JP3949270B2 - セラミックス回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックス回路基板に係り、特に曲げ強度特性を改善し、取付時および使用時における割れの発生を効果的に防止できるセラミックス回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パワートランジスタモジュール用基板やスイッチング電源モジュール用基板等の回路基板として、セラミックス基板上に銅板等の金属板を接合したセラミックス回路基板が広く使用されている。また、上記セラミックス基板としては、電気絶縁性を有すると共に、熱伝導性に優れた窒化アルミニウム基板や窒化けい素基板等が一般的に使用されている。
【0003】
上述したような銅板で回路を構成したセラミックス回路基板11は、例えば図2〜図4に示すようにセラミックス基板12の一方の表面に金属回路板14としての銅板を接合する一方、他方の表面に裏金属板14としての銅板を接合して形成される。上記セラミックス基板12表面に各種金属板を一体に形成する手法としては、下記のような直接接合法,高融点金属メタライズ法,活性金属法などが使用されている。直接接合法は、例えばセラミックス基板12上に銅板を、Cu−Cu2 O等の共晶液相を利用して直接接合する、いわゆる銅直接接合法(DBC法:Direct Bonding Copper 法)であり、高融点金属メタライズ法はMoやWなどの高融点金属をセラミックス基板表面に焼き付けて形成する方法である。また、活性金属法は、4A族元素や5A族元素のような活性金属を含むろう材層を介してセラミックス基板12上に金属板を一体に接合する方法である。
【0004】
また、具体的な回路の形成方法としては、予めプレス加工やエッチング加工によりパターニングした銅板を用いたり、接合後にエッチング等の手法によりパターニングする等の方法が知られている。これらDBC法や活性金属ろう付け法により得られるセラミックス回路基板は、いずれも単純構造で熱抵抗が小さく、大電流型や高集積型の半導体チップに対応できる等の利点を有している。
【0005】
近年、セラミックス回路基板を使用した半導体装置の高出力化,半導体素子の高集積化が急速に進行し、セラミックス回路基板に繰り返して作用する熱応力や熱負荷も増加する傾向にあり、セラミックス回路基板に対しても上記熱応力や熱サイクルに対して十分な接合強度と耐久性が要求されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のセラミックス回路基板においては、セラミックス基板の種類や金属板の接合方法を改良することにより高い接合強度は得られていたが、耐熱サイクル性および曲げ強度が十分に得られず、セラミックス回路基板を用いた半導体装置の信頼性や製品歩留りが低くなるという問題点があった。
【0007】
すなわち、セラミックス回路基板に搭載する半導体素子の高集積化および高出力化に対応して熱サイクル負荷も大幅に上昇し、熱応力によって基板に割れが発生して回路基板の機能が喪失されてしまう問題点があった。また、セラミックス回路基板の曲げ強度が小さくたわみ量も少ないため、組立時にセラミックス回路基板を実装ボードにねじで締着固定しようとすると、ねじの僅かな締着力によってセラミックス基板が破壊してしまう場合があり、回路基板を使用した半導体装置の製品歩留りが低下してしまう問題点もあった。さらに、使用時に発生する熱応力によって割れが発生する場合も多く半導体装置の信頼性が低下する難点もあった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、高い接合強度および優れた耐熱サイクル特性に加えて、高い曲げ強度(抗折強度)を有し、大きな曲げ荷重が作用した場合においても割れや破壊を招くことなく、大きくたわむことが可能なセラミックス回路基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願発明者らは、特にセラミックス回路基板の取付時および使用時に発生する割れを防止するための構造を種々検討した。その結果、特にセラミックス基板に金属回路板を一体に接合したセラミックス回路基板において、金属回路板の接合面側が凹形状となるように所定の反り量を有するように形成したときに、セラミックス回路基板全体の曲げ強度およびたわみ量を大きくすることができ、割れの発生が少ないセラミックス回路基板が得られるという知見を得た。また、ビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下の金属回路板を使用することにより、回路基板全体の曲げ強度およびたわみ量を、さらに向上させることができるという知見を得た。
【0010】
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係るセラミックス回路基板は、セラミックス基板に金属回路板を接合したセラミックス回路基板において、上記セラミックス回路基板が金属回路板側に凹形状に反っており、その反り量が100μm以下(ゼロを含まず)であることを特徴とする。
【0011】
また、反り量が10μm以上80μm以下であることが好ましい。さらに、金属回路板が、Ti,Zr,Hfから選択される少なくとも1種を含有する活性金属層を介してセラミックス基板と接合されるように構成してもよい。また、金属回路板が直接接合法によりセラミックス基板に接合されるように構成してもよい。さらに、金属回路板のビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下であることを特徴とする。また、セラミックス回路基板に曲げ応力を付加し破断に至る際の上記セラミックス回路基板の長手方向両縁部を含む平面を基準とする金属回路板方向へのたわみ量が、セラミックス回路基板の長辺方向の単位長さ1mm当り0.01mm以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板の表面側にビッカース硬度(Hv)が500N/mm 2 以下である金属回路板を、背面側に裏金属板を、Ti,Zr,Hfから選択される少なくとも1種を含有する活性金属層を介して接合してセラミックス回路基板を製造する工程と、セラミックス回路基板上の金属回路板にエッチング処理を施して回路パターンを形成する工程と、エッチング後のセラミックス回路基板に荷重を負荷することにより金属回路板側に凹形状に反らせるとともに、その反り量を10μm以上100μm以下の範囲とする工程と、を具備することを特徴とする。
さらに、本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板の表面側にビッカース硬度(Hv)が500N/mm 2 以下である金属回路板を、背面側に裏金属板を、直接接合法により接合してセラミックス回路基板を製造する工程と、セラミックス回路基板上の金属回路板にエッチング処理を施して回路パターンを形成する工程と、エッチング後のセラミックス回路基板に荷重を負荷することにより金属回路板側に凹形状に反らせるとともに、その反り量を10μm以上100μm以下の範囲とする工程と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、他の態様としてのセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板の片面にホーニング加工または研磨加工を施すことにより反り量が50〜150μmの範囲となる凹形状面を有するセラミックス基板を形成し、この凹形状面にビッカース硬度(Hv)が500N/mm 2 以下である金属回路板を接合すると共に、背面側に裏金属板を接合することによりセラミックス回路基板を形成し、このセラミックス回路基板の反り量が10μm以上100μm以下の範囲となるように金属回路板側に凹形状に反らせることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るセラミックス回路基板に使用されるセラミックス基板としては、特に限定されるものではなく、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2 O3 )等の酸化物系セラミックス基板の他に、窒化アルミニウム(AlN),窒化けい素(Si3 N4 ),窒化チタン(TiN)等の窒化物、炭化けい素(SiC),炭化チタン(TiC)等の炭化物、またはほう化ランタン等のほう化物等の非酸化物系セラミックス基板でもよい。これらのセラミックス基板には酸化イットリウムなどの焼結助剤等が含有されていてもよい。
【0015】
また上記金属回路板を構成する金属としては、銅,アルミニウム,鉄,ニッケル,クロム,銀,モリブデン,コバルトの単体またはその合金など、基板成分との共晶化合物を生成し、直接接合法や活性金属法を適用できる金属であれば特に限定されないが、特に導電性および価格の観点から銅,アルミニウムまたはその合金が好ましい。
【0016】
金属回路板の厚さは、通電容量等を勘案して決定されるが、セラミックス基板の厚さを0.25〜1.2mmの範囲とする一方、金属回路板の厚さを0.1〜0.5mmの範囲に設定して両者を組み合せると熱膨張差による変形などの影響を受けにくくなる。
【0017】
特に金属回路板として銅回路板を使用し直接接合法によって接合する場合には、酸素を100〜1000ppm含有するタフピッチ電解銅から成る銅回路板を使用し、さらに後述するように銅回路板表面に所定厚さの酸化銅層を予め形成することにより、直接接合時に、発生するCu−O共晶の量を増加させ、基板と銅回路板との接合強度を、より向上させることができる。
【0018】
上記酸化銅層などの酸化物層は、例えば金属回路板を大気中において温度150〜360℃の範囲にて20〜120秒間加熱する表面酸化処理を実施することによって形成される。ここで、酸化銅層の厚さが1μm未満の場合は、Cu−O共晶の発生量が少なくなるため、基板と銅回路板との未接合部分が多く、接合強度を向上させる効果は少ない。一方、酸化銅層の厚さが10μmを超えるように過大にしても、接合強度の改善効果が少なく、却って銅回路板の導電特性を阻害することになる。したがって、銅回路板表面に形成する酸化銅層の厚さは1〜10μmの範囲が好ましい。そして同様の理由により2〜5μmの範囲がより望ましい。
【0019】
なお、直接接合法はAl2 O3 などの酸化物系セラミックス基板のみについては直ちに適用可能であり、窒化アルミニウムや窒化けい素などの非酸化物系セラミックス基板にそのまま適用しても基板に対する濡れ性が低いため、金属回路板の充分な接合強度が得られない。
【0020】
そこでセラミックス基板として非酸化物系セラミックスを使用する場合には、その非酸化物系セラミックス基板の表面に予め酸化物層を形成し、基板に対する濡れ性を高める必要がある。この酸化物層は上記非酸化物系セラミックス基板を、空気中などの酸化雰囲気中で温度1000〜1400℃程度で2〜15時間加熱して形成される。この酸化物層の厚さが0.5μm未満の場合には、上記濡れ性の改善効果が少ない一方、10μmを超えるように厚く形成しても改善効果が飽和するため、酸化物層の厚さは0.5〜10μmの範囲が必要であり、より好ましくは1〜5μmの範囲が望ましい。
【0021】
本発明に係るセラミックス回路基板において、活性金属法によって金属回路板を接合する際に形成される活性金属層は、Ti,Zr,Hfから選択される少なくとも1種の活性金属を含有し適切な組成比を有するAg−Cu系ろう材等で構成され、このろう材組成物を有機溶媒中に分散して調製した接合用組成物ペーストをセラミックス基板表面にスクリーン印刷する等の方法で形成される。
【0022】
上記接合用組成物ペーストの具体例としては、下記のようなものがある。すなわち重量%でCuを15〜35%、Ti、Zr、Hfから選択される少くとも1種の活性金属を1〜10%、残部が実質的にAgから成る組成物を有機溶媒中に分散して調製した接合用組成物ペーストを使用するとよい。
【0023】
上記活性金属はセラミックス基板に対するろう材の濡れ性を改善するための成分であり、特に窒化アルミニウム(AlN)基板に対して有効である。上記の活性金属の配合量は、接合用組成物全体に対して1〜10重量%が適量である。
【0024】
また本発明に係るセラミックス回路基板は金属回路側に凹形状に反っており、その反り量が100μm以下に調整されている。この反り量が100μm以下であれば、反りの凹面側端部を2点支持して凸面側中央に荷重を付加して測定した3点曲げ強度を大きく向上させることができ、たわみ量を大きく増加させることができる。しかし、反り量が100μmを超える場合には、反対方向にたわむ際に基板が割れ易くなり、割れを発生することなく変形できる範囲が狭くなるため、反り量は100μm以下とされるが、特に10μm以上80μm以下の範囲が好ましい。
【0025】
また、ビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下の金属回路板を使用することにより、セラミックス回路基板の曲げによるたわみ量を、さらに改善することができる。セラミックス回路基板の曲げによるたわみ量は、セラミックス基板自体の曲げ強度,ヤング率,厚さに加えて、金属回路板の硬度にも大きく依存する。本発明では、特に金属回路板のビッカース硬度(Hv)とセラミックス回路基板の曲げ強度特性との関係から、上記金属回路板のビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下であれば、セラミックス回路基板全体のたわみ量を大きく増加させることができる。
【0026】
なお、上記セラミックス回路基板の取付時および使用時における割れや破壊を防止できるたわみ量は回路基板の寸法の大小によって変化するが、下記の基準を満足することが望ましい。すなわち、セラミックス回路基板に曲げ応力を付加し破断に至る際のセラミックス回路基板の長手方向両縁部を含む平面を基準とする金属回路板方向へのたわみ量が、セラミックス回路基板の長辺方向の単位長さ1mm当り0.01mm以上であることが望ましい。この単位長さ1mm当りのたわみ量が0.01mm未満では、割れの発生を防止する効果が不十分であるためである。
【0027】
また、セラミックス回路基板全体に所定の反り量を付与する方法としては、前記製造方法において示すように、まず、金属回路板とセラミックス基板とを接合してセラミックス回路基板を予め形成した後に、このセラミックス回路基板に強制的に荷重を負荷することによりセラミックス回路基板を金属回路板側に凹形状に反らせる方法、またはセラミックス基板の片面にホーニング加工または研磨加工を施すことにより反り量が50〜150μmの範囲となる凹形状面を有するセラミックス基板を予め形成し、この凹形状面に金属回路板を接合することによりセラミックス回路基板を形成し、このセラミックス回路基板の反り量が100μm以下(ゼロを含まず)の範囲となるように金属回路板側に凹形状に反らせる方法になどを使用することができる。
【0028】
上記構成に係るセラミックス回路基板によれば、所定の反り量の範囲内において金属回路板側に反った凹形状に形成されているため、曲げ強度が大きく、かつ十分なたわみ特性を有するセラミックス回路基板が得られる。また、ビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下の金属回路板を使用することにより、上記たわみ特性を、さらに改善することができる。そして、このセラミックス回路基板を使用することにより、割れの発生が少なく耐久性および信頼性に優れた半導体装置を高い製造歩留りで量産することが可能になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について添付図面を参照して以下の実施例に基づいて、より具体的に説明する。
【0030】
セラミックス基板として、図2〜図3に示す寸法を有し、3点曲げ強度が600MPa,たわみ量が1.60mmである窒化けい素(Si3 N4 )基板と、3点曲げ強度が300MPa,たわみ量が0.50mmである窒化アルミニウム(AlN)基板とを多数用意した。
【0031】
一方、金属板として図3に示す形状および厚さを有し、Cu(無酸素銅),Ni,Al,コバール合金(28%Ni−18Co−Fe)の各金属材から成る金属板路板(厚さ0.3mm)および裏金属板(厚さ0.25mm)をそれぞれ調製した。なお上記金属材は窒素ガス(N2 )雰囲気中において温度400℃でアニール処理を実施して、そのビッカース硬度を表1に示す値に調製されたものを使用した。
【0032】
一方、重量比でTi粉末を3%、Ag粉末を27%、Cu粉末を70%含有する粉末混合体100重量部に対して、溶媒としてのテレピネオールにバインダーとしてのエチルセルロースを溶解したバインダー溶液を20重量部添加して、擂回機で混合後、三段ロールで混練してペースト状の接合用組成物を調製した。
【0033】
実施例1〜6および比較例1〜3
表1に示すように窒化けい素(Si3 N4 )基板(実施例1〜5および比較例1〜2)および窒化アルミニウム(AlN)基板(実施例6および比較例3)の両面に前記ペースト状接合用組成物を介在させて、それぞれ金属回路板および裏金属板を接触配置して3層構造の積層体とし、この各積層体を加熱炉内に配置し、炉内を1.3×10-8MPaの真空度に調整した後に温度850℃にて15分間加熱して図2〜図4に示すように、各セラミックス基板12に金属回路板13および裏金属板14を一体に接合して、多数の接合体を得た。そして各接合体についてエッチング処理を実施して所定の回路パターンを有するセラミックス回路基板とした。
【0034】
実施例7および比較例4
窒化アルミニウム(AlN)基板を空気雰囲気の加熱炉中で温度1300℃で12時間加熱することにより、基板全表面を酸化し厚さ2μmの酸化物層(Al2 O3 皮膜)を形成した。
【0035】
次に酸化物層を形成した各AlN基板の表面側に表1に示す厚さ0.3mmのタフピッチ電解銅から成る金属回路板としての銅回路板を接触配置する一方、背面側に厚さ0.25mmのタフピッチ銅から成る裏金属板としての銅板を接触配置して積層体とし、この積層体を窒素ガス雰囲気に調整し、温度1075℃に設定した加熱炉に挿入して1分間加熱することにより、各AlN基板の両面に金属回路板(Cu板)または裏銅板を直接接合法(DBC法)によって接合した接合体をそれぞれ調製した。さらに各接合体をエッチング処理することにより、所定の回路パターンを有するセラミックス回路基板とした。
【0036】
こうして調製した実施例1〜7および比較例1〜4のセラミックス回路基板のエッチング処理後における反り量を測定したところ、全て金属回路板13側に凸になるような形状であった。そこで比較例1を除く各実施例1〜7および比較例2〜4に係るセラミックス回路基板について、反り方向が反対になるように強制荷重を付加し、図1に示すように表側(金属回路板側)が凹形状になるように変形させ、かつ反り量が表1に示す値となるように調整した。なお、上記反り量は金属回路板側が凹面となる場合は正(+)の値である一方、凸面となる場合は負(−)の値となる。
【0037】
こうして反り量を調整したセラミックス回路基板1は、図1に模式的に示すように湾曲したセラミックス基板2の凹面側に金属回路板3が一体に接合される一方、背面側(凸面側)に裏金属板4が一体に接合した構造を有する。そして、セラミックス基板2の両縁部を含む平面からセラミックス基板2の中央部までの間隙Dが反り量に相当する。
【0038】
上記のように反り量(D)を調整した各実施例および比較例に係るセラミックス回路基板について、凹面側の両端部を2点で支持する一方、背面側(凸側)の中央部の1点に荷重を付加して3点曲げ強度を測定するとともにセラミックス基板の両縁部を含む平面に対する最大たわみ量を測定して下記表1に示す結果を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
上記表1に示す結果から明らかなように、金属回路板側に所定の反り量をもって凹形状に形成するとともに、ビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下の金属回路板を使用した各実施例に係るセラミックス回路基板においては、セラミックス基板の母材強度とほぼ同等か、若干低下した程度の高い曲げ強度を有しており、特に最大たわみ量が、従来構造のものと比較して大幅に増加しており、割れの発生量が極めて低くなる効果が得られている。
【0041】
一方、本願発明で規定する方向とは逆の方向に反った比較例1に係るセラミックス回路基板や高硬度の金属回路板を使用した比較例2〜4に係るセラミックス回路基板では、曲げ強度およびたわみ量がいずれもセラミックス基板の母材よりもかなり劣化することが再確認できた。
【0042】
次に予め湾曲させて所定量の反りを付与したセラミックス基板に金属回路板を一体に接合した場合について、以下の実施例を参照して説明する。
【0043】
実施例8〜11および比較例5〜7
前記実施例1〜7において用意したSi3 N4 基板およびAlN基板で反り直し処理を実施して平坦化した各セラミックス基板について、表1に示すように、セラミックス基板の片面のみをホーニング加工(実施例8,10)または研磨加工(実施例9,11)する一方、両面とも研磨加工(比較例7)して、所定の反りを形成した、それぞれのセラミックス基板を形成した。一方、反り直し処理を実施せず、また両面ともに加工処理を実施しないセラミックス基板も比較例5,6として用意した。各セラミックス基板の反り量を測定して表2に示す結果を得た。
【0044】
こうして調製した各セラミックス基板両面に、前記活性金属法により金属回路板(Cu板)および裏金属板(Cu板)を一体に接合した。すなわち、各セラミックス基板の両面に実施例1〜6で使用した、活性金属を含有するペースト状接合用組成物(Ag−Cu−Ti系ろう材)を塗布した後に、各セラミックス基板の凹面側表面に金属回路板としてのCu板(厚さ0.3mm)を接触配置する一方、凸面側表面に裏金属板としてのCu板(厚さ0.25mm)を接触配置した状態で実施例1と同一の加熱条件で接合処理を実施することにより、セラミックス基板に金属回路板と裏金属板とを一体に接合した接合体を製造した。さらに、各接合体をエッチング処理することにより、所定の回路パターンを有する実施例8〜11および比較例5〜7に係るセラミックス回路基板をそれぞれ調製した。
【0045】
上記エッチング処理後における各セラミックス回路基板の反り量を測定して表2に示す結果を得た。表2に示す加工後(エッチング処理前)の反り量とエッチング処理後の反り量との比較から明らかなように、エッチング処理前においては実施例および比較例の接合体の反り量が全て金属回路板側が凹形状となるように形成されているが、この段階で反り量が50μm未満である各比較例の接合体は、エッチング処理すると、本願発明で規定する方向とは逆の方向に反りを生じてしまうことが判明する。
【0046】
次に、上記のようにエッチング処理して形成した各セラミックス回路基板について、実施例1と同様にして3点曲げ強度および最大たわみ量を測定して下記表2に示す結果を得た。
【0047】
【表2】
【0048】
上記表2示す結果から明らかなように、金属回路板側に所定の反り量をもって凹形状に形成された各実施例に係るセラミックス回路基板においては、逆方向に反った形状を有する各比較例に係るセラミックス回路基板と比較して、曲げ強度が大きく、破壊に至るまでの最大たわみ量が大きく、割れに対して優れた耐性が発揮されることが判明した。
【0049】
また各実施例および比較例に係るセラミックス回路基板の耐久性および信頼性を評価するために、各回路基板を−40℃で30分間保持し、次に室温(RT:25℃)で10分間保持し、さらに125℃で30分間保持し、さらに室温で10分間保持するという加熱−冷却する操作を1サイクルとするヒートサイクル試験(熱衝撃試験)を繰り返して実施した。その結果を表1,2に健全率η(%)として併記した。ここで健全率ηとは、ファインクラックが発生し得る基板上の金属回路板の周辺長の合計をLo,ヒートサイクル試験により実際に発生したファインクラックの長さの合計をLとした際に、
【数1】
で表わされる。すなわち、健全率ηが100%ではファインクラックは全く発生しておらず、ηが100%より小さくなるに従ってファインクラックが増加することを示す指数である。
【0050】
表1,2に示す結果から、同一材料のセラミックス回路基板同士を比較すると、明らかに実施例は比較例よりファインクラックの発生量が少ないことを示している。
【0051】
このように、回路基板の反り量が100μm以下であり、かつ金属回路板側に凹形状に形成した各実施例に係るセラミックス回路基板においては、セラミックス基板と金属回路板等との接合端の角部における集中残留応力が小さくなり、耐熱サイクル特性が大幅に向上することが判明した。
【0052】
【発明の効果】
以上説明の通り、本発明に係るセラミックス回路基板によれば、所定の反り量の範囲内において金属回路板側に反った凹形状に形成されているため、曲げ強度が大きく、かつ十分なたわみ特性を有するセラミックス回路基板が得られる。また、ビッカース硬度(Hv)が500N/mm2 以下の金属回路板を使用することにより、上記たわみ特性を、さらに改善することができる。そして、このセラミックス回路基板を使用することにより、割れの発生が少なく耐久性および信頼性に優れた半導体装置を高い製造歩留りで量産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミックス回路基板の一実施例を模式的に示す断面図。
【図2】セラミックス回路基板の平面図。
【図3】図2に示すセラミックス回路基板の断面図。
【図4】図2に示すセラミックス回路基板の底面図。
【符号の説明】
1,11 セラミックス回路基板
2,12 セラミックス基板
3,13 金属回路板(銅回路板)
4,14 裏金属板(裏銅板)
D 反り量
Claims (7)
- セラミックス基板の表面側にビッカース硬度(Hv)が500N/mm2以下である金属回路板を、背面側に裏金属板を、Ti,Zr,Hfから選択される少なくとも1種を含有する活性金属層を介して接合してセラミックス回路基板を製造する工程と、
セラミックス回路基板上の金属回路板にエッチング処理を施して回路パターンを形成する工程と、
エッチング後のセラミックス回路基板に荷重を負荷することにより金属回路板側に凹形状に反らせるとともに、その反り量を10μm以上100μm以下の範囲とする工程と、
を具備することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。 - セラミックス基板の表面側にビッカース硬度(Hv)が500N/mm 2 以下である金属回路板を、背面側に裏金属板を、直接接合法により接合してセラミックス回路基板を製造する工程と、
セラミックス回路基板上の金属回路板にエッチング処理を施して回路パターンを形成する工程と、
エッチング後のセラミックス回路基板に荷重を負荷することにより金属回路板側に凹形状に反らせるとともに、その反り量を10μm以上100μm以下の範囲とする工程と、
を具備することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。 - セラミックス基板の片面にホーニング加工または研磨加工を施すことにより反り量が50〜150μmの範囲となる凹形状面を有するセラミックス基板を形成し、この凹形状面にビッカース硬度(Hv)が500N/mm 2 以下である金属回路板を接合すると共に、背面側に裏金属板を接合することによりセラミックス回路基板を形成し、このセラミックス回路基板の反り量が10μm以上100μm以下の範囲となるように金属回路板側に凹形状に反らせることを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
- 前記反り量が10μm以上80μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス回路基板の製造方法。
- 前記セラミックス回路基板に曲げ応力を付加し破断に至る際の上記セラミックス回路基板の長手方向両縁部を含む平面を基準とする金属回路板方向へのたわみ量が、上記セラミックス回路基板の長辺方向の単位長さ1mm当り0.01mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス回路基板の製造方法。
- 前記セラミックス基板として窒化アルミニウム基板を使用することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス回路基板の製造方法。
- 前記セラミックス基板として窒化珪素基板を使用することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス回路基板の製造方法。
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