以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る加熱処理ユニットが搭載された半導体ウエハのレジスト塗布・現像処理システムを示す概略平面図、図2はその正面図、図3はその背面図である。
このレジスト塗布・現像処理システム1は、搬送ステーションであるカセットステーション10と、複数の処理ユニットを有する処理ステーション11と、処理ステーション11と隣接して設けられる露光装置(図示せず)との間で半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを受け渡すためのインターフェイス部12とを具備している。
上記カセットステーション10は、被処理体としてのウエハWを複数枚例えば25枚単位でウエハカセットCRに搭載された状態で他のシステムからこのシステムへ搬入またはこのシステムから他のシステムへ搬出したり、ウエハカセットCRと処理ステーション11との間でウエハWの搬送を行うためのものである。
このカセットステーション10においては、図1に示すように、カセットCを載置する載置台20上に図中X方向に沿って複数(図では4個)の位置決め突起20aが形成されており、この突起20aの位置にウエハカセットCRがそれぞれのウエハ出入口を処理ステーション11側に向けて一列に載置可能となっている。ウエハカセットCRにおいてはウエハWが垂直方向(Z方向)に配列されている。また、カセットステーション10は、ウエハカセット載置台20と処理ステーション11との間に位置するウエハ搬送機構21を有している。このウエハ搬送機構21は、カセット配列方向(X方向)およびその中のウエハWのウエハ配列方向(Z方向)に移動可能なウエハ搬送用アーム21aを有しており、このウエハ搬送用アーム21aによりいずれかのウエハカセットCRに対して選択的にアクセス可能となっている。また、ウエハ搬送用アーム21aは、θ方向に回転可能に構成されており、後述する処理ステーション11側の第3の処理ユニット群G3に属するアライメントユニット(ALIM)およびエクステンションユニット(EXT)にもアクセスできるようになっている。
上記処理ステーション11は、ウエハWへ対して塗布・現像を行う際の一連の工程を実施するための複数の処理ユニットを備え、これらが所定位置に多段に配置されており、これらによりウエハWが一枚ずつ処理される。この処理ステーション11は、図1に示すように、中心部に搬送路22aを有し、この中に主ウエハ搬送機構22が設けられ、搬送路22aの周りに全ての処理ユニットが配置されている。これら複数の処理ユニットは、複数の処理ユニット群に分かれており、各処理ユニット群は複数の処理ユニットが鉛直方向に沿って多段に配置されている。
主ウエハ搬送機構22は、図3に示すように、筒状支持体49の内側に、ウエハ搬送装置46を上下方向(Z方向)に昇降自在に装備している。筒状支持体49はモータ(図示せず)の回転駆動力によって回転可能となっており、それにともなってウエハ搬送装置46も一体的に回転可能となっている。
ウエハ搬送装置46は、搬送基台47の前後方向に移動自在な複数本の保持部材48を備え、これらの保持部材48によって各処理ユニット間でのウエハWの受け渡しを実現している。
また、図1に示すように、この実施の形態においては、4個の処理ユニット群G1,G2,G3,G4が搬送路22aの周囲に実際に配置されており、処理ユニット群G5は必要に応じて配置可能となっている。
これらのうち、第1および第2の処理ユニット群G1,G2はシステム正面(図1において手前)側に並列に配置され、第3の処理ユニット群G3はカセットステーション10に隣接して配置され、第4の処理ユニット群G4はインターフェイス部12に隣接して配置されている。また、第5の処理ユニット群G5は背面部に配置可能となっている。
第1の処理ユニット群G1では、カップCP内でウエハWをスピンチャック(図示せず)に載置してウエハWにレジストを塗布するレジスト塗布処理ユニット(COT)および同様にカップCP内でレジストのパターンを現像する現像処理ユニット(DEV)が下から順に2段に重ねられている。第2の処理ユニット群G2も同様に、2台のスピナ型処理ユニットとしてレジスト塗布処理ユニット(COT)および現像処理ユニット(DEV)が下から順に2段に重ねられている。
第3の処理ユニット群G3においては、図3に示すように、ウエハWを載置台SPに載せて所定の処理を行うオーブン型の処理ユニットが多段に重ねられている。すなわち、レジストの定着性を高めるためのいわゆる疎水化処理を行うアドヒージョンユニット(AD)、位置合わせを行うアライメントユニット(ALIM)、ウエハWの搬入出を行うエクステンションユニット(EXT)、冷却処理を行うクーリングユニット(COL)、露光処理前や露光処理後、さらには現像処理後にウエハWに対して加熱処理を行う4つの加熱処理ユニット(HP)が下から順に8段に重ねられている。なお、アライメントユニット(ALIM)の代わりにクーリングユニット(COL)を設け、クーリングユニット(COL)にアライメント機能を持たせてもよい。
第4の処理ユニット群G4も、オーブン型の処理ユニットが多段に重ねられている。すなわち、クーリングユニット(COL)、クーリングプレートを備えたウエハ搬入出部であるエクステンション・クーリングユニット(EXTCOL)、エクステンションユニット(EXT)、クーリングユニット(COL)、および4つの加熱処理ユニット(HP)が下から順に8段に重ねられている。
主ウエハ搬送機構22の背部側に第5の処理ユニット群G5を設ける場合には、案内レール25に沿って主ウエハ搬送機構22から見て側方へ移動できるようになっている。したがって、第5の処理ユニット群G5を設けた場合でも、これを案内レール25に沿ってスライドすることにより空間部が確保されるので、主ウエハ搬送機構22に対して背後からメンテナンス作業を容易に行うことができる。
上記インターフェイス部12は、奥行方向(X方向)については、処理ステーション11と同じ長さを有している。図1、図2に示すように、このインターフェイス部12の正面部には、可搬性のピックアップカセットCRと定置型のバッファカセットBRが2段に配置され、背面部には周辺露光装置23が配設され、中央部には、ウエハ搬送機構24が配設されている。このウエハ搬送機構24は、ウエハ搬送用アーム24aを有しており、このウエハ搬送用アーム24aは、X方向、Z方向に移動して両カセットCR,BRおよび周辺露光装置23にアクセス可能となっている。また、このウエハ搬送用アーム24aは、θ方向に回転可能であり、処理ステーション11の第4の処理ユニット群G4に属するエクステンションユニット(EXT)や、さらには隣接する露光装置側のウエハ受け渡し台(図示せず)にもアクセス可能となっている。
このようなレジスト塗布現像処理システムにおいては、まず、カセットステーション10において、ウエハ搬送機構21のウエハ搬送用アーム21aがカセット載置台20上の未処理のウエハWを収容しているウエハカセットCRにアクセスして、そのカセットCRから一枚のウエハWを取り出し、第3の処理ユニット群G3のエクステンションユニット(EXT)に搬送する。
ウエハWは、このエクステンションユニット(EXT)から、主ウエハ搬送機構22のウエハ搬送装置46により、処理ステーション11に搬入される。そして、第3の処理ユニット群G3のアライメントユニット(ALIM)によりアライメントされた後、アドヒージョン処理ユニット(AD)に搬送され、そこでレジストの定着性を高めるための疎水化処理(HMDS処理)が施される。この処理は加熱を伴うため、その後ウエハWは、ウエハ搬送装置46により、クーリングユニット(COL)に搬送されて冷却される。
アドヒージョン処理が終了し、クーリングユニット(COL)で所定の温度に冷却されたウエハWは、引き続き、ウエハ搬送装置46によりレジスト塗布ユニット(COT)に搬送され、そこで塗布膜が形成される。塗布処理終了後、ウエハWは処理ユニット群G3,G4のいずれかの加熱処理ユニット(HP)内でプリベーク処理され、その後いずれかのクーリングユニット(COL)にて所定の温度に冷却される。
冷却されたウエハWは、第3の処理ユニット群G3のアライメントユニット(ALIM)に搬送され、そこでアライメントされた後、第4の処理ユニット群G4のエクステンションユニット(EXT)を介してインターフェイス部12に搬送される。
インターフェイス部12では、余分なレジストを除去するために周辺露光装置23によりウエハの周縁例えば1mmを露光し、次いで、インターフェイス部12に隣接して設けられた露光装置(図示せず)により所定のパターンに従ってウエハWのレジスト膜に露光処理が施される。
露光後のウエハWは、再びインターフェイス部12に戻され、ウエハ搬送機構24により、第4の処理ユニット群G4に属するエクステンションユニット(EXT)に搬送される。そして、ウエハWは、ウエハ搬送装置46により、いずれかの加熱処理ユニット(HP)に搬送されてポストエクスポージャーベーク処理が施され、次いで、クーリングユニット(COL)により所定の温度に冷却される。
その後、ウエハWは現像処理ユニット(DEV)に搬送され、そこで露光パターンの現像が行われる。現像処理終了後、ウエハWはいずれかの加熱処理ユニット(HP)に搬送されてポストベーク処理が施され、次いで、クーリングユニット(COL)により所定温度に冷却される。このような一連の処理が終了した後、第3処理ユニット群G3のエクステンションユニット(EXT)を介してカセットステーション10に戻され、いずれかのウエハカセットCRに収容される。
次に、図4から図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る加熱処理ユニット(HP)について説明する。図4は本発明の第1の実施形態に係る加熱処理ユニットを模式的に示す断面図、図5は図4の加熱処理ユニットの天板および囲繞部材を一部切り欠いて示す斜視図、図6は図4の加熱処理ユニットの天板に形成された第1および第2のヒートパイプを示す断面図、図7は図4の加熱処理ユニットの制御系を示すブロック図である。
本実施形態の加熱処理ユニット(HP)は、図4に示すように、ケーシング50を有し、その内部には円盤状をなす加熱プレート51が配置されている。加熱プレート51は例えばアルミニウムで構成されており、その表面にはプロキシミティピン52が設けられている。そして、このプロキシミティピン52上に加熱プレート51に近接した状態でウエハWが載置されるようになっている。加熱プレート51の裏面には複数のリング状発熱体53が同心円状に配設されている。そして、これら発熱体53は通電されることにより発熱し、加熱プレート51を加熱してウエハWに対して加熱処理を施すようになっている。この場合に、各リング状発熱体53への通電量はそれぞれ独立に制御可能であることが好ましい。
加熱プレート51は支持部材54に支持されており、支持部材54内は空洞となっている。加熱プレート51には、その中央部に3つ(2つのみ図示)の貫通孔55が形成されており、これら貫通孔55にはウエハWを昇降させるための3本(2本のみ図示)の昇降ピン56が昇降自在に設けられている。そして、加熱プレート51と支持部材54の底板54aとの間には貫通孔55に連続する筒状のガイド部材57が設けられている。これらガイド部材57によって加熱プレート51の下のヒーター配線等に妨げられることなく昇降ピン56を移動させることが可能となる。これら昇降ピン56は支持板58に支持されており、この支持板58を介して支持部材54の側方に設けられたシリンダー59により昇降されるようになっている。
加熱プレート51および支持部材54の周囲にはそれらを包囲支持するサポートリング61が設けられており、このサポートリング61の上には昇降自在の囲繞部材62が設けられている。この囲繞部材62の上には天板63が設けられている。そして、この囲繞部材62がサポートリング61の上面まで降下した状態で、加熱プレート51と天板63との間にウエハWの処理空間Sが形成され、この処理空間Sが囲繞部材62により囲繞された状態となる。その際に、サポートリング61と囲繞部材62との間には微小な隙間64が形成され、この隙間64から処理空間Sへの空気の侵入が許容される。また、ウエハWを加熱プレート51に対して搬入出する場合には、図示しないシリンダーにより囲繞部材62および天板63が上方に退避される。
天板63の中央部には排気管66が接続された排気口65を有しており、加熱プレート51の外周側のサポートリング61および囲繞部材62の間の隙間64から空気が導入され、排気口65および排気管66を介して図示しない排気機構により処理空間Sが排気される。したがって、処理空間S内には加熱プレート51の外周側から天板63の中央に向かう気流が形成される。この気流の制御は、排気管66に設けられた電磁弁67により行われる。
図4および図5に示すように、天板63の加熱プレート51に対向する面は、排気口65を囲むように設けられた円環状の第1の領域71とその外側に設けられた円環状の第2の領域72とを有している。また、天板63は、第1の領域71を下面とする第1のヒートパイプ73と、第2の領域72を下面とする第2のヒートパイプ74と、第1および第2のヒートパイプ73および74の間に設けられた断熱部材75とを有している。断熱部材75は、第1のヒートパイプ71と第2のヒートパイプ72との間で熱的な干渉を生じることを防止する作用を有している。断熱部材75を設ける代わりに、第1および第2のヒートパイプ71および72を離隔して設け、これらの間に空間が生じるようにしてもよい。
第1のヒートパイプ73および第2のヒートパイプ74は、図6に示すように、それぞれ銅または銅合金等の金属材料からなる外殻部材としてのコンテナ77および78を有し、これらコンテナ77および78内の空間には作動液Lが封入されている。このような第1および第2のヒートパイプ73および74は、内部に充填された作動液の蒸発現象と凝縮現象を利用して、大量の熱を容易に輸送する作用、およびその中に温度の高低がある場合に速やかに熱を輸送して温度を均一化する作用を有する。具体的には、図6に示すように、第1および第2のヒートパイプ73および74は、加熱プレート51によりその下部が加熱されると作動液Lが蒸発し、蒸気流となって低温部である上部へ高速移動し、上下方向に温度が均一化される。この際に、上部で低温のコンテナ77および78の上壁に接触して冷却され凝縮し、凝縮液は重力により元の位置へ戻る。また、周方向および径方向に温度の高低がある場合にも蒸気流の移動により温度が均一化される。第1および第2のヒートパイプ73および74の内部空間は、囲繞部材62の周方向に略一定の断面厚さを有している。なお、作動液Lは、コンテナ77,78の材質に悪影響を及ぼさないものが選択され、例えば、水、アンモニア、メタノール、アセトン、フロン等を用いることができる。
上記第1のヒートパイプ73には、その温度を制御して結果的に第1の領域71の温度を制御する温度制御機構80が設けられている。この温度制御機構80は、第1の領域に熱を伝達するための棒状をなす金属製の熱伝達部材81と、この熱伝達部材81の先端に設けられ、放熱面積可変のフィン82aを有する放熱部材82およびフィン82aの放熱面積を変化させるためのアクチュエータ83からなる放熱機構84と、上記熱伝達部材81の一部分に巻回された誘導コイル85および誘導コイル85に高周波電力を供給する高周波電源86からなる加熱機構87と、放熱機構84のアクチュエータ83および加熱機構87の高周波電源86を制御するコントローラ88とを有している。この温度制御機構80は、後述するように、第1の領域71を第2の領域72よりも所定温度低くなるように制御する。
これら加熱処理ユニット(HP)は、図7に示すように、ユニットコントローラ90により制御される。具体的には、加熱プレート51内の適宜箇所には、加熱プレート51の温度を計測する熱電対等の複数の温度センサー70が設けられ、この温度センサー70からの検出信号はユニットコントローラ90に送信され、その検出情報に基づいてユニットコントローラ90から温調器91に制御信号が送信され、その制御信号に基づいて温調器91から発熱体電源92に出力調整信号が送信される。さらに、このユニットコントローラ90は、加熱処理に際して、シリンダー59に制御信号を送って昇降ピン56の昇降を制御するとともに、排気管66に設けられた電磁弁67の開度を制御して排気量を制御する。また、上述のコントローラ88に対して、適宜の基準値、例えば温度センサー70の検出信号または設定値に基づいて第1のヒートパイプ73の制御を行うように指令を発する。なお、ユニットコントローラ90は、塗布・現像システムのシステムコントローラ(図示略)からの指令に基づいて制御信号を出力するようになっている。
以上のように構成された加熱処理ユニット(HP)では、以下のようにして、ウエハWの加熱処理が行われる。
まず、ウエハ搬送装置46により、ウエハWを加熱処理ユニット(HP)のケーシング50内に搬入し、昇降ピン56に受け渡し、この昇降ピン56を降下させることにより、ウエハWが所定温度に加熱された状態にある加熱プレート51の表面に設けられたプロミキシティピン52に載置される。
次いで、囲繞部材62および天板63を降下させて処理空間Sを形成し、図示しない排気機構により排気口65および排気管66を介して排気することにより、隙間64から空気が流入し、加熱プレート51の外周側から天板63の中央に向かう気流が形成された状態でウエハWに加熱処理が施される。
この場合に、このような気流はウエハWの周縁部からウエハの中央部に向かって流れることとなり、高温のウエハ上を通過することによって加熱された気体がウエハW中央部に集まってから処理空間Sの外へ排出されるため、従来の加熱処理装置の場合には、加熱プレート51が発熱体53により均一に加熱されていたとしても、実際にはこのような気流の影響でウエハWの中央部の温度が周縁部の温度よりも高くなってしまう。
このため、本実施形態では、天板63において、ウエハWの中央部に対応する第1の領域71の温度を、その周囲の第2の領域72よりも所定温度低くなるように温度制御機構80により制御する。ウエハWの温度は、加熱プレート51のみならず加熱プレートに対向した天板63によっても影響を受け、天板63の熱吸収が大きいほどかつ天板63の熱放射度が小さいほどウエハWの温度が低下する度合いが大きいから、このようにウエハWの中央部の温度が高くなるといった、ウエハW面内に温度分布が生じるような場合に、天板63のウエハW中央部に対応する第1の領域71の温度を第2の領域72の温度よりも低くすれば、第1の領域71の熱吸収を大きくすることができ、結果的にウエハWの中央部の熱放出を大きくしてその部分の温度を低下させることができ、ウエハWの面内温度均一性を高くすることができる。しかも、温度制御機構80によりその温度の低下の度合いを制御することができるので、ウエハWの面内温度均一性は極めて高いものとなる。
以下、このようにしてウエハWの温度を均一化する原理について簡単に説明する。
上記のように加熱プレート51と天板63とが対向して設けられている場合、加熱プレート51によって加熱されたウエハWから放出された熱放射エネルギーは、天板63に達してその一部が吸収され残部が反射されてウエハWに戻り、ウエハW上で同様に一部が吸収され残部が反射されるといった作用が繰り返される。したがって、ウエハWから放出される単位面積当たりの総エネルギーをQ1とすると、Q1はウエハWの放射度E1と反射エネルギとの和に等しい。この際の反射エネルギーは、天板63から放出される単位面積当たりの総エネルギーQ2にウエハWの反射率r1を乗じたものとなる。すなわち、以下の(1)式で表す関係が成り立つ。
Q1=E1+r1Q2 ……(1)
同様に天板63についても、天板63から放出される単位面積当たりの総エネルギーQ2は、天板63の放射度E2と反射エネルギとの和に等しく、この反射エネルギーは、上記Q1に天板の反射率r2を乗じたものとなり、以下の(2)式で表す関係が成り立つ。
Q2=E2+r2Q1 ……(2)
ここで、ウエハWの放射率をε1、天板63の放射率をε2とすると、以下の(3)および(4)式の関係があるため、これをそれぞれ(1)および(2)に代入すると、(5)および(6)式の関係が導かれる。
r1=1−ε1 ……(3)
r2=1−ε2 ……(4)
Q1=E1+(1−ε1)Q2 ……(5)
Q2=E2+(1−ε2)Q1 ……(6)
ウエハWは加熱されているため、ウエハWの温度T1は天板63の温度T2よりも高くなっており、その分の熱がウエハWから天板63へ放射により供給されることとなり、その際の単位面積当たりの熱量Qは以下の(7)式で表すことができる。
Q=Q1−Q2 ……(7)
ここで、この熱量Qすなわちウエハから放出する熱量が大きいほどウエハWの温度を低下させることができる。したがって、従来、温度が高くなる傾向にあるウエハWの中央部において放出する熱量Qを大きくすることができればよい。そのためには、天板63のその部分に対応する領域、すなわち第1の領域71の熱吸収を大きくすればよく、本実施形態では第1の領域71の熱吸収を大きくするために第1の領域71の温度を第2の領域72の温度よりも低くなるようにした。
また、天板63が、第1の領域71および第2の領域72をそれぞれ含む第1のヒートパイプ73および第2のヒートパイプ74を有するので、ヒートパイプの温度均一化作用により各領域内で温度を均一にすることができるとともに、大量の熱を容易に輸送する作用により温度制御機構80により第1のヒートパイプ73を温度制御する際に速やかに所定の温度にすることができる。したがって、この点からもウエハWの面内温度均一性を極めて高くすることができる。
上述のように、第1の領域71の熱吸収を高くすればよいことから、第1の領域71の温度を低くすることに加えて第1の領域71の熱吸収自体を第2の領域72よりも高くすることも有効である。このためには、第1の領域71と第2の領域72とで色彩を変化させることが挙げられるが、最も効果的であるのは、第1の領域71を放射率が1の黒体とし、第2の領域72を反射率が1のミラーとすることである。第1の領域71を黒体とするためには、図8に示すように、コンテナ77の下面に黒色セラミックス95を設けることが好適である。第2の領域72をミラーとするには、コンテナ78の下面に金泊96を貼る等すればよい。
以上のようにしてウエハWの加熱処理を行った後、囲繞部材62および天板63を上方に移動し、ウエハWを昇降ピン56により持ち上げる。その状態でウエハ搬送装置46をウエハWの下方に挿入してウエハ搬送装置46がウエハWを受け取り、加熱処理ユニット(HP)からウエハWを搬出して次工程のユニットに搬送する。
なお、上記例ではウエハWの外方から空気を侵入させて処理空間Sに気流を形成したが、図9に示すように、不活性ガス等のガスを処理空間Sに導入するようにしてもよい。すなわち、上記サポートリング61の代わりにガス通流孔97が形成されたサポートリング61′を設け、ガス通流孔97にガス供給管98を接続して処理空間Sにガスを導入するようにし、囲繞部材62とサポートリング61′をシールリング99で密閉するようにすることもできる。なお、ガス通流孔97は円周状に形成されていてもよいし、円筒状をなすサポートリング61′の円周に沿って複数設けられていてもよい。
次に、図10および図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係る加熱処理ユニットについて説明する。図10は本発明の第2の実施形態に係る加熱処理ユニットを模式的に示す断面図、図11はその内部および気流を模式的に示す水平断面図である。図10および図11において、第1の実施形態と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、ケーシング50の内部の下側には、矩形状をなす加熱プレート51′が配置されている。加熱プレート51′の表面にはプロキシミティピン52′が設けられており、このプロキシミティピン52′上に加熱プレート51′の表面に近接した状態でウエハWが載置されるようになっている。加熱プレート51′の裏面には複数の直線状の発熱体53′が略平行に配列されている。そして、これら発熱体53′は通電されることにより発熱し、加熱プレート51′を加熱してウエハWを昇温するようになっている。
加熱プレート51′は支持部材54′に支持されており、支持部材54′内は空洞となっている。支持部材54′の周囲にはそれを包囲支持するサポートリング61′が設けられており、このサポートリング61′の上には昇降自在の囲繞部材62′が設けられている。この囲繞部材62′の上には天板63′が設けられている。そして、この囲繞部材62′がサポートリング61′の上面まで降下した状態で、加熱プレート51′と天板63′との間にシールリング101により外部から密閉された処理空間S′が形成され、この処理空間S′が囲繞部材62′により囲繞された状態となる。
加熱プレート51′の一方側には、加熱プレート51′の略一辺の幅を有し、かつ複数のガス吐出孔103を有し、処理空間S′内に不活性ガス、空気等の気体を供給するための気体供給ノズル102が設けられ、この気体供給ノズル102には、サポートリング61′内に複数設けられた気体通流孔104に接続されており、さらにこれら気体通流孔104には、不活性ガス、空気等の気体を供給するための気体供給管105が接続されている。
一方、加熱プレート51′の他方側には、加熱プレート51′の略一辺の幅を有し、かつ複数の気体排出孔107を有し、処理空間S′内の気体を排出するための排気ノズル106が設けられ、この排気ノズル106には、サポートリング61′内に複数設けられた気体通流孔108に接続されており、さらにこれら気体通流孔108には排気管109が接続されている。
そして、気体供給ノズル102から処理空間S′へ供給された気体は排気ノズル106から排気され、処理空間S′内には図10に示すような加熱プレート51′の一端側から他端側に向かう一方向の気流が形成される。
天板63′の加熱プレート51′に対向する面は、排気ノズル106側の矩形状をなす第1の領域71′とその残余の矩形状をなす第2の領域72′とを有している。また、天板63′は、第1の領域71′を下面とする第1のヒートパイプ73′と、第2の領域72′を下面とする第2のヒートパイプ74′と、第1および第2のヒートパイプ73′および74′の間に設けられた断熱部材75′とを有している。断熱部材75′を設ける代わりに、第1および第2のヒートパイプ71′および72′を離隔して設け、これらの間に空間が生じるようにしてもよい。
第1のヒートパイプ73′および第2のヒートパイプ74′は、形状が異なるだけで基本的に第1の実施態様の第1のヒートパイプ73および第2のヒートパイプ74と同様、金属材料からなる外殻部材としてのコンテナと、コンテナ内の空間に封入された作動液Lとを有しており、作動液の蒸発現象と凝縮現象を利用して、大量の熱を容易に輸送する作用、およびその中に温度の高低がある場合に速やかに熱を輸送して温度を均一化する作用を有する。具体的には、加熱プレート51′によりその下部が加熱されると作動液Lが蒸発し、蒸気流となって低温部である上部へ高速移動し、上下方向に温度が均一化される。この際に、上部で低温のコンテナの上壁に接触して冷却され凝縮し、凝縮液は重力により元の位置へ戻る。また、水平方向に温度の高低がある場合にも蒸気流の移動により温度が均一化される。第1および第2のヒートパイプ73′および74′の内部空間は、水平方向に略一定の断面厚さを有している。
上記第1のヒートパイプ73′には、第1の実施形態の第1のヒートパイプ73と同様、その温度を制御して結果的に第1の領域71′の温度を制御する温度制御機構80が設けられている。この温度制御機構80は、第1の領域71′を第2の領域72′よりも所定温度低くなるように制御する。
以上のように構成された加熱処理ユニット(HP)により加熱処理を行う際には、まず、第1の実施形態の場合と同様、ウエハWをウエハ搬送装置46によりケーシング50内に搬入して、プロキシミティピン52′上に載置する。
次いで、囲繞部材62′および天板63′を降下して処理空間S′を形成し、気体供給管105および気体通流孔104を介して気体供給ノズル102の複数のガス吐出孔103から処理空間S′内に気体を供給し、排気ノズル106の気体排出孔107から気体通流孔108および排気管109を介して排気することにより、処理空間S′に加熱プレート51′の一端側から他端側に向かう一方向の気流を形成する。
このような一方向の気流が形成された状態で、発熱体53′に給電することにより、加熱プレート51′上のウエハWを加熱処理する。このように加熱プレート51′の上面に一方向の気流を形成するので、第1の実施形態の天板63と異なり、天板63′の中央部には排気口が設けられておらず、滞留した気体から塵や埃がウエハ上面に落下するといったことがない。また、天板63′に排気構造が設けられる必要がないため装置自体の上下方向の寸法を小さくすることができる。
このように一方向気流が形成された場合には、高温のウエハ上を通過することによって加熱された気体が排気ノズル106から排出されるため、加熱プレート51′が発熱体53′により均一に加熱されていたとしても、天板が従来のような単なる金属板の場合には、このような気流の影響でウエハWの排気ノズル106近傍部分の温度が他の部分の温度よりも高くなる傾向にある。
このため、本実施形態では、天板63′を上述のように排気ノズル106近傍の第1の領域71′とその他の第2の領域72′とし、第1の領域71′の温度を、第2の領域72′よりも所定温度低くなるように温度制御機構80により制御する。したがって、第1の実施形態と同様、天板63′の第1の領域71′の温度を第2の領域72′の温度よりも低くすることによって、第1の領域71′の熱吸収を大きくすることができ、結果的にウエハWの排気ノズル106近傍の熱放出を大きくしてその部分の温度を低下させることができ、ウエハWの面内温度均一性を高くすることができる。しかも、温度制御機構80によりその温度の低下の度合いを制御することができるので、ウエハWの面内温度均一性は極めて高いものとなる。
また、天板63′が、第1の領域71′および第2の領域72′をそれぞれ含む第1のヒートパイプ73′および第2のヒートパイプ74′を有するので、ヒートパイプの温度均一化作用により各領域内で温度を均一にすることができるとともに、大量の熱を容易に輸送する作用により温度制御機構80により第1のヒートパイプ73′を温度制御する際に速やかに所定の温度にすることができる。したがって、この点からもウエハWの面内温度均一性を極めて高くすることができる。
本実施形態においても第1の実施形態と同様、第1の領域71′の温度を低くすることに加えて第1の領域71′の熱吸収自体を第2の領域72′よりも高くすることも有効であり、そのために、第1の領域71′と第2の領域72′とで色彩を変化させることができ、最も効果的には、第1の領域71′を黒体とし、第2の領域72′をミラーとすることである。
このようにしてウエハWの加熱処理終了した後、囲繞部材62′および天板63′を上方に移動させ、ウエハWを昇降ピン56により持ち上げ、その状態でウエハ搬送装置46をウエハWの下方に挿入してウエハ搬送装置46がウエハWを受け取り、加熱処理ユニット(HP)からウエハを搬出して次工程のユニットに搬送する。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の思想の範囲内で種々変形が可能である。例えば上記実施の形態では、天板の加熱プレートの対向する面を第1の領域および第2の領域としたが、3つ以上の領域としてもよいことはもちろんである。また、天板の第1の領域の温度を制御するようにしたが、第2の領域の温度を制御してもよいし、両方の温度を制御するようにしてもよい。さらに、天板をヒートパイプで構成したが、これに限るものではない。また、加熱処理装置の構造としても上記実施形態において例示した加熱処理ユニットに限るものではなく種々の形態が可能である。さらに、レジスト塗布・現像処理システムの加熱処理について示したが、それ以外に用いられる加熱処理に適用することも可能である。さらにまた、上記実施形態ではウエハをプロキシミティピン上に載置して間接的に加熱を行った場合について示したが、ウエハを加熱プレート上に直接載置して加熱してもよい。さらにまた、上記実施形態では基板として半導体ウエハを用いた場合について説明したが、半導体ウエハ以外の他の被処理基板、例えば液晶表示装置(LCD)用ガラス基板の加熱処理を行う場合についても適用可能である。