JP6478583B2 - 被覆体およびウェザーストリップ - Google Patents
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Description
被覆体材料,基体材料の各熱可塑性エラストマーに配合されるゴム成分としては、エチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体(以下、EPDMと称する)を適用することが可能である。EPDMのα‐オレフィンとしては、例えばプロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセン等が挙げられ、好ましい一例としてプロピレンが挙げられる。これらα‐オレフィン群のなかから複数のものを選択し、例えばプロピレンと1‐ブテンの如く組み合わせて使用しても良い。また、ポリエン共重合体が5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5‐ビニル‐2‐ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン等の環状の非共役ポリエンであるものや、1,4ヘキサジエン、7‐メチル‐1,6‐オクタジエン、4‐エチリデン‐8‐メチル‐1,7‐ノナジエン、4‐エチリデン‐1,7ウンデカジエン、4,8‐ジメチル‐1,4,8‐デカトリエン等の鎖状の非共役ポリエンであるものが挙げられる。これら各非共役ポリエンは、単独、または2種類以上組み合わせたものでも良く、その構成単位(エチレン‐α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体における非共役ポリエンの含有比率)は例えば約1wt%〜約20wt%とし、好ましくは約1wt%〜約15wt%、より好ましくは約5wt%〜約11wt%である。
被覆体材料,基体材料の各熱可塑性エラストマーに配合されるオレフィン系樹脂材料に含まれる結晶性オレフィン樹脂としては、例えばエチレンの単独重合体,プロピレンの単独共重合体や、エチレン,プロピレン等を主体とする結晶性の共重合体等の一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができる。具体例として、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレン・ブテン‐1共重合体の結晶性エチレン系共重合体,アイソタクチックポリプロピレン,プロピレン‐エチレン共重合体,プロピレン・ブテン‐1共重合体,プロピレン・エチレン・ブテン‐1三元共重合体等が挙げられ、好ましくはポリプロピレン系重合体が挙げられる。また、前記の各結晶性オレフィン樹脂の何れかを単独で用いても良く、2種類以上を適宜組み合わせて用いても良い。
被覆体材料,基体材料の各熱可塑性エラストマーに配合される架橋剤としては、一般的に知られているものを適用することができるが、フェノール樹脂系架橋剤は、例えばパーオキサイドと比較してゴム成分を架橋させ易い。このフェノール樹脂系架橋剤の場合は、例えばアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。また、末端の水酸基を臭素化した臭化フェノール樹脂、例えば臭素化アルキルフェノール樹脂等のハロゲン化フェノール樹脂を用いることもでき、好ましくはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。フェノール樹脂系架橋剤の好ましい配合量として約3phr〜約20phrの範囲、より好ましい配合量として約4phr〜約15phrの範囲が挙げられるが、目的とする被覆体や基体の特性を大きく損わない程度であれば適宜用いることができる。
被覆体材料の熱可塑性エラストマーに含まれる滑剤のうち固体滑剤としては、一般的に知られているものを適用することができるが、少なくともグラファイトを適用し、そのグラファイトの他に例えば二酸化モリブデン,二酸化タングステン,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を適宜併用しても良い。グラファイトにおいては、例えば後述の親油性潤滑剤と馴染み易く表面濡れ性が向上する。また、被覆体に含まれたグラファイトは、摺動時に当該グラファイトの表面側の層から剥離し、その剥離物によって例えばドライ環境における被覆体表面を固体潤滑することになるが、親油性潤滑剤を併用した場合(グラファイトと親油性潤滑剤が馴染んだ状態)であれば、グラファイトの各層の剥離現象が徐々に進行することになるため、耐久性が持たせながら低摩擦状態を保持することが可能となる。また、前記の剥離物により被摺動対象が汚染することも考えられるが、前述のように親油性潤滑剤と馴染んだ剥離物であれば、当該汚染が抑制されることになる。
被覆体材料の熱可塑性エラストマーに含まれる滑剤のうち液体滑剤としては、親油性潤滑剤と親水性潤滑剤を併用し、それぞれ一般的に知られているものを適用することが可能である。
基体材料の熱可塑性エラストマーにおいては、熱膨張性マイクロカプセル(以下、熱膨張カプセル)を配合したものであっても良い。この熱膨張カプセルにおいては、押出し加工工程にて膨張し得るもの、例えば、加熱(押出し加工工程の熱)により気体を発生し得る液体(揮発性膨張剤;例えば、低沸点の炭化水素,塩素化炭化水素)を熱可塑性樹脂の殻壁(例えば、球状の殻壁)内に充填したもの(熱膨張性の熱可塑性樹脂粒子)であって、真比重0.1以下,粒径(メディアン径)1μm〜70μmとし、その液体が膨張開始温度以上の温度(例えば、150℃〜250℃)の加熱(例えば、押出し温度での加熱)により膨張し、目的とする基体内にて熱膨張セルを形成する液体封入熱可塑性樹脂粒子が挙げられる。
被覆体材料,基体材料においては、以上示した各種成分の他に、カーボンブラック,加工助剤,液状ポリマー(液状ゴム),酸化防止剤,老化防止剤,脱水剤,熱安定剤,光安定剤,紫外線吸収剤,摺動性パウダー(例えば、PMMA,フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)系パウダー,アクリル系パウダー,シリコーンゴムパウダー,シリコーン樹脂パウダー,ポリカーボネート系パウダー,超高分子系ポリエチレンパウダー等),防雲剤,アンチブロッキング剤,スリップ剤,分散剤,難燃剤,帯電防止剤,導電性付与剤,粘着付与剤,架橋助剤,着色剤(酸化チタン等),金属粉末(フェライト等),ガラス繊維,炭素繊維,有機繊維(アラミド繊維等),複合繊維,ガラスバルーン,ガラスフレーク,グラファイト,カーボンナノチューブ,フラーレン,黒粉体,各種ゴム,有機発泡剤,熱膨張カプセル,ワックス,再生ゴム等が挙げられ、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせ、目的とする被覆体や基体の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
本実施形態の被覆体材料や基体材料においては、例えば自動車用グラスラン等のウェザーストリップに適用でき、具体例としては図1に示すようなグラスランが挙げられる。図1のグラスランは、横断面略コ字状で長尺の支持部1と、その支持部1の内壁から突出した複数個(図中では4個)のリップ状の弾接部2と、を基体10とする構成となっている。符号3は、支持部1の外壁から突出した係止爪部を示すものであり、車体パネル4に組みつけられた基体10が該車体パネル4から抜けないようにするためのものである。前記の弾接部2における少なくともガラス5との接触面側、および支持部1の底面側内壁(摺動性を要する部位)は、被覆体6により形成されている。このように基体10に被覆体6が形成された多層構造によれば、弾接部2(被覆体6)がガラス5に対し弾性を有して摺動自在に弾接し、ガラスシール性が保持される。
まず、EPDMの一つであるエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(ダウケミカル社製のノーデルIP 4760P)100phrに対し、オレフィン系樹脂材料としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製のE‐200GP)200phr、軟化剤としてパラフィン系オイル(JOMO社製のP300)50phr、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂化合物(田岡化学社製のタッキロール201)7phr、架橋助剤としてハロゲン系架橋触媒(日本化学産業社製の塩化第一錫)1phr、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカル社製のIrganox1010)1phr、酸化亜鉛(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛)1phr、を東洋精機社製のラボプラストミルB600(密閉式バンバリータイプ混練機)に一括投入した。そして、当該一括投入された各材料(以下、架橋前投入材料)を、チャンバー温度200℃,ロータ回転数100rpmの条件で混練し動的架橋を行い、その混練物の温度が220℃に到達した時点で当該混練物を取り出した。
まず、EPDMの一つであるエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(ダウケミカル社製のノーデルIP 4760P)100phrに対し、オレフィン系樹脂材料としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製のE‐200GP)83phr、軟化剤としてパラフィン系オイル(JOMO社製のP300)117phr、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂化合物(田岡化学社製のタッキロール201)7phr、架橋助剤としてハロゲン系架橋触媒(日本化学産業社製の塩化第一錫)1phr、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカル社製のIrganox1010)1phr、酸化亜鉛(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛)1phr、カーボンブラック(旭カーボン社製の旭♯60H)23phr、を前記ラボプラストミルB600に一括投入して、チャンバー温度200℃,ロータ回転数100rpmの条件で混練し動的架橋を行い、その混練物の温度が220℃に到達した時点で当該混練物を取り出し、基体材料Kを得た。
成形機には、基体材料Kを押出し成形する成形機(以下、基体押出機)の口金と、表1に示す被覆体材料S1〜S10,P1〜P9から選択された一つを押出し成形する成形機(以下、被覆体押出機)のヘッド出口と、を耐熱チューブで連結した同時押出し成形機を適用した。そして、各被覆体材料S1〜S10,P1〜P9から適宜選択された一つを、基体材料Kと共に同時押出し成形することにより、断面が2mm×30mmの延板状の基体の一端側表面に断面が0.04mm×30mmの被覆体が形成された多層構造の成形体G(GS1〜GS10,GP1〜GP9)を作成した。
まず図2に示すように、成形体GS1〜GS10,GP1〜GP9において、それぞれ短冊状((7.0mm±0.5mm)×(120mm±0.5mm)×(0.7mm±0.5mm)矩形の短冊状)に打ち抜いて各試験片20を作成し、その試験片20の被覆体表面の汚れをアルコールで拭き取った後、表面粗さ計(小坂研究所社製のサーフコーダSE30D)を用いた十点平均法(JIS−B0601に準拠した方法)により当該被覆体表面の表面粗さ(十点平均粗度;Rz(μm))をそれぞれ測定した。なお、前記表面粗さ計の触針には、触針先端半径2μmのものを使用した。
以上示した表面粗さ,動摩擦係数,異音,耐久性の検証結果をそれぞれ比較し総合的に判定した。なお、後述の表2中の「総合評価」の欄において、記号「◎」は自動車のグラスラン,ウェザーストリップ等の多層構造の摺動製品に適用する場合を想定して好適な結果が得られた場合、記号「×」は不適格な結果が得られた場合、記号「○」は良好な結果が得られた場合(「◎」よりは劣るが、「×」よりも良好な場合)、記号「△」は十分な結果が得られた場合(「○」よりは劣るが、少なくとも「×」よりは良好で摺動製品として十分適用できる可能性がある場合)であったものとする。
表2の結果に示すように、成形体GP1〜GP9においては、総合評価として全て×という結果となった。まず、固体滑剤または液体滑剤の配合量が少な過ぎる被覆体材料P1,P3を用いた成形体GP1,GP3は、摺動初期から既に、動摩擦係数Fw,Fdおよび差分w/dがそれぞれ比較的大きく異音が発生し、耐久性も低かった。
一方、固体滑剤および液体滑剤の各配合量や親油親水比がそれぞれ本実施形態の範囲内で、親水性潤滑剤の粘度が親油性潤滑剤の粘度よりも小さい被覆体材料を用いた成形体GS1〜GS10は、成形体GP1〜GP9と比較すると、動摩擦係数Fw,Fdおよび差分w/dが、それぞれ摺動初期から小さく、摺動回数が増加しても殆ど変化せず、異音の発生も無かった。
2…圧接部
3…係止爪部
4…車体パネル
5…ガラス部材
6…摺動性組成物
10…基体
Claims (4)
- 押出し成形により基体の表面に形成される被覆体であって、
少なくともゴム成分,オレフィン系樹脂材料,架橋剤,滑剤を配合した被覆体用熱可塑性エラストマーから成り、
前記滑剤は、グラファイトから成る固体滑剤5〜50wt%と、親油性潤滑剤および親水性潤滑剤から成る液体滑剤3〜15wt%と、を含み、
前記液体滑剤の親油性潤滑剤と親水性潤滑剤との比率である親油性潤滑剤/親水性潤滑剤比が、50/50〜90/10の範囲内であり、親水性潤滑剤の粘度が、親油性潤滑剤の粘度よりも小さく、
前記被覆体の表面粗さが50μm以下である、ことを特徴とする被覆体。 - 前記基体は、少なくともゴム成分,オレフィン系樹脂材料,架橋剤,熱膨張性マイクロカプセルを配合した基体用熱可塑性エラストマーから成ることを特徴とする請求項1記載の被覆体。
- 前記被覆体用熱可塑性エラストマーは、当該被覆体用熱可塑性エラストマーに配合される各成分のうち滑剤を除く他の成分が配合され混練されて架橋した混練物と、当該滑剤と、が配合されたことを特徴とする請求項1または2記載の被覆体。
- 押出し成形により基体の表面に請求項1〜3の何れかに記載の被覆体が形成され、被覆体が被摺動対象に対して圧接するウェザーストリップであって、
被摺動対象がガラス部材であることを特徴とするウェザーストリップ。
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