JP3944104B2 - ロックアップクラッチ付き流体伝動装置 - Google Patents

ロックアップクラッチ付き流体伝動装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両や産業機械の動力伝動装置に使用される、トルクコンバータや流体継手等の流体伝動装置に関し、特に、ポンプインペラと、このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと、ポンプインペラに連設され、タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと、前記クラッチ室に配設され、サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え、そのロックアップクラッチを、タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室とに区画するクラッチピストンと、このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に圧力差を発生させるロックアップ制御手段と、クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき、クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段と、クラッチピストンをサイドカバー内側面側に付勢すべくクラッチピストン及びタービンランナ間に配設される弾性部材とで構成した、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝるロックアップクラッチ付き流体伝動装置は、例えば下記特許文献1に開示されているように、既に知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭55−54758号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かゝるロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、クラッチピストンをサイドカバー内側面側に付勢する弾性部材は、ロックアップクラッチを接続状態にすべくロックアップ制御手段を作動したとき、クラッチピストンの作動遅れを無くして、ロックアップクラッチの接続応答性を向上させるものである。
【0005】
ところで、従来のロックアップクラッチ付き流体伝動装置では、クラッチピストンのピストンハブに弾性部材の一端部を固着しているため、弾性部材の変形姿勢がピストンハブに拘束されることになり、弾性部材は無用な応力を発生して、本来のばね特性を発揮することができず、のみならず耐久性が損なわれる虞がある。弾性部材の両端部を自由にすればよいが、そのようにしようとすると、流体伝動装置の組立中に弾性部材がピストンハブから離脱するという新たな問題が生じる。
【0006】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、弾性部材が本来のばね特性を発揮し、しかもその耐久性を確保し得るようにした、コンパクトで組立性の良いロックアップクラッチ付き流体伝動装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ポンプインペラと、このポンプインペラとの間に循環回路を画成するタービンランナと、ポンプインペラに連設され、タービンランナの外側面との間に循環回路の外周部と連通するクラッチ室を画成するサイドカバーと、前記クラッチ室に配設され、サイドカバー及びタービンランナ間を直結し得るロックアップクラッチとを備え、そのロックアップクラッチを、タービンランナに軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室をタービンランナ側の内側油室とサイドカバー側の外側油室とに区画するクラッチピストンと、このクラッチピストンをサイドカバー内側面に対して進退させるべく内側油室及び外側油室間に圧力差を発生させるロックアップ制御手段と、クラッチピストンがサイドカバー内側面側に押圧されたとき、クラッチピストン及びサイドカバー間を摩擦係合させる摩擦係合手段と、クラッチピストンをサイドカバー内側面側に付勢すべくクラッチピストン及びタービンランナ間に配設される弾性部材とで構成した、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、タービンランナのタービンハブに軸方向摺動自在に支承されるクラッチピストンのピストンハブに環状抜け止め部を設けて、その環状抜け止め部とクラッチピストンの一側面との間に装着溝を画成し、その装着溝に前記弾性部材を、該弾性部材の変形姿勢を自由にして装着し、クラッチピストンが前記弾性部材に変形を生じさせつゝタービンランナ側へ押圧されて摩擦係合手段を非作動状態にするとき、クラッチピストンのタービンランナ側への移動量を一定に規制することにより該弾性部材の過度の弾性変形を防ぐ規制手段をクラッチピストン及びタービンランナ間に設けたことを第1の特徴とする。
【0008】
この第1の特徴によれば、ロックアップクラッチをクラッチオフ状態に制御したとき、クラッチピストンのクラッチオフ側への移動が規制手段により一定に規制されることにより、装着溝に装着された弾性部材の変形量も一定に抑えられ、過度の荷重負担は受けないで済む。そして、その弾性部材は、流体伝動装置の組立中、如何なる組立姿勢に置かれても、抜け止め部によりピストンハブからの離脱が阻止され、これにより流体伝動装置の組立性の向上に寄与し得る。しかも弾性部材は、その変形姿勢を自由にしてピストンハブに装着されているから、その変形中でも、自由に姿勢変化することができ、したがって無用な応力の発生もなく、常に所期のばね特性を発揮し得ると共に、過度の荷重負担が無いことゝ相俟って、その耐久性の向上を図ることができる。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、ピストンハブの一側面には、底面が前記装着溝の内側壁を構成する環状凹部を形成したことを第2の特徴とする。
【0010】
この第2の特徴によれば、ピストンハブの、クラッチピストンのタービンランナ側最外側面からの突出量を極力少なくしながら、装着溝の溝幅を充分確保することができ、スペース効率の向上によりピストンハブの軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0011】
さらに本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、クラッチピストンを、摩擦係合手段に連なるピストン外周側部材と、ピストンハブを有して表面硬化処理され、ピストン外周側部材に結合されるピストン内周側部材とで構成したことを第3の特徴とする。
【0012】
この第3の特徴によれば、クラッチピストンにおいて、ピストンハブを持つ、比較的小部品のピストン内周側部材に表面硬化処理を施すことで、小規模の処理設備により多数のピストン内周側部材に表面硬化処理を一挙に施すことが可能となり、コストの低減を図りつゝ、ピストンハブのタービンハブとの摺動面や、装着溝の弾性部材との摺動面の耐摩耗性を高めることができる。
【0013】
さらにまた本発明は、第1の特徴に加えて、前記タービンハブ外周のシェル取り付けフランジの一側面には、ピストンハブの先端部を受容する環状凹部形成されており、前記規制手段は、クラッチピストンが前記弾性部材に変形を生じさせつゝタービンランナ側へ押圧されて摩擦係合手段を非作動状態にするとき、前記環状凹部の底面と前記ピストンハブの先端面とが当接するようにして、クラッチピストンのタービンランナ側への移動量を一定に規制することにより前記弾性部材の過度の弾性変形を防ぐように構成されたことを第4の特徴とする。
【0014】
この第4の特徴によれば、ピストンハブの先端部は、タービンランナのシェル取り付けフランジの環状凹部に受け入れられるので、スペース効率が向上し、ピストンハブ及びタービンハブ周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【0015】
尚、前記流体伝動装置は、後述する本発明の実施例中のトルクコンバータTに対応する。また前記摩擦係合手段は摩擦面5b及び摩擦ライニング28に、前記ロックアップ制御手段はロックアップ制御弁42に、弾性部材は皿ばね33にそれぞれ対応する。さらに環状抜け止め部はサークリップ31、リング体131、あるいはフランジ231に対応する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施例に係るロックアップクラッチ付トルクコンバータの縦断側面図、図2は図1の2部拡大図、図3は図2の3−3線断面図、図4は本発明の第2実施例を示す、図2との対応図、図5は本発明の第3実施例を示す、図2との対応図である。
【0018】
先ず、図1において、流体伝動装置としてのトルクコンバータTは、ポンプインペラ2と、それと対置されるタービンランナ3と、それらの内周部間に配置されるステータ4とを備え、これら三部材2,3,4間には作動オイルによる動力伝達のための循環回路6が画成される。
【0019】
ポンプインペラ2の外周部には、タービンランナ3の外側面を覆うサイドカバー5が溶接により一体的に連設される。サイドカバー5の外周面には、周方向に配列される複数の連結ボス7が溶接されており、これらに、エンジンのクランク軸1に結合した駆動板8がボルト9で固着される。タービンランナ3中心部のタービンハブ3aとサイドカバー5との間にスラストニードルベアリング36が介裝される。
【0020】
トルクコンバータTの中心部にクランク軸1と同軸上に並ぶ出力軸10が配置され、この出力軸10は、タービンハブ3aにスプライン嵌合されると共に、サイドカバー5中心部の支持筒5aに軸受ブッシュ18を介して回転自在に支承される。出力軸10は図示しない多段変速機の主軸となる。
【0021】
出力軸10の外周には、ステータ4中心部のステータハブ4aをフリーホイール11を介して支承する円筒状のステータ軸12が配置され、これら出力軸10及びステータ軸12間には、それらの相対回転を許容するニードルベアリング13が介裝される。ステータ軸12の外端部はミッションケース14に回転不能に支持される。
【0022】
ステータハブ4aの軸方向両端面と、これらに対向するポンプインペラ2及びタービンランナ3の各ハブ2a,3aの端面との間にスラストニードルベアリング37,37′が介裝され、これらスラストニードルベアリング37,37′と前記スラストニードルベアリング36とにより、ポンプインペラ2及びサイドカバー5間でのタービンランナ3及びステータ4の軸方向移動が規制される。
【0023】
またステータ軸12の外周には、ポンプインペラ2に結合した補機駆動軸20が相対回転可能に配置され、この補機駆動軸20によって、トルクコンバータTに作動オイルを供給するオイルポンプ21が駆動されるようになっている。
【0024】
タービンランナ3及びサイドカバー5間には、前記循環回路6と外周側で連通するクラッチ室22が画成され、このクラッチ室22に、タービンランナ3及びサイドカバー5間を直結し得るロックアップクラッチLが設けられる。このロックアップクラッチLの主体をなすクラッチピストン19は、クラッチ室22をタービンランナ3側の内側油室23とサイドカバー5側の外側油室24とに区画するようにクラッチ室22に配置される。このクラッチピストン19は、タービンハブ3aの外周面にシール部材26を介して摺動可能に支承されるピストンハブ19aを中心部に有する(図2参照)。またクラッチピストン19の一側面には、サイドカバー5の内側面に形成された環状の摩擦面5bに対向する摩擦ライニング28が接合される。またクラッチピストン19は、公知のトルクダンパDを介して、タービンランナ3の外側面に固設された伝動板34に軸方向移動可能に連結される。
【0025】
図1及び図2に示すように、クラッチピストン19は、その側壁の外周側の広い部分を有するピストン外周側部材19Aと、その側壁の内周側の狭い部分と、その内周端からタービンランナ3側に突出するピストンハブ19aを有して浸炭窒化等の表面硬化処理されるピストン内周側部材19Bとから構成され、これら両部材19A,19Bは相互に嵌合され、溶接されて一体化される。
【0026】
図2に明示するように、ピストン内周側部材19Bの一側面には、タービンランナ3側に開口する環状凹部30が形成され、この環状凹部30の底面と、ピストンハブ19aの先端部外周に係止されるサークリップ31とでピストンハブ19aの外周に環状の装着溝32が画成される。即ち、装着溝32の内側壁は環状凹部30の底面で構成され、外側壁はサークリップ31で構成される。この装着溝32には、クラッチピストン19及びタービンランナ3間に縮設されてクラッチピストン19をサイドカバー5側に付勢する皿ばね33が装着される。符号38は、ピストンハブ19aに形成された、サークリップ31の係止溝であり、サークリップ31は、皿ばね33をピストンハブ19aの外周に嵌装してから係止溝38に装着される。こうすることにより、皿ばね33の内周端部を変形させることなく、皿ばね33の装着溝32への装着を容易に行うことができる。
【0027】
尚、上記環状凹部30及び係止溝38の加工は、ピストン内周側部材19Bの表面硬化処理前に行われる。
【0028】
一方、タービンハブ3aの外周には、タービンシェル3bを溶接により取り付けるシェル取り付けフランジ3cが一体に形成されており、このシェル取り付けフランジ3cの、一側面にはピストンハブ19aの先端部を受容する環状凹部35が形成され、この環状凹部35の底面とピストンハブ19aの先端面とで、これらの当接によりクラッチピストン19のクラッチオフ側への移動限界を規定する規制手段45が構成される(図2鎖線示参照)。
【0029】
皿ばね33は、ピストン内周側部材19Bの環状凹部30底面と、シェル取り付けフランジ3cの環状凹部35外周の一側面との間に縮設される。その際、皿ばね33に付与される軸方向のセット荷重は、内側及び外側油室23,24に油圧が発生していない状態では、クラッチピストン19の摩擦ライニング28をサイドカバー5の摩擦面5bに圧接させるが、外側油室24の油圧が内側油室23のそれより所定値以上高まると、その圧力差によりクラッチピストン19のクラッチオフ側への移動を許容するような大きさに設定される。
【0030】
ところで、皿ばね33は、クラッチピストン19の軸方向移動に伴う変形時には、その姿勢変化により内周端部も、軸方向及び半径方向に多少とも変位するものであり、その変位が拘束されると所期のばね特性を発揮し得なくなる。そこで、皿ばね33の内周端部の軸方向及び半径方向の変位を許容するため、皿ばね33とサークリップ31との間には間隙g1 が、また皿ばね33とピストンハブ19aとの間には間隙g2 がそれぞれ設けられる。
【0031】
図3に示すように、皿ばね33には、その軸方向の弾性変形を比較的容易にするため、その内周側に開口する多数のスリット33a,33a…が放射状に形成される。
【0032】
図1に戻って、出力軸10の中心部には、横孔39及びスラストニードルベアリング36を介してクラッチ室22の外側油室24に連通する第1油路40が設けられる。また補機駆動軸20とステータ軸12との間には第2油路41が画成され、この第2油路41は、ポンプハブ2a及びステータハブ4a間の環状油路29′及び前記スラストニードルベアリング37′を介して循環回路6の内周側と連通される。
【0033】
また出力軸10及びステータ軸12間には第3油路44が画成され、この第3油路44は、タービンハブ3a及びステータハブ4a間の環状油路29やスラストニードルベアリング37を介して循環回路6の内周側に連通される。その際、前記両環状油路29,29′間の連通を遮断するために、フリーホイール11のインナレース11aとステータ軸12との間にシール部材49が介裝される。
【0034】
上記第1油路40及び第2油路41は、ロックアップ制御弁42により、オイルポンプ21の吐出側とオイル溜め43とに交互に接続されるようになっている。また第3油路44は、循環回路6及び1次内側油室23aを所定油圧に保持するリリーフ弁48を介してオイル溜め43に接続される。したがって循環回路6及び1次内側油室23aの余剰圧力はリリーフ弁48を通してオイル溜め43に解放される。
【0035】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0036】
トルクコンバータTのドライブ状態では、ロックアップ制御弁42は、第1油路40をオイルポンプ21の吐出側に接続する一方、第2油路41をオイル溜め43に接続するように、図示しない電子制御ユニットにより制御される。したがって、エンジンのクランク軸1の出力トルクが駆動板8、サイドカバー5、ポンプインペラ2へと伝達して、それを回転駆動し、更にオイルポンプ21をも駆動する。すると、オイルポンプ21が吐出した作動オイルは矢印aで示すように流れ、ロックアップ制御弁42から第1油路40、横孔39及びスラストニードルベアリング36、クラッチ室22の外側油室24、内側油室23を順次経て循環回路6に流入し、該回路6を満たした後、スラストニードルベアリング37′、環状油路29′を経て第2油路41に移り、ロックアップ制御弁42からオイル溜め43に還流する。
【0037】
而して、クラッチ室22では、上記のような作動オイルの流れにより外側油室24の方が内側油室23よりも高圧となり、その圧力差によりクラッチピストン19が皿ばね33のセット荷重に抗してサイドカバー5の摩擦面5bから離れるように後退するので、ロックアップクラッチLはクラッチオフ状態となっており、ポンプインペラ2及びタービンランナ3の相対回転を許容している。したがって、クランク軸1からポンプインペラ2が回転駆動されると、循環回路6を満たしている作動オイルが矢印のように循環回路6を循環することにより、ポンプインペラ2の回転トルクをタービンランナ3に伝達し、出力軸10を駆動する。
【0038】
このとき、ポンプインペラ2及びタービンランナ3間でトルクの増幅作用が生じていれば、それに伴う反力がステータ4に負担され、ステータ4は、フリーホイール11のロック作用により固定される。
【0039】
いま、トルクコンバータTのカップリング時やエンジンブレード時に、ロックアップクラッチLを接続状態にすべく、電子制御ユニットによりロックアップ制御弁42を切換えると、オイルポンプ21が吐出した作動オイルは、先刻とは反対に矢印bのように流れ、ロックアップ制御弁42から第2油路41、環状油路29′、スラストニードルベアリング37′を順次経て循環回路6に流入し、その外周側からクラッチ室22の内側油室23にも流入する。
【0040】
一方、クラッチ室22の外側油室24は、第1油路40及びロックアップ制御弁42を介してオイル溜め43に開放される。
【0041】
以上の結果、内側油室23は昇圧し、外側油室24は減圧していくのであるが、クラッチピストン19は皿ばね33によりサイドカバー5側、即ちクラッチオン側に付勢されているため、両油室23,24が略同圧となった段階で即座にクラッチオン側に前進を開始して、摩擦ライニング28をサイドカバー5の摩擦面5bに圧接させることになる。したがって、この圧接により内側油室23から外側油室24への作動オイルのリークが阻止されるので、循環回路6から内側油室23への作動オイルの流入により内側油室23の昇圧が効率良く、迅速に行われ、クラッチピストン19はサイドカバー5の摩擦面5b側に迅速且つ強力に押圧され、ロックアップクラッチLを応答性良くクラッチオン状態にして、ポンプインペラ2及びタービンランナ3間の滑りを即座に防ぎ、トルクコンバータTの伝動効率を効果的に高めることができる。
【0042】
ところで、ロックアップクラッチLをクラッチオフ状態に制御したとき、クラッチピストン19のクラッチオフ側への後退量は、ピストンハブ19aの先端面がタービンランナ3におけるシェル取り付けフランジ3cの環状凹部35の底面に当接することにより一定に制限されるので、皿ばね33の軸方向変形量も一定に抑えられる。したがって、外側油室24及び内側油室23間の圧力差が所定値以上に上昇しても、皿ばね33に過度の軸方向荷重が加えられることが回避される。
【0043】
しかも皿ばね33とサークリップ31、皿ばね33とピストンハブ19aの各間の間隙g1 、g2 の存在により、クラッチピストン19の前進、後退に伴う皿ばね33の変形中でも、皿ばね33の内周端部は自由に姿勢変化することができ、したがって無用な応力の発生もなく、常に所期のばね特性を発揮し得ると共に、過度の荷重負担が無いことゝ相俟って、その耐久性の向上を図ることができる。
【0044】
また皿ばね33が装着される、ピストンハブ19a上の装着溝32の一側壁は、ピストン内周側部材19Bの環状凹部30の底面で構成されるので、ピストンハブ19aの、クラッチピストン19のタービンランナ3側最外側面からの突出量を極力少なくしながら、皿ばね33の装着溝32の溝幅を充分確保することができ、スペース効率の向上によりピストンハブ19aの軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0045】
さらにピストンハブ19aの先端部は、タービンランナ3のシェル取り付けフランジ3cの環状凹部35に受け入れられるので、スペース効率が更に向上し、ピストンハブ19a及びタービンハブ3a周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
さらにまたクラッチピストン19において、ピストンハブ19a及び装着溝32を持つ、比較的小部品のピストン内周側部材19Bにのみ表面硬化処理が施されるので、小規模の処理設備により多数のピストン内周側部材19Bに表面硬化処理を一挙に施すことが可能となり、コストの低減を図りながら、ピストンハブ19aのタービンハブ3aとの摺動面や、装着溝32の皿ばね33との摺動面の耐摩耗性を高めることができる。
【0047】
またピストンハブ19aの装着溝32は、その外側壁がサークリップ31で構成されるので、装着溝32に装着された皿ばね33は、トルクコンバータTの組立中、如何なる組立姿勢に置かれても、サークリップ31によりピストンハブ19aからの離脱が阻止され、これによりトルクコンバータTの組立性の向上を図ることができる。
【0048】
次に、図4に示す本発明の第2実施例について説明する。
【0049】
この第2実施例は、前実施例のサークリップ31に代えて、無端のリング体131をピストンハブ19aの外周に圧入若しくは溶接して固定したものであり、その他の構成は前実施例と変わりがないので、図4中、前実施例と対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
最後に、図5に示す本発明の第3実施例について説明する。
【0051】
この第3実施例は、前二実施例のサークリップ31やリング体131に代えて、フランジ231をピストンハブ19aに一体に形成したものである。この場合、皿ばね33の装着溝32への装着は、皿ばね33の内周端部を撓ませて、その内径を拡径することにより行われる。
【0052】
その他の構成は前実施例と変わりがないので、図5中、前実施例と対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、本発明は、ステータ4を持たない流体継手にも適用が可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、タービンランナのタービンハブに軸方向摺動自在に支承されるクラッチピストンのピストンハブに環状抜け止め部を設けて、その環状抜け止め部とクラッチピストンの一側面との間に装着溝を画成し、その装着溝には、クラッチピストンをサイドカバー内側面側に付勢する弾性部材を、該弾性部材の変形姿勢を自由にして装着し、クラッチピストンが該弾性部材に変形を生じさせつゝタービンランナ側へ押圧されて摩擦係合手段を非作動状態にするとき、クラッチピストンのタービンランナ側への移動量を一定に規制することにより前記弾性部材の過度の弾性変形を防ぐ規制手段をクラッチピストン及びタービンランナ間に設けたので、ロックアップクラッチをクラッチオフ状態に制御したとき、クラッチピストンのクラッチオフ側への移動が規制手段により一定に規制されることにより、弾性部材の変形量も一定に抑えられ、過度の荷重負担は受けないで済む。そして、その弾性部材は、流体伝動装置の組立中、如何なる組立姿勢に置かれても、抜け止め部によりピストンハブからの離脱が阻止され、これにより流体伝動装置の組立性の向上に寄与し得る。しかも弾性部材は、その変形中でも、自由に姿勢変化することができ、したがって無用な応力の発生もなく、常に所期のばね特性を発揮し得ると共に、過度の荷重負担が無いことゝ相俟って、その耐久性の向上を図ることができる。
【0055】
また本発明の第2の特徴によれば、第1の特徴に加えて、ピストンハブの一側面には、底面が前記装着溝の内側壁を構成する環状凹部を形成したので、ピストンハブの、クラッチピストンのタービンランナ側最外側面からの突出量を極力少なくしながら、装着溝の溝幅を充分確保することができ、スペース効率の向上によりピストンハブの軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0056】
さらに本発明の第3の特徴によれば、第1又は第2の特徴に加えて、クラッチピストンを、摩擦係合手段に連なるピストン外周側部材と、ピストンハブを有して表面硬化処理され、ピストン外周側部材に結合されるピストン内周側部材とで構成したので、ピストンハブを持つ比較的小部品のピストン内周側部材に表面硬化処理を施すことで、小規模の処理設備により多数のピストン内周側部材に表面硬化処理を一挙に施すことが可能となり、コストの低減を図りつゝ、ピストンハブのタービンハブとの摺動面や、装着溝の弾性部材との摺動面の耐摩耗性を高めることができる。
【0057】
さらにまた本発明の第4の特徴によれば、第1の特徴に加えて、タービンハブ外周のシェル取り付けフランジの一側面にピストンハブの先端部を受容する環状凹部を形成し、規制手段は、クラッチピストンが前記弾性部材に変形を生じさせつゝタービンランナ側へ押圧されて摩擦係合手段を非作動状態にするとき、前記環状凹部の底面と前記ピストンハブの先端面とが当接するようにして、クラッチピストンのタービンランナ側への移動量を一定に規制することにより前記弾性部材の過度の弾性変形を防ぐようにしたので、ピストンハブの先端部、タービンランナのシェル取り付けフランジの環状凹部に受け入れられることとなって、スペース効率が向上し、ピストンハブ及びタービンハブ周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係るロックアップクラッチ付きトルクコンバータの縦断側面図
【図2】 図1の2部拡大図
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 本発明の第2実施例を示す、図2との対応図
【図5】 本発明の第3実施例を示す、図2との対応図
【符号の説明】
L・・・・・・ロックアップクラッチ
T・・・・・・流体伝動装置(トルクコンバータ)
2・・・・・・ポンプインペラ
3・・・・・・タービンランナ
3a・・・・・タービンハブ
3c・・・・・シェル取り付けフランジ
5・・・・・・サイドカバー
5b,28・・・・・摩擦係合手段(摩擦面、摩擦ライニング)
6・・・・・・循環回路
19・・・・・クラッチピストン
19a・・・・ピストンハブ
19A・・・・ピストン外周側部材
19B・・・・ピストン内周側部材
22・・・・・クラッチ室
23・・・・・内側油室
24・・・・・外側油室
30・・・・・環状凹部
31,131,231・・・抜け止め部(サークリップ、リング体、フランジ)
32・・・・・装着溝
33・・・・・弾性部材(皿ばね)
35・・・・・環状凹部
42・・・・・ロックアップ制御手段(ロックアップ制御弁)
45・・・・・規制手段

Claims (4)

  1. ポンプインペラ(2)と、このポンプインペラ(2)との間に循環回路(6)を画成するタービンランナ(3)と、ポンプインペラ(2)に連設され、タービンランナ(3)の外側面との間に循環回路(6)の外周部と連通するクラッチ室(22)を画成するサイドカバー(5)と、前記クラッチ室(22)に配設され、サイドカバー(5)及びタービンランナ(3)間を直結し得るロックアップクラッチ(L)とを備え、そのロックアップクラッチ(L)を、タービンランナ(3)に軸方向移動可能に連結されて前記クラッチ室(22)をタービンランナ(3)側の内側油室(23)とサイドカバー(5)側の外側油室(24)とに区画するクラッチピストン(19)と、このクラッチピストン(19)をサイドカバー(5)内側面に対して進退させるべく内側油室(23)及び外側油室(24)間に圧力差を発生させるロックアップ制御手段(42)と、クラッチピストン(19)がサイドカバー(5)内側面側に押圧されたとき、クラッチピストン(19)及びサイドカバー(5)間を摩擦係合させる摩擦係合手段(5b,28)と、クラッチピストン(19)をサイドカバー(5)内側面側に付勢すべくクラッチピストン(19)及びタービンランナ(3)間に配設される弾性部材(33)とで構成した、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、
    タービンランナ(3)のタービンハブ(3a)に軸方向摺動自在に支承されるクラッチピストン(19)のピストンハブ(19a)に環状抜け止め部(31,131,231)を設けて、その環状抜け止め部(31,131,231)とクラッチピストン(19)の一側面との間に装着溝(32)を画成し、その装着溝(32)に前記弾性部材(33)を、該弾性部材(33)の変形姿勢を自由にして装着し、クラッチピストン(19)が前記弾性部材(33)に変形を生じさせつゝタービンランナ(3)側へ押圧されて摩擦係合手段(5b、28)を非作動状態にするとき、クラッチピストン(19)のタービンランナ(3)側への移動量を一定に規制することにより該弾性部材(33)の過度の弾性変形を防ぐ規制手段(45)をクラッチピストン(19)及びタービンランナ(3)間に設けたことを特徴とする、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
  2. 請求項1記載のロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、
    ピストンハブ(19a)の一側面には、底面が前記装着溝(32)の内側壁を構成する環状凹部(30)を形成したことを特徴とする、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
  3. 請求項1又は2記載のロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、
    クラッチピストン(19)を、摩擦係合手段(5b,28)に連なるピストン外周側部材(19A)と、ピストンハブ(19a)を有して表面硬化処理され、ピストン外周側部材(19A)に結合されるピストン内周側部材(19B)とで構成したことを特徴とする、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
  4. 請求項1記載のロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、
    前記タービンハブ(3a)外周のシェル取り付けフランジ(3c)の一側面には、ピストンハブ(19a)の先端部を受容する環状凹部(35)形成されており、
    前記規制手段(45)は、クラッチピストン(19)が前記弾性部材(33)に変形を生じさせつゝタービンランナ(3)側へ押圧されて摩擦係合手段(5b,28)を非作動状態にするとき、前記環状凹部(35)の底面と前記ピストンハブ(19a)の先端面とが当接するようにして、クラッチピストン(19)のタービンランナ(3)側への移動量を一定に規制することにより前記弾性部材(33)の過度の弾性変形を防ぐように構成されたことを特徴とする、ロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
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