JP5014725B2 - ウェザーストリップ - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品であるウェザーストリップに関するものである。
自動車用ドアのサッシュに取り付けられるウェザーストリップは、窓ガラスの外周縁部をシールすることにより、窓ガラスをしっかりと保持し、雨、風、異物等の車内への侵入を防止すると共に、窓ガラスの開閉を円滑に行わせるために使用される自動車部品である。ウェザーストリップは、その機能を十分に果たすことができるよう、通常、エラストマー材料によって構成されており、具体的には、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等が使用されている。
ウェザーストリップに関する従来技術としては、ウレタン系又はシリコーン系の表面処理剤を窓ガラスとの接触部表面に塗布、硬化することにより、塗膜を形成したもの、あるいは、所定の熱可塑性エラストマー又は樹脂を用いて型成形したものなどがある。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂をベース材料とし、このベース材料より高粘度及び低流動性の大小各種の粉末又は粒子のポリオレフィン系樹脂を混合した合成樹脂からなる、表面に凹凸等の粗面部を形成した薄保護膜を窓ガラスと摺接する部分に設けたウェザーストリップが記載されている。
また、特許文献2には、押出成形部に接続される型成形部を、固体粒子状減摩材を添加した熱可塑性エラストマー又は軟質樹脂で型成形し、該型成形部の表面の十点平均粗さ(Rz)を1〜50μmとしたウェザーストリップが記載されている。
また、特許文献3には、摺接部に所定の材料を被覆/含有させ、摺接部の弾性率を調整したウェザーストリップが記載されている。特許文献3では、摺接部へのダスト付着が異音発生に関与しているとして、弾性率の低い材料(軟らかい材料)や、表面エネルギーの低い材料(非親水性材料、非吸湿性材料、低表面張力材料、高接触角材料、低SP値材料)の使用は、ダストが付着しやすい、あるいは保持されやすいため好ましくなく、摺接部の表面粗さも、ダスト付着や保持に関係があるとしている。また、特許文献3には、窓ガラス昇降時の摺動音が大きくなったり、窓ガラスを傷つけたりすることから、弾性率の高い材料の使用は好ましくないとして、親水性、吸湿性材料の使用や、その弾性率、表面張力、接触角、SP値及び表面粗さ(Rz)の好ましい範囲について開示されている。
また、特許文献4には、シリコーンオイルを含有した表面処理剤にて塗布・浸漬して乾燥し、被覆層を形成することにより、摩擦係数を低下させ、耐摩耗性を向上させたウェザーストリップが開示されている。
特公平7−73893号公報 特開2000−52780号公報 特開2003−200738号公報 特公昭61−4408号公報
しかしながら、従来のウェザーストリップは、窓ガラスと繰り返し摩擦接触させると、摺動抵抗が大幅に上昇して、パワーウィンドーの設定負荷を超える場合があり、自動車用ドアのサッシュへの固定や、窓ガラスの開閉の点において改善が求められていた。また、異音、擦れ音の発生防止、サッシュに取り付ける時の白化及び永久変形の抑制という点についても十分に満足できるものではなかった。
本発明の目的は、摺動性、耐摩耗性に優れており、且つ、異音、擦れ音の発生、サッシュに取り付ける時の白化及び永久変形を効果的に抑制することができるウェザーストリップを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、窓ガラスと摺接するリップの摺接部を、所定の範囲の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδをもつ特定の材料からなる摺動部材で被覆することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明に至るまでの経緯を詳細に説明する。
本発明者は、上記課題を解決するために、自ら開発したベストモードの摺動部材について、ナノインデンテーション法により、超軽荷重薄膜硬度テスター(Hysitron社製)を用いて、特許文献3に記載されている条件に従い、上記摺動部材の弾性率の測定を行った結果、必ずしも特許文献3に規定されている弾性率の範囲が、上記課題の解決に適当であるとはいえないことを確認した。
また、弾性率は、特許文献3に記載されているように、異物付着のしやすさを示すパラメータではなく、窓ガラスが摺接する際において、摺動部材の微小部分における変形のしやすさを示すものであり、弾性率が高いものほど変形しにくく、変形エネルギーロスによる摺動抵抗増加分が低くなると解釈すべきであることを見出した。
さらに、特にウェザーストリップの微小部分に高圧が発生する場合、例えば、窓ガラスの立付け位置がウェザーストリップに対して不均一となることによって高面圧が発生したり、ウェザーストリップと窓ガラスの間に泥、砂等を挟み込んで窓ガラスが摺接し、ウェザーストリップ内に泥、砂等が食い込み、食い込み状態のまま、窓ガラスが摺接することにより、ウェザーストリップに永久変形や破壊が発生する場合は、弾性率だけでなく、摺動部材の微少部分に変形回復性があるかどうかで、変形エネルギーロスによる摺動抵抗増加分に差が出ること、また、微少部分の変形回復性は損失正接tanδで表わせることを新たに発見した。
また、本発明者は、特許文献1、2に記載されているような、ウェザーストリップの表面に凹凸を設ける技術は、窓ガラスとの接触面積を小さくして摺動抵抗を下げる技術であり、ウェザーストリップ摺動部の変形や破壊への考慮が無く、しかも、繰り返し摩擦接触によって、表面の凹凸は、摩滅して摺動抵抗が上昇することになると考えた。また、特許文献3に記載された弾性率は、おそらくReduced Moduls(引き抜き時)であり、変形全体を表わしていない可能性があることから、押して戻す動的な弾性率の方が、繰り返し摩擦接触性との相関は高いであろうと考えた。こうしたことから、貯蔵弾性率E’と損失正接tanδの値が課題解決のために重要であると考えた。
また、本発明者は、摺動部材の貯蔵弾性率E’と損失正接tanδを調整することによって、射出成形やプレス成形等により得られる実質的に表面凹凸のない鏡面状の摺動部材であっても、窓ガラスの繰り返し摩擦接触による摺動抵抗の上昇がない摺動部材、さらには、窓ガラスの摩擦接触を繰り返し行っても摩滅しにくい表面凹凸をもつ摺動部材を形成することができることを見出した。
このように、貯蔵弾性率E’と損失正接tanδは、窓ガラスの繰り返し摩擦接触性の基盤となるパラメータであり、優れた繰り返し摩擦接触性を得るには、貯蔵弾性率E’は高く、損失正接tanδは小さいものが好ましいことを見出した。
さらに、繰り返し摩擦接触性だけでなく、リップの反力と可とう性の保持、サッシュに取り付ける際の不具合防止(皺、曲げ癖、白化)、摩耗面物質のスティック性、異音防止、擦れ音防止といったウェザーストリップとして必要な課題を検討し、リップの反力と可とう性の保持、サッシュに取り付ける際の不具合防止(皺、曲げ癖、白化)、及び擦れ音防止については、軟らかさ、復元性が重要で、これらは貯蔵弾性率E’と損失正接tanδの両パラメータで表わすことができ、異音は、摩耗性(摩耗痕形状、摩耗面物質のスティック性)、泥・砂等の異物の食い込み性と関係があり、これらは同様に貯蔵弾性率E’と損失正接tanδの両パラメータで表わすことができることを見出した。
また、特許文献2、3のように、多様な材料の組み合わせではなく、相溶性のある材料で、所定の範囲の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδをもつ、微細構造を形成させなければ、それぞれが剥離、脱落し、結果的に耐摩耗性が悪くなり、摺動抵抗の上昇や異音が発生しやすくなることを確認した。
そして、これらの知見にもとづき、本発明の課題を解決することができる貯蔵弾性率E’と損失正接tanδの範囲、及びそれらの範囲をもつ物質とその含有量について研究を行い、本発明のウェザーストリップを完成させた。
すなわち、本発明は、窓ガラスと摺接するリップの摺接部が摺動部材によって被覆されたウェザーストリップにおいて、上記摺動部材が、以下の高分子A群及び高分子B群を含有するウェザーストリップ用組成物からなるウェザーストリップに関する。
本発明は、高分子A群及び高分子B群を含有し、高分子A群が、エチレン系重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、共役ジエン単量体の単独重合ゴム、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体、及び共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体の芳香族基を除く全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加物の群より選ばれる重合体の架橋体からなるドメイン1と、エチレン系重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)の架橋体からなるドメイン2で構成され、ドメイン1の周波数200Hz、温度23℃の条件下における貯蔵弾性率E’が、3GPa以上9GPa未満、損失正接tanδが0.1〜0.4であり、ドメイン2の同条件下における貯蔵弾性率E’が9GPa以上13GPa以下、損失正接tanδが0.1〜0.3であり、上記高分子A群中、ドメイン1とドメイン2の比率(ドメイン1:ドメイン2)が、50〜95重量%:5〜50重量%である高分子群(但し、当該高分子群の含有量は、ウェザーストリップ用組成物の全重量基準で40〜100重量%)であり、高分子B群が、プロピレン重合体、エチレン・プロピレン共重合体、及びエチレン・プロピレン・α−オレフィン三元共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)から少なくとも1つ選択される熱可塑性樹脂からなり、同条件下で測定した貯蔵弾性率E’が5GPa〜17GPa、損失正接tanδが0.4より大きく、0.7以下である高分子群(但し、当該高分子群の含有量は、ウェザーストリップ用組成物の全重量基準で0〜40重量%)である、ウェザーストリップ用組成物を提供する。
すなわち、本発明のガラスランチャンネル(ウェザーストリップ)は、窓ガラスと摺接するリップの摺接部が摺動部材によって被覆されたガラスランチャンネルにおいて、該摺動部材は、その全重量の40〜100重量%が高分子A群、0〜40重量%が高分子B群で構成され、該高分子A群は、エチレン系重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、共役ジエン単量体の単独重合ゴム、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体、又は共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体の芳香族基を除く全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加物の架橋体からなるドメイン1と、エチレン系重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)の架橋体からなるドメイン2で構成され、ドメイン1は、周波数200Hz、温度23℃で測定した貯蔵弾性率E’が3以上9未満GPa、損失正接tanδが0.1〜0.4の範囲にあり、ドメイン2は、同条件下で測定した貯蔵弾性率E’が9以上13以下GPa、損失正接tanδが0.1〜0.3の範囲にあり、該高分子A群中、ドメイン1とドメイン2の比率(ドメイン1:ドメイン2)が、50〜95重量%:5〜50重量%であり、該高分子B群は、プロピレン重合体、エチレン・プロピレン共重合体、及びエチレン・プロピレン・α−オレフィン三元共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)から少なくとも1つ選択される熱可塑性樹脂からなり、上記条件下で測定した貯蔵弾性率E’が5〜17GPa、損失正接tanδが0.4より大きく、0.7以下の範囲にあることを特徴とするガラスランチャンネルである。
本発明のウェザーストリップ用組成物は、ドメイン2は、ドメイン1と接触して存在することが好ましく、ドメイン1は、高分子B群から構成される相とドメイン2の間に介在していることが特に好ましい。本発明のウェザーストリップ用組成物は、更にシリコーン化合物を5〜20重量%含有するのが好適である。また、ウェザーストリップにおける、窓ガラスと摺接するリップの摺接部を被覆する摺動部材であって、摺動部材が上記ウェザーストリップ用組成物からなる摺動部材が提供される。これに加え、窓ガラスと摺接するリップの摺接部が摺動部材によって被覆されたウェザーストリップであって、摺動部材は上記のウェザーストリップ用組成物からなるウェザーストリップが提供される。
本発明によれば、摺動性、耐摩耗性に優れており、且つ、異音、擦れ音の発生、サッシュに取り付ける時の白化及び永久変形を効果的に抑制することができるウェザーストリップを提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
図1は第1実施形態に係るウェザーストリップの模式断面図である。図1に示す第1実施形態に係るウェザーストリップ1は、ウェザーストリップ本体部20と摺動部材30とから構成される。ウェザーストリップ本体部20は、基底部20aと両側の側壁部20bと、両側壁部20bの先端から内部に延びるリップ部20cからなり、摺動部材30は、窓ガラス10と摺接するリップ部20cの摺接部及び窓ガラス10の外周縁端面と摺接する基底部20aの表面を被覆するように、これらの上に形成されている。
図2は第2実施形態に係るウェザーストリップの模式断面図である。図2に示す第2実施形態に係るウェザーストリップ2は、ウェザーストリップ本体部120と摺動部材30とから構成される。ウェザーストリップ本体部120は、心材110を有し、車両に取り付けられる取付け部120dと窓ガラスと摺接するリップ部120cからなり、摺動部材30は、リップ部120cの摺接部を被覆するように、リップ部120cに形成されている。
本発明の実施形態において、摺動部材30は、本発明の高分子A群及び高分子B群を含有するウェザーストリップ用組成物からなる。ウェザーストリップ用組成物は、高分子A群単独で構成されてもよいが、ウェザーストリップ用組成物の全重量に対し、高分子A群を40〜100重量%含有することが好ましく、50〜95重量%含有することがより好ましく、60〜90重量%含有することが更に好ましい。高分子A群の含有量が40重量%未満では、摺動性、耐摩耗性、異音防止性、可とう性、取り付け不具合防止、擦れ音防止の各効果が十分に発現しない。
高分子A群からなるウェザーストリップ用組成物は、未架橋でリップ部などのストリップ本体と接合させた後、架橋させる方式をとれば、高分子A群のみのウェザーストリップ用組成物でも押出加工は容易である。また、高分子A群が100重量%のウェザーストリップ用組成物でも押出すことは可能であるが、成形を容易にするには、高分子A群を95重量%以下にすることが好ましい。ウェザーストリップ用組成物の流動性は高分子B群の添加によって向上する。
高分子B群は、ウェザーストリップ用組成物全重量の5〜40重量%で構成することが好ましい。高分子B群が5重量%未満では流動性が不十分となり、高分子B群を5〜40重量%含有することによって、流動性を十分確保することができる。高分子B群が40重量%を超えると、ウェザーストリップ用組成物中の高分子A群の比率が小さくなり、上述した本発明の特性が損なわれる傾向がある。ウェザーストリップ用組成物における高分子B群の含有量は、10〜40重量%が好ましく、15〜40重量%が更に好ましい。
本発明のウェザーストリップ用組成物は、高分子A群、高分子B群のほか、顔料、シリカ、カーボンブラック等の補強剤、酸化防止剤、耐候性向上剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、防徽剤、抗菌剤、難燃剤、パラフィン系などの軟化剤、滑剤、シリコーン系、フッ素系などの潤滑剤等を含有させることができる。
高分子A群は、ドメイン1とドメイン2の2つの領域からなる。ドメイン1は、主として、摺動部材に可とう性、取り付け不具合防止、擦れ音防止性能を付与し、摺動性能を大きく低下させない機能を有する領域であり、エチレン系重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、共役ジエン単量体の単独重合ゴム、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体、又は共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体の芳香族基を除く全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加物の架橋体からなる。
上記したエチレン系重合体としては、エチレン単独重合体の他、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体などのエチレン・α,β−不飽和カルボン酸誘導体共重合体、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・酢酸ビニルなどのエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル・不飽和カルボン酸などのエチレン系三元共重合体((メタ)アクリルゴムとも称される)が挙げられる。
上記したエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)及びエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン又はそれらの組み合わせが挙げられる。
また、上記したエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体のジエンとしては、例えば、エチリデンノルボルネン(ENB)、ビニルノルボルネン、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、メチレンノルボルネン(MNB)、イソプロピリデンノルボルネン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はそれらの組み合わせが挙げられる。
また、エチレン系重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体として、LDPE、LLDPE、VLDPE、数平均分子量5万〜30万の高密度ポリエチレンを含む。
また、上記した共役ジエン単量体の単独重合ゴムとしては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムが挙げられる。
また、上記した共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体及び共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体の芳香族基を除く全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加物としては、例えば、SBS、SIS、SBBS、SEBS、SEPS、SEEPS、SBRゴムやその水素添加物が挙げられる。
これらを架橋することによって、ドメイン1として、所望の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδに調節することができる。また、これら架橋体、すなわちドメイン1は、ドメイン2及び高分子B群との相溶性、密着性に優れる。
ドメイン2は、主として、摺動性能を向上させ、且つ、耐摩耗性を付与する機能を有する部分であり、エチレン系重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)の架橋体からなる。エチレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体は、そのまま用いてもよいし、架橋反応がしやすいように不飽和基などの官能基をグラフトするなど一部修飾してもよい。
上記エチレン系重合体は、ドメイン1のところで述べたものと同様のものが例示される。また、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)も、ドメイン1のところで述べたものと同様のものが例示される。
上記エチレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体としては、数平均分子量50万〜700万のエチレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。これらエチレン系樹脂の架橋体は、ドメイン1との相溶性、密着性に優れる。また、これらエチレン系樹脂は、架橋することによってドメイン2として、所望の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδに調節することができる。エチレン系樹脂は架橋すると、架橋構造によって、貯蔵弾性率E’の上昇と、結晶化が阻害され、低損失正接tanδを得ることができる。上記エチレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体の数平均分子量は、50万〜700万の範囲にあると、所望の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδを調節しやすい。
ドメイン2として数平均分子量50万〜700万のエチレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体からなる架橋体を用いた場合、高分子B群との相溶性、密着性が不十分となる場合がある。そのため、ドメイン2と高分子B群のみからなるウェザーストリップ用組成物では、ドメイン2の剥離、脱落が発生し、十分な摺動性や耐摩耗性を得られにくくなる。ドメイン1は、ドメイン2と高分子B群の両方に対して相溶性、密着性があり、ドメイン2と高分子B群とを介在固定して、ウェザーストリップ用組成物からドメイン2の剥離脱落を防止する機能を有する。
ドメイン1及びドメイン2は、上記原料の不飽和部あるいは炭化水素部を利用して、有機過酸化物、ヒドロシリル化剤(及びヒドロシリル化触媒)、フェノール樹脂硬化剤、イオウ、含イオウ化合物、有機多価アミン、金属酸化物等の架橋剤を用いて、電子線・紫外線照射、加熱等の処理を行うことにより得られるものである。
有機過酸化物としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートなどを用いる。
ドメイン2の架橋に好適な架橋剤としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)へキサンが挙げられる。
ヒドロシリル化剤としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンアルキルメチルポリシロキサン等の水素化ケイ素化合物が挙げられる。また、ヒドロシリル化触媒としては、例えば、ヘキサクロロ白金酸、塩化白金、酸化白金、白金錯体等の白金含有触媒が挙げられる。
フェノール樹脂硬化剤としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、及び臭化アルキルフェノール樹脂などのハロゲン化フェノール樹脂が挙げられる。一般に、非ハロゲン化フェノール樹脂の場合、触媒として塩化第二スズなどのハロゲンドナー、及び酸化亜鉛などのハロゲン化水素除去剤とともに用いる。ハロゲン化フェノール樹脂の場合は、必要であれば、ハロゲン化水素除去剤とともに用いる。
ドメイン1及びドメイン2の大きさは任意であり、通常は、0.05〜300μm程度のものや連続相のものを使用する。また、ドメイン1及びドメイン2の形状も任意である。ドメイン1及びドメイン2の大きさ、形状は、求められる製品の外観や表面粗さに応じて、適宜決定する。摺動部材中のドメイン1及びドメイン2の分散状態及びその大きさは、SEM、XPM、AFM、ナノインデンテーションなどで確認することができる。
図3は、本発明のウェザーストリップ用組成物の(1)貯蔵弾性率E’、(2)損失正接tanδを超軽荷重薄膜硬度テスターで測定し、測定範囲10μm四角をマッピングした画像である。図4は、図3の画像より推定される本発明のウェザーストリップ用組成物のモルフォロジーを示す図である。本発明のウェザーストリップ用組成物では、ドメイン1は、高分子B群から構成される相とドメイン2の間に介在している。また、ドメイン1の一部はドメイン2中に分散されている。このようなモルフォロジーを有することで、本発明のウェザーストリップ用組成物は、摺動性、耐磨耗性に優れるものとなる。
ドメイン1は、周波数200Hz、温度23℃で測定した貯蔵弾性率E’が3GPa以上9GPa未満、損失正接tanδが0.1〜0.4の範囲であることを要する。一方、ドメイン2は、同条件下で測定した貯蔵弾性率E’が9GPa以上13GPa以下、損失正接tanδが0.1〜0.3の範囲であることを要する。貯蔵弾性率E’の大きさは、ドメイン1、ドメイン2の圧縮復元時の弾性率を示し、損失正接tanδは、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’との比(E’’/E’)であり、損失正接tanδの大きさは、ドメイン1、ドメイン2が、粘性体か弾性体かであるかの尺度を示す。
ドメイン1の貯蔵弾性率E’が9GPa以上、ドメイン2の貯蔵弾性率E’が13GPaを超えると、可とう性、取り付け不具合防止、擦れ音防止性能を出すことができない。ドメイン1の貯蔵弾性率E’が3GPa、ドメイン2の貯蔵弾性率E’が9GPaを下回ると、突出した優れた摺動性能(低抵抗、耐摩耗性)を出すことができない。
また、ドメイン1及びドメイン2の損失正接tanδが0.1未満であると、上記摺動部材の調製が困難となり、ドメイン1の損失正接tanδが0.4、ドメイン2の損失正接tanδが0.3を超えると、摺動抵抗が大きくなって摺動性が低下し、耐摩耗性が損なわれる。
該摺動部材の主組成は、高分子A群と高分子B群で構成されるが、高分子A群の貯蔵弾性率E’が3GPa、高分子B群の貯蔵弾性率E’が5GPaを下回ると、摺動抵抗の上昇や耐摩耗性が損なわれる。高分子A群の貯蔵弾性率E’が13GPa、高分子B群の貯蔵弾性率E’が17GPaを上回ると、窓ガラスとの擦れ音、リップの変形、窓ガラスのガタつき、及び異物による窓ガラスの傷つきが発生しやすくなる。
本発明では、ドメイン1及びドメイン2を上記材料の架橋体で構成しているため、ドメイン1及びドメイン2の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδを上記範囲に調節することが容易である。すなわち、架橋の程度を適宜調節することにより、貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδを上記範囲に調節することができる。
なお、本願明細書で規定した貯蔵弾性率E’と損失正接tanδの値は、ナノインデンテーション法により、超軽荷重薄膜硬度テスター(Hysitron社製)を用いて測定した値である。超軽荷重薄膜硬度テスターは、微小部分のReduced Modulusだけでなく、動的粘弾性の計測が可能であることから、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’、損失正接tanδの各値を得ることができる。
また、本発明のウェザーストリップにおいて、高分子A群中、ドメイン1とドメイン2の比率(ドメイン1:ドメイン2)は、50〜95重量%:5〜50重量%である。この比率を外れると、摺動部材が硬くなりすぎて、可とう性が損なわれ、リップの変形が生じたり、サッシュに取り付ける際に白化するなどの不具合が発生する。
リップの摺接部を被覆する摺動部材は、その全重量の40〜100重量%を上記高分子A群とし、0〜40重量%をプロピレン重合体、エチレン・プロピレン共重合体、及びエチレン・プロピレン・α−オレフィン三元共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)から少なくとも1つ選択される熱可塑性樹脂からなる高分子B群で構成することができる。上記したエチレン・プロピレン・α−オレフィン三元共重合体のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン又はそれらの組み合わせが挙げられる。
高分子B群は、周波数200Hz、温度23℃で測定した貯蔵弾性率E’が5GPa〜17GPa、好ましくは8GPa〜16GPa、損失正接tanδが0.3〜0.5、好ましくは0.3〜0.4の範囲とする。高分子B群を配合することにより、摺動部材の十分な流動性が確保され、押出成形や射出成形等の各種成形法を利用することが可能となる。
摺動部材中には、シリコーン化合物を5〜20重量%配合させることが好ましい。シリコーン化合物は潤滑剤として作用し、シリコーン化合物の添加によって、窓ガラスが摺動部材に繰り返し摩擦接触しても、低摺動抵抗を保つことができ、耐摩耗性を向上させることができる。シリコーン化合物の配合量が5重量%未満では、上記効果が認められず、20重量%を超えると、摺動部材が脆くなる場合がある。
本発明で用いる上記シリコーン化合物は、シリコーンオイル又はシリコーンガム(ゴム)、及びシリコーン系共重合体である。シリコーンオイル又はシリコーンガム(ゴム)としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、及び5mol%以下のビニル基を有するそれらのシリコーン、ハイドロジェンポリシロキサン、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性等の変性シリコーンオイルが挙げられる。特には、ビニル基含有量が1mol%未満で、数平均分子量が10〜10の鎖状ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル、ガム又はゴム)、鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルキレン基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンが、摺動性能の持続性や耐候性の点で優れているため好ましい。
一方、上記シリコーン系共重合体は、シリコーンオイル又はシリコーンガム(ゴム)の所で述べた各種シリコーン化合物と他の樹脂を共重合させたものである。このシリコーン系共重合体は、市販の共重合体を用いてもよいし、反応物を作製してもよく、具体例としては、シリコーン・アクリル共重合体「シャリーヌR」(日信化学社製、商品名)、シリコーン・オレフィン共重合体「シリコーンコンセントレート」(東レ・ダウコーニング社製、商品名)、ビニル基の含有量が0〜1mol%含有のジメチル・ビニルポリシロキサンと、不飽和基の含有量が0〜5重量%のEPDM、SBS、SISとの部分架橋物が挙げられる。
リップ部20c及び120cの摺接部を被覆する摺動部材30の厚さは、窓ガラスの大きさ、リップの反力等を考慮して適宜決定すればよいが、通常、20〜200μmの範囲である。この範囲を外れると、窓ガラスの保持性、摺動部材の耐摩耗性が低下することや、リップの変形や異音が発生しやすくなる傾向がある。基底部に被覆する摺動部材30は摺動性のみを要求されるため、その厚さに限定はないが、厚い方が長期信頼性は高い。通常、50〜1500μmの範囲にある。
本発明のウェザーストリップは、摺動部材以外の部分については特に限定されるものでなく、一般に用いられる原料、すなわち、ポリオレフィン系樹脂中にエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体)(EPDM)の架橋体が分散してなるポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO、TPV-O)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS、TPV-S)等の各種熱可塑性エラストマーで構成すればよい。また、熱硬化型のエラストマーでもよい。熱硬化型のエラストマーとしては、EPDM、EPDMとSBR、EPDMとIRなどの混合材が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン重合体、プロピレン重合体、エチレン・プロピレン共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体)、エチレン・プロピレン・α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体)、エチレン・α−オレフィン共重合体(HDPE、LDPE、軟質オレフィン)、プロピレン・α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体)、エチレン・アクリル共重合体(EEA等)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、上記以外のプロピレンを含む共重合体、上記のマレイン酸変性物、上記の水酸基付加物、及び上記のシラン変性物が挙げられる。
本発明のウェザーストリップは、以下の方法により製造することができる。
まず、該摺動部材の製造法は、高分子A群の原料(ドメイン1の原料、ドメイン2の原料)を、架橋によって、上記所定の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδに調節し、最終的に高分子B群を含めた3成分が混合した形態で得られれば、特に限定されるものではない。
例えば、表1の[a]に示すように、高分子A群の原料(ドメイン1の原料、ドメイン2の原料)、高分子B群の原料、架橋剤を、二軸押出機等の混練装置で混練し、ペレットとして、1つの工程で該摺動部材を製造してもよいし、表1の[b]〜[g]に示すように、複数工程に分けて、高分子A群の原料を架橋させて、これを混合して該摺動部材を製造する。なお、表1中、「○」は左欄に掲げた材料を添加することを示す。
該摺動部材は、ペレットにすることが好ましいが、複数工程での中間製造物は、ペレットであってもいいし、塊状であっても構わない。必要に応じて、シリコーン化合物、顔料等の各種添加剤を添加する場合は、何れの混練工程で混合混練しても構わない。この場合、ドメイン1の原料、ドメイン2の原料、高分子B群の原料、必要に応じて、シリコーン化合物、顔料等の各種添加剤の配合割合は、20〜90重量%、2〜48重量%、0〜40重量%(高分子B群を添加する場合は5〜40重量%)、0〜25重量%とすることによって、本発明で規定した範囲内に調整することができる。
Figure 0005014725
製造方法としては、ドメイン1とドメイン2が接触しやすい方法をとることが好ましい。すなわちドメイン1の原料とドメイン2の原料とを同一混練工程で処理することが好ましい。表1の[a]、[b]、[f]、[g]が製造方法として好ましい。また、ドメイン1及び2の原料(高分子B群や他の成分がある場合、これらの原料も含む)に架橋剤を加えないで混練し、架橋剤を添加して動的な架橋を行うことが更に好ましい。上記製造方法をとることによって、ドメイン2がドメイン1中に分散しているモルフォロジー、ドメイン1がドメイン2中に分散しているモルフォロジー、及び高分子B群がドメイン1中に浸入しているモルフォロジーをとりやすくなる。また、ドメイン1及び2の原料(高分子B群がある場合、高分子B群も含む)を同一混練工程で動的架橋処理を行うことは、ドメイン1とドメイン2(高分子B群がある場合、高分子B群も含む)との共架橋反応による密着性が向上する。
例えば、表1の[b]の該摺動部材製造方法を説明する。[混練工程1]で、ドメイン2の原料全てと、ドメイン1の原料の一部を混合し、二軸押出機に供給し混練した後、二軸押出機側部から架橋剤を供給し、架橋反応させ、架橋物をペレット化する。この時、架橋物が高樹脂圧になる場合は、開放押出を行って、架橋塊として製造しても構わない。
[混練工程1]でドメイン2を架橋させ、所定の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδ範囲にするには、架橋剤として、反応性が高く、架橋効率の高い有機過酸化物が好ましい。特には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンが好ましい。
この架橋反応を、動的な熱処理下で行うことにより、ドメイン2とドメイン1の貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδをそれぞれ上述した範囲に調整することができる。ドメイン2の原料として、例えば、数平均分子量50万〜700万の超高分子ポリエチレン系樹脂、曲げ弾性率500MPaを超える高剛性PP−PE共重合体が挙げられる。ドメイン1の原料として、例えば、SBS、SIS、SEBS、SEPS、SBRゴムやその水素添加物、数平均分子量5万〜30万のポリエチレン、PP−PE系リアクターTPO、EPゴム、EPDMゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、(メタ)アクリルゴムが挙げられる。これらは広く市販の物を用いることができる。但し、油添品(軟化剤含有)として市販されている場合、その軟化剤量を除いて、且つ後記する混練工程2で付加されるドメイン1を加味して、摺動部材中に20〜90重量%の含有量になるよう調整する。また、ドメイン1、ドメイン2の原材料として、数平均分子量300万程度のポリエチレンと30万未満のポリエチレンの混練物、例えば、リュブマー(三井化学)を好適に用いることができる。
架橋剤として有機過酸化物を使用する場合の使用量は、通常、上記ドメイン1及び2の原料100質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましい。有機過酸化物の使用量が0.01質量部より少ないと架橋が不充分となるおそれがあり、10質量部より多いと過剰となりコスト的に不利となる。
一方、[混練工程2]で、ドメイン1の原料の残分と高分子B群を混練して、更に有機過酸化物、ヒドロシリル化剤(及びヒドロシリル化触媒)、フェノール樹脂硬化剤等の架橋剤を添加混練して、混練工程1と同様に動的な架橋を行う。ドメイン1の原料としては、上記混練工程1の例示と同じものを用いる。例えば、ドメイン1の原料にEPDMを、高分子B群にPPを使用した場合、動的架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV−O)のペレットが得られる。ドメイン1の原料にSEBS、SEPS、SEEPSを、高分子B群にPPを使用した場合、動的架橋型のスチレン系熱可塑性エラストマー(TPV−S)が得られる。TPV−OやTPV−Sは市販されている物を用いて、混練工程2を省略してもよい。
次いで、混練工程1、2で得られた架橋物(ペレット又は架橋塊)とTPVを、バンバリーミキサーや二軸押出機等で混練して、摺動部材用のペレットを作製する。
次いで、ウェザーストリップ成形用ダイスに接続した二台の押出機の一方に、ウェザーストリップの本体を形成するための本体用の材料を投入し、もう一台の押出機に、摺動部材用ペレットを投入する。そして、それぞれの押出機から本体用の材料と摺動部材を吐出して、ダイス内で合流させて、一体的に押出成形することにより、本体と摺動部材が接着した本発明のウェザーストリップが作製される。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜3]
[混練工程1]
実施例1〜4、比較例1〜2は、架橋塊の材料として、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SBS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、シリコーンオイル、黒顔料を、表2に示す組成に従って配合し、190℃に加温した二軸押出機でスクリュー回転を200rpm、該材料を100kg/hrの供給量で混練してペレットを作製した。なお、表2中の%は重量%を示す。
このペレットに、該ペレット100質量部当たり、表2に示す量の有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)を添加、混合して、付着させた後、160℃に加温した二軸押出機にスクリュー回転を200rpm、50kg/hrの供給量で投入、混練し、架橋反応を行って、2〜130mmの架橋塊を作製した。比較例3は、表2に示す組成を混合し、160℃に加温した二軸押出機に200rpm、7kg/hrで架橋し、粉と2〜6mm程度の塊を作製した。
次いで、この架橋塊をパンチ穴5mmの粉砕機で粉砕し、混練機に投入しやすい5mm以下の架橋塊を作製した。
[混練工程2]
一方、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ポリプロピレン(PP)、ハイドロジェンポリシロキサン、シリカ、フェノール系抗酸化剤、黒顔料を、表2に示す組成に従って配合し、バンバリーミキサーで混練し、ルーダーを通してペレットを作製した。
このペレットに、該ペレット100質量部当たり、表2に示す量の白金系触媒を添加、混合して、スクリュー回転200rpm、供給量100kg/hr、190℃の条件下で二軸押出機で混練し、架橋反応を行って、動的架橋型熱可塑性エラストマーのペレット(TPV)を作製した。
[混練工程3]
次いで、上記架橋塊、上記動的架橋型熱可塑性エラストマーのペレット、シリコーン系摺動剤、シリコーンオイル、耐候性向上剤(UVA、HALS)及びPPを、表2に示す組成に従って配合し、二軸押出機で混練して、摺動部材用ペレットを作製した。
次いで、ウェザーストリップ成形用ダイスに接続した二台の押出機の一方に、ウェザーストリップの本体を形成するための、本体用の材料であるオレフィン系エラストマーを投入し、もう一台の押出機に、上記摺動部材用ペレットを投入し、それぞれの押出機から本体用の材料と摺動部材を吐出して、ダイス内で合流させて、一体的に押出成形することにより、本体と摺動部材が接着したウェザーストリップを作製した(実施例1〜4、比較例1〜3)。窓ガラスと摺接するリップの摺接部に接着した摺動部材の厚さは100μmとした。このウェザーストリップのリップの摺接部に接着した摺動部材について、下記に述べる評価方法によって、諸物性を評価した。
Figure 0005014725
[評価方法]
(1)摺動部材中の高分子A群の比率(%)、高分子A群中のドメイン1の比率(%)、高分子A群中のドメイン2の比率(%)、及び摺動部材中の高分子B群の比率(%)についての評価
実施例1〜4、比較例1〜3に係る5000μmの大きさの摺動部材について、下記のようにして、上記比率を測定した。
貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδは以下のようにして測定した。ウェザーストリップの摺動部材を含むリップ部の一部を試験片として切り出した。次に、切り出した試験片を、常温硬化エポキシ樹脂でモールドし、底面4mm×10mm、高さ約15mmの直方体状のモールド体を得た。このモールド体を、試験片の断面が露出するように、かつ、試験片の断面が平滑になるように、底面に平行にカッター刃で切断した。このようにして形成された試験片の断面を測定面として、超軽荷重薄膜硬度テスター(Hysitron社製、商品名「Tribo Indenter」)を用いて貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδを測定した。押込み深さは、最大押込み荷重優先の制御を行っていることから、おおよそ30〜110nm程度で測定されている。ナノDMAモードによる動的粘弾性の測定条件は以下のとおりである。
圧子:Berkovichtip(対稜角115°)
周波数:200Hz
温度:23℃
最大押込み荷重:20μN
先端径:100nm
一度の測定範囲を10μm四角にして、貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδの値をその大きさで、色分けしてマッピング画像を作成し、スキャナーやデジタルマイクロスコープで画像の色の違いを判別し、対象貯蔵弾性率E’の範囲となる部分と対象損失正接tanδの範囲となる部分をそれぞれ抽出した。それぞれの抽出画像を重ね合わせて、重なる部分を更に抽出し、面積を測定した。この操作を5000μmの大きさの摺動部材で行った。
一方、高分子A群、高分子B群に該当する構造物の決定は、貯蔵弾性率E’、損失正接tanδの値をもって行った。本実施例は、製造方法[b]によって行っていることから、[混練工程1]、[混練工程2]の製造物について、同様に、貯蔵弾性率E’、損失正接tanδの値をマッピングした。各工程の製造物は、摺動部材ほど組成的に複雑でなく、また既知の組成、組成物量であることから、それぞれの構造物の貯蔵弾性率E’、損失正接tanδの値を予め絶対値で把握することができる。各構造物の貯蔵弾性率E’、損失正接tanδの値は、ほぼ一定であるが、範囲をもって観測される。この固有の範囲値をもって、該当する構造物を決定することができる。
貯蔵弾性率E’については、実施例の高分子B群を含めて、PP≧UHMW−PE架橋体>SBS架橋体≒HDPE架橋体>EPDM架橋体、損失正接tanδについては、PP>HDPE架橋体>EPDM架橋体≒SBS架橋体≧UHMW−PE架橋体となる。例えば、実施例1、3及び4では、表3の範囲になり、構造物を決定することができる。
Figure 0005014725
摺動部材断面で、23℃における貯蔵弾性率E’が3GPa以上9GPa未満、損失正接tanδが0.1〜0.4である部分の面積を測定し、ドメイン1の面積を求めた。また、23℃における貯蔵弾性率E’が9GPa以上13GPa以下、損失正接tanδが0.1〜0.3である部分の面積を測定し、ドメイン2の面積を求めた。ドメイン1とドメイン2の面積を合わせて高分子A群の面積を求めた。高分子A群の面積と測定面積から、高分子A群の比率を、ドメイン1とドメイン2の面積からそれぞれのドメイン比率を求めた。摺動部材断面で、23℃における貯蔵弾性率E’が5GPa〜17GPa、損失正接tanδが0.4より大きく0.7以下である部分の面積を測定し、高分子B群の比率を求めた。結果を表2に示す。
貯蔵弾性率E’と損失正接tanδによって構造物が判別できることから、摺動部材のモルフォロジーを解明することができる。図5は、実施例1のウェザーストリップ用組成物のモルフォロジーを示す図であり、貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδの分析に基づいて作成されたものである。貯蔵弾性率E’及び損失正接tanδの分析を詳細に行うことにより、図5においてドメイン1は、ドメイン1a及びドメイン1bから構成されることが判明した。ドメイン1aは主にSBS架橋体から構成され、部分的にHDPE架橋体を含有する。ドメイン1bは、主にHDPE架橋体から構成される。ドメイン2は、主にドメイン1aと接触しており、ドメイン2の一部分は、ドメイン1a中に分散しているドメイン1bに接触するか内包されている。ドメイン1aは、ドメイン1a中に分散しているドメイン2中に分散している。ドメイン1a、ドメイン1b及びドメイン2は、高分子A群を形成する。ポリマーB群からなる相は、PPから構成され、ドメイン1a及びドメイン1bと接触している。また、ポリマーB群からなる相の一部分は、ドメイン1a中に分散している。図5には示していないが、ドメイン1はドメイン1a及びドメイン1bに加えて、更にドメイン1cを有しており、ドメイン1cは、高分子B群からなる相、ドメイン1a又はドメイン1bに接触するか内包されていることが判明しており、ドメイン1cは、主にEPDM架橋体からなるものである。
(2)繰り返し摩擦接触試験
実施例1〜4、比較例1〜3に係る300mm幅のウェザーストリップを治具に固定し、該ウェザーストリップの片側のリップに、モーターによって平均150mm/秒の速さで水平可動する100mm幅、4mm厚さの板ガラスを、リップに対して10Nの荷重がかかる条件下で摺接させて、繰り返し摩擦接触試験を行った。板ガラスと接触するリップの摺動部材の面積は約0.5cmでセットする。板ガラスとリップの摺動部材は線状に接触し、摺動回数を増すごとにその接触幅は少しずつ広くなるが、摩耗痕が5mmを超えることは稀である。繰り返し摩擦接触試験は、まず、ウェザーストリップのリップに泥水を付けて板ガラスの往復運動を50回行い、次いで、該リップを布で拭いた後、水を付けて板ガラスの往復運動を50回行い、次いで、該リップを布で拭いた後、乾燥した状態で板ガラスの往復運動を200回行い、次いで、該リップに水を付けて板ガラスの往復運動を50回行い、計350回のこれらの往復運動を1セットとし、これを20セット連続して行った。
そして、摺動性、耐摩耗性、異音、曲げ癖、擦れ音、及び表面粗さ(Ra)について、以下のようにして評価を行った。結果を表2に示した。
摺動性の評価については、20セットにおける最大摺動抵抗値が12N以下であれば◎、12Nを超え15N以下であれば○、15Nを超え20N以下であれば△、20Nを超えれば×とした。
耐摩耗性の評価については、上記20セットの往復運動後におけるリップの摺動部材の摩耗痕の深さを顕微鏡で測定した。30μm以下であれば◎、30μmを超え60μm以下であれば○、60μmを超え95μm以下であれば△、95μmを超えれば×とした。
異音の評価については、上記20セットの往復運動中において、異音が発生しない場合を◎、20セット中、1セット且つ異音の発生回数が1回の場合を△、20セット中、1セット且つ異音の発生回数が1回を上回る異音発生の場合は全て×とした。
曲げ癖の評価については、リップを60°開き、元に直ぐ回復するものを◎、1日後に回復するものを△、1日経っても回復せず変形しているものを×とした。
擦れ音の評価については、上記泥水を付ける前のリップが乾燥した初期の状態で板ガラスの往復運動を50回行い、その間に音が発生しないものであれば◎、シーシー音が僅かに聞こえるものを△、シーシー音が聞こえるものを×とした。
表面粗さ(Ra)については、JIS B 0601−1994に準拠し、表面粗さ計SURFCOM408A(三益半導体社製、商品名)を用いて、押出成形品のウェザーストリップの摺動部材表面に対して、異なる3箇所を測定して平均値(μm)を求めた。
表2の結果からわかるように、本発明のウェザーストリップは、摺動性、耐摩耗性、異音、曲げ癖、擦れ音のいずれの評価においても良好な結果を示した。
また、摺動部材断面の貯蔵弾性率E’と損失正接tanδのマッピングから求めた高分子A群、高分子B群の面積比率は、概ねその構造物を構成する組成の重量%と合致していた。
本発明のウェザーストリップは、摺動性、耐摩耗性に優れており、且つ、異音、擦れ音の発生、サッシュに取り付ける時の白化及び永久変形を効果的に抑制することができる。
第1実施形態に係るウェザーストリップの模式断面図である。 第2実施形態に係るウェザーストリップの模式断面図である。 本発明のウェザーストリップ用組成物の貯蔵弾性率E’(1)、損失正接tanδ(2)を超軽荷重薄膜硬度テスターで測定したマッピング画像である。 本発明のウェザーストリップ用組成物のモルフォロジーを示す図である。 実施例1のウェザーストリップ用組成物のモルフォロジーを示す図である。
符号の説明
1…第1実施形態に係るウェザーストリップ、2…第2実施形態に係るウェザーストリップ、10…窓ガラス、20…ウェザーストリップ本体部、20a…基底部、20b…側壁部、20c…リップ部、30…摺動部材、110…心材、120…ウェザーストリップ本体部、120c…リップ部、120d…取付け部。

Claims (4)

  1. 以下の高分子A群及び高分子B群を含有し、
    ドメイン1は、高分子B群から構成される相とドメイン2の間に介在している、ウェザーストリップ用組成物。
    高分子A群:エチレン系重合体、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体(α−オレフィンの炭素数は3〜20)、及び共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体、からなる群より選ばれる重合体の架橋体からなるドメイン1と、エチレン系重合体の架橋体からなるドメイン2と、で構成され、前記ドメイン1の周波数200Hz、温度23℃の条件下における貯蔵弾性率E’が、3GPa以上9GPa未満、損失正接tanδが0.1〜0.4であり、前記ドメイン2の同条件下における貯蔵弾性率E’が9GPa以上13GPa以下、損失正接tanδが0.1〜0.3であり、前記高分子A群中、前記ドメイン1と前記ドメイン2の比率(ドメイン1:ドメイン2)が、50〜95重量%:5〜50重量%である高分子群(但し、当該高分子群の含有量は、前記ウェザーストリップ用組成物の全重量基準で40〜90重量%)、
    高分子B群:プロピレン重合体からなり、同条件下で測定した貯蔵弾性率E’が5GPa〜17GPa、損失正接tanδが0.4より大きく、0.7以下である高分子群(但し、当該高分子群の含有量は、前記ウェザーストリップ用組成物の全重量基準で10〜40重量%)。
  2. 更にシリコーン化合物を5〜20重量%含有する、請求項1に記載のウェザーストリップ用組成物。
  3. ウェザーストリップにおける、窓ガラスと摺接するリップの摺接部を被覆する摺動部材であって、前記摺動部材は請求項1又は2に記載のウェザーストリップ用組成物からなる摺動部材。
  4. 窓ガラスと摺接するリップの摺接部が摺動部材によって被覆されたウェザーストリップであって、前記摺動部材は請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェザーストリップ用組成物からなるウェザーストリップ。
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