JP2007099601A - ナノカーボン材料の積層基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダイヤモンド膜3上にナノカーボン材料を合成することによって、ダイヤモンド膜3とナノカーボン材料の結合部分の炭素が、ナノカーボン材料のsp2混成軌道とダイヤモンド膜のsp3混成軌道とが混合した混成軌道を形成し、ナノカーボン材料とダイヤモンド膜とが強固に結合する。ナノカーボン材料のダングリングボンドとダイヤモンド膜のダングリングボンドとが共有結合を形成することによっても強固に結合する。
【選択図】図1
Description
ところで、上記のようにナノカーボン材料を適用する場合、ガラス基板やシリコン基板等の実用基板上にナノカーボン材料を強固に固着することが必要となる。
また、基板に強固に固着したナノカーボン材料の入手が現状では困難であるため、実用化研究が遅滞しているという課題がある。
さらに、本発明は、様々な技術分野の実用化研究に共通に使用できる、ナノカーボン材料が強固に固着したナノカーボン材料積層基板及びその製造方法を提供し、もって、ナノカーボン材料の実用化研究の促進をはかることを目的としている。
本発明の基板にナノカーボン材料を積層すれば、以下のように作用する。すなわち、ナノカーボン材料の炭素は主にsp2混成軌道によって互いに結合しており、一方、ダイヤモンド膜の炭素はsp3混成軌道によって互いに結合している。sp2混成軌道とsp3混成軌道とは互いに類似の混成軌道であるため、ダイヤモンド膜上にナノカーボン材料を合成すれば、ナノカーボン材料とダイヤモンド膜の結合部分の炭素間に、ナノカーボン材料のsp2混成軌道とダイヤモンド膜のsp3混成軌道とが混合した混成軌道が形成され、ナノカーボン材料とダイヤモンド膜とが強固に結合する。また、ナノカーボン材料のダングリングボンドとダイヤモンド膜のダングリングボンドとが共有結合を形成することによっても、ナノカーボン材料とダイヤモンド膜とが強固に結合する。このようにナノカーボン材料とダイヤモンド膜との間に共有結合性の強固な化学結合が形成されるため、ナノカーボン材料が容易に剥離しない基板を得ることができる。
この方法によれば、基体面に強固に結合し、且つ、基体面に垂直に配向したナノカーボン材料を合成できるナノカーボン材料積層用基板を提供することができる。基体として、ガラス基板、半導体基板、酸化物基板或いは金属基板等の低コストの基板を使用でき、さらに、低コストなダイヤモンド膜製造方法である、水素及び炭化水素ガスを用いた化学気相成長法でダイヤモンド膜を積層するので、極めて低コスト、大面積のナノカーボン材料積層用基板を提供できる。
また、ダイヤモンド膜は、多結晶ダイヤモンド膜、ナノ結晶ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜又は単結晶ダイヤモンド膜であれば好ましく、炭化水素を用いた化学気相合成法の合成条件を選択することによって、上記いずれのダイヤモンド膜も合成することができる。
このナノカーボン材料積層基板によれば、基板からナノカーボン材料が剥がれ落ちることがないので、各種の実用化研究に供することができ、また、技術分野によらずに共通に使用できるので、低コストで入手でき、もって、実用化研究を促進できる。
この方法によれば、電子放出素子等の電子供給デバイスに最適なナノカーボン積層基板を提供することができる。
初めに、本発明のナノカーボン材料積層用の基板について説明する。
図1は、本発明のナノカーボン材料積層用基板の構成を示す図である。本発明のナノカーボン材料積層用基板1は、基体2と基体2の表面上に積層したダイヤモンド膜3とからなる。
基体2は、どのような材料からなる基体でも良く、例えば、ガラス基板、半導体基板、酸化物基板或いは金属基板等が使用できる。ダイヤモンド膜2は、多結晶ダイヤモンド膜、ナノ結晶ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜又は単結晶ダイヤモンド膜であればよい。
本発明の方法は、基体2上に、原料ガスとして水素及び炭化水素ガスを用いたCVD法又はプラズマCVD法によりダイヤモンド膜3を合成する。プラズマCVD法はマイクロ波プラズマCVD法であっても良く、また、RFプラズマCVD法であってもよい。
また、CVD合成時の基板温度、水素ガス圧、炭化水素ガス圧、また、プラズマCVDの場合には、プラズマパワーを選択することによって、多結晶ダイヤモンド膜、ナノ結晶ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜又は単結晶ダイヤモンド膜を合成することができる(非特許文献2参照)。
図2は本発明のナノカーボン材料積層基板の構成を示すもので、(a)はナノカーボン材料が無配向に積層された本発明のナノカーボン材料積層基板の構成を、(b)は基板表面に対して垂直に配向したナノカーボン材料が積層された本発明のナノカーボン材料積層基板の構成を示す図である。
図2(a)に示すように、本発明のナノカーボン材料積層基板4は、基体2と、基体2の表面上に積層したダイヤモンド膜3と、ダイヤモンド膜3上に積層した無配向のナノカーボン材料5とからなる。
無配向のナノカーボン材料5を積層するには、原料ガスとして水素及び炭化水素ガスを用いたCVD法又はプラズマCVD法により合成する。この製造方法は、上記ダイヤモンド膜の積層方法と装置及び原料ガスが同じであるが、基板温度、水素ガス圧、炭化水素ガス圧、また、プラズマCVDの場合には、プラズマパワーが異なり、これらの条件を適切に選択することによって、無配向のナノカーボン材料を積層することができる。
この方法によれば、ダイヤモンド膜3上にナノカーボン材料5が合成される際に、ダイヤモンド膜3とナノカーボン材料5の結合部分の炭素間で、ナノカーボン材料のsp2混成軌道とダイヤモンド膜のsp3混成軌道とが混合した混成軌道が形成され、ナノカーボン材料5とダイヤモンド膜3とが強固に結合し、また、ナノカーボン材料5のダングリングボンドとダイヤモンド膜3のダングリングボンドとが共有結合を形成することによっても、強固に結合する。
配向ナノカーボン材料7を積層するには、ダイヤモンド膜3上にNi、Fe、Co等の触媒作用を有する遷移金属薄膜を堆積し、遷移金属薄膜上に、CVD法又はプラズマCVD法によりナノカーボン材料を合成することによって得られる。または、遷移金属薄膜を堆積した基板を有機液体中で加熱する固液界面接触分解法によっても、基板表面に垂直に高密度に配向したナノカーボン材料7を合成することができる(特許文献2参照)。
この方法によれば、遷移金属薄膜から生成した遷移金属微粒子を触媒核として、ダイヤモンド膜3上にナノカーボン材料7が基板面に垂直に合成される際に、ダイヤモンド膜3とナノカーボン材料5の結合部分の炭素間で、ナノカーボン材料のsp2混成軌道とダイヤモンド膜のsp3混成軌道とが混合した混成軌道が形成され、ナノカーボン材料とダイヤモンド膜とが強固に結合し、また、ナノカーボン材料7のダングリングボンドとダイヤモンド膜3のダングリングボンドとが共有結合を形成することによっても、強固に結合する。
この実施例は、本発明のナノカーボン材料積層基板が、従来のナノカーボン材料積層基板と較べて、ナノカーボン材料が基板から剥離しにくいことを実証する実施例である。
基体に導電性シリコン基板を用い、シリコン基板上に多結晶ダイヤモンド膜を積層し、多結晶ダイヤモンド膜上にFe金属薄膜を堆積し、Fe金属薄膜上に固液界面接触分解法により、基板表面に垂直に配向したカーボンナノチューブを合成することにより、シリコン電子放出素子を作製した。また、シリコン基板上にダイヤモンド膜を積層しないことのみ異なる従来型の電子放出素子を作製し、比較試料とした。
(1)まず、厚み1mmのシリコン基板(比抵抗0.002Ωcm)上に、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、多結晶ダイヤモンド膜を成膜した。マイクロ波プラズマCVDの条件は以下の通りである。
原料ガス:メタン(25sccm)、水素(475sccm)
基板温度:820℃
反応圧力:13300Pascal
マイクロ波パワー:2kW
膜厚:1μm
原料ガス:水素(500sccm)
基板温度:820℃
反応圧力:10640Pascal
マイクロ波パワー:2.5kW
時間:5分
水素ガス:475sccm
基板温度:850℃
反応圧力:13300Pascal
マイクロ波パワー:2kW
時間:20分
図4は、固液界面接触分解法に使用した合成装置の構成を示す図である。この合成装置は、液体槽21の外側に液体槽21を冷却するための水冷手段22と、基板23を保持し、かつ、基板23に電流を流すための電極24を有する基板ホルダー25と、液体槽21から蒸発する有機液体蒸気を冷却凝縮して液体槽21に戻す水冷パイプ26からなる凝縮手段27と、基板ホルダー25と凝縮手段27とN2 ガスを導入するバルブ28とを保持する蓋29を有し、液体槽21と蓋29で有機液体30を密閉して保持する構成である。この装置の基板ホルダー25に、上記ダイヤモンド膜を介してFe金属薄膜を積層したシリコン基板と、シリコン基板に直接Fe金属薄膜を積層したシリコン基板をそれぞれ装着し、基板ホルダー25を介してこれらのシリコン基板に電流を流して加熱し、カーボンナノチューブを合成した。
固液界面接触分解法による合成条件は、以下の通りである。
原料有機液体:メタノール
基板温度:700〜1000℃
合成時間:0.5時間
カーボンナノチューブの長さ:約3μm
従って、電子放出素子、電気二重層キャパシタ、あるいは、燃料電池の陰極材料といった技術分野に限らず、さらに広範な技術分野に低コストで利用することができ、極めて有用である。
2 基体
3 ダイヤモンド膜
4 ナノカーボン材料が無配向に積層されたナノカーボン材料積層基板
5 ナノカーボン材料
6 基板表面に対して垂直に配向したナノカーボン材料が積層されたナノカーボン材料積層基板
7 ナノカーボン材料
10 電子放出素子
11 陽極
12 カーボンナノチューブ
13 カーボンナノチューブの先端
14 シリコン基板上に直接カーボンナノチューブを合成した従来型の電子放出素子
21 液体槽
22 水冷手段
23 基板
24 電極
25 基板ホルダー
26 水冷パイプ
27 凝縮手段
28 N2 ガス導入バルブ
29 蓋
30 有機液体
Claims (15)
- 基体と、この基体上に積層したダイヤモンド膜とからなることを特徴とする、ナノカーボン材料積層用基板。
- 基体と、該基体上に積層したダイヤモンド膜と、該ダイヤモンド膜上に積層した遷移金属薄膜とからからなることを特徴とする、ナノカーボン材料積層用基板。
- 前記基体は、ガラス基板、半導体基板、酸化物基板又は金属基板であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノカーボン材料用基板。
- 前記ダイヤモンド膜は、多結晶ダイヤモンド膜、ナノ結晶ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜又は単結晶ダイヤモンド膜であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のナノカーボン材料積層用基板。
- 前記ナノカーボン材料は、径が1μmよりも一桁以上小さい繊維状のカーボンであることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のナノカーボン材料積層用基板。
- 前記径が1μmよりも一桁以上小さい繊維状のカーボンは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン又はカーボンナノフィラメントであることを特徴とする、請求項5に記載のナノカーボン材料積層用基板。
- 基体上に、原料ガスとして水素及び炭化水素ガスを用いた、化学気相成長法又はプラズマ化学気相成長法により、ダイヤモンド薄膜を合成し、このダイヤモンド薄膜上に遷移金属薄膜を堆積することを特徴とする、ナノカーボン材料積層用基板の製造方法。
- 前記ダイヤモンド膜は、多結晶ダイヤモンド膜、ナノ結晶ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜又は単結晶ダイヤモンド膜であることを特徴とする、請求項7に記載のナノカーボン材料積層用基板の製造方法。
- 基体と、この基体上に積層したダイヤモンド膜と、このダイヤモンド膜上に積層したナノカーボン材料とからなることを特徴とする、ナノカーボン材料積層基板。
- 前記ダイヤモンド膜上に積層したナノカーボン材料は、前記基体表面に垂直に配向していることを特徴とする、請求項9に記載のナノカーボン材料積層基板。
- 前記基体は、ガラス基板、半導体基板、酸化物基板又は金属基板であることを特徴とする、請求項9又は10に記載のナノカーボン材料積層基板。
- 前記ダイヤモンド膜は、多結晶ダイヤモンド膜、ナノ結晶ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状カーボン膜又は単結晶ダイヤモンド膜であることを特徴とする、請求項9〜10の何れかに記載のナノカーボン材料積層基板。
- 前記ナノカーボン材料は、径が1μmよりも一桁以上小さい繊維状のカーボンであることを特徴とする、請求項9〜12の何れかに記載のナノカーボン材料積層基板。
- 前記径が1μmよりも一桁以上小さい繊維状のカーボンは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン又はカーボンナノフィラメントであることを特徴とする、請求項13に記載のナノカーボン材料積層基板。
- 基体上に、原料ガスとして水素及び炭化水素ガスを用いた、化学気相成長法又はプラズマ化学気相成長法によりダイヤモンド膜を合成する工程と、このダイヤモンド膜上に触媒となる遷移金属を積層する工程と、原料ガスとして水素及び炭化水素ガスを用いた、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法又は有機液体中の固液界面接触分解法により、上記遷移金属上にナノカーボン材料を合成する工程とを少なくとも含み、
基体表面に垂直に配向したナノカーボン材料が積層された基板を製造することを特徴とする、ナノカーボン材料積層基板の製造方法。
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