JP5176265B2 - コーティング材料およびそれを用いた光学物品 - Google Patents

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本発明は、耐薬品性、耐擦傷性などに優れたコーティング材料、およびそれを用いた光学物品に関するものであり、特に反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、光学レンズ、ディスプレイ等の光学物品に関するものであり、例えばCRT、LCD、PDP、EL、FEDなど各種ディスプレイの前面板やリアプロジェクション用スクリーン等に利用されるものに関する。
反射防止膜は、レンズ、光学部品、コンピュータやテレビ等の画像表示装置において、外光や蛍光灯などの光源の写り込みを低減し、視認性を向上させるために用いられ、可視光の反射が少ないことが求められる。反射防止の技術としては、基材の表面を屈折率の小さい透明被膜で被覆することにより、反射率が小さくなることが知られている(特許文献1参照)。さらに、基材に高屈折率層を形成し、その上層に低屈折率層を形成することで、より効果的な反射防止をすることができる。これら、低屈折率層を形成するための低屈折率材料としては、無機材料として、MgF、SiO等が有り、また有機材料としてはフッ素樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂などがある。通常、MgFは真空蒸着やスパッタ法等の気相法で、SiOはMgFと同じ気相法およびゾルゲル法による液相法で、また、フッ素樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂等は液相法で形成されている。他方、さらに低屈折率化する試みも検討されている。例えば、各種樹脂よりも低い屈折率を有する、内部に空隙を有するシリカ微粒子をマトリックス材料である有機材料中に分散させて得られるコーティング膜形成塗料を塗布して、乾燥、硬化することによって低屈折率の透明被膜を形成する技術が知られている。すなわち、より低屈折率を実現するためには内部に空隙を有するシリカ微粒子を多く導入することが試みられている(特許文献2参照)。
液相法での反射防止膜も公知であり、例えば有機ケイ素化合物、微粒子状シリカと溶剤および/または分散剤からなる反射防止性透明材料の製造方法が知られている(特許文献3参照)。また、ケイ素系化合物の加水分解物、金属キレート化合物と低屈折率シリカゾルからなる耐液性に優れた反射防止膜知られている(特許文献4参照)。
さらに、貯蔵安定性が良好な塗料として、アクリル樹脂、オルガノアルコシキシラン化合物、アルミニウムキレート化合物と親水性有機溶剤からなる塗料用樹脂組成物が知られている。(特許文献5参照)
特開2002−122704号公報 特開2002−79616号公報 特公昭60−58634号公報 特開2002−221602号公報 特開2002−88296号公報
しかしながら、従来の方法では硬化剤としてチタン化合物やアルミニウム化合物を導入していても、シリカ微粒子の導入量を多くしすぎると、得られた低屈折率の透明被膜の屈折率はより低下するものの、シリカ微粒子とマトリックス樹脂との結合が十分できず、耐薬品性が不十分であり、表面高度の低いものしか得られないという問題があった。さらに、該シリカ微粒子を多く含んだコーティング膜形成材料は粒子間での2次凝集を起こしやすく、塗料中に凝集物が発生する等、コーティング膜形成塗料とした場合、保存安定性に問題があった。これら液相法における、シリカ微粒子をより多く導入して得られる塗料において、これまでは、十分な保存安定性と耐薬品性が得られておらず、これらの性能の更なる向上が強く求められていた。また、塗料の貯蔵安定性を向上した、アルミニウムキレート化合物の導入も検討されているが、硬化剤添加後の塗料安定性も不十分であり、その改良技術が強く求められていた。
本発明者らは上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、以下に述べる本発明に到達した。すなわち本発明のコーティング材料は、
(A)パーフルオロ基を有するポリシロキサンと、
(B)内部に空隙を有するシリカ系微粒子と、
(C)下記のいずれかの選択肢に係る硬化剤
(C−1)下記一般式(3)で表され、Yとして一般式R COCH COR (R 、R はいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子を有する1種類以上と、Yとして一般式R COCH COOR (R 、R はいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子を有する1種類以上の硬化剤
(C−2)下記一般式(3)で表される硬化剤少なくとも1種類以上と、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される硬化剤から選ばれる少なくとも1種類以上の硬化剤
とを含むコーティング材料。
(OR (1)
(OR −b (2)
(3)
(ここで、M、M、Mは、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、鉄、スズ、ニオブ、およびタンタルからなる群より選ばれる1つの金属(M、M、Mは、それぞれ異なる金属でも、同じ金属でもよい)であり、RおよびRは炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖の飽和および/または不飽和アルキル基であり、XおよびYは一般式RCOCHCOR(R、Rはいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子、およびRCOCHCOOR(R、Rはいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子から選ばれる少なくともひとつであり、aはMの、aはMの、aはMの原子価数であり、bは1〜(a−1)の自然数である。)
また、本発明は、上記コーティング材料を低屈折率層として用いた反射防止性を有する光学物品である。
本発明によれば、耐薬品性、耐擦傷性を有し、塗料として用いる場合の十分な保存安定性を同時に満足させた優れたコーティング材料、およびそれを用いた光学物品を提供することができる。
以下に本発明について具体的に説明する。
本発明のコーティング材料は、パーフルオロ基を有するポリシロキサンと、シリカ系微粒子、および下記一般式(1)〜(3)で表される硬化剤から選ばれる2種類以上とを含む、つまり有機物と無機物が混合されているものであるところに特徴を有するものである
(OR (1)
(OR −b (2)
(3)
(ここで、M、M、Mはチタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、鉄、スズ、ニオブ、およびタンタルからなる群より選ばれる1つの金属(M、M、Mは、それぞれ異なる金属でも、同じ金属でもよい)であり、RおよびRは炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖の飽和および/または不飽和アルキル基であり、XおよびYは一般式RCOCHCOR(R、Rはいずれも低級アルキル基)で示される化合物に由来する配位子、および RCOCHCOOR(R、Rはいずれも低級アルキル基)で示される化合物に由来する配位子から選ばれる少なくともひとつであり、aはMの、aはMの、aはMの原子価数であり、bは1〜(a−1)の自然数である。)。
また、本発明では、パーフルオロ基を有するポリシロキサンおよびシリカ微粒子には両者が反応せしめるための反応性基を有していることが望ましく、シリカ微粒子の分散安定性をより向上することができる。
本発明のパーフルオロ基を有するポリシロキサンとは下記一般式(4)で表されるシラン化合物の一部および/または全部を加水分解したものから得られる縮合物を含んでなるポリシロキサンであり、他のシラン化合物と同時に用いてもよく、他のシランとの共重合物であっても良い。分散安定性の向上や塗布性の向上のためには、他のシランとの共重合物が好ましく用いることができる
Si(R3−(e+f) (4)
(式中、Rは炭素数3〜12のフッ素を有する有機基。R は炭素数が1〜5の炭化水素基。Zは加水分解性基であり、eは1または2、fは0または1であり、e+fは1または2である。)。
パーフルオロ基を有するポリシロキサンとしては、例えば、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリプロポキシシラン、トリフルオロエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルトリブトキシシラン、トリフルオロエチルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリクロロシラン、ナノフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリプロポキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリイソプロポキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリアセトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリメトキシエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルメチルジメトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルメチルジエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルエチルジメトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルエチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリクロロシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリアセトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリブトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジエトキシシランなどの2官能性および3官能性シラン化合物などが挙げられる。これらの内、コーティング膜の表面硬度と塗布性の観点からは、1分子当たりのフッ素原子が3個以内の化合物が好ましく用いらる。耐薬品性や防汚性の観点からは、1分子当たりのフッ素原子が13個以上の化合物が好ましく用いることができる。また、被塗布物や塗布方法により一般式(4)で表される化合物を2種類以上使用することも好ましく行うことができる。これらは同時に共重合しても良く、別々に重合したものを後で混ぜ合わせて使用することも適宜行われる。
これらの化合物と共重合可能なシラン化合物としては、下記一般式(5)〜(6)で表されるものから選ばれるシラン化合物を用いることができる
Si(R103−g (5)
(式中、R、R10は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メタクリルオキシ基、もしくはシアノ基を有する炭化水素基、または、水素基。Uは加水分解性基であり、gは0または1である。)
Si(OR11 (6)
(式中、R11は炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)。
一般式(5)で表されるシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、 N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、シアノエチルトリクロロシラン、シアノプロピルトリクロロシラン、シアノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
一般式(6)で表せるシラン化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、i−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケート、t−ブチルシリケート、4アセトキシシランなどが挙げられる。
これらシラン化合物の加水分解反応に利用される酸触媒としては、蟻酸、蓚酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に、コーティング被膜の硬度を向上する観点から、蟻酸、酢酸を触媒とすることが好ましい。
酸触媒の添加量は、使用される全シラン化合物含量に対して、好ましくは0.05質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%である。酸触媒の量が0.05質量%を下回ると、加水分解反応が十分進行しないことがあり、10質量%を越えると、加水分解反応が暴走する恐れがある。
また、一方のシラン化合物を加水分解したシラノール反応溶液中の残存酸を利用し、他方残りのシラン化合物と、水を混合して任意の反応条件で加水分解させることも、二つ以上の異なる加水分解性の違いを利用し、効率的に合成を行う点で何ら問題ない。
加水分解および重縮合反応時に利用される溶剤は、有機溶剤が好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、3―メチル―3―メトキシ―1―ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3―メチル―3―メトキシ―1―ブタノールアセテートなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
ポリシロキサン化合物合成時使用される溶剤の量は、全シラン化合物含量に対して、50質量%〜500質量%の範囲で添加することが好ましく、特に好ましくは、80質量%〜200質量%の範囲である。50質量%を下回ると、反応が暴走し、ゲル化する場合がある。一方、500質量%を越えると、加水分解が進行しない場合がある。
また、加水分解に用いられる水としては、蒸留水など精製していることが好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン1モルに対して1.0〜4.0モルの範囲で用いるのが好ましい。
加水分解反応は、前記(B)組成物であるシリカ系微粒子を、溶剤中、酸触媒及び、水を添加して、前記(A)組成物と同時に行うことが得られた塗料の分散安定性をより向上させられるので好ましい。加水分解重縮合反応の条件としては、室温〜55℃で加水分解し、シラノール化合物を得た後、そのまま、反応液を、還流下で1〜100時間行うのが好ましい。また、異なるシラノール化合物をそれぞれ任意の温度で重縮合後に、さらに混合し任意の条件で共重合を行うことも、異なる重合性の違いを利用し、効率的に合成を行う上で何ら問題はない。そのほかポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行なうことも可能である。また、保存安定性を考慮し、縮合反応後に溶剤を用いて任意の固形分濃度に希釈してもよい。
本発明で用いられる(A)組成物において、一般式(4)と一般式(5)および/または一般式(6)をあらかじめ共重合しておくことも何ら問題なく行うことができる。共重合体の比率としては、一般式(4)で表されるシラン化合物1モルに対して、一般式(5)および/または(6)で表されるシラン化合物の総モル量を好ましくは0.1〜100モル、さらに好ましくは1〜10モル用いるのが好ましい。
一般式(4)〜(6)で表されるシラン化合物各々の単量体を重合させた場合、添加すると、時としてシラン系微粒子とポリシロキサンとの不相溶性、不均一性によって塗布性、耐スクラッチ性を損なうことがある。本発明の共重合体は、これらのなかでも、特に優れた指紋拭き取り性、塗布性、耐スクラッチ性を同時に満足するものとして、一般式(4)で表されるシラン化合物から1種類以上、一般式(5)で表されるシラン化合物から1種類以上の組み合わせで選択されるのが最も好ましい。
一方、本発明において、パーフルオロ基を有するポリシロキサン以外の樹脂を併用することも、得られた塗料の用途や加工条件により選択することができる。例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、アリル樹脂、マレイミド樹脂、ホスファゼン樹脂などが挙げられ、場合により、光重合性の組成物を併用することも好ましく行うことができる。
光重合性反応基を有するポリマーとしては、不飽和二重結合を反応性基とするポリマーであり、公知のラジカル重合反応を利用することによって一旦フェノール性水酸基またはカルボキシル基を含有するポリマーを重合し、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加することによって得る、または、一旦、エポキシ基含有ポリマーを重合し、フェノール性水酸基またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを付加することによって得ることができる。また、シリカ系微粒子の分散安定性の観点から、反応基を有するシリカ系微粒子を一旦、光重合性基を有する反応性ポリマーと混合後、本発明の共重合体を添加することによって、本発明のコーティング材を得ることができる。
本発明におけるフェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するポリマー、あるいは、エポキシ基含有ポリマーは、これらの基を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体ポリマーおよび/または該ラジカル重合性モノマーとそれ以外の他のラジカル重合性モノマーの共重合体ポリマーとしては、ラジカル重合開始剤を用いて、公知の方法で重合することにより得られる。
フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンおよびp−ヒドロキシスチレン、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル、カルボキシ置換体;ビニルヒドロキノン、5−ビニルピロガロール、6−ビニルピロガロール、1−ビニルフロログリシノール等のポリヒドロキシビニルフェノール類;o−ビニル安息香酸、m−ビニル安息香酸、およびp−ビニル安息香酸、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体、メタクリル酸およびアクリル酸、ならびにこれらのα−位のハロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸および1,4−シクロヘキセンジカルボン酸等の二価の不飽和カルボン酸、ならびにこれらのメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ter−ブチル、フェニル、o−、m−、p−トルイルハ−フエステルおよびハ−フアミドを好ましいものとして挙げることができる。これらのうち、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンおよびp−ヒドロキシスチレン、ならびに、アクリル酸、メタアクリル酸が好ましく用いられる。これらは1種または2種以上一緒に用いることができる。
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
また、上記その他のラジカル重合性モノマーとしては、例えばスチレン、およびスチレンのα−位、o−位、m−位、またはp−位のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジオレフィン類;メタクリル酸またはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ter−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミルヘキシル、シクロヘキシル、アダマンチル、アリル、プロパギル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アントラキノニル、ピペロニル、サリチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネシル、クレシル、1,1,1−トリフルオロエチル、パ−フルオロエチル、パ−フルオロ−n−プロピル、パ−フルオロ−i−プロピル、トリフェニルメチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(当該技術分野の慣用名として「ジシクロペンタニル」といわれている。)、クミル、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、フリル、フルフリルの各エステル化物、メタクリル酸またはアクリル酸のアニリド、アミド、またはN,N−ジメチル、N,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N,N−ジイソプロピル、アントラニルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、N−フェニルマレインイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレインイミド、N−メタクリロイルフタルイミド、N−アクリロイルフタルイミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。これらのうち、低屈折率を考慮した場合、メタクリル酸、またはアクリル酸の1,1,1−トリフルオロエチル、パ−フルオロエチル、パ−フルオロ−n−プロピル、パ−フルオロ−i−プロピルの各エステル化合物が好ましい。
また、本発明における共重合体の接着性を考慮した場合、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。これらは1種または2種以上併用することができる。
フェノール性水酸基または、カルボキシル基を有するラジカル重合性モノマーと、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーおよび、それ以外の他のラジカル重合性モノマーの共重合体を用いる場合、ラジカル重合性モノマーの好ましい共重合の割合は、ラジカル重合性モノマーとの合計量に対して、フェノール性水酸基または、カルボキシル基を有するラジカル重合性モノマーは、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜40質量%である。また、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーは、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜40質量%である。
またこれらの組成物中には硬化を促進させる目的、或いは硬化を容易ならしめる目的から各種の硬化剤、三次元架橋剤を添加することもできる。これらの具体例としては窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上添加しても良い。
本発明のコーティング材料に光重合性の組成物を併用する場合は、マトリックス樹脂組成物の含量に対して、好ましくは2質量%〜20質量%、さらに好ましくは5質量%〜15質量%である。2質量%を下回ると、光重合が起こらない場合があり、40質量%を越えると、混合したポリシロキサンとの分離現象を生じ平滑なコーティング膜が得られなくなることがある。
本発明で用いられるシリカ系微粒子は、ポリシロキサンの重合性に応じて、反応性基を選択することができる。熱重合性を高めた場合は、反応性基としてシラノール基等を表面に持つ粒子を用いることが好ましい。また、光重合性を高めた場合は、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基等のシランカップリング剤を含有する表面改質剤で処理し、粒子表面を修飾したものを使用する事が好ましい。また、必要に応じて粒子表面を修飾処理して用いることも可能である。シリカ系微粒子の数平均粒子径は、5nm〜120nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、さらに好ましくは、数平均粒子径5nm〜70nmである。また、用いられるシリカ系微粒子については、内部に空隙を有しないシリカ系微粒子と内部に空隙を有するシリカ系微粒子が挙げられる。これらシリカ系微粒子のうち、コーティング被膜の低屈折率化のためには、内部に空隙を有するシリカ系微粒子が好ましく用いられる。内部に空隙を有しないシリカ系微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.45〜1.50であるため、屈折率を低下させる効果が少ない。一方、内部に空隙を有するシリカ系微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるため、導入により、コーティング膜の屈折率を低下させる効果が大きい。
本発明において、内部に空隙を有するシリカ系微粒子をコーティング材料中に導入すると、該コーティング材料から得られるコーティング被膜の屈折率を1.38以下にすることが出来るだけでなく、コーティング被膜の硬度を高めることができる。空隙は微粒子表面および/または内部に空隙を有するものが考えられるが、屈折率を低くする効果は内部に空洞を有するものが好ましい。内部に空隙を有するシリカ系微粒子の導入量は、コーティング材料中の無機微粒子およびマトリックス樹脂成分の固形分に対して、好ましくは20質量%〜70質量%、さらに好ましくは30質量%〜60質量%である。導入量が20質量%を下回ると、粒子の空隙による屈折率低下効果が少なく、屈折率が、1.38以下とはならない。また、70重量%を越えると、層内部に収まらない余剰粒子による凹凸のため、透明被膜の硬度が低下することや、場所によって、屈折率が不均一になることがあるので好ましくない。
本発明で使用される内部に空隙を有しないシリカ系微粒子とは、例えば、粒子径12nmのイソプロパノールを分散剤としたIPA−ST、粒子径12nmのメチルイソブチルケトンを分散剤としたMIBK−ST、粒子径45nmのイソプロパノールを分散剤としたIPA−ST−L、粒子径100nmのイソプロパノールを分散剤としたIPA−ST−ZL(以上、商品名、日産化学工業(株)製)、粒子径12nmのγ−ブチルラクトンを分散剤としたオスカル101、粒子径60nmのγ−ブチルラクトンを分散剤としたオスカル105、粒子径120nmのジアセトンアルコールを分散剤としたオスカル106(以上、商品名、触媒化成工業(株)製)が挙げられる。なお、空洞の有無については、TEM(走査型透過電子顕微鏡)写真により微粒子断面図によって確認されている。
本発明で使用される内部に空隙を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空隙部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられる。これらのうち、透明被膜の硬度を考慮した場合、粒子自体の強度が高い多孔質のシリカ系微粒子が好ましい。該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であり、1.20〜1.35であるのがより好ましい。尚、該微粒子は、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、屈折率は、特開2001−233611公報に開示されている方法によって測定できる。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、特許第3272111号公報等の一般に市販されているものを挙げることができる。
本発明で用いられる、一般式(1)〜(3)から選ばれる2種類以上の硬化剤は、反応性が異なることが好ましい
(OR (1)
(OR −b (2)
(3)
(ここで、M、M、Mはチタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、鉄、スズ、ニオブ、およびタンタルからなる群より選ばれる1つの金属(M、M、Mは、それぞれ異なる金属でも、同じ金属でもよい)であり、RおよびRは炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖の飽和および/または不飽和アルキル基であり、XおよびYは一般式RCOCHCOR(R、Rはいずれも低級アルキル基)で示される化合物に由来する配位子、および RCOCHCOOR(R、Rはいずれも低級アルキル基)で示される化合物に由来する配位子から選ばれる少なくともひとつであり、aはMの、aはMの、aはMの原子価数であり、bは1〜(a−1)の自然数である。)。
一般式(1)〜(3)で表されるいずれの硬化剤も耐薬品性、耐擦傷性、保存安定性の効果がある。中でも一般式(1)で表される硬化剤は耐薬品性および耐擦傷性の向上の効果が優れている。一般式(2)で表される硬化剤は耐薬品性および保存安定性の向上の効果が優れている。一般式(3)で表される硬化剤は耐擦傷性および保存安定性の向上の効果に優れている。
これら硬化剤は反応性とポリシロキサンの添加量、反応性およびコーティング膜の製膜性などから、種々の組み合わせによる選択で2種類以上用いる。
硬化剤の添加量は反応性基の種類や量により適当な添加量を選択するべきであるが、ポリシロキサンおよびシリカ系微粒子の全ケイ素原子の数1.0に対して、M、M、Mで表される、硬化剤由来の金属原子の数は0.005〜0.06であることが好ましく。0.01〜0.05がより好ましい。0.005以上であると硬化が十分となり、コーティング膜の擦傷性、耐薬品性が得られる。0.06以下であると均一なコーティング膜が得られるので、硬化剤に依存した、耐薬品性の低下および屈折率の増加などが生じない。ケイ素原子の数や金属原子の数の測定は光電子分光分析(ESCA)やラザフォード後方散乱分析(RBS)等により分析することができる。
一般式(1)で表せる金属アルコキシドとしては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンn−プロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンイソブトキシド、チタンs−ブトキシド、チタンt−ブトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、マグネシウムエトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムイソブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、マグネシウムエトキシド、スズエトキシド、スズブトキシドなどであり、保存安定性、入手容易さを考慮するとアルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムs−ブトキシドが好ましい。
一般式(2)で表せる金属キレートとしては、例えば、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスアセチルアセテートチタン、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスアセチルアセテートチタン、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノアセチルアセテートチタン、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスエチルアセトアセテートチタン、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスエチルアセトアセテートチタン、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノエチルアセトアセテートチタン、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスアセチルアセテートジルコニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスアセチルアセテートジルコニウム、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノアセチルアセテートジルコニウム、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスエチルアセトアセテートジルコニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスエチルアセトアセテートジルコニウム、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノエチルアセトアセテートジルコニウム、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシビスアセチルアセテートアルミニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシモノアセチルアセテートアルミニウム、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシビスエチルアセトアセテートアルミニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシモノエチルアセトアセテートアルミニウム、モノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノエトキシモノアセチルアセテートマグネシウム、モノエトキシモノエチルアセトアセテートマグネシウム、等の金属キレート化合物が挙げられる。
一般式(3)で表せる金属キレートとしては、例えば、
アセチルアセトネートチタン、エチルアセトアセテートチタン、アセチルアセトネートジルコニウム、アセテートジルコニウム、エチルアセテートジルコニウム、アセチルアセトネートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセテートビスエチルアセテートアルミニウム、ビスアセチルアセテートモノエチルアセトアセテートアルミニウム、アセチルアセトネートマグネシウム、エチルアセトアセテートマグネシウム、アセチルアセトネート鉄、アセチルアセトネートスズ等の金属キレート、アルキルアセトアセテート化合物であり、保存安定性、入手容易さを考慮すると、アセチルアセトネートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセテートビスエチルアセテートアルミニウム、が好ましい。
これら硬化剤は式(1)の化合物から選ばれる1種類と式(2)および/または式(3)から選ばれる1種類以上の選択でも良く、式(1)、(2)、(3)それぞれの化合物から2種類選択して用いても良い。
具体的な硬化剤の選択肢を列挙すると以下のようになる。
・式(1)から1種類以上 と 式(2)から1種類以上
・式(1)から1種類以上 と 式(3)から1種類以上
・式(2)から1種類以上 と 式(3)から1種類以上
・式(1)から1種類以上 と 式(2)から1種類以上 と 式(3)から1種類以上
・式(1)または式(2)または式(3)から2種類以上。
本発明のコーティング材料から得られる被膜の加工性、塗液の安定性などから、キレート化合物に用いられる金属としてはチタニウム系、ジルコニウム系、アルミニウム系および、マグネシウム系が挙げられる。これらの中、低屈折率化の目的には、屈折率の低いアルミニウム系および、マグネシウム系の硬化剤が好ましい。さらに、入手の容易性、生産性等から、アルミニウム系の硬化剤が好ましい。
また、反応性の異なる硬化剤の混合比率は任意に選択されるが、ある硬化剤の効果を十分現れるようにするには、その硬化剤の混合割合(モル比)を1割以上にすることが好ましい。例えば硬化剤1と硬化剤2の2種類の硬化剤を用いる場合、硬化剤1/硬化剤2(モル比)=0.1/0.9〜0.9/0.1の範囲で用いることが好ましく。さらに好ましくは0.3/0.7〜0.7/0.3である。0.1/0.9より少なくなると硬化剤1の効果十分現れないことがある。また、0.9/0.1より多くなると硬化剤2の効果が十分現れないことがある。通常の混合比率は0.5/0.5程度にし、反応性の違いで硬化剤を選択する方法もある。
硬化剤の反応性は水分や有機酸またはアルコールなどとの反応性をいう。例えば、下記化合物を反応性の大きなモノから並べると、イソプロポキシアルミニウム >ジi−プロポキシモノエチルアセトアセテートアルミニウム >エチルアセトアセテートアルミニウム >モノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテートアルミニウム >アセチルアセトネートアルミニウム となることが知られている。
本発明で得られるコーティング被膜の形成方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを用いてコーティングする方法などがあるが、反射防止性の均一性、すなわち反射光色のムラ防止の観点からはマイクログラビアコーティングがとくに好適に用いられる。この様な方法を用いて基材上に塗布し、場合に応じて加熱、乾燥、硬化させる。加熱、乾燥方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の温度で、通常は0.5分間から240分間の処理を行い、塗布時におけるフロー性向上のためには各種の界面活性剤が使用できる。とくにフロー性に加えて、反射防止膜の汚れ防止を同時にさらに向上させ得る点からフッ素系界面活性剤の添加が好ましい。
本発明のコーティング材料を透明基材上に直接塗布、硬化させてコーティング被膜を形成させてもよいのだが、該コーティング被膜を低屈折率層として用いる場合には、反射防止性をより高めるという目的のため、低屈折率層より0.05〜0.55屈折率の高い高屈折率層を設けてなる基材上に該コーティング被膜を設けるのが好ましく、さらには高屈折率性能に加えて、表面硬度をより高め、屈強性、耐擦傷性を付与するようなハードコート性能を同時に兼ね備えた層であることが塗工回数を減らし、より安価な物品を提供できる観点からはより好ましい。
また、高屈折率層やハードコート層に光重合性材料を用いる場合、塗膜の形成後、加熱、乾燥、硬化と同時、および/または加熱、乾燥、硬化後に可視領域よりも波長の短い紫外線を照射することで、膜形成してもよい。紫外線照射は表層の硬化反応のみならず、下層に積層されたコーティング膜の残存反応性基にも作用するため、本発明のコーティング材料との密着性向上や耐薬品性向上に効果がある。特に下層のコーティング膜が紫外線硬化型の場合において高い効果が得られる。
また、一般にフッ素含有有機ポリシロキサン系被膜は帯電しやすく、ほこりなどが付きやすいという問題がある。かかる問題を解決するために、上記高屈折率層の材料としては、フッ素含有有機ポリシロキサン系被膜との密着性、アフターキュアリング性などの点から、紫外線硬化性を有する組成物が好ましく用いられると共に、ITO、ATO、ZnO、SnO2、Sbに代表される金属酸化物微粒子を含有するものや、或いは有機物からなる導電性ポリマーを含有するものが望ましい。
有機物からなる導電性ポリマーとしては、例えばポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキル)チオフェン、ポリピロール、ポリイソチアナフタレン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ(2,5−ジアルコキシ)パラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリヘプタジイン、ポリ(3−ヘキシル)チオフェン及びポリアニリンなどが挙げられる。
かかる紫外線硬化性を有する好ましい樹脂成分としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ以上含む多官能性(メタ)アクリル化合物、を挙げることができる。これら化合物の具体例としてはモノ−、ジ−、またはトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、モノ−、ジ−、またはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ−、またはトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ−、またはトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ−、トリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール、ジ−またはトリ−(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ−(メタ)アクリレート、ソルビトールジ−、トリ−、テトラ−、またはヘプタ(メタ)アクリレートなどの脂肪族系多官能(メタ)アクリレート化合物、さらにはビスフェノールA−、またはビスフェノールF−エチレンオキシド付加物,またはジ−(メタ)アクリレートなどの芳香環含有多官能(メタ)アクリレート化合物も好ましく用いられる。さらには分子中に重合性不飽和基とアルコキシシラン基とを有する化合物などを添加することも可能である。
また、前記高屈折率層中にはさらなる高屈折率化、帯電防止化を目的に各種金属酸化物の併用も好ましく用いられる。好ましく用いられる金属酸化物としては、粒子径が5nm〜100nmのジルコニウム、インジウム、アンチモン、亜鉛、スズ、セリウム及びチタンよりなる群から選ばれる金属酸化物および、これらの複合酸化物が挙げられる。なかでもインジウムとスズからなる複合酸化物(ITO)、またはスズとアンチモンからなる複合酸化物(ATO)が高屈折率化に加えて導電性が付与可能であり、帯電防止性を与えることができる点から好ましく用いられる。とくに帯電防止の観点からは、その表面抵抗が1×1012(Ω/□)以下、さらに好ましくは1×1010(Ω/□)以下であることが好ましい。
さらに前記高屈折率層が設けられる場合において、その高屈折率層の膜厚は反射防止効果、及びハードコート膜性能を兼ねる観点から好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは1〜6μmである。
また本発明のコーティング材料からなる低屈折率層を積層した透明基材に、近赤外線吸収化合物や染料を含有させた層をコーティングしたり、または貼り合わせて、各種ディスプレイに用いることができる。一般に近赤外線吸収化合物は熱に対して不安定であり、例えば透明基材に配合して、成形する場合には加熱によって変質するおそれがあるので、ハードコート剤や接着剤層に含有させて用いることが好ましい。
例えば、通常良く用いられる方法としては、近赤外線吸収化合物や染料を含有させた層(以下NIR層とする)を積層した透明成形体をあらかじめ用意しておき、本発明の低屈折率層を有した透明成形体に粘着剤層を介して貼り合わせる方法が実施されている。コーティングや貼り合わせによるコスト上昇を低減するためには、低屈折率層を有した透明基材の低屈折率層を積層していない表面に設けられた粘着剤層をNIR層として用いることが好ましい。その他、NIR層の積層方法としては、例えば、低屈折率層(以下LRとする)/高屈折率層(以下HRとする)/透明基材/NIR層、LR/HR/NIR層/透明基材、LR/HR−NIR層/透明基材、LR/HR/透明基材/貼り合わせ粘着層/透明基材/NIR層等の方法を上げることができる。
近赤外線吸収化合物としては、アントラキノン化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、金属酸化物系微粉末、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム塩系化合物、チオウレア化合物、ビスチオウレア化合物、四角酸系化合物、金属錯体化合物が上げられる。シアニン色素、メロシアニン色素、(チオ)ピリリウム色素、ナフトラクタム色素、ペンタセン色素、オキシインドリジン色素、キノイド色素、アミニウム色素、ジインモニウム色素、インドアニリン色素、ニッケルチオ錯体色素などである。
さらに染料を近赤外線吸収化合物と同じ層または別の層に添加して用いることができる。染料は各ディスプレイの発光3原色の吸収が少ないものを選択することが好ましい。特にPDP用光学フィルターには、ネオン光といわれている595nm付近の波長をカットすることにより、赤の色純度向上と色再現性を向上できる。本発明で用いられる染料としては、シアニン系化合物、オキソノール系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物などが用いられる。また各種の染料を用いることでニュートラルグレー化することによりコントラストの向上ができる。発光3原色の吸収が少ない染料として、例えば、スクアリリウム系、シアニン系、アゾ系、アゾメチン系、オキソノール系、ベンジリデン系、キサンテン系、メトロシアニン系などが上げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。各実施例・比較例で得られた光学物品をサンプルとし、各サンプルの特性測定方法及び性能評価方法については以下に示す。
[光線反射率の測定]
日立計測器サービス(株)の分光光度計3410を用いて測定を行った。サンプルは♯320〜400の耐水サンドペーパーでコーティング被膜面とは反対側の面に均一に傷をつけ、黒色塗料(黒色の“マジックインキ”(登録商標)の液)を塗布して、コーティング被膜面とは反対側の面からの反射を完全になくして、コーティング被膜面を積分球に押し当てて測定した。入射角度は10゜であり、検査波長領域は380nm〜800nmで行った。Scan Speedは600nm/minとした。光線反射率は2.0%以下であれば良好である。
[耐スクラッチ性評価(耐擦傷性の評価)]
#0000のスチールウールを用いて各サンプルのコーティング被膜面に250gf/cmの荷重をかけ、10往復したときの傷の本数を観察し下記基準にて評価した。耐スクラッチ性は3、4、5級であれば良好である。
5級:傷なし
4級:傷1〜5本
3級:傷6〜10本
2級:傷11本以上
1級:全面傷。
[指紋拭き取り性(耐防汚性の評価)]
額に指を2秒間押し当てて、その指を各サンプルのコーティング被膜面に5秒間押し当てることにより指紋を付着させた後、付着した指紋をキムワイプ(クレシア社製ワイパーS−200)を八つ折りにしたものを用いて、押し当て、10回転させて拭き取り、その除去性を目視により評価した。評価は、ほとんど跡が目立たず、かつ容易に拭き取れたものを○、若干跡が残り、かつ拭き取りにくいものを△、著しく跡が残っており、全く拭き取れないものを×とした。
[塗布性の評価]
各サンプルのコーティング被膜面を肉眼で観察し、被膜表面の均一性、塗布ムラ、ハジキの有無を評価した。全体的に均一に塗工されているものを○、所々でやや不均一で塗布ムラがみられるものを△、全体的に不均一で塗布ムラ、ハジキがみられるものを×とした。
〔耐薬品性の評価〕
水酸化ナトリウム3質量%水溶液0.2mlをスポイトを用いてコーティング膜面に滴下し、室温雰囲気下において30分間静置した。その後、キムワイプで前記水溶液を拭き取り、外観を目視評価した。外観に異常が見られない状態を○、よく見ると水滴跡がかすかに見えるモノを△、クッキリと水滴跡が見えるかまたはコーティング膜が剥離している状態を×とした。
〔保存安定性の評価〕
コーティング材料を室温で1日間、2日間、・・・、8日間保存した後(以下、保存日数とする)、このコーティング材料をコーティングしてサンプルを作製し、上記と同様にして耐スクラッチ性と耐薬品性の評価を行った。3日間以上の保存日数において、耐スクラッチ性が3、4、5級で、耐薬品性が○であれば、保存安定性は良好である。
(実施例1)
[高屈折率層]
透明基材としてPETフィルム(厚さ100μm、易接着層付き、東レ(株)製)を用いた。この上に下記の高屈折率層用塗料を塗工した。
[高屈折率層用塗料の調製]
固形分濃度が30%であるAS−41(大日精化株式会社製)に対して、添加剤として信越化学社製X−41−1056アルコキシシランオリゴマーをAS−41の固形分100質量部に対して10質量部添加して、撹拌・混合して、得られた塗液を高屈折率層用塗料とした。
[高屈折率層の被膜塗布方法]
高屈折率層用塗料をメタリングバーを用いたハンドコーティングにより、12番手のメタリングバーを用いて、A4サイズの基材に3ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬよう気をつけながら、メタリングバーをひいて塗布した。
[高屈折率層の硬化方法]
上記方法により塗布した後、すぐに温度を80℃にしたオーブンに入れて、1分間の熱処理を行った。その後高圧水銀灯1灯(120W)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で紫外線照射処理(紫外線に換算した場合約300mJ/cm)を行った。こうして高屈折率層被膜付き基材を得た。乾燥、硬化後の膜厚みは約3μmであった。表面抵抗値は1.1×10(Ω/□)を示した。
[低屈折率層]
得られた高屈折率層被膜付き基材に以下の通り、下記コーティング材料からなる低屈折率層を設けた。
[コーティング材料の調製方法]
ナスフラスコに回転子とトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(東芝シリコーン社製)6.8g(0.012mol)とイソプロピルアルコール1.9gを入れ、2.0規定に調製した蟻酸水溶液0.65gを約10分間かけて滴下しながら100〜200rpmで攪拌した。滴下終了後50−55℃に温度調節して2時間攪拌した。次に、一旦反応溶液を室温にまで冷却し、メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)3.8g(0.028mol)とプロピレングリコールモノエチルエーテル12.5gを加えた後、精製水1.5gを20〜25℃で約10分間かけて滴下・混合した。引きつづき室温(約20〜23℃)で1時間攪拌した後、60℃に調節して2時間攪拌し、反応を行った。次に室温まで冷却した後イソプロピルアルコール51.25gを加えて濃度調整して、共重合体溶液(A)を得た。
次に300mlフラスコにメチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製) 30g、 トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製) 20.26gを入れ、プロピレングリコールモノエチルエーテル 78.28gを溶媒として投入した後、特許第3272111号広報に開示されている方法によって製造したイソプロピルアルコール分散型中空シリカゾル(屈折率1.30,固形分20.5質量%)を約93.25g添加した。その後温度を約20℃に設定し、撹拌ばねで約270rpmの回転数で撹拌させながら1.0規定に調製した蟻酸水溶液 16.90gを約20分かけて添加し、引きつづき一時間の撹拌を行った。次にオイルバスを用いて反応溶液の温度を60℃に設定し3時間攪拌して反応を終了し、室温まで冷却してポリシロキサンと反応させたシリカ微粒子溶液238.5gを得た。
前記、共重合体(A)とシリカ微粒子溶液を混ぜ合わせ、さらにメチルアルコール152.0g、イソプロピルアルコール1064.0g、プロピレングリコールモノエチルエーテル 304.1gを加えて、ついで硬化剤であるトリスアセチルアセトネートアルミニウム3.73gとトリスエチルアセトアセテートアルミニウム4.76gを添加、攪拌溶解してコーティング材料とした。
[コーティング材料塗布方法]
調製したコーティング材料を用い、6番手のメタリングバーを用いてハンドコーティングにより1.5ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬように気をつけながら、塗布した。膜厚みは約100nmであった。
[コーティング被膜の硬化方法]
コーティング材料を塗布後、すぐに温度を130℃にしたオーブンに入れて2分間、加熱処理を行った。その後高圧水銀灯一灯(120w)を備えた、コンベアー式紫外線照射装置に、5m/minの速度で紫外線照射((紫外線強度に換算した場合約300mJ/cm)を行った。得られた硬化膜の厚みは約100nmであった。
こうして基材に高屈折率層、低屈折率層(コーティング材料)をこの順に設けた光学物品を得た。得られた光学物品に対して光線反射率測定、耐スクラッチ性、指紋拭き取り性、耐薬品性評価を行った。結果を表1に示した。さらに、得られたコーティング材料を室温で所定の期間保存した後にコーティングして得られた光学物品の評価を行い、コーティング材料の保存安定性を確認した。この結果も表1に示した。塗布性、反射率、指紋ふき取り性が良好で、耐スクラッチ性および耐薬品性については塗料保存8日後において得られたコーティング膜の性能低下が無く、良好な値を示した。
(実施例2)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤トリスアセチルアセトネートアルミニウムをモノエチルアセトアセテートジイソプロポキシアルミニウム3.16gにした以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例3)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤の組合せをAAトリスアセチルアセトネートアルミニウム2.98g、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム2.86g、トリsec−ブトキシアルミニウム1.69gに代えた以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例4)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、イソプロピルアルコール分散型中空シリカゾルを混合せずにポリシロキサンを重合し、硬化剤を添加する前にシリカゾルを混合してコーティング材料とした以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例5)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、共重合体(A)を用いないで調製してコーティング材料とした以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。

(実施例
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤の組合せをAAトリスアセチルアセトネートアルミニウム5.22g、トリsec−ブトキシアルミニウム1.69gに代えた以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランをパーフロロブチルエチルトリメトキシシラン4.4gに代えた以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤をトリスアセチルアセトネートアルミニウム1.6g、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム2.04gの組合せに代えた以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤をトリスアセチルアセトネートアルミニウム5.33g、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム6.8gに代えた以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例10
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤トリスアセチルアセトネートアルミニウムをアセチルアセトネートマグネシウム2.86gにした以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
(実施例11
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、 共重合体(A)を、下記光重合性の反応性を有するポリマー7.0gとプロピレングリコールモノエチルエーテル63.0gに変更して光重合性を有するコーティング材料とする以外は、実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。全評価において良好な値を示した。
[光重合性の反応基を有するポリマーの作成方法]
1000mlの4つ口フラスコにイソプロピルアルコールを100g仕込み、これをオイルバス中で80℃に保ち窒素シール、攪拌を行いながらメタクリル酸メチル(和光純薬製)20.24g(0.2mol)とトリフルオロメチルメタクリレート(共栄社化学社製)33.62g(0.2mol)、メタクリル酸25.83g(0.3mol)gにN.N−アゾビスイソブチロニトリル2gを混合してこれを30分かけて滴下した。そして、4時間反応を続けた後、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1g添加してから常温に戻し重合を完了した。この様にして得られたものを共重合体(A)に、イソプロピルアルコールを10gを添加した後、75℃に保ちながらメタクリル酸グリシジル42.65g(0.3mol)とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド3gを添加し3時間反応させた。得られた光重合性の反応性を有するポリマー溶液を、n−ヘキサン1l中に投入し、沈殿物をろ過し、得られた固体を、真空下、40℃で24時間乾燥し、この様にして光重合性の反応性を有するポリマー固体120gを得た。
メタクリル酸グリシジルの反応率は、反応前後のポリマ酸価の変化から求めたところ70%であった。したがって付加量は0.73モル当量であった。
(比較例1)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤をアセチルアセトネートマグネシウム5.73gの1種類に変更した以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。塗布性×、耐スクラッチ性2級、耐薬品性×であり、保存日数2日の評価結果でも耐スクラッチ性の低下および耐薬品性の低下があり性能不良であった。
(比較例2)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤をトリイソプロポキシドアルミニウム3.35gの1種類に変更した以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。塗料保存1日後の耐スクラッチ性および耐薬品性の低下が著しく、性能不良であった。
(比較例3)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤をモノエチルアセトアセテートジイソプロポキシアルミニウム4.51gの1種類に変更した以外は実施例1と同様にして光学物品を得た。この光学物品の各評価結果を表1に示す。塗料保存1日後の耐スクラッチ性および耐薬品性の低下が著しく、性能不良であった。
(比較例4)
実施例1の[コーティング材料の調製方法]において、硬化剤をトリスアセチルアセトナートアルミニウム5.32gの1種類に変更した以外は実施例1と同様にし、結果を表1に示した。塗料保存1日後の耐スクラッチ性および耐薬品性の低下が著しく、性能不良であった。
Figure 0005176265
なお、表1中の各記号の意味は以下の通りである。
AA :トリスアセチルアセトナートアルミニウム
ALCH-TR:トリスエチルアセトアセテートアルミニウム
ALCH:モノエチルアセトアセテートジイソプロポキシアルミニウム
ASBD:トリsec−ブトキシアルミニウム
MgA :アセチルアセトネートマグネシウム
AIPD:トリイソプロポキシアルミニウム
F13 :トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン

Claims (8)

  1. (A)パーフルオロ基を有するポリシロキサンと、
    (B)内部に空隙を有するシリカ系微粒子と、
    (C)下記のいずれかの選択肢に係る硬化剤
    (C−1)下記一般式(3)で表され、Yとして一般式R COCH COR (R 、R はいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子を有する1種類以上と、Yとして一般式R COCH COOR (R 、R はいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子を有する1種類以上の硬化剤
    (C−2)下記一般式(3)で表される硬化剤少なくとも1種類以上と、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される硬化剤から選ばれる少なくとも1種類以上の硬化剤
    とを含むコーティング材料。
    (OR (1)
    (OR −b (2)
    (3)
    (ここで、M、M、Mは、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、鉄、スズ、ニオブ、およびタンタルからなる群より選ばれる1つの金属(M、M、Mは、それぞれ異なる金属でも、同じ金属でもよい)であり、RおよびRは炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖の飽和および/または不飽和アルキル基であり、XおよびYは一般式RCOCHCOR(R、Rはいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子、およびRCOCHCOOR(R、Rはいずれも炭素数1または2のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子から選ばれる少なくともひとつであり、aはMの、aはMの、aはMの原子価数であり、bは1〜(a−1)の自然数である。)
  2. 前記(A)ポリシロキサンと前記(B)内部に空隙を有するシリカ系微粒子とを合わせた質量に対する(B)内部に空隙を有するシリカ系微粒子の含有量が25〜60質量%である請求項1に記載のコーティング材料。
  3. ポリシロキサンおよび内部に空隙を有するシリカ系微粒子の全ケイ素原子の数1.0に対して、硬化剤由来の金属原子の数が0.005〜0.06であることを特徴とする請求項1および2に記載のコーティング材料。
  4. 前記一般式(1)〜(3)において、M、M、Mがそれぞれアルミニウムまたはマグネシウムである請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング材料。(ただし、M、M、Mはそれぞれ異なる金属でも、同じ金属でもよい)
  5. 前記(A)ポリシロキサンが下記一般式(4)で表されるフッ素含有シラン化合物および/またはその加水分解縮合物を含んでなるポリシロキサンである請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング材料。
    Si(R3−(e+f) (4)
    (式中、Rは炭素数3〜12のフッ素を有する有機基。Rは炭素数が1〜5の炭化水素基。Zは加水分解性基であり、eは1または2、fは0または1であり、e+fは1または2である。)
  6. 硬化剤がアルミニウムキレート化合物から選ばれる少なくとも2種類以上含んでなる請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング材料。
  7. 透明基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング材料からなる低屈折率層を積層した光学物品。
  8. 透明基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング材料からなる低屈折率層と、表面抵抗が1×1012(Ω/□)以下である高屈折率層とを積層した光学物品。
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