JP3935414B2 - 放電灯 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電灯に係わり、特に低消費電力化を図った冷陰極の放電灯に関する。
【0002】
【従来の技術】
放電灯は、全照明光源の約半数を占める産業上及び生活上重要な技術分野であり、特に、最近冷陰極型の放電灯が液晶ディスプレイのバックライト光源として、急激に生産が拡大している。
【0003】
冷陰極型放電灯の一例として冷陰極蛍光ランプがある。これは、一対の冷陰極をガラス管内部に対向して配置し、ガラス管内部には希ガスと微量のHgが封入されているものである(例えば、特許文献1参照。)。これらの一対の冷陰極間に高電圧を印加することによって、両電極間に放電を開始させ、この放電を維持することによって、水銀の励起による紫外線発光を生じさせて蛍光体を発光させる仕組みとなっている。また、バリヤ型と呼ばれる冷陰極放電灯も知られており、放電空間を形作る管の外部に電極が設けられ、当該電極は直接放電面に接していない構成となっている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
このような冷陰極型放電灯は、従来より用いられている熱陰極型蛍光灯に比べて、加熱フィラメントの断線や電子放出用エミッタ物質の消耗などが少なく寿命が極めて長いという特徴を持っている。このため、光源の交換が困難な産業用機器の照明として用途が拡大しつつあり、特に液晶ディスプレイ用のバックライトとして近年急激な生産拡大を示している。この一方で、冷陰極型は、熱陰極型に比べて発光効率が低いという問題がある。この発光効率の向上が実現されれば、産業用としてのみでなく広く一般に照明として現在の蛍光灯に対する置き換えを狙うことができる。
【0005】
冷陰極放電灯の性能向上を図るために、発明者らは特願2001−97416や特願2001−323997に示されるように陰極の電子放出材料としてダイヤモンドを用いた冷陰極放電灯を考案した。ダイヤモンドは電子放出効率が高くスパッタ耐性も高いので、発光効率が高く寿命も長い放電灯を提供することができる。なお、ダイヤモンドを冷陰極に用い真空中で電子放出を行う技術は既に確立したものである(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
ダイヤモンドを放電に用いた他の例としてプラズマディスプレイパネルが挙げられる(例えば、特許文献3参照。)。プラズマディスプレイパネルに係る当該文献においては、アモルファス状カーボン層でダイヤモンド粒子の表面を被覆したものを用いることにより、電子放出特性の向上、発光効率の向上が図られている。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−274156号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−236083号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−117771公報
【0010】
【非特許文献1】
K・オカノ(K.Okano)他,「ロー・スレッショルド・コールド・カソーヅ・メイド・オブ・ナイトロジェン−ドープト・ケミカル−ベーパー−デポジッテド・ダイヤモンド(Low-threshold cold cathodes made of nitrogen-doped chemical-vapour-deposited diamond)」,ネーチャー(Nature) ,(イギリス),マクミラン(Macmillan) ,1996年,第381巻,p.140
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した各冷陰極放電灯は、所定の印加電圧を電極に印加することにより放電管内部で放電を開始し、放電状態を維持させて発光させるものである。しかしながら、従来の各冷陰極放電灯では、放電を開始するために印加する電圧及び放電状態を維持させるための電圧は低いとはいえず、このため消費電力が大きいという問題があった。
【0012】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、発光効率が高く消費電力が小さい放電灯を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
(構成)
前述した課題を解決するため、本発明の第1の放電灯は、放電用ガスが封入された外囲器と、この外囲器内に配置された電極とを備えた放電灯であって、該電極には電子放出部材が設けられ、当該電子放出部材は、その表面に、微細導電性突起群と、該微細導電性突起群を支持し該微細導電性突起群の材料よりも二次電子放出効率が高い材料からなる電子放出膜とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2の放電灯は、放電用ガスが封入された外囲器と、この外囲器の外面に配置された電極とを備えた放電灯であって、前記外囲器を介して前記電極と対向する当該外囲器の内面に電子放出部材を有し、該電子放出部材は、その表面に、微細導電性突起群と、該微細導電性突起群を支持し該微細導電性突起群の材料よりも二次電子放出効率が高い材料からなる電子放出膜とを有することを特徴とする。
【0015】
上記本発明の第1及び第2の放電灯において、以下の構成を備えることが好ましい。
【0016】
(1)前記微細導電性突起群はSP2混成軌道結合を含む炭素からなること。
【0017】
(2)前記微細導電性突起群として、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレン、及びカーボンオニオンの少なくとも一種以上が用いられたこと。
【0018】
(3)前記電子放出膜の前記二次電子放出効率が高い材料はSP3混成軌道結合を含む炭素からなること。
【0019】
(4)前記電子放出膜の前記二次電子放出効率が高い材料はダイヤモンドからなること。
【0020】
(5)前記微細導電性突起群の一部は前記電子放出膜に埋め込まれてなること。
【0021】
(6)前記放電用ガスは200nm以下の主要発光ピークを有する元素を含むガスを含むこと。
【0022】
(7)前記放電用ガスは希ガスと水銀を含むこと。
【0023】
(8)前記放電用ガスはXeを含むこと。
【0024】
(9)前記放電用ガスは水素ガスを含むこと。
【0025】
(10)前記ダイヤモンドはドナー性不純物を含有すること。
【0026】
(11)微細導電性突起群の直径は100nm以下であること。
【0027】
(12)微細導電性突起群のアスペクト比(長さ/直径)は3:1以上1000:1以下であること。
【0028】
(作用)
本発明の放電灯によれば、電極に設けられた電子放出部材が、微細導電性突起群と、該微細導電性突起群を支持し該微細導電性突起群の材料よりも二次電子放出効率が高い材料からなる電子放出膜とを有する。かかる構成では、まず放電開始時に、前記微細導電性突起群の先端に電界が集中しこの先端から放電空間へ電子が容易に放出されるので、低い電圧で放電を開始することが可能である。さらに、放電開始後には、微細導電性突起群を支持する形でその根元部分に前記電子放出膜が設けられているので、放電空間内のイオン等が当該電子放出膜に対して入射する。当該電子放出膜は、上記微細導電性突起群の材料よりも二次電子放出効率が高い材料からなるので、入射したイオン等により多量の二次電子が放出され、低電力で発光効率の高い放電を維持することが可能である。したがって、発光効率が高く消費電力が小さい放電灯を提供することが可能である。
【0029】
また、外囲器の外面に電極が配置され、当該外囲器を介して前記電極と対向する外囲器内面に電子放出部材を有する放電灯においても、当該電子放出部材が、その表面に、微細導電性突起群と、該微細導電性突起群を支持し該微細導電性突起群の材料よりも二次電子放出効率が高い材料からなる電子放出膜とを有するので、低い電圧で放電を開始することができ、かつ低電力で発光効率の高い放電を維持することが可能である。したがって、発光効率が高く消費電力が小さい放電灯を提供することが可能である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態に係る放電灯は、蛍光体3を塗布したガラス管1と、ガラス管1の両端に取り付けられた一対の電極4、4´(冷陰極)と、ガラス管1の外面に設けられた透明導電膜7(例えば、ITO(インジウムすず酸化物)、SnO2(酸化すず)等。)を有する。ガラス管1の内部2には放電用ガスが封入されている。例えば、ガラス管1内には放電を容易にするために封止ガスとしてアルゴン又は混合希ガス(例えば、アルゴン、ネオン、キセノン等の混合ガス。)と微量の水銀が4〜80hPaの圧力で封止されている。
【0032】
一対の電極4、4´のそれぞれは、図1の拡大図に示されるように、W(タングステン)等からなる電極部材4aを有し、この電極部材4aの表面には電子放出膜としてダイヤモンド膜5が形成されている。ダイヤモンド膜5の表面には微細導電性突起群としてカーボンナノチュ―ブ群6が形成されており、カーボンナノチュ―ブ群6それぞれの一部(根元部分)はダイヤモンド膜5に埋め込まれている。カーボンナノチュ―ブ群6の直径は100nm以下であり、そのアスペクト比(長さ/直径)は3:1以上1000:1以下である。直径が100nmより大きいと放電開始電圧低減に顕著な効果を得にくいという問題がある。また、アスペクト比が3:1未満であると同様に効果が不十分となってしまい、1000:1より大きいと突起構造が壊れやすくなってしまう。
【0033】
かかる構成によりカーボンナノチュ―ブ群6はダイヤモンド膜5の表面に支持され、カーボンナノチュ―ブ群6の存在しないダイヤモンド膜5の表面5aがガラス管1の内部2に露出した状態となっている。ダイヤモンド膜5は、カーボンナノチュ―ブ群6の材料よりも二次電子放出効率が高い材料(ダイヤモンド)からなっている。なお、二次電子放出効率は放電特性評価により測定することが可能であり、カーボンナノチュ―ブの二次電子放出効率は0.01以下、ダイヤモンドの二次電子放出効率は0.1以上である。
【0034】
次に、本実施形態の放電灯の動作について説明する。
【0035】
まず、放電を開始させるために、一対の電極4、4´間に高電圧、例えば1500Vを印加する。ここで、一般的には放電を生じさせるために交流電圧を電極4、4´間に印加する構成となっており、電極4、4´の片方がエミッタ(陰極)として作用するときは他方は対極電極(陽極)として作用する。電圧を印加し始める時は、ガラス管1内は絶縁状態であり、両端の電極4、4´に印加された電圧は、陰極表面のカーボンナノチュ―ブ群6の先端において電界集中を生じて局所的に強電界を生じる。この強電界により陰極から放出された電子は対極電極(陽極)側に移動し、放電が開始する。本実施形態においては、カーボンナノチュ―ブ群6を設けない場合に比べて大幅に低い印加電圧で放電を開始させることができる。
【0036】
この放電により電子はガラス管1内に封止した水銀原子と衝突する。水銀原子は衝突によりエネルギーを受け紫外線を放出する。この紫外線により蛍光体3が励起され可視光線を発生する。発光色は蛍光体の種類によって異なり、白色、昼光色、青色など数々の色種の光がランプから放射される。
【0037】
次に、放電が始まるとガラス管1内は電離ガスによって満たされるため、このような絶縁空間での幾何形状による電界集中効果は弱まり、電子放出も陰極への放電ガスイオン(Ar等の希ガスイオン等)の接近や衝突による二次電子放出が主因となる。このときの電子放出のしやすさは、形状でなく、陰極表面材料の電子構造、特に電子親和力に大きく依存する。
【0038】
ダイヤモンド膜5等の電子放出膜は、広いバンドギャップと小さな電子親和力を有し、微細導電性突起群(カーボンナノチュ―ブ群6等)の材料よりも二次電子放出効率が高い材料であるダイヤモンド等のワイドギャップ半導体からなっており、電極4、4´の表面にはダイヤモンド膜5の表面5aとカーボンナノチュ―ブ群6とが並置された構造となっている。このため、放電開始後には、ダイヤモンド膜5の表面5aに放電ガスイオンが接近したり衝突することにより、ダイヤモンド膜5の表面5aから二次電子を効率的に放出させることが可能である。したがって、放電を維持するための電圧を低減することが可能である。以上の構成の組合せによって、放電開始電圧及び放電維持電圧をともに低減させることが可能となり、低消費電力の冷陰極放電灯を得ることができる。
【0039】
この際、ガラス管1に沿って透明導電膜7が設けられていることによって、ガラス管1の長手方向の主要部分での電位降下を回避して、陰極近傍に電位降下すなわち電界を多く分配させることができる。この効果を組み合わせることによって、よりいっそう効果的に放電開始電圧及び放電維持電圧の低減化を図ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態において採用されたダイヤモンドとカーボンナノチューブの組合せは、冷陰極における寿命決定の主要因であるAr等の希ガスイオンのアタックに対して極めてスパッタされにくい特性を持っている。例えば、Arイオンのアタックに対するスパッタリング率は従来より用いられているNiの約1/10と小さい。さらに、希ガスとともに多くの放電管において用いられているHg蒸気と炭素系材料(ダイヤモンドとカーボンナノチューブ等)とはアマルガム等の合金を作ることがなく、巻き込みによるHg蒸気の消耗も少ない。これらの特性も相俟って放電灯の長寿命化やHg封入量の低減化等の効果を得ることができる。
【0041】
次に、本実施形態の放電灯の製造方法について説明する。図2はその製造方法を説明するための工程断面図である。
【0042】
まず、図2(a)に示すようにW(タングステン)等からなる電極部材4aを準備する。次に、粒径が約100nmのダイヤモンド微粉、及び直径100nm以下でアスペクト比(長さ/直径)3:1以上1000:1以下のカーボンナノチューブを有機溶媒(例えば、アセトン等。)に懸濁させ、懸濁液の中に電極部材4aを浸して超音波処理を行う。この処理により、図2(b)に示すように電極部材4aの表面において、いわゆるダイヤモンド成長核の種付け(核は図示せず。)とともにカーボンナノチューブ6の残置処理が行われる。
【0043】
次に、かかる処理が行われた電極部材4aの表面にマイクロ波CVD法等によってダイヤモンド膜5を成膜する(図2(c))。成膜条件は、マイクロ波パワーを4kW、反応ガス圧力を40hPa、水素ガス流量を400sccm、メタンガス流量を4sccm、基板温度を850℃、成膜時間を60分とした。この際に、メタン、水素などのガスに加えて、ボロン或いはリン等のドーピングガスを加えることによって、導電性を付与した膜を形成することが望ましい。また、窒素ガスを高濃度に加えることなどによって、ダイヤモンド膜に加えて、グラファイトライクな導電性介在物相を意図的に生成させ、膜としての導電性を向上させることも有効である。以上の工程により、ダイヤモンド膜5を形成するとともに、カーボンナノチュ―ブ群6のダイヤモンド膜5へのアンカーリング(植え付け)を行うことができ、プロセスを簡略にすることが可能である。
【0044】
次に、以上の工程により作製した一対の電極4、4´を、蛍光体3を内面に形成したガラス管1内に放電用ガスとともに封止し、さらにガラス管1の外面に透明導電膜7を形成して放電灯が完成する。
【0045】
本実施形態の一対の電極4、4´は、以下のようにして作製することも可能である。図3はその製造方法を示す工程断面図である。
【0046】
まず、図3(a)に示すようにW(タングステン)等からなる電極部材4aを準備し、図3(b)に示すようにいったんダイヤモンド膜35aだけを成膜する。成膜条件は、マイクロ波パワーを4kW、反応ガス圧力を40hPa、水素ガス流量を400sccm、メタンガス流量を4sccm、基板温度を850℃、成膜時間を60分とした。
【0047】
次に、図3(c)に示すように上述した方法と同様の方法により、ダイヤモンド微粉とカーボンナノチューブを薄く懸濁した有機溶媒に対してダイヤモンド膜35a表面を浸すことにより、カーボンナノチューブ群36をダイヤモンド膜35aの表面に離散的に残置し、併せてダイヤモンド成長核の種付け処理を行う。
【0048】
次に、図3(d)に示すようにマイクロ波CVD法等によってダイヤモンド膜35bを成膜する。成膜条件は図2(c)の工程と同様である。これにより、ダイヤモンド膜35bを形成するとともに、カーボンナノチュ―ブ群36のダイヤモンド膜35bへのアンカーリングを行うことができ、プロセスを簡略にすることが可能である。この方法によれば、カーボンナノチュ―ブ群36のダイヤモンド膜35bへのアンカーリングをより確実に行うことが可能であり、この方法によって形成された放電灯は、カーボンナノチューブが強固に固定されていて、安定であるばかりでなく、ダイヤモンド表面がある程度損耗しても、カーボンナノチューブが抜けたりすることが無く、長寿命化をはかることができるという効果を有する。
【0049】
なお、ダイヤモンド膜を成膜した後に、Feなどの触媒金属を極薄く分散させた溶媒(例えば、エタノール等。)に当該ダイヤモンド膜を浸漬し、メタンガス等を用いてダイヤモンドよりも低温でCVD法を行うことにより、上記ダイヤモンド膜表面に直接カーボンナノチューブを形成してもよい。この方法によれば、カーボンナノチューブの配向性や分布をより細かく制御することが可能であり、この方法によって形成された放電灯は、放電特性の再現性がよいという効果を有する。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図である。図1と同一部分には同一の符号を記す。
【0051】
図4に示されるように、本実施形態に係る放電灯は、蛍光体3を塗布したガラス管1と、ガラス管1の両端に取り付けられた一対の電極44、44´(冷陰極)と、ガラス管1の外面に設けられた透明導電膜7を有する。ガラス管1の内部2には放電用ガスが封入されている。
【0052】
一対の電極44、44´のそれぞれは、図4の拡大図に示されるように、引き出し電極44aの先端にW(タングステン)等からなる電極板44bを有し、この電極板44aの表面には電子放出膜としてダイヤモンド膜45が形成されている。ダイヤモンド膜45の表面には微細導電性突起群としてカーボンナノチュ―ブ群46が形成されており、カーボンナノチュ―ブ群46それぞれの一部(根元部分)はダイヤモンド膜45に埋め込まれている。カーボンナノチュ―ブ群46の直径やアスペクト比(長さ/直径)は第1の実施形態と同様である。
【0053】
かかる構成によりカーボンナノチュ―ブ群46はダイヤモンド膜45の表面に支持され、カーボンナノチュ―ブ群46の存在しないダイヤモンド膜45の表面45aがガラス管1の内部2に露出した状態となっている。ダイヤモンド膜45は、カーボンナノチュ―ブ群46の材料よりも二次電子放出効率が高い材料(ダイヤモンド)からなっている。
【0054】
本実施形態の放電灯によれば、第1の実施形態と同様に、放電開始電圧及び放電維持電圧をともに低減させることが可能となり、低消費電力の冷陰極放電灯を得ることができる。さらに、板状の電極板44を用いることにより、多数の陰極を大面積基板に一括作製し、各々の陰極に分割して用いることが可能となる。したがって、陰極の作製プロセスを大量生産化することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本発明の第3の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図である。本実施形態に係る放電灯はいわゆるバリヤ型の放電灯であり、放電管の外面に電極が設けられ、この電極に対して電圧が印加されることにより、放電管内部に放電を誘起して発光させるものである。
【0056】
図5に示すように、本実施形態に係る放電灯は、蛍光体53を塗布したガラス管51と、ガラス管51の両端外面に取り付けられた円筒状の一対の電極54、54´(冷陰極)とを有する。ガラス管51の内部52には放電用ガスが封入されている。例えば、ガラス管51内には放電を容易にするために封止ガスとしてアルゴン又は混合希ガス(例えば、アルゴン、ネオン、キセノン等の混合ガス。)が80hPaの圧力で封止されている。
【0057】
ガラス管51を介して一対の電極54、54´と対向するガラス管51内面には、それぞれ一対の円筒状の電子放出部材57、57´が設けられている。一対の電子放出部材57、57´それぞれの構造は図5の拡大図に示される通りであり、ガラス管51内面に電子放出膜としてダイヤモンド膜55が形成されている。この実施形態においては、ダイヤモンド膜に必ずしも導電性を付与する必要はなく、絶縁性でもよい。ダイヤモンド膜55の表面には微細導電性突起群としてカーボンナノチュ―ブ群56が形成されており、カーボンナノチュ―ブ群56それぞれの一部(根元部分)はダイヤモンド膜55に埋め込まれている。カーボンナノチュ―ブ群56の直径は100nm以下であり、そのアスペクト比(長さ/直径)は3:1以上1000:1以下である。直径が100nmより大きいと放電開始電圧低減の効果を得にくいという問題がある。また、アスペクト比が3:1未満であると同様に効果が不十分となってしまい、1000:1より大きいと突起構造が弱くなってしまう。
【0058】
かかる構成によりカーボンナノチュ―ブ群56はダイヤモンド膜55の表面に支持され、カーボンナノチュ―ブ群56の存在しないダイヤモンド膜55の表面55aがガラス管51の内部52に露出した状態となっている。ダイヤモンド膜55は、カーボンナノチュ―ブ群56の材料よりも二次電子放出効率が高い材料(ダイヤモンド)からなっている。
【0059】
次に、本実施形態のバリア型放電灯の動作について説明する。
【0060】
まず、放電を開始させるために、一対の電極54、54´間に周波数40kHz、1500Vの高周波電圧を印加する。電極54、54´の片方がエミッタ(陰極)として作用するときは他方は対極電極(陽極)として作用する。この高周波電圧の印加により、絶縁体であるガラス壁(バリア層と呼ばれる。)間の空間52において、陰極表面のカーボンナノチュ―ブ群56の先端において電界集中を生じて局所的に強電界を生じる。この強電界により陰極から放出された電子は対極電極(陽極)側に移動し、放電が開始する。本実施形態においては、カーボンナノチュ―ブ群6を設けない場合に比べて大幅に低い印加電圧で放電を開始させることができる。
【0061】
以上の機構により断続放電が生じ、それによって生じる紫外線により蛍光体が励起されて発光が生じる。このように、バリア型放電灯では、電極54、54´を放電空間に晒していないため、電極54、54´が消耗されるのを抑制するためにガラス管51内に水銀蒸気を存在させる必要がない。したがって、ガラス管51の内部に封入するガスとして希ガスのみを使用すればよい。
【0062】
次に、放電が始まるとガラス管51内は電離ガスによって満たされるため、このような絶縁空間での幾何形状による電界集中効果は弱まり、電子放出も陰極への放電ガスイオン(Ar等の希ガスイオン等)の接近や衝突による二次電子放出が主因となる。このときの電子放出のしやすさは、形状でなく、陰極表面材料の電子構造、特に電子親和力に大きく依存する。
【0063】
ダイヤモンド膜55等の電子放出膜は、広いバンドギャップと小さな電子親和力を有し、微細導電性突起群(カーボンナノチュ―ブ群56等)の材料よりも二次電子放出効率が高い材料であるダイヤモンド等のワイドギャップ半導体からなっており、電子放出部材57、57´の表面にはダイヤモンド膜55の表面55aとカーボンナノチュ―ブ群56とが並置された構造となっている。このため、放電開始後には、ダイヤモンド膜55の表面55aに放電ガスイオンが接近したり衝突することにより、ダイヤモンド膜55の表面55aから二次電子を効率的に放出させることが可能である。したがって、放電を維持するための電圧を低減することが可能である。以上の構成の組合せによって、放電開始電圧及び放電維持電圧をともに低減させることが可能となり、低消費電力の冷陰極放電灯を得ることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図6は、本発明の第4の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図である。本実施形態に係る放電灯はいわゆるバリヤ型の放電灯であり、放電管外面の長手方向に一対の外部電極を設けたものである。図5と同一部分には同一の符号を記す。
【0065】
図6に示すように、本実施形態に係る放電灯は、ガラス管51と、ガラス管51の外面に取り付けられた一対の電極64、64´(冷陰極)とを有する。一対の電極64、64´はそれぞれ、ガラス管51外面の長手方向に短冊状にお互いに対向して設けられている。ガラス管51の内部52には上記実施形態と同様に放電用ガスが封入されている。
【0066】
一対の電極64、64´と対向するガラス管51内面には、それぞれ一対の電子放出部材67、67´が設けられている。一対の電子放出部材67、67´はそれぞれ、ガラス管51内面の長手方向に短冊状にお互いに対向して設けられている。一対の電子放出部材67、67´それぞれの構造は図6の拡大図に示される通りであり、ガラス管51内面に電子放出膜としてダイヤモンド膜65が形成されている。なお、この実施形態におけるダイヤモンド膜は絶縁性あるいは高抵抗であることが望ましい。ダイヤモンド膜65の表面には微細導電性突起群としてカーボンナノチュ―ブ群66が形成されており、カーボンナノチュ―ブ群66それぞれの一部(根元部分)はダイヤモンド膜65に埋め込まれている。カーボンナノチュ―ブ群66の直径やアスペクト比(長さ/直径)は第3の実施形態と同様である。かかる構成によりカーボンナノチュ―ブ群66はダイヤモンド膜65の表面に支持され、カーボンナノチュ―ブ群66の存在しないダイヤモンド膜65の表面65aがガラス管51の内部52に露出した状態となっている。
【0067】
本実施形態の放電灯によれば、第3の実施形態と同様に、放電開始電圧及び放電維持電圧をともに低減させることが可能となり、低消費電力の冷陰極放電灯を得ることができる。さらに、放電プラズマの拡散性がよく、水銀を用いないネオンやキセノン等の希ガスのみによる放電にも適用することができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、微細導電性突起群に用いられたSP2混成軌道結合を含む炭素として、カーボンナノチューブ以外に、カーボンフラーレンやカーボンオニオン等を用いることも可能である。また、二次電子放出効率が高い材料であるSP3混成軌道結合を含む炭素としてダイヤモンドを用いたが、その他、ダイヤモンドライクカーボン等を用いることも可能である。
【0069】
また、微細導電性突起群と該微細導電性突起群の材料よりも二次電子放出効率が高い材料からなる電子放出膜との組み合わせとして、他の組み合わせを用いることができ、例えば、微細導電性突起群として、既述のカーボンナノチューブ、カーボンオニオン、カーボンフラーレン等の他、炭素ファイバー、金属ウィスカー・ファイバー等を、電子放出膜として、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等の他、アルミニウム窒化物、ガリウム窒化物、ボロン窒化物、これらのうち少なくとも二種類からなる混晶等のワイドギャップ半導体等を用いることも可能である。
【0070】
さらにまた、ダイヤモンド膜の二次電子放出効率を高めるために、放電用ガス中に水素(水素ガス等。)を混入することも可能である。
【0071】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、発光効率が高く消費電力が小さい放電灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図。
【図2】 本発明の第1の実施形態に係る放電灯の製造方法を示す工程断面図。
【図3】 本発明の第1の実施形態に係る放電灯の他の製造方法を示す工程断面図。
【図4】 本発明の第2の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図。
【図5】 本発明の第3の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図。
【図6】 本発明の第4の実施形態に係る放電灯の構造を示す断面図。
【符号の説明】
1 ガラス管
2 ガラス管1の内部
3 蛍光体
4、4´ 一対の電極
4a 電極部材
5 ダイヤモンド膜
5a ダイヤモンド膜5の表面
6 カーボンナノチュ―ブ群
7 透明導電膜

Claims (3)

  1. 放電用ガスが封入された外囲器と、この外囲器内に配置された電極とを備えた放電灯であって、該電極には電子放出部材が設けられ、当該電子放出部材は、その表面に、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレン、及びカーボンオニオンの少なくとも一種以上からなる微細導電性突起群と、該微細導電性突起群を支持しダイヤモンドからなる電子放出膜とを有し、前記微細導電性突起群の一部は前記電子放出膜に埋め込まれてなることを特徴とする放電灯。
  2. 放電用ガスが封入された外囲器と、この外囲器の外面に配置された電極とを備えた放電灯であって、前記外囲器を介して前記電極と対向する当該外囲器の内面に電子放出部材を有し、該電子放出部材は、その表面に、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレン、及びカーボンオニオンの少なくとも一種以上からなる微細導電性突起群と、該微細導電性突起群を支持しダイヤモンドからなる電子放出膜とを有し、前記微細導電性突起群の一部は前記電子放出膜に埋め込まれてなることを特徴とする放電灯。
  3. 前記電極と前記電子放出膜との間にさらにダイヤモンドからなる膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の放電灯。
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