JP4927460B2 - オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその用途 - Google Patents

オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性エラストマーおよびその用途に関し、さらに詳しくは、特に自動車のウェザーストリップ、ドアトリム等のコーナー異形接続部や異形端末部を溶着成形するのに好適な熱可塑性エラストマーおよびその用途に関する。
従来、接続部を有するウェザーストリップの製造は、一般的に、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)のゴム配合物からなる押出加硫成形品を裁断して、一方または双方から金型にセットし、形成されるキャビティに、このEPDMのゴム配合物と同種のゴム成形材料を注入し加硫型成形することにより行なわれている。
他方、この型成形の材料として、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)を使用した加硫ゴムに代わって、生産性、環境対応性および軽量化の見地から、加硫工程が不要な熱可塑性エラストマー(組成物)が使用され始めている。
しかしながら、一般に加硫ゴムと熱可塑性エラストマーとは、加硫接着等ができないため、接着剤を用いて一体化がなされたりしていたが、生産性あるいは対環境性の点で十分とは言えない。
熱可塑性エラストマーの組成に関する技術としては、極性基含有樹脂の添加(特開平2−115249号公報(特許文献1)、特開平8−244068号公報(特許文献2)、特開平10−324200号公報(特許文献3))が挙げられるが、極性基含有樹脂の添加の場合、成形時に、成形品の金型からの離型性が悪くなったりして成形サイクルが長くなってしまう。
さらに上記加硫ゴムの技術としては、従来の加硫ゴムの組成に加えて微結晶性のポリプロピレンを添加するものがある(特開平10−7849号公報(特許文献4))。しかしながら、アタクチックポリプロピレンのような微結晶のポリプロピレンを添加すると、従来の加硫ゴムのゴム弾性が悪化するだけでなく、経時後の成形品のベタツキや成形品硬度の上昇等が生じる場合がある。
以上のような熱可塑性エラストマーや加硫ゴムの組成に関しての技術だけでなく、加硫ゴムを裁断した後、切断面の凹凸を付けてアンカー効果を得ようとするもの(特開平9−118133号公報(特許文献5))や、加硫ゴムの切断面にポリオレフィン樹脂パウダーを塗布したもの(特開平6−47816号公報(特許文献6))等の技術があるが、いずれも生産性が低下する割に接着性の向上は見られないという欠点がある。
したがって、接着剤層を介さずとも加硫ゴムに対して十分な接着強度を生じる成形体を形成し得る熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムに溶着させた成形体、ならびに熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れる熱可塑性エラストマーおよびそのエラストマーを加硫ゴムに溶着させた成形体の出現が望まれている。
特開平2−115249号公報 特開平8−244068号公報 特開平10−324200号公報 特開平10−7849号公報 特開平9−118133号公報 特開平6−47816号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、接着剤層を介さずとも加硫ゴムに対して十分な接着強度を生じる成形体を形成し、十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れる熱可塑性エラストマーを提供することを目的としている。
本発明に係る熱可塑性エラストマーは、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、MFR(190℃、2.16kgf)が0.1〜100g/10minであるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムを1〜100重量部、MFR(190℃、2.16kgf)が0.1〜100g/10minであるエチレン系樹脂を1〜100重量部と、を配合されてなり、前記熱可塑性エラストマー(A)が、部分あるいは完全架橋されたオレフィン系ゴムとしてのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とオレフィン系樹脂としてのプロピレン系重合体と軟化剤とを含み、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とプロピレン系重合体の合計量に対して前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を90重量%〜20重量%および前記プロピレン系重合体を10重量%〜80重量%含み、かつ前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とプロピレン系重合体の合計量100重量部に対して前記軟化剤を0〜150重量部含み、前記エチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムのエチレン含有量が70〜94モル%、ブテン−1含有量が3〜15モル%、および、オクテン−1含有量が3〜15モル%であることを特徴とするものである。前述エチレン系樹脂は、密度(ASTM D1505)0.91〜0.95g/cmの直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とするものが好ましい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー(B)は、加硫ゴムの成形体への溶着用として好適に用いることができ、加硫ゴム成形体へ溶融接着させ、剥離試験後に加硫ゴム面に50%以上熱可塑性エラストマーが残っていることを特徴とする。
本発明に係る成形体は、自動車内外装材用に好適に用いられる。たとえばウェザーストリップ材に好適に用いられる。具体的には、たとえば直線的部分と接合コーナー部材とが接合されてなるウェザーストリップ材において、該直線的部分が前記加硫ゴムの成形体からなり、該コーナー部材が本発明に係る熱可塑性エラストマーから形成されてなる成形体である。
加硫ゴムからなる成形体に、上記の、本発明に係る熱可塑性エラストマーを溶着させてなる成形体は、たとえばインサート成形により得られる。
本発明に係る熱可塑性エラストマーは、接着剤層を介さずとも加硫ゴムに対して十分な接着強度と剥離時に母材破壊を生じる成形体を形成することができ、また熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する軽量な成形体を形成することができる。
以下、本発明に係る熱可塑性エラストマーおよびその用途について具体的に説明する。
熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、MFR(190℃、2.16kgf)が0.1〜100g/10minであるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムを1〜100重量部、MFR(190℃、2.16kgf)が0.1〜100g/10minであるエチレン系樹脂を1〜100重量部と、を配合されてなり、前記熱可塑性エラストマー(A)が、部分あるいは完全架橋されたオレフィン系ゴムとしてのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とオレフィン系樹脂としてのプロピレン系重合体と軟化剤とを含み、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とプロピレン系重合体の合計量に対して前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を90重量%〜20重量%および前記プロピレン系重合体を10重量%〜80重量%含み、かつ前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とプロピレン系重合体の合計量100重量部に対して前記軟化剤を0〜150重量部含み、前記エチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムのエチレン含有量が70〜94モル%、ブテン−1含有量が3〜15モル%、および、オクテン−1含有量が3〜15モル%であることを特徴とするものである。
熱可塑性エラストマー(A)
熱可塑性エラストマーとは、ゴムと類似の物理的性質、たとえば柔軟性や反発弾性を有し、通常のゴムと対照的に熱可塑性プラスチックとして加工できるものであり、このような説明は、たとえば高分子大辞典(丸善株式会社、1994年刊)においてなされている。
前述の熱可塑性エラストマー(A)としては、オレフィン系、スチレン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系等が挙げられるが、オレフィン系樹脂と、部分あるいは架橋されたオレフィン系ゴムとを含有するオレフィン系の組成物であることが好ましい。
尚、前記熱可塑性エラストマー(A)としては、部分あるいは完全架橋されたオレフィン系ゴムとしてのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とオレフィン系樹脂としてのプロピレン系重合体と軟化剤とを含み、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とプロピレン系重合体の合計量に対して前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を90重量%〜20重量%および前記プロピレン系重合体を10重量%〜80重量%含み、かつ前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とプロピレン系重合体の合計量100重量部に対して前記軟化剤を0〜150重量部含むものを用いる。
[オレフィン系樹脂]
熱可塑性エラストマー(A)の一成分として用いられるオレフィン系樹脂は、高圧法または低圧法の何れかの方法により、1種または2種以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物である。このようなオレフィン系樹脂としては、例えばアイソタクチックおよびシンジオタクチックのモノオレフィン重合体樹脂があげられる。これらの代表的な樹脂は商業的に入手できる。
上記オレフィン系樹脂の適当な原料オレフィンとしては、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどの、炭素数2〜20、好ましくは2〜12のα−オレフィンがあげられる。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上混合して用いられる。
重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。
オレフィン系樹脂としてはプロピレン系重合体が用いられ、具体的にはプロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロックコポリマー、プロピレン・エチレン、およびプロピレン・エチレン・ブテンランダムコポリマーなどが好ましい。
オレフィン系樹脂は、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
オレフィン系樹脂は、本発明の熱可塑性エラストマー(A)の流動性および耐熱性を向上させる役割を持っている。オレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上組み合せて用いてもよい。前記オレフィン系樹脂としては、特に制限はないが、ポリプロピレンなどを例示することができ、特にポリプロピレンが好ましい。
[オレフィン系ゴム]
熱可塑性エラストマー(A)の一成分として用いられるオレフィン系ゴムとしては、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体などのエチレン・α- オレフィン・ポリエン共重合体、エチレン・α- オレフィン共重合体などを例示することができる。尚、オレフィン系ゴムとしてはエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体が用いられる。
エチレン・α−オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴムのエチレン含有量は、通常25〜95モル%、好ましくは30〜90モル%、さらに好ましくは35〜85モル%である。
α−オレフィンとしては、前記したような炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられるが、特に 炭素数3のプロピレンが好ましい。また、非共役ポリエンとしては、具体的には、
1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4- ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4- ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、8-メチル-4- エチリデン-1,7- ノナジエン、4-エチリデン-1,7- ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、5-ビニリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-イソブテニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエンが好ましい。
前記エチレン・α−オレフィン(・非共役ポリエン)共重合体ゴムは、ヨウ素価が好ましくは1〜30g/100g、より好ましくは3〜25g/100gである。また、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10〜250であることが好ましい。
オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの使用割合は、オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの合計に対してオレフィン系樹脂が10〜80重量%、好ましくは15〜60重量%、オレフィン系ゴムが90〜20重量%、好ましくは85〜40重量%であるのが望ましい。オレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの使用割合が上記範囲にある場合、柔軟性およびゴム弾性に優れるとともに、成形加工に優れた本発明の耐熱性熱可塑性エラストマー(A)が得られる。
他の成分として用いられる軟化剤、無機充填剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤、無機充填剤を用いることができる。
[軟化剤]
本発明においては、軟化剤はオレフィン系樹脂およびオレフィン系ゴムの合計量100重量部に対して、150重量部以下、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜80重量部の割合で用いられる。軟化剤を上記のような割合で用いると、得られる本発明の耐熱性熱可塑性エラストマー(A)は成形時の流動性に優れ、その成形体の機械的物性を低下させることはない。本発明において軟化剤は、熱可塑性エラストマー(A)製造時に添加してもよいし、予めオレフィン系ゴムに油展しておいてもよい。
エチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴム
本発明で用いられるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムのMFR(190℃、2.16kgf)は、通常0.1〜100g/10min、好ましくは0.3〜70g/10min、さらに好ましくは0.5〜50g/10minである。エチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムは、通常エチレン含有量が70〜94モル%、ブテン−1含有量が3〜15モル%、オクテン−1含有量が3〜15モル%であり、好ましくはエチレン含有量が72〜92モル%、ブテン−1含有量が4〜14モル%、オクテン−1含有量が4〜14モル%であり、さらに好ましくは、エチレン含有量が74〜90モル%、ブテン−1含有量が5〜13モル%、オクテン−1含有量が5〜13モル%である。
本発明で用いられるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムの「ゴム」とは、X線回折法により求められる結晶化度が50%以下である共重合体を意味する。
本発明で用いられるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムの組成は、13C−NMRによる測定で求められる。
本発明で用いられるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量分布((重量平均分子量/数平均分子量)(Mw/Mn))は特に限定しないが、1.5〜6.0程度のものである。
本発明で用いられるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムは、その製造の際に軟化剤好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油展ゴムであってもよい。鉱物油系軟化剤としては、従来公知の鉱物油系軟化剤たとえばパラフィン系プロセスオイルなどが挙げられる。
上記のようなエチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴムは、従来公知の方法により製造することができるが、共重合性を考慮すると、メタロセン触媒を使用して製造するのが好ましい。
エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴムは、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜95重量部、さらに好ましくは10〜90重量部用いると、熱可塑性エラストマー製ウェザ一ストリップ、加硫ゴム製ウェザーストリップ等の押出成形体との溶着性に優れ、しかも、適度な柔らかさ(硬さ)を有するコーナー部を形成することができる成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
エチレン系樹脂
本発明で用いられるエチレン系樹脂は、MFR(190℃、2.16kgf)が通常0.1〜100g/10min、好ましくは0.3〜70g/10min、さらに好ましくは0.5〜50g/10minである。エチレン系樹脂の例としては、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素原子数3〜20、好ましくは3〜8のα- オレフィンとからなる結晶性エチレン・α- オレフィン共重合体が挙げられる。結晶性エチレン・α- オレフィン共重合体中のα−オレフィン含量は全体の25モル%以下であり、好ましくは2〜23モル%、更に好ましくは4〜21モル%である。好ましいエチレン系樹脂は、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンであり、中でも好ましいのは密度(ASTM D1505)0.91〜0.95g/cmのエチレン系樹脂や直鎖状低密度ポリエチレンである。
本発明で用いられるエチレン系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量分布((重量平均分子量/数平均分子量)(Mw/Mn))は特に限定しないが、1.5〜6.0程度のものである。
その他の成分
本発明に係る熱可塑性エラストマー(B)中に、必要に応じて、スリップ剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
上記スリップ剤としては、たとえば脂肪酸アミド、シリコーンオイル、グリセリン、ワックス、パラフィン系オイルなどが挙げられる。
充填剤としては、従来公知の充填剤、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維などが挙げられる。
熱可塑性エラストマー(B)
前記の熱可塑性エラストマー(A)、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム及びエチレン系樹脂と必要に応じその他の成分とを混合して、熱可塑性エラストマー(B)を得る。熱可塑性エラストマー(A)、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム、エチレン系樹脂の配合割合として、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム1〜100重量部、エチレン系樹脂1〜100重量部であり、好ましくは、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム5〜80重量部、エチレン系樹脂5〜80重量部、さらに好ましくは、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム10〜50重量部、エチレン系樹脂10〜50重量部である。
ここでエチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴムの熱可塑性エラストマー(A)に対しての添加方法としては、成形を行う前にドライブレンドしても良いが、溶融状態で混練する方が分散の点で好ましい。
本発明におけるエチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴムの添加は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
その混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは170〜240℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは3〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1である。
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用い得るが、非開放型の装置が好ましい。
加硫ゴム成形体
この成形体を形成する加硫ゴムとしては、熱可塑性エラストマー組成物との溶着性の面からエチレン・α- オレフィン(・ポリエン)共重合体ゴムが好ましい。このような共重合体ゴムとして、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが好ましく用いられる。
なお、ここでいう加硫ゴムとは、イオウを用いて架橋したもののみならず、他の架橋剤で架橋したものも含まれる。
本発明に係る熱可塑性エラストマー(B)は、車両の内外装材として用いられる加硫ゴム成形体(好ましくはポリオレフィン系加硫ゴム成形体)に溶着するコーナー部、たとえば自動車用ウェザーストリップのコーナー部分(コーナー材)に好適に用いられる。具体的には、ポリオレフィン系加硫ゴムの押出成形物を裁断し、得られた裁断押出物同士を異なる方向から接続するコーナー部分の成形において、上述した本発明に係る熱可塑性エラストマー(組成物)を融点以上の温度で射出成形して、加硫ゴムの押出成形品と接触させて溶着させることにより、ウェザーストリップを得ることができる。
本発明に係る熱可塑性エラストマーからなるコーナー部成形体を有するウェザーストリップについて図1に基づいてより具体的に説明する。
図1は、自動車のウェザーストリップ(グラスランチャンネル)およびその成形方法を説明する模式斜視図である。
図1の(A)に示すように、ウェザーストリップは、加硫ゴム製の裁断押出成形物1、2と、この裁断押出成形物1、2を異なる方向から接続する際に形成される接合コーナー部材3とで構成されている。この裁断押出成形物1、2は、加硫ゴムをチャンネル状に押出成形した後、所定の長さに裁断したものである。この裁断押出成形物1、2は長手方向の形状が直線形状をしている。また、ここでいう「接合コーナー部材」とは、裁断押出成形物同士を異なる方向から接続する際に形成される熱可塑性エラストマー製の部分をいう。
このようなウェザーストリップは、次のようにして調製することができる。
まず、射出成形用金型4を予め所定の温度に加熱しておく。次に、図1の(B)に示すように、この金型4に加硫ゴムからなる裁断押出成形物1、2を挿入する。
次いで、図示していないが、加熱室内(スクリュー内)で融点以上の温度で溶融された本発明に係る熱可塑性エラストマーを、金型4のキャビティとコアの間にできる空間部に注入し、裁断押出成形物1、2の端面に、融点以上の温度で溶融させた本発明に係る熱可塑性エラストマーを溶着させた後、この熱可塑性エラストマーを冷却し、図1の(B)に示すようなコーナー部材3を有するウェザーストリップを得る。
上記の裁断押出成形物1、2の調製に用いられる加硫ゴムとしては、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが主成分であるのが好ましく、エチレン・α- オレフィン非共役ポリエン共重合体ゴムにおける炭素原子数3〜20のα- オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11- メチルドデセン-1、12- エチルテトラデセン-1などが挙げられる。これらのα- オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのα- オレフィンのうち、炭素原子数3〜8のα- オレフィン、たとえばプロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-オクテンが特に好ましい。
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、耐熱老化性、強度特性、ゴム弾性、耐寒性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、(a)エチレンから導かれる単位と(b)炭素原子数3〜20のα- オレフィンから導かれる単位とを、50/50〜90/10[(a)/(b)]のモル比で含有していることが好ましい。このモル比はより好ましくは65/35〜90/10、さらに好ましくは65/35〜85/15、特に好ましくは65/35〜80/20である。
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、
1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4- ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4- ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、8-メチル-4- エチリデン-1,7- ノナジエン、4-エチリデン-1,7- ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、5-ビニリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-イソプロペニル-2- ノルボルネン、5-イソブテニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、シクロペンタジエン、4-エチリデン-8- メチル-1,7- ナノジエンが好ましい。
これらの非共役ポリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムのヨウ素価は、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、耐圧縮永久歪み性に優れる加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られ、かつ、コスト的に有利である点で、1〜40であることが好ましく、1〜30であることが更に好ましい。
エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、強度特性、耐圧縮永久歪み性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、2.0〜4.5dl/gであることが好ましく、2.2〜4.0dl/gあることが更に好ましい。これらのエチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、単独で用いてもよく、また2種類以上組み合わせて用いてもよい。
加硫ゴム中には、十分な機械強度を有する押出成形加硫ゴム成形体を得るために、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを30〜300重量部の割合で用いるのが好ましい。
カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、機械的強度および製品肌の良好な加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、窒素吸着比表面積が10〜100m2/gであることが好ましい。
加硫ゴム中には、意図する加硫物の用途に応じて、老化防止剤、加工助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤等の従来公知の配合剤が配合される。
また、加硫ゴム中には補強剤として無機充填剤を用途に応じて適宜用いることができるが、通常、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して最大100重量部である。
無機充填剤としては、具体的には、シリカ、軟質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
加硫ゴム中に配合される軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;
トール油;
サブ、(ファクチス);
蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;
ナフテン酸;
パイン油、ロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;
マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも、石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これらの軟化剤の配合量は、加硫物の用途により適宜選択される。
加硫ゴムの加硫に用いる加硫剤としては、イオウおよびイオウ化合物が挙げられる。
イオウとしては、具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
イオウ化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、たとえばモルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。
これらの中では、イオウが好ましい。
イオウまたはイオウ化合物は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜10重量部の割合で用いられる。
また、加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。加硫促進剤としては、具体的には、
N-シクロヘキシル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N-オキシジエチレン-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N-t-ブチル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N-ジイソプロピル-2- ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;
2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4- モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;
ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン(DOTG)、オルソトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン系化合物;
アセトアルデヒド- アニリン縮合物、ブチルアルデヒド- アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン(H)、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド- アンモニア系化合物;
2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;
チオカルバニリド、ジエチルチオウレア(EUR)、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア系化合物;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム系化合物;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩;
ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩;
亜鉛華(酸化亜鉛)等の化合物が挙げられる。
これらの加硫促進剤は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜20重量部の割合で用いられる。
加硫ゴムにおいて使用する老化防止剤としては、たとえばアミン系、ヒンダードフェノール系またはイオウ系老化防止剤等が挙げられるが、これらの老化防止剤は、本発明の目的を損なわない範囲で用いられる。
アミン系老化防止剤としては、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類等が挙げられる。
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられる。
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される加工助剤を使用することができる。具体的には、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;前記高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
このような加工助剤は、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、通常10重量部以下の量で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'- ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p,p'- オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。
また、加硫ゴムの成分中に、公知の他のゴムや樹脂をブレンドして用いることができる。
このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、1,2-ポリブタジエン、ポリブテンなどを挙げることができる。
[ゴム組成物およびその加硫ゴム成形体の調製]
加硫ゴム成形体の調製の際に用いられるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、エチレン・α- オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、カーボンブラック、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤等の添加剤を80〜170℃の温度で2〜20分間混練した後、イオウをオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
上記のようにして調製された押出成形用ゴム組成物は、押出成形機により意図する形状とし、成形と同時に、または成形物を加硫槽内に導入し、140〜300℃の温度で1〜20分間加熱することにより、加硫することができる。
加硫の工程は、通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder Curing
MediumまたはPowder Curing Method)、UHF(極超短波電磁波)、スチーム等の加熱手段を用いることができる。 なお、ここではウェザーストリップを例にとって説明したが、本発明に係る熱可塑性エラストマーは、加硫ゴム成形体に融着成形体を形成する場合はもちろん、ドアトリム等の表皮部を融着表皮層で形成する場合にも適用することが可能である。
本発明によれば、接着剤層を介さずとも加硫ゴム(母材)に対して十分な接着強度を生じる成形体を形成し得る熱可塑性エラストマー組成物およびその組成物を加硫ゴムに溶着させた成形体、ならびに熱可塑性エラストマーとして十分な硬度とゴム弾性を有する成形体を形成し得る、成形性、経済性に優れる熱可塑性エラストマー組成物およびその組成物を加硫ゴムに溶着させた成形体を提供することができる。
本発明の特許性は、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム、エチレン系樹脂を添加された熱可塑性エラストマーは、溶着の際、加硫ゴム側との融着性が良いため、溶着後の剥離試験において接着性の強度が高いことである。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で用いた実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー(TPE)組成物のメルトフローレート(MFR)、実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体の引張剥離強度およびその剥離時の破壊形態、硬度、引張強度、伸び、成形性の測定ないし評価は、次の方法に従って行なった。
(1)メルトフローレート(MFR)
熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレートは、ASTM D 1238−65Tに準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
(2)硬度
硬度は、JIS K6253に準拠して、ショアーA硬度を測定した。
(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
(3)引張強度および伸び
JIS K6251に準拠して、引張試験を下記の条件で行ない、破断時の引張強度と伸びを測定した。
(試験条件)プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き引張速度500mm/分の条件で行なった。
(4)接着強度
後述する[参考例]で得られた加硫ゴムプレスシート(縦12cm×横14.7cm×厚み2mmの平板)を被接着材としてカッターにて切断して縦2.5cm×14.7cm×厚み2mmとし、被接着材として得られた加硫ゴム成形物を射出成形用金型に両面テープにて付着する。そして、100Ton射出成形機にて、射出温度250℃、金型温度50℃にて、この加硫ゴム成形物の切断面に溶着用熱可塑性エラストマー組成物がその射出段階にて被接着材と溶融接着するように成形する。
このようにして溶融接着させた成形品を幅2cmの短冊状に打ち抜いて200mm/分の引張速度で剥離試験を行ない、その時の引張剥離強度(接着強度)を測定する。
(5)母材破壊率
上記接着強度試験を行なった後に、加硫ゴム側の剥離面を目視にて観察し、もし断面にコーナー材が残っている部分と剥離面全体の面積より母材破壊率を測定した。
[参考例]
(加硫ゴムプレスシートの調製)
原料ゴムとしてエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=68モル%、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=2.8dl/g、ヨウ素価=12)100重量部と、FEF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製、商品名 旭#60G]170重量部と、軟化剤[出光興産(株)製、商品名 ダイアナプロセスオイルTM PS−430]95重量部と、ステアリン酸1重量部と、亜鉛華1号5重量部と、活性剤[ライオン(株)製、商品名 アーカード2HT−F]1重量部とを、容積1.7リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所製、BB−2形ミキサー]で混練した。
混練方法は、まず原料ゴムを1分素練りし、次いで、カーボンブラック、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華1号、活性剤を入れ2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、更に2分間混練しゴム配合物(I)1390重量部を得た。この混練は充填率75%で行ない、更に同様の手順により、2バッチ混練し、合計4170重量部を得た。
得られたゴム配合物(I)から3670重量部を秤量し、14インチロール(日本ロール(株)製)(前ロールの表面温度60℃、後ロールの表面温度60℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、そのゴム配合物(I)に、イオウ5重量部、2-メルカプトベンゾチアゾール[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーM]15重量部、ジベンゾチアジルジスルフィド[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーDM]5重量部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーBZ]20重量部、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーPZ]5重量部、エチレンチオ尿素[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラー22C]10重量部、ジチオジモルホリン[三新化学工業(株)製、商品名 サンフェルR]5重量部、および酸化カルシウム[井上石灰工業(株)製、商品名 ベスタPP]50重量部を添加し、14インチオープンロール(日本ロール(株)製、ロール温度60℃)で7分間混練し、ゴム配合物(II)を得た。
以下、このゴム配合物(II)を用い、前述のようにして加硫ゴムプレスシートを得た。なお、このとき150tonプレスを用いた。
(熱可塑性エラストマーペレット(A)の作成)
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体ゴム[エチレン含量:78モル%、プロピレン含量:22モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]74、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名 PW−380)を62重量部;以下、EPTと略す。]60.6重量部と、
ポリプロピレンとしてプロピレン単独重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):55g/10分、融点(Tm):162℃;以下、PP−1と略す。]27重量部、プロピレン単独重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):1.5g/10分、融点(Tm):160℃;以下、PP−2と略す。]12.4重量部と、
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 イルガノックス1010]0.1重量部と、
耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 チヌビン326]0.1重量部と、
スリップ材としてオレイン酸アミド[ライオン(株)製、商品名 アーモスリップCP]0.3重量部と、
架橋剤として有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーヘキサ25B]0.64重量部と、
架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)0.48重量部と
をヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:280rpm、押出量:40kg/h]にてパラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製、商品名 PW−100]21重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行ない、まず熱可塑性エラストマー組成物のペレット(A)を得た。
[実施例1]
参考例で作成した熱可塑性エラストマーペレット(A)100重量部とエチレン・ブテンー1・オクテン共重合体ゴム[エチレン含有量:83.4モル%、ブテンー1含有量:11.3モル%、オクテン−1:5.4モル%、190℃でのMFR=0.5g/10min、Mw/Mn=2.48、以下EBOR−1と略す。]21.4重量部と直鎖状低密度ポリエチレン2022L[三井化学(株)社製][190℃でのMFR=2.1g/10min、密度0.920g/cm、以下LLDPE−1と略す。]21.4重量部をヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C4 160℃、C5〜C12 200℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:280rpm、押出量:40kg/h]にて造粒を行ない、まず熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
このペレット状の熱可塑性エラストマー組成物について前記方法に従って評価した。
その結果を第1表に示す。
[実施例2]
実施例1において、LLDPE−1の代わりに直鎖状低密度ポリエチレン20200J[三井化学(株)社製][190℃でのMFR=18g/10min、密度0.920g/cm、以下LLDPE−2と略す。]を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
その結果を第1表に示す。
[実施例3]
実施例1において、EBOR−1の代わりに、エチレン・ブテンー1・オクテン−1共重合体ゴム[エチレン含有量:85.3モル%、ブテンー1含有量:8.3モル%、オクテン−1:6.4モル%、190℃でのMFR=3.8g/10min、Mw/Mn=2.11、以下EBOR−2と略す。]を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
[実施例4]
実施例1において、EBOR−1の代わりにEBOR−2、LLDPE−1の代わりにLLDPE−2を使用した以外は実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
[比較例1]
熱可塑性エラストマー(A)をそのまま射出成形し、実施例1と同様に射出成形機により成形し、評価を行なった。
その結果を第1表に示す。
[比較例2]
実施例1において、LLDPE−1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
その結果を第1表に示す。
[比較例3]
実施例1において、EBOR−1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
その結果を第1表に示す。
Figure 0004927460
図1の(A)は、直線部が加硫ゴム成形体から形成され、コーナー部分が熱可塑性エラストマー組成物から形成されている自動車用ウェザーストリップの1例を示す模式斜視図であり、図1の(B)は、そのウェザーストリップのコーナー部分の形成方法を説明するための模式斜視図である。
符号の説明
1、2 ・・・裁断押出成形物
3 ・・・接合コーナー部材
4 ・・・射出成形用金型

Claims (4)

  1. 熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、MFR(190℃、2.16kgf)が0.1〜100g/10minであるエチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムを1〜100重量部と、MFR(190℃、2.16kgf)が0.1〜100g/10minであるエチレン系樹脂を1〜100重量部と、を配合されてなり、
    前記熱可塑性エラストマー(A)が、部分あるいは完全架橋されたオレフィン系ゴムとしてのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体とオレフィン系樹脂としてのプロピレン系重合体と軟化剤とを含み、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体プロピレン系重合体の合計量に対して前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を90重量%〜20重量%および前記プロピレン系重合体を10重量%〜80重量%含み、かつ前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体プロピレン系重合体の合計量100重量部に対して前記軟化剤を0〜150重量部含み、
    前記エチレン・ブテン−1・オクテン−1共重合体ゴムのエチレン含有量が70〜94モル%、ブテン−1含有量が3〜15モル%、および、オクテン−1含有量が3〜15モル%である、
    ことを特徴とする熱可塑性エラストマー(B)。
  2. 前記エチレン系樹脂が、密度(ASTM D1505)0.91〜0.95g/cmの直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー(B)。
  3. 加硫ゴム成形体への溶着用として用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性エラストマー(B)。
  4. 前記熱可塑性エラストマー(B)を加硫ゴム成形体へ溶融接着させてなる成形品を、2cmの短冊状に打ち抜いて200mm/分の引張り速度で剥離する試験を行った後の、前記溶着させた熱可塑性エラストマー(B)が前記加硫ゴム面に50%以上残っていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー(B)。
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