JP3950424B2 - 熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばマスク基板等の基板に例えばレジスト液を塗布した後、当該基板に対して熱処理を行うための熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、半導体マスクを形成する場合、角型のマスク基板にレジスト液を塗布し、フォトマスクを用いてそのレジスト膜を露光し、更に現像することによって所望のレジストパタ−ンを作製することが行われている。前記基板としては例えば一辺の長さが152mmの正方形であり、厚さが6.35mmの、一辺の長さが6インチサイズのガラス基板が用いられる。
【0003】
前記レジスト液は塗布膜の成分を溶剤に溶解させたものであり、レジスト液の塗布後には基板を所定温度に加熱して前記溶剤を揮発させる熱処理が行われる。この熱処理は、ヒータを備えた熱板上に基板を載置することにより行われているが、既述のような厚みのある基板の場合、基板温度の面内均一性が悪化しやすい。つまり厚みのある基板では、基板側面から放熱が多くなるので、基板の周縁領域の温度が中央領域よりも低下してしまう傾向にあるからである。このように基板温度が面内において異なると、前記溶剤の揮発量が面内において変化し、結果としてレジスト膜の膜厚の面内均一性が悪化してしまう。
【0004】
このため例えば図18に示すように、熱板10に凹部11を形成し、この凹部11内に基板12を収める状態で基板12を熱板10により加熱することにより、基板側面の近傍領域を熱板10にて加熱し、当該側面からの放熱を抑えることが行われている。図中13はヒータである。しかしながらこの手法では、凹部11の隅部にパーティクルが溜まってしまうことがあるが、このパーティクルは除去が困難であり、当該パーティクルが基板12に付着する恐れがある。また熱板10に凹部11を形成するためには多大な時間と費用が必要であり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
そこで本発明者らは、図19に示すように熱板10上に載置された基板12の周囲に側板14を設けることにより基板側面からの放熱を抑えることを検討している。このような手法としては、加熱プレートの被処理体配置部分に、被処理体を取り囲むように被処理体よりも高い外枠を設ける構成(例えば、特許文献1参照)や、熱板上に載置されたマスクの周囲にマスクの厚みより高いか、または等しい高さの側板を配置する構成、熱板上に載置されたマスクの周囲に側部熱板を設け、マスクの側面からの放熱を防止する構成(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−204428号公報(請求項3、段落0021、段落0042、段落0050、図2参照)
【特許文献2】
特開2002−100562号公報(段落0034、段落0042、図4、図6参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の構成では、外枠は基板の周囲に空気が入るのを抑えるために設けられるものであり、このため外枠は熱板上に隙間を形成しないように設けられている。また特許文献2の構成においても、図4及び図6より、側板や側部熱板は熱板との間に隙間を形成しないように設けられている。ここで特許文献1の外枠と特許文献2の側板等は、被処理体やマスクの表面よりも高くなるように設けられているので、図20に示すように、パーティクル15が処理容器内の気流に乗って飛散してくると、そのまま基板12表面まで飛散していき、欠陥発生の原因となる恐れがある。またパーティクル15が基板と側板14等の間に入り込みと、このパーティクル15はどこにも逃げていけず、結局側板14等と熱板10との間の隅部に溜まってしまい、基板12がパーティクル15により汚染される懸念がある。
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、基板を加熱プレートに載置して加熱するにあたり、基板温度の高い面内均一性を確保する技術を提供することにある。また他の目的は、基板のパーティクル汚染を抑えながら、基板の面内温度均一性を向上させる技術を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱処理装置は、基板を加熱するための加熱プレートと、
前記加熱プレートを加熱するための加熱手段と、
前記加熱プレートに載置された基板の周囲に、内面が前記基板の側面と対向するように、かつ加熱プレートの表面との間に隙間を形成するように設けられた枠体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成では、加熱プレートにより基板を加熱するにあたり、基板の周囲に枠体が設けられているので、基板側面からの放熱が抑えられ、基板温度の面内均一性が向上する。この際、枠体は加熱プレート表面との間に隙間を形成するように設けられているので、枠体と加熱プレートとの間にパーティクルが溜まることが抑えられ、基板へのパーティクルの付着が防止される。
【0011】
また本発明の他の発明は、基板を加熱するための加熱プレートと、
前記加熱プレートを加熱するための加熱手段と、
前記加熱プレートに載置された基板の周囲に、内面が前記基板の側面と対向するように設けられ、前記内面が湾曲する枠体と、を備えることを特徴とする。ここで前記枠体の内面は、加熱プレートに載置された基板の側面に対向する面が凹面状に湾曲する構成でもよいし、加熱プレートに載置された基板の側面に対向する面が凸面状に湾曲する構成でもよい。また前記枠体の内面は鏡面により構成してもよいし、梨地により構成してもよい。
【0012】
このような構成では、枠体の内面を湾曲させ、枠体の内面において基板に近い箇所や遠い箇所を形成することにより、当該枠体により基板側面の適切な部位を選択的に加熱することができ、これにより基板側面からの放熱が選択的に制御され、基板温度の高い面内均一性を確保することができる。
【0013】
さらに本発明では、前記枠体を、当該枠体の内面と、前記加熱プレートに載置された基板の側面との距離が変化するように移動させるための駆動機構を備えるようにしてもよく、この場合例えば基板温度が昇温しているときよりも、基板温度が定温状態にあるときの方が、前記枠体の内面が加熱プレートに載置された基板の側面に近くなるように前記駆動機構を制御する制御部を備えるようにしてもよい。また前記枠体は、周方向に分割して構成するようにしてもよいし、当該枠体を加熱するための加熱部を備える構成であってもよい。
【0014】
ここで前記基板は一辺の長さが6インチの略正方形のガラス基板であり、加熱プレートは直径が12インチの半導体ウエハを加熱するための円形プレートを用いることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の熱処理装置が組み込まれた塗布膜形成装置の一実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の塗布膜形成装置の一実施の形態に係る全体構成を示す平面図であって、図2はその概略斜視図である。図中B1は例えば5枚の基板例えばマスク基板Gが収納されたキャリアCを搬入出するためのキャリアブロックであり、このキャリアブロックB1は、前記キャリアCを載置するキャリア載置部21と受け渡し手段22とを備えている。
【0016】
前記マスク基板Gは、例えば半導体マスクを形成するためのガラス基板であり、例えば一辺の長さが152±0.5mmの正方形であって、厚さが6.35mmの、一辺の長さが6インチサイズの角型のガラス基板が用いられる。前記受け渡し手段22はキャリアCから基板Gを取り出し、取り出した基板GをキャリアブロックB1の奥側に設けられている処理部B2へと受け渡すように、左右、前後に移動自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在に構成されている。
【0017】
処理部B2の中央には主搬送手段23が設けられており、これを取り囲むように例えばキャリアブロックB1から奥を見て例えば右側には塗布ユニット24及び現像ユニット25が、左側には洗浄ユニット26が、手前側、奥側には加熱・冷却系のユニット等を多段に積み重ねた棚ユニットU1,U2が夫々配置されている。塗布ユニット24は、基板にレジスト液を塗布する処理を行うユニット、現像ユニット25は、露光後の基板に現像液を液盛りして所定時間そのままの状態にして現像処理を行うユニット、洗浄ユニット26はレジスト液を塗布する前に基板を洗浄するためのユニットである。
【0018】
前記棚ユニットU1,U2は、複数のユニットが積み上げられて構成され、例えば図2に示すように、熱処理ユニット3や、冷却ユニット27のほか、基板Gの受け渡しユニット28等が上下に割り当てられている。前記主搬送手段23は、昇降自在、進退自在及び鉛直軸まわりに回転自在に構成され、棚ユニットU1,U2及び塗布ユニット24、現像ユニット25並びに洗浄ユニット26の間で基板Gを搬送する役割を持っている。但し図2では便宜上受け渡し手段22及び主搬送手段23は描いていない。
【0019】
前記処理部B2はインタ−フェイス部B3を介して露光装置B4と接続されている。インタ−フェイス部B3は受け渡し手段29を備えており、この受け渡し手段29は、例えば昇降自在、左右、前後に移動自在かつ鉛直軸まわりに回転自在に構成され、前記処理ブロックB2と露光装置B4との間で基板Gの受け渡しを行うようになっている。
【0020】
このような塗布膜形成装置における基板Gの流れについて述べておくと、先ず外部からキャリアCがキャリア載置部21に搬入され、受け渡し手段22によりこのキャリアC内から基板Gが取り出される。基板Gは、受け渡し手段22から棚ユニットU1の受け渡しユニット28を介して主搬送手段23に受け渡され、所定のユニットに順次搬送される。例えば洗浄ユニット26にて所定の洗浄処理が行われ、熱処理ユニットの一つにて加熱乾燥が行われた後、冷却ユニット27にて所定の温度に調整され、塗布ユニット24にて塗布膜の成分が溶剤に溶解されたレジスト液の塗布処理が行われる。
【0021】
続いて基板Gは熱処理ユニットの一つにて、所定温度に加熱されてレジスト液中の溶剤を蒸発させて除去するプリベーク処理が行われた後、冷却ユニット27の一つにて所定の温度に調整され、次いで主搬送手段23により棚ユニットU2の受け渡しユニット28を介してインターフェイス部B3の受け渡し手段29に受け渡され、この受け渡し手段29により露光装置B4に搬送されて、所定の露光処理が行われる。この後基板Gは、インターフェイス部B3を介して処理部B2に搬送され、熱処理ユニットの一つにて所定の温度に加熱されて、ポストエクスポージャーベーク処理が行われる。次いで冷却ユニット27にて所定の温度まで冷却されて温度調整された後、現像ユニット25にて現像液が液盛りされ、所定の現像処理が行われる。こうして所定の回路パターンが形成された基板Gは主搬送手段23、キャリアブロックB1の受け渡し手段22を介して、例えば元のキャリアC内に戻される。
【0022】
続いて本発明の熱処理装置である熱処理ユニット3について図3を参照して説明する。この熱処理ユニット3では、基板Gにレジスト液を塗布した後に、レジスト液に含まれる溶剤を除去する処理が行われる。図中31は処理容器であり、その側面には、例えば全周に亘って開口部31aが形成され、この開口部31aを介して処理容器31の内部に主搬送手段23がアクセスできるように構成されている。前記開口部の31aの上部側は処理容器31内を排気するための排気部32として構成され、処理容器31の天井部のほぼ中央領域には排気口32aが形成され、この排気口32aには、図示しない排気手段が接続されて、処理空間内の雰囲気を外部に排気できるようになっている。
【0023】
このような処理容器31の内部には例えば加熱プレート4が、開口部31aを介して主搬送手段23との間で基板Gの受け渡しを行うことができる位置に設けられている。基板Gはこの加熱プレート4上に例えばプロキシミティーピン41を介して、例えば加熱プレート4から僅かに例えば0.5mm程度浮上した状態で載置され、加熱プレート4により加熱されるようになっている。
【0024】
前記加熱プレート4は例えば図4,図5に示すように、直径が12インチサイズのウエハの加熱処理に用いられる加熱プレートにより構成される。つまり加熱プレート4は直径が330mm程度、厚さが30mm程度の大きさの円形プレートよりなり、例えばアルミニウム合金や、ステンレス鋼等により構成されている。
【0025】
この加熱プレート4の内部には加熱手段をなすヒータ42が内蔵されており、このヒータ42により基板Gが100℃〜250℃程度に加熱されるようになっている。ヒータ42は、例えば図6に示すように、基板Gを加熱するための円形の平面状のヒータ42aと、このヒータ42aの周囲に同心円状に設けられた環状ヒータ42b,42cの3つのヒータ42a〜42cにより構成されている。これらヒータ42a〜42cは、基板Gが載置された領域のみならず加熱プレート4の全面が満遍なく加熱されるように設けられており、例えばこの例では環状ヒータ42b,42cは基板Gの載置領域の外側に設けられている。なおヒータ42の数や形状はこの例に限らず、平面ヒータ42aは角形であってもよいし、環状ヒータ42b,42cも角形の環状体であってもよい。またこの例の環状ヒータの数を増やしたり、減らしたりしてもよいし、平面ヒータを設けず、複数の環状ヒータにより基板Gを加熱するようにしてもよい。
【0026】
このような加熱プレート4には、主搬送手段23との間に基板の受け渡しを行うための、例えば4本の支持ピン43が設けられている。この支持ピン43は加熱プレート4の下方に設けられた保持プレート44aを介して昇降機構44に連結され、これにより支持ピン43の先端が加熱プレート4の表面に対して出没できるように昇降自在に構成されている。
【0027】
また加熱プレート4に載置された基板Gの周囲には、図4,図5に示すように、当該基板Gを若干の隙間Aを形成して取り囲むように枠体5が設けられている。この枠体5は例えば角形の環状体よりなり、例えば下面を支持する支持部51により加熱プレート4表面に対して若干の隙間Bを介して載置されている。前記枠体5や支持部51は例えばアルミニウム合金等の金属等の熱伝導性を備えた材質により構成されている。
【0028】
ここで基板Gの側面と枠体5の内周面との間に形成される隙間Aは例えば1mm〜10mm程度、枠体5の下面と加熱プレート4表面との間に形成される隙間Bは例えば0.1mm〜0.5mm程度に、夫々設定することが好ましい。また枠体5の高さCは、例えば基板G表面の高さとほぼ同じかまたは若干低くなるように設定することが好ましく、例えば枠体5表面までの高さCは加熱プレート4より例えば5mm〜6mm程度に設定され、枠体5の幅Dは例えば10mm程度に設定される。
【0029】
前記処理容器31の開口部31aは、筒状のシャッタ33により開閉自在に構成されている。このシャッタ33は加熱プレート4の外側に設けられる筒状の本体33aの上端に内向きの水平片33bを設けた形状からなる。このシャッタ33は、例えばエアシリンダよりなる昇降機構34により、前記水平片33bが開口部31aの下方側近傍に位置し、当該開口部31aを開く位置と、前記水平片33bが開口部31aの上方側近傍に位置し、当該開口部31aをほぼ塞ぐ位置との間で昇降自在に構成されている。ここでシャッタ33は、排気部32下面との間で僅かな隙間Eを形成する位置で上昇が停止されるようになっている。図中35はシャッタ33を所定の高さ位置で停止するためのストッパーである。
【0030】
このような熱処理ユニット3では、シャッタ33を下降させ、開口部31aを介して主搬送手段23を処理容器31の内部に進入させて、この主搬送手段23と支持ピン43との協働作業により加熱プレート4に対して基板Gの受け渡しが行われる。こうして加熱プレート4の所定の位置に基板Gを載置した後、主搬送手段23を退行させ、シャッタ33を上昇させて、排気部32及びシャッタ33の間に隙間Eを残して不完全に遮断する、いわゆるセミクローズド状態として排気を行ないながら、加熱プレート4により基板Gを例えば120℃程度の温度に加熱して所定の加熱処理を行う。
【0031】
この実施の形態では、基板Gを囲むように枠体5が設けられているので、この枠体5により基板側面からの放熱が抑えられ、基板温度の面内均一性を高めることができる。枠体5や支持部51は熱伝導性を備えているので、加熱プレート4からの熱が支持部51を介して、または加熱プレート4からの輻射熱により枠体5に伝わり、枠体5自体が加熱される。この枠体5の内周面は基板Gの側面近傍に存在するので、基板Gの側面近傍が枠体5により加熱されることになり、基板Gの厚みが大きい場合であっても、基板側面からの放熱が抑えられるからである。
【0032】
ところで処理容器31内では、シャッタ33と排気部32との間の隙間Eから入り込み、排気口32aに向かう気流が形成されているので、基板Gの外方から内側に向かう気流に沿ってパーティクルが飛散することがある。この際枠体5の高さを基板G表面の高さより低く設定すると、図7に示すようにパーティクル100は、基板Gの側面に衝突して当該側面と枠体5との間の隙間Aに入り込んで行くので、基板G表面へのパーティクル100の付着が抑えられる。また枠体5と加熱プレート4との間には隙間Bが形成されているので、前記基板Gと枠体5との間に入り込んだパーティクル100は、この隙間Bを介して処理容器31内の排気流に乗って排出される。このため枠体5と加熱プレート4との間の隅部にパーティクル100が溜まるのを防ぐことができ、基板Gのパーティクル汚染を抑えることができる。
【0033】
またこの例においては、加熱プレート4として直径12インチサイズのウエハを加熱するための既存の円形プレートを利用しているので、一辺の長さが6インチサイズの角形基板用に新たに加熱プレートを用意する必要が無く、コスト的に有利である。この際一辺が6インチサイズの角形基板の一辺は152mm程度であるのに対し、加熱プレート4は直径330mm程度と大きいので、さらに基板温度の面内均一性を向上させることができる。
【0034】
この理由については次のように考えられる。基板Gを加熱プレート4に載置してからシャッタ33を閉じ、処理を開始しようとする時、シャッタ33の内側が冷えていて前記基板Gの外方から内側に向かう気流がシャッタ33で冷やされる現象が発生する。ここで加熱プレートが基板Gよりも僅かに大きい程度の大きさの場合、冷たい風がそのまま基板Gに到達してしまい、基板Gの外周部の温度が低下してしまう。また加熱プレート4自体も周縁領域から外方に放熱していくので、基板Gの側面からの放熱が促され、この点からも基板Gの外周部の温度が低下する原因となっている。この放熱を補うために加熱プレート4の周縁領域のヒータ温度を高めようとすると、基板Gが載置されている領域と近いので、基板Gの周縁領域の温度が高くなりすぎ、結果として基板温度の面内均一性が悪化する。
【0035】
これに対して、加熱プレート4が基板Gに比べて十分に大きく、基板Gの載置領域の外方側の領域にもヒータが設けられ、加熱プレート4全体が加熱されている場合、前記シャッタ33により冷却された風が基板Gに到達するまでに加熱プレート4により十分に暖められるので、冷たい風が基板Gに到達することがなく、基板Gの外周部の温度低下を抑えることができる。また加熱プレート4の周縁領域から放熱が起こったとしても、この放熱を補うように加熱プレート4の周縁領域が加熱されるが、加熱プレート4の周縁領域は基板Gが載置されている領域から遠いので基板G温度に影響を与えることがなく、結果として基板Gの外周部の温度が低下しにくく、基板G温度の面内均一性が向上する。
【0036】
続いて枠体5の他の例について説明するが、この例の枠体5は、内面(基板Gの側面と対向する面)が湾曲するように構成されているものである。図8は、枠体5Aの内面61(基板Gの側面に向いた面)が凹面状に湾曲するように形成されている例である。この例では、枠体5Aの内面61が、基板角部の近傍領域は枠体5Aに近く、基板Gの辺の中央近傍領域では枠体5Aから離れるように形成されている。従って基板Gは枠体5Aにより角部近傍が選択的に加熱されることになる。
【0037】
このような枠体5Aは、例えば処理温度が200℃以上と高く、加熱プレート4からの放射熱が大きい場合に有効である。このように処理温度が高いと、基板Gの4隅からの放熱が大きくなってしまうので、この領域に枠体5Aが近づき、基板Gの辺の中央領域では枠体5Aが離れるようにすると、基板Gの角部が枠体5Aにより選択的に加熱され、この領域からの放熱を抑えることができて、基板温度の面内均一性を高めることができる。
【0038】
また図9に示す例は、前記枠体5Bの内面62が凸面状に湾曲するように形成されているものである。この例では、枠体5Bの内面62は、基板Gの辺の中央近傍領域では枠体5Bに近く、基板Gの角部の近傍領域では枠体5Bから離れるように形成されている。従って基板Gは枠体5Bにより辺の中央近傍領域が選択的に加熱されることになる。
【0039】
このような枠体5Bは、例えば処理温度が100℃程度と低く、主として加熱プレート4からプロキシミティーピン41を介する熱伝導により基板Gが加熱される場合に有効である。このようにプロキシミティーピン41による熱伝導にて基板Gが加熱されると、プロキシミティーピン41と基板Gとの接触領域の温度が他の領域に比べて高くなる。ここでプロキシミティーピン41は基板Gの角部の近傍領域に設けられることが多く、これにより角部近傍領域の温度が他の領域に比べて高くなる。従って基板Gの4隅からの放熱を大きくするように、この領域では枠体5Bから離れ、基板Gの辺の中央領域では枠体5Bを近づけるようにすると、基板Gの辺の中央領域が枠体5Bにより選択的に加熱され、基板温度の面内均一性を高めることができる。
【0040】
また枠体5(5A,5B)は、基板Gに対向する内面を鏡面により構成するようにしてもよい。このようにすると、基板G側面からの放射熱が枠体5等の内面により反射され、さらに基板G側面からの温度低下を防ぐことができる。さらに枠体5等は、基板Gに対向する面を梨地により構成するようにしてもよい。梨地とはたとえば表面の粗さがRa=100μm程度の少し粗い面をいう。このようにすると、枠体5等の内面からの放射熱が多くなり、この放射熱により基板G側面が加熱され、さらに基板G側面からの温度低下を防ぐことができる。
【0041】
以上において枠体5A,5Bの内面を湾曲させたり、鏡面または梨地にて形成する例では、枠体5A,5Bを、加熱プレート4との間に隙間を形成しないで設けるようにしてもよい。
【0042】
続いて枠体のさらに他の例について説明する。この例の枠体5Cは、当該枠体5Cの内面と、前記加熱プレート4に載置された基板Gの側面との距離が変化するように、移動自在に構成されている。具体的には、例えば枠体5Cは、基板Gの側面に対向する棒状の4つのプレート71(71a〜71d)を組み合わせてなり、各プレート71は例えば加熱プレート4を貫通する支持部材72を介して、例えば加熱プレート4の下方側に設けられた駆動機構73により、当該プレート71の内面が、前記加熱プレートに載置された基板Gの側面に対して近付いたり、離れたりするように略水平方向に移動自在に構成されている。
【0043】
前記駆動機構73は例えばボールネジやエアシリンダ等によりなり、例えば制御部200により、処理温度や処理時間に応じて基板Gの側面と枠体5Cの内面との離間距離を例えば1mm〜10mm程度の間で変化させるように制御されている。
【0044】
このような構成では、基板Gを昇温させるときには、基板Gの周縁領域の温度が高くなる傾向があるので、図11(a)に示すように、プレート71を基板G側面から離れた位置に配置して、基板Gの周縁領域の温度上昇を抑え、基板Gの温度が昇温後の定温状態にあるときには、基板Gの周縁領域の温度が低下する傾向があるので、図11(b)に示すように、プレート71を基板G側面に近づけて、基板Gの周縁領域の温度低下を抑える。このため基板温度の面内均一性をより向上させることができる。
【0045】
さらに枠体5Dは、図12(a)に示すように、図10に示すプレート71a〜71dを長さ方向に複数例えば3個に分割し、各分割プレート81(81a〜81d)〜83(83a〜83d)を水平方向駆動機構により、基板G側面との距離を変化させるように構成してもよい。こうして、図12(b)に示すように、基板Gの辺の中央領域近傍の分割プレート82との離間距離と、基板Gの角部近傍の分割プレート81,83との離間距離とを適切な量に設定するように、夫々の分割プレート81〜83を配置することにより、基板Gの辺の中央領域と角部の放熱量を制御し、これにより基板Gの部位に応じて温調することができるので、基板温度の面内均一性をより向上させることができる。
【0046】
さらにまた本発明では、図13に示すように、枠体5Eに抵抗発熱体よりなる加熱部をなすヒータ91を内蔵し、このヒータの温度を図示しない制御部により、処理温度や処理時間に応じて変化させるようにしてもよい。ここで枠体5Eの温度によって基板Gからの放熱量が変化するので、枠体5Eの温度を、基板Gの昇温時や降温時、定温時の夫々のタイミングで最適な温度に調整することにより、基板Gからの放熱量が最適な状態で制御され、基板温度の面内均一性を高めることができる。
【0047】
以上において図10〜図13に示す構成では、枠体5C,5D,5Eを、加熱プレート4との間に隙間を形成しないで設けるようにしてもよい。
【0048】
【実施例】
続いて本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
一辺の長さが6インチサイズの温度センサ付き角型基板を、直径12インチサイズの半導体ウエハの加熱に用いられる直径330mmの円形の加熱プレートに載置し、前記基板の周囲にアルミニウム合金より構成された枠体を設け、基板を加熱プレートにより120℃に加熱して定温状態に保ち、この状態の基板面内の温度を検出した。このとき基板側面と枠体の内面との離間距離を2mm、枠体の加熱プレート表面からの高さを6mm、枠体の幅を10mm、枠体下面と加熱プレート表面との離間距離を0.1mmとした。
【0049】
前記温度センサ付き角型基板では、面内の31箇所に温度センサが設けられており、この温度センサからの測定値を元にして基板面内の温度分布を作成した。この結果を図14(a)に示すが、基板面内温度のレンジ幅は1.07℃であった。このレンジ幅は小さい値程、基板面内温度の均一性が高いことを示す。
(比較例1)
基板の周囲に枠体を設けない他は実施例1と同様の条件で実験を行い、基板面内の温度分布を作成した。この結果を図14(b)に示すが、基板面内温度のレンジ幅は1.51℃であった。
(比較例2)
加熱プレートを、直径8インチサイズの半導体ウエハの加熱に用いられる直径270mmの円形の加熱プレートに変更し、基板の周囲に枠体を設けないで、実施例1と同様の条件で実験を行い、基板面内の温度分布を作成した。この結果を図14(c)に示すが、基板面内温度のレンジ幅は1.93℃であった。
【0050】
これらの結果より、各温度分布やレンジ幅から見て、比較例2に比べて実施例1、比較例1の方が基板の面内温度の均一性が高く、これにより一辺の長さが6インチサイズの角型基板を、直径12インチサイズのウエハを加熱するための円形の加熱プレートにて加熱することは有効であると理解される。
【0051】
また実施例1と比較例1とを比べると、比較例1のグラフでは基板の中央付近の温度が高く、外周に行くに従って温度が低下する傾向にあるが、実施例1では基板の中央部と外周部での温度差が小さく、枠体を基板の周囲に設けることにより、基板温度の面内均一性を高められることが認められる。さらに実施例1の構成では、枠体と加熱プレートとの間にパーティクルの発生が認められなかった。
【0052】
(実施例2)
一辺が6インチサイズの温度センサ付き角型基板を、直径12インチサイズの半導体ウエハの加熱に用いられる直径330mmの円形の加熱プレートに載置し、前記基板の周囲にアルミニウム合金より構成された枠体を設け、基板を加熱プレートにより150℃に加熱して定温状態に保ち、この状態の基板面内の温度を検出した。このとき基板は加熱プレート表面に設けられたプロキシミティーピンにより加熱プレート表面から80μm浮上させた状態で支持し、基板側面と枠体の内面との離間距離を2mm、枠体の加熱プレート表面からの高さを6mm、枠体の幅を10mm、枠体下面と加熱プレート表面との離間距離を0.1mmとした。
【0053】
図15(a)に前記基板の31個の温度センサの温度測定値の経時変化について示すが、ここに示した2つの温度曲線の範囲内に全ての温度センサの測定値の温度曲線が含まれている。2回同じ実験をしたところ、温度が安定した400秒から600秒までの基板面内温度のレンジ幅は0.95℃と1.04℃であった。
(比較例3)
基板の周囲に枠体を設けない他は実施例2と同様の条件で実験を行った。図15(b)に温度センサの温度測定値の経時変化について示すが、温度が安定した400秒から600秒までの基板面内温度のレンジ幅は1.27℃であった。
(実施例3)
基板温度を220℃に加熱して実施例2と同様の条件で実験を行った。図16(a)に温度センサの温度測定値の経時変化について示すが、温度が安定した400秒から600秒までの基板面内温度のレンジ幅は1.50℃であった。
(比較例4)
基板の周囲に枠体を設けない他は実施例3と同様の条件で実験を行った。図16(b)に温度センサの温度測定値の経時変化について示すが、温度が安定した400秒から600秒までの基板面内温度のレンジ幅は2.30℃であった。
【0054】
これらにより、基板を150℃に加熱する場合、220℃に加熱する場合共に、枠体を設けた場合の方が、温度が安定したときの基板面内温度のレンジ幅が小さいことから、枠体を設けることにより基板温度の高い面内均一性が確保できることが認められる。さらに実施例2,3の構成では、枠体と加熱プレートとの間にパーティクルの発生が認められなかった。
【0055】
以上において、本発明は、基板側面からの放熱を抑えることにより、基板温度の高い面内均一性を確保するものであり、厚さの大きい基板程基板側面からの放熱量が大きいので、厚さが例えば3mm以上の厚さの大きい基板の熱処理に特に有効である。
【0056】
また本発明では、枠体5(5A〜5E)は、必ずしも基板全周を囲むものである必要はなく、基板の周囲をある程度囲むものであればよいし、意図的に基板を囲まない領域を形成するものであってもよい。また必ずしも環状体である必要はなく、分割されていてもよいし、図17(a)に示すように井形に形成された枠体5Fであってもよい。さらに図17(b)に示すように箱型のトレー状の枠体5Gを形成し、この内部に基板Gを保持させ、枠体5Gの下縁の一部を切欠して隙間50を形成する構成であってもよい。さらにまた加熱プレート40は、図17(c)に示すように、基板載置面に段差や傾斜面が形成される構成であってもよい。
【0057】
また本発明では所定の加熱処理が行われるものであれば、熱処理ユニットは上述の構成に限らず、シャッタによりウエハの搬送口を開閉するタイプ以外に、チャンバ方式の構成であってもよい。さらに本発明は、レジスト液を塗布した後の基板の加熱のみならず、洗浄後の加熱乾燥や、露光後のポストエクスポージャーベークや現像後のポストベーク等の熱処理に適用することができる。さらに上述の実施の形態では半導体マスク用の角型基板を処理する装置について説明したが、FPD(フラットパネルディスプレイ)用の基板例えば特殊用途向けに処理される厚みのある円形基板等を処理する装置についても本発明は適用可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、基板を加熱プレートにより加熱するにあたり、加熱プレートとの間に隙間を形成しながら基板の周囲を枠体で囲んでいるので、パーティクルの発生を抑えながら、基板温度の面内均一性を高めることができる。また本発明の他の発明によれば、基板の周囲を枠体で囲みながら加熱プレートにより基板を加熱しているので、基板温度の面内均一性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる塗布膜形成装置の一実施の形態の全体構成を示す平面図である。
【図2】前記塗布膜形成装置の全体構成を示す概略斜視図である。
【図3】前記塗布膜形成装置に設けられる熱処理ユニットの一例を示す断面図である。
【図4】前記熱処理ユニットに設けられる加熱プレートと枠体と基板とを示す概略斜視図である。
【図5】前記加熱プレートと枠体と基板とを示す平面図と側面図である。
【図6】前記加熱プレートに設けられるヒータを示す平面図である。
【図7】前記枠体の作用を説明するための側面図である。
【図8】前記枠体の他の例を示す平面図と概略斜視図である。
【図9】前記枠体のさらに他の例を示す平面図と概略斜視図である。
【図10】前記枠体のさらに他の例を示す平面図と側部断面図である。
【図11】図10に示す枠体の作用を説明するための平面図である。
【図12】前記枠体のさらに他の例を示す平面図である。
【図13】前記枠体のさらに他の例を示す側面図である。
【図14】本発明の効果を確認するために行った実施例1、比較例1、比較例2の結果を示す基板の温度分布を示す平面図である。
【図15】本発明の効果を確認するために行った実施例2と比較例3の結果を示す特性図である。
【図16】本発明の効果を確認するために行った実施例3と比較例4の結果を示す特性図である。
【図17】本発明の枠体と加熱プレートのさらに他の例を示す側面図である。
【図18】従来の熱処理ユニットの加熱プレートの一例を示す側面図である。
【図19】従来の熱処理ユニットの加熱プレートの他の例を示す側面図である。
【図20】従来の熱処理ユニットの加熱プレートの作用を示す側面図である。
【符号の説明】
G マスク基板
B1 キャリアブロック
B2 処理ブロック
23 基板搬送手段
24 塗布ユニット
3 熱処理装置
31 処理容器
33 シャッタ
4 加熱プレート
42 ヒータ
5(5A〜5G) 枠体
51 支持部
73 水平方向駆動機構
Claims (10)
- 角型基板を加熱するための加熱プレートと、
前記加熱プレートを加熱するための加熱手段と、
前記加熱プレートに載置された基板の周囲に、内面が前記基板の側面と対向するように設けられ、前記内面における角型基板の辺に対向する部位が湾曲する枠体と、を備えることを特徴とする熱処理装置。 - 前記枠体の内面は、加熱プレートに載置された基板の側面に対向する面が凹面状に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
- 前記枠体の内面は、加熱プレートに載置された基板の側面に対向する面が凸面状に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
- 前記枠体の内面は鏡面であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱処理装置。
- 前記枠体の内面は梨地であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱処理装置。
- 前記枠体を、当該枠体の内面と、前記加熱プレートに載置された基板の側面との距離が変化するように移動させるための駆動機構を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱処理装置。
- 基板温度が昇温しているときよりも、基板温度が定温状態にあるときの方が、前記枠体の内面が加熱プレートに載置された基板の側面に近くに位置するように前記駆動機構を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。
- 前記枠体は、周方向に分割して構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の熱処理装置。
- 前記枠体は、当該枠体を加熱するための加熱部を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の熱処理装置。
- 前記基板は一辺の長さが6インチの略正方形のガラス基板であり、加熱プレートは直径が12インチの半導体ウエハを加熱するための円形プレートであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の熱処理装置。
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