JP3833489B2 - 冷陰極放電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷陰極放電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷陰極放電灯に代表される冷陰極放電装置は、加熱用フィラメントがなく簡単な構造であり、小型化しやすくかつ低温で用いることができるため、比較的寿命が長いことから、各種照明用や近年液晶装置のバックライトなどとして幅広く用いられている。
【0003】
一方で、冷陰極放電灯は内封する放電ガスのイオン衝撃による冷陰極からの2次電子放出を用いて放電を持続するために、通常は陰極部近傍に熱陰極型蛍光灯などの熱陰極に比べて非常に大きな電界をかけるバイアス電圧印加が必要である。このために、点灯時も大きな電圧が必要であり、これらによる電力の光への変換効率という点で熱陰極放電灯に比べて劣る。しかし、熱陰極型に比べて長寿命であるので、交換困難な用途に使う場合が多いことから、ランプ寿命のよりいっそうの向上が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような冷陰極放電装置の発光効率、寿命という2つの課題を改善し、より高効率発光でかつ長寿命化を実現することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、放電用ガスが封入された外囲器と、この外囲器内に配置された冷陰極とを具備する冷陰極放電装置において、前記冷陰極は支持体と、この支持体に支持され電子を放出する電子放出体とを有し、前記電子放出体はダイヤモンドおよび導電性炭素の混在相から構成され、前記ダイヤモンドは粒状体でなり、前記電子放出体の前記支持体に固着された固着部から前記電子放出体の表面にかけて前記粒状体の界面に前記導電性炭素が形成され、前記粒状体内には導電性領域が分布されている冷陰極放電装置を得るものである。
【0006】
さらに、この場合、前記電子放出体のダイヤモンド相はドナー性不純物を含有することが望ましい。
【0009】
さらに前記放電用ガスはXeを含むことが望ましい。
【0010】
本発明は、負あるいは、金属等の電極に比べて著しく小さい電子親和力を有するダイヤモンドと、ダイヤモンドと同じ炭素からなりかつsp2結合を有するグラファイトあるいは非晶質炭素の粒界層を具備する炭素系材料を冷陰極用電極として用いることを骨子とする。また、望ましくはこのダイヤモンドを高品質化し、ドナー性不純物具体的にはリン、イオウ、窒素、アルカリ金属類を添加し、フェルミレベルを上げたダイヤモンドを用いる。さらに、望ましくは放電灯の内部ガスにダイヤモンドのバンドギャップ以上のエネルギーを有する励起発光波長を有するXe等を加えることによって管内の励起発光からの直接励起によって電子放出を促進することを特徴とする。
【0011】
本発明の冷陰極は、従来の冷陰極で用いられているNi等の金属電極に代えて、ダイヤモンド相とグラファイトあるいは非晶質炭素層を有する炭素系電極を用いている。炭素は放電灯管の中に水銀とともに封入されて、水銀の高効率励起を助ける役割を果たしているArのイオン衝撃によるスパッタリングを比較した場合に、ほとんどの元素中でもっともスパッタされにくい元素のひとつである。一方、冷陰極放電灯の寿命を最終的に決めているのは、スパッタリングによる電極の損耗であり、このような現象に対して、炭素系材料はきわめて有効である。
【0012】
しかしながら、グラファイト系材料は2次電子放出が極めて小さい。熱陰極放電灯と違い、冷陰極放電灯では、電子は管内のAr等のイオン衝撃による2次電子放出(γ作用)が電子放出のメカニズムであることから、耐スパッタ性は優れていても、実際には冷陰極電極材料として適用することは困難であった。
【0013】
本発明では、ダイヤモンドとグラファイト系を組み合わせることによって、2次電子放出効率と耐スパッタ性を両立し、結果として高効率で長寿命の冷陰極放電灯を実現することを可能にする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を以下、図面に従って説明する。
【0015】
図1および図2は本発明の第1実施形態の冷陰極放電灯およびその冷陰極を示しており、透明なガラス製の細長い外囲器10の両端はステム11、12で形成され、リード線13、14が封着されている。リード線の外囲器内に突出する部分はNiなどの金属でてきた陰極支持体15、16となっており、この支持体に電子放出体17、18が固着されて陰極支持体とともに冷陰極19、20を構成している。外囲器内壁に螢光体膜21が塗布され、さらに外囲器内部にAr、HgおよびXeの放電用のガスが低圧封入されている。
【0016】
外囲器から外部に露出したリード線部分13a、14aは例えば交流電源22に接続される電極端子であり、電圧が印加されると外囲器管内は放電を開始し、一方の電極例えば17が冷陰極として電子を放出するときは、他方の電極例えば18が陽極として動作する。
【0017】
冷陰極19を構成する電子放出体17(18)は、グラファイト相とダイヤモンド相のダイヤモンド・グラファイト混在相であり、図2に示すように支持体15(16)に塗布、焼結されて固着される。
【0018】
この製造方法は粒径50nmから50μmのダイヤモンド粒をグラファイト系バインダーを用いて固め、熱処理して作製するもので、低価格で電極を作製することができる。
【0019】
図3は上記により得られる冷陰極の一部縦断面を模式的に拡大しており、高品質ダイヤモンド相23とグラファイト相24が共存している。
【0020】
図5にγ作用による2次電子放出の一般的な機構の概念図を示す。同図にあるように、通常、電子放出体17からの電子eの放出は、Ar+イオンが電界で加速されて衝突することによって生じる。この際に、電子を電極から飛び出させる効率はほぼ仕事関数から推定することができる。一方、ダイヤモンドは負の電子親和力(NEA)あるいはきわめて低い電子親和力を有しており、図6に示すエネルギーバンド図のコンダクションバンドEcから見た場合には、真空中のEvacに対してほとんど放出障壁がない。このため、同じ炭素系でありながら、ダイヤモンドを用いることによって高い2次電子放出効率を得ることができる。
【0021】
さらに、高品質ダイヤモンドでは、図6および図7に示すように、光hνによる直接バンド間遷移を生じさせることでキャリヤを励起させ電子eを放出させることができる。本発明では、これを利用して、通常用いられるArや水銀に加えてXeを加えることによって、ダイヤモンドの直接励起波長より高エネルギーの深紫外発光を管内に生じさせ、これをもって陰極のダイヤモンド相を光励起し、キャリヤの生成を促進させることができる。励起光波長200nm以下が望ましい。水銀Hg蒸気の主要発光スペクトルは251nmであるためにダイヤモンドの直接励起にあまり寄与しないが、Xeガスは200nm以下に主要発光スペクトルを有するので、ダイヤモンド相を効率よく励起することができる。
【0022】
図8および図9は本発明の第2実施形態を示すものである。なお図1の符号の部分と同一符号の部分は同様部分を示す。透明な石英またはガラスでできた放電灯用の管状外囲器10の両端はリード線13、14が気密に貫通するステム11、12で封着されている。リード線の外囲器内に突出する部分はNiなどの金属でてきた陰極支持体基板30、31が接続されている。この支持体30、31面に層状電子放出体32、33が形成されて冷陰極34、35を構成している。外囲器内壁に螢光体膜21が塗布され、さらに外囲器内部にAr、HgおよびXeの放電用のガスが低圧封入されている。
【0023】
電子放出体32(33)はダイヤモンド系層で支持体基板30(31)上に形成される。この構造により電極体積を低減するとともに、作製方法を簡単化することができる。
【0024】
本実施形態の場合、CVDにより冷陰極材料であるダイヤモンド系層を電子放出体32として基板30上に成膜形成する。この電子放出体は基板上に多結晶ダイヤモンド膜として成膜し、ダイヤモンド相23の結晶粒界に導電性である非晶質炭素またはグラファイト粒相24がマトリックス状に存在する混在相となる。非晶質炭素またはグラファイト粒が混在する程度はCVDによる膜の製造条件を適宜調節すればよい。
【0025】
基板材料としては、Cu、Ni、Fe、Moなどの金属材料の他、低抵抗Siや、SiC、GaNなどの半導体基板、さらにはセラミック基板上に上記した金属薄膜を形成したものなどを用いることができる。金属薄膜には上記に加えて、Pt、Irなどの貴金属を選ぶこともできる。
【0026】
このようにして準備された導電性を付与された表面を有する基板30上にCVD法によってダイヤモンド系材料を成膜する。この場合に、ホットフィラメントCVDや、マイクロ波プラズマCVD、直流プラズマCVDなど、知られている各種のCVD装置を用いることができる。ガス原料としては、炭素源として、メタン、アセトン、各種アルコールやCO、CO2などを用い、雰囲気ガスとして水素を用いるほか、適宜酸素などを用いることが出来る。また、リンや硫黄などの元素をドーピングすることによって、電子キャリヤの生成を促したり、ボロンなどをドーピングすることによって、低抵抗化を計ってもよい。
【0027】
これらの中で標準的な条件を挙げれば、マイクロ波プラズマCVDで、メタンガスと水素ガスを用い、メタン/水素ガス流量比を5%、圧力を100Torr、基板温度780℃で、基板に負のバイアス電圧を印加しながら成膜を行う。膜厚は、成膜条件や時間を変えることによって、任意に調整することができるが、0.05mm〜1mm程度の範囲が適当である。
【0028】
CVDにより作製された電子放出体の微細構造は、一例として表面をAFMで拡大観察した図4に示すように、ダイヤモンド結晶粒子23と当該結晶粒子間に導電性のsp2結合を有するグラファイト成分24が混在してなる複合構造を有している。ここでグラファイト成分というのは、結晶性のものだけでなく、広くsp2結合を有し、導電性を示す非ダイヤモンド結晶成分をいう。さらに、ダイヤモンド結晶粒子内にも微細な導電性領域25を分布させている。これは、例えば、CVD時のメタン濃度を高したり、成長時にバイアス電圧を印加して核成長を促進する等の手段によって実現することができる。
【0029】
このようにダイヤモンド結晶領域23とグラファイトあるいは導電性領域24、25が近接して分布しており、全体としてチャージアップしにくく、且つ電子放出しやすい特性を保持している。
【0030】
以上のようにして得た成膜基板を外囲器管内に納めるのに適した寸法に切断し、リード端子にカシメ・ロウ付け・合金接合・ネジ止めなど周知の方法で固定して電極とする。
【0031】
図10は本発明の第3実施形態を示すものである。ダイヤモンド相と導電性の非晶質炭素相の混在相である電子放出体40は低抵抗化されており、自己保持可能な機械的強度をもつので、図示のように、冷陰極の大部分を電子放出体40で形成し、放出体の一部を支持体41で支持することにより冷陰極とすることができる。したがって小型化された放電灯の小電極に用いても電極の損耗に耐え、灯の長寿命化に有利である。
【0032】
以上実施の形態で説明したように、本発明によれば、まず、冷陰極放電灯の課題であった発光効率の向上を図ることができる。なぜならば、ダイヤモンドは、前述のようにそのバンド構造から高い2次電子放出効率を有する。特に、イオン衝撃によるγ作用によるだけでなく、高品質半導体ダイヤモンドに特有の深紫外線による電子とホールの直接励起を当該バンドギャップ以上の高エネルギー励起波長を有するガス種を混合封入することによって促し、放出の高効率化を図ることができる。
【0033】
また、ダイヤモンドだけでは、高抵抗であるため、たとえ表面近傍での電子放出のための電界は小さくてすんでも、内部に大きな電位が生じてしまい、あるいは絶縁性の高さによって、全体がチャージアップして陰極としての電位がかからなくなってしまうなどの問題が生じるが、これを同じ炭素である導電性のグラファイト系マトリックスで補い、低抵抗で帯電しない電極を実現している。また導電性炭素中に金属粒を混入させることもでき、さらに金属粒で代替することもできる。
【0034】
さらに、電極材料として、炭素系は、前述のように耐スパッタ性が高く、長寿命化を実現できる。これは、単にスパッタされにくいだけでなく、スパッタされたものも水銀とアマルガムを作ることがないことから、積極的な水銀の消耗を起こさないという特徴がある。加えて、炭素系は、地球環境にやさしく、使用後はそのまま焼却してしまうことができるという利点をもつ。
【0035】
さらに本発明の冷陰極はプラズマディスプレイ(PDP)などのガス放電を利用し冷陰極をもつディスプレイに適用できることは言うまでもない。冷陰極は第2実施形態の構造、製法を用いて平板基板上に多画素に対して共通の電子放出体を形成すればよい。この場合、放電ガスにXeなどの光波長200nm以下に主要発光スペクトルをもつガスを含めることにより、2次電子放出の良好な陰極として作用する。
【0036】
【発明の効果】
本発明によって、従来の冷陰極放電灯などの放電装置に比べて高効率、長寿命かつ環境にやさしい放電装置例えば放電灯を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の断面図。
【図2】 第1実施形態の要部拡大図。
【図3】 本発明に係る冷陰極の一部を模式的に拡大して説明する断面図。
【図4】 本発明に係る冷陰極の表面をAFMで観察した平面図。
【図5】 γ作用による2次電子放出を説明する概略図。
【図6】 電子放出のエネルギーバンドモデル図。
【図7】 光作用による2次電子放出を説明する概略図。
【図8】 第2実施形態の断面図。
【図9】 第2実施形態の要部拡大図。
【図10】 第3実施形態の要部拡大図。
【符号の説明】
10:外囲器
12、13:リード線
15、16:陰極支持体
17、18:電子放出体
19、20:冷陰極
23:ダイヤモンド相
24:グラファイト相

Claims (3)

  1. 放電用ガスが封入された外囲器と、この外囲器内に配置された冷陰極とを具備する冷陰極放電装置において、前記冷陰極は支持体とこの支持体に支持され電子を放出する電子放出体とを有し、前記電子放出体はダイヤモンドおよび導電性炭素の混在相から構成され、前記ダイヤモンドは粒状体でなり、前記電子放出体の前記支持体に固着された固着部から前記電子放出体の表面にかけて前記粒状体の界面に前記導電性炭素が形成され、前記粒状体内には導電性領域が分布されていることを特徴とする冷陰極放電装置。
  2. 前記放電用ガスは200nm以下の主要発光ピークを有する元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電装置。
  3. 前記放電用ガスはXeを含むことを特徴とする請求項に記載の冷陰極放電装置。
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