JP6200386B2 - 耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品 - Google Patents

耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品関する。
本発明は、特に、機械特性、難燃性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を電線の絶縁体やシース等として用いた耐熱性製品関する。
電気、電子機器の内部及び外部配線に使用される絶縁電線、ケーブル、コード及び光ファイバ心線、光ファイバコードには、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性)、耐摩耗性など種々の特性が要求されている。これらの配線材に使用される材料としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを多量に配合した樹脂組成物が用いられる。
また、電気、電子機器に使用される配線材は、長時間使用すると80〜105℃、さらには125℃位にまで昇温することがあり、これに対する耐熱性が要求される場合もある。このような場合、配線材に高耐熱性を付与することを目的として、被覆材料を電子線架橋法、化学架橋法等によって架橋する方法が採られている。
従来、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂を架橋する方法として、電子線を照射して橋架け(架橋ともいう)させる電子線架橋法、成形後に熱を加えることにより有機過酸化物等を分解させて架橋反応させる化学架橋法、シラン架橋法等が知られている。
シラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤をポリマーにグラフト反応させてシラングラフトポリマーを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させることにより架橋成形体を得る方法である。
これらの架橋法の中でも特にシラン架橋法は特殊な設備を要しないことが多いため、幅広い分野で使用することができる。
具体的には、ハロゲンフリーの耐熱性シラン架橋樹脂の製造方法は、ポリオレフィン樹脂に不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤をグラフトさせたシランマスターバッチと、ポリオレフィン樹脂及び無機フィラーを混練した耐熱性マスターバッチと、シラノール縮合触媒を含有した触媒マスターバッチとを溶融混合させる方法である。しかし、この方法ではポリオレフィン樹脂100質量部に対して無機フィラーが100質量部を超える場合、シランマスターバッチと耐熱性マスターバッチとを乾式混合した後に単軸押出機や二軸押出機内にて均一に溶融混練することが困難になる。このため、シランマスターバッチと耐熱性マスターバッチとを乾式混合の後に溶融混練を均一に行っても無機フィラーの割合が制限されてしまう。その結果、より高難燃化・高耐熱化することが困難であった。しかも、このような方法を用いて製造すると架橋樹脂とした場合に優れた強度や耐摩耗性、補強性を付与することが困難であった。
通常、このような無機フィラーが、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して100質量部を超える場合の混練には、連続混練機、加圧式ニーダーやバンバリーミキサー等の密閉型ミキサーを用いることが一般的である。
ところが、ニーダーやバンバリーミキサーでシラングラフトを行う場合には、不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤は一般に揮発性が高く、グラフト反応する前に揮発してしまうという問題がある。そのため所望のシラン架橋マスターバッチを作製することが、まず非常に困難であった。
そこで、バンバリーミキサーやニーダーにて、耐熱性シランマスターバッチを製造する場合、ポリオレフィン樹脂及び無機フィラーを溶融混合した耐熱性マスターバッチに、不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤と有機過酸化物を加え、単軸押出機にてグラフト重合させる方法が考えられる。しかし、この方法では、反応のばらつきによって成形体に外観不良が生じたり、耐熱性マスターバッチ中の無機フィラーの配合量を非常に多くしなければならず押出負荷が著しく大きくなったりするため、製造が非常に難しくなった。その結果、所望の材料や成形体を得ることができなかった。また2工程となり、製造コスト面でもこれが難点となっている。
特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂及び無水マレイン酸系樹脂を混合してなる樹脂成分にシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー、シランカップリング剤、有機過酸化物及び架橋触媒をニーダーにて十分に溶融混練した後に、単軸押出機にて成形する方法が提案されている。
また、特許文献2〜4にはブロック共重合体等をベース樹脂とし、軟化剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を加えたビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を、シラン表面処理された無機フィラーを介して有機過酸化物を用いて部分架橋する方法が提案されている。
特開2001−101928号公報 特開2000−143935号公報 特開2000−315424号公報 特開2001−240719号公報
しかし、特許文献1に記載された方法では、ニーダーでの溶融混練中に樹脂が一部架橋してしまい、成形体は外観不良(表面に突出した多数のツブ状物を形成)を引き起こすおそれがある。さらに、無機フィラーを表面処理したシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の大部分は、揮散するか又は縮合するおそれがある。これらにより、所望の耐熱性を得ることができないばかりか、シランカップリング剤同士の縮合が電線の外観悪化の要因となるおそれがある。
また、特許文献2〜4に記載された方法であっても、まだ、樹脂が十分な網状構造になっていない。加えて、樹脂と無機フィラーの結合が高温で外れるため、高温下では溶融し、例えば電線をハンダ加工中に絶縁材が熔けてしまったり、また成形体を2次加工する際に変形した、発泡を生じたりすることがあった。さらに、200℃程度に短時間加熱されると、外観が著しく劣化したり、変形したりすることがあった。
本発明は、加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑え、機械特性、難燃性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法で得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品を提供することを課題とする。
さらにまた、本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法に好適に用いられるシランカップリング剤混合無機フィラーを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記のような樹脂のシラン架橋法において、無機フィラーの表面積が耐熱性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性、外観及び機械特性の向上に重要であることを見出し、さらに検討を進めたところ、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法においてBET比表面積を特定の範囲に設定した無機フィラーを特定量の加水分解性シランカップリング剤と混合すると、加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑えることができ、しかも、難燃性を損なうことなく、外観及び機械特性のいずれにも優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造できることを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m/g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、該無機フィラー(B)100質量部に対して、前記無機フィラー(B)と化学結合しうる基及びラジカルの存在下で前記樹脂(R)にグラフト反応しうる基を有する加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して混合物を得る工程(a)と、
前記混合物を成形する工程(b)と、
前記成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(c)とを有し、
前記工程(a)が、下記工程(1)及び工程(3)を有し、下記工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合にさらに下記工程(2)を有する、
工程(1):前記有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度で、前記有機過酸化物(
P)と前記無機フィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)とを混
合し、次いで、得られた混合物と前記樹脂(R)の全部又は一部とを前記有機過酸化
物(P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(2):前記樹脂(R)の残部と前記シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合し
て、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(3):前記シランマスターバッチと前記シラノール縮合触媒(C)又は前記触
媒マスターバッチとを混合する工程
ことを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<2>前記工程(1)が、前記有機過酸化物(P)の分解温度以下の温度で、前記無機フィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)と混合し、次いで、この混合物と前記有機過酸化物(P)を混合した後に、前記樹脂(R)の全部又は一部を有機過酸化物(P)の分解温度以上の温度で溶融混合する<1>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<3>前記無機フィラー(B)が、5μm以下の体積平均径を有する<1>又は<2>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<4>前記樹脂(R)が、前記工程(1)と前記工程(2)の両工程において混合される<1>〜<3>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<5>前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、金属水和物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<6>前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、水酸化マグネシウムである<1>〜<5>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<7>前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、炭酸カルシウムである<1>〜<>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<8>前記工程(1)が、密閉型のミキサーで行われる請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<9>樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m /g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、該無機フィラー(B)100質量部に対して、前記無機フィラー(B)と化学結合しうる基及びラジカルの存在下で前記樹脂(R)にグラフト反応しうる基を有する加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、混合物を得る工程(a)と、
前記混合物を成形する工程(b)と、
前記成形体を水と接触させて、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(c)と
を有し、
前記工程(a)が、下記工程(1)及び工程(3)を有し、下記工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合にさらに下記工程(2)を有し、
工程(1):前記樹脂(R)の全部又は一部と前記有機過酸化物(P)と前記無機フ
ィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)とを前記有機過酸化物(
P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(2):前記樹脂(R)の残部と前記シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合し
て、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(3):前記シランマスターバッチと前記シラノール縮合触媒(C)又は前記触
媒マスターバッチとを混合する工程
前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、炭酸カルシウムである
ことを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<10>前記炭酸カルシウムが、5μm以下の体積平均径を有する<9>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<11>前記樹脂(R)が、前記工程(1)と前記工程(2)の両工程において混合される<9>又は<10>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<12>前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、金属水和物である<9>〜<11>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<13>前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、水酸化マグネシウムである<9>〜<12>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<14>前記工程(a)が、密閉型のミキサーで行われる<9>〜<13>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<15>樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部とBET比表面積が14m/g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と該無機フィラー(B)100質量部に対して、前記無機フィラー(B)と化学結合しうる基及びラジカルの存在下で前記樹脂(R)にグラフト反応しうる基を有する加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部とシラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して混合物を得る工程(a)を有し、
前記工程(a)が、工程(1)及び工程(3)を有し、下記工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合にさらに下記工程(2)を有する、
工程(1):前記有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度で、前記有機過酸化物(
P)と前記無機フィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)とを混
合し、次いで、得られた混合物と前記樹脂(R)の全部又は一部とを前記有機過酸化
物(P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(2):前記樹脂(R)の残部と前記シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合し
て、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(3):前記シランマスターバッチと前記シラノール縮合触媒(C)又は前記触
媒マスターバッチとを混合する工程
ことを特徴とする耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
<16>上記<15>に記載の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物。
<17>上記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋樹脂成形体。
<18>上記<17>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む耐熱性製品。
<19>前記耐熱性シラン架橋樹脂成形体が、電線又は光ファイバケーブルの被覆として設けられている<18>に記載の耐熱性製品。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)とを混合すると、加水分解性シランカップリング剤(S)は揮発を抑える程度に、無機フィラー(B)に強く結合するか、又は、弱く結合する。そして、無機フィラー(B)が上述の範囲のBET比表面積を有していると、無機フィラー(B)と強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)と、弱く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)とがバランス良く形成される。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、無機フィラー(B)と強く結合する(その理由は、例えば、無機フィラー表面の水酸基等との化学結合の形成が考えられる)加水分解性シランカップリング剤は、これらの加水分解性シランカップリング剤同士が縮合反応することにより、樹脂(R)同士の架橋部位とともに、無機フィラー(B)を包含したまま、ネットワーク化する。これにより、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は非常に優れた機械特性を得ることが可能となる。
一方、無機フィラー(B)と弱く結合する(その理由は、例えば、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷もしくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が考えられる)加水分解性シランカップリング剤は、無機フィラー(B)から離脱し、有機過酸化物(P)が分解して発生するラジカルによってその架橋基が樹脂(R)の架橋部位にグラフト反応する。その後に加水分解性基が縮合反応する。これにより、樹脂(R)同士を架橋させることができる。したがって、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は優れた耐熱性を発揮することが可能となる。
このように、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、BET比表面積が14m/g以下の無機フィラー(B)を特定量の加水分解性シランカップリング剤に特定の工程で混合すると、混練り時の加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑えることができ、しかも、難燃性を損なうことなく、外観及び機械特性のいずれにも優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造できる。
したがって、本発明により、加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑え、機械特性、難燃性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、並びに、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供できる。また、本発明により、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法で得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品を提供できる。さらにまた、本発明により、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法に好適に用いられるシランカップリング剤混合無機フィラーを提供できる。
以下に、本発明及び本発明における好ましい実施の形態を詳細に説明する。
本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」は、樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m/g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、この無機フィラー(B)100質量部に対して加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して混合物を得る工程(a)と、混合物を成形する工程(b)と、成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(c)とを有している。そして、この工程(a)は、少なくとも工程(1)及び工程(3)からなり、工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合には下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)からなる。
工程(1):樹脂(R)の全部又は一部と有機過酸化物(P)と無機フィラー(B)
と加水分解性シランカップリング剤(S)とを有機過酸化物(P)の分解温度以上で
溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(2):樹脂(R)の残部とシラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、触媒
マスターバッチを調製する工程
工程(3):シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバ
ッチとを混合する工程
ここで、混合とは、均一な混合物を得ることをいう。
また、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法に用いる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法は、上述の、工程(a)を有し、上述の工程(b)及び工程(c)を必須の工程としない。
このように、本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」と本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」は、工程(b)及び工程(c)の有無以外は基本的に同様である。したがって、本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」及び本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」(両者の共通部分の説明においては、これらを併せて、本発明の製造方法ということがある。)を、併せて、以下に説明する。
まず、本発明において用いる各成分について説明する。
<樹脂(R)>
本発明の製造方法で用いる樹脂(R)としては、加水分解性シランカップリング剤(S)の架橋基と有機過酸化物(P)の存在下で架橋反応する架橋部位、例えば炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子を主鎖中又はその末端に有する樹脂であればよい。例えば、ポリオレフィン樹脂(PO)、ポリエステル樹脂(PE)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリオール樹脂等が挙げられる。その中でも、ポリオレフィン樹脂(PO)が好ましい。この樹脂(R)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン樹脂(PO)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来、耐熱性樹脂組成物に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン樹脂とのブロック共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体、及びこれらのゴム、エラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン−プロピレンゴム(例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等からなる樹脂が挙げられる。これらの中でも、金属水和物等をはじめとする各種フィラーに対する受容性が高く、無機フィラー(B)を多量に配合しても機械的強度を維持できる点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、エチレン−プロピレンゴム等の樹脂が好適である。これらのポリオレフィン樹脂(PO)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンは、エチレン成分を主成分とする樹脂であればよく、エチレンのみからなる単独重合体、エチレンと5mol%以下のα−オレフィレン(プロピレンを除く)との共重合体、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィンとの共重合体が包含される(例えば、JIS K 6748)。なお、上述のα−オレフィレン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いられる。
本発明に用い得るポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。なかでも、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。ポリエチレンは1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
ポリプロピレンは、プロピレン成分を主成分とする樹脂であればよく、プロピレンの単独重合体のほか、共重合体としてランダムポリプロピレン等のエチレン−プロピレン共重合体及びブロックポリプロピレンを包含する。
ここで、「ランダムポリプロピレン」は、プロピレンとエチレンとの共重合体であって、エチレン成分含有量が1〜5質量%のものをいう。
また、「ブロックポリプロピレン」は、ホモポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体とを含む組成物であって、エチレン成分含有量が5〜15質量%程度以下でエチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
ポリプロピレンは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(なお、上述のポリエチレン及びポリプロピレンに含まれるものを除く。)が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン構成成分の具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の各構成成分が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、好ましくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(ポリエチレン及びポリプロピレンに含まれるものを除く。)であり、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体(EPR、ただし、ポリプロピレンに含まれるものを除く。)、エチレン−ブチレン共重合体(EBR)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体における酸共重合成分又は酸エステル共重合成分としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル等の各構成成分が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキル構成成分のアルキル基は、炭素数1〜12のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基が挙げられる。酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体(ポリエチレンに含まれるものを除く。)としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。この中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、さらには無機フィラー(B)の受容性及び耐熱性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体が好ましい。酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
スチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体及びランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−(t−ブチル)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−(t−ブチル)スチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、これらの中でも、スチレンが好ましい。この芳香族ビニル化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、これらの中でも、ブタジエンが好ましい。この共役ジエン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。また、スチレン系エラストマーとして、同様な製法で、スチレン成分が含有されてなく、スチレン以外の芳香族ビニル化合物を含有するエラストマーを使用してもよい。
スチレン系エラストマーとして、具体的には、例えば、セプトン4077、セプトン4055、セプトン8105(いずれも商品名、クラレ社製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、6200P、8601P、9901P(いずれも商品名、JSR社製)等が挙げられる。
樹脂(R)は、所望により可塑剤又は軟化剤として使用される各種オイルとともに、用いることもできる。この場合、樹脂(R)の含有率は、耐熱性能、架橋性能及び強度の点で、樹脂(R)とオイルとの合計質量に対して、20質量%以上が好ましく、45%質量以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。樹脂(R)の含有率は、最多で100質量%であるが、例えば80質量%以下にすることもできる。
オイルの含有率は、樹脂(R)とオイルとの合計質量に対して、80質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。オイルの含有率は、最少で0質量%であるが、例えば20質量%以上にすることもできる。
なお、樹脂(R)は、オイルに加えて他の成分、例えば、後述する各種添加剤、溶媒、有機過酸化物(P)等を含有していてもよい。
オイルは、樹脂(R)の可塑剤又はゴムの鉱物油軟化剤としてのオイルが挙げられる。このような鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィンオイル、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテンオイル、芳香族炭素数が30%以上のものはアロマオイルと呼ばれて区別されている。これらの中でも、液状又は低分子量の合成軟化剤、パラフィンオイル、ナフテンオイルが好適に用いられ、特にパラフィンオイルが好適に用いられる。このようなオイルとして、例えば、ダイアナプロセスオイルPW90、PW380(いずれも商品名、出光興産社製)、コスモニュートラル500(コスモ石油社製)等が挙げられる。
<有機過酸化物(P)>
有機過酸化物(P)は、熱分解によりラジカルを発生して、加水分解性シランカップリング剤(S)の樹脂(R)へのグラフト化反応の促進させる働きをする。特に加水分解性シランカップリング剤(S)がエチレン性不飽和基を含む場合、エチレン性不飽和基と樹脂(R)とのラジカル反応(樹脂からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を促進させる働きをする。有機過酸化物(P)は、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はないが、例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R、RC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましく用いられる。ここで、R、R、R、R及びRは各々独立にアルキル基、アリール基、アシル基を表す。このうち、本発明においては、R、R、R、R及びRがいずれもアルキル基であるか、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物(P)の分解温度は、80〜195℃であるのが好ましく、125〜180℃であるのが特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物(P)の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物(P)を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
<無機フィラー(B)>
本発明の製造方法の工程(a)で用いる無機フィラー(B)は、BET比表面積(JIS Z 8830:2013)が14m/g以下の無機フィラーである。
無機フィラー(B)は、1種単独又は2種以上を使用することができる。また未処理無機フィラー及び表面処理無機フィラーそれぞれの少なくとも1種の混合物を使用することもできる。
無機フィラー(B)は、JIS Z 8830:2013によるBET比表面積が14m/g以下である。無機フィラー(B)のBET比表面積が14m/gを超えると、無機フィラー(B)に強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)の割合が大きくなって、樹脂(R)同士の架橋が起こりにくく、耐熱性が劣るものになることがある。耐熱性シラン架橋樹脂成形体がさらに高い耐熱性を発現する点で、BET比表面積は12m/g以下が好ましい。
無機フィラー(B)のBET比表面積は、特に限定されないが、1.0m/g以上が好ましく、1.5m/g以上がより好ましい。BET比表面積が1.0m/g以上であると、無機フィラー(B)に強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)の割合が多くなって、無機フィラー(B)を包含したネットワークが形成され、機械特性が向上する。また、無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)とを混合した状態が長期に及んでも、加水分解性シランカップリング剤(S)同士がシラノール縮合により凝集しにくく、また揮発もしにくくなる。これにより、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性及び外観の低下を防止できる。
無機フィラー(B)のBET比表面積は、JIS Z 8830:2013の「キャリアガス法」に準拠して、吸着質として窒素ガスを用いて、測定される値である。例えば、比表面積・細孔分布測定装置「フローソーブ」(島津製作所社製)を用いて測定することができる。
無機フィラー(B)は、体積平均径(MV)が5μm以下であるのが好ましく、0.05〜0.45μmであるのがより好ましい。無機フィラー(B)の体積平均径(MV)が5μm以下であると、シランカップリング剤(S)を介して無機フィラー(B)と樹脂(R)とが結合してなる耐熱性シラン架橋樹脂成形体の引張強度が高くなる。
無機フィラー(B)の体積平均径(MV)は、無機フィラー(B)をアルコールや水に分散させて、例えば、レーザ回折散乱式粒度測定機器「マイクロトラック」(日機装社製)を用いて、レーザ回折散乱式粒度分布測定により、測定される値である。
このような無機フィラー(B)は、上述のBET比表面積が14m/g以下であればよく、表面処理されていない未処理無機フィラー、シランカップリング剤又は脂肪酸等の表面処理剤で表面処理された表面処理無機フィラー等を含む。
未処理無機フィラーとしては、無機フィラーの表面に、加水分解性シランカップリング剤のシラノール基等の反応部位と水素結合等が形成できる部位もしくは共有結合による化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラーにおける、加水分解性シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水もしくは結晶水の水分子、カルボキシル基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
このような未処理無機フィラーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、アルミナ、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物のような金属水酸化物ないしは金属水和物、さらには、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等を使用することができる。
表面処理無機フィラーは、シランカップリング剤又は脂肪酸等の表面処理剤で表面処理された無機フィラーである。表面処理剤は、特に限定されないが、シランカップリング剤、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸等の脂肪酸、リン酸エステル、ポリエステル、チタネートカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤は、後述する加水分解性シランカップリング剤が挙げられる。脂肪酸は、特に限定されないが、炭素数10〜22の飽和脂肪酸及び炭素数10〜22の不飽和脂肪酸が挙げられる。具体的には、飽和脂肪酸として、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸が挙げられ、不飽和脂肪酸として、例えば、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸が挙げられ、表面処理量は表面処理剤の種類、所望の強度により適宜決めることができる。
無機フィラー(B)は、金属水和物(金属水酸化物等)、炭酸カルシウム、シリカ又はその表面処理物が好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム又はその表面処理物がより好ましい。
<加水分解性シランカップリング剤(S)>
加水分解性シランカップリング剤は、ラジカルの存在下で樹脂(R)にグラフト反応しうる基と、無機フィラー(B)と化学結合しうる基とを有するものであればよい。末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基と加水分解性とを含有する基を有しているものが好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基と加水分解性を含有する基とを有している加水分解性シランカップリング剤が好ましい。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等が挙げられる。また、これらの加水分解性シランカップリング剤と、その他の末端基を有する加水分解性シランカップリング剤を併用してもよい。
このような加水分解性シランカップリング剤としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0006200386
一般式(I)中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基もしくは水素原子又はY13である。Y11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(1)で表される加水分解性シランカップリング剤のRa11は、エチレン性不飽和基を含有する基が好ましく、エチレン性不飽和基を含有する基は、上述した通りであり、好ましくはビニル基である。
b11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13であり、脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられ、好ましくは後述のY13である。
11、Y12及びY13は、加水分解しうる有機基であり、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。加水分解しうる有機基としは、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシ等を挙げることができる。この中でも、加水分解性シランカップリング剤の反応性の点から、メトキシ又はエトキシがさらに好ましく、メトキシが特に好ましい。
上記加水分解性シランカップリング剤としては、好ましくは加水分解速度の速い加水分解性シランカップリング剤、より好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じである加水分解性シランカップリング剤であり、さらに好ましくは、Y11、Y12及びY13の少なくとも1つがメトキシ基である加水分解性シランカップリング剤であり、特に好ましくはすべてがメトキシ基である加水分解性シランカップリング剤である。
末端にビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基を有する加水分解性シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のオルガノシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらの加水分解性シランカップリング剤は単独又は2種以上併用してもよい。このような架橋性の加水分解性シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有する加水分解性シランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
末端にグリシジル基を有するものは、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
<シランカップリング剤混合無機フィラー(SF)>
本発明のシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)は、上述の、BET比表面積が14m/g以下である無機フィラー(B)100質量部と、上述のシランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部とを混合してなり、加水分解性シランカップリング剤(S)で無機フィラー(B)が表面処理されている。
本発明者らは、上述の範囲のBET比表面積を有する無機フィラー(B)とシランカップリング剤(S)とを特定の割合で混合すると、無機フィラー(B)と強く結合する加水分解性シランカップリング剤と、弱く結合する加水分解性シランカップリング剤との割合がバランス良くなり、混合後に長期間経過しても、本発明の目的とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体を効果的に製造できることを見出した。
したがって、このシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)は、後述するように、高い安定性を有し、長期保存しても、その性能を維持できる。このシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)は、シラノール同士の縮合も含めたシラン架橋法に好適に用いられ、その安定性及び反応性等を利用してシラン架橋法以外にも用いることができる。
このシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)は、例えば、本発明の製造方法の工程(1)で調製される。無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)との混合方法は後述する。
<シラノール縮合触媒(C)>
シラノール縮合触媒(C)は、樹脂(R)にグラフト化された加水分解性シランカップリング剤(S)を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒(C)の働きに基づき、加水分解性シランカップリング剤(S)を介して、樹脂(R)同士が架橋されると、耐熱性に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体が得られる。
シラノール縮合触媒(C)としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が用いられる。一般的なシラノール縮合触媒(C)としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。これらの中でも、特に好ましくは、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物である。
シラノール縮合触媒(C)は、所望により樹脂に混合される。このような樹脂(キャリア樹脂ともいう)としては、特に限定されず、例えば、樹脂(R)と同様の樹脂が挙げられる。キャリア樹脂は、シラノール縮合触媒(C)と親和性がよく耐熱性にも優れる点で、ポリオレフィン樹脂が好ましく、なかでも、ポリエチレン(PE)からなる樹脂が特に好ましい。
<添加剤>
耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、電線、電気ケーブル、電気コード、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、充填剤、他の樹脂等が本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合されていてもよい。これらの添加剤、特に酸化防止剤や金属不活性剤は、いずれの成分に含有されてもよいが、キャリア樹脂に加えた方がよい。架橋助剤は実質的に含有していないことが好ましい。特に架橋助剤はシランマスターバッチを調製する工程(1)において実質的に混合されないのが好ましい。架橋助剤が実質的に混合されないと、混練り中に樹脂(R)同士の架橋が生じにくく、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の外観及び耐熱性に優れる。ここで、実質的に含有しない又は混合されないとは、架橋助剤を積極的に添加又は混合しないことを意味し、不可避的に含有又は混合されることを除外するものではない。
架橋助剤は、有機過酸化物の存在下において樹脂(R)との間に部分架橋構造を形成する化合物をいい、例えばポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のメタクリレート化合物、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物、マレイミド化合物、ジビニル化合物等の多官能性化合物を挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のアミン酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等のイオウ酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、樹脂(R)100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部で加えることができる。
滑剤としては、炭化水素、シロキサン、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル、アルコール、金属石けん等の各滑剤が挙げられる。これらの滑剤はキャリア樹脂(E)に加えた方がよい。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。
充填剤(難燃(助)剤を含む。)としては、上述の各種フィラー以外の充填剤が挙げられる。
次に、本発明の製造方法を具体的に説明する。
本発明の製造方法において、工程(a)は、樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m/g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、この無機フィラー(B)100質量部に対して加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、混合物を得る工程である。
有機過酸化物(P)の混合量は、樹脂(R)100質量部に対して、0.01〜0.6質量部であり、0.1〜0.5質量部が好ましい。有機過酸化物(P)の混合量が0.01質量部未満では、架橋時に架橋反応が進行せずに全く架橋反応が進まなかったり、遊離した加水分解性シランカップリング剤(S)同士が結合してしまったりして耐熱性や機械的強度、耐摩耗性、補強性を十分に得ることができない場合がある。一方、0.6質量部を超えると、加水分解性シランカップリング剤(S)が揮発しやすくなって、副反応によって樹脂(R)同士が多く直接的に架橋してしまいブツが生じるおそれがある。
無機フィラー(B)の混合量は、樹脂(R)100質量部に対して、10〜400質量部であり、30〜280質量部が好ましい。無機フィラー(B)の混合量が10質量部未満の場合は、加水分解性シランカップリング剤(S)のグラフト反応が不均一となり、所望の耐熱性が得られず、又は、不均一な反応により外観が低下するおそれがある。一方、400質量部を超えると、成型時や混練時の負荷が非常に大きくなり、2次成形が難しくなるおそれがある。
加水分解性シランカップリング剤(S)の混合量は、無機フィラー(B)100質量部に対して、0.5〜15.0質量部であり、1.0〜14.0質量部が好ましく、2.0〜13.0質量部がより好ましい。加水分解性シランカップリング剤(S)の混合量が0.5質量部未満の場合は、架橋反応が十分に進行せず、優れた耐燃性を発揮しないことがある。一方、15質量部を超えると、加水分解性シランカップリング剤(S)同士が縮合して架橋ゲルのブツ又は焼けが生じ外観が悪くなるおそれがある。また成形できない場合もある。
本発明の製造方法において、工程(a)は、樹脂(R)について、「樹脂(R)の全量、すなわち100質量部が配合される態様」と、「樹脂(R)の一部が配合される態様」とを含む。したがって、本発明の製造方法においては、工程(a)で得られる混合物に100質量部の樹脂(R)が含有されていればよく、樹脂(R)はその全量が後述する工程(1)で混合されてもよく、またその一部が後述する工程(2)でキャリア樹脂として混合、すなわち樹脂(R)が工程(1)と工程(2)の両工程において混合されてもよい。なお、樹脂(R)の一部を工程(2)で配合する場合には、工程(a)における樹脂(R)の混合量100質量部は工程(1)及び工程(2)で混合される樹脂(R)の合計量である。ここで、工程(2)で樹脂(R)が配合される場合、樹脂(R)は、工程(1)において好ましくは80〜99質量部、より好ましくは94〜98質量部が混合され、工程(2)において好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜6質量部が混合される。
この工程(a)は、工程(1)と工程(3)とを有し、特定の場合に工程(2)をさらに有する。工程(a)がこれらの工程を有していると、各成分を均一に溶融混合でき、所期の効果を得ることができる。
工程(1):樹脂(R)の全部又は一部と有機過酸化物(P)と無機フィラー(B)
と加水分解性シランカップリング剤(S)とを有機過酸化物(P)の分解温度以上で
溶融混合してシランマスターバッチを調製する工程
工程(2):樹脂(R)の残部とシラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、触媒
マスターバッチを調製する工程
工程(3):シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバ
ッチとを混合する工程
工程(1)において、樹脂(R)と有機過酸化物(P)と無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)とを混合機に投入し、有機過酸化物(P)の分解温度以上に加熱しながら溶融混練して、シランマスターバッチを調製する。
工程(1)において、上述の成分を溶融混合する混練温度は、有機過酸化物(P)の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物(P)の分解温度+(25〜110)℃である。この分解温度は樹脂(R)が溶融してから設定することが好ましい。また、混練時間等の混練条件も適宜設定することができる。有機過酸化物(P)の分解温度未満で混練りすると、シランカップリング剤のシラングラフト反応、シランカップリング剤混合無機フィラーと樹脂(R)との結合、シランカップリング剤混合無機フィラー間の結合が起こらず、所望の耐熱性を得ることができないばかりか、押出中に有機過酸化物(P)が反応してしまい、所望の形状に成形できない場合がある。
混練方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば満足に使用でき、混練装置は例えば無機フィラー(B)の混合量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられ、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが樹脂(R)の分散性及び架橋反応の安定性の面で好ましい。
また、通常、このような無機フィラー(B)が樹脂(R)100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーでの混練りが一般的である。
工程(1)において、混合方法は特に限定されない。例えば、上述の成分を一度に溶融混合することができる。好ましくは、バンバリーミキサーやニーダー等のミキサー型混練機を用い、有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度で有機過酸化物(P)と無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)をミキサー内で混合、分散させた後に、この混合物と樹脂(R)とを溶融混合させる。このようにすると、樹脂(R)同士の過剰な架橋反応を防止することができ、外観に優れる。さらに好ましくは、局所的な架橋反応によるブツの発生を防止できる点で、有機過酸化物(P)の分解温度以下の温度で、無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)と混合し、次いでこの混合物と有機過酸化物(P)を混合した後に、樹脂(R)を有機過酸化物(P)の分解温度以上の温度で溶融混合する。この混合方法により、シランカップリング剤混合無機フィラー(SF)が予め調製される。
無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)と所望により有機過酸化物(P)は、有機過酸化物(P)の分解温度未満、好ましくは室温(25℃)で、混合されるのが好ましい。無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)と所望により有機過酸化物(P)との混合は、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。
無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)とを混合する方法としては、アルコールや水中で加水分解性シランカップリング剤(S)と無機フィラー(B)を混合させる湿式処理、無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)とをブレンドする乾式処理、及び、その両方が挙げられる。
湿式処理は、例えば、無機フィラー(B)を水等の溶媒に均一に分散させ、この中に加水分解性シランカップリング剤(S)を添加し、十分混合した後にスラリー状の混合物を乾燥する。また、乾式処理は、例えば、無機フィラー(B)を例えばリボンブレンダーに投入し、そこに加水分解性シランカップリング剤(S)を加えて撹拌する。これら湿式処理及び乾式処理における条件は特に限定されず、適宜選択される。このようにして、無機フィラー(B)と加水分解性シランカップリング剤(S)とを混合すると、加水分解性シランカップリング剤(S)と強く結合してなる無機フィラー(B)と、加水分解性シランカップリング剤(S)と弱く結合してなる無機フィラー(B)とを含むシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)が得られる。
本発明のシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)において、無機フィラー(B)と強く結合する加水分解性シランカップリング剤と無機フィラー(B)と弱く結合する加水分解性シランカップリング剤とは、後述するように、異なる挙動を示す。したがって、これら加水分解性シランカップリング剤の割合によって得られる効果が相違する。例えば、本発明のシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)をシラン架橋法のフィラーとして用いる場合には、無機フィラー(B)と弱く結合する加水分解性シランカップリング剤は樹脂(R)同士の架橋に寄与し、無機フィラー(B)と強く結合する加水分解性シランカップリング剤は加水分解性シランカップリング剤同士の縮合も含み、シランカップリング剤混合無機フィラー(SF)と樹脂(R)との結合等に寄与する。
このように、本発明のシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)において、無機フィラーのBET比表面積が14m/g以下であると、無機フィラー(B)に強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)の割合が適切になり、難燃性を損なうことなく、耐熱性、外観及び機械特性のいずれにも優れる。また、無機フィラー(B)に弱く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)のシラノール縮合及び揮発を防止でき、本発明のシランカップリング剤混合無機フィラー(SF)を長期保管しても、難燃性、外観及び機械特性のいずれにも優れる耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造できる。
このようにして工程(1)を実施して、シランマスターバッチが調製される。
工程(1)で調製されるシランマスターバッチは、有機過酸化物(P)の分解物と、樹脂(R)、無機フィラー(B)及び加水分解性シランカップリング剤(S)の反応混合物であり、後述の工程(b)により成形可能な程度に加水分解性シランカップリング剤が樹脂(R)にグラフトしたシラン架橋性樹脂を含有している。
このシランマスターバッチは、加水分解性シランカップリング剤(S)が樹脂(R)にグラフト反応したシラン架橋性樹脂を含有している。
本発明の製造方法において、次いで、工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合には、樹脂(R)の残部とシラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程(2)を行う。したがって、工程(1)で樹脂(R)の全部を溶融混合する場合は、工程(2)を行わなくてもよく、また後述する他の樹脂を用いてもよい。
シラノール縮合触媒(C)の混合量は、工程(a)で混合する樹脂(R)100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。シラノール縮合触媒(C)の混合量が上述の範囲内にあると、加水分解性シランカップリング剤(S)の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性、外観及び物性に優れ、生産性も向上する。
樹脂(R)は、キャリア樹脂としてシラノール縮合触媒(C)に混合され、好ましくは、工程(1)で混合した樹脂(R)の残部を用いる。樹脂(R)の残部(混合量)は上述した通りである。
シラノール縮合触媒(C)は、樹脂(R)の残部に代えて、又は、加えて、他のキャリア樹脂が混合されてもよい。すなわち、工程(2)は、工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合の樹脂(R)の残部、又は、工程(1)で用いた樹脂(R)以外の樹脂と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する。樹脂(R)以外の樹脂、すなわち他のキャリア樹脂としては、特に限定されず、種々の樹脂を用いることができる。
キャリア樹脂が樹脂(R)以外の樹脂である場合は、工程(b)においてシラン架橋を早く促進させることができるうえ、成形中にゲル化ブツが生じにくい点で、樹脂(R)100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは2〜40質量部である。
また、このキャリア樹脂にはフィラーを加えてもよいし、加えなくてもよい。その際のフィラーの量は、特には限定しないが、キャリア樹脂100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。あまりフィラー量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋が進行しにくくなるためである。一方、キャリア樹脂が多すぎると、成形体の架橋度が低下してしまい、適正な耐熱性が得られないおそれがある。
工程(2)で調製される触媒マスターバッチは、シラノール縮合触媒(C)及びキャリア樹脂、所望により添加されるフィラーの混合物である。
本発明の製造方法において、次いで、シランマスターバッチと、シラノール縮合触媒(C)又は工程(2)で調製した触媒マスターバッチとを混合して、混合物を得る工程(3)を行う。
混合方法は、均一な混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。例えば、ドライブレンド等のペレット同士を常温又は高温で混ぜ合わせて成形機に導入してもよいし、混ぜ合わせた後に溶融混合、再度ペレット化をして成形機に導入してもよい。
いずれの混合においても、シラノール縮合反応を避けるため、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバッチが混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。得られる混合物について、少なくとも工程(b)での成形における成形性が保持された混合物とする。
シラノール縮合触媒(C)を単独でシランマスターバッチに混合する場合には、混合条件は樹脂(R)に応じて適宜の溶融混合条件に設定される。
シラノール縮合触媒(C)を含む触媒マスターバッチをシランマスターバッチと混合する場合、シラノール縮合触媒(C)の分散の点で、溶融混合が好ましく、工程(1)の溶融混合と基本的に同様である。なお、DSC等で融点が測定不可できない樹脂(R)、例えばエラストマーもあるが、少なくとも樹脂(R)が溶融する温度で混練する。溶融温度は、樹脂(R)の溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃である。なお、混練時間等の混練条件は適宜設定することができる。
この工程(3)は、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程であればよく、シラノール縮合触媒(C)及びキャリア樹脂を含有する触媒マスターバッチとシランマスターバッチとを溶融混合する工程であるのが好ましい。
このようにして、本発明の工程(a)、すなわち本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法が実施され、少なくとも2種の架橋方法の異なるシラン架橋性樹脂を含有する耐熱性シラン架橋性樹脂組成物が製造される。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は工程(a)を実施することによって得られる組成物であって、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバッチとの混和物と考えられる。その成分は、基本的には、シランマスターバッチ及びシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバッチと同じである。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法は、次いで、工程(b)及び工程(c)を行う。すなわち、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、得られた混合物、つまり本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を成形して成形体を得る工程(b)を行う。この工程(b)は、混合物を成形できればよく、本発明の耐熱性製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。例えば、本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバケーブルである場合には、押出成形等が選択される。
工程(b)は、工程(a)の工程(3)と同時に又は連続して実施することができる。例えば、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバッチとを被覆装置内で溶融混練し、次いで例えば押出し電線やファイバに被覆して所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
このようにして、本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物が成形され、工程(a)及び工程(b)で得られる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の成形体は未架橋体である。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、工程(a)及び工程(b)の後に、下記工程(c)を実施することによって架橋もしくは最終架橋された成形体とするものである。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法においては、工程(b)で得られた成形体(未架橋体)を水と接触させて加水分解性シランカップリング剤の加水分解性の基を加水分解してシラノールとし、樹脂中に存在するシラノール縮合触媒(C)により、シラノールの水酸基同士が縮合して架橋反応が起こる。これにより、架橋した成形体からなる耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(c)を実施する。この工程(c)の処理自体は通常の方法によって行うことができる。成形物に水分を接触させることで、加水分解性シランカップリング剤の加水分解しうる基が加水分解し、加水分解性シランカップリング剤同士が縮合し、架橋構造を形成する。
加水分解性シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(c)において、成形体(未架橋体)を水に積極的に接触させる必要はない。架橋を加速させるために、水分と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
このようにして、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法が実施され、本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物から耐熱性シラン架橋樹脂成形体が製造される。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、工程(a)、工程(b)及び工程(c)を実施することによって得られる成形体である。
本発明の製造方法について、反応機構の詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。
すなわち、樹脂(R)が、有機過酸化物(P)成分の存在下、無機フィラー(B)及び加水分解性シランカップリング剤(S)とともに、有機過酸化物(P)の分解温度以上で加熱混練されると、有機過酸化物(P)が分解してラジカルを発生し、樹脂(R)に対して、加水分解性シランカップリング剤(S)によりグラフト化が起こる。また、このとき、部分的には、加熱により、加水分解性シランカップリング剤(S)と無機フィラー(B)の表面での水酸基等の基との共有結合による化学結合の形成反応も促進される。
本発明では、工程(c)で、最終的な架橋反応を行うこともあり、樹脂(R)に加水分解性シランカップリング剤(S)を上述のように特定量配合すると、成形時の押し出し加工性を損なうことなく無機フィラー(B)を多量に配合することが可能になり、優れた難燃性を確保しながらも耐熱性及び機械特性等を併せ持つことができる。
また、本発明の上記プロセスの作用のメカニズムはまだ定かではないが次のように推定される。すなわち、樹脂(R)と混練り前及び/又は混練り時に、無機フィラー(B)及び加水分解性シランカップリング剤(S)を用いることにより、混練り時の加水分解性シランカップリング剤(S)の揮発を抑えるとともに、無機フィラー(B)に対して強い結合で結びつく加水分解性シランカップリング剤と弱い結合で結びつく加水分解性シランカップリング剤を形成できる。
このように、加水分解性シランカップリング剤(S)が結合した無機フィラー(B)を有機過酸化物(P)の存在下で樹脂(R)とともに有機過酸化物(P)の分解温度以上で混練りすると、加水分解性シランカップリング剤(S)のうち無機フィラー(B)と強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤は、その架橋基であるエチレン性不飽和基等が樹脂(R)の架橋部位にグラフト反応する。特に、1つの無機フィラー(B)粒子の表面に複数の加水分解性シランカップリング剤(S)が強い結合を介して結合した場合、この無機フィラー(B)粒子を介して樹脂(R)が複数結合することになる。このように、無機フィラー(B)での架橋ネットワークが広がる。
なお、上記の無機フィラー(B)と強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤(S)は、このシラノール縮合触媒(C)による水存在下での縮合反応で、無機フィラー(B)の表面の水酸基と共有結合により化学結合した加水分解性シランカップリング剤同士も縮合反応して、さらに架橋のネットワークが広がる。
一方、加水分解性シランカップリング剤(S)のうち無機フィラー(B)と弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤は、無機フィラー(B)の表面から離脱して、加水分解性シランカップリング剤(S)の架橋基であるエチレン性不飽和基等が、樹脂(R)の有機過酸化物(P)の分解で生じたラジカルによる水素ラジカル引き抜きで生じた樹脂ラジカルと反応してグラフト反応が起こる。このようにして生じたグラフト部分の加水分解性シランカップリング剤(S)は、その後シラノール縮合触媒(C)と混合され、水分と接触することにより、縮合反応により架橋反応が生じる。
特に、本発明では、この工程(c)における、水存在下でのシラノール縮合触媒(C)を使用した縮合による架橋反応を成形体を形成した後に行うことにより、従来の最終架橋反応後に成形体を形成する方法と比較して、成形体形成までの工程での作業性に優れる。さらに、1つの無機フィラー(B)粒子表面に複数の加水分解性シランカップリング剤(S)を複数結合でき、従来以上に高い耐熱性を得ることが可能となるとともに、高い機械強度を得ることができる。
このように、無機フィラー(B)に対して強い結合で結合した加水分解性シランカップリング剤(S)は高い機械特性に寄与し、また無機フィラー(B)に対して弱い結合で結合した加水分解性シランカップリング剤(S)は架橋度の向上、すなわち耐熱性の向上に寄与すると考えられる。
本発明において、BET比表面積の大きな無機フィラー(B)を用いると、無機フィラー(B)に強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)の割合が大きくなって、樹脂(R)同士の架橋が起こりにくくなる。一方、BET比表面積の小さな無機フィラー(B)を用いると、無機フィラー(B)に強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)の割合が小さくなって、機械特性が低下する場合がある。
このように、本発明において、無機フィラー(B)と弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤を多く生じさせると高い架橋度の成形体を得ることができ、また弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤を少なく制御することにより、架橋度が下がり、柔軟性の高い成形体を得ることが可能となる。
本発明においては、無機フィラー(B)が上述の範囲のBET比表面積を有しており、無機フィラー(B)に強く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)と弱く結合する加水分解性シランカップリング剤(S)とが、耐熱性と機械特性等とが両立可能な範囲に、バラン良く形成される。したがって、加水分解性シランカップリング剤の揮発が抑えられ、機械特性、耐熱性、難燃性及び外観に優れた成形体を得ることができる。
また、無機フィラー(B)に対する加水分解性シランカップリング剤(S)の混合割合を多くすると、無機フィラー(B)と強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤(S)が多く形成される。したがって、加水分解性シランカップリング剤をあまり多く混合すると、成形体の架橋密度が上がりにくくなる。
一方、予め大量の加水分解性シランカップリング剤で処理されているフィラーに対して加水分解性シランカップリング剤を混合すると、後に混合された加水分解性シランカップリング剤が予めコーティングされている加水分解性シランカップリング剤と結合してしまうため、フィラーに対して弱い結合で結びつく加水分解性シランカップリング剤を形成できなくなる。したがって予め大量の加水分解性シランカップリング剤で処理されているフィラーに対して加水分解性シランカップリング剤を混合すると、得られる樹脂組成物並びに成形体と架橋度は低下し、耐熱性を向上させることができない。
本発明の製造方法は、耐熱性が要求される製品(半製品、部品、部材も含む。)、強度が求められる製品、ゴム材料等の製品の構成部品又はその部材の製造に適用することができる。このような製品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線、耐熱難燃ケーブル被覆材料、ゴム代替電線・ケーブル材料、その他耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気、電子機器の内部及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ケーブルの製造に適用することができる。本発明の製造方法は、上述の製品の構成部品等の中でも、特に電線及び光ケーブルの絶縁体、シース等の製造に好適に適用され、これらの被覆として形成することができる。
絶縁体、シース等は、それらの形状に、押出し被覆装置内で溶融混練しながら被覆する等により成形することができる。このような絶縁体、シース等の成形品は、無機フィラーを大量に加えた高耐熱性の高温溶融しない架橋組成物を電子線架橋機等の特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添えもしくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚線等の任意のものを用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。導体の周りに形成される絶縁層(本発明の耐熱性樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが通常0.15〜8mm程度である。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表3〜表5において、各実施例及び比較例における数値は特に断らない限り質量部を表す。
実施例1〜28及び比較例1〜9は、表1〜表5に記載した各成分を用いて、それぞれの諸元又は製造条件等を変更して、それぞれ実施した。
なお、表1〜表5中に示す各化合物として下記のものを使用した。
<樹脂(R)>
樹脂R1:「UE320」(日本ポリエチレン社製のノバテックPE(商品名)、直鎖低密度ポリエチレン(PE)、密度0.92g/cm
樹脂R2:「エボリューSP0540」(商品名、プライムポリマー社製の直鎖状メタロセンポリエチレン(LLDPE)、密度0.9g/cm
樹脂R3:「EV460」(商品名、三井・デュポンケミカル社製のエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(VA含有量14質量%)、密度0.93g/cm
樹脂R4:「EV170」(商品名、三井・デュポンケミカル社製のエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(VA含有量33質量%)、密度0.96g/cm
樹脂R5:「NUC6510」(商品名、日本ユニカー社製のエチレンエチルアクリレート樹脂(EA含有量23質量%)、密度0.93g/cm
<加水分解性シランカップリング剤(S)>
「KBM1003」(商品名):信越化学工業社製のビニルトリメトキシシラン
<有機過酸化物(P)>
「Perkadox BC−FF」(商品名):化薬アクゾ社製のジ−α−クミルパーオキサイド(分解温度151℃)
<シラノール縮合触媒(C)>
「アデカスタブOT−1」(商品名):ADEKA社製のジオクチルスズラウリレート
<キャリア樹脂>
上述の「UE320」(商品名)
<無機フィラー(B)>
無機フィラー(B)として、表1に示す「無機フィラーB1〜B8及び1」を、次のようにして、準備した。
まず、表面未処理の合成水酸化マグネシウムをボールミルにて粉砕し、ふるいにて分級を行い、BET比表面積及び体積平均径を調整し、無機フィラーB1〜B3及び1を得た。
同様に、シランカップリング剤にて表1に示す処理量だけ事前に湿式処理されている合成水酸化マグネシウムを粉砕、分級を行い、無機フィラーB4〜B6を得た。
さらに、脂肪酸「オレイン酸」にて表1に示す処理量だけ事前に湿式処理されている合成水酸化マグネシウムを粉砕、分級を行い、無機フィラーB7を得た。
また、脂肪酸「ステアリン酸」にて表1に示す処理量だけ事前に湿式処理されている天然水酸化マグネシウムを粉砕、分級を行い、無機フィラーB8を得た。
無機フィラーB9として、水酸化アルミニウム「ハイジライト42H」(商品名、昭和電工社製)を用いた。
また、水酸化アルミニウム「ハイジライト42H」(商品名、昭和電工社製)とこの水酸化アルミニウムに対して1.0質量%のシランカップリング剤「KBM1003」とを混合して無機フィラーB10を合成した。
無機フィラーB11として、「ソフトン1200」(商品名、白石カルシウム社製、炭酸カルシウム)を用いた。
また、無機フィラーB12として、脂肪酸により2.0質量%の処理量で表面処理されている炭酸カルシウム「ホワイトンSB青」(商品名、白石カルシウム社製)を用いた。
無機フィラーB13として、「BF−300」(商品名、白石カルシウム社製、炭酸カルシウム)を用いた。
無機フィラー(B)以外の無機フィラーとして、以下のものを使用した。
無機フィラー2として、「アエロジル50」(シリカ、商品名、エボニックデグザ社製)
無機フィラー3として、「D−1000」(タルク、商品名、日本タルク社製)
無機フィラーB1〜B13及び無機フィラー1〜3それぞれのBET比表面積及び体積平均径を上述のようにして測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006200386
無機フィラーB4及びB5について、体積平均径の測定と同様にして、個数平均径(MN)、面積平均径(MA)、10%径、50%径(累積平均径)及び90%径をそれぞれ測定し、表2に示す。
Figure 0006200386
実施例及び比較例においては、樹脂(R)の100質量部のうち5質量部を触媒マスターバッチのキャリア樹脂として用いた。
(実施例1〜25及び比較例1〜9)
まず、表3及び表4に記載の無機フィラー(B1〜B13及び1〜3)と、この無機フィラー100質量部に対して表3及び表4の「シランカップリング剤」欄に示す質量割合(質量部)で加水分解性シランカップリング剤(S)「KBM1003」とを東洋精機製10Lリボンブレンダーに投入して混合し(これにより、シランカップリング剤混合無機フィラー(SF)が得られた)、次いで有機過酸化物(P)の分解温度以下の温度、具体的には室温(25℃)で、用いる樹脂(R)100質量部に対して表3及び表4の「有機過酸化物(P)」に示す質量割合(質量部)の有機過酸化物(P)を密閉型のリボンブレンダーに投入して、室温(25℃)で5分混合して混合物を得た。
次いで、得られた混合物と、表3及び表4に示す95質量部の樹脂(R)とを、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物(P)の分解温度以上の温度、具体的には180〜190℃で約12分混練り後、材料排出温度180℃〜190℃で排出し、シランマスターバッチを得た(工程(1))。得られたシランマスターバッチは、樹脂(R)に加水分解性シランカップリング剤(S)がグラフト反応した少なくとも2種のシラン架橋性樹脂を含有している。
一方、キャリア樹脂「UE320」5質量部と、シラノール縮合触媒(C)0.1質量部とを180〜190℃でバンバリーミキサーにて別途溶融混合し、材料排出温度180〜190℃で排出し、触媒マスターバッチを得た(工程(2))。
この触媒マスターバッチは、キャリア樹脂(E)及びシラノール縮合触媒(C)の混合物である。
次いで、シランマスターバッチと触媒マスターバッチを、表3及び表4に示す質量部、すなわち、シランマスターバッチの樹脂(R)が95質量部、触媒マスターバッチのキャリア樹脂が5質量部となる割合で、バンバリーミキサーによって180℃で溶融混合した(工程(3))。このようにして工程(a)を行い、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を調製した。
この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、シランマスターバッチと触媒マスターバッチとの混合物であって、上述の少なくとも2種のシラン架橋性樹脂を含有している。
次いで、この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を、L/D=24の40mm押出機(圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入し、1/0.8TA導体の外側に肉厚1mmで被覆し、外径2.8mmの電線を得た(工程(b))。
得られた電線を温度80℃湿度95%の雰囲気に24時間放置した(工程(c))。
このようにして、耐熱性シラン架橋樹脂成形体からなる被覆を有する電線を製造した。
(実施例26)
表5に示す各成分を同表に示す質量割合(質量部)で用いた以外は上記実施例1等と同様にして、シランマスターバッチ及び触媒マスターバッチをそれぞれ調製した(工程(1)及び工程(2))。
次いで、得られたシランマスターバッチ及び触媒マスターバッチを密閉型のリボンブレンダーに投入して、室温(25℃)で5分ドライドブレンドしてドライドブレンド物を得た。このとき、シランマスターバッチと触媒マスターバッチとの混合割合は、シランマスターバッチ中の樹脂(R)が95質量部で、触媒マスターバッチのキャリア樹脂が5質量部となる割合(表5参照)とした。次いで、このドライドブレンド物を、L/D=24の40mm押出機(圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に投入し、押出機スクリュー内にて溶融混合を行いながら1/0.8TA導体の外側に肉厚1mmで被覆し、外径2.8mmの電線を得た(工程(3)及び工程(b))。
得られた電線を温度80℃、湿度95%の雰囲気に24時間放置した(工程(c))。
このようにして、耐熱性シラン架橋樹脂成形体からなる被覆を有する電線を製造した。
(実施例27)
表5に示す各成分を同表に示す質量割合(質量部)で用いた以外は上記実施例1等と同様にして、導体の外周を耐熱性シラン架橋性樹脂組成物で被覆した電線(外径2.8mm)を得た(工程(a)及び工程(b))。
得られた電線を温度23℃、湿度50%の雰囲気に72時間放置した(工程(c))。
このようにして、耐熱性シラン架橋樹脂成形体からなる被覆を有する電線を製造した。
(実施例28)
表5に記載に示す各成分を同表に示す質量割合(質量部)で用いた以外は上記実施例1等と同様にして、シランマスターバッチを調製した(工程(1))。
一方、キャリア樹脂「UE320」5質量部と、シラノール縮合触媒(C)0.1質量部とを2軸押出機にて溶融混合し、触媒マスターバッチを得た(工程(2))。2軸押出機のスクリュー径は35mm、シリンダー温度を180〜190℃に設定した。得られた触媒マスターバッチは、キャリア樹脂(E)及びシラノール縮合触媒(C)の混合物である。
次いで、得られたシランマスターバッチ及び触媒マスターバッチをバンバリーミキサーによって180℃で溶融混合して混合物を得た(工程(3))。シランマスターバッチと触媒マスターバッチとの混合割合は、シランマスターバッチ中の樹脂(R)が95質量部で、触媒マスターバッチのキャリア樹脂が5質量部となる割合(表5参照)とした。このようにして工程(a)を行い、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を調製した。この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、シランマスターバッチと触媒マスターバッチとの混合物であって、上述の少なくとも2種のシラン架橋性樹脂を含有している。
次いで、この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を、L/D=24の40mm押出機(圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入し、1/0.8TA導体の外側に肉厚1mmで被覆し、外径2.8mmの電線を得た(工程(b))。
得られた電線を温度50℃の温水に10時間浸漬した状態に放置した(工程(c))。
このようにして、耐熱性シラン架橋樹脂成形体からなる被覆を有する電線を製造した。
上記実施例で得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、いずれも、上述のように、シラン架橋性樹脂が加水分解性シランカップリング剤の加水分解しうる基の縮合反応によって架橋した上述のシラン架橋樹脂を含有している。
製造した電線について下記評価をし、その結果を表3〜表5に示した。
<機械特性>
電線の機械特性として引張試験を行った。この引張試験は、JIS C 3005に準じて行った。電線から導体を抜き取った電線管状片を用いて、標線間25mm、引張速度200mm/分で行い、引張強度(単位:MPa)及び引張伸び(%)を測定した。
引張強度の評価は、引張強度が10MPa以上のものを「A」、6.5MPa以上10MPa未満のものを「B」、6.5MPa未満のものを「C」とし、「A」及び「B」を合格とした。
また、引張伸びが200%以上のものを「A」、125%以上200%以下のものを「B」、125%未満のものを「C」とし、「A」及び「B」を合格とした。
<耐熱性>
耐熱性はJIS C 3005に規定の「加熱変形試験」に準じて行った。なお、荷重は5N、加熱温度は160℃とした。変形率が40%以下のものを「A」(合格)、40%より大きいものを「B」とした。
<電線の押出外観特性>
電線の押出外観特性として押出外観試験を行った。押出外観は、電線を製造する際に押出外観を観察した。なお、25mm押出機にて線速10mで作製した際に外観が良好だったものを「A」、外観がやや悪かったものを「B」、外観が著しく悪かったものを「C」とし、「A」及び「B」を製品レベルとして合格とした。
<シランカップリング剤混合無機フィラー(SF)の長期保管性>
シランカップリング剤混合無機フィラー(SF)の長期保管性として、実施例及び比較例それぞれにおける工程(a)で調製した各シランカップリング剤混合無機フィラーを長期保管した後に、実施例及び比較例と同様にして、工程(a)、工程(b)及び工程(c)を行って電線を製造し、このときの電線の押出外観試験を行った。シランカップリング剤混合無機フィラーの保管は40℃で6ヶ月間とし、調製後にアルミニウム製の袋中に梱包した。また、上述の実施例及び比較例と同様にして、機械特性及び耐熱性を評価した。
評価基準は、25mm押出機にて線速10mで作製した際に外観が良好であり、かつ機械特性及び耐熱性の評価に変化がなかったものを「A」、外観が多少悪化したが、製品上問題がなかったものを「B」、外観が著しく悪かったもの、又は、機械特性及び耐熱性の少なくとも一方の評価が低下したものを「C」とし、「A」及び「B」を合格とした。
Figure 0006200386
Figure 0006200386
Figure 0006200386
表3〜表5の結果から明らかなように、実施例1〜28は、いずれも、機械特性、耐熱性及び押出外観のいずれも合格した。すなわち、実施例1〜28の電線の被覆として設けられた本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、機械特性、耐熱性及び外観のいずれにも優れていることが分かった。なお、難燃性は無機フィラー(B)の混合量から優れていることが容易に推定できる。
このように、本発明により、工程(1)において加水分解性シランカップリング剤をリボンブレンダーで溶融混合しても加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑えることができ、優れた、機械特性、難燃性及び外観を有する耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造できることが分かった。
一方、比較例1〜9は、機械特性、耐熱性及び外観の少なくともいずれか1つが劣り、これらすべてを満足させることができなかった。特に、比較例5は押出外観特性及び長期保管性において発泡し、外観に劣っていた。
また、本発明のシランカップリング剤混合無機フィラーは、調製後に40℃で6ヶ月間保管された後であっても、調製直後に用いた場合と比べて機械特性、耐熱性及び外観に変化がなく、長期にわたって保管できることが分かった。

Claims (19)

  1. 樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m/g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、該無機フィラー(B)100質量部に対して、前記無機フィラー(B)と化学結合しうる基及びラジカルの存在下で前記樹脂(R)にグラフト反応しうる基を有する加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、混合物を得る工程(a)と、
    前記混合物を成形する工程(b)と、
    前記成形体を水と接触させて、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(c)と
    を有し、
    前記工程(a)が、下記工程(1)及び工程(3)を有し、下記工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合にさらに下記工程(2)を有する、
    工程(1):前記有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度で、前記有機過酸化物(
    P)と前記無機フィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)とを混
    合し、次いで、得られた混合物と前記樹脂(R)の全部又は一部とを前記有機過酸化
    物(P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
    工程(2):前記樹脂(R)の残部と前記シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合し
    て、触媒マスターバッチを調製する工程
    工程(3):前記シランマスターバッチと前記シラノール縮合触媒(C)又は前記触
    媒マスターバッチとを混合する工程
    ことを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  2. 前記工程(1)が、前記有機過酸化物(P)の分解温度以下の温度で、前記無機フィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)と混合し、次いで、この混合物と前記有機過酸化物(P)を混合した後に、前記樹脂(R)の全部又は一部を有機過酸化物(P)の分解温度以上の温度で溶融混合する請求項1に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  3. 前記無機フィラー(B)が、5μm以下の体積平均径を有する請求項1又は2に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記樹脂(R)が、前記工程(1)と前記工程(2)の両工程において混合される請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、金属水和物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、水酸化マグネシウムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、炭酸カルシウムである請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  8. 前記工程(1)が、密閉型のミキサーで行われる請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  9. 樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m /g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、該無機フィラー(B)100質量部に対して、前記無機フィラー(B)と化学結合しうる基及びラジカルの存在下で前記樹脂(R)にグラフト反応しうる基を有する加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、混合物を得る工程(a)と、
    前記混合物を成形する工程(b)と、
    前記成形体を水と接触させて、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(c)と
    を有し、
    前記工程(a)が、下記工程(1)及び工程(3)を有し、下記工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合にさらに下記工程(2)を有し、
    工程(1):前記樹脂(R)の全部又は一部と前記有機過酸化物(P)と前記無機フ
    ィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)とを前記有機過酸化物(
    P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
    工程(2):前記樹脂(R)の残部と前記シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合し
    て、触媒マスターバッチを調製する工程
    工程(3):前記シランマスターバッチと前記シラノール縮合触媒(C)又は前記触
    媒マスターバッチとを混合する工程
    前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、炭酸カルシウムである
    ことを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  10. 前記炭酸カルシウムが、5μm以下の体積平均径を有する請求項9に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  11. 前記樹脂(R)が、前記工程(1)と前記工程(2)の両工程において混合される請求項9又は10に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  12. 前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、金属水和物である請求項9〜11のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  13. 前記無機フィラー(B)の少なくとも1種が、水酸化マグネシウムである請求項9〜12のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  14. 前記工程(1)が、密閉型のミキサーで行われる請求項9〜13のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  15. 樹脂(R)100質量部と、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、BET比表面積が14m /g以下の無機フィラー(B)10〜400質量部と、該無機フィラー(B)100質量部に対して、前記無機フィラー(B)と化学結合しうる基及びラジカルの存在下で前記樹脂(R)にグラフト反応しうる基を有する加水分解性シランカップリング剤(S)0.5〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合して、混合物を得る工程(a)を有し、
    前記工程(a)が、下記工程(1)及び工程(3)を有し、下記工程(1)で樹脂(R)の一部を溶融混合する場合にさらに下記工程(2)を有する、
    工程(1):前記有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度で、前記有機過酸化物(
    P)と前記無機フィラー(B)と前記加水分解性シランカップリング剤(S)とを混
    合し、次いで、得られた混合物と前記樹脂(R)の全部又は一部とを前記有機過酸化
    物(P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
    工程(2):前記樹脂(R)の残部と前記シラノール縮合触媒(C)とを溶融混合し
    て、触媒マスターバッチを調製する工程
    工程(3):前記シランマスターバッチと前記シラノール縮合触媒(C)又は前記触
    媒マスターバッチとを混合する工程
    ことを特徴とする耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
  16. 請求項15に記載の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物。
  17. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋樹脂成形体。
  18. 請求項17に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む耐熱性製品。
  19. 前記耐熱性シラン架橋樹脂成形体が、電線又は光ファイバケーブルの被覆として設けられている請求項18に記載の耐熱性製品。
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