JP6614937B2 - 半導電性シラン架橋樹脂成形体及び半導電性シラン架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、シランマスターバッチ、並びに、成形品 - Google Patents
半導電性シラン架橋樹脂成形体及び半導電性シラン架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、シランマスターバッチ、並びに、成形品 Download PDFInfo
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Description
このような半導電層は、一般に、エチレン系共重合体等のオレフィン系樹脂をベース樹脂とし、これに導電性カーボンブラックを配合することにより、半導電性が付与される。エチレン系共重合体としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体等が用いられる。また、導電性カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が用いられる。
シラン架橋法、及び、シラン架橋法による半導電材料として、例えば、特許文献1に記載の半導電性混和物、特許文献2に記載のシラン架橋半導電性樹脂組成物、及び、特許文献3に記載の半導電性組成物が挙げられる。
また、本発明は、この半導電性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な、シランマスターバッチ、半導電性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、半導電性シラン架橋樹脂成形体を含む成形品を提供することを課題とする。
<1>下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)
工程(1):ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、カーボンブラックと、シランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合して混合物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて半導電性シラン架橋樹脂成形体を得る工程
を有する半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)〜工程(d)を有する、
工程(a):前記有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たす前記カーボンブラックと、前記シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):前記工程(a)で得られた混合物と前記ポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(c):前記シラノール縮合触媒とキャリア樹脂として前記ポリオレフィン系樹脂と異なる樹脂又は前記ポリオレフィン系樹脂の残部とを混合する工程
工程(d):前記工程(b)で得られた溶融混合物と、前記工程(c)で得られた混合物とを混合する工程
半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<2>前記カーボンブラックの配合量が、3〜90質量部である<1>に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<3>前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂、スチレン系エラストマー及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である<1>又は<2>に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<4>前記ポリオレフィン系樹脂が、鉱物油を含有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<5>前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン及び/又はビニルトリエトキシシランである<1>〜<4>のいずれか1項に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
前記混合する工程が、下記工程(a)〜工程(d)を有する、
工程(a):前記有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たす前記カーボンブラックと、前記シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):前記工程(a)で得られた混合物と前記ポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(c):前記シラノール縮合触媒とキャリア樹脂として前記ポリオレフィン系樹脂と異なる樹脂又は前記ポリオレフィン系樹脂の残部とを混合する工程
工程(d):前記工程(b)で得られた溶融混合物と、前記工程(c)で得られた混合物とを混合する工程
半導電性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
<7>ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、カーボンブラックと、シランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合してなる半導電性シラン架橋性樹脂組成物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
下記工程(a)及び工程(b)
工程(a):前記有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たす無機フィラーと、前記シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):前記工程(a)で得られた混合物と前記ポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
により得られるシランマスターバッチ。
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて半導電性シラン架橋樹脂成形体を得る工程
工程(a):有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たすカーボンブラックと、シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):工程(a)で得られた混合物とポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(c):シラノール縮合触媒とキャリア樹脂としてポリオレフィン系樹脂と異なる樹脂又はポリオレフィン系樹脂の残部とを混合する工程
工程(d):工程(b)で得られた溶融混合物と工程(c)で得られた混合物とを混合する工程
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂は、有機過酸化物の存在下で、シランカップリング剤の架橋基とグラフト反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有する樹脂であればよい。グラフト反応可能な部位としては、例えば、炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば上記電力ケーブル又はOA機器等の半導電層に用いられる樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体からなる各樹脂が挙げられる。また、これら共重合体のゴムないしはエラストマー等も挙げられる。ゴムないしはエラストマーとしては、例えば、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
この中でも、ポリエチレン樹脂、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂、スチレン系エラストマー及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂が複数の成分を含有する場合、各成分の合計が100質量%となるように、各成分の含有率が適宜に調製され、好ましくは下記範囲内から選択される。
ポリエチレン樹脂の配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜100質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
ポリプロピレン樹脂の配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。
エチレン−αオレフィン共重合体樹脂の配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜100質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂の配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜100質量%であることが好ましく、0〜50質量%であることがより好ましい。
スチレン系エラストマーの配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜100質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
エチレンゴムは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を共重合して得られる共重合体からなるゴム(エラストマーを含む)であれば特に限定されない。より好ましくは、エチレンとαオレフィンとの共重合体、エチレンとαオレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムが挙げられる。αオレフィンとしては炭素数3〜12のαオレフィンが好ましい。エチレンとαオレフィンとの共重合体からなるゴムとして、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−ブテンゴム(EBR)、エチレン−オクテンゴム等が挙げられる。エチレンとαオレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム等が挙げられる。
エチレン−αオレフィン共重合体ゴムの配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜100質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としてこれらを用いる場合、ポリオレフィン系樹脂中の配合量は、2〜20質量部であることが好ましい。
鉱物油の配合量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂中、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒としてシランカップリング剤のポリオレフィン系樹脂へのグラフト反応を生起させる働きをする。
本発明に用いられる有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば特に制限はなく、例えば、一般式:R1−OO−R2、R3−OO−C(=O)R4、R5C(=O)−OO(C=O)R6で表される化合物が好ましい。ここで、R1〜R6は各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR1〜R6のうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/minの昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
本発明に用いるカーボンブラックとしては、シランカップリング剤の加水分解しうる有機基と水素結合又は共有結合等により化学結合しうる部位を有し、かつ導電性のカーボンブラックであれば、特に限定されない。シランカップリング剤の加水分解しうる有機基と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
カーボンブラックは、表面処理されていてもよいし、無処理でもよい。
カーボンブラックのBET比表面積(m2/g)は、JIS Z 8830:2013の「キャリアガス法」に準拠して、吸着質として窒素ガスを用いて、測定される値である。例えば、比表面積・細孔分布測定装置「フローソーブ」(島津製作所社製)を用いて測定した値である。
本発明に用いるシランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、従来、シラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、例えば下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、また、そのままで用いても、溶媒等で希釈して用いてもよい。
シラノール縮合触媒は、ポリオレフィン系樹脂にグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、樹脂成分同士が架橋される。その結果、優れた耐熱性を有する半導電性シラン架橋樹脂成形体が得られる。
本発明に用いるキャリア樹脂としては、特に限定されず、上記ポリオレフィン系樹脂と同様のものを用いることができる。好ましくは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂である。キャリア樹脂は、エチレンゴム、スチレン系エラストマー等の樹脂成分やオイルを含んでいてもよい。
半導電性シラン架橋樹脂成形体及び半導電性シラン架橋性樹脂組成物は、電線、電気ケーブル、電気コード、自動車用部材、OA機器、建築部材、雑貨、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を、目的とする効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、難燃(助)剤や他の樹脂等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又はイオウ酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部で加えることができる。
滑剤としては、炭化水素、シロキサン、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル、アルコール、金属石けん等の各滑剤が挙げられる。
本発明の製造方法において、工程(1)は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、カーボンブラックと、シランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合する工程である。これにより、混合物として半導電性シラン架橋性樹脂組成物が得られる。
工程(b)において、ポリオレフィン系樹脂の一部を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂の残部を工程(c)においてキャリア樹脂として用いることができる。
本発明において、「ポリオレフィン系樹脂の一部」とは、ポリオレフィン系樹脂のうち工程(1)で使用する樹脂の一部をいう。この一部には、ポリオレフィン系樹脂そのものの一部(ポリオレフィン系樹脂と同一組成を有する)、ポリオレフィン系樹脂を構成する樹脂成分の一部(例えば、特定の樹脂成分の全量未満)、及び、ポリオレフィン系樹脂を構成する一部の樹脂成分(例えば、複数の樹脂成分のうちの特定の樹脂成分全量)を包含する。
また、「ポリオレフィン系樹脂の残部」とは、ポリオレフィン系樹脂のうち工程(b)で使用する一部を除いた残りのポリオレフィン系樹脂をいう。この残部には、ポリオレフィン系樹脂そのものの残部(ポリオレフィン系樹脂と同一組成を有する)、ポリオレフィン系樹脂を構成する樹脂成分の残部、及び、ポリオレフィン系樹脂を構成する残りの樹脂成分を包含する。
ここで、工程(b)でポリオレフィン系樹脂の一部を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂は、工程(b)において、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜98.5質量%が配合され、工程(c)において、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1.5〜40質量%が配合される。
式(I):D=Σ(A×B/C)
式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。Σ(A×B/C)は、A×B/Cの合計量を表す。したがって、複数のカーボンブラックを用いる場合、各カーボンブラックについての、BET比表面積Aと配合量Bとの積をシランカップリング剤の配合量Cで除した値の合計量とする。
カーボンブラックの配合量B及びシランカップリング剤の配合量Cは、工程(1)における、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対する割合(質量部)である。
その作用のメカニズムはまだ定かではないが次のように推定される。
工程(1)において、ポリオレフィン系樹脂は、有機過酸化物の存在下、カーボンブラック及びシランカップリング剤と共に有機過酸化物の分解温度以上で加熱混練される。これにより、有機過酸化物が分解してラジカルを発生して、ポリオレフィン系樹脂に対してシランカップリング剤によるグラフト反応が起こる。また、このときの加熱により、部分的には、シランカップリング剤とカーボンブラックの表面での水酸基等の基との共有結合による化学結合の形成反応も促進される。
この状態で、有機過酸化物を加えてポリオレフィン系樹脂と混練りを行うと、カーボンブラックとの結合状態が異なるシランカップリング剤がそれぞれポリオレフィン系樹脂にグラフト反応したシラン架橋性樹脂が形成される。
一方、D値が大きくなりすぎて1750を超えると、シランカップリング剤に対するカーボンブラックの表面積が大きくなり、カーボンブラックに対してシランカップリング剤が強い結合で結合してしまう。したがって、カーボンブラックに対して弱い結合で結合しているシランカップリング剤をほとんど形成できなくなる。このときは、シラングラフト反応が生じにくくなり、耐熱性が維持できず、又は、架橋剤によってポリマー鎖同士が結合してしまう。その結果、得られる半導電性シラン架橋樹脂成形体は、耐熱性、場合によっては外観又は機械特性(特に機械的強度)が劣るものとなることがある。
工程(1)においては、架橋助剤を実質的に混合しないのが好ましい。ここで、実質的に混合しないとは、有機過酸化物の存在下において樹脂成分との間に部分架橋反応を生起しない程度の混合量で混合してもよいことを意味する。この混合量は適宜に設定できる。上記の意味で、不可避的に含有又は混合されることを除外するものではない。
工程(a):有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たすカーボンブラックと、シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):工程(a)で得られた混合物とポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(c):シラノール縮合触媒とキャリア樹脂として前記ポリオレフィン系樹脂と異なる樹脂又は前記ポリオレフィン系樹脂の残部とを混合をする工程
工程(d):工程(b)で得られた溶融混合物と、工程(c)で得られた混合物とを、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(a)において、上記温度が保持されている限り、ポリオレフィン系樹脂が存在していてもよい。
混練温度は、有機過酸化物の分解温度以上の温度、好ましくは150〜230℃である。この混練温度では、上記成分が溶融し、有機過酸化物が分解、作用して必要なシラングラフト反応が進行する。混練時間等の混練条件は適宜設定することができる。
混練方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であればよい。混練装置としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。
キャリア樹脂は、工程(b)でポリオレフィン系樹脂の一部を用いる場合には、ポリオレフィン系樹脂の残部を用いることができる。この場合の配合量は上記の通りである。
混合温度は、ポリオレフィン系樹脂又はキャリア樹脂の溶融温度以上の温度であればよく、150〜230℃が好ましい。
溶融混合は、例えば工程(b)の溶融混合と同様に行うことができる。
工程(1)は、工程(a)〜(d)を同時又は連続して行うことができる。
半導電性シラン架橋性樹脂組成物は、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(d)の溶融混合下では一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる半導電性シラン架橋性樹脂組成物について、少なくとも工程(2)での成形における成形性が保持されたものとする。
この工程(2)は、工程(d)と同時に又は連続して、行うことができる。すなわち、工程(d)の溶融混合の一実施態様として、溶融成形の際、例えば押出成形の際に、又は、その直前に、各成形材料を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、絶縁電線等を製造する場合、シランマスターバッチと架橋促進マスターバッチとの成形材料を例えば被覆装置内で溶融混合し、次いで、例えば導体等の外周面に押出被覆して所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
工程(3)は、得られた成形体を、湿熱処理、温水処理、常温水への浸漬又は常温等で放置することにより、ポリオレフィン系樹脂にグラフトしたシランカップリング剤を水分で加水分解して、架橋(縮合反応)を促進することができる。接触時間等の接触条件は適宜設定することができる。
すなわち、ポリオレフィン系樹脂との混練り前及び/又は混練り時に、カーボンブラックに対してシランカップリング剤を混合することにより、混練り時のシランカップリング剤の揮発を抑えることができる。そのため、半導電性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性及び外観の低下を防止できる。加えて、カーボンブラックに対して強い水素結合で結びつくシランカップリング剤と、弱い結合で結びつくシランカップリング剤を形成することができる。
一方、カーボンブラックと弱い結合をしているシランカップリング剤は、カーボンブラックから離脱してポリオレフィン系樹脂とグラフト反応により結合する(反応m)。この(反応m)によりポリオレフィン系樹脂にグラフトしたシランカップリング剤は、その後、シラノール縮合触媒と混合され、水分と接触することにより縮合反応が生じ、シロキサン結合による架橋が生じる(反応n)。
したがって、これらの結合を制御することにより、架橋度や機械的強度、さらには摩耗性、耐外傷性、補強性を制御することができる。
本発明の成形品として、例えば、電界緩和のための半導電層を備えた電線又はケーブル、半導電架橋PEテープのみならず、コピー機やレーザープリンター等のOA機器用半導電ゴムロール、帯電防止材など、半導電性を生かした様々な製品が挙げられる。さらには、耐候性の必要とされるゴムモールド材(例えば、自動車用グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ゴムホース、ワイパーブレードゴム、防振ゴム)など、圧縮永久歪み特性も必要とされ、従来加硫工程を経ていたEPゴム製品の代替製品等も挙げられる。
また、各種部品等に射出成形する場合、成形材料を射出成形機に導入し、射出成形することにより、得ることができる。
これらの成形体を、常温等での放置や湿熱放置、温水処理等水分と接触させて架橋をさせることにより、高い耐熱性を付与することが可能となる。
これらの成形品(半導電性シラン架橋樹脂成形体)の厚さは、用途等に応じて適宜設定されるので、一義的に規定できないが、一般に0.1〜50mm程度である。
なお、表1及び表2において、各例における配合に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
<ポリオレフィン系樹脂>
(1)「EPDM」(商品名:ノーデル4725P、ダウ・ケミカル社製)、ムーニー粘度ML(1+4)125℃:25、エチレン含有量:70質量%、ジエン量:4.9質量%
(2)「HP−LDPE」(商品名:ノバテックHE−30、日本ポリエチレン社製)、密度:0.921g/cm3、MFR(190℃、21.2N):0.3g/10分
(3)「LLDPE」(商品名:DFDJ−7540、NUC社製)、直鎖型低密度ポリエチレン、密度:0.922g/cm3、MFR(190℃、21.2N):0.6g/10分
(4)「HDPE」(商品名:ハイゼックス5305E、プライムポリマー社製)、密度:0.951g/cm3、MFR(190℃、21.2N):0.8g/10分
(5)「EVA」(商品名:エバフレックスEV360、三井デュポンポリケミカル社製)、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂、MFR(190℃、21.2N):2g/10分、VA含有量:25質量%
(6)「EEA」(商品名:NUC−6510、NUC社製)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体の樹脂、MFR(190℃、21.2N):0.5g/10分、EA含有量:23質量%
(7)「SEPS」(商品名:セプトン4077、クラレ社製)、SEPS、スチレン含有量30質量%
(8)「プロセスオイル」(商品名:ダイアナプロセスオイルPW90、出光興産社製)、パラフィンオイル
(1)「カーボンブラック1」(商品名:旭カーボン#70、旭カーボン社製)、(ファーネスブラック、BET比表面積:77m2/g、平均粒子径:28nm
(2)「カーボンブラック2」(商品名:旭カーボン#50、旭カーボン社製)、(ファーネスブラック、BET比表面積:23m2/g、平均粒子径:80nm
(3)「カーボンブラック3」(商品名:旭カーボン#78、旭カーボン社製)、(ファーネスブラック、BET比表面積:124m2/g、平均粒子径:22nm
「シランカップリング剤」(商品名:KBM1003、信越化学工業社製)、ビニルトリメトキシシラン
<有機過酸化物>
「有機過酸化物」(商品名:パーヘキサ25B、日本油脂社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度179.8℃
<シラノール縮合触媒>
「シラノール縮合触媒」(商品名:アデカスタブOT−1、ADEKA社製)、ジオクチルスズジラウリレート
各例において、ポリオレフィン系樹脂(樹脂成分)の一部(ポリオレフィン系樹脂の全量に対して95質量%)を工程(a)で用い、ポリオレフィン系樹脂の残部(5質量%)を工程(b)でキャリア樹脂として用いた。
得られた混合物とポリオレフィン系樹脂の一部(95質量部)とを、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、有機過酸化物の分解温度以上の温度(185℃)において5分間にわたり溶融混合した。その後、材料排出温度200℃で排出し、ペレット化してシランMBを得た。得られたシランMBは、ポリオレフィン系樹脂にシランカップリング剤がグラフトしたシラン架橋性樹脂を含有している。
表1及び表2には、各成分の配合量に加えて、上記式(I)で規定されるD値等を示した。
ここで、シランMBと架橋促進MBとの混合比は各例において、シランMBのポリオレフィン系樹脂が95質量%で、架橋促進MBのキャリア樹脂が5質量%となる割合(表1及び表2に記載の質量割合と同じ)とした。
得られたドライブレンド物を、上記電線被覆用押出成形機に投入して、下記押出温度条件により、0.8mmφの導体(軟銅線)の外周に仕上がり外径1.2mmφとなるように、線速10m/分で、押出被覆して、電線前駆体を製造した。
押出温度条件は、電線被覆用押出成形機のシリンダー部分における温度制御をフィーダー側からダイス側に向けて3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを150℃、C2ゾーンを170℃、C3ゾーンを190℃に設定し、さらにダイス温度(成形温度)を200℃に設定した。
上記押出成形において、ドライブレンド物を電線被覆用押出成形機内で押出成形前に溶融混合することにより、シラン架橋性樹脂組成物を調製した。このシラン架橋性ゴム組成物は、上記シラン架橋性樹脂と、表1に示す含有量のカーボンブラック及び上記配合量のシラノール縮合触媒を含有している。
表2に示す質量比で、カーボンブラックと、シランカップリング剤と、有機過酸化物と、ポリオレフィン系樹脂の一部(95質量部)とを、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、有機過酸化物の分解温度以上の温度(185℃)において5分間にわたり、溶融混合した。その後、材料排出温度200℃で排出し、ペレット化してシランMBを得た。このシランMBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電線を製造した。
押出外観試験は、製造した電線の外観を観察して評価した。
電線の外観が良好だったものを「A」、外観に製品として問題があるほどブツが発生していたものを「D」とした。評価「A」が本試験の合格である。
得られた電線から導体を引き抜いた管状片を用いて、JIS C 3005に基づき、引張試験を行った。測定条件は、測定温度25℃、標点間距離20mm、引張速度200mm/分で引張強度を計測し、引張強度(機械的強度ともいう。MPa)及び破断時伸び(%)を測定した。
引張強度は5MPa以上である場合が本試験の合格である。破断時伸びは、参考試験であり、本試験において300%以上である場合を合格とする。
ホットセットはIEC60811−2−1(JIS C 3660−2−1)に基づき実施した。得られた電線から導体を引き抜いた管状片に、標点間距離50mmの印を付けた後、管状片の一端に下記荷重をぶら下げた状態で、200℃の環境下に15分放置した。
15分経過しても管状片が破断せず、標点間距離の伸び率が100%以下であり、かつ荷重除去後の標点間距離の永久伸び率が25%以下であるものを、各加重における合格とした。
ぶら下げた荷重が20N/cm2以上であっても合格したものを「A」、合格した最大荷重値が10N/cm2以上20N/cm2未満の範囲であったものを「B」とした。一方、合格した最大荷重値が10N/cm2未満であった(15分以内に管状片が破断し、又は、上記伸び率を満たさなかった)もの(本試験の不合格)を「D」とした。
各実施例及び比較例で製造したドライブレンド物を170℃で10分のプレス成形で厚さ1mmのシートサンプルを得た。そのシートをJIS K 6271に準拠し、500Vを電極間に印加し、1分後の体積抵抗率を測定した。
実施例1〜16により、いずれも、優れた、外観、機械的強度及び耐熱性を兼ね備えた半導電性シラン架橋樹脂成形体からなる被覆(半導電層)を有する絶縁電線を、製造性(生産性)よく、製造できた。これらの半導電層は破断時伸びにも優れていた。また、上記式(I)で規定されるD値が上記好ましい範囲内となるようにカーボンブラックとシランカップリング剤とを併用すると、半導電性シラン架橋樹脂成形体の外観及び機械的強度を損なうことなく、耐熱性をさらに向上できた。さらに、実施例1〜16により、優れた、外観、機械的強度及び耐熱性を兼ね備えた半導電性シラン架橋樹脂成形体を製造可能な、半導電性シラン架橋性樹脂組成物及びシランマスターバッチを調製できた。
Claims (7)
- 下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)
工程(1):ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、カーボンブラックと、シランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合して混合物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて半導電性シラン架橋樹脂成形体を得る工程
を有する半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)〜工程(d)を有する、
工程(a):前記有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たす前記カーボンブラックと、前記シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):前記工程(a)で得られた混合物と前記ポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(c):前記シラノール縮合触媒とキャリア樹脂として前記ポリオレフィン系樹脂と異なる樹脂又は前記ポリオレフィン系樹脂の残部とを混合する工程
工程(d):前記工程(b)で得られた溶融混合物と、前記工程(c)で得られた混合物とを混合する工程
半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。 - 前記カーボンブラックの配合量が、3〜90質量部である請求項1に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂、スチレン系エラストマー及びエチレン−αオレフィン共重合体ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記ポリオレフィン系樹脂が、鉱物油を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン及び/又はビニルトリエトキシシランである請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導電性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、カーボンブラックと、シランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合する工程を有する半導電性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法であって、
前記混合する工程が、下記工程(a)〜工程(d)を有する、
工程(a):前記有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たす前記カーボンブラックと、前記シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m2/g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):前記工程(a)で得られた混合物と前記ポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(c):前記シラノール縮合触媒とキャリア樹脂として前記ポリオレフィン系樹脂と異なる樹脂又は前記ポリオレフィン系樹脂の残部とを混合する工程
工程(d):前記工程(b)で得られた溶融混合物と、前記工程(c)で得られた混合物とを混合する工程
半導電性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。 - ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、カーボンブラックと、シランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合してなる半導電性シラン架橋性樹脂組成物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
下記工程(a)及び工程(b)
工程(a):前記有機過酸化物と、下記式(I)で規定されるD値が50〜1750を満たす無機フィラーと、前記シランカップリング剤とを混合する工程
式(I) D=Σ(A×B/C)
(式中、AはカーボンブラックのBET比表面積(m 2 /g)を表し、Bはカーボンブラックの配合量を表し、Cはシランカップリング剤の配合量を表す。)
工程(b):前記工程(a)で得られた混合物と前記ポリオレフィン系樹脂の全部又は一部を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
により得られるシランマスターバッチ。
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