシロキサンは、シロキサン結合からなる直鎖構造を有する高分子化合物であり、シリコーンのうちオイル状のものをシリコーンオイルといい、ゴム状のものをシリコーンガム(又はシリコーンゴム)という。
ポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びこれらの変性物が挙げられる。ここで変性物としては、例えば、上記ポリシロキサンのメチル基又はフェニル基の一部が、ビニル基に置換されたビニル変性シリコーン、水素原子で置換されたハイドロジェンポリシロキサン、アルキル基で置換されたアルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル基で置換された高級脂肪酸エステル変性シリコーン、フッ素原子又はフッ化アルキル基で置換されたフッ素変性シリコーン、ポリエーテル基で置換されたポリエーテル変性シリコーン、アミノ基を有する基で置換されたアミノ変性シリコーン、ヒドロキシルアルキル基で置換されたカルビノール変性シリコーン、オキシラン環を有する基で置換されたエポキシ変性シリコーン、カルボキシル基を有する基で置換されたカルボキシ変性シリコーン、等が挙げられる。
シリコーン系共重合体は、シリコーンと他の樹脂とを共重合させたものである。このシリコーン系共重合体としては、市販の共重合体を用いてもよいし、共重合体を作製してもよく、具体例としては、シリコーン−アクリル共重合体「X−22−8171」(信越化学工業社製、商品名)、シリコーン−オレフィン共重合体「イクスフォーラ」(三井化学社製、商品名)、ビニル基の含有量が0〜1mol%含有のジメチル・ビニルポリシロキサンと、不飽和基の含有量が0〜5重量%のEPDM、SBS、SISとの部分架橋物、アミノ変性シリコーン又はカルボキシル変性シリコーンと、無水マレイン酸変性したオレフィンポリマー又はオリゴマー(ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体等)との反応物、などが挙げられる。また、これらを樹脂でマスターバッチ化したペレットである「X−22−2101」、「X−22−2147」(信越化学工業社製、商品名)、「BY27−001S」(東レ・ダウコーニング社製、商品名)や、樹脂と部分グラフト重合したペレットである「BY27−201」(東レ・ダウコーニング社製、商品名)なども挙げられる。
シリコーン化合物の含有量は、摺動材料の全量基準で5質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更に好ましい。また、シリコーン化合物の含有量は、摺動材料の全量基準で30質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましい。なお、シリコーン化合物の濃度が高いほど、摺動材料の摺動寿命は長くなる反面、接合部材との接合強度は弱くなる傾向がある。
シリコーン化合物の重量平均分子量は、1×103〜1×106であることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×105、より好ましくは1×104〜2×105である。重量平均分子量が上記範囲であると、シリコーン化合物の含有量を20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下の比較的低い濃度としても、良好な摺動性が発現できる。
シリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーンガム及びシリコーンを40質量%以上含むシリコン共重合体とからなる群より選ばれるシリコーン化合物が好適である。また、本実施形態では、シリコーン化合物として、これらを単独で又は複数種類を組合わせて用い、上述の好適な重量平均分子量に調整することができる。
上述の好適な重量平均分子量に調整されたシリコーン化合物は、JIS Z8803に基づく25℃における動粘度が、1×101〜1×107mm2/sec(MPa・s)の範囲となる傾向がある。
なお、本実施形態において、重量平均分子量は、示差屈折検出器(RI)を装備したGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使って、標準ポリスチレンとの比較換算値として、測定される。具体的には、Watres社製「Alliance」(機器商品名)を用い、検出器はRI、注入量は100μl、移動層はトルエン、流速は1.0ml/min、カラムは昭和電工社製Shodex GPC KF−806×2、カラム温度は40℃、検出感度4、標準物資はポリスチレンスタンダード8種、試料及び標準濃度7mg/10トルエンで行う。但し、シリコーン共重合体がトルエンに溶解しない場合は、シリコーン共重合体を溶解しうる適正な溶剤を選択する。例えば、シリコーン・アクリル共重合体においてアクリル単位が15質量%以上の時はトルエンではなくTHFを用いる。
エチレン系ポリマーは、例えば、エチレン単位の含有量が50質量%を超えるポリマーであってよく、エチレン単位の含有量が55質量%以上のポリマーであってよい。
エチレン系ポリマーは、ポリエチレン(すなわちエチレンの単独重合体)であってよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。エチレンと共重合体を成す他のモノマーとしては、α−オレフィン、非共役ポリエン等が挙げられる。
エチレンと共重合体を成すα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン等が挙げられる。また、エチレンと共重合体を成す非共役ポリエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカンジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5−メチル−1,8−ナノジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエン等が挙げられる。
エチレン系ポリマーの好適な例としては、ポリエチレン(エチレンの単独重合体)、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体等が挙げられる。
また、エチレン系ポリマーとしては、より具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(L−LDPE、LDPE)、エチレンプラストマー、エチレンエレストマー等が挙げられる。
なお、本明細書中、高密度ポリエチレンは密度0.94以上(0.98未満)のポリエチレン系ポリマー、中密度ポリエチレンは密度0.93以上0.94未満のポリエチレン系ポリマー、低密度ポリエチレンは密度0.91以上0.93未満のポリエチレン系ポリマー、エチレンプラストマーは密度0.89以上0.91未満のポリエチレン系ポリマー、エチレンエレストマーは密度0.89未満(0.85以上)のポリエチレン系ポリマーを示す。
また、エチレン系ポリマーとしては、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体からなる群より選択されるものが好ましい。これらエチレン系ポリマーは、例えば、プロピレン系ポリマーと有機過酸化物と共に動的な架橋を行うことで、容易にドメインを形成することができる。なお、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体であれば、有機過酸化物に限らず、硫黄加硫系の架橋剤、樹脂架橋の架橋剤、ヒドロシリル系の架橋剤でもドメインを形成することができる。
なお、ドメインを形成するための架橋剤としては、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体のすべてを架橋できる点で有機過酸化物が好適であり、また有機過酸化物と、ヒドロシリル系の架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用することも好ましい。
エチレン系ポリマーの混練する前の形状は任意であり、ペレット、不定形の粉末、球形の粉末、繊維、チョップドストランド等であってよい。混練機に投入できればその大きさは任意であり、例えば平均粒径15mm〜0.5μmであってよい。
エチレン系ポリマーとしては、曲げ弾性率1.0×102MPa以上(Shore D硬度で20以上)の硬い第一のエチレン系ポリマーと、曲げ弾性率1.0×102MPa未満(Shore D硬度で20未満)の比較的柔らかい第二のエチレン系ポリマーとを併用することができる。当該併用によって、接合材料(特に、プロピレン系ポリマーを15質量%以上含有する接合材料)との優れた接合強度が得られるばかりでなく、摺動部材に剛性及び可撓性を与え、ガラスラン用途に好適な摺動材料となる効果が奏される。
第一のエチレン系ポリマーの曲げ弾性率は、1.0×102MPa以上であり、3.0×102MPa以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×103MPa以上である。第一のエチレン系ポリマーは、架橋して硬い(高弾性率の)ドメインを形成し、当該ドメインは摺動材料が摩擦されても摩滅又は溶融変形され難いことから、第一のエチレン系ポリマーを用いることで、繰り返しの摺動に優れた摺動材料を得ることができる。また、第一のエチレン系ポリマーの曲げ弾性率は、2.0×103MPa以下であってよい。
第二のエチレン系ポリマーの曲げ弾性率は、1.0×102MPa未満であり、好ましくは0.5×102MPa未満、より好ましくは0.3×102MPa未満である。第二のエチレン系ポリマーは、架橋して柔軟な(低弾性率の)ドメインを形成し、摺動材料に可撓性、耐寒性及びゴム弾性を与える。また、第二のエチレン系ポリマーが形成したドメインによれば、摺動材料の接合材料との接着性が一層向上し、また、摺動部材の摺動面における摺動抵抗及び摩耗量が一層小さくなる傾向がある。
第一のエチレン系ポリマーとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、及び低密度ポリエチレン(L−LDPE、LDPE)からなる群から選択されるポリマーが好ましい。このような第一のエチレン系ポリマーは、ポリエチレン及びエチレン・α−オレフィン共重合体からなる群より選択されるポリマーであってよい。また、第一のエチレン系ポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)からなる群より選択されるポリマーであることがより好ましい。
第二のエチレン系ポリマーとしては、エチレンプラストマー及びエチレンエラストマーからなる群から選択されるポリマーが好ましい。このような第二のエチレン系ポリマーは、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体から選択されるポリマーであってよい。
ここで、第二のエチレン系ポリマーとして用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等が挙げられる。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体としては、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM又はEPT)、及びエチレン・ブテン・ジエン共重合体(EBDM又はEBT)からなる群より選択されるポリマーが挙げられる。これらのうち、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体及びエチレン・ブテン・ジエン共重合体は、架橋効率が高く、ゴム弾性に優れ、摺動性の点でより好ましい。
第一のエチレン系ポリマーの含有量C1と第二のエチレン系ポリマーの含有量C2の質量比C1/C2は、0.20/0.80〜0.95/0.05(すなわち、0.25〜19)であることが好ましく、0.40/0.60〜0.80/0.20(すなわち、0.67〜4)であることがより好ましい。質量比C1/C2を上記範囲内とすることで、摺動材料のJIS−A硬度を例えば85以上とすることができる。なお、通常は、摺動材料のJIS−A硬度が高い程、接合材料との接合強度が得られ難い傾向にあるが、本実施形態に係る摺動材料では、JIS−A硬度を85以上としても、接合材料(特に、プロピレン系ポリマーを15質量%以上含有する接合材料)との優れた接合強度を得ることができる。
摺動材料のJIS−A硬度は、上述のとおり質量比C1/C2を変更することで調整することができる。例えば、質量比C1/C2を大きくする(第一のエチレン系ポリマーの割合を大きくする)とJIS−A硬度は高くなる傾向にあり、質量比C1/C2を小さくする(第一のエチレン系ポリマーの割合を小さくする)とJIS−A硬度は低くなる傾向にある。
摺動材料のJIS−A硬度は、好ましくは85以上であり、より好ましくは90以上である。また、摺動材料の硬度の上限は、JIS−A硬度で99程度でよく、Shore D硬度60未満が好ましい。摺動材料の硬度が上記範囲であると、摺動部材が剛性と可撓性とのバランスに優れる点で有効である。
本実施形態において、エチレン系ポリマーのうち少なくとも一部は架橋体を形成しており、当該架橋体は、好ましくはドメイン(島相)を形成して摺動材料中に分散している。すなわち、本実施形態に係る摺動材料には、好ましくは、エチレン系ポリマーの架橋体から形成されたドメインが分散されている。
このようなドメインが分散された摺動材料によれば、繰り返しの摺動に耐え得る優れた摺動耐久性を有する摺動部材が得られる。この理由は必ずしも明らかではなにが、通常、従来の摺動部材では材料表面のシリコーン化合物が除去されて摺動性の低下が生じるところ、上記摺動材料を用いた摺動部材では、架橋体から形成されたドメインとマトリックスとの界面、又はマトリックス中に配置されたシリコーン化合物が、繰り返しの摺動によって徐々に摺動部材表面に供給されて、摺動部材表面のシリコーン化合物の量が十分に維持されるためと考えられる。
また、このようなドメインが分散された摺動材料によれば、例えば押し出し成形等の成形時に、シリコーン化合物が摺動材料中で偏在することを妨げて、シリコーン化合物の過度なブリードによる外観不良の発生や、摺動部材の不均一化を避けることができる。
なお、図1は、本発明に係る摺動部材の一態様を説明するための模式断面図である。また、図2は、従来技術に係る摺動部材の一例を示した模式断面図である。
図2の摺動部材2は、マトリックス16とマトリックス16中に分散したシリコーン化合物14とを含有する摺動材料を押出し成形してなる摺動部材である。摺動部材2において、シリコーン化合物14は、その一部はマトリックス16中に分散しているが、他部は押出し方向に偏在して、シリコーン化合物14からなる層を形成している。
摺動部材2では、シリコーン化合物14からなる層が表面近くに形成された場合や、摺動の結果この層の付近まで材料が摩耗した場合に、層を成すシリコーン化合物14のブリードにより、外観不良を生じさせるおそれがある。また、摺動部材2では、シリコーン化合物14の層まで摩耗されない限り、シリコーン化合物14の摺動部材2の表面への供給がなされないため、十分な摺動性が得られるだけのシリコーン化合物14を摺動部材2の表面で維持することが難しく、摺動抵抗が高くなったり、摩耗が大きく進行したりする等、摺動耐久性に劣る傾向がある。
これに対して、図1に示す摺動部材1は、本実施形態の好適な摺動材料を押出し成形してなる摺動部材である。摺動部材1においては、プロピレン系ポリマーを含むマトリックス10中に、架橋したエチレン系ポリマーから形成されたドメイン12が分散されている。また、摺動部材1はシリコーン化合物14を含有しており、シリコーン化合物14は、マトリックス10及びドメイン12の界面に多く存在している。また、摺動部材1では、ドメイン12により、シリコーン化合物14の偏在が妨げられている。なお、摺動部材1において、マトリックス10中には微粒子が分散しているが、ドメイン12に係る説明の簡略化のために図1に微粒子は図示していない。
このようにマトリックス10及びドメイン12の界面に存在するシリコーン化合物14は、マトリックス中に分散したシリコーン化合物14と比較して、界面に沿って摺動部材1の表面に移動し易い傾向にある。よって、摺動材料1では、繰り返し摺動が実施された場合でも、摺動部材1の表面のシリコーン化合物量が十分に維持され、優れた摺動性が維持される。
ドメイン12の平均粒径は、0.5〜150μmであることが好ましい。ドメイン12の平均粒径がこの範囲内であると、シリコーン化合物の偏在が十分に抑制されるとともに、摺動部材の表面へのシリコーン化合物の供給が十分に可能であるため、摺動耐久性に一層優れた摺動部材が得られる。ドメイン12の平均粒径は、1〜100μmであることがより好ましく、3〜70μmであることがより好ましい。
なお、本明細書中、ドメイン12の平均粒径は、摺動部材の断面について電子顕微鏡写真を撮影し、画像処理により各ドメイン12に相当する粒径を算出し全体の平均を計算した値を示す。なお、測定されたドメイン12の面積について真円換算で求めた直径を粒径とする。
本実施形態において、上記架橋体は、例えば、動的架橋によって形成されたものであってよい。動的架橋によれば、容易に上述のようなドメインを形成する架橋体を形成することができる。動的架橋は、せん断を与える混練と同時に架橋を行う方法であり、例えば、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー及び架橋剤を含む樹脂組成物を混練して行うことができる。
動的架橋に用いられる架橋剤としては有機過酸化物、硫黄加硫系の架橋剤、樹脂架橋の架橋剤、ヒドロシリル系の架橋剤等が挙げられ、これらのうち有機過酸化物が好適である。また、有機過酸化物とヒドロシリル系の架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用することもできる。
有機過酸化物としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が好適である。
有機過酸化物としては、具体的には、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)へキサン等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上含み、SiH基100個未満程度のものが挙げられる。一分子中のケイ素原子の数(または重合度)は3〜200程度のもので、直鎖状、環状、分岐状および三次元網状(レジン状)分子構造のポリシロキサンが使用できる。具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)1SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。有機過酸化物とオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用すると、有機過酸化物単独の時よりも、架橋体ドメインの粒径が均一化して、外観に優れた(ブツが少ない)摺動部材となる傾向がある。
エチレン系ポリマーは、摺動材料の熱キシレン還流による残分比率が、摺動材料の全量基準で20〜80質量%(好ましくは20〜70重量%)となるように架橋体を形成していることが好ましい。このように架橋体を形成させることで本発明の効果を一層顕著に得ることができる。ここで、「熱キシレン還流による残分比率」とは、以下の方法で求められる値をいう。
すなわち、摺動材料のサンプル約3gを秤量して正確な重量(W1)を得る。そのサンプルを円筒形ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器にセットし、キシレンで6時間還流抽出を行う。抽出後、サンプルの入ったろ紙を取り出し、キシレンを十分に蒸発させ、放冷した後にサンプルの正確な重量(W2)を測定する。熱キシレンに不溶な無機成分及び微粒子の重量をW3とすると、「熱キシレン還流による残分比率」は、100×(W2−W3)/W1で求められる。
熱キシレン還流による残分比率は、摺動耐久性が一層向上する観点からは、30〜70質量%であることがより好ましく、35〜65重量%であることがさらに好ましい。
摺動材料は、平均粒子径が100μm以下の微粒子を含有している。摺動材料が微粒子を含むことでシリコーン化合物のブリードが抑制され、ブリードに起因する外観の悪化及び接合強度の低下が抑制される。さらに、摺動材料が微粒子を含むことで、成形性が向上し、外観形状及び均一性に優れた摺動部材が実現される。このような効果が奏される理由の一つは、摺動材料に微粒子が分散していることで、押出成形等の成形時に樹脂成分が均一に流動する点にあると考えられる。
微粒子の平均粒子径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、微粒子の平均粒子径は、例えば0.010μm以上であってよい。なお、本明細書中、微粒子の平均粒子径は、粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製 型式:マイクロトラックMT3300EX II)を用いて測定される体積平均粒子径を示す。
微粒子の形状は特に限定されないが、本発明の効果がより顕著に得られる観点からは球状であることが好ましい。
微粒子を構成する材料は特に限定されない。例えば、微粒子は、樹脂粒子であってよく、無機粒子であってもよい。樹脂粒子としては、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、フッ素樹脂系、エポキシ系、ポリアミドイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリメタクリル酸系、ナイロン系等の樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア等を含む無機粒子が挙げられる。
微粒子は、シリコーン系微粒子であってよい。シリコーン系微粒子としては、例えば、シリコーン・アクリル共重合体を含む微粒子、シリコーン・レジンパウダー、シリコーン・ゴムパウダー、シリコーン・エラストマーパウダー等が挙げられる。
微粒子としては、市販のものを用いてもよい。具体例としては、シリコーン−アクリル共重合体「シャリーヌ」(日信化学社製、商品名)、シリコーン・レジンパウダー(信越化学社製)、シリコーン・ゴムパウダー(信越化学社製)等が挙げられる。
摺動材料には、上記以外の各種添加成分を含有させることができる。このような添加成分としては、顔料、カーボンブラック等の補強剤、酸化防止剤、耐候性向上剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、防徽剤、抗菌剤、難燃剤、パラフィン系等の軟化剤、滑剤、フッ素系等の潤滑剤などが挙げられる。
一実施形態において、摺動材料は、第一のプロピレン系ポリマー及びエチレン系ポリマーを含む樹脂組成物を混練してエチレン系ポリマーの少なくとも一部を動的架橋して得られたエラストマー(すなわち、樹脂組成物の動的架橋物を含むエラストマー)と、第二のプロピレン系ポリマーと、シリコーン化合物と、平均粒子径100μm以下の微粒子と、を含む混合物を混練して得られるものであってよい。このような摺動材料において、微粒子は、その形状が維持されていてよく、混練によって変形又は溶融されていてもよい。
微粒子の配合量は、例えば、上記混合物の全量基準で0.1〜20質量%であってよく、好ましくは0.1〜18質量%であり、より好ましくは0.1〜17質量%である。
上記樹脂組成物におけるエチレン系ポリマーは、上述の第一のエチレン系ポリマーと第二のエチレン系ポリマーとを含むことが好ましく、上記樹脂組成物中の第一のエチレン系ポリマーの含有量C1と第二のエチレン系ポリマーの含有量C2の質量比C1/C2は、上述のとおり0.20/0.80〜0.95/0.05(0.25〜19)であることが好ましい。
好適な粒径のドメインを形成し、且つ接合材料との接着力を一層高めるためには、プロピレン系ポリマーを第一のプロピレン系ポリマーと第二のプロピレン系ポリマーの2つに分けて、摺動材料を製造することが好ましい。
例えば、摺動材料の製造方法の一態様では、第一のプロピレン系ポリマー及びエチレン系ポリマーを含む組成物を混練して、動的架橋によりドメインを形成した後、第二のプロピレン系ポリマーを添加混練することができる。このとき、結晶性プロピレン系ポリマーを第一のプロピレン系ポリマーとして用い、非晶性プロピレン系ポリマーの大部分を第二のプロピレン系ポリマーとして用いることが好ましい。すなわち、第一のプロピレン系ポリマーは結晶性プロピレン系ポリマーを含み、第二のプロピレン系ポリマーは非晶性ポリマーを含むことが好ましい。
上記態様において、動的架橋時に用いる第一のプロピレン系ポリマーは、上記のように結晶性プロピレン系ポリマーを用いるが、少量の非晶性プロピレン系ポリマーも同時に用いることができる。第一のプロピレン系ポリマーにおける非晶性プロピレン系ポリマーの含有量は、0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましい。第一のプロピレン系ポリマーにおける非晶性プロピレン系ポリマーの含有量を少なくすることで、好適なドメイン粒径が得られ易くなる。
動的架橋によるドメイン形成が終了した後に添加混練する第二のプロピレン系ポリマーは、第一のプロピレン系ポリマーで添加しなかった残りのプロピレン系ポリマーであり、非晶性プロピレン系ポリマーを含む。第二のプロピレン系ポリマーとして添加されるプロピレン系ポリマーの量は、摺動材料の全量基準で、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、また、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
上記態様において、動的架橋を行う組成物は、摺動材料の全量基準で、3〜40質量%のプロピレン系ポリマー(より好ましくは13〜35質量%)と、22〜55質量%のエチレン系ポリマー(より好ましくは35〜45質量%)とを含むことが好ましい。このような比率で動的な架橋を行うことで、好適なドメイン粒径が一層得られ易くなる。
動的架橋でドメインを形成する際は、上述の第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマー以外に、エチレン系ポリマーの架橋を進行させるために、架橋剤を添加する必要がある。架橋剤の添加量は、その架橋系によって若干異なるが、0.05〜15質量%の範囲内とすることができる。なお、動的架橋に際しては、架橋助剤をさらに添加してもよい。
有機過酸化物架橋系では、第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマーの合計100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜10質量部を用いることが好ましい。より好ましい添加量は0.3〜4質量部であり、さらに好ましくは0.7〜3質量部である。なお、上記のさらに好ましい添加量は、一般に市販されているTPVであるオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する時よりも比較的多い。架橋剤の添加量が少なすぎるとドメイン系が小さくなり、摺動性が悪くなったり、シリコーンのブリード不具合が発生する場合がある。一方、過度に多すぎるとドメイン系が大きくなり、摺動材の流動性が低下したり、摺動部材の表面が荒れて外観悪くなる場合がある。有機過酸化物と合わせて以下の多官能不飽和化合物:(メタ)アクリルモノマーやオリゴマー、ジビニルベンゼンなどのビニルモノマー、トリアリルシアヌレートなどのアリルモノマー及びビスマレイミドなどを、有機過酸化物の加硫助剤として0〜5重量部添加することもできる。
硫黄加硫系の架橋剤の場合、第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマーの合計100重量部に対して、硫黄またはジチオジモルホリンなどの硫黄化合物0.1〜10質量部を架橋剤として添加することができる。合わせて加硫助剤を0.1〜10質量部添加して、動的架橋を行ってもよい。加硫助剤としては、チアゾール系化合物、ジスルファイド系化合物、ジチオカルバメート系化合物、チオウレア系化合物、酸化亜鉛などを組み合わせて用いることができる。
樹脂架橋の架橋剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマーの合計100質量部に対して1〜20質量部程度用いることができる。
ヒドロシリル系の架橋剤としては、第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマーの合計100質量部に対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.01〜10質量部と、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素触媒0.001〜10質量部とを添加して、動的架橋を行うことができる。
好ましい架橋系である有機過酸化物とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの併用系では、例えば、第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマーの合計100質量部に対して、有機過酸化物を0.01〜10質量部(好ましくは0.3〜4質量部で、より好ましくは0.7〜3質量部)、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.01〜10質量部(好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部)添加することができる。
摺動材料の製造は、混練機を用いて行うことができる。混練機としては、バンバリーミキサー、ニーダーなどのバッチ式混練機や、単軸又は二軸の押出機などの連続式混練機が挙げられる。
混練条件は特に制限されず、ドメインが形成においては、第一のプロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、架橋剤を一度に混練しても良いが、第一のプロピレン系ポリマーとエチレン系ポリマーを120〜230℃で半溶融または溶融状態で混練した後、架橋剤を添加して100〜260℃で混練をして動的な架橋をすることが好ましい。その後、動的架橋によって得られたドメインが形成された樹脂に、第二のプロピレン系ポリマー、シリコーン化合物及び微粒子を添加し100〜260℃で混練することで、摺動材料を得ることができる。なお、摺動材料の製造方法は、上記態様に限定されず、ドメインを形成し得る種々の方法で行うことができる。
(摺動部材、複合部材、ウェザーストリップ)
本実施形態に係る摺動部材は、上記摺動材料を含む成形品である。摺動部材の成形方法は特に制限されず、例えば、摺動部材は、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、カレンダー成形等の方法で成形されたものであってよい。
本実施形態に係る摺動部材は、上記摺動材料を含んで構成される部材であるため、優れた摺動耐久性を有し、ウェザーストリップ用摺動部材として好適に用いることができる。
摺動部材はまた、上記摺動材料を含んで構成される部材であるため、接合材料と優れた接合強度で接合することができる。ここで、接合材料は、例えば、プロピレン系ポリマーを15質量%以上含有する樹脂材料であってよく、好ましくはプロピレン系ポリマーを20質量%以上含有する樹脂材料である。
また、本実施形態に係る摺動部材は、接合部材との接合面の切り出しから日数が経過しても、接合部材との優れた接合強度が維持される。このため、本実施形態に係る摺動部材では、切り出し加工後の貯留時間を稼ぐことができ、ウェザーストリップ等の成形品の製造効率が向上する傾向がある。
本実施形態に係る複合部材は、上記摺動材料を含む摺動部材を備えるものであり、摺動部材と接合する接合部材をさらに備えるものであってよい。
複合部材は、例えば、第一の摺動部材及びそれを支持する第一の支持部材を有する第一の構造体と、第二の摺動部材及びそれを支持する第二の支持部材を有する第二の構造体と、第一の構造体及び第二の構造体を互いに接合する接合部材と、を備えるものであってよい。このとき、接合部材は、第一の摺動部材及び/又は第二の摺動部材との接面を有していて良く、この場合でも接合部材と摺動部材とは優れた強度で接合されるため、本実施形態に係る複合部材は、耐衝撃性及び耐折曲性に優れる。
接合部材は、プロピレン系ポリマーを15質量%以上(好ましくは20質量%以上)含有する接合材料からなることが好ましい。このような接合部材は、上記摺動部材と優れた接合強度で接合される。
摺動部材と接合部材との接着は、例えば、摺動部材(又は、摺動部材及び支持部材からなる構造体)を冷却された金型にインサートして、射出成形によって溶融した接合材料を冷却金型に注入し、摺動部材と接合材料とを接触又は圧接させた後、金型から取り出すことで行うことができる。接合材料は、摺動部材に接触又は圧接する前に、冷却金型を流れることによって冷やされ、また、接合材料が摺動部材に接触又は圧接する際も、摺動部材が冷えていることからその接触面で冷やされる。通常、接合材料が冷やされて樹脂温度が低下すると十分な接合強度が得られ難くなるが、本実施形態では、摺動材料が非晶性プロピレン系ポリマーを含むため、接合面の温度が低い場合でも優れた融着性能が発現し、良好な接合が実現されると考えられる。
接合部材を成す接合材料は、複合部材の用途に応じて、プロピレン系ポリマー以外に各種成分を含有していてもよい。例えば、接合材料は、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体、スチレン系ブロック共重合体、水添加スチレン系ブロック共重合体等のエラストマー成分を含有していても良い。また当該エラストマー成分は、その一部又は全てが架橋されていても良い。接合材料におけるプロピレン系ポリマーとしては、ポリプロピレンが好ましい。
以下に、複合部材の製造方法の工程な一態様を示す。
本態様の複合部材の製造方法は、上記摺動材料を含む摺動部材に、プロピレン系ポリマーを15質量%以上含有する溶融又は軟化した接合材料を接触させる接触工程を有する。このような接触工程によれば、摺動部材に対して接合材料が優れた融着性を示すため、摺動部材に対して優れた接合強度で接合された接合部材を形成することができる。
溶融又は軟化した接合材料は、接触工程の後に冷却等され、固化して、接合部材を形成する。接合部材を容易に成形するために、上記接触工程は、例えば、摺動部材が挿入された金型に接合材料を注入して行うことができる。このような方法によれば、容易に優れた接合強度で摺動部材と接合部材とが接合された複合材料を得ることができる。
接触工程において、接合材料は溶融又は軟化する程度に加熱される。加熱の程度は接合材料によって適宜調整できるが、例えば、接触前に180〜250℃とすることができ、220〜270℃とすることもできる。
接触工程において、接合材料が接触する前の摺動部材は加熱されている必要は無く、例えば0〜120℃であってよく、10〜80℃であってもよい。従来の摺動部材では、このように低い温度の摺動部材に対して溶融又は軟化した接合材料を接触させた場合には、十分な融着が成されず、接合強度が十分に得られない場合があった。これに対して、本実施形態では、このような低い温度の摺動部材に対して溶融又は軟化した接合材料を接触させた場合でも、摺動部材が接合材料に対して優れた融着性を示し、優れた接合強度を得ることができる。
本実施形態に係る複合部材は、摺動部材を備える複合部材として、様々な用途への適用が可能である。例えば、複合部材は、窓ガラスと摺接する摺動部材を備えるウェザーストリップとして、好適に用いることができる。
以下に、図面を参照しつつ、本発明のウェザーストリップの好適な実施形態について詳述する。
本実施形態に係るウェザーストリップは、窓ガラスと摺接する摺動部材を備えるウェザーストリップであって、摺動部材が上記摺動材料を含むものである。
図3は、第一実施形態に係るウェザーストリップの模式断面図である。図3に示す第一実施形態に係るウェザーストリップ50は、ウェザーストリップ本体部(支持部材)20と、上述の本実施形態に係る摺動材料からなる摺動部材30と、から構成される。ウェザーストリップ本体部20は、基底部20aと両側の側壁部20bと、両側壁部20bの先端から内部に延びるリップ部20cからなり、摺動部材30は、窓ガラス18と摺接するリップ部20cの摺接部及び窓ガラス18の外周縁端面と摺接する基底部20aの表面を被覆するように、これらの上に形成されている。
図4は第二実施形態に係るウェザーストリップの模式断面図である。図4に示す第二実施形態に係るウェザーストリップ60は、ウェザーストリップ本体部120と、上述の本実施形態に係る摺動材料からなる摺動部材30と、から構成される。ウェザーストリップ本体部120は、心材110を有し、車両に取り付けられる取付け部120dと窓ガラスと摺接するリップ部120cからなり、摺動部材30は、リップ部120cの摺接部を被覆するように、リップ部120c上に形成されている。
本実施形態に係るウェザーストリップは、上述のウェザーストリップ2つを接合部材で接合したものであってもよい。すなわち、ウェザーストリップは、摺動部材を支持する支持部材を更に備えるものであってよく、また、ウェザーストリップは、第一の摺動部材及びそれを支持する第一の支持部材を有する第一の構造体と、第二の摺動部材及びそれを支持する第二の支持部材を有する第二の構造体と、第一の構造体及び第二の構造体を互いに接合する接合部材と、を備えるものであってもよい。
このようなウェザーストリップは、接合部材が摺動部材と接していても、その接面において優れた接合強度が得られるため、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れ、窓ガラスの昇降によって摺動部材が破壊(剥離)されることを十分に防ぐことができ、また車体への組み付けが容易となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた原料は、以下の略称で示す。
(1)結晶性プロピレン系ポリマー
・MA3H(ポリプロピレンホモポリマー、日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP(グレード:MA3H))
・E203GV(ポリプロピレンホモポリマー、プライムポリマー株式会社製、商品名:プライムポリプロ E−203GV)
・H700(ポリプロピレンホモポリマー、プライムポリマー株式会社製、商品名:プライムポリプロ H700)
(2)非晶性プロピレン系ポリマー
・XM−7070(プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン比率65〜75質量%、三井化学株式会社製、商品名:タフマー XM−7070)
・PN2060(プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン比率65〜75質量%、三井化学株式会社製、商品名:ノティオ PN2060)
(3)エチレン系ポリマー
・520MB(高密度ポリエチレン、プライムポリマー株式会社製、商品名:ハイゼックス(グレード:520MB))
・K9720(エチレン・ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、三井化学株式会社製、商品名:三井エラストマー K−9720)
・601F(油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、パラフィン油の油展比率41.2質量%、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体原体中のプロピレン比は33〜43質量%、エチレン比は56〜62質量%、住友化学株式会社製、商品名:エスプレン601F)
(4)シリコーン化合物
・X−22−2101(シリコーンマスターペレット、信越化学工業株式会社製、商品名:X−22−2101)
・KF−99(オルガノハイドロジェンポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、商品名:KF−99)
・1000cs(シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製、商品名:KF−96(グレード:1000cs))
・1万cs(シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製、商品名:KF−96(グレード:10000cs))
・5万cs(シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製、商品名:KF−96(グレード:50000cs))
(5)微粒子
・R−200(日信化学工業株式会社製、商品名:シャリーヌ R−200)
・KMP590(信越化学工業株式会社製、商品名:KMP−590)
・SFP−20M(電気化学工業株式会社製、商品名:デンカ溶融シリカ SFP−20M)
(6)その他
・LA−63P(光安定剤、株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブ(グレード:LA−63P))
・LA−36(光安定剤、株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブ(グレード:LA−36))
・HP−10(リン系酸化防止剤、株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブ(グレード:HP−10))
・I−1010(フェノール系酸化防止剤、BASF社製、商品名:IRGANOX 1010)
・F30940MM(顔料、カーボンブラック40重量%含有、DIC株式会社製、商品名:PEONY BLACK F−30940MM)
・PW−90(パラフィン系プロセス油、出光興産株式会社製、商品名:ダイアナプロセスオイルPW(グレード:90))
・パーヘキサ25B(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、日本油脂株式会社製、商品名)
・200V(乾式シリカ、日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル200V)
・25B40(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンをシリカで希釈したもの、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン原体の純度は40質量%、日本油脂株式会社製、商品名:パーヘキサ25B40)
(製造例1:エラストマーE1の製造)
下記表1の配合1に記載の各成分を混練して、樹脂ペレットを得た。具体的には、MA3H及び601Fをブレンダーで混合し、予備混合物を得た後、シリンダー温度を130〜170℃に設定した高速同方向二軸押出機に重量フィードを用いて予備混合物を投入し、二軸押出機途中に設けられた液注機を用いてPW−90を注入することにより、予備混合物とPW−90とを混練して、樹脂ペレットを得た。
次いで、樹脂ペレットと配合2に記載の架橋剤混合物とを加熱混練して動的架橋を行い、エラストマーE1を得た。具体的には、樹脂ペレット、パーヘキサ25B及び200Vをブレンダーで均一分散させ、シリンダー温度を130〜170℃に設定した高速同方向二軸押出機に投入し、併せて二軸押出機途中に設けられた液注機を用いてPW−90を注入することにより、樹脂ペレットと配合2に記載の各成分を混練して、エラストマーE1を得た。
(製造例2:エラストマーE2の製造)
下記表1に記載のとおり、各成分の配合比(質量比)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして動的架橋を行い、エラストマーE2を得た。
表1中、各成分の配合比は、配合1及び配合2の各成分の総量を100としたときの質量比で示す。
(製造例3:エラストマーE3の製造)
下記表2の配合1及び配合2に記載の各成分を混練して動的架橋を行い、エラストマーE3を得た。具体的には、下記表2の配合1に記載の各成分をブレンダーで均一に分散させて予備混合物を得た後、シリンダー温度を130〜150℃に設定した高速同方向二軸押出機に重量フィードを用いて予備混合物を投入し、二軸押出機途中に設けられた液注機を用いてKF−99を注入し、二軸押出機途中に設けられたサイドフィーダーを用いてH700及び25B40の混合物(マスターバッチ化した硬化剤)を投入することにより、各成分を混練して、エラストマーE3を得た。
表2中、各成分の配合比は、配合1及び配合2の各成分の総量を100としたときの質量比で示す。
(実施例1〜16及び比較例1〜2)
下記表に示した各成分を、ブレンダーで均一に分散させ、シリンダー温度を130〜190℃に設定した高速同方向二軸押出機に重量フィードを用いて投入し、混練した。ダイスから吐出されるストランドをペレタイザーでカットし、摺動材料からなる均一な形状のペレットを得た。
(射出溶融試験)
実施例及び比較例の摺動材料ペレットから、それぞれ厚み3mmの試験シートを作製した。具体的には、ペレットを200℃に加熱した平行二本ロールを使ってシートを作製し、これを厚み3mmの板枠に挿入して、加熱と冷却が可能なプレスを使って200℃で賦形し、40℃まで冷却することで、厚み3mmの試験シートを作製した。試験シートは、射出金型に挿入するために65×103mmにNTカッターを使って裁断した。
この試験シートを射出金型にインサートして、ミラストマー7030BS(ポリプロピレンを15質量%以上含有するオレフィン系熱可塑性エレストマー、三井化学株式会社製、商品名)を溶融射出した。具体的には、80ton射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、成形機名FS80S12ASE)に、厚み3mm幅103mm長さ130mmのシート成形用金型を装着して、インサート用試験シートを40℃に保持された上記金型に挿入し、溶融させたミラストマー7030BSを射出した。7030BSを溶融させる時の射出成形機のシリンダー温度設定はノズル前部、中間及び後部(ホッパー側)をそれぞれ230℃、210℃及び190℃とし、射出速度80〜60%、保圧30%、射出時間10秒、冷却時間40秒の条件で射出溶着を行い、二色成形品を得た。
上記の射出溶着を、試験シートの溶着面となる面を切り出した当日及び切り出してから2週間後の試験シートについてそれぞれ行った。
得られた二色成形品について、接合面を中心にJIS K6251の3号ダンベルに打ち抜き、JIS K6251に基づき引張試験を行い、破断強度と破断伸びを測定した。結果を下記表に示す。表中、経時日数は、溶着面の切り出しから経過した日数を示す。なお、比較例2では、切り出してから2週間後の試験シートの接着力が弱く、試験機にセットすることができず測定不能であった。