JP3944957B2 - 含フッ素化合物、および光学薄膜と反射防止性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の含フッ素化合物および前記含フッ素化合物の製造方法に関し、さらに、前記含フッ素化合物を含有する耐擦傷性に優れた低屈折率の光学薄膜、前記の光学薄膜を利用した反射防止性物品および反射防止方法に関する。本発明の光学薄膜を、ブラウン管や液晶表示装置、CRT用反射防止フィルター、プラズマディスプレイ用反射防止フィルター、ガラス、レンズなどの物品表面に形成させ、光線の反射防止に用いることができる。
【0002】
なお、本発明で光学薄膜とは、基材表面に透明な薄膜を形成され、基材を照射する光線が基材に入射する際、屈折率の異なる境界で干渉をおこさせる薄膜のことをいう。従って、光学薄膜では反射光は入射光の干渉光として出現する。光学薄膜の厚さは、通常、1μm以下である。また、本発明の説明で屈折率はとくに説明しない限り、ナトリウム発光スペクトルのD線における測定値であり、片面反射率(たんに反射率ともいう)は、波長が540nmの光線における測定値である。
【0003】
【従来の技術】
従来の光反射防止性物品の多くは、表面に単層の低屈折率光学薄膜、または低屈折率と高屈折率の光学薄膜を交互に積層して光の反射を防止している。光学薄膜の反射光は、光学薄膜表面や薄膜境界面における各反射光の干渉光であって、反射率は光学薄膜の屈折率と膜厚により低減または増加するが、原則的に屈折率が低いほど反射率の低減に有利である。光学薄膜は蒸着やスパッタなどを利用して物品(基材)の表面に無機物被膜を形成するのが一般的である。得られた反射防止膜は低反射性で耐擦傷性に優れるが、真空装置などを用いるので生産性が悪く、製造コストが高い。また、製造工程で基材が加熱されるので使用できる素材が限られるという問題があった。
【0004】
前記の問題を解決するために、特開平4−355401号公報や特開平6−18705号公報などには、低屈折率の有機物質を溶媒に溶解し、基材にコーティングして低屈折率反射防止膜を形成する溶液コーティング法が開示されている。溶液コーティング法を利用すれば、無機薄膜中で最も屈折率の低いフッ化マグネシウム薄膜よりもさらに低い屈折率を有するフッ素含有樹脂をコーティングすることができる。しかも、溶液コーティングは生産性が高く経済的である。
【0005】
しかし、特開平4−355401号公報および特開平6−18705号公報に記載の含フッ素樹脂からなる有機薄膜は、含フッ素樹脂硬化物の架橋密度が低いので表面硬度が低く、耐擦傷性に問題があった。さらに、コーティングした後、加熱硬化を必要とするため使用できる基材が限定されていた。この他、米国特許第3,310,606号公報には、架橋密度が高く表面硬度の高い含フッ素樹脂として、パーフルオロジビニルエーテルの硬化物が記載されているが、溶剤に不溶で高温、高圧下で成型する必要があるため光学薄膜を得ることができない。
【0006】
また、特開平8−239430号公報には、特定の構造をもつ含フッ素ジ(メタ)アクリレート100重量部に対して、多官能(メタ)アクリレート10〜90重量部含有する、揆水・撥油性及び耐擦傷性を備えた含フッ素硬化性組成物が開示されている。しかし、この硬化性組成物は屈折率が1.45を越える傾向があり、反射防止性を得にくい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低反射性で耐擦傷性に優れ、かつ容易に形成することのできる光学薄膜、およびこの光学薄膜を用いた反射防止性物品を提供することを課題に研究の結果、完成されたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明者は新規合成物を含む各種の化合物を合成して光学的特性、力学的特性などを測定し、前記の光学薄膜への利用可能性を検討した。その結果、化3に一般式(1)に示される構造の新規含フッ素化合物の合成に成功し、かつ、この新規化合物の硬化物が低屈折率であって架橋性が高く、従って硬化後の硬度が大きく、たとえば光学薄膜として極めて有望であることを見出だすことができた。
【0009】
ここに本発明は、まず、前記の課題を解決することのできる次の一般式(1)で示される新規の含フッ素化合物を提供する。
【0010】
【化3】
この一般式(1)で示される含フッ素化合物は、次の一般式(2)で示される構造の化合物と一般式(3)で示される構造の化合物とをウレタン化反応させて製造することができる。
【0011】
【化4】
一般式(1)で示される新規含フッ素化合物は、この化合物を含有する組成物を硬化して、容易に屈折率が1.46を超えない薄膜を形成することが可能であり、光学薄膜として有用に利用することができる。その際、光学薄膜の厚さを30ないし700nmに形成することが好ましい。また、前記の光学薄膜には一般式(1)で示される含フッ素化合物100重量部に対し、100重量部を超えない量の多官能シラン化合物を添加して硬化させることができるし、さらに、一般式(1)で示される含フッ素化合物100重量部に対し、100重量部を超えない量の、エポキシ基を有する多官能シラン化合物と、100重量部を超えない量の多官能エポキシ樹脂とを添加し、硬化させることもできる。
【0012】
前記のいずれかの光学薄膜を基材表面に形成すれば、優れた反射防止性物品として有用である。基材表面に光学薄膜を形成するに際して、基材表面と光学薄膜との中間に、有機および/または無機系バインダーと金属化合物の微粒子とからなり、かつ屈折率が基材の屈折率の±0.02以内のハードコート層を形成して耐擦傷性を増大し、干渉縞の発生を防止することができる。さらに、基材またはハードコート層と光学薄膜との中間に、光学薄膜およびハードコート層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率膜を積層して反射防止性を高めることもできる。
【0013】
前記の光反射防止性物品は、一般式(2)で示される化合物と一般式(3)で示される化合物とを、イソシアネートと反応する基をもたない有機溶剤に溶解して室温ないし80℃で反応させ、得られた反応溶液を含む塗液を調合し、調合した塗液を基材の表面に塗布して硬化し、基材の表面に屈折率が1.46を超えない光学薄膜を形成することにより、合理的に製造することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明を具体的な実施形態例をあげながら順次説明する。まず、本発明が提供する新規化合物の、一般式(1)で示される含フッ素化合物の製造方法を説明する。
一般式(1)に示される化合物は、一般式(2)で示される含フッ素化合物と一般式(3)で示されるイソシアネート化合物とをウレタン化反応させることにより合成することができる。一般式(2)の含フッ素化合物は、一般式(4)の化合物を加水分解して合成することができる。
【0015】
【化5】
一般式(2)で示される含フッ素化合物のなかでも、nが4〜12の化合物を用いることにより一般式(1)の化合物を容易に製造することができる。かつ、低屈折率の光学薄膜を得やすい。一方、一般式(3)で示される化合物の中では化6で示した一般式(5)ないし(8)の化合物を好ましく用いることができる。反応生成物の架橋性が大きく、かつ、容易に反応生成物を製造することができる利点がある。
【0016】
【化6】
具体的に前記のウレタン化反応を実施し、一般式(1)で示される化合物を製造するには、一般式(2)および一般式(3)で示される化合物を、エステル系、ケトン系、エーテル系、炭化水素系などであってイソシアネートと反応する基を持たない有機溶剤に溶解し、室温ないし80℃程度の温度条件で反応させるとよい。その際、たとえばジラウリン酸ジ−n−ブチル錫のようなウレタン化触媒を加えて反応速度を促進させることができる。ウレタン化反応を行った後、適当な手段で溶剤を除去し、ウレタン化された化合物、すなわち一般式(1)で示される化合物を取り出すことができる。
【0017】
一般式(1)の化合物を光学薄膜の形成に用いる場合には、ウレタン化反応の生成物を溶剤から分離することなく、反応溶液のまま光学薄膜を形成するための塗液に用いること、すなわち、塗液の調製過程でウレタン化反応を一体的に行う方法が好適である。この方法によれば前記の有機溶剤の全部または一部が塗液の溶剤としても利用されることになる。
【0018】
本発明では、光学薄膜の表面硬度や密着性などの特性を向上させたり、屈折率を調整するために、多官能シラン化合物を添加することができる。多官能シラン化合物の添加量は、本発明の一般式(1)で示される化合物100重量部に対し多官能シラン化合物を100重量部を超えない範囲で、好ましくは90重量部以下の範囲で添加することができる。多官能シラン化合物が100重量部を超えると、屈折率が1.46以上になりやすく、本発明の目的とする反射防止性能を発揮できない傾向がある。
【0019】
本発明に用いられる多官能シラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどがあげられ、これらの多官能シラン化合物を単独または2種以上を混合て使用することができる。
【0020】
また、前記多官能シラン化合物のうちエポキシ基を有するものは、硬度や上下層との密着性を改善する効果があり好ましく用いられる。エポキシ基を有する多官能シラン化合物を添加する場合には、一般式(1)の化合物100重量部に対し、さらに100重量部を超えない範囲の、好ましくは90重量部以下の多官能エポキシ樹脂を添加することができる。多官能エポキシ樹脂の添加量が100重量部を超えるようだと屈折率が1.46を超え、本発明目的の反射防止性能を得ることができなくなる傾向がある。本発明の光学薄膜では一般式(1)に示される化合物を30重量%以上含有させることが好ましい。
【0021】
本発明で用いられる多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル、ノボラック系ポリグリシジルエーテル、エチレングリコール系ジグリシジルエーテル、プロピレングリコール系ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA系ジグリシジルエーテルなどがあげられ、これらの樹脂は単独または2種以上を混合して添加することができる。
【0022】
次に本発明の光学薄膜は、一般的にアルコール系、エステル系、ケトン系、エーテル系、炭化水素系などの有機溶剤に、前記一般式(1)に示される本発明の含フッ素化合物、またはさらに前記の多官能シラン化合物などが添加された塗液を調合し、調合した塗液を基材の表面に薄く塗布して重合、硬化し形成される。通常、塗布の事前処理として、塗液に含まれているシラン系加水分解性基を加水分解する。加水分解には、当量の水を加え攪拌する方法が一般的であるが、触媒として微量の酸、特に塩酸の併用が効果的である。 前記の塗液には、硬化剤を加える。硬化剤として、ポットライフの長いアルミニウム、鉄、銅などの金属キレート化合物、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−iso−プロポキシドモノメチルアセトアセテートなどを用いるのが一般的である。硬化剤は、硬化組成物全体の0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部を添加するとよい。
【0023】
また、均一コーティング性や密着性を改良するため、塗液にレベリング剤やカップリング剤などの薬剤を添加することも行われる。これらの薬剤は、硬化組成物全体の0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部を添加するとよい。
【0024】
塗液の塗布には、基板に均一に薄く塗布できる方法であればとくに制限なく利用できるが、具体的にスピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコーターコート、ロールコート、カーテンフローコートなどの手段があげられる。
【0025】
塗液中、本発明の光学薄膜を形成するための硬化組成物は、好ましくは、光学膜厚に均一に塗布した後、熱硬化する。本発明の光学薄膜を形成して反射防止性能を施すことのできる基板にとくに制限はなく、たとえば、ガラス、ポリカーボネートやアクリル樹脂などの樹脂成形物、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのフィルム類などの光反射防止に効果的に利用することができる。本発明含フッ素化合物で形成した薄膜は前記特性の他にも撥水性や撥油性などの優れた特性を具備するので、それらの特性を利用することもできる。基材の形状に特別な制限はない。
【0026】
本発明の光学薄膜は基材に単層としてのみではなく、他の薄膜と積層して形成することもできる。たとえば、密着性や塗布性を向上させるために基材を表面処理したり、基材の硬度を向上させるためにハードコート層を積層して光反射防止性物品にすることができる。さらに、基材の反射防止効果を高めるために、高屈折率の光学薄膜を基材と本発明の光学薄膜との中間に形成することもできる。本発明の光学薄膜と高屈折率薄膜とを交互に積層することにより、より優れた反射防止膜を得ることもできる。この高屈折率膜は、基材と同等もしくはそれ以上の屈折率が必要であり、具体的には少なくとも1.58が好ましく、さらに好ましくは、1.6以上、より好ましくは、1.7以上である。
【0027】
本発明の光学薄膜を他の薄膜と積層して基材表面に形成した光反射防止性物品の好ましい実施態様例を説明する。基材のポリカーボネートやメタクリル樹脂などの表面に、硬度付与と干渉縞発生を防止するために基材との屈折率差が±0.02以内,厚さ2〜5μm程度のハードコート層を設けることが望まれる。ハードコート層は、有機系または無機系のバインダーに、必要によりSi,Sb,Ce,Ti,Snなどの金属酸化物超微粒子、すなわち一般的には可視光線の波長よりも小さい粒子径の微粒子を添加した塗膜を用いる。有機バインダーとしては、エポキシ樹脂硬化物やラジカル架橋重合した樹脂などが、無機系バインダーとしては、シラン系化合物の加水分解硬化物などがあるが、特に制限はない。硬化には一般的に熱硬化法よりも光硬化法を用いる方が硬化速度が速く好ましい。
【0028】
さらに、ハードコート層と本発明光学薄膜との間に前記の高屈折率膜を積層して高い反射防止性を得るためには、高屈折率膜の厚さを90〜400nm、より好ましくは110〜180nmに形成する。高屈折率膜は一般に、金属酸化物の真空蒸着膜か、あるいはペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシアクリレートなどの(メタ)アクリレート類;シラン類;エポキシ樹脂類などをバインダーとして、Sb,Ce,Ti,Snなどの金属酸化物超微粒子を含有させた層である。金属酸化物に導電性がある場合は滞電防止性を付与できて好ましい。また、バインダーを光硬化法で硬化できれば硬化速度が速く好ましい。
【0029】
本発明は、反射率の低減を目的とした低屈折率の光学薄膜を提供するものであり、屈折率が低いほど反射率の低減に有利である。光学薄膜の膜厚は、λ/4nの奇数倍が好ましい。ここで、λは薄膜内での光の波長、nは薄膜の屈折率を示し、光の波長がある程度の幅で存在している場合は、λは光の中心波長を示す。本発明で対象となる光の波長は、多くの場合、可視光であり、中心波長は通常人間が敏感に感じる500〜550nmに設定するのが好ましい。
【0030】
本発明の光学薄膜の膜厚は、薄膜の屈折率にもよるが、好ましくは、30〜700nm、より好ましくは、40〜120nmである。光学薄膜の膜厚が30nm未満の場合は、可視光における光干渉による反射率の低減が不十分となる場合がある。また光学薄膜の膜厚が700nmを越える場合も、反射率はほぼ空気と薄膜界面の反射のみに依存するようになるので可視光における光干渉による反射率の低減が不十分となる傾向がある。例えば、屈折率1.6の基材に屈折率1.38の薄膜を設ける場合、膜厚が最適な光学膜厚のときは反射率は1%以下となるが、数μ以上の膜厚の場合は反射率はおよそ3%となる。また、その光学薄膜の屈折率が1.46よりも高い場合は、ポリメチルメタクリレートやガラスなどの比較的屈折率の低い基材に対する反射防止処理効果は顕著に認められない。
【0031】
【実施例】
本発明を実施例をあげてさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例および参考例において用いた評価手段および測定手段は次の通りである。
a.膜の厚さ:エリプソメータによる測定値。
b.片面反射率:測定面の裏面をサンドペーパで粗面化した後、油性インキで黒塗りし、分光光度計を用い、540nmにおける測定面の反射率を測定した。
【0032】
c.干渉縞:蛍光灯スタンドの20cm下にサンプルを静置し、肉眼観察により評価した。
d.耐擦傷性:消しゴム(No.50(ライオン(株)製)を接触面積約0.5cm2 、荷重1kgで反射面上を20回往復させた後、肉眼判定し、擦過痕が認められないものを合格判定した。
さらに、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。
【0033】
実施例1
表1に記載の組成の溶液を調合し、40℃で6時間反応させた結果、次の構造式(9)で示される含フッ素化合物含む溶液Rを得た。この含フッ素化合物の屈折率は、nd=1.40であった。
【0034】
【化7】
【0035】
【表1】
ついで、得られた溶液Rを用い、つぎの組成の加水分解液である塗料Aを調合した。
【0036】
さらに、調合した塗料Aを厚さ2mmのポリカーボネート板の表面ににスピンコートし、80℃のオープンで2時間、加熱処理した。続いて130℃のオープンで2時間、硬化処理し、本発明の光学薄膜である厚さ95nmの硬化膜を形成した。形成した光学薄膜の屈折率はnd=1.44、片面反射率は1.5%であった。
【0037】
参考例1
ブランクサンプルとして、実施例1で用いたのと同じポリカーボネート板の片面反射率を測定したところ5.2%であった。
【0038】
実施例2
表2に記載の組成の溶液を調合し、40℃で6時間反応させた。得られた反応液(以下、溶液Sとする。)中には、表3の構造式(a)で示される化合物1モルに、構造式(b)で示される化合物2モルがウレタン結合した含フッ素化合物が合成されていた。この含フッ素化合物の屈折率を測定したところ、1.39であった。
【0039】
【表2】
溶液Sを用い、つぎの組成の加水分解液である塗料Bを調合した。実施例1と同様にして塗料Bをポリカーボネート板の表面に塗布、硬化させ、本発明の光学薄膜を形成した。この光学薄膜の屈折率はnd=1.44、片面反射率は1.5%であった。
【0040】
実施例3
表3に記載の組成の加水分解物である塗料Cを調合した。実施例1と同様にして塗料Cをポリカーボネート板の表面に塗布、硬化させ、本発明の光学薄膜を形成した。この光学薄膜の屈折率はnd=1.45、片面反射率は1.7%であった。
【0041】
【表3】
実施例4〜6
屈折率が1.59、厚さが2mmのポリカーボネート板の表面に、五酸化アンチモン超微粒子、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシアクリレートを主成分として光硬化した、屈折率1.59、厚さ3μmのハードコート層を形成した。さらにハードコート層の表面に実施例1と同様にして塗料A,B,Cを塗布し、硬化させて光学薄膜を積層、形成した。形成した光学薄膜を評価したところ、いずれも高い耐擦傷性を示した。その他の評価結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
実施例7〜9
実施例4〜6と同様にしてポリカーボネート板の表面にハードコート層を形成した。形成したハードコート層の表面にアンチモンドープ酸化スズ超微粒子、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシアクリレートを主成分とする組成物膜を光硬化により積層し、厚さ150nm、屈折率nd=1.70、表面抵抗値2×109Ω/□の導電性の高屈折率層を得た。さらに、この高屈折率層の表面に、実施例1と同様にして塗料A,B,Cを塗布し、硬化させて光学薄膜を積層、形成した。形成した光学薄膜を評価したところ、いずれも高い耐擦傷性を示した。その他の評価結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
【発明の効果】
本発明が提供する新規含フッ素化合物の硬化物は極めて低屈折率であって、硬化後の硬度が大きく、とくに低屈折率光学薄膜として有望である。かつ、表面硬度が大で耐擦傷性、耐久性に優れている。他にも、はっ水性や耐油性にも高い効果を奏する。しかも、硬化前は溶剤に可溶なため、簡便かつ連続処理が可能で経済的な溶液コーティングにより塗布し、硬化することができる。また、ハードコート層や高屈折率膜に重ねて本発明の低屈折率膜を形成し、耐擦傷性、光反射防止性能をさらに向上させ、多機能性を付与することができる。光学薄膜以外にも光学フィルター、各種の表示部材、展示部材、透明部材、光学機器の構成素材などへの利用が期待される。
Claims (10)
- 一般式(1)で示される含フッ素化合物を含有する組成物を硬化して形成された、屈折率が1.46を超えない薄膜からなることを特徴とする光学薄膜。
- 前記の薄膜の厚さが30ないし700nmであることを特徴とする請求項3記載の光学薄膜。
- 一般式(1)で示される含フッ素化合物100重量部に対し、100重量部を超えない量の多官能シラン化合物が添加されて硬化されていることを特徴とする請求項3または4に記載の光学薄膜。
- 一般式(1)で示される含フッ素化合物100重量部に対し、100重量部を超えない量の、エポキシ基を有する多官能シラン化合物と、100重量部を超えない量の多官能エポキシ樹脂とが添加されて硬化されていることを特徴とする請求項3、4または5に記載の光学薄膜。
- 請求項3〜6のいずれかに記載の光学薄膜を基材表面に形成してなることを特徴とする反射防止性物品。
- 基材表面と光学薄膜との中間に、有機および/または無機系バインダーと金属化合物の微粒子とからなり、かつ、屈折率が基材の屈折率の±0.02以内のハードコート層が形成されていることを特徴とする請求項7記載の反射防止性物品。
- 基材またはハードコート層と光学薄膜との中間に、光学薄膜およびハードコート層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率膜が積層されていることを特徴とする請求項8記載の反射防止性物品。
- 前記の一般式(2)で示される化合物と一般式(3)で示される化合物とを、イソシアネートと反応する基をもたない有機溶剤に溶解して室温ないし80℃で反応させ、得られた反応溶液を含む塗液を調合し、調合した塗液を基材の表面に塗布して硬化し、基材の表面に屈折率が1.46を超えない光学薄膜を形成することを特徴とする光反射防止性物品の製造方法。
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