JP2018178029A - シラン架橋用触媒組成物、シラン架橋樹脂成形体調製用キット及びシラン架橋樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ポリオレフィン樹脂を架橋する方法として、特殊な設備を要しない等の利点を有するシラン架橋法が知られている。シラン架橋法では、まず、有機過酸化物の存在下で、加水分解性シリル基と不飽和基とを有するシランカップリング剤をポリオレフィン樹脂にグラフト反応させたシラングラフト樹脂を調製する。次いで、得られたシラングラフト樹脂をシラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させることにより、加水分解性シリル基を縮合する。このようにして、ポリオレフィン樹脂をシラン架橋させることができる。
<1>加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤がグラフト反応したシラングラフト樹脂の架橋に用いるシラン架橋用触媒組成物であって、
エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種の樹脂成分と、鉱物性オイルとを含有するキャリア樹脂(A)と、
シラノール縮合触媒(B)とを含有するシラン架橋用触媒組成物。
<2>前記樹脂成分が、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種と、スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する<1>に記載のシラン架橋用触媒組成物。
<3>前記キャリア樹脂(A)中、前記樹脂成分の含有率が60〜90質量%であり、前記鉱物性オイルの含有率が10〜40質量%である<1>又は<2>に記載のシラン架橋用触媒組成物。
<4>前記樹脂成分中、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の含有率が20〜80質量%であり、前記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率が10〜40質量%である<2>又は<3>に記載のシラン架橋用触媒組成物。
<5>前記シラノール縮合触媒(B)の混合割合が、前記シラングラフト樹脂と前記キャリア樹脂(A)との合計100質量部に対して0.02〜0.5質量部に設定された<1>〜<4>のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物。
<6>前記シラングラフト樹脂に対する前記キャリア樹脂(A)の混合割合が、前記シラングラフト樹脂と前記キャリア樹脂(A)との合計100質量%に対して2〜60質量%に設定された<1>〜<5>のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物。
<7>前記シラングラフト樹脂に対する前記キャリア樹脂(A)の混合割合が、前記シラングラフト樹脂と前記キャリア樹脂(A)との合計100質量%に対して15〜40質量%に設定された<1>〜<6>のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物。
<8>シラングラフト樹脂と、上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物とを組み合わせてなるシラン架橋樹脂成形体調製用キット。
<9>シラングラフト樹脂と、上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物とを溶融混合した後に成形する工程(b)と、工程(b)で得られた成形体を水と接触させて架橋する工程(c)とを有するシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
本発明のシラン架橋用触媒組成物は、加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤がグラフト反応したシラングラフト樹脂と組み合わせて用いる。このシラン架橋用触媒組成物とシラングラフト樹脂と組み合わせて用いると、シラングラフト樹脂とシラン架橋用触媒組成物との混合物を調製する際及び/又は成形する際に、加水分解性シリル基がシラノール縮合することを防止することができる。これにより、本発明のシラン架橋用触媒組成物は、シラングラフト樹脂と組み合わせてシラン架橋法に用いた際に、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を製造できる。
キャリア樹脂(A)は、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種の樹脂成分と、鉱物性オイルとを含有する。
キャリア樹脂として用いられる樹脂成分は、後述するシラングラフト樹脂と混合(相溶)する樹脂が好ましい。例えば、シラングラフト樹脂を形成する樹脂が後述するポリオレフィン系樹脂である場合、通常、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
本発明において、樹脂成分は、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種を含有する。好ましくは、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種と、スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する。
樹脂成分としてスチレン系熱可塑性エラストマーを含有することにより、押出成形時におけるブツの発生を効果的に抑制できる。この抑制効果は、スチレン系熱可塑性エラストマーの配合量が多くなるほど高くなる。また、通常、射出成形法においても、シリンダー内に滞留する時間が長くなると、所謂ショートによって成形体表面の欠け又は荒れに起因する外観不良が起こりやすくなる。しかし、キャリア樹脂(A)としてスチレン系熱可塑性エラストマーを含有することにより、射出成形機により成形した場合においても、成形材料(シラングラフト樹脂とシラン架橋用触媒組成物との混合物)がシリンダー壁内に付着しにくくなり、ショートの発生を防止できる。更には、スチレン系熱可塑性エラストマーが共存すると、後述する鉱物性オイルの、樹脂成分に対する相溶性が向上するため、シラン架橋樹脂成形体表面への鉱物性オイルのブリードアウトを抑制することができる。
エチレン−αオレフィン共重合体樹脂の密度は、特に限定されないが、0.880〜0.940g/cm3が好ましく、より好ましくは0.900〜0.930g/cm3である。エチレン−αオレフィン共重合体樹脂の密度が上記範囲にあると、優れた機械的特性をシラン架橋樹脂成形体に付与でき、更には後述する鉱物性オイルがブリードアウトしにくく長期においてシラン架橋樹脂成形体の外観を保持できる。エチレン−αオレフィン共重合体樹脂の密度は、JIS K 6922−1に記載の方法によって、測定することができる。
また、高密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと記し、JIS K 7210に準拠して、温度190℃、加重21.18Nの条件で、測定した値をいう。)は、特に限定されないが、0.1〜10g/10分が好ましく、0.8〜5g/10分がより好ましい。MFRが小さすぎると、例えば、製造設備のモーター負荷が高くなって高速成形性に影響することがある。
高密度ポリエチレン系樹脂としては、例えば、「ハイゼックス」(商品名、プライムポリマー社製)、「ニポロンハード」(商品名、東ソー社製)、「ノバテック」(商品名、日本ポリエチレン社製)などを挙げることができる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体は、エチレン成分の含有量が1〜10質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。また、エチレン−プロピレンブロック共重合体は、エチレンやエチレン―プロピレンゴム(EPR)成分の含有量が5〜20質量%程度のものをいい、プロピレン成分の中にエチレンやEPR成分が独立して存在する海島構造であるものをいう。ポリプロピレン系樹脂として特に好ましいものは、外観の点で、エチレン―プロピレンランダム共重合体の樹脂である。エチレン成分含有量は、上記測定方法により、測定できる。
上記共重合体の水素添加物(以下、水添共重合体という場合がある)は、芳香族ビニル化合物に由来する構成成分を5〜70質量%、更には10〜60質量%含むものが好ましい。この含有量は、例えばクロロホルム溶液を用いた紫外線分光光度計にて、UV吸収スペクトルを測定することによって求められる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種又は2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種又は2種以上を選択でき、中でも、ブタジエン、イソプレン又はこれらの組み合せが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成された、二元又は三元の共重合体を使用することができる。
本発明に用いる鉱物性オイルは、芳香族環を有するオイル、ナフテン環を有するオイル及びパラフィン鎖を有するオイルの三者を含む混合油である。パラフィン系オイルとは、パラフィン鎖の炭素数(CP)が、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の全炭素数に対して例えば50%以上75%未満で、ナフテン鎖の炭素数(CN)が20以上40%未満、芳香族環(CA)の炭素数が3以上10%未満を占めるものをいう。ナフテン系オイルとは、上記全炭素数に対して、CNが40以上60%未満、CPが30%以上50%未満、かつCAが8%以上16%未満のもの、芳香族系オイルとはCAが16%以上のものを、いう。
鉱物性オイル(ゴム用軟化材)としては、パラフィン系オイル又はナフテン系オイルを用いることができ、機械的強度の点でパラフィン系オイルが好ましい。
鉱物性オイルは、40℃における動的粘度が20〜500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が180〜300℃を示すものが好ましい。
鉱物性オイルとしては、例えば、「ダイアナプロセスオイル」(商品名、出光興産社製)、「コスモニュートラル」(商品名、コスモ石油ルブリカンツ社製)等を挙げることができる。
本発明において、キャリア樹脂に含まれる上記樹脂成分の合計含有率は、特に限定されず、上記キャリア樹脂の含有率を満足する範囲で適宜に設定される。例えば、合計含有率は、キャリア樹脂中、60〜90質量%であることが好ましく、65〜85質量%であることがより好ましい。
例えば、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂の含有率は、キャリア樹脂中、20〜80質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。この含有率が多すぎると、ブツが発生しやすくなる。
エチレン−αオレフィン共重合体ゴムの含有率は、キャリア樹脂中、0〜80質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましい。
高密度ポリエチレン樹脂の含有率は、キャリア樹脂中、0〜80質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の含有率は、キャリア樹脂中、0〜80質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率は、キャリア樹脂中、10〜40質量%が好ましい。
シラノール縮合触媒(B)は、後述するシラングラフト樹脂中の、シランカップリング剤由来の加水分解性シリル基を水分の存在下でシラノール縮合反応(促進)させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、シラングラフト樹脂を形成する樹脂同士が架橋される。そのため、得られるシラン架橋樹脂成形体は耐熱性、必要により強度に優れる。
本発明に用いるシラノール縮合触媒としては、特に限定されず、例えば、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が挙げられる。
シラン架橋用触媒組成物中のシラノール縮合触媒の含有率を上記範囲となるように設定することにより、成形時にブツの発生を抑制できる。更には、水との接触(後述の工程(c))により上記シラノール反応(架橋反応)が速やかに進行してシラン架橋樹脂成形体に優れた耐熱性、必要により強度を付与することもできる。
シラン架橋用触媒組成物は、電線、電気ケーブル、電気コード、自動車用部材、OA機器、建築部材、雑貨、シート、発泡体、チューブ又はパイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を、目的とする効果を損なわない範囲で適宜含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、更には上記樹脂成分以外の樹脂等が挙げられる。
架橋助剤は、有機過酸化物の存在下において、後述するシラングラフト樹脂を形成するベース樹脂との間に部分架橋構造を形成する化合物をいう。例えば、多官能性化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又はイオウ酸化防止剤等が挙げられる。
滑剤としては、炭化水素、シロキサン、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル、アルコール、金属石けん等の各滑剤が挙げられる。
シラン架橋用触媒組成物は、キャリア樹脂と、シラノール縮合触媒と、更には必要に応じて各種添加剤とを加熱混合(混練)する。加熱温度は、キャリア樹脂の溶融温度以上に設定でき、例えば150〜230℃に設定することが好ましい。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
混合方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法を特に限定されることなく採用できる。混合装置としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種ニーダーなどが用いられる。
次に、本発明のシラン架橋用触媒組成物と好ましく併用されるシラングラフト樹脂について、説明する。
シラングラフト樹脂は、加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤とベース樹脂とから形成され、シランカップリング剤がベース樹脂にグラフト反応してなる樹脂である。
このシラングラフト樹脂において、シランカップリング剤のグラフト反応量は、特に限定されない。通常、後述する配合量でシランカップリング剤とベース樹脂とを反応させて得られるグラフト反応量であればよい。
ベース樹脂は、シランカップリング剤のグラフト化反応部位と有機過酸化物の存在下でグラフト化反応可能な部位、例えば炭素鎖の不飽和結合部位、水素原子を有する炭素原子を主鎖中若しくはその末端に有する重合体の樹脂が挙げられる。このようなベース樹脂として、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる重合体からなる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来、樹脂組成物に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、上記キャリア樹脂に用いる上述の各樹脂成分の他に、ポリエチレン、酸共重合成分若しくは酸エステル共重合成分を有するエチレン系共重合体等の各樹脂、又は、これらのゴム若しくはエラストマー等が挙げられる。また、これらの樹脂を不飽和カルボン酸で変性した酸変性樹脂も挙げられる。酸共重合成分若しくは酸エステル共重合成分を有するエチレン系共重合体の樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
ベース樹脂は、上述の鉱物性オイルを含有していてもよい。
シラングラフト樹脂を形成するシランカップリング剤としては、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で上記ベース樹脂のグラフト化反応可能な部位にグラフト反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、シラノール縮合可能な加水分解性シリル基とを有するものであれば、特に限定されない。このようなシランカップリング剤として、従来、シラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。中でも、末端にビニル基とアルコキシシリル基を有するものが好ましい。このようなシランカップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン等が挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シラングラフト樹脂を形成するシランカップリング剤は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
市販品としては、リンクロン(商品名、三菱化学社製)等が挙げられる。
シラングラフト樹脂を合成する場合、有機過酸化物を用いることが好ましい。有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、シランカップリング剤のベース樹脂へのラジカル反応によるグラフト反応を生起させる働きをする。有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に限定されず、例えば、一般式:R1−OO−R2、R3−OO−C(=O)R4、R5C(=O)−OO(C=O)R6で表される化合物が好ましい。ここで、R1〜R6は各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR1〜R6のうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
本発明においては、シラングラフト樹脂は、単独で用いても、また、後述する各成分との組成物として用いてもよい。シラングラフト樹脂を含む組成物をシラン架橋性樹脂組成物(シランMB)という。
シラン架橋性樹脂組成物に含有される各成分としては、特に限定されないが、無機フィラー、上記各種添加剤等が挙げられる。また、シラングラフト反応をさせる有機過酸化物の分解物を含有していてもよい。
シラン架橋性樹脂組成物に用いる無機フィラーとしては、通常用いられるものであれば特に限定されないが、その表面に、シランカップリング剤の加水分解性シリル基と水素結合若しくは共有結合等又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものが好ましい。加水分解性シリル基と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
このような無機フィラーをシラングラフト反応時に用いると、無機フィラーと弱く結合したシランカップリング剤がグラフト反応したシラングラフト樹脂と、無機フィラーと強く結合したシランカップリング剤がグラフト反応したシラングラフト樹脂とを形成することができる。このような2種のシラングラフト樹脂を架橋反応することにより、耐熱性と強度等とを兼ね備えたシラン架橋樹脂成形体を形成できる。
ここで、無機フィラーとの弱い結合としては、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が挙げられる。また、無機フィラーとの強い結合としては、無機フィラー表面の化学結合しうる部位との化学結合等が挙げられる。
無機フィラーは、各種表面処理剤で表面処理されたものを用いることもできる。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明のシラン架橋樹脂成形体調製用キットは、シラングラフト樹脂と、上述の、本発明のシラン架橋用触媒組成物とを組み合わせてなる。
本発明のシラン架橋樹脂成形体調製用キットにおいて、シラングラフト樹脂は、単独で用いられても、他の成分との混合物、例えば上記シラン架橋性樹脂組成物として用いられてもよい。また、本発明のシラン架橋用触媒組成物は、1つの組成物として用いられても、キャリア樹脂(A)とシラノール縮合触媒(B)とを別々の形態で用いられてもよい。
このシラン架橋樹脂成形体調製用キットは、シラン架橋樹脂成形体の製造方法であれば、どのような製造方法に用いてもよい。好ましくは、後述するシラン架橋樹脂成形体の製造方法における工程(b)に用いられる。
本発明のシラン架橋樹脂成形体調製用キットにおいて、シラングラフト樹脂とシラン架橋用触媒組成物との混合割合は、特に限定されないが、後述する工程(b)で説明する混合割合が好ましい。
次に、本発明のシラン架橋用触媒組成物を用いたシラン架橋樹脂成形体の製造方法を説明する。
シラン架橋樹脂成形体の製法方法は、シラングラフト樹脂と本発明のシラン架橋用触媒組成物とを溶融混合した後に成形する工程(b)と、得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程(c)とを有する。
シラン架橋樹脂成形体の製法方法の一態様においては、シラングラフト樹脂として、無機フィラーを含有するシラン架橋性樹脂組成物を用いる。この一態様においては、工程(b)に先立ち、シラングラフト樹脂を無機フィラーの存在下で合成する工程(a)を有することが好ましい。すなわち、シラン架橋樹脂成形体の製法方法の好ましい一態様は、下記工程(a)〜(c)を有する。
工程(a):シラングラフト樹脂と工程(b)で混合予定のキャリア樹脂とを合計100質量部としたときに、ベース樹脂と、有機過酸化物0.003〜0.3質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、シランカップリング剤2質量部を越え15.0質量部以下とを、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(b):工程(a)で得られたシラン架橋性樹脂組成物と本発明のシラン架橋用触媒組成物とを溶融混合した後に成形する工程
工程(c):工程(b)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程
シランカップリング剤の配合量は、上記合計100質量部中、2.0質量部を超え15.0質量部以下であり、3〜12.0質量部が好ましく、4〜12.0質量部がより好ましい。シランカップリング剤の配合量を上記範囲内にすることにより、高い耐熱性と優れた外観をシラン架橋樹脂成形体に付与できる。
本発明においては、上記各成分を、下記工程(a−1)及び(a−2)により、溶融混合することが好ましい。
工程(a−1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた混合物とベース樹脂とを、有機過酸化物の存在下で、有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混合する工程
有機過酸化物は、工程(a−2)を行う際に存在していればよく、工程(a−1)で混合してもよく、工程(a−2)で混合してもよい。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの配合量に応じて適宜に選択される。混合装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。樹脂成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーを用いることが好ましい。
シラン架橋性樹脂組成物と本発明のシラン架橋用触媒組成物との混合方法は、特に限定されない。例えば、工程(a−2)の溶融混合と同様にして混合することができる。溶融温度は、ベース樹脂又はキャリア樹脂の溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃である。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。工程(b)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
ここで、シラン架橋性樹脂組成物を用いる場合、シラングラフト樹脂の量(質量部)は、シラン架橋性樹脂組成物中のベース樹脂とシランカップリング剤との合計量とする。
この成形工程は、混合物を成形できればよく、樹脂架橋成形体の形態に応じて、適宜の成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた押出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。
押出成形は、樹脂架橋成形体が配線材、特に電線又は光ファイバーケーブルである場合に、好ましく適用される。押出成形は、汎用の押出成形機を用いて、行うことができる。押出成形温度は、ベース樹脂ないしはキャリア樹脂の種類、押出速度(引取り速度)の諸条件にもよるが、シリンダー部を120〜150℃、クロスヘッド部(ダイス温度)を約160〜180℃程度に設定することが好ましい。
上記製法方法の好ましい一態様においては、押出成形を通常設定されるスクリュー回転数よりも低速に設定することもできる。低速のスクリュー回転数は細径化された配線材等を成形する際に有効である。例えば、スクリュー回転数としては、30rpm以下に設定することができ、好ましくは20rpm以下に設定する。
上述のようにして、シラン架橋性樹脂組成物と本発明のシラン架橋用触媒組成物とをドライブレンドして混合物を調製し、この混合物を成型機に導入して成形すると、架橋性樹脂成形体が得られる。
上記製法方法の好ましい一態様においては、一部の加水分解性シリル基は無機フィラーと結合又は吸着していてもよい。すなわち、架橋性樹脂成形体は、加水分解性シリル基で無機フィラーと結合又は吸着したシランカップリング剤がグラフトしたシラングラフト樹脂と、加水分解性シリル基が無機フィラーと結合又は吸着していないシランカップリング剤がグラフトしたシラングラフト樹脂とを含有する。
上記製法方法の好ましい一態様においては、架橋性樹脂成形体を水と接触させる(工程(c))。これにより、シランカップリング剤の加水分解性シリル基が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合して、架橋反応が起こる。
この工程(c)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。上記縮合反応は常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(c)において、架橋性樹脂成形体を水と積極的に接触させる必要はない。この縮合反応を促進させるために、架橋性樹脂成形体を水と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
シラン架橋樹脂成形体の一形態は、下記の樹脂を含有すると考えられる。無機フィラーから脱離してベース樹脂にグラフト反応したシランカップリング剤が架橋反応することにより、シランカップリング剤を介して結合(架橋)したベース樹脂を含有する。これに加えて、無機フィラーとの結合を保持した状態でベース樹脂にグラフト反応したシランカップリング剤は架橋反応しにくく、シランカップリング剤を介して無機フィラーと結合したベース樹脂を含有する。これらの樹脂を含有するシラン架橋樹脂成形体は、優れた外観に加えて、高い耐熱性及び強度をも有する。
シラン架橋樹脂成形体の製法方法の別の一態様においては、本発明のシラン架橋用触媒組成物とシラングラフト樹脂とを用いて、上記工程(b)及び工程(c)を行う。
別の一態様において、工程(b)及び工程(c)は、シラン架橋性樹脂組成物に代えてシラングラフト樹脂を用いること以外は、上述の一態様と同じである。
シラン架橋樹脂成形体の製法方法は、シラン架橋樹脂成形体からなる製品(半製品、部品、部材も含む。)の製造に適用することができる。この製品は、シラン架橋樹脂成形体を含む製品でもよく、シラン架橋樹脂成形体のみからなる製品でもよい。このような製品として、例えば、耐熱性電線、耐熱性ケーブル又は光ファイバーケーブル等の配線材の被覆材、ゴムモールド材(例えば、自動車用グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ゴムホース、ワイパーブレードゴム、防振ゴム)等が挙げられる。また、シラン架橋樹脂成形体は、従来、電子線照射による架橋又は化学加硫されたポリオレフィン材料、EPゴム材料の代替品として用いることができる。
本発明のシラン架橋用触媒組成物を用いて押出成形により配線材を製造する場合、好ましくは、本発明のシラン架橋用触媒組成物とシラングラフト樹脂(シランMB)とを混合した成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混合して導体等の外周に押し出す。用いる導体としては、単線でも撚線でもよく、また裸線でも錫メッキ若しくはエナメル被覆したものでもよい。導体を形成する金属材料としては軟銅、銅合金、アルミニウム等が挙げられる。導体の周りに形成される絶縁層の肉厚は特に限定しないが、通常、0.15〜5mm程度である。
本発明のシラン架橋用触媒組成物を用いると、細径化した電線であっても外観に優れたものを製造できる。本発明において、細径化した電線とは、近年の電気・電子機器等の小型化ないしは軽量化に求められる程度の外径を有するものであれば特に限定されない。例えば、外径が2mm未満、好ましくは1.5mm以下の電線が挙げられる。
また、本発明のシラン架橋用触媒組成物を用いると、射出成形であっても、ショートの発生を防止してシラン架橋樹脂成形体を、必要により連続して、成形することができる。
表1〜表3において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。また、各成分について空欄は対応する成分の配合量が0質量部であることを意味する。
(1)エチレン−αオレフィン共重合体樹脂:スミカセンCU5003(商品名、メタロセン触媒存在下で合成されたLLDPE、密度0.928g/cm3、住友化学社製)
(2)エチレン−αオレフィン共重合体ゴム:ノーデル3720P(商品名、EPDM、エチレン成分含有量70質量%、ダウ社製)
(3)高密度ポリエチレン:ハイゼックス5000H(商品名、密度0.958g/cm3、MFR0.10g/10分、プライムポリマー社製)
(4)ポリプロピレン系樹脂:PB222A(商品名、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン成分含有量2〜6質量%、MFR0.8g/10分、サンアロマー社製)
(5)スチレン系熱可塑性エラストマー:タフテックN504(商品名、SEBS、芳香族ビニル化合物に由来する構成成分の含有量32質量%、旭化成ケミカルズ社製)
(6)鉱物性オイル:ダイアナプロセスオイルPW90(商品名、パラフィン系オイル、40℃における動的粘度96cSt、流動点15℃、引火点(COC)250℃以上、出光興産社製)
(7)シラノール縮合触媒:アデカスタブOT−1(商品名、ジオクチルスズジラウレート、ADEKA社製)
(8)ヒンダードフェノール酸化防止剤:イルガノックス1010(商品名、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF社製)
(9)シラン架橋性LDPE:リンクロンXCF730N(商品名、三菱化学社製)
(10)シラン架橋性HDPE:リンクロンXHE740N(商品名、三菱化学社製)
(11)エチレン系共重合体(I):VF120S(商品名、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、宇部興産社製)
(12)エチレン系共重合体(II):NUC6510(商品名、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、NUC社製)
(13)無機フィラー:マグシーズFK621(商品名、水酸化マグネシウム、神島化学工業社製)
(14)シランカップリング剤:KBM1003(商品名、ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)
(15)有機過酸化物:パーヘキサ25B(商品名、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度179℃、日本油脂社製)
(16)プロピレン系ワックス:ビスコール660−P(商品名、三洋化成社製)
まず、表1〜表3の「触媒マスターバッチ」欄に示す各成分を、バンバリーミキサーを用いて、200℃で溶融混合した後、ペレット化して、触媒マスターバッチを得た。
次いで、表1〜表3の「シラングラフト樹脂又はシランマスターバッチ」欄に示すシラングラフト樹脂(シラン架橋性LDPE又はシラン架橋性HDPE)と、上記で調製した触媒マスターバッチとをドライブレンドした。このときの混合割合は、シラングラフト樹脂については「シラングラフト樹脂又はシランマスターバッチ」欄に示す混合割合とし、触媒マスターバッチについては、表1〜表3の「シラングラフト樹脂等に混合する触媒マスターバッチ」欄に示す質量割合(シラングラフト樹脂とキャリア樹脂との合計で100質量部となる。)とした。
表1〜表3の「シラングラフト樹脂等に混合する触媒マスターバッチ」欄に、シラングラフト樹脂に混合されるシラノール縮合触媒の、シラングラフト樹脂とキャリア樹脂(A)との合計100質量部に対する混合割合(各表において「シラノール縮合触媒の混合割合」と表記する。)と、シラングラフト樹脂に混合されるキャリア樹脂(A)の、シラングラフト樹脂とキャリア樹脂(A)との合計100質量%に対する混合割合(各表において「キャリア樹脂の混合割合」と表記する。)とを、示す。
次に、25mmφ押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=25)を、ダイス温度160℃、以下フィーダー側へ、C3=150℃、C2=140℃、C1=130℃の押出温度条件に設定した。この押出機に調製したドライブレンド物を投入して溶融混合し、裸軟銅線からなる0.8mmφの導体上に外径1.2mmφ、厚さ0.2mmとなるように押出被覆した。
得られた被覆導体を、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置して、被覆層を有する電線を製造した。
まず、表2及び表3の「触媒マスターバッチ」欄に示す各成分を、バンバリーミキサーを用いて、200℃で溶融混合した後、ペレット化して、触媒マスターバッチを得た。
次いで、シランMBを調製した。表2及び表3の「シラングラフト樹脂又はシランマスターバッチ」欄に記載の無機フィラーとシランカップリング剤とを、表2及び表3に示す質量割合で、東洋精機製10Lヘンシェルミキサーに投入し、室温(25℃)で1時間混合して、粉体混合物を得た。次に、調製した粉体混合物と、同欄に示す各成分(樹脂成分、鉱物性オイル及び有機過酸化物)とを、表2及び表3に示す質量割合で、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度(190℃)において10分溶融混合した。その後、材料排出温度190℃で排出し、シランMBを得た。
次に、調製したシランMBと、調製した触媒マスターバッチとを、表2及び表3に示す質量割合(実施例1で説明した混合割合と同じ。)で、ドライブレンドした。得られたドライブレンド物を用いて、実施例1と同様にして、電線を製造した。
押出成形において、押出機のスクリュー回転数を変化させて、各実施例及び各比較例の被覆導体をそれぞれ作製した。スクリュー回転数毎に得られた被覆導体の表面を観察して、その外観を評価した。
評価は、スクリュー回転数を10rpmに設定して作製した被覆導体の表面にブツを確認できず、良好な外観を有していた場合を「A」(高度なもの)とした。スクリュー回転数30rpmに設定して作製した被覆導体の表面が良好な外観を有していた場合を「B」(良好)とし、30rpmに設定して作製した被覆導体の表面にブツが確認できた場合を「D」(不合格)とした。
参考試験として、上記電線の製造において得た各ドライブレンド物を用いて、射出成形性を評価した。
射出成形機(L/D=20)を用いて、電線用端末キャップ(外径:20mmφ、内径:12mmφ、長さ:40mm)を製造し、成形性を評価した。ショートすることなくブツのない優れた外観の成形体を連続的に成形できた場合を「AA」(極めて高度なもの)、ショートはしないが成形体の外観に小さなブツが見られるものを「A」(高度なもの)、ショートはしないが、許容可能なサイズであるものの上記評価ランク「A」よりも大きなブツが成形体の外観に見られるものを「B」(良好なもの)、ショートしてしまうものを「D」(不良)とした。
参考試験として、各電線において、被覆層の加熱変形特性を測定した。この試験により、架橋反応の程度(シラン架橋樹脂成形体の耐熱性)を評価できる。
測定温度180℃で、各電線に対して2.45Nの負荷荷重をかけた。このときの変形率が15%未満のものを「AA」(極めて高度なもの)、15%以上25%未満のものを「A」(高度なもの)、25%以上50%未満を「B」(良好なもの)、50%以上のものを「D」(不合格)とした。
鉱物性オイルを含有しない触媒マスターバッチを用いた比較例1〜4の電線はシラン架橋樹脂成形体の外観に劣る。
これに対して、特定の樹脂成分と鉱物性オイルとを含有する触媒マスターバッチを用いた実施例1〜20は、いずれも、外観に優れた細径の電線を製造できる。このように、スクリュー回転数の低い製造条件においても、従来問題となっていたブツの発生が抑制され(成形性が改善され)、外観に優れた細径の電線を製造することができる。
また、この触媒マスターバッチを特定の割合でシラングラフト樹脂又はシランMBと組み合わせて用いた実施例1〜18の電線は細径であっても優れた外観と耐熱性とを兼ね備えている。このように、本発明の触媒マスターバッチをシラングラフト樹脂と特定の割合で併用すると、シラノール縮合触媒の使用量を低減しなくても、成形性を改善でき、しかもシラン架橋樹脂成形体に耐熱性を付与できる。更に、無機フィラーと予め混合されたシランカップリング剤をベース樹脂にグラフト反応させたシランMBを用いた実施例14〜17の電線は、細径であっても、外観、耐熱性をより高い水準で兼ね備えている。
Claims (9)
- 加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤がグラフト反応したシラングラフト樹脂の架橋に用いるシラン架橋用触媒組成物であって、
エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種の樹脂成分と、鉱物性オイルとを含有するキャリア樹脂(A)と、
シラノール縮合触媒(B)とを含有するシラン架橋用触媒組成物。 - 前記樹脂成分が、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種と、スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する請求項1に記載のシラン架橋用触媒組成物。
- 前記キャリア樹脂(A)中、前記樹脂成分の含有率が60〜90質量%であり、前記鉱物性オイルの含有率が10〜40質量%である請求項1又は2に記載のシラン架橋用触媒組成物。
- 前記樹脂成分中、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の含有率が20〜80質量%であり、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率が10〜40質量%である請求項2又は3に記載のシラン架橋用触媒組成物。 - 前記シラノール縮合触媒(B)の混合割合が、前記シラングラフト樹脂と前記キャリア樹脂(A)との合計100質量部に対して0.02〜0.5質量部に設定された請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物。
- 前記シラングラフト樹脂に対する前記キャリア樹脂(A)の混合割合が、前記シラングラフト樹脂と前記キャリア樹脂(A)との合計100質量%に対して2〜60質量%に設定された請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物。
- 前記シラングラフト樹脂に対する前記キャリア樹脂(A)の混合割合が、前記シラングラフト樹脂と前記キャリア樹脂(A)との合計100質量%に対して15〜40質量%に設定された請求項1〜6のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物。
- シラングラフト樹脂と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物とを組み合わせてなるシラン架橋樹脂成形体調製用キット。
- シラングラフト樹脂と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシラン架橋用触媒組成物とを溶融混合した後に成形する工程(b)と、工程(b)で得られた成形体を水と接触させて架橋する工程(c)とを有するシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
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