JP4476428B2 - 窒化アルミニウム回路基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置等に使用される窒化アルミニウム回路基板およびその製造方法に係り、特に金属回路板と窒化アルミニウム基板との接合強度を高め回路基板全体としての機械的強度および信頼性を改善した窒化アルミニウム回路基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からアルミナ(Al2O3)焼結体などのように絶縁性に優れたセラミックス基板の表面に、導電性を有する金属回路板をろう材や接着剤やメタライズ金属層で一体に接合したセラミックス回路基板がパワートランジスターモジュール用基板やスイッチング電源モジュール用基板として広く普及している。
【0003】
しかしながら上記回路基板においては、金属回路板とセラミックス基板との間に、ろう材や接着剤やメタライズ層のような介在物が存在するため、両者間の熱抵抗が大きくなり、金属回路板上に設けられた半導体素子等の発熱を系外に迅速に放熱させることが困難であるという問題点があった。
【0004】
このような問題点を解消するため、近年、上記ろう材や接着剤やメタライズ層を使用せずに、所定形状に打ち抜いた金属回路板をセラミックス基板上に接触配置させて加熱するだけで直接接合する方法が検討されている。この直接接合法は、セラミックスと金属とを、ろう材層や接着剤層やメタライズ層などの接合層を介在させずに直接的に接合する方法である。この直接接合法では金属中あるいは金属表面に存在する結合剤(銅の場合は酸素)と金属との共晶液相が生成され、この共晶液相により、セラミックス基板の濡れ性を高めて両部材が直接的に接合される。
【0005】
図3〜図5はそれぞれ従来のセラミックス回路基板の構造例を示す断面図である。セラミックス基板の材質としては、アルミナ(Al2O3),フェライト(FeO)等の酸化物系セラミックス焼結体や窒化アルミニウム(AlN)などの窒化物系焼結体が使用される。図3は結合剤としての酸素を含有しない銅回路板4をAl2O3基板2表面に直接接合したセラミックス回路基板1を示す。なお接合時に共晶液相を生成するための酸素成分を確保するために、銅回路板4表面には所定厚さの表面酸化層(酸化銅層)7が予め形成されている。
【0006】
このセラミックス回路基板1は、図3に示すようにAl2O3基板2の表面側に金属回路板としての銅回路板4が直接接合される一方、背面側に裏銅板としての銅回路板5が同様に直接接合され、さらに表面側の銅回路板4の所定位置に図示しない半田層を介して半導体素子6が一体に接合された構造を有している。
【0007】
また図4に示す従来のセラミックス回路基板1aは、結合剤としての酸素を含有する銅回路板4aおよび裏銅板5aをAl2O3基板2のそれぞれ表面側および裏面側に直接接合して形成される。
【0008】
なお、上記直接接合法は、Al2O3などの酸化物系セラミックスについてのみ適用可能であり、窒化アルミニウム(AlN)基板や窒化けい素(Si3N4)基板などの非酸化物系セラミックス基板にそのまま適用しても、基板に対する濡れ性が低いため、金属回路板の充分な接合強度が得られない。
【0009】
そこで、非酸化物系セラミックス基板を使用する場合には、予め基板表面に酸化膜を形成し、基板に対する濡れ性を高める必要がある。図5はセラミックス基板としてAlN基板2aを使用したセラミックス回路基板1bの構造例を示す断面図である。この場合、金属回路板4a,5aの接合操作前に、酸化性雰囲気中でAlN基板2aを加熱処理することにより、AlN基板2aの全表面に酸化膜(Al2O3皮膜)3が形成される。
【0010】
上記直接接合法により金属回路板をセラミックス基板に接合したセラミックス回路基板によれば、接合界面部に熱抵抗が大きいろう材や接着剤層が介在しないため、両部材間の熱抵抗が小さく放熱姓に優れた回路基板が得られる。また、単純構造であるため、小型高実装化が可能であり、さらに作業工程も短縮できる等の長所を有している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように直接接合法によって形成した従来の各セラミックス回路基板においては、たとえ酸素を含有した金属回路板を使用しても、または、表面酸化膜を形成した金属回路板を使用しても、十分な接合強度をもって金属回路基板とセラミックス基板とを接合することは困難であった。
【0012】
特に窒化アルミニウム基板の表面を酸化して金属回路板を直接接合した従来の窒化アルミニウム回路基板においては、窒化アルミニウム回路基板の表面に酸化膜を形成する際に、酸化雰囲気中、例えば大気中に含有される水蒸気等の影響により、生成される酸化膜の結晶構造の80mol%以上がγ型−アルミナ(活性アルミナ)で占められてしまう難点があった。このγ型−アルミナは欠陥を含んだスピネル構造を有し、結晶性が良好でないため、このようなγ型−アルミナを多量に含む酸化膜を介して金属回路板を直接接合した場合には、接合強度が小さくなる。具体的には、銅回路板の剥離強度で表わした接合強度は、4.5〜5.5kgf/cm程度と低い値に留まるという問題点があった。
【0013】
また、直接接合操作後に金属回路板のピール強度を測定する際に接合面を観察すると、未接合部の面積割合が大きくなっており、ピール強度が低下していることが判明している。また、得られたセラミックス回路基板では上記未接合部を起点として金属回路板の剥離や膨れが発生し易く、いずれにしても回路基板の耐久性が低く、この回路基板を使用した半導体装置の製造歩留りおよび信頼性が大幅に低下するという問題点があった。
【0014】
一方、回路基板に搭載する半導体素子の高集積化,高出力化に対応するため、従来のアルミナ(Al2O3)基板などのセラミックス基板と比較して熱伝導率が高く、放熱性が優れた窒化アルミニウム(AlN)基板を用いた回路基板が、高出力トランジスタやパワーモジュール等の実装用回路基板として普及している。この場合、高出力トランジスタなどの高発熱部品を搭載するセラミックス回路基板は、温度変化が激しい熱サイクルで稼動されるため、セラミックス基板部と金属回路部との熱膨張係数の違いによって、繰り返し応力を受ける。このような過酷な条件下においても回路基板が正常に作動するためには、セラミックス基板と金属回路板との接合部に高い接合強度が要求される。
【0015】
しかしながら、上記窒化アルミニウム基板に前記銅直接接合法(DBC法)により銅回路板を直接接合した窒化アルミニウム回路基板においては、特にAlN基板と銅回路板との間に未接合部が発生し易く、またアルミナ基板の場合と比較しても接合性および耐熱サイクル特性が劣る難点がある。また、実際のAlN基板に対する銅回路板の接合強度もアルミナ基板を使用した場合と比較して大幅に低下してしまう問題点があった。
【0016】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、特に金属回路層と窒化アルミニウム基板との接合強度を高め回路基板全体としての機械的強度を改善し、金属回路板の剥離や膨れなどの欠陥の発生が少ない窒化アルミニウム回路基板を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために、従来の窒化アルミニウム回路基板における金属回路板の剥離や膨れの発生原因および金属回路板に未接合部が発生する原因について調査研究を行なった。その結果、窒化アルミニウム基板表面に形成される酸化膜がγ型−アルミナから構成されている場合に金属回路板の接合強度が低くなり、窒化アルミニウム回路基板の信頼性が大きく低下することが判明した。一方、この窒化アルミニウム基板の表面に酸化膜を形成する工程において、AlN基板を1000℃以上に加熱することによりα型−アルミナの含有量を所定量以上とした酸化膜を形成した場合には、AlN基板に金属回路板を直接接合したときに金属回路板の接合強度が向上し、半導体モジュール実装用としてのAlN回路基板の信頼性を大幅に高められることが判明した。
【0018】
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。すなわち本発明に係る窒化アルミニウム回路基板は、表面に酸化アルミニウムから成る酸化膜を形成した窒化アルミニウム基板の表面に金属回路板を直接接合した窒化アルミニウム回路基板において、上記酸化膜を構成するα型酸化アルミニウムの含有割合が30mol%以上であり、上記金属回路板が銅回路板であり、上記酸化膜におけるγ型酸化アルミニウムの含有割合が10〜70mol%の範囲であり、上記酸化膜の厚さが1〜5μmの範囲であることを特徴とする。
【0019】
また、上記窒化アルミニウム回路基板において、金属回路板が銅回路板であることが好ましい。さらに、酸化膜におけるγ型酸化アルミニウムの含有割合が10〜70mol%の範囲であることが好ましい。また、酸化膜の厚さが1〜5μmの範囲であることが望ましく、さらに2〜3μmの範囲がより好ましい。
【0020】
本発明の回路基板を構成するセラミックス基板としては、特に高出力用素子を搭載するために必要な高い放熱性を確保するために、熱伝導率が70〜200W/m・K程度の窒化アルミニウム(AlN)基板が使用される。このAlN基板には酸化イットリウムなどの焼結補助剤等が含有されていてもよい。
【0021】
上記AlN基板の表面に形成される酸化膜は、AlN基板の濡れ性を高めて金属回路板の直接接合を可能とするために必須であり、特に本発明において上記酸化膜を構成するα型酸化アルミニウム(α−アルミナ)の含有割合は30mol%以上とされる。
【0022】
上記α型−アルミナはコランダム等から成り、六方最密格子に近い結晶構造を有し、さらに格子定数も5.14オングストロームと小さいため、活性アルミナを主体とするγ型−アルミナと比較して安定した結晶構造を有する。そのため、α型−アルミナを所定量含有する酸化膜を介して金属回路板をAlN基板に直接接合した場合には、金属回路板の接合強度(剥離強度)を増加させることが可能となる。
【0023】
上記酸化膜を構成するα型−アルミナの含有割合が30mol%未満と過少な場合には、上記金属回路板の接合強度の改善効果が少ない。したがって、α型−アルミナの含有割合は30mol%以上の範囲とされるが、50mol%以上の範囲がより好ましい。
【0024】
また、酸化膜におけるγ型−アルミナの含有割合は、10〜70mol%の範囲とすることが好ましい。活性アルミナを主体とするγ型−アルミナは、硬質のα型−アルミナと比較してやや軟質であり、若干の微細な気泡を含んでいるため、熱伝導を阻害し易いが、衝撃を緩和できる緩衝効果を発揮し得る成分にもなる。したがって、所定量のα型−アルミナと所定量のγ型−アルミナとを酸化膜中に共存させることにより、金属回路板の接合強度を高めると同時に、回路基板の機械的特性を高められるという相乗的な効果が得られる。
【0025】
また、衝撃を緩和できることから窒化アルミニウム基板と金属回路板とを接合する際の応力も緩和できるため、接合時に発生する基板の割れや金属回路板のゆがみ等の接合不良を減少させることも可能となる。
【0026】
すなわち、α型−アルミナの作用により金属回路板の接合強度が高められると同時に、AlN基板と金属回路板との熱膨張差に起因する熱応力や変形が、軟質なγ型−アルミナの気泡部分で吸収されるため、金属回路板が熱サイクルによって剥離することが少なくなる。上記γ型−アルミナの含有割合が10mol%未満と過少である場合には、上記緩衝効果が不十分である。一方、含有割合が70mol%を超えるように過大になると、AlN基板の良好な熱伝導性が阻害される。そのため、酸化膜中のγ型−アルミナの含有割合は10〜70mol%の範囲とされるが、20〜50mol%の範囲がより好ましい。
【0027】
また金属回路板を構成する金属としては、銅,アルミニウム,鉄,ニッケル,クロム,銀,モリブデン,コバルトの単体またはその合金など、基板成分との共晶化合物を生成し、直接接合法を適用できる金属であれば特に限定されないが、特に導電性および価格の観点から銅,アルミニウムまたはその合金が好ましい。
【0028】
金属回路板の厚さは、通電容量等を勘案して決定されるが、窒化アルミニウム基板の厚さを0.25〜1.5mmの範囲とする一方、金属回路板の厚さを0.1〜0.5mmの範囲に設定して両者を組み合せると熱膨張差による変形などの影響を受けにくくなる。
【0029】
特に金属回路板として銅回路板を使用する場合には、酸素を100〜1000ppm含有するタフピッチ電解銅から成る銅回路板を使用し、さらに後述するように銅回路板表面に所定厚さの酸化銅層を予め形成することにより、直接接合時に、発生するCu−O共晶の量を増加させ、基板と銅回路板との接合強度を、より向上させることができる。
【0030】
上記酸化銅層などの表面酸化層は、例えば金属回路板を大気中において温度150〜360℃の範囲にて20〜120秒間加熱する表面酸化処理を実施することによって形成される。ここで、酸化銅層の厚さが1μm未満の場合は、Cu−O共晶の発生量が少なくなるため、基板と銅回路板との未接合部分が増大し、十分な接合強度が得られない。一方、酸化銅層の厚さが10μmを超えるように過大にしても、接合強度の改善効果が少なく、却って銅回路板の導電特性を阻害することになる。したがって、銅回路板表面に形成する酸化銅層の厚さは1〜10μmの範囲が好ましい。そして同様の理由により2〜5μmの範囲がより望ましい。
【0031】
また、窒化アルミニウム基板の表面が平滑である場合よりも、粗面である方が接合強度が高くなる傾向がある。なお、上記酸化処理において、加熱温度を高めたり、処理時間を長くすることにより、窒化アルミニウム基板の表面粗さを増加させることができる。上記表面酸化処理後における窒化アルミニウム基板の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)が5〜10μmの範囲にするとよい。さらに必要に応じて窒化アルミニウム基板表面をホーニング処理することによって、その表面粗さを調整してもよい。
【0032】
なお、直接接合法はAl2O3などの酸化物系セラミックス基板についてのみ適用可能であり、窒化アルミニウムや窒化けい素などの非酸化物系セラミックス基板にそのまま適用しても基板に対する濡れ性が低いため、金属回路板の十分な接合強度が得られない。
【0033】
そこで本発明のようにセラミックス基板として窒化アルミニウム(AlN)基板を使用する場合には、そのAlN基板の表面に予め酸化膜を形成し、基板に対する濡れ性を高める必要がある。この酸化膜は上記AlN基板を、空気中などの酸化雰囲気中で温度1000〜1250℃程度で5時間以上、好ましくは10〜25時間加熱して形成される。この酸化膜の厚さが1μm未満の場合には、上記濡れ性の改善効果が少ない一方、5μmを超えるように厚く形成しても改善効果が飽和するため、酸化物層の厚さは1〜5μmの範囲が必要であり、より好ましくは2〜3μmの範囲が望ましい。
【0034】
また、加熱時間が5時間未満、例えば1〜2時間程度ではα型酸化アルミニウムの含有量が30mol%以下、つまりはγ型酸化アルミニウム量が70mol%を超えた欠陥の多い酸化アルミニウム膜しか得られない。一方、25時間を超える長時間の酸化処理は酸化アルミニウム膜の厚さが5μmを超え易いので好ましくない。
【0035】
さらに、加熱時間を5時間以上とすることにより、若干の水蒸気(例えば3vol%以下)等を含んだ通常の大気中または酸素を15〜30vol%含んだ窒素雰囲気であっても良好な酸化アルミニウム膜が得られる。そのため、例えば乾燥空気を調製するための特殊な処理を必ずしも実施する必要性がなくなる。
【0036】
本発明に係る窒化アルミニウム回路基板は、上記のように酸化膜を形成したAlN基板の表面に、前記金属回路板を直接接合して製造される。すなわち、本発明に係る窒化アルミニウム回路基板の製造方法は、窒化アルミニウム基板を1100〜1250℃で5時間以上大気中で熱処理することにより、γ型酸化アルミニウム10〜70mol%、α型酸化アルミニウム30mol%以上からなる酸化膜を1〜5μm形成する工程と、この酸化膜上に銅回路板を配置し、銅直接接合法により銅板を接合する工程とを有することを特徴とする。
【0037】
ここで上記金属回路板は、ろう材などの接合剤を使用せずにAlN基板表面に直接的に一体に接合される。すなわち、金属回路板の成分と基板成分との共晶化合物(共晶融体)を加熱により発生せしめ、この共晶化合物を接合剤として両部材を接合する、いわゆる直接接合法を使用して接合される。
【0038】
そして、金属回路板が銅回路板である場合には、以下のように接合操作が実施される。すなわち酸化膜を形成したAlN基板の表面の所定位置に、銅回路板を接触配置して基板方向に押圧した状態で、銅の融点(1083℃)未満で銅−酸化銅の共晶温度(1065℃)以上に加熱し、生成したCu−O共晶化合物液相(共晶融体)を接合剤として銅回路板がAlN基板表面に直接的に接合される。この直接接合法は、いわゆる銅直接接合法(DBC:Direct Bonding Copper法)である。
【0039】
一方、金属回路板がアルミニウム回路板である場合には、結合剤としてはSiが選択されAlN基板表面にAl回路板を押圧した状態でアルミニウム−けい素の共晶温度以上に加熱し、生成したAl−Si共晶化合物液相(共晶融体)を接合剤としてAl回路板がセラミックス基板表面に直接的に接合され、本発明のAlN回路基板が製造される。
【0040】
このように直接接合法を使用して金属回路板をAlN基板表面に直接接合して形成した本発明に係る窒化アルミニウム回路基板によれば、金属回路板とAlN基板との間に、接着剤やろう材のような介在物が存在しないため、両者間の熱抵抗が小さく、金属回路板上に設けられた半導体素子等の発熱を系外に迅速に放散させることが可能である。
【0041】
本発明に係る窒化アルミニウム回路基板によれば、窒化アルミニウム基板表面に形成した酸化膜中のα型酸化アルミニウムの含有割合を30mol%以上としているため、基板と金属回路板との接合性が改善される。すなわち、窒化アルミニウム基板と金属回路板との未接合部が減少し、両部材の接合強度を大幅に高めることができる。また未接合部に起因する金属回路板の剥離や膨れが効果的に防止でき、この回路基板を用いた半導体装置を高い製造歩留りで量産することが可能になる。
【0042】
また、金属回路板の接合強度が高いため、熱サイクルによって回路層が剥離したり、基板に割れが発生することが少なく、耐熱サイクル特性が著しく向上し、耐久性および信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について以下に示す実施例を参照して具体的に説明する。
【0044】
実施例1〜9および比較例1〜3
平均粒径1μmの窒化アルミニウム粉末に対して、焼結補助剤として酸化イットリウム(Y2O3)を3重量%と、有機バインダーを5重量%と、分散剤を0.4重量%と溶媒としてのエタノールとを加え、均一に混合して原料混合体を調製した、次に、原料混合体をドクターブレード法にて成形してシート状成形体とし、この成形体を700℃で2時間加熱して脱脂した後に、窒素・還元雰囲気中で温度1800℃で3時間加熱することにより、熱伝導率が170W/m・Kであり、縦55mm×横37mm×厚さ0.8mmの窒化アルミニウム(AlN)基板を多数用意した。次に、各AlN基板を空気雰囲気の加熱炉中で表1に示す温度および時間で加熱することにより、基板全表面を酸化し、表1に示す厚さの酸化膜(Al2O3皮膜)をそれぞれ形成した。
【0045】
上記のように形成した各酸化膜についてX線解折(XRD)法により結晶構造を特定するとともに酸化膜を構成する各酸化アルミニウムの割合を測定して表1に示す結果を得た。
【0046】
一方、酸素を407ppm含有し、厚さ0.3mmおよび0.25mmのタフピッチ電解銅から成る銅回路板を多数用意した。
【0047】
次に酸化膜を形成した各AlN基板の表面側に、厚さ0.3mmのタフピッチ電解銅から成る銅回路板を接触配置する一方、背面側に厚さ0.25mmのタフピッチ銅から成る銅回路板を裏当て材として接触配置させて積層体とし、この積層体を窒素ガス雰囲気に調整した温度1075℃に設定した加熱炉に挿入して1分間加熱することにより、各AlN基板の両面に銅回路板を直接接合した実施例および比較例に係る窒化アルミニウム回路基板をそれぞれ調製した。なお、比較例3の回路基板では、酸化処理の雰囲気を水蒸気を実質的に含まない乾燥空気とし、しかる後に酸化処理を実施した。
【0048】
各窒化アルミニウム回路基板8は、図1〜2に示すようにAlN基板2aの全表面に酸化膜3aが形成されており、AlN基板2aの表面側に金属回路板としての銅回路板4aが直接接合される一方、背面側に裏銅板としての銅回路板5aが同様に直接接合され、さらに表面側の銅回路板4aの所定位置に図示しない半田層を介して半導体素子が一体に接合される構造を有する。なおAlN基板2aの両面に銅回路板4a,5aを接合した場合、裏銅板としての銅回路板5aは放熱促進および反り防止に寄与するので有効である。
【0049】
上記のように調製した各実施例および比較例に係る各回路基板について、酸化処理後におけるAlN基板の抗折強度を測定して、表1に示す結果を得た。また各回路基板の強度特性を評価するために、各銅回路板のピール強度の平均値を測定するとともに、このピール強度測定後における銅回路板の剥離面を写真撮影し、写真上に白色部として残る未接合部を除いた接合部の面積率を画像解析により測定した。各測定結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1に示す結果から明らかなように、AlN基板表面に形成される酸化膜中のα型アルミナの含有割合を30mol%以上に調整しα化率を高めた後に、銅回路板をAlN基板表面に直接接合して成る各実施例に係る窒化アルミニウム回路基板によれば、上記α化率が低い比較例1〜3の回路基板と比較して、銅回路板と窒化アルミニウム基板との接合部の面積率が大きく、接合強度が改善でき、ピール強度は10%前後上昇することが確認できた。
【0052】
次に、実施例1〜9および比較例1〜3の窒化アルミニウム回路基板に対し、−40℃×30分→室温×10分→125℃×30分→室温×10分の熱サイクルを繰り返して付加する熱サイクル試験(TCT試験)を行った。
【0053】
実施例の回路基板では、窒化アルミニウム基板に割れ(ひび)が確認されるまでのサイクル数が80〜100であったのに対し、比較例ではいずれも40〜60と劣っていた。この理由は、比較例1および比較例2では酸化膜が薄いまたは厚すぎるため、さらにはピール強度が低いためである。比較例3はピール強度は高いものの酸化アルミニウム膜中にγ型酸化アルミニウムが少ないことから熱応力の緩和効果が少ないためであると考えられる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明の通り、本発明に係る窒化アルミニウム回路基板によれば、窒化アルミニウム基板表面に形成した酸化膜中のα型酸化アルミニウムの含有割合を30mol%以上としているため、基板と金属回路板との接合性が改善される。すなわち、窒化アルミニウム基板と金属回路板との未接合部が減少し、両部材の接合強度を大幅に高めることができる。また未接合部に起因する金属回路板の剥離や膨れが効果的に防止でき、この回路基板を用いた半導体装置を高い製造歩留りで量産することが可能になる。
【0055】
また、金属回路板の接合強度が高いため、熱サイクルによって回路層が剥離したり、基板に割れが発生することが少なく、耐熱サイクル特性が著しく向上し、耐久性および信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るAlN回路基板の一実施例を示す平面図。
【図2】図1に示すAlN回路基板の断面図。
【図3】従来のセラミックス回路基板の構造例を示す断面図。
【図4】従来のセラミックス回路基板の構造例を示す断面図。
【図5】従来のセラミックス回路基板の他の構造例を示す断面図。
【符号の説明】
1,1a,1b セラミックス回路基板
2,2a セラミックス基板(Al2O3基板,AlN基板)
3,3a 酸化膜(Al2O3膜)
4,4a 金属回路板(銅回路板)
5,5a 銅回路板(裏銅板)
6 半導体素子
7 表面酸化層(酸化銅層)
8 AlN回路基板
Claims (5)
- 表面に酸化アルミニウムから成る酸化膜を形成した窒化アルミニウム基板の表面に金属回路板を直接接合した窒化アルミニウム回路基板において、上記酸化膜を構成するα型酸化アルミニウムの含有割合が30mol%以上であり、上記金属回路板が銅回路板であり、上記酸化膜におけるγ型酸化アルミニウムの含有割合が10〜70mol%の範囲であり、上記酸化膜の厚さが1〜5μmの範囲であることを特徴とする窒化アルミニウム回路基板。
- 酸化膜の厚さが2〜3μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の窒化アルミニウム回路基板。
- 前記銅回路板のピール強度が5.1Kgf/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の窒化アルミニウム回路基板。
- 窒化アルミニウム基板を1100〜1250℃で5時間以上大気中で熱処理することにより、γ型酸化アルミニウム10〜70mol%、α型酸化アルミニウム30mol%以上からなる酸化膜を1〜5μm形成する工程と、この酸化膜上に銅回路板を配置し、銅直接接合法により銅板を接合する工程とを有することを特徴とする窒化アルミニウム回路基板の製造方法。
- 大気中での熱処理工程が25時間以下であることを特徴とする請求項4記載の窒化アルミニウム回路基板の製造方法。
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