JP2013075356A - 金属酸化物を含むヘテロ接合を有する構造体 - Google Patents

金属酸化物を含むヘテロ接合を有する構造体 Download PDF

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Abstract


【課題】
下地の化学反応性や結晶性や原子レベルに薄い炭素固体のような薄さに制限されず、高い結晶性を持ち、所望の方向に結晶に配向でき、界面に特性を阻害する反応層ができず、歪、転位、欠陥や微細加工による損傷を回避して、物質本来の高特性を引き出せる安定なヘテロ構造の構成と、その製法を得る。これにより、高機能を持つ、結晶性金属酸化物を用いるナノスケールヘテロ構造を安価に得る。
【解決手段】
金属酸化物と共有結合性物質を、既に結晶格子を組んでいる状態で、原子レベルで接近させてヘテロ接合を形成する。特に、活性酸素照射で清浄化した該金属酸化物の表面と、該共有結合性物質の清浄化表面を接近させる。これにより、界面の一部の原子同士のみの共有結合、特に酸素と共有結合性物質中の元素の共有結合に担われるヘテロ接合ができ、上記の課題を達成する。
【選択図】図1a

Description

本発明は、電子素子及び半導体等の電子材料の分野において、主に、物質上の所望の位置に形成される金属酸化物を含む異種接合(ヘテロ接合)、特に、金属酸化物と共有結合性物質からなる異種接合を含む構造体に関する。
〔ヘテロ接合〕
大規模集積型(LSI)電子素子は、基板上に形成された金属と絶縁体の積層や絶縁体と半導体の積層等の、異なる物質同士を接合させた接合(ヘテロ接合)を微細加工した微小な構造体が多用される。
このようなヘテロ接合は、主に、スパッター法や電子ビーム蒸着法等の物理蒸着法や化学蒸着法(CVD)等の蒸着法、液相成長法等の液相成長法、メッキ法等の気相または液相からの原子を堆積する薄膜形成法で作製されている。
〔金属酸化物〕
特に、電子素子の多くの基本構造を形成する半導体は、シリコンやゲルマニウム、ガリウム砒素等の共有結合性物質が主体である。近年、半導体に特殊な機能を持つ結晶性の金属酸化物を組み入れることで、大規模集積型の電子素子の高機能化や多機能化が望まれている。このため、特許文献1の例のように、結晶性金属酸化物と半導体からなるヘテロ接合の形成が試みられている。
例えば、結晶性の金属酸化物の代表例である強誘電体は、自発分極と呼ばれる外部電場で反転可能な分極を有し、自発分極を用いる集積回路型の不揮発記憶素子が実用化されている。また、焦電性や圧電性や誘電性を合わせもち、この特性が高いため、焦電材料、圧電材料、誘電材料(キャパシタ材料)として広く用いられている。
これらを応用するヘテロ接合の例には、電極薄膜と強誘電体薄膜の積層接合、半導体と強誘電体薄膜の積層接合等がある。また、異種物質とは、化学式や結晶構造の異なる物質で、その例は、チタン酸鉛(PbTiO)とチタン、酸化チタンとシリコン等である。以下では、この例示のようなヘテロ接合を含む構造体を、ヘテロ構造体またはヘテロ構造と呼ぶ。
強誘電体金属酸化物は、結晶性金属酸化物であり、その例は、PbTiO、PZTと略称されるPb(Ti,Zr)O、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)等である。その結晶構造は、ぺロブスカイト型、イルメナイト型やパイクロア型結晶構造等である。
このような結晶構造を持つ結晶性金属酸化物には、光触媒活性、磁性を示す物もあり、電子産業や化学工業、自動車の排気ガス浄化やエンジンの発火素子等に広く用いられている。しかし、強誘電体等の結晶性金属酸化物の特性は、結晶構造に極めて敏感なので、そのヘテロ構造には高い結晶性や結晶配向の制御が必要である。従来、このような結晶構造の積層には、薄膜形成法で、作製時に高温と結晶性下地を用いることが行われている(以下、下地は基板または基板上の堆積層を指す。また、本発明の基板とは、板状の物質、例えば、板状のシリコン単結晶や板状ガラス等を指す)。
〔微細加工〕
大規模集積型電子素子の作製では、基板の“所望の位置”に、所望の構造体を“選択的”に形成する必要がある。この構造形成法は、従来、レジストと削り出し(エッチング)やリフトオフを組み合わせる方法が一般的である。エッチング法には、硝酸や塩酸などの液体状の酸を用いるウェットエッチングが知られているが、ナノスケールの構造体を形成することは極めて困難である。
また、イオンビームやプラズマなどの高い運動エネルギーを持つ原子やイオンを利用する物理的エッチングが知られている。しかし、この方法は、出願者らの特許文献2や非特許文献2に示されているよう、金属酸化物のエッチング速度が遅く、レジストのエッチング速度が高いためにレジストを厚くせざるを得ず、微小な構造体は形成し難い。
その他の方法には、反応性プラズマエッチングがあり、特にシリコン半導体に対して有効である。シリコンに有効な理由は、このプラズマの成分とシリコンが反応してできる化合物の沸点が低いため、気体として飛散するためである。このような特別な反応性ガスを金属酸化物に対して見つけるのは一般に困難である。レジストを用いない方法には、収束イオンビーム(FIB)を用いる直接的なエッチング法がありナノスケールの構造を削り出せる。しかし、上述のイオンビームエッチングと同様、金属酸化物のエッチング速度が遅いため生産性が低く、運動エネルギーを用いる物理的なエッチングのため選択性が低いため加熱等による損傷を与えやすい。
従来義技術では、一般に、微小な程作製が困難と考えられ、集積度を高くして特性向上や多機能化をするには、非特許文献1に記載されているよう、材料開発や薄膜形成法の改良と、ナノスケールのへテロ接合からなる構造体(ヘテロ構造体)の形成法の改良が必要である(ナノスケールとは10億分の1メーター(nm)を基本とする大きさ、典型的には、1nm〜900nm程度の大きさを指す)。
また、従来技術では、エッチングされた物質が利用できずに廃棄される。
米国特許5418389号 特開平7−94493 特開平9―153462号広報 特開2009―179534号広報 特開2003―163082号広報
岡本、表面技術 56、863(2005) 渡部ら、Applied Surface Science 20 7,287(2003) 渡部ら、Japanese Journal of Applied Physics 33, 5182(1994) Zangwill、"Physics at Surface"ISBN0−521−34752−1(Cambridge Univ Press)(1988)293頁〜 295頁 塚田、"仕事関数"ISBN4―320−03204−7(共立出版)(1983)88頁89頁 表5〜2 Dangら、Japanese Journal of Applied Physics 48,09KC02(2009) Dangら、CrystEngComm13,3878(2011) 加藤ら、ISAF ECAPD2010(19th International Symposium on the Application of Ferroelectrics)講演予稿集 58頁G5(2010 8月9日〜12日、Eidinburgh, UK) 内橋ら,Physical Review B56,9834(1997) Ternes al.,Science 319,1066(2008)
上述のように、従来は、電子素子に用いられる微小な構造体は、蒸着法や液相成長法で得た薄膜を微細加工して得られている。この結晶性酸化物の薄膜を蒸着法や液相成長法で得るには、高温度または高いエネルギーの蒸着粒子を用いる。このため、薄膜形成中に半導体等の共有結合性物質との界面で、構成元素の相互拡散が起こり、両物質の結晶性が劣化したり欠陥や不純物が混入したり、反応層ができる(反応層とは、相互拡散でヘテロ界面を構成する双方の物質が反応し、両者の何れとも異なる組成や結晶性を持つ層)。その結果、ヘテロ接合の特性が著しく制限されたり、劣化する問題が起こる。
特に、金属酸化物のヘテロ構造では酸素の反応性が高いため、酸素が拡散したり反応層を形成することによる様々な問題がある。この問題は、結晶性金属酸化物のヘテロ構造では、その形成に高温を使うため深刻であり、この反応層を回避するため、高価で資源的に不利な貴金属を用いている。
また、従来技術の蒸着や液相成長法で、ヘテロ接合部分の薄膜の結晶軸を揃えるには、“エピタキシャル成長”と呼ばれる下地の原子配列に揃って薄膜の原子が配列する方法を用いる。しかし、エピタキシャル成長では、下地層が該薄膜の結晶格子と適合する必要があり、該堆積層が下地の結晶構造や向きに制限され、下地として選べるものが限定されたり、高価になる問題がある。
さらに、このような結晶性の薄膜形成では、一般に応力歪が生じて、非特許文献3に例示されるよう、本来の結晶構造や格子定数と異なるように変形する。この歪は、特に、エピタキシャル成長で結晶方位が揃った単結晶的な薄膜を作製する場合に著しい。さらに、ヘテロ接合部分の気体元素等が欠損して化学両論比の組成からずれた層が形成されるという問題がある。
従来技術では、このようにして得たヘテロ接合を微細加工して、所望の位置に、ナノスケール等の微小なヘテロ構造を形成する。ここで、結晶性金属酸化物が結晶構造や酸素欠陥に敏感であるため、エッチングによる微細加工での特性劣化が問題になる。この問題は、形成しようとする構造が小さくなる程重大になり、ナノスケールの構造では深刻である。一方、前述のリフトオフ法による微細加工ではこの問題は軽減されるが、ナノスケール等の微小な構造を得難いという問題がある。
これらの問題は、結晶性金属酸化物の構造体の形成に用いる電極や半導体の微細加工でも重要である。特に、強誘電体のように、結晶性金属酸化物が複数の金属元素から構成される場合(結晶性複合金属酸化物)には、エッチング加工時の劣化が激しい。また、結晶性金属酸化物が強誘電体等で、微細加工を行うと、電極周辺の該金属酸化物が損傷し絶縁性が低下し、リーク電流が生じることも問題である。
さらに、一般的なナノスケールのヘテロ構造では、堆積した薄膜の一部のみ残すように他を除去するが、この除去された物質は無駄になるため資源問題と経済性から好ましくなく、さらに、重金属等の廃棄物は環境負荷が高く、問題である。また、薄膜の堆積や除去の際に、環境負荷が高い危険なガスを用いるため、環境問題を起こすという難点もある。
以上のエッチングによる微細加工の問題は、最初に大面積に一様な堆積物を形成することによる。
上述の相互拡散や反応層の形成の問題は、電子産業で重要な半導体であるシリコンやダイヤモンドやゲルマニウム等の共有結合性物質と金属酸化物、特に、結晶性金属酸化物から成るヘテロ接合において深刻である。これは、酸素元素が活性が高く、共有結合性物質が酸素と反応し易すいためである。特に、従来のヘテロ構造形成で用いる薄膜作成時に、活性の高い原子状または分子状の元素を高温度で堆積するため、金属酸化物の酸素が共有結合性物質に拡散して反応層を形成する等の問題が起こる。
〔共有結合的な結合、共有結合性物質〕
共有結合とは、結合する双方の原子が互いの電子を共有することによる化学結合である。
以下では、共有結合の寄与が重要である化学結合を“共有結合的な結合”、この結合により構成される物質をと共有結合性物質と呼ぶ。
このため、共有結合性物質と酸素の結合も、共有結合的な結合と呼ぶ。
尚、金属内即ち金属元素同士の結合は、共有結合の一種とも看做せるが、特別に金属結合と呼ばれることが多い。
〔共有結合と金属酸化物〕
金属酸化物も、共有結合が重要なので、共有結合性物質と呼ぶことも可能である。
しかし、本発明では酸素の役割が重要なので、少なくとも一種類の金属酸化物を定義する必要がある。このため、共有結合性物質を広義に定義する場合を除いて、以下、金属酸化物は、金属酸化物と呼ぶ。
また、不純物等の微量の酸素以外には酸素を構成元素として含まない共有結合性物質を、非酸化物共有結合性物質と呼ぶことにする。
尚、典型的な共有結合性の物質であるシリコンやゲルマニウムに比べれば、多くの金属酸化物は共有結合の寄与が小さい。このため、典型的な共有結合性の物質の多くは、金属酸化物ではない。
本発明は、従来上記諸問題の原因と考えられた金属酸化物の酸素の強い反応性結合性を積極的に活用する。
また、従来はヘテロ構造が微小な程作製困難と考えられているが、この本発明の構造は微小な程作製が容易であり、金属酸化物の微細加工を回避できる。
〔本発明の原理〕
即ち、本発明はこれらのヘテロ接合積層及びその微細加工の問題を、次ぎのように解決する。
従来技術の気相または液相からの原子の積層に代えて、“結晶格子を形成した粒子”の清浄表面を、“下地の所望の特定位置”の清浄表面に、原子の大きさ程度の距離まで接近させる(以下、“原子レベルで接近”と書く)。これにより、目的の金属酸化物を含むヘテロ接合またはその一部を得る。このため、従来技術の金属酸化物エッチングは、行なくてもよい。
これらにより、“金属酸化物のヘテロ接合形成の問題”と“微細加工の問題”を同時に解決する。
この原理は、実施例の実験に示す“共有結合性物質の清浄化表面と、金属酸化物を酸素で清浄化した表面を接近させれば、両者が安定な共有結合的結合を形成する”という発見である。
この機構は、このように清浄化した両表面が原子レベルで接近すれば、金属酸化物表面の酸素原子と共有結合性物質表面の原子の双方から、トンネル効果で電子が浸み出し結合を形成することと考えられる。
このようにして、金属酸化物から構成されるヘテロ接合の結合は、主に、酸素原子により担われる。
この方法は、室温付近の金属酸化物から酸素が離脱し難い温度で、相互に固体的な結晶を組んだ状態で接近させるため、従来技術における酸素等の拡散の問題がない。
また、ヘテロ構造に比べると、微粒子の形成は、一般に容易であり、近年飛躍的に進歩しているので、微細なヘテロ構造が形成し易い(従来は、これを用いて安定なヘテロ構造を作る技術がなかった)。
さらに、シリコン等の半導体や金属の微細加工や構造体は、金属酸化物の微細加工や構造体に比べ、比較的容易に形成できるが、本発明では、これらを活用して、ヘテロ構造を形成できるので工業的に有利である。
尚、“原子レベルの接近”と“原子レベルの接触”は殆ど同じであるが、本発明の接近は、トンネル効果で電子が浸みだす距離への接近なので、原子同士が接触する距離(強い斥力を受ける距離)よりやや離れた距離も含む。
〔強酸化、表面の電子状態〕
本発明の作製法の概要を、申請者らの“共有結合性物質と金属酸化物を接近させて共有結合で接合する”原理実験で説明する。
まず金属酸化物の表面に活性酸素を照射して、該金属酸化物上の表面に活性酸素元素を照射して、酸素欠損を生じないようにしつつ清浄な表面を作る。以下、この処理を強酸化と省略して呼ぶ)。これにより、金属酸化物の電子軌道が表面に現れる状態を得る(この電子軌道は酸素原子のものが主体である)。
一方、共有結合性物質の表面から自然酸化膜等の不活性層と吸着物を除去して、該共有結合性物質の構成元素が表面に露出する状態にする(これを清浄化と呼ぶ)。これにより、共有結合性物質の表面に、不安定な電子である非結合手(共有結合に関与しない電子、ダングリングボンドとも呼ばれる)等の電子軌道が現れ、該表面が他の元素の電子と共有結合し易くなる。
尚、シリコン等多くの半導体では、表面の非結合手は互いに結合して安定化し表面の原子配列が内部と異なること(表面再構成)が知られている。
〔清浄〕
尚、物質の表面が清浄であるとは、該表面に該物質の構成元素以外の物質が存在せず、該物質本来の表面原子配列になっている状態を指し、好ましくは欠陥等も少ない。
実施例に詳述するよう、室温で、この両者を“原子レベルで接近するだけ”で、金属酸化物の表面原子(多くの場合酸素原子)との共有結合によりで両者が結合し、所望の位置に、該金属酸化物と該共有結合性物質のナノスケールのヘテロ構造ができる。このようして形成されたヘテロ構造は、重力や振動で剥がれず長期間安定である。
即ち、本発明のヘテロ構造は、金属酸化物と共有結合性物質を原子レベルで接近させ、表面原子層の電子を“糊”として形成されるものである。これにより、ヘテロ構造を構成する物質を損傷し、反応層の形成を従来にないレベルに回避でき、且つ、非常に小さなナノスケールの構造体が容易に形成できる。
〔反応層〕
本発明でも、ヘテロ接合界面では、接合面を形成する両物質の最表面原子同士が共有結合するが界面一原子層のみで、従来技術で起こる相互拡散はないため、反応層とは呼ばないことにする。
さらに、実施例に詳述するように、共有結合性物質の表面の化学結合性(化学的活性)を抑制することで(フッ化や窒化や酸化するか、または、フッ化化合物や炭化水素化合物の堆積等)、該共有結合性物質と該金属酸化物の引力を、調整または制御できるため、この接着を行う場所を選択することが容易になる。
上記発見により、従来行われてきたエッチングによる作製法と原理的に異なる“結晶格子を組んだ物質の原子レベルの接近によって共有結合を形成することで得られるヘテロ構造”という本発明に至った。即ち、“表面”が共有結合性元素で覆われている物質の表面を、金属酸化物の表面と接近させて、該物質と金属酸化物のヘテロ構造体を得る。
このような接近での共有結合形成では、表面第一層の原子層が共有結合性元素である物質は同様に用いてよいので、共有結合性物質として使用できる。尚、表面が共有結合性の物質は、共有結合性物質の表面から吸着物や酸化膜等の表面の不活性層を除去することによる清浄化や、共有結合性元素から成る層を表面の積層で得られる。
〔表面共有結合性物質〕
一般化すれば、本発明のヘテロ構造は、強酸化された金属酸化物の表面と“少なくとも表面が清浄化された共有結合性の物質”の表面が接近して、形成されるものと言える。
以下では、少なくとも、“ヘテロ接合面に与かる表面が清浄な共有結合性物質である物質”を、省略して“表面共有結合性物質”と呼ぶことにする。
また、強いて言えば、金属酸化物を、ヘテロ接合面に与かる表面が金属酸化物である物質を金属酸化物(表面金属酸化物)と看做すことも可能である。
〔ヘテロ構造の捉え方と表面共有結合性物質〕
表面と内部が異なる物質は、“該物質表面と該物質内部のヘテロ接合できた物質”と看做すことも可能である。この捉え方を使えば、本発明のヘテロ接合は、表面共有結合性物質や表面金属酸化物を用いず定義できる。
即ち、本発明のヘテロ接合は、“共有結合性物質の清浄表面と金属酸化物の強酸化清浄表面の原子間距離の接近によって形成される”と言ってもよい。この場合、これらの構成物質が表面と内部が異なる物質である場合は、夫々の物質内部にヘテロ接合が存在している物質によるヘテロ接合の形成と看做す(請求項はこの観点で記載した)。
〔特徴〕この原理のため、本発明のヘテロ構造は以下の(1)〜(8)のような特徴を持つ。
(1)下地の結晶性や結晶配向に制限されずに、結晶性の堆積層が得られる
(2)相互拡散や反応層の形成が殆どな以条件で、結晶性の堆積層が得られる
(3)堆積される元の物質とほぼ同じ組成比を持つヘテロ構造ができる
(4)下地材料の選択の自由度が高い
(5)ヘテロ接合界面界面の一部の原子同士の結合(空隙や抉れが自然に存在)
(6)歪を低減でき、歪による特性劣化を改善できる
(7)微細加工による損傷を回避できる
(8)環境負荷の低減と省資源化にも適する。
これらを以下に説明する。
前述のように、従来技術では、個々の原子がその下地の原子との結合として配列することで、下地の上に積層する層の原子配列が決まる。このため、下地が、非晶質(非結晶)や多結晶またはその格子定数が積層する物質の格子定数と不整合な単結晶上では、非晶質または結晶の軸の方向が揃っていない多結晶になる。
また、下地が堆積する物質と格子定数が整合する単結晶の場合(エピタキシャル成長)、その結晶軸方向により堆積層の結晶軸方向が限定される。
ヘテロ接合を形成する双方の物質の接合面内の格子定数と結晶方位が整合する条件は、次のようである。一方の格子長さをa,b,c、他方の格子長さをA,B,Cとして、整数の指数l,m,n,L,M,Nを選ぶ。この時、一辺la,mb,ncの平行四面体の接合面内の2辺の長さとその間の角度が、一辺LA,MB,NCの平行四面体の接合面内の2辺の長さとその間の角度と一致すること。さらに、このよう定義された接合面の平面図形同士が重なるように揃うことである(即ち、結晶軸方向の制限)。これらは、該双方の物質の表面の原子同士が、接合面内で原子の大きさ程度の周期で隣接し化学結合する条件ともいえる。
この条件からのずれは通常10%以内が必要で(典型的には5%以下)、且つ、その面内の指数が小さいことが必要である。さらに、高特性のヘテロ接合を得るには、接合面内1辺の長さの一致が1%程度以下でその面内の指数が2以下であることが望ましい。従来技術には、このような強い制限が存在する。
(1) これに対し、本発明のヘテロ構造は、既に結晶格子を組んだ物質を積層し、個々の原子と下地の原子との結合でなく、該物質の多数の原子と多数の下地の原子が一度に結合する(エピタキシャル成長でない:非エピタキシャル)。このため、実施例の実験で示されるように、上記の制限を受けずに、結晶性の物質を堆積できる。
このため、積層後のヘテロ構造でも、積層前と同様の結晶構造を保つため、積層される物質が結晶性であれば、下地の特性(非晶質、多結晶、単結晶の格子整合性の差)に制限されず、結晶性物質として積層される。例えば、積層される物質が単結晶なら、下地に関係なく、単結晶の層が堆積される。
さらに、この堆積される単結晶の結晶軸方向も下地の結晶軸に関係なく任意に選べる。例えば、同一下地上でも場所毎に、堆積層の結晶軸方位を任意に変えることも可能である。
(2) 本発明のヘテロ構造の次の特徴は、界面での相互拡散が殆どなく、その結果、界面の化学組成が、ほぼヘテロ構造前の状態に保たれる(組成比を重量、モル、原子数のいずれで表すかによらない)。
従来技術では、気相または液相のといったエネルギーの高い原子が堆積される。即ち、ヘテロ構造形成と、原子が高いエネルギーと活性を付与されて拡散して結晶成長するのは同時で同一の現象である。このため、界面での下地と堆積する層の原子の相互拡散やそれによる反応層形成が不可避である。
一方、本発明ではこのような状態は使わず、結晶を組んだ状態の物質を、室温等の酸素が離脱し難い温度で、そのまま下地に接近させるだけで得られるので、前記金属酸化物と前記共有結合性物質(厳密には少なくとも表面が共有結合性物質)の相互拡散やそれによる反応層の形成がない急峻な界面を持つ(後に高温処理工程を行う場合には、反応層が生じることはあるが、従来法よりは十分低い)。
尚、従来技術でも、極低温や室温の基板温度では、原子の拡散が抑制されるため、相互拡散や反応層の形成が殆どなくできる。しかし、非晶質の形成に限定され、特に、結晶性の金属酸化物はできない。
(3) 即ち、該界面において、該金属酸化物と該共有結合性物質が互いに接する原子層以外では、該金属酸化物、該共有結合性物質の夫々は、本来構成元素以外の元素を殆ど含まない。このため、積層される元の物質とほぼ同じ組成比を持つヘテロ構造が形成される。
このように拡散がないため、ヘテロ接合の形成する夫々の物質内に他方の物質はない。
厳密には、『ヘテロ接合を形成する共有結合性物と金属酸化物において、該共有結合性物質の構成元素でない該金属酸化物の構成元素は、ヘテロ接合界面に接する表面以外では、該共有結合性物質中に殆ど存在しない。また、該金属酸化物の構成元素でない該共有結合性物質の構成元素は、ヘテロ接合界面接する表面以外では、該金属酸化物中に殆ど存在しない』。
さらに、共有結合性物質が非酸化物(酸素を主な構成元素としない共有結合性物質)の場合には、且つ元の組成比が保たれる界面が形成されるという特徴を、原子配置で表現できる。
『共有結合性物質と金属酸化物から構成されるヘテロ接合の界面において、酸素原子は、少なくとも1つの該金属酸化物を構成する金属と化学結合し隣接し、該金属酸化物を構成する金属は、少なくもの1つの酸素原子と化学結合し隣接し、該共有結合性物質の構成元素は、少なくとも1つの共有結合性物質を構成する元素と化学結合し隣接する』と言える。
このように相互拡散や反応層を回避できることに加えて、従来技術では“気相または液相からの原子が堆積されるために、酸素などの気体元素や揮発性元素が化学両論比に比べて欠損するという問題”も解決できる。この結果、酸素欠陥等の欠陥の生成がない化学両論比に近い組成を得やすい。
この結果、本発明のヘテロ構造は、ヘテロ接合を形成する物質の界面の化学組成が、ほぼヘテロ構造前の状態に保たれるため、ヘテロ接合の両側の物質の化学組成は、夫々の物質の内部の組成またはいかなる処理も施されていないヘテロ接合面以外の表面の組成とほぼ同一である。後者は、夫々の物質の何も処理がされていない自由表面の組成とほぼ同一とも表現できる(ある物質の自由表面とは、その物質の表面に何もない表面、即ち、空気や真空と接している表面を指す)。
尚、ヘテロ構造を形成後に、自由表面になんらかの処理をした場合には、同一でなくなることがある。例えば、高速イオン照射、高温度での加熱、酸性液等の処理をした自由表面は、ヘテロ形成前の組成と異なることがある。その結果、このような自由表面の組成とヘテロ接合の界面の両側の物質と同一でなくなることがある。
(4) このような本発明の反応層を回避できるという特徴は、特に、非常に薄いヘテロ構造に重要である。例えば、炭素のように酸素と共有結合すると二酸化炭素や一酸化炭素となって飛散してしまう場合、例えば、炭素の一形態であるグラフェン等薄い炭素層も金属酸化物に共有結合させられる。また、相互拡散や反応層がない急峻な界面という特長は、金属酸化物の電極に安価な金属を用いるヘテロ構造ができるため経済性に優れる。
従来技術の、蒸着による薄膜形成で結晶性のヘテロ構造を形成するには、加熱等により飛来原子が下地上を十分に拡散するようにして、各原子が安定な配置になるようにする。このため、原子の大きさの欠陥等を除いて、全ての原子が下地の何れかの原子と結合する。この結果、界面に空隙のない構造になる。
(5) 一方、本発明のヘテロ構造は、夫々結晶格子を組んでいる異物質を接近させて得た構造体をそのまま用いる。このため、下地の界面の原子の一部と堆積層の界面の原子の一部が隣接する。
この結果、下地と堆積層の結合は、“下地の界面に存在する原子の一部と堆積層の界面に存在する原子の一部の共有結合”による。
界面の一部の原子同士の共有結合的結合であることは、実施例3,6の実験での結合力評価から証明される。さらに、特徴(1)も実施例3〜9の実験でも検証されている。界面の双方物質の原子が界面で強く共有結合的に結合して隣接しながら、この特徴(1)を持つには、化学結合論から、界面の一部の原子による結合でなければならない。
このような結合は、従来法で存在する格子欠陥や転位に加え、ヘテロ接合界面に、異物質同士が接近しない部分(原子スケールの空隙)や端の間隙(抉れ)が自然に存在するとも表現できる。この空隙や抉ぐれは、加工によって人工的に形成されたものではない。
本発明では、既に結晶を組んだ物質同士を接合するため、接合形成でその原子配列は大きく変われない、また、このために該物質同士の表面原子配列が完全に一致することはない。さらに、表面の原子は内部と異なり、上半面は結合がなく自由に原子が離脱できるので、多くの必然的な原子抜け(空隙)が存在し、加えて、表面特有の原子構造による原子の抜けも存在する。これらが、本発明のヘテロ接合界面に空隙や抉ぐれが存在する原因である。従って、これらの空隙や抉ぐれは、界面または表面に固有で、堆積物の内部のものとは種類や密度が異なる。
一方、従来技術では、下地に気相または液相のバラバラの状態の原子を原子または分子毎に順次堆積し、結晶状の堆積では基板加熱等で原子の拡散を促進するので、空隙や抉ぐれは、欠陥以外に自然にできない。
従来技術でも、極低温や室温の基板温度では、非晶質が堆積され空隙や抉ぐれを含むことがあるが、堆積内にも、同種のものは同程度の密度で存在する。従来技術のスパッター蒸着では、スパッターガスが堆積物中に埋め込まれ、後に排出されて、空隙や抉ぐれを含むことがあるが、この場合も、堆積物中にも同様ものものが存在する。
尚、全ての原子が界面で化学結合しないため電流等が流れにくい懸念がある。しかし、原子間距離程度の空隙はトンネル電流が流れ、静電遮蔽も十分なので、本発明で界面の反応層や組成ずれを解決できる利点が、この懸念より優る。
(6) さらに、この特徴により、本発明のヘテロ構造に、歪を低減できる特徴が加わる。原子レベルでみると、歪とは、結晶格子の対称性や格子定数の変化なので、本発明は、『結晶格子の対称性や格子定数を本来のままに保つ』。
この結果、金属酸化物、共有結合性物質夫々の部室のヘテロ接合界面近傍の原子配列と格子定数は、夫々の物質の内部のものとほぼ同じである。より厳密には、金属酸化物のヘテロ接合界面近傍の原子配列と格子定数が該金属酸化物のいずれかの未処理の自由表面近傍とほぼ同じ、または、共有結合性物質のヘテロ接合界面近傍の原子配列と格子定数が、該共有結合性物質のいずれかの未処理の自由表面近傍と、ほぼ同じになる。未処理とは、他の物質の積層、加熱、エッチングをしていないことを指す。
前述のように、従来技術では、1個1個の原子がその下地の原子との結合により配列する過程で、積層される物質の格子定数が物質固有の値からずれる。このため、ヘテロ構造を構成する堆積層に歪や転位や欠陥が生じる。さらに、高温での積層後の室温に戻す過程で、積層した堆積層と下地の熱膨張率の差によりヘテロ構造を構成する物質に歪が加わる。これらの歪や転位や欠陥で、特性が劣化する。例えば、強誘電体では、応力歪は、誘電率等の諸感受率の低下や分極の反転の阻害等の深刻な問題を引き起こす。
これに対し、本発明では、下地に原子レベルに表面同士を接近させるだけで、結晶を組んだ状態の物質をその形と格子定数を保った状態を得る。このため、金属酸化物と共有結合性物質の結合は、その界面に接する原子の一部の原子のみによって担われる。
これらの特徴のために、該金属酸化物と該共有結合物質の原子の結晶配列が、界面近傍でも、ヘテロ接合形成前とほぼ同じ状態を保ち、従来技術の比べて歪や転位や欠陥を著しく低減できる。
このヘテロ接合の歪を低減でける特徴をより引き出すには、斥力が殆どない条件で、ヘテロ接合の形成物質同士を接近させることが必要である。
〔ヘテロ接合の安定性に望まれる表面の幾何学形状の一致〕
しかし、双方の接合面の形状が異なる場合には、接近させるだけでは、多数の原子が原子レベルの接近ができないために界面の極く一部の原子のみヘテロ構造を形成する共有結合に寄与し、安定なヘテロ接合ができない。
双方の接合面の形状が異っても、少なくとも一方が変形する程度の外力で接触させれば、安定な接合が得られるが、双方の物質に歪が生じる。
発明の一部の実施例で、ヘテロ接合形成の際に押し付ける力を用いるのは、ヘテロ接合を形成する双方物質の表面の幾何学形状が、多数の原子が接近する形状になっていないため、表面を変形させて、該双方物質の表面の幾何学形状が原子の大きさ程度まで一致するようにするためである。これにより、より多くの原子を原子レベルで接近させる。
このような外力とそれによる歪を最小にし、且つ、剥離し難い安定に結合したヘテロ接合を得るには、ヘテロ接合に関与する多数の表面原子が相互に接近できるような幾何学形状が必要である。
即ち、ヘテロ接合に関与する双方の物質の表面の幾何学形状が、原子の大きさ程度に至るまで、ほぼ一致することが必要である。
この典型的な例は、接近時の双方のヘテロ接合面に向く表面が、原子の大きさ程度まで平坦な平面である。
他の例は、双方のヘテロ接合形成面の凹凸が原子の大きさまでほぼ一致して、接合面の原子の多くが原子スケールで接する幾何学形状を持つ場合である。
或いは、ヘテロ構造の接合部分を形成する一方の物質をヘテロ構造に比べて十分小さな粒子状にし、これらの粒子を多数組み合わせてヘテロ構造を形成することでも、実効的に、ヘテロ界面の異物質間の共有結合を増やせる。
本発明で、上記のように斥力を抑制して積層すれば、ヘテロ接合を形成する両側の物質共に、界面の結晶格子が、ヘテロ構造前に比べて殆ど歪まずそのままに保たれるため、ヘテロ接合の両側の物質の結晶格子の形状と格子定数は、夫々の物質のヘテロ接合面以外の、いかなる処理も施されていない表面のものとほぼ同一である。即ち、本発明のヘテロ界面は、夫々の物質の何も処理がされていない自由表面の結晶格子の形状や格子定数とほぼ同一である。
ヘテロ構造を形成後に、自由表面になんらかの処理をした場合には、格子定数が少し変わることがある。例えば、高速イオン照射、高温度での加熱、酸性液浸水等の処理をした自由表面の結晶格子の形状や格子定数は、ヘテロ形成前と異なることがある。
尚、従来技術でも、特定の温度範囲の歪を抑制することが可能な場合がある。
(7) また、本発明のヘテロ構造は、金属酸化物の微細加工を用いなくてもよいので、前述のように、従来技術での金属酸化物の微細加工で起こる損傷による特性劣化(特に、ナノスケールの微小なヘテロ構造の時に顕著)が、回避できる。
従来技術では、微小なヘテロ構造を、所望の位置に形成するには、ヘテロ構造を微細加工するが、その際の損傷が問題である。
一方、本発明では、堆積する物質の大きさを目的のヘテロ構造の大きさと同等または小さくできるので、微細加工をしなくてよい。この際、一度の接近(または接触)で堆積される堆積物の大きさが、連続で均一で結晶軸の揃った領域になる。
一般に、物質の表面は反応がなくても内部と異なるため(サイズ効果とも呼ばれる)、物質固有の特性を引き出すためには、この連続領域の大きさは各辺1〜2単位格子(典型的には0.3〜1ナノメーター)以上の大きさが必要である。このため、接近(または接触)で堆積される最低の大きさは各辺1単位格子以上(計4単位格子以上)である。
微細加工の点から既存の技術に対して優位性がでるのは、凡そ1ミクロン以下である。また、金属酸化物、特に、結晶性複合金属酸化物等の結晶性金属酸化物は、欠陥や歪による劣化が問題であるため、本発明のヘテロ構造が特に有用である。
(8) 本発明では、従来技術と異なり、堆積した薄膜を除去せずに、ナノスケールのヘテロ構造を形成できるため、省資源になる。また、微細加工をしなくてもよいので、ヘテロ構造から除去廃棄される物質がなく、毒性の高いガスの使用も減らせるため、環境への付加を低減できる。
〔表面の接近を行う温度〕
表面の接近を行う温度は、通常は、室温である。より範囲を規定すれば、構造体の構成部物質が分解したり劣化する温度以下、例えば、構造体中の金属酸化物からの酸素抜けが深刻にならない温度以下である。この温度は典型的には、約200℃であるため、200℃と室温の間で形成が可能である。室温より高い温度で接近を行うとヘテロ界面の結合がより強いものができることがある。
次に、本発明のヘテロ構造を実現するための工程の概念を説明する。
“表面共有結合性物質”は、その表面の共有結合原子が、金属酸化物表面の酸素等の表面原子と結合することで、該金属酸化物と接着する。従って、所望の位置でのみ、この両物質を接近(または接触)されるか、または、所望の場所のみ表面原子が結合しやすくした後に両物質を接近(または接触)させれば、該所望の場所にのみヘテロ構造が形成する。
ここで、所望の場所のみ表面原子が結合しやすくするには、前述のように、金属酸化物を強酸化するか、または、共有結合性物質を清浄化する(表面に共有結合性元素が現し且つその上の付着物を除去する)。
結合し難くするには、金属酸化物を強酸化しないか、表面共有結合性物質の表面が吸着物や不活性層で覆われた状態にする。
この強酸化による金属酸化物表面の共有結合的な結合性の増強と表面共有結合性物質の清浄化(吸着物と表面の不活性層の除去)は、不純物を排除した雰囲気が行うのが好ましい。また、該ヘテロ構造形成後に、加熱処理して結合を強化し安定化してもよい。
尚、前述のように、本発明のヘテロ構造体内の連続で均一な領域の大きさは、堆積される粒の大きさである。
本発明が適用できる表面共有結合性物質は、固体元素または固体化合物を形成する物質であって、以下に述べる要件を満たすものである。まず、本発明のヘテロ構造は、表面共有結合性物質の表面の原子からの電子と、金属酸化物表面の酸素からの電子による共有結合であるので、表面共有結合性物質の表面第一原子層は、酸素と共有結合しやすい原子である。
このため、本発明の表面共有結合性物質は、“少なくともその表面第一原子層が、主に共有結合性元素”からなることが必要である。
尚、この表面層は、表面共有結合性物質を構成する他の原子と安定な化学結合をしている必要がある。この例としては、少なくともその表面第一原子層が、主にシリコン等の半導体やチタン等の酸素と共有結合的に結合する金属であるものが例示できる。
酸素と結合し易い物質の目安には、仕事関数の低さがある。半導体の仕事関数は、不純物純濃度により異なるが、以下では、半導体の仕事関数は、伝導帯の底と真空準位の差と定義する。このように定義される半導体での仕事関数を得るには、非特許文献5の仕事関数値が真性半導体の値なので、この値からバンドギャップの値の半分を引く。
例えば、 シリコンは4.85 〜 0.55 = 4.30、
ダイヤモンドは5.0 〜 1.5 = 3.50である。
共有結合性物質(仕事関数が低く酸化されやすい)の具体例は、シリコン、ゲルマニウム、炭素結晶(ダイヤモンド、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラファイト等)の半導体元素である。また、ガリウム砒素、アルミニウム砒素等の三族と五族からなる化合物半導体、硫化亜鉛などの二族と六族からなる化合物半導体や絶縁体、特に、これらの表面の二族三族元素も含まれる。
金属では、チタン、ジルコニウム、鉄、マンガン、バナジウム等の酸化されやすく共有結合を持ちやすい遷移金属元素とこれら元素からなる合金化合物が例示できる。このように酸素と結合易い物質は、非特許文献5において仕事関数が5eV以下、好ましくは、4.5eV以下である。尚、仕事関数の値は実験により異なるが、本発明で用いる金属の仕事関数は、非特許文献5の値で定義されるとことする(半導体は上記の定義を用いる)。
尚、表面共有結合性物質の表面とは、表面第一層の原子層を指す。非特許文献4にあるよう、仕事関数は、ほぼ最表面第一層の原子により決まるので、表面に安定に存在する原子の仕事関数が低ければ、上記の好適な条件を満たす。
即ち、内部によらず、最表面の原子層の半導体元素または金属が、主に、仕事関数の低い共有結合性元素なら、表面共有結合性物質と看做す。例えば、表面にチタンを積層したり酸素を除去して、表面第一原子層が主にチタンで覆われた酸化チタンは、仕事関数が低い表面共有結合性物質とみなせる。同様に、表面が殆ど亜鉛原子で覆われた金属酸化物は、表面亜鉛物質と看做せ、本発明の仕事関数が低い表面共有結合性物質とみなせる。
また、一般に化合物では、ガリウム砒素のように、ガリウム原子が表面に並ぶ(111)A面と、砒素原子が表面に並ぶ(111)B面のように、表面を構成する元素が異なる面がある。この場合は、表面第一層が、主に、仕事関数が低い共有結合性元素から構成されている場合には(特に、この表面原子が非結合手(ダングリングボンド)を持つ場合)、該表面第一層の元素から構成される表面共有結合性物質と看做せる。
例えば、三五族や二六族の化合物半導体であって、最表面原子層が、主に周期律表の三族または二族の金属元素から構成されていれば、この該化合物半導体は、三族または二族の表面共有結合性物質とみなせ、酸素との反応性が高く安定なヘテロ構造が作製できる。例えば、ガリウム砒素、酸化ジルコニウム(ZrO),酸化マグネシウム(MgO),SiOで、表面第一層の原子がガリウムやシリコン、ジルコニウム、マグネシウムの場合、強酸化した金属酸化物と接着し安定なヘテロ構造を形成できる。
一方、金属酸化物内で酸素原子と金属原子が共有結合的に結合し、その表面第一原子層が、共有結合性の原子からなる面である場合も、表面共有結合性物質と看做すことも可能である。
このため、強酸化した金属酸化物と金属酸化物の間にも化学結合的引力を生じえるが、その力は、上記の好ましい例として列挙した表面共有結合性物質と強酸化した金属酸化物の間の力より弱い。結果として、後者のヘテロ構造より安定性が低く、好ましい例ではない。
本発明は、金属酸化物一般に用いられ、特に、構造敏感な結晶性金属酸化物の特性を引き出すのに有力である。典型的な結晶性金属酸化物の例は、ABO(A:Ca,Sr,Ba,Pb、Bi,Li,K, B:Ti,Zr,Nb,Ta,Fe等の遷移金属)で表されるぺロブスカイト結晶構造やイルメナイト結晶構造の強誘電体や誘電体等の結晶性複合金属酸化物である。
より具体的には、代表的強誘電体であるBaTiO(チタン酸バリウム)と混晶(Ba,Sr)TiO、Pb(Ti,Zr)O(PZT)等で、Pb(Zn1/3Nb2/3)Oなどリラクサー強誘電体も含まれる。また、YBaCu,Bi(Sr,Ca)Cu等の超伝導体が例示できる。
さらに、発明者らは、酸化物強誘電体の表面を強酸化すると、酸化物強誘電体から、より多くの電場を取り出せることを見出したので、本発明のヘテロ構造は、酸化物強誘電体に対してさらに利点がある。
尚、本発明に用いる金属酸化物の形状は、薄膜、単結晶、焼結体、粉体でもよい。本発明で用いる活性酸素は、先行特許3〜5のように、炭化水素やレジスト残余物の除去に用いられているが、目的と効果が異なる。即ち、本発明により初めて、活性酸素照射により、結合性の化学的引力(接着)が制御できることと接近させるだけでナノスケールのヘテロ構造が形成できることが発見された。
本発明に用いる表面共有結合性物質を得る方法を具体的に説明する。第一に、共有結合性物質の表面の酸化膜、窒化膜、酸化窒化膜等の表面の不活性層と吸着層の除去による方法がある。この手段には、超高真空中の瞬間加熱処理(フラッシング加熱)やプラズマエッチング等を用いることができる。
該共有結合性物質が金属や多結晶シリコン等、欠陥や構造に敏感でない場合には、上述の従来のエッチング方法で、表面不活性層除去と微細加工を同時に行うことできる。
即ち、上述の硝酸や塩酸フッ酸等の酸を用いるウェットエッチング、プラズマエッチング(酸素を含まないプラズマを用いる。窒素等共有結合性物質と反応して安定な化合物を形成するプラズマも好ましくない)、反応性プラズマエッチング、イオンビームエッチング(酸素や窒素を含まないイオンを用いる、例えばアルゴンイオンが好ましい例である)等の物理的化学的エッチングが利用できる。
特に、フッ酸処理は、シリコン酸化膜などの強固な表面の不活性層を除去できるため、反応性プラズマエッチングや物理的エッチングの前処理として一般的である。これらのエッチング処理では、不純物が混入しないように、高純度のガスや酸を用い、真空槽は十分真空度が高く排気できるものが好適である。
また、三五族化合物半導体でよく知られているよう、エッチングの条件を適切なものにすることで、前述の特定の面(A面B面等)が表面第一原子層である化合物が得られる。この表面そのまま、または、この表面を清浄化すれば表面共有結合性物質が得られる。または、表面に、真空蒸着等により共有結合性の固体元素を積層してもよい。
さらに、本発明者らは、金や白金等の貴金属でも表面を強酸化処理し、シリコン等の共有結合性物質の清浄表面と接近させれば、僅かではあるがヘテロ構造ができることも見出した。これは、白金等の表面に原子厚み程度に薄い酸化膜ができて表面が清浄な金属酸化物となり、共有結合性物質との結合ができたためと思える。別の機構は、白金等の表面が清浄化されて表面共有結合性物質と看做せ、白金等とシリコン等は固溶体を形成する元素同士であるため、シリコン等の共有性結合物質の接近で、結合ができたためたである可能性もある。
本発明のヘテロ構造の作製には、表面清浄化が必要で、清浄化と同一真空でヘテロ構造形成のための接近行うことが好ましい。
清浄化の具体的方法としては、まず真空度が十分高くできる真空槽を一度高真空度に排気する。その後、同真空槽内に高純度の酸素を流し、該金属酸化物を搬入し、該金属酸化物の表面に対して、化学的に活性な酸素を照射する。この酸素の運動エネルギーは、該金属酸化物の表面がエッチングまたはスパッターされたり加熱されるエネルギーより十分低くする。尚、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の希ガスは、該金属酸化物と共有結合的に結合しないため、混合しても問題が少ない。
前記活性酸素とは、好ましくは、原子状の中性酸素(O)、オゾン(O)、次いで励起状態の中性酸素分子(O)、若しくは、酸素イオンである。
原子状の酸素は、真空中で酸素をマイクロ波にさらすことで生成できる。この例は、磁場中の電子のサイクロトロン運動のマイクロ波共鳴吸収を利用するECRラジカル発生源であり、真空排気システムに組み込で使う。尚、オゾンを用いてもよいが、爆発を防止する措置が必要である。
また、酸素分子イオンや酸素原子イオンは、電場で加速されるため、金属酸化物表面に損傷を与える可能性があるが、実施例に示すように、運動エネルギーを適切に制御すれば清浄化を高める。エッチングやスパッターが起こらない程に低い運動エネルギーの目安は、約100eV、好ましくは50eV以下である。低運動エネルギーの利用により、表面加熱を抑制し低融点元素の欠損や欠陥生成を回避できる。
高運動エネルギー酸素イオンの効果を積極的に使う場合には、イオンを試料に対して斜めから入射させることも有効である。
この処理の前に、大気圧近傍または大気圧以上の高純度酸素雰囲気中、高温で該金属酸化物を加熱処理して結晶性を高めることも有効である。
ヘテロ構造形成後に、ヘテロ構造の接合力をさらに強めるには、ヘテロ構造体に超音波を印加したり、加熱処理行うことが可能である。この加熱処理は、拡散を抑制するため、急速加熱が好ましく、相互拡散が問題にならない温度以下が好ましい。尚、急速加熱法には、赤外線過熱やレーザー加熱が知られている。
本発明に用いる金属酸化物表面に酸素が現れるような清浄化は、活性酸素を該金属酸化物の表面に照射することで得られる。ここで、酸素以外の気体が該金属酸化物の表面に吸着や反応することを阻止するため、酸素と不活性気体(希ガス)以外の気体元素を排除する雰囲気にする。この様な雰囲気としては、真空度が十分高くできる密閉型の容器を真空にしたり、酸素と不活性ガスで満たした容器等が例示できる。
上記の清浄で酸素の露出した表面を持つ金属酸化物は、清浄で強酸化性の雰囲気で形成された金属酸化物を、真空や不活性ガス等の清浄な雰囲気や強酸化性の雰囲気に保持する場合でも得られる。
例えば、不純物ガスを十分抑え酸素イオンや酸素ラジカルを含む雰囲気で形成された薄膜や微粒子を、大気に出さず真空中で保持する場合も含まれる。但し、この場合も、上記の強い酸化処理でさらに本発明に適するようになると思われる。
本発明のヘテロ構造体の形成法は、表面共有結合性物質の清浄表面と、金属酸化物の酸素が露出した清浄表面の接近を用いるが、その方式は以下のように分類にされる:
1.金属酸化物上の表面共有結合性物質の形成、または、表面共有結合性物質上の金属酸化物の形成、
2.板状物質からの堆積、または、ナノスケールの粒子の堆積。
3.ナノスケール粒子の移動に、結合性(接着力)を制御した探針を用いる方法と用いない方法。
この結果、本発明のヘテロ構造体形成には、実施例の10〜15のような6通りの方法が例示される。
この方法により、任意の所望の位置に1〜5ナノメーターより高い位置精度で形成でき、大型の装置や特別な基板を用いる必要がないため経済性にも優れる。
本発明の原理を担う酸素原子からの電子浸み出しによる結合(接着力)は、真空で保持され、特に、超高真空では1ヶ月以上保持される。このため、金属酸化物表面の強酸化と同一真空中で行うことが好ましい。
このような装置構成例は、真空槽、真空ポンプ、ECRラジカル発生源等の活性酸素発生源、これらの発生源に酸素の流量を制御しつつ供給するシステムと試料搬送移動機構からなる。
この結合力は大気中で劣化するが、1日以上保たれる。このため、強酸化後のヘテロ構造形成(堆積)を、酸素と結合して酸素の活性を奪う気体や物質を十分に低減できていれば大気中で行うことも可能である。この例には、低湿度の大気、窒素ガスや酸素ガス中が例示できる。これにより、装置費用を著しく低減できる。
本発明に用いる酸素ガスは、できるだけ純度が高いものが好ましく、市販の酸素から水分や一酸化炭素や二酸化炭素等の不純物を除くために、純化装置を用いてもよい。真空ポンプは、高真空対応の真空ポンプが好ましく、ターボポンプシステムが一般的である。その他、クライオポンプや油拡散ポンプ、イオンポンプ、ノーブルポンプ、ダイア不ラムポンプも用いてもよい。この真空槽は、真空度の到達が高い方がよく、酸素ガスを流さない状態(バックグラウンド真空)が百分の1パスカル以下であることが好ましい。また、ガスの流量は高くすることが好ましいが、ラジカル源が稼動する真空度にするためには、真空ポンプの排気能力が高いことが必要である。酸素の純化は、不純物ガスの融点より低い温度を用いて除去する方法が知られている。
〔ヘテロ構造の結晶配向の制御法〕
本発明のヘテロ構造の特徴(1)(3)を用いたヘテロ構造体の結晶の軸方向の制御法と、その原理を説明する。
前述のように、本発明では、既に格子を組んだ物質を積層し、該物質の多数の原子と多数の下地原子が一度に結合する。この結果、下地によらず、積層された物質と下地は、積層前と同様の結晶構造を保ち、積層時に指定した任意の方向にその結晶軸を揃えられる。
具体的には、各針または下地の結晶軸方向を所望の方向に揃えて、接近(または接触)すれば、堆積されるものの方向も揃う。さらに、針または基板を適宜変えれば、ヘテロ接合毎に結晶の2軸の向きを変えることもできる。
一方、粒子を用いる場合は、例えば板状粒子の面に垂直方向は<001>軸等のように、各粒子の軸を揃えたものを作製し、これを積層すれば、垂直方向の結晶軸が揃ったヘテロ構造体が作製できる。
さらに、非特許文献7、8のように粒子を長方形等の特定の形にして、その各辺に平行に結晶軸を定めたものを用い、その各粒子の各辺をほぼ一定の方向に揃えて接近(または接触)で堆積すれば、結晶の三軸の方向が制御されたヘテロ構造体が形成できる。
この工程では、特定の面の選択的に結合性(接着性)が高くなるようにすることも有効である。これには、特定の面を強酸化(金属酸化物の場合)または清浄化(表面共有結合性物質の場合)する。
〔金属酸化物以外への拡張一般化〕
本発明の原理を金属化合物一般に拡張すれば、 “金属化合物の清浄化酸化表面と共有結合性物質(表面共有結合性物質)の清浄化表面を、所望の位置で、原子レベルに接近させて、ヘテロ構造を形成する”と言える。この作製法で、上記特徴(1)〜(8)を満たすヘテロ構造ができる可能性がある。
但し、酸素の共有結合性と反応性は特別である。このため、金属酸化物を一般化して金属化合物にすると、そのヘテロ構造の安定性や作り易さが著しく不十分なため、追加の工夫と改良が必要である。また、前述のヘテロ構造の問題の改良は金属酸化物で顕著である。
一般の金属化合物の場合の作製法は、金属化合物を構成する非金属性低沸点元素と同種の元素を活性化して該金属化合物表面に照射すれば清浄化した結合し易い表面ができる。例えば、金属酸化物に変えて、金属窒化物を用いる場合には、窒素ガスを上記のような活性化して照射する(例:ECRラジカル発生源による窒素ラジカル)。
または、活性ガス照射の効果を2つに分ける。先ず、清浄化を行うため、反応層や不純物層を形成しないガスイオンの照射、プラズマエッチング、高温度急速過熱等で、共有結合性物質表面の清浄化と同様の処理をする。この処理で、表面から非金属性低沸点元素が欠損するので、必要に応じて、これらの元素を原子層一層以下程度蒸着する。
〔類似の先行技術に対する新規性進歩性〕
本発明に関係する類似の先行技術には、非特許文献9、10がある。しかし、非特許文献9では、シリコン同士を超高真空中で接触させると結合することが報告されているが、本発明と異なりナノスケール構造の形成が報告されておらず、またできるとしても、ヘテロ構造でない。このため産業上の有用性が少ない。
特に、結晶性金属酸化物と上記に定義した表面共有結合性物質によるヘテロ構造で、界面に反応層が殆どない急峻な界面を形成する技術は、殆ど知られてないが、本発明では達成できる。
非特許文献10では、極低温の非金酸化物である白金や銅の上で個々のコバルト原子や一酸化炭素分子を探針で移動させることが報告されているが、本発明のヘテロ構造は、“結晶格子を形成した物体”を室温で移動させて作製される。
また、シリコン製探針を被覆した金属薄膜で、固体表面を操作すると、金属薄膜の一部が剥離して表面に残ることがあるが、このような現象は、殆ど共有結合しておらず不安定で、ヘテロ構造と看做しがたい。また、制御し難い。
また、鋭利な先端を非常に強い力(ナノスケールの激突)で、金属酸化物や表面共有結合性物質に押しつけると、強酸化や清浄化されなくても、該固体表面に、該先端の構成物質が、埋め込まれ微量付着する。
この場合、激突でできた付着物と固体表面の激突された領域に歪や欠陥ができ、付着量が微小で且つ制御が困難である。一方、本発明では、表面同士が原子の大きさ程度に接近するだけで安定なヘテロ構造ができる。
前述のように、本発明の特徴(2)相互拡散や反応層の形成が殆どない(5)空隙や端の抉ぐれは、非晶質堆積物の形成なら、従来技術の蒸着法等で可能である。また、微粒子を基板上に載せて過熱すれば、ヘテロ構造ができ、特徴(5)を持つ可能性があるが、特徴(2)を達成できない。
尚、異物質の表面が接近するだけで、異物質が接着状態になる既知の例には、磁性体の磁性による吸着、帯電物質の静電気による付着、表面張力による液体の固体への吸着、密封した領域の真空を利用した吸着などが知られている。
しかし、これらのいずれも、本発明の共有結合によるヘテロ構造形成に比べ、エネルギーが小さく、安定性もない。
本発明は、従来の薄膜堆積とそのエッチングによる微細加工と原理的に異なる方法で、金属酸化物を含むヘテロ構造体を提供し、その様々な問題点を解決する。この方法は、金属酸化物以外の複雑な結晶化合物のヘテロ構造体にも応用できる。
本発明のヘテロ接合の断面図。図中のMが金属元素、Oが酸素、Sが共有結合性元素。尚、本図は、上下(下地層と堆積される層)の関係を入れ替えてもよい。即ち、丸をそのままにして図中の文字SとMとOを交換してもよい。界面の抉れや空隙も示した。 実施例のヘテロ構造作製の工程。ヘテロ構造は下地と積層物で構成され、一方が、金属酸化物結晶、他方が共有結合物質。 参考例。従来技術での、実施例図1aに対応する“理想的”ヘテロ接合の断面図(従来技術の問題のである反応層や相互拡散による元素の混入や欠陥は示していない)。図中のMが金属元素、Oが酸素、Sが共有結合性元素。 参考例。従来技術での、実施例図1aに対応する“現実的”ヘテロ接合の断面図。相互拡散による元素の混入、欠陥、反応層がある。図中のMが金属元素、Oが酸素、Sが共有結合性元素 参考例。従来技術でのヘテロ接合(図1d)の工程(断面図)。 参考例。従来技術での、非結晶性または多結晶性下地上のヘテロ構造の界面での面内方向の結晶配向を示す平面図。図1f図1gでは、実践の升目が下地の結晶格子、点線の升目が堆積層の結晶格子を表す。 参考例。従来技術での、単結晶性下地上のヘテロ構造の界面での面内方向の結晶配向を示す平図。 参考例。従来技術での、ヘテロ構造作製の2通りの工程(1e,1f)。ヘテロ構造は下地と積層物で構成され、一方が、金属酸化物結晶、他方が共有結合物質。 実施例。非結晶性下地上のヘテロ構造の結晶配向の代表例の平面図。図1i〜図1mでは、実践の升目が下地の結晶格子、点線の升目が堆積層の結晶格子を表す。 実施例。結晶性下地上のヘテロ構造の界面での面内方向の結晶配向を示す平面図。 実施例。結晶性下地上のヘテロ構造の界面での面内方向の結晶配向を示す平面図。 実施例。結晶性下地上のヘテロ構造の界面での面内方向の結晶配向を示す平面図。 実施例。結晶性下地上のヘテロ構造の界面での面内方向の結晶配向を示す平面図。 実施例。ヘテロ構造の作製原理(工程2a〜2d) 実施例及び比較例。工程2b〜2dの状態を示す原子間力の力(力)― 距離曲線の測定例。金属酸化物(BaTiO表面)から表面共有結合性物質を引き離す時の引力の表面酸化処理依存性)。実線:好適な実施例、破線:比較例、点線:実施例と看做せる例 実施例の金属酸化物表面の強酸化に用いる装置例 実施例3〜9と比較例1〜3に用いた装置構成。E3(処理用真空槽)で、金属酸化物表面の強酸化と表面共有結合性物質の表面清浄化を行い、ヘテロ構造の形成(接着)とその確認を、E8(測定用真空槽)で行う。 探針の清浄性を示すシリコンの原子像(夫々の明るい点一個一個が個々のシリコン原子) 活性元素の主体が酸素原子であることを示す分光測定 超高真空原子間力顕微鏡の非接触モード(ノンコンタクトモード)で測定した強酸化した試料表面の断面形状。 超高真空原子間力顕微鏡の接触モード)で、約300nNの斥力で押しながら測定した、強酸化処理をしない試料表面の断面形状。 実施例でのT字型配列の各点の形成順序 実施例でのT字型配列の各点のシリコンの結晶方位 本発明の方法で室温で作製したT字型に配列したヘテロ構造の形状(600nm平方の領域を原子間力顕微鏡で測定) 図8cと同じ領域の表面電位像(明暗は仕事関数の差と電子分布を反映) 強酸化処理後、超高真空中30日間保持した後の力−距離曲線(フォースディスタンス曲 線:SiとBaTiO間の原子間力がその距離どのように依存するかを示す) 強酸化処理後に大気中に測定した30μm平方の領域の表面形状像 ダイヤモン探針と表面を強酸化したBaTiO表面の原子間力の力―距離曲線 強酸化したBaTiO表面での、2つのダイヤモンドナノドット作製後の像と同一の領域の作製前の表面形状像(像の範囲は1.5μmx2.0μm) 図10bと同じ領域の表面電位像(均一で何も見えない)。 強酸化したBaTiO表面上の、室温での2つのダイヤモンドナノドット作製後の表面形状像(像の範囲は1.5μmx2.0μm) 図10dと同じ領域の表面電位像(明暗は仕事関数の差(物質が異なることに対応)と電子分布を反映) 本発明の方法で、非晶質的最表面層をもつサファイヤ上に室温で作製したN字型に配列したシリコンヘテロ構造の形状(1800nm平方の領域を原子間力顕微鏡で測定) 図11aと同様に形成した、非晶質的最表面層をもつサファイヤ上のヘテロ構造を形成した部分(黒丸)としない部分(三角)のシリコンピーク近傍のラマンスペクトル。 サファイヤ上のヘテロ構造を形成した部分(黒丸)としない部分(三角)のサファイヤのラマンスペクトル。 サファイヤ上に形成せいた一列のヘテロ構造を半年大気中で保存した後に、ヘテロ構造が安定に存在することを確認した原子間力顕微鏡像。 本発明によるナノスケール粒子の移動操作とヘテロ構造作製の原理。 図2の方式で図1aのヘテロ構造の作製の生産性を上げるための集積探針構 造の例。 図2の方式及び図13aの個々の探針で、ヘテロ構造の大きさを揃えるために先端を目的の大きさに揃えた探針。 図13b探針を繰り返し使う場合に、毎回先端の部分だけがヘテロ構造に取り込まれるようにするために、先端に向かって不切り込みを深くした探針。 図13aの集積探針構造を、2種類のヘテロ構造を作製する場合に拡張するための集積探針構造の例 図14の集積探針構造用いて作製するヘテロ構造の例 図1aのヘテロ構造を作製する第2の作製方法の例 図1aのヘテロ構造を作製する第2の作製方法の例 図1aのヘテロ構造を作製する第3の作製方法の例 図18aに用いる粒子の球状以外の形状の例 図1aのヘテロ構造を作製する第4の作製方法の例 表面共有結合性物質の微細構造を作りやすくする方法の例(微細構造がとれ易いようにした) 第4のヘテロ構造作製法で、2種類のヘテロ構造を作製する方法の例 図1aのヘテロ構造を図12のような金属酸化物微粒子を用いて作製する方法(第5の作製方法)の例 図22aに用いる金属酸化物粒子の球状以外の形状の例 図22aと類似の方法で、多数の金属酸化物微粒子が積層されたヘテロ構造を形成するための工程。強酸化により金属酸化物微粒子同士も結合する。 図2、12の原理を利用した第6のヘテロ構造作製方法の例 工程24aは図23の工程23b、工程24bは23eの拡大図 a:配線上に、金属酸化物の薄膜を形成した例,b:複数の層からなるヘテロ構造体の例,c:複数の層からなるヘテロ構造の例,d:複数の層からなるヘテロ構造体の例
〔実施例1及び参考例(従来技術):本発明の原理の例示〕
図1aは、実施例の構造体内の本発明によるヘテロ接合を示したものであり、原子の大きさ程度まで平坦なヘテロ接合界面があり、接合面を形成する両物質の最表面原子同士が共有結合的に結合している。また、酸素原子(O)は、少なくとも1つの該金属酸化物を構成する金属(M)と化学結合し隣接し、Mは、少なくもの1つのOと化学結合し隣接し、該共有結合性物質の構成元素(S)は、少なくとも1つSと化学結合し隣接している。
この結果、相互拡散や反応層の形成が殆なく、積層される元の物質とほぼ同じ組成比を持っている。但し、しかし、界面の一部のSは、OともMとも化学結合していない。即ち、界面の一部の原子同士でのみ界面の結合に与っている。
また、界面の一部の原子同士でのみ結合しているということは、ヘテロ接合界面に空隙や端の抉れが存在するとも表現できる。全ての原子が界面で結合していないため、双方の物質の結晶構造がお互いに揃うように結晶構造を変える必要がない。この結果、高結晶性のヘテロ接合を作製しても、歪を低減でき、歪による特性劣化を改善できる。
このような図1aの特徴は、従来技術と異なる図1bで例示される作製法に由来する。図1bの方法で、基板の“所望の位置”に、所望の構造体を“選択的”に形成できる。まず、工程1d2のようにすでに結晶を組んだ物体を移動して、接近(または接触)させ(工程1d3)、下地(1d1)の表面と化学結合(共有結合)させ、これを繰り返す(工程1d4)。堆積自体が微細構造の形成になっているため、微細加工を用いなくてもよい。
この製法のため、下地と堆積層の結合は、下地の界面に存在する原子の一部と堆積層の界面に存在する原子の一部の共有結合による。これは、実施例3,6の実験での結合力評価から証明される。さらに、特徴(1)も実施例3〜9の実験で検証されているが、界面の双方物質の原子が界面で強く化学結合し隣接しながら、この特徴(1)を持つには、界面の一部の原子による結合でなければならない。
一方、従来技術によるヘテロ接合は、作製時に高温と結晶性下地(基板または基板上の薄膜)を用いる薄膜形成法による。そのため、界面の全ての原子が界面の結合に与り、理想的には図1cのようになる。即ち、界面の全SがOかMと化学結合し隣接し、界面の全MがSかOと化学結合し隣接し、界面の全OがSと化学結合し隣接している。現実には、界面の全ての原子が界面の結合に与るものの、図1dの例のように、O、MがSの領域に入る等の拡散が起こる。
これは、図1dのような相互拡散や、反応層の形成が不可避なのは、図1eの工程のように原子を気相または液相の活性の高い状態で堆積するためである。
さらに、従来技術では、理想的な場合を含めて、図1eのように下から上に向かって原子同士が接しながら降り積もって積層されるので、下地の原子と結合のために、ヘテロ構造内の堆積物の結晶構造や格子定数が単体で存在する場合と異なる。このため、特に、高結晶性の物質を用いるヘテロ接合で、歪が大きく、歪による特性劣化が起こる。
このため、従来技術では、下地が非晶質(非結晶)や多結晶またはその格子定数が積層する物質の格子定数と不整合な単結晶上では、非晶質または結晶の軸の方向が揃っていない多結晶の層しか積層できない(図1f)。また、下地が堆積する物質と格子定数が整合する単結晶の場合はエピタキシャル成長し、その結晶軸方向により堆積層の結晶軸方向が限定される(図1g)。
また、従来技術で、基板の“所望の位置”に、所望の構造体を“選択的”に形成するには、は、微細加工が必要である。レジスト(図1hの工程1e3〜1e5工程1f2〜1f4)と削り出し(エッチング、図1hの工程1e5〜1e6)やリフトオフ(図1hの工程1f5〜1f6)を組み合わせる方法が一般的である。
従来技術で、エッチングを用いる作製法(図1hの1e)では、基板(1e1)上の蒸着薄膜(1e2)上にレジストを塗り(工程1e3)のその一部のみ硬化させ(工程1e4)、硬化部分のみ残す(工程1e5)。この残ったレジストで覆われた部分以外をエッチングで除去する(工程1e6)。
従来技術で、リフトオフ法を用いる作製法(図1hの1f)では、基板(1f1)にレジストを塗り(工程1f2)、構造体を形成したい部分以外を硬化させ(工程1f3)、硬化したレジストを残す(工程1f4)。その上に薄膜を蒸着し(工程1f5)、レジストごとレジスト上の薄膜を除去して、目的の構造体のみ残す(工程1f6)。
実施例では、図1bのように、既に結晶格子を組んだ物質を積層し、個々の原子と下地の原子との結合でなく、該物質の多数の原子と多数の下地原子が一度に結合するので、
下地の結晶配向に制限されず、下地材料の選択が自由である。
実施例3〜9では、下地が非晶質や多結晶でも、単結晶層を積層したヘテロ構造ができ(図1i)、下地の単結晶の結晶対称性が積層する物質の結晶対称性と不整合でも、単結晶層を積層したヘテロ構造ができ(図1j)、下地の単結晶の結晶軸長が積層する物質の結晶軸長と不整合でも、単結晶層を積層したヘテロ構造ができる(図1k)。また、積層層の下地層に関係なく、結晶軸の方向は任意で選べる(図1l,図1m)。
〔実施例2〕
図1bに示した実施例の作製法を、簡便に実現するのは、図2aのように探針状の表面共有結合性物質を用いる方法である。
その工程は、表面を強酸化した巨視的な大きさの金属酸化物上を、ナノスケールに鋭利な先端を持つ表面共有結合性物質で走査し(工程2a)、所望の位置で、接近させ(工程2b)、堆積し(工程2c)、離すこと(工程2d)を繰り返すことで、任意のヘテロ構造体が形成できる。図3は、このような作製に用いられる装置の例である。
この原理は、図2bに示される、共有結合性物質の清浄な表面と金属酸化物の清浄な表面を接近させることで生じる共有結合(または共有結合的結合)を示す実験である。この実験の詳細は、実施例3に述べる。
図2bでは、図2aのような先端が尖った探針を用いているため、ヘテロ接合に与る探針の表面と基板の表面の幾何学形状を一致させるために、斥力が検出されるまで接近させた。即ち、探針の原子と基板の原子が、原子レベルで接近する部分の面積増やすために、探針の最先端が変形させるほどの力をかけた。
基板同様に探針の先端が原子レベルで平坦で、且つ、探針の先端が目的とする堆積層の大きさになっていれば、図2a工程2a2bでは十分接近するだけで、斥力を殆ど検知しない程度に接近させるだけでよい。
〔実施例3及び比較例1〕
本実施例3及び比較例1において、BaTiO表面を強酸化した場合が実施例、未処理が比較例である。
さらに、BaTiO表面を強酸化し且つシリコン(探針)表面を清浄化のみし強酸化しない場合が好適な実施例である。以下、比較例の結果は比較例と明記。
強酸化したBaTiO表面上のナノスケールのシリコンへテロ構造を室温で形成した。試料搬入真空槽、処理用真空槽、測定用真空槽の3つの真空槽が連結された装置(日本電子製超高真空原子間力顕微鏡システムJSPM4610)の処理用真空槽に、アリオス株式会社製ECRラジカル発生源を取りつけた(図4)。これらの装置間の試料と探針の移動は、真空を破ることなく(同一真空中)行い、この試料を処理用真空槽を経由して測定用真空槽に搬入した。測定用真空槽は、一億分の一パスカルの真空度に保持して以下を行った。以下、測定用真空槽は、常に1億分の1パスカルの超高真空である。
探針として、マイクロマッシュ社の原子間力顕微鏡用カンチレバーNSC11Bを用いた。処理用真空槽をターボ分子ポンプとイオンポンプで千万分の一パスカルまで排気し、該探針を該処理用真空槽に搬入した。該探針は共有結合性物質であるシリコンでできており、先端がナノスケールに鋭利である。該探針を保持したまま、該処理用真空槽を150℃に6時間保持して、探針の先端の表面の自然酸化膜等の不活性層の除去と清浄化し、探針の先端を“表面共有結合性物質”にした。
この処理後の該探針の先端の表面原子層がシリコンであることを、原子間力顕微鏡(AFM)の非接触モード(ノンコンタクトモード)測定で確認した(注:超高真空原子間力顕微鏡の非接触モードとは、空気中の分子間でも働いている分子間や原子間で一般に存在する弱い引力(ファンデアワールス力)を検出しながら表面を走査する測定法)。
この検討は、超高真空中の高温加熱処理で酸化膜と吸着物を除去して、表面原子層を清浄なシリコン原子層にしたシリコン単結晶基板の表面を、該探針を用いた非接触モード測定することで行い、原子が一個一個識別できた(図5の白丸が1個のシリコン原子、黒い部分は原子が自然に欠落してできた空隙)。また、該探針と該試料を接近させた後に引き離すと、非常に強い引力が生じたことから、シリコンとシリコン間の引力が、シリコンと酸素間の引力より強いことが示された。非特許文献9によれば、これは、シリコン原子とシリコン原子の化学結合による引力が見えたことによる。即ち、該探針の表面原子層がシリコン原子層であり、表面共有結合性物質を得たことが示された。
一方、同様の探針で、上記の清浄化をしない場合には、このような強い引力は検出されなかった。このことは、この結果は、探針の表目の不活性化(フッ化、酸化、窒化や汚れの吸着)により、探針と共有結合性表面の引力を低下でき、先に述べた表面共有結合性物質の微粒子の搬送に応用できることを示す。
結晶性複合金属酸化物試料として、表面積約0.05平方cm厚み約1mmのBaTiO単結晶を用い、前処理として酸素分圧20%の大気圧中で1300℃まで加熱処理し、標準的な洗浄(純水、エタノール、アセトンを用いた超音波洗浄)を施した。この試料を上記測定用真空槽に搬入した。
前記探針を用いて、力(ちから)− 距離曲線(試料表面と探針先端の間の力が両者の距離にどう依存するかを示す曲線)を測定し、探針を引き離す時に、図2bの破線で示される未処理の場合の特性を得た(比較例)。この特性は、他の複数の場所で同様であった。
尚、超高真空中の力−距離曲線では、離れた位置ではファンデアワールス力の引力、1〜3ナノメーターでより強い引力、最近接では原子と原子が押し合うことによる斥力が検出される。図2bは、最近接位置から遠くへ引き離す場合で、縦軸は引力が負、斥力が正である。
この後、該試料を処理用真空槽に試料搬入し、強酸化処理を行った。処理用真空槽を千万分の一パスカルまでターボ分子ポンプとイオンポンプで排気後、ターボ分子ポンプで排気しながら、酸素ガスを2SCCM流したところ真空度は十分の1パスカルになった。ラジカル発生源の出射口から試料までの距離は約10cmである。この酸素ガスは、99.99995%の超高真空酸素ガスを、図4の装置で約マイナス200℃まで冷却することでさらに高純度にした。
マイクロ波出力を160W反射波20Wにして、試料に活性酸素を3時間照射した。尚、マイクロ波出力は反射が小さい限り、大きい方が好ましい傾向があるが、反射を20W以下に押えるため上記の出力にした。ラジカル発生源の出口の電位と、試料を配置した処理用真空槽の電位を、共に接地電位にした。アリオス株式会社の試験によれば、この場合、ラジカル発生源の電位はプラス1〜3Vと極めて小さなものになる。
試料の近辺の分光結果(図6)から、この活性酸素は、中性酸素原子と中性酸素分子(基底状態または低い励起状態での中性酸素分子は存在しても分光に現れない)が主たる成分と考えられる。尚、水素やOH等の発光は検出されなかった。このような酸素を照射して、試料として、強酸化した表面を持つ結晶性複合金属酸化物(BaTiO)を得た。
この処理後に、この強酸化表面を持つ金属酸化物試料を測定用真空槽に移し、3μm四方の領域の表面形状を清浄化していない探針で原子間力顕微鏡(AFM)の非接触モードで測定すると、階段状の形状で試料全面が覆われていた。この階段は断面形状(図7a)に示すように、高さ0.4nmで、結晶を構成する原子による1格子段差(lattice step)である。このことは、本処理で表面が損傷を受けず、原子レベルの結晶性を保っていることを示す。
この後、上記と同様の清浄化をした探針で、力−距離曲線を測定すると、引き離し時の最大引力が未処理の場合より一桁増えた(図2bの実線)。この特性は、他の複数の場所で同様であった。これは、試料表面と探針表面の間の共有結合的な結合をしたためと考えられ、以下のヘテロ構造の形成でさらに示される。
尚、探針をBaTiOに接近させる時の力−距離曲線での引力も、強酸化で未処理のものの2倍以上になっていた。
前記試料をそのままにして、前記探針のみを上記の処理用真空槽に移動し、前記BaTiO単結晶と同じ条件で、該探針に活性酸素を3時間照射して表面を強酸化し、この探針の表面の“一部を酸化シリコン”(表面共有結合性物質でない)にした。この探針を測定用真空槽に移し、力−距離曲線を測定すると、探針と試料表面の間の引き離し時の最大引力は、前記の清浄化した探針の場合の3分の1程度に小さくなった(図2bの点線)。この特性は、複数の異なる場所で同様であった。
この原理を用いて、室温で図2aの方法で、直径約40ナノメーターのシリコンとBaTiOからなるヘテロ構造体が、約400ナノメーターのTの字に並ぶ配列構造を形成した。この位置精度は、目的の位置に対して3〜5ナノメーターである。この作製は上記超高真空槽内で、図8aの数字の位置でその番号順に行った。
この際、接合面内のシリコンとBaTiOの表面形状をほぼ一致させて、接合面の多数の原子を原子の大きさ程度に接近させるため、480ナノニュートン(nN:力の単位)の斥力を検出するまで探針をBaTiO表面に接近させた。各シリコン結晶の方位は、図8bのように全て同じにした。
設計通りのT字ヘテロ構造体が形成されていることは、原子間力顕微鏡の非接触モードでの表面形状測定と、表面電位顕微鏡(KFM)で確認した。
上記の力−距離曲線測定の場合と同じく3通りのBaTiOと探針の処理を行った場合について、ヘテロ構造体形成の結果をまとめる。上記の測定結果から、図2bに示される強酸化した清浄な表面との引力は、堆積層に働く重力より1億倍以上大きく、図22a,23,24のようなナノ粒子の移動ができることを証明する。この重力に対する大きさは、以下の他の物質でも同様であった。
図2bは探針が離れる時の力―距離曲線なので、その積分で結合を切るエネルギーが求まる。この過程中シリコンはBaTiOと結合しているので、このエネルギーは、シリコンはBaTiOと結合の結合エネルギーの下限を与える。これから、界面に接する酸素原子1個当たり平均約0.5eV以上と求まり、共有結合的な化学結合であると結論される。また、実施例9のように、このようなヘテロ構造が半年以上大気中で搬送を繰り返しても、安定に存在することも共有結合であることを示す。
但し、一対の共有結合的な結合の大きさは通常2〜4eVなので、最表面の8個に1個以上の原子が共有結合的な結合をしている。共有結合的結合でありなら、ヘテロ接合面内の結晶方向によらない結合をすることは、図1aのような原子レベルの空隙や抉れがあるヘテロ接合界面ができていることを示す。
未処理のBaTiOでは、探針の酸化膜除去清浄化の有無にかかわらず、構造体の形成が全くできなかった(比較例)。
一方、強酸化したBaTiOと酸化膜除去清浄化した探針では、原子間力顕微鏡の表面形状像(図8c)で、T字に配列した構造体が示された。また、強酸化したBaTiOと強酸化して部分的に酸化した探針では殆どできなかった。これらの結果は、清浄な表面共有結合性物質の表面と清浄な金属酸化物表面の接近が本発明の本質であることを示す。
さらに、この構造体が、BaTiO表面の変化でなく、BaTiO以外の物質(シリコン)が形成されたことか否かを、物質固有の仕事関数差による電位差の分布を表面電位顕微鏡で検討した。探針の酸化膜除去清浄化の有無にかかわらず、未処理のBaTiOでは、構造体が検出できなかった(比較例)
一方、強酸化したBaTiOと酸化膜除去清浄化した探針の場合には、T字配列の構造体が明瞭に確認された(図8d)。強酸化したBaTiOと強酸化したシリコン探針(表面がSiO)では、殆どできなかった。
これにより、該構造体が、BaTiO上のシリコンからなるヘテロ構造体であることが分かった。
このヘテロ構造体の形成は、探針とBaTiOの向きをほぼ一定にして行い、全てのヘテロ構造において、シリコンの結晶軸方向とBaTiOの結晶軸方向の関係を同じにした。また、NSC11Bの先端は結晶軸<100>が針の先端方向、2つの<110>軸が針の操作方向及び面内の垂直方向に向いた単結晶なので、<100>結晶軸が表面に垂直で<110>軸が面内に揃った単結晶性シリコンからなるヘテロ構造のT字配列ができたことになる。このTの字の配列は、少なくとも1ヶ月以上安定に存在した。
尚、シリコンは、立方晶としての格子定数が室温で0.5431ナノメーター、BaTiOは、室温で格子定数0.3992ナノメーター、0.3992ナノメーター、0.4038ナノメーターの正方晶である。上記BaTiOの表面は、0.3992ナノメーターx0.4038ナノメーターの<100>面(a面と呼ぶ)、格子定数が0.3992ナノメーターx0.3992ナノメーターの<001>面(c面と呼ぶ)の双方が混在していた。
シリコンの結晶格子は、特に、a面と整合が困難だが、a面c面の差なく結晶軸を揃えたヘテロ構造の形成が可能であった。さらに、シリコンの結晶軸方向を変えても、探針の操作条件を同じにすれば、a面c面共に、同様なシリコンのヘテロ構造ができた。これらのことは、本実施例が、下地の結晶性を用いずに結晶配向した結晶性堆積層が得られることを証明する。
図8cでは、番号の小さい位置と大きな位置でヘテロ構造の大きさが系統的に変ることがないため、繰り返しへテロ構造体を形成しても、探針の先端が清浄なまま鋭利な状態を保っていることがわかる。また、ヘテロ構造の形成後も、ヘテロ構造がない部分のBaTiOの表面はすべて、図7aと同様の原子レベルの段差で覆われており、本ヘテロ構造形成が原子レベルに揃った結晶性を保つことが示される。
上記3通りでの結果は、BaTiO表面の強酸化とシリコンの酸化膜除去清浄化により、これらの間の引力と結合性(接着力)が少なくとも3段階に制御できることを示す。また、表面が部分的に酸化されたシリコンは、本発明で定義した表面共有結合性物質の好適な例でないため、ヘテロ構造が形成され難いことになる。
上記の強酸化したBaTiO単結晶を用いて、強酸化した表面の活性の安定性を調べた。図9aは、図2bの力−距離曲線を測定した後に、同一試料を超高真空中に30日間保持した後に、再度測定した力−距離曲線である。この特性は、殆ど変っておらず、化学結合による引力(接着力)が、超高真空中で少なくとも1ヶ月程度保持されることを示す。
このように超高真空中に30日間保持したBaTiO単結晶を大気中に取り出してから3時間後に以下の測定を行った。大気中で、Topometrix社製原子間力顕微鏡 Explorer 2100に、探針としてTopometrix社製型番1650番のシリコン製カンチレバーを取り付け、この探針を約50nNで試料に押し付けながら走査した(接触モード測定)。この場合、探針とBaTiOの引力が強すぎて、安定な走査はできなかった。この表面を、非接触モードで表面形状測定したところ、ナノスケールのシリコンがBaTiOに堆積し(図9b)、ヘテロ構造を形成していることがわかった。さらに、仕事関数差測定で、これらのヘテロ構造体はBaTiO上のシリコンからなることが分かった。
このように、本発明の共有結合的な結合による引力(接着力)をもつ金属酸化物表面は、大気中でもある程度保持される。この3日後に、再度探針を約50nNで試料に押し付けながら走査すると、大気中に保管した(強酸化していない)通常のBaTiO単結晶の表面より、摩擦が大きく、探針とBaTiO単結晶表面の間の引力が残っていることが分かった。
この1日後、即ち、最初の大気中測定から4日後に、同様の測定をすると、大気中に保管した通常のBaTiO単結晶の表面とほぼ同様の走査ができた。このことから、本発明の共有結合的な結合による引力(接着力)は、ほぼ3日程度持続すると考えられる。また、大気中での、強酸化した表面の結合性低下は、表面吸着物で、結合性とヘテロ構造の形成を制御できることを示す。
尚、強酸化せず未処理のまま超高真空中に保持したBaTiO単結晶の表面を、上記と同様の清浄化をした探針で、超高真空中で、原子間力顕微鏡の接触モード(コンタクトモード)で、約300nNの力で押しながら測定すると、図7aと同様の1結晶格子からなる階段状の形状がみられた(図7b)(注:接触モードとは、原子や分子を原子の大きさ程度またはそれ以下に近づける時に生じる斥力を検出しながら表面を走査する測定法)。
このことは、300nNの斥力では、BaTiO単結晶の結晶性が、原子大きさの分解能で、損傷されないようにできることを示す。即ち、本発明のヘテロ構造は、該接触モードの力、即ち、BaTiO単結晶の1結晶格子の原子段差を保つような結晶性に損傷を与えない微弱な力で形成できる。
〔実施例4〕 上記と同様にして、強酸化したBaTiOの表面で2μm四方の電位を測定したところ下向きと上向きの分極をもつ領域(分域)が観測され、分極正負の領域の電位差は約0.4Vであった。一方、即ち、強酸化しない場合は、上向き下向きの分極の領域の電位差が0.16Vであった。即ち、自発分極からの電場が2〜3倍に増えたことを意味し、強誘電体の基本特性である自発分極からの電場を、有効に引き出せたことが分かり、BaTiOのヘテロ構造で分極を用いるものの特性が向上できることを示す。
〔実施例5及び比較例2〕
BaTiO単結晶に代えて、非晶質の複合金属酸化物として、松浪ガラス工業株式会社製、厚み0.15mmのマイクロカバーガラスから0.2cm四方の試料を切り出し、前記の標準的洗浄を施したものを用いた。活性酸素の条件等を、実施例3と同様にして処理し、実験した。
比較例2及び実施例5で、ヘテロ構造体の形成の条件を同じにして作製した。特に、480ナノニュートン(nN:力の単位)の斥力を検出するまで探針をBaTiO表面に接近させて、接合面内のシリコンとBaTiOの表面形状をほぼ一致させ、接合面の多数の原子が原子の大きさ程度に接近するようにした。作製したヘテロ構造を、原子間力顕微鏡の非接触モードで測定した。
〔比較例2〕まず、未処理のガラスでは、実施例3と同様の探針の酸化膜除去清浄化をして、実施例3と同様のヘテロ構造の形成を試みたが全くできなかった。
〔実施例5〕一方、表面を強酸化した前記ガラスと清浄化した探針では、力−距離曲線測定の引き離し時の最大引力が一桁増え、T字に配列したヘテロ構造を室温で形成できた。
尚、ヘテロ構造の形成は、探針とBaTiOの向きをほぼ一定にして行った。この場合、従来技術と異なり、非晶質であるガラス上も、この全てのヘテロ構造のシリコンの結晶軸方向は、ほぼ一定の方向を向き且つ全てほぼ同じ方向に揃っている。非晶質上のこのようなヘテロ構造形成は、従来の基板の結晶性を利用した結晶配向と異なる原理で、結晶軸を揃えたヘテロ構造の形成が可能であることを示す。
ガラスの強酸化を正イオンが100Vで加速されるように加速電圧をかけた後、力−距離曲線測定の引き離し時の引力が3倍以上増え、より安定なヘテロ構造ができることがわかった。
強酸化した前記ガラスと強酸化したシリコン探針では、力−距離曲線測定の引き離し時の最大引力が、強酸化した場合の半分以下になり、上記と同様のヘテロ構造の形成を試みたが安定にはできなかった。即ち、前記ガラスの表面の強酸化とシリコンの清浄化と強酸化により、これらの間の共有結合的な結合による引力(接着力)を制御できた。
尚、強酸化した前記ガラスを超高真空中で150℃に加熱した状態及び加熱後、何れの状態でも室温より、清浄化した探針での力−距離曲線測定の引き離し時の引力が約2倍になり、より安定なヘテロ構造ができることがわかった。
比較例3
〔比較例3〕マイクロマッシュ社の原子間力顕微鏡用カンチレバー型番NSC35Ti/PtとCSC37Cr/Auを用いて、実施例3、4と同様にヘテロ構造体の形成を試みた。このカンチレバーは、シリコン製探針の先端部分の表面近傍と最表面が、夫々、白金と金である。
実施例3と同様に、両探針の酸化膜等の表面の不活性層除去と清浄化を行い、探針先端の表面原子層が白金または金になるようにした。実施例3と同様の条件で、活性酸素をBaTiO単結晶と前記と同じガラスに活性酸素を照射した。試料への活性酸素照射無しでは、何れの探針を50nNの斥力を感じるまでBaTiO単結晶に接近(または接触)させても、BaTiO単結晶とガラスの何れの上にもヘテロ構造はできず、照射しても殆どできなかった。
非特許文献5によれば、白金と金の仕事関数は夫々、5.65eV,5.1eVである。即ち、白金と金は、“仕事関数が低い”と言う本発明でのヘテロ構造形成に好適な条件を満たしていない。一方、両探針の白金薄膜の下地はシリコン上のチタン薄膜であり、金薄膜の下地は、シリコン上のクロム薄膜である。
シリコン、チタン、クロムは、酸化されやすい元素で、本発明のヘテロ構造を形成するのに好適な条件を満たす。しかし、本発明では、表面が、仕事関数が低い表面共有結合性物質と看做せるか否かは、表面の物質(本実施例では白金と金)で決まるので、ヘテロ構造が殆どできない。この結果は、最表面の制御で結合性とヘテロ構造の形成を制御できることを示す。
〔実施例6〕 実施例3と同様の工程で、シリコンを結晶性炭素に代えても同様の結果が室温で得られることを確認した。即ち、探針をNT−MDT社製の導電性ダイヤモンド被覆の原子間力顕微鏡用カンチレバー型番DCP20として、ヘテロ構造を作製した(正確には、ダイヤモンドというよりダイヤモンド的炭素)。処理用真空槽を150℃に6時間保持して、この探針の先端表面の自然酸化膜等の不活性層の除去と清浄化を行い、先端に表面共有結合性物質(最表面原子層が炭素であるダイヤモンド)を得た。
実施例3と同様の条件で、活性酸素をBaTiO単結晶に活性酸素を照射して強酸化した。この表面で該探針を用いて、力−距離曲線を測定したところ、図10aのように、ダイヤモンドも、図2bのシリコンと同様に共有結合的な結合を示す強い引力を持つことが分かった。
さらに、図10bの表面形状像とその電位分布像(図10c)に示される領域のBaTiO単結晶表面上の2点に、該探針を2kHzの±5Vの交流をかけながら約540nNで接触させた。この後に、同一の領域を非接触モード原子間力形状で測定すると、2つの点状の構造体の形成を示す形状像が得られた(図10d)。
この構造体がBaTiO表面の変化でなく、BaTiO以外の物質(この場合ダイヤモンド状炭素)が形成されたためであることを、表面電位顕微鏡で物質固有の仕事関数差とそれによる電子分布で測定した。その結果、表面形状像と同様の構造体が確認され(図10e)、該構造体が、BaTiO上のダイヤモンドからなるヘテロ構造であることが分かった。
尚、このヘテロ構造の形成は、探針とBaTiOの向きをほぼ一定にして行ったので、全てのヘテロ構造において、ダイヤモンドの結晶軸方向とBaTiOの結晶軸方向の関係はほぼ同じである。さらに、この工程のBaTiOのみガラスに変えて行ったところ、ガラス上のダイヤモンドヘテロ構造が確認された。
このように、非晶質金属酸化物と結晶性金属酸化物双方上にダイヤモンドヘテロ構造形成ができる。このとは、従来の基板の結晶性を利用した結晶配向と異なる原理で、結晶軸を揃えたヘテロ構造の形成が多くの共有結合性物質で可能であることを示す。
また、力―距離曲線から求めた結合エネルギーから、実施例3と同様にして、ヘテロ接合のが結合エネルギーの下限を求める、原子1個当たり平均約0.5eV以上であった。通常、一対の共有結合的な結合の大きさは2〜4eV程度なので、最表面の2個〜8個に1個以上の原子が共有結合的な結合に関与していることになる。実施例3と同様の論理から、この結果も図1aのようなヘテロ接合界面ができていることを示す。
ダイヤモンドの結晶軸方向を変えても、斥力等その他の探針の操作条件を同じにすれば、同様なダイヤモンドのヘテロ構造ができた。これらのことは、本実施例が、下地の結晶性や結晶配向等の下地の表面原子配列を用いずに、結晶配向した結晶性堆積層を成長できる(非エピタキシャルな成長)ことを証明する。
実施例3〜6と比較例3は、前記の活性酸素を照射した金属酸化物の表面に酸素原子が露出し、且つ、この酸素原子が金属酸化物の構成要素と結合した状態であることを証明する。
これを、BaTiO単結晶の場合に説明する。
活性酸素を照射後の表面原子層は、吸着層、酸化バリウム、酸化チタン、酸素、バリウム、チタン、水素のいずれかである。上記のどの探針でも、吸着層で覆った表面の引力は小さく、且つ、ヘテロ構造を形成しないので、吸着層だとすると、実施例の活性酸素処理した状態の特性が説明できない。金属結合は共有結合に比較できる程度の強さを持つので、バリウム、チタン、水素が表面原子層だとすると、酸化したシリコンや金や白金の探針との引力が低く結合が弱かったことが説明できない。
また、金属酸化物を構成していない酸素原子が最表面とすると酸素自体は探針に結合するが、その下の層は結合しないので、引力が高くヘテロ構造が形成されたことが説明できない。残るのは、酸化バリウムか酸化チタンが、表面原子層である場合である(図1a、この例では、Mがチタンかバリウム、Sがシリコン)。
この何れでも、酸素原子の軌道が表面にでているので、酸化され易い元素であるシリコンと結合し、酸化され難い状態である酸化シリコンや白金や金と結合しないことが説明できる。尚、量子力学的計算(第一原理計算)でも、金属酸化物の安定な清浄表面には酸素が露出している。
さらに、図2bの活性酸素を照射したBaTiOと酸化膜等の表面の不活性層を除去し清浄化したシリコンの引力の大きさは共有結合的結合であることを示す。また、この結果は、共有結合性物質の最表面の酸化で結合性とヘテロ構造の形成を制御できることを示す。
〔実施例7〕実施例3と同様に強酸化したBaTiO単結晶の表面へ、清浄化した表面共有結合性物質であるシリコン製探針(実施例3で用いた探針と同様の処理をしたNSC11B)を、室温で50nNの斥力を検出する程度に接近させたところ、強い引力が検出された。この部分の表面形状を、非接触モードの原子間力顕微鏡で測定したところ、探針を近づけた位置にBaTiO単結晶上のシリコンからなるヘテロ構造が形成されていることが判明した。
即ち、50nNという分子間力とあまり異ならない弱い力でも、高さと底面が2ナノメーターから30ナノメーター程のヘテロ構造が形成できた。このことは、10ナノメーター程度の非常に微小なヘテロ構造が可能であること、実施例3よりもさらに結晶性を損傷せずに、本発明のヘテロ構造が作製できることを示す。
〔実施例8〕また、比較例と同様に清浄な金と白金の探針(マイクロマッシュ社の原子間力顕微鏡用カンチレバー型番NSC35Ti/PtとCSC37Cr/Auの表面を処理用真空層で清浄化したもの)及び清浄化したシリコンの探針(実施例3と同様のもの)を用いて、仕事関数の高い金属(金、白金)に活性酸素を照射して清浄化強酸化し、力―距離曲線を測定した。
この場合、金と白金の表面を活性酸素処理すると、シリコンの探針との引き離し時の引力が数倍から10倍増加した。このことは、活性酸素で清浄化して、表面が金属酸化物になったため(表面金属酸化物)、共有結合性物質と結合を作りやすくなったためと考えられる。
〔実施例9〕実施例3と同様に、シリコン製探針(実施例3で用いた探針と同じNSC11B)を用いて、強酸化したサファイヤ(Al)単結晶の表面にヘテロ構造を室温で形成した。該サファイヤ単結晶の表面はA面(格子定数0.4758ナノメーター1.2991ナノメーター)であるが、機械研磨された物を後処理なしでそのまま用いたため、最表面は非晶質である。
実施例3と同様の手順のようにして、約1000nNの力でシリコン製探針をサファイヤ表面に押し付けると、引き離し時の引力が1000nNから1500nNのになった。位置を選んでこれを繰り返して、サファイヤ上のシリコンからなる一辺が約100ナノメーター高さ約3ナノメーターのヘテロ構造を約1ミクロンN字形に並べて形成した。この表面形状を、非接触モードの原子間力顕微鏡で測定したところ、目的位置に対して3−5ナノメーターの位置精度で、ヘテロ構造体が形成されていた(図11a)。
NSC11Bの先端は結晶軸<100>が針の先端方向、2つの<110>軸が針の操作方向及び面内の垂直方向に向いた単結晶なので、<100>結晶軸が表面に垂直で<110>軸が面内に揃った単結晶性シリコンからなるヘテロ構造のN字配列ができたことになる(図11a内の左側に各シリコンへテロ構造の<110>結晶方位を“L字を左右逆にした記号”で示した)。
このことは、実施例5、6と同様に、従来の基板の結晶性を利用した結晶配向と異なる原理で、結晶軸を揃えたヘテロ構造体の形成が可能であることを示す。また、実施例3と同様に、力―距離曲線から求めた結合エネルギーから求めたヘテロ接合界面での結合エネルギーは、原子1個当たり平均約0.5eV以上であった。通常、一対の共有結合的な結合の大きさは2〜4eVなので、最表面の4個〜8個に1個以上の原子が共有結合的な結合に関与していることになる。即ち、実施例3と同様の論理で、図1aのようなヘテロ接合界面ができていることを示す。
尚、これまでの全ての実施例で、一回の図2aの操作で形成されるヘテロ構造面積は、工程2bの斥力の大きさにほぼ比例した。即ち、図2aのような先端が三角形の探針では、堆積される表面共有結合性物質の大きさを斥力で制御できる。
即ち、このような斥力が必要なのは、三角形では底辺と高さが比例しているため、より多くの底辺部分が基板に接するためには、より長い領域が変形しなければならないためである。
さらに、図2bの斥力の10分の1の大きさで接しても、微小な堆積ができた。これらのことからも、探針先端と基板の形状が原子レベルで一致していれば場合は、探針先端の変形が不要なので、斥力が殆ど必要ないことが示される。
このN字配列のヘテロ構造体と同時に、同様にして、ヘテロ構造を5ミクロンx6ミクロンの長方形に並べたヘテロ構造体も形成した。これを大気中に取り出し、顕微ラマン分光装置で測定した。非常に微小な信号でノイズに埋もれているため、ヘテロ構造体を形成した部分としない部分を数十回繰り返して測定を行った。
図11bは、ヘテロ構造を形成した部分(黒丸)としない部分(三角)のラマン特性を比較するため、両者のスペクトルを示す。ヘテロ構造体を形成した部分には、500cm−1を中心に幅広いピークが存在する。
巨視的な単結晶シリコンのF2g対称性の光学モードは520cm−1の波数を持つが、結晶の大きさがナノスケールになると、より低い波数にピークを持つ幅広いスペクトルになることが多数の論文で報告されている。このため、図11bは、“結晶性”のシリコンから成るヘテロ構造体が形成されたことを示す。
また、サファイヤのピークは両部分で差がないため、結晶の変性や歪が検出されなかった(図11c)。
これらから、結晶の整合性がなくても、下地と堆積層共に、堆積前の結晶性を保持するヘテロ構造ができたことがわかる。また、このように室温での接触で、双方の結晶性が保たれ、歪が生じないことは、作製原理から考えて、相互拡散やそれによる反応層ができていないことを示す。
さらに、このヘテロ構造体は、大気中に半年間放置し、車両を用いた通常の搬送等を繰り返しても安定に存在した(図11d)。このことも、本発明のヘテロ接合が、共有結合的な化学結合で形成されていることを示す。
また、本実施例で、シリコンの結晶軸方向を変えても、探針の操作条件を同じにすれば、同様な結晶性シリコンのヘテロ構造ができた。これらのことは、本実施例が、下地の結晶性を用いずに(非エピタキシャル)、結晶配向した結晶性ヘテロ構造が形成できることを証明する。

〔実施例10〜15〕
〔実施例10〜15の概要〕
本発明のヘテロ構造体の形成法は、実施例1〜9に基づいて
1.金属酸化物上の表面共有結合性物質の形成(例:図2a,16,18)、または、表面共有結合性物質上の金属酸化物の形成(例:図12,23)、
2.板状物質からの堆積(例:図16,19)、または、ナノスケールの粒子の堆積(例:図2a,18a,22a,23)
3.ナノスケール粒子の移動に、結合性(接着力)を制御した探針を用いる方法(例:図2b,12)と用いない方法(例:図18a,19)。
がある。
以下に、本発明のヘテロ構造体形成の6通りの方法が例示する。
尚、実施例から示されるよう、粒子を探針で移動する際に必要な結合性(接着力)の抑制は、粒子が金属酸化物なら、酸化の度合い等で表面を制御した表面共有結合性物質の探針、粒子が表面共有結合性物質なら、表面を化学的に不活性にした(フッ化、酸化、窒化)探針を用いることででき、また、これらの探針を故意に吸着物で汚して引力を低下させてもよい。引力と結合を小さくするには、該探針の先端の曲率半径を小さくすることも有効である。
尚、粒子を用いる場合(例:図2a,18a,22a,23)は、粒子の形状を調整せず且つ下地が平坦な場合は、端の抉れが大きく、ヘテロ接合界面の面積が小さい。しかし、この場合でも、ヘテロ接合界面では、金属酸化物の表面の形状と該共有結合性物質の表面の形状が、互いにほぼ一致していると見なせる。
このように小さなヘテロ接合界面は、不安定なので、ヘテロ接合界面も面積を大きくする工夫が必要である。図18b,22bは、下地が平面の場合に、ヘテロ接合界面も面積を大きくする形状の例である。
第1の方法(図2a,13a,13b,13c,14)、第2の方法(図16、17)、第4の方法(図19、21)では、3次元的に各ヘテロ構造の結晶軸方位を揃えることが容易である。
一方、第3,5の方法のように、粒子を用いる場合は、粒子の結晶軸方向を揃えるのには、粒子の形状を工夫したり電場や磁場を印加する等が必要である。
第1の方法(図2a,13a,13b,13c,14)のように探針状の表面共有結合性物質を用いる方法では、探針の構成物質自体をヘテロ構造に用いる。即ち、ヘテロ構造を作製する都度、探針の構成物質がその先端から失われる。このため、この方法を繰り返して用いる場合には追加の工夫が必要である。
しかし、図2aの工程2cから工程2dの過程で、都度、先端が新しく且つ先鋭になることを、見出した。この機構は、工程2cから2dで、先端部分が原子スケールで延伸されながら隔離するために、高真空中では、清浄で酸化されていない鋭利な先端が形成されるためである。このことは、実施例3の図8cで、同じ条件で9個のヘテロ構造を作っても、ほぼ同じ大きさのヘテロ構造ができていることに見て取れる。このように、先鋭で酸化されていない清浄な先端が維持されるので、図2のように、同一の先端で繰り返して堆積を行える。
尚、本方法や以下の方法で用いる先端が、操作失敗等で劣化したりごみが付着したりした場合には、高いエネルギービームを該先端に照射したり、他の物体に接触しないようにしながら先端を振動させる、または、接着性の低い物質の上をなぞる等で回復できる。
第5、6の方法(図12,22a,23)では、金属酸化物のナノスケールの粒子(図中符号2a)を用いる。
従来は、ナノスケールの金属酸化物の粒子で、結晶性を高くし高特性を得ることは、できなかった。しかし、近年、5〜10ナノメーターの大きさでも単結晶と同等の特性を持ち、形状も直方体であるBaTiOやSrTiO等の結晶性金属酸化物の微粒子が、水溶液中で超音波を用いて合成され、非特許文献7〜9で報告されている。
このような特徴は本発明に好適で、また、粒子の大きさが揃えられる点も好ましい。
上記6つの方法における典型的な工程を、表面共有結合性物質からなる探針で、強酸化した金属酸化物のナノスケール粒子を移動して堆積する場合で説明する(図12)。
まず、ナノスケール粒子に該探針を接近(または接触)させ(工程12a,工程12b)、該探針を引き上げて(工程12c)、ヘテロ構造を形成する位置に該探針を下げて、該粒子を該位置の表面共有結合性物質に接近(または接触)させた後に、該探針を引き上げれば、ヘテロ構造が形成できる。
この場合、該探針が該粒子を引き上げられる引力を持ちつつ、その引力が該位置の表面共有結合性物質と該粒子の引力(結合)より十分弱いように、該探針の表面の不活性化(フッ化膜や酸化膜や窒化膜等)や 吸着層を調整する。図12の例では、該探針の表面を酸化させて結合性引力(接着力)を調整している。
尚、該粒子と該探針の引力が弱すぎれば、移動中に該粒子を落とすことがあり、強すぎれば、ヘテロ構造作製後に該粒子上に該探針の一部が付着して残ったり、場合によっては、該探針を引き離す際に該粒子が剥離する。図12で該粒子を一時的に乗せる下地の表面は、該粒子と共有結合的に結合しにくいもの(例えば、金やフッ化膜、安定な窒化膜)で覆われた面が好ましい。
多くの場合、シリコン等共有結合性物質は、金属酸化物に比べ微細加工し易い。これを活かして、第1,4、5、6の方法(図2a,13a,13b,13c,14、19、21、12,22a,23)では、微細加工した表面共有結合性物質に、金属酸化物を接近させる。何れの6つの方法共、金属酸化物の微細加工も、金属酸化物が堆積された状態での共有結合性物質の微細加工もないため、該金属酸化物の劣化を回避できる。
この6つの方法では、次のように結晶軸を揃えることができる。図2a,13a,13b,13c,14,16,17,19,21の工程を用いる場合は、各針また基板の結晶軸方向を所望の方向に揃えれば、接近(または接触)で堆積されるものを、ほぼ同一の方向に揃えられる。さらに、針または基板を水平方向で回転すれば、結晶の2軸の向きを工程ごとに変えることができる。
一方、図12,18a,22a,22c,23のように粒子を用いる場合は、例えば板状粒子の面に垂直方向は<001>軸等のように、各粒子の軸を揃えたものを作製し、積層すれば、垂直方向の結晶軸が揃ったヘテロ構造が作製できる。
以下に、6つの方法をそのバリエーションを含めて説明する。
〔実施例10〕 第1の方法は、表面を強酸化した巨視的な大きさの金属酸化物上を、ナノスケールに鋭利な先端を持つ表面共有結合性物質で走査し、所望の位置で、接近させ離すことを繰り返す(図2a)。例えば、Lの字型のナノスケールヘテロ構造体を形成する場合、該金属酸化物上で該表面共有結合性物質をLの字に動かしつつ、該金属酸化物への接近(または接触)と隔離(工程2a〜工程2d)を繰り返す。
上述のように、このナノスケールに鋭利な先端は、繰り返し使える。
また、ナノスケールの探針を集積化すれば、生産性を高められる。例えば、図13aの例では、42個の探針が集積されており、図2aと同様の工程で42個のLの字のへテロ構造体を一度に形成できる。
さらに、材料の異なる表面共有結合性物質で、ナノスケール探針を集積化すれば、場所毎に構成物質が異なるヘテロ構造体ができる。
例えば、図14に示す2種類の集積化したナノスケール探針(集合探針A,B)を逐次、前記金属酸化物に接近させて引き離せば、図15のように2種類の材料からなるヘテロ構造体が一度に形成できる。この第1の方法と逆に、巨視的な大きさの表面共有結合性物質上を、表面を強酸化した鋭利な先端形状の金属酸化物で走査する方法もありえる。
図13aの針状の表面共有結合性物質一本一本を、図13b,13cの断面図のようにすれば、図2a,13a,14,15等を繰り返し使う際に、ヘテロ構造の大きさの再現性を高くできる。このように先端が平坦で、且つ、先端が目的とする堆積層の大きさになっていれば、図2aの工程2aでは十分接近するだけで押し付ける力は殆どなくてよい。
〔実施例11〕 第2の方法は、酸素欠損を生じないようにしつつ表面を清浄化した金属酸化物を作る際に、該金属酸化物上のヘテロ構造を形成する場所のみ、強酸化する。
例えば、所望の場所のみ活性酸素を照射する(図16,17)。具体的には、所望の位置のみ空けたマスク越しに活性酸素を照射する(工程16a)、または、収束したビーム状の活性酸素を所望の位置のみに低運動エネルギーで照射する(工程17a)。
このようにして、所望の場所のみ強酸化された表面にし(工程16b,工程17b)、一方、一様に酸化膜等の表面の不活性層を除去して清浄化し、表面共有結合性物質を得る(工程16c,工程17c)。
このように処理した面を相互に接近(または接触)させて(工程16d,工程17d)引き離せば、所望のパターンができる(工程16e,工程17e:裏返ったコの字がヘテロ構造体)。また、強酸化してない金属酸化物表面は、接近前に、より不活性にするための処理(フッ化等)を行ってもよい。
本第2の方法は容易であるが、精度よくヘテロ構造体を作るには、該表面共有結合性物質が、弱い力で変形したり引きちぎられやすい物質であることが好ましいという制限がある。
〔実施例12〕 第3の方法は、第2の方法の平板状の表面共有結合性物質(図16)に代えて、粒子状の表面共有結合性物質を、金属酸化物上に散布し、その後、結合の弱い粒子を外力で除去する(図18a)。即ち、マスク越しの活性酸素照射等により(工程18a)、所望の場所のみに、強酸化で酸素欠損を生じないように表面を清浄化した金属酸化物を形成する(工程18b)。該マスクはレジストでもよい。
一方、表面から酸化膜等の不活性層を除去して清浄化して、ナノスケール粒子状の表面共有結合性物質を作製する。このナノスケール粒子を該金属酸化物上に一様に散布する(工程18c,工を程18d)。この後、結合の弱い粒子を外力で除去すると、所望の場所のみ該粒子が残り、ヘテロ構造体が形成される(工程18e)。
マスクとしてレジストを用いる場合は、レジストは、ヘテロ構造が目的の場所以外に形成されないようにするカバーになる。このため、レジストの除去は、ヘテロ構造形成後でもよい。この場合には、レジスト除去前に、ヘテロ構造の安定性を高めるため、加熱や超音波処理で結合を高めておくこともよい。
この外力の例は、粒子に静電気を帯電させて利用する静電気力、ガス吹き付けの圧力や超音波が例示できる。尚、該粒子が鉄、コバルト等の強磁性体またはフェリ磁性体の場合は、結合の弱い該粒子を磁場で引き離して除去できる。また、図12の方法で、探針(図12,13a,13b,14)を用いて、ヘテロ構造体部分以外の粒子を除去してもよい。
また、該ナノスケール粒子の直径は、作製しようとするナノスケールの構造体の最短部分の長さ以下であることが好ましい。この方法及び以下の図22aの方法が可能なのは、微粒子は、微粒子の基板と接する面と基板が共に十分平坦な場合、接近だけで両者に共有結合的な結合を生じるためである。
図18aに用いる共有結合性物質の微粒子は、微粒子の基板と接する面と基板が共に十分平坦であれば、特に力を加えることなくヘテロ構造を形成する。この例には、図18bのような直方体の形状の粒子がある。
〔実施例13〕 第4の方法は、予め、ヘテロ構造体の形状に微細加工した表面共有結合性物質を作製し、一方、金属酸化物の表面を一様に強酸化する。それ以降は、第2の方法と同様である(図19)。
即ち、該金属酸化物を、活性酸素を低運動エネルギーで照射し強酸化する(工程19a,19b)。一方、表面共有結合性物質とする物体の表面に、レジスト等を用いたリソグラフィー(工程19c)で、目的とする形状の鏡像対称の形状を形成し、その表面の吸着層や酸化膜等の不活性層を除去し清浄化する(工程19d)。図19の例では、工程19dのコの字型の部分も表面共有結合性物質である。これらの処理した面同士を接近(または接触)させて(工程19e)、引き離せば、所望のパターンができる(工程19f)。
ヘテロ構造体の損傷を防ぎ形状精度を向上するには、該表面共有結合性物質の側面図(図20)のように、工程11dの構造が、細い接合部を持つ状態を作ることが有効である(図20では、ヘテロ構造体の底の部分が細い)。
尚、第4の方法と類似の別法がある。即ち、工程19cに代えて、まず、物体の表面を不活性化(フッ化、酸化、窒化等)し、工程19dに代えて、ヘテロ構造体を形成する所望の場所のみ、酸化膜等の表面の不活性層を除去し、必要に応じて、この表面の不活性層除去部分を、プラズマやイオン照射で清浄化して、所望の部分のみ表面共有結合性物質にする。それ以外の工程は第4の方法(図12)と同様である。
また、図14を用いて図15を得るのと同様に、第4の方法で材料の異なる表面共有結合性物質を用いれば、複数の材料からなるヘテロ構造体ができる。例えば、図21は2種類の表面共有結合性物質を用いる例であり、図19において、工程19dを工程21d1と工程21d2に代え、工程19eを工程21e1と工程21e2に代えれば、所望のヘテロ構造体(工程21f)ができる。
〔実施例14〕
第5の方法は、第3の方法での表面共有結合性物質と金属酸化物の役割を入れ替えるものである(図22a)。
即ち、表面共有結合性物質として用いる物体の表面全面を不活性化(フッ化、酸化、窒化等)する(工程22a)。ヘテロ構造体を形成する所望の場所のみ、イオビームやマスク越しのプラズマエッチング等により、酸化膜等の表面の不活性層を除去し(工程22b)、必要に応じて、プラズマやイオン照射による清浄化を追加して、表面共有結合性物質を得る。該マスクはレジストでもよい。
一方、金属酸化物のナノスケール粒子を合成し、その表面を、活性酸素照射により強酸化する。
次いで、該ナノスケール粒子をこの微細加工した物体に一様に散布する(工程22c,22d)。この後、結合の弱い粒子を外力で除去すると、所望の場所のみ粒子が残り、ヘテロ構造体が形成される(工程22e)。
この外力の例は、粒子に静電気を帯電させて利用する静電気力、希ガス吹き付けの圧力や、重力下での振動等がある。該粒子が強磁性体またはフェリ磁性体の場合は、結合の弱いナノスケール粒子を磁場で除去できる。また、図12の方法で、探針(図12,13a,13b,14等)を用いて、ヘテロ構造体部分以外の粒子を除去してもよい。
該マスクとしてレジストを用いる場合には、レジストは、ヘテロ構造が目的の場所以外に形成されないようにするカバーになる。このため、レジストの除去は、ヘテロ構造形成後でもよい。この場合には、レジスト除去前に、ヘテロ構造の安定性を高めるため、加熱や超音波処理で結合を高めておくこともよい。
表面共有結合性物質の形状は任意で、工程22aのように、集積回路の配線や基板の所望の部分を表面共有結合性物質で覆ったものでよい。
尚、清浄表面を持つ共有結合性粒子で、図18a等の吹き付けを用いる場合は、粒子を飛翔させた状態で赤外線やイオンビーム等を照射し、全ての面が清浄化されるようにする。
また、強酸化された金属酸化物粒子で、図22a等の吹き付けを用いる場合は、粒子を飛翔させた状態で活性酸素を照射し、全ての面が酸化されるようにする。
また、図12等の探針等を用いて、金属酸化物粒子を搬送する場合は、底面は強酸化され難いので底面以外の面が下になるよう転がす等の工夫が必要である。逆に特定の面だけ、強酸化すれば、その面がヘテロ接合しやすいように制御できる。
図22aに用いる微粒子は、微粒子の基板と接する面と基板が共に十分平坦であれば、特に力を加えることなくヘテロ構造を形成する。この例には、図22bのような直方体の形状の粒子がある。このような金属酸化物微粒子は、非特許文献6〜8等で報告されている。
図22cは、図22aの別の例であり、強酸化した金属酸化物微粒子の表面が表面共有結合性物質と接近するだけで結合し、さらに、強酸化により金属酸化物微粒子同士も結合しやすくなることを用いて、ヘテロ接合界面の反応や応力歪が少ない薄膜を形成する工程を示す。
図22cでは、強酸化した金属酸化物微粒子を薄く安定な酸化物を形成し易い金属等(チタンやコバルトやアルミニウム等)の表面共有結合性物質に散布する(工程22c1)。その上にさらに、金属酸化物微粒子を堆積し(工程22c2)、表面を覆う薄膜を得る(工程22c3)。
これらの工程中できるたけ均一で一様に粒子が堆積され且つ粒子同士が結合するように、超音波などでエネルギーを与えることも好ましい。
コンデンサー等の上下の電極のショートが許容されないヘテロ構造体で上部電極を従来の蒸着法で形成する場合は、微粒子を厚く且つ緻密に堆積して、金属酸化物微粒子層上の金属膜の原子が下側の界面に到達しないようにする必要ある。
このためには、工程22c1(大きな粒子堆積)、工程22c2(小さな粒子堆積)のように、大きさの異なる粒子を逐次堆積することを繰り返すことも有用である。
これに代わるコンデンサー形成法には、表面を清浄にして表面共有結合性物質にした金属箔の間に、強酸化した金属酸化物微粒子を挟んで、上下両方の電極と属酸化物微粒子が接するようにする方法がある。
〔実施例15〕 第6の方法は、第3第5の方法でのナノスケール粒子の“散布”に代えて、図12の方法で、ナノスケール粒子を所望の位置に接近(または接触)し堆積する。
以下では、金属酸化物のナノスケール粒子を表面共有結合性物質に接近(または接触)し堆積する場合を例示するが(図23)、逆に、表面共有結合性物質のナノスケール粒子を金属酸化物に接近(または接触)し堆積する場合も同様にできる。
まず、表面の酸化膜等の表面の不活性層を除去し清浄化するか共有結合性元素を堆積させて、表面共有結合性物質のナノスケール構造を得る(工程23a)。この表面の不活性層除去と清浄化(また共有結合性元素を堆積)は、ヘテロ構造体を形成する位置のみでもよい。一方、目的とするヘテロ構造体の形状に適した集積化ナノスケール探針を用意し(図24a)、その先端の結合性(接着性)を表面酸化膜や吸着物で調整する(工程23b)。
一方、金属酸化物のナノスケール粒子を合成し、その表面を、活性酸素照射より強酸化する(工程23c)。この該粒子と該先端の間の結合性引力(接着力)により、該粒子を該先端に吸着させる(工程23d,工程23e,図24b)。該粒子を該先端ごと、該表面共有結合性物質に接近(または接触)させてから、該先端を引き離せば(工程23f)、所望のヘテロ構造体が形成できる(工程23g)。
該粒子と該先端間の結合性引力(接着力)は、該粒子と該表面共有結合性物質表面の結合より十分弱く、且つ、該粒子がその移動中に該先端から離れない程度調整する必要がある。尚、表面共有結合性物質の形状は任意で、工程23aのように、集積回路の配線や基板の所望の部分を表面共有結合性物質にしたものでよい(工程23gでは、ヘテロ構造体が、基板上の配線の一部の上とその隣接部の一部の上に形成されている)。
また、図24aのような集積化ナノスケール探針に代えて、目的とする構造の集積構造(工程19dの結合性引力(接着力)を調整したもの等)で該粒子を移動して、ヘテロ構造体(工程23f)を形成してもよい。また、上記集積化ナノスケール探針の先端の曲率半径の2倍及びナノスケール粒子の直径は、作製しようとするナノスケールの構造体の最短部分の長さ以下であることが好ましい。
上記の第1〜6の方法は、主に、2層のヘテロ構造体の作製法であり、物質を代えてこの方法を繰り返したり組み合わせる、または、従来の微小構造形成法と組み合わせることで、3層以上で構成されるヘテロ構造体が形成できる(図25)。
例えば、前記金属酸化物は、電極用金属等(図25a)に形成した薄膜でもよい。これに、第1〜6の方法を用いれば、3層で構成されるテロ構造が形成できる。尚、図25aの3本の配線のように、予め所望の形状に微細加工したものでもよい。さらに、この上に従来の微細加工法で他の物質を形成してもよい(図25b,図25c)。
図25bは、絶縁膜上に、表面共有結合性物質を形成し、第5、6の方法(図12,22a,23)等で、前記金属酸化物を接近(または接触)で堆積し、層間絶縁膜を堆積した後に、該金属酸化物上の層間絶縁膜にコンタクトホールを空け、その上に配線用の導体を形成した例である。図25cは、基板上に、金属酸化物を形成して強酸化し、次いで、第3、4、6の方法(図2a,18,19)等で、表面共有結合性物質を接近(または接触)で堆積し、層間絶縁膜を堆積して、該金属酸化物上の層間絶縁膜にコンタクトホールを空け、その上に配線用の導体を形成した例である。尚、層間絶縁膜は、絶縁性のレジストでもよい。
また、図25dのように、各層を第1〜6の方法で形成することも可能である。図25dでは、絶縁性金属酸化物の表面を強酸化し、表面共有結合性物質を接近(または接触)で堆積し、強酸化した金属酸化物を接近(または接触)で堆積し、表面共有結合性物質を接近(または接触)で堆積する。
〔実施例16〕グラフェンを用いた電子素子への応用例
近年、グラフェンと呼ばれる、厚み1〜2格子の層状のグラファイト結晶が次世代の半導体として注目されている。この応用には、絶縁体とのヘテロ構造を利用した電界効果素子等が知られている。
グラフェンは、通常、粘着性のテープ等でグラファイト結晶から剥がして、その剥がした膜を基板の上に堆積する。この工程は、非効率で且つグラフェンが損傷しやすい。
これに代えて、強酸化した金属酸化物表面に、グラファイト結晶を載せて、このグラファイト結晶を金属酸化物から引き離せば、一つの工程で、グラフェンの剥離と堆積ができ、これにより、グラフェンの損傷が防げる。
この方法では、上記第1〜6の方法と異なり、面内の大きさが大きなグラフェンの堆積もできる。このように大きな場合には、グラフェンを堆積後微細加工する必要がある。
また、金属酸化物の例は、図25aのような電極上の金属酸化物薄膜やシリコン上のシリコン酸化膜などが例示できる。
1 表面共有結合性物質
01 表面共有結合性物質上の表面の不活性層(自然酸化膜等)
1a 表面共有結合性物質のナノスケール粒子
1b 表面共有結合性物質の集積構造
1c 符号1bと物質や構造が異なる、清表面共有結合性物質の集積構造
2 金属酸化物
2a 金属酸化物のナノスケール粒子
3 表面共有結合性物質のナノスケールヘテロ構造
03 金属酸化物のナノスケールヘテロ構造
3b 表面共有結合性物質のナノスケールヘテロ構造
3c 符号3bと物質や構造が異なる、表面共有結合性物質のナノスケールヘテロ構造
31 表面共有結合性物質のナノスケールヘテロ構造
32 ナノスケールの層間絶縁膜
4 マスク
5 フォトレジスト
6 部分的に酸化膜等の表面の不活性層を除いて清浄化した表面共有結合性物質である
部分
7 基板
8 絶縁膜
E1 ECRラジカル発生装置
E2 マイクロ波発生装置
E3 処理用真空槽
E4 試料
E5 加速電源
E6 真空ポンプ
E7 導入用真空槽
E8 測定用超真空槽
E9 酸素純化

Claims (16)

  1. 構造体に含まれる少なくとも一つのヘテロ接合が、
    金属酸化物と共有結合性物質から構成され、
    該ヘテロ接合が、該金属酸化物上の該共有結合性物質の堆積による場合は、該共有結合性物質が結晶性、
    該ヘテロ接合が、該共有結合性物質上の該金属酸化物の堆積による場合は、該金属酸化物が結晶性であり、
    該金属酸化物の表面の酸素原子の一部と、
    該共有結合性物質の表面の構成原子の一部が、
    共有結合的に結合して隣接することを特徴とする構造体。
  2. 請求項1に記載されたヘテロ接合を構成する金属酸化物と共有結合性物質において、
    該金属酸化物内に、該金属酸化物の構成元素でない該共有結合性物質の構成元素を殆ど含まず、
    該金属酸化物内に、該金属酸化物の構成元素でない該共有結合性物質の構成元素を殆ど含まないことを特徴とする構造体。
  3. 請求項1または2いずれかに記載された構造体の少なくとも一つのヘテロ接合において、
    前記共有結合性物質が非酸化物共有結合性物質であり
    金属酸化物と共有結合性物質から構成される該ヘテロ接合の界面で、
    前記酸素原子は、
    少なくとも1つの該金属酸化物を構成する金属と共有結合的に結合し隣接し、
    該金属酸化物を構成する金属は、少なくもの1つの酸素原子と共有結合的に結合し隣接し、
    該共有結合性物質の構成元素は、少なくとも1つの共有結合性物質を構成する元素と共有結合的な結合し隣接することを特徴とする構造体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載されたヘテロ接合を構成する金属酸化物と共有結合性物質において、
    該金属酸化物のヘテロ接合界面近傍の原子配列と格子定数が、該金属酸化物の内部またはいずれかの自由表面近傍の原子配列と格子定数と、ほぼ同じであるか、
    該共有結合性物質のヘテロ接合界面近傍の原子配列と格子定数が、該共有結合性物質の内部またはいずれかの自由表面近傍の原子配列と格子定数と、ほぼ同じであることを特徴とする構造体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載されたヘテロ接合を構成する金属酸化物と共有結合性物質の両物質夫々が、結晶構造を有し、
    該ヘテロ接合の界面における該両物質の表面の格子の格子定数が互いに不整合か、
    該ヘテロ接合の界面における該両物質の表面の結晶方位が不整合であることを特徴とする構造体。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載されたヘテロ接合を構成する金属酸化物層または共有結合性物質層の一方が、非結晶であることを特徴とする構造体。
  7. 請求項5または6のいずれかにおいて、
    該ヘテロ接合が、該金属酸化物上の該共有結合性物質の堆積による場合は、
    該共有結合性物質の結晶の結晶方位が、ほぼ一定方向に揃っているか、
    該ヘテロ接合が、該共有結合性物質上の該金属酸化物の堆積による場合は、
    該金属酸化物の結晶の結晶方位が、ほぼ一定方向に揃っている
    ヘテロ接合を含むことを特徴とする構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに用いられる金属酸化物が、結晶性複合金属酸化物であることを特徴とする構造体。
  9. 請求項1〜8のいずれかにおいて、
    少なくとも、該金属酸化物のヘテロ接合界面近傍の組成比が、
    該金属酸化物の内部またはいずれかの自由表面近傍の組成比と
    ほぼ同じであるか、
    または、少なくとも、該共有結合性物質のヘテロ接合界面近傍の組成比が、
    該共有結合性物質の内部またはいずれかの自由表面近傍の組成比と
    ほぼ同じであることを特徴とする構造体。
  10. 請求項1〜9のいずれかにおけるヘテロ接合に与る共有結合性物質の連続した領域の3辺のうち、または、金属酸化物の連続した領域の3辺のうち、1辺が0.3ナノメーター以上他の2辺が1ナノメーター以上で、少なくとも一辺が1ミクロン以下の結晶性物質である構造体。
  11. 構造体に含まれる少なくとも一つのヘテロ接合が、
    金属酸化物の層と共有結合性物質の層から構成され、
    該金属酸化物の活性酸素の照射で清浄化された表面と、
    該共有結合性物質の清浄化された表面を
    接近させることで形成され、
    該金属酸化物の表面の酸素原子の一部と、該共有結合性物質の表面の構成原子の一部が、
    共有結合的に結合して隣接していることを特徴とする構造体。
  12. 請求項11の活性酸素の照射を、原子状態の酸素を含むガスで行うことを特徴とする構造体。
  13. 請求項11または12のいずれかで、接近を室温と200℃の間の温度で行うことを特徴とする構造体。
  14. 請求項11に記載された構造体が、請求項1〜10のいずれかに記載された構造体の特徴を満たすことを特徴とする構造体。
  15. 請求項12に記載された構造体が、請求項1〜10のいずれかに記載された構造体の特徴を満たすことを特徴とする構造体。
  16. 請求項13に記載された構造体が、請求項1〜10のいずれかに記載された構造体の特徴を満たすことを特徴とする構造体。
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