JP2017179419A - 炭素膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温プロセスを必要とせずに、グラフェン等の炭素膜を基板上に大面積で形成可能な方法を提供する。【解決手段】金属触媒層(3)が表面に設けられた基板(1)の金属触媒層上に、炭素をスパッタすることにより、基板(1)と金属触媒層(3)との界面に炭素膜(5)を形成できる。金属触媒層(3)としては、例えば、Ni,Co,Cu,Fe,Pt,Ag,Au,Al,Cr,Cu,Mg,Mn,Mo,Rh,Ta,Ti,W,U,V,Zr等の金属が用いられる。【選択図】図1
Description
本発明は、基板上への炭素膜の形成方法に関する。
透明電極材料、二次電池用電極材料、次世代の炭素系電気素子用材料等として、グラフェン等のナノカーボン材料が有望視されている。グラフェンは、炭素原子がハニカム状に連結した平面構造を有し、電気伝導性および熱伝導性が極めて高いことが知られている。
グラフェン等のナノ炭素材料膜の実用化においては、大面積で膜を形成可能な技術が必要とされる。sp3構造の比率が大きいダイアモンドライクカーボンについては、スパッタ法等のPVD法や、CVD法による製膜方法が確立されている。グラフェン、あるいはsp2構造の比率が大きいグラフェンライクカーボンの形成方法としては、銅やニッケル等の金属触媒中に炭素原子を拡散させた後、加熱や冷却により、触媒表面に平面構造を有する炭素膜を形成する方法が知られている。
特許文献1および非特許文献1では、1000℃程度の高温環境下で、金属触媒上にメタンやアセチレン等の炭素含有ガスを供給後に、所定の冷却速度で冷却を実施することにより、金属触媒の表面にグラフェン膜を形成する方法が開示されている。特許文献2では、基板上に、酸化シリコン等からなる絶縁層および金属触媒層を設け、その上にアークプラズマにより分解された炭素を供給してグラファイト膜を製膜後、熱処理を行う方法が開示されている。この方法では、熱処理により、グラファイトの炭素が金属触媒層中に拡散し、絶縁層と金属触媒層の界面にグラフェン膜が形成される。
Qingkai Yu et al., Appl. Phys. Lett., 93, 113103 (2008)
大面積の膜を形成するためには、ロールトゥーロールプロセスを適用可能な可撓性の樹脂フィルム基板を用いることが有用である。しかし、従来のグラフェン膜の形成方法は、いずれも高温のプロセスを要し、使用できる基板に制限があるため、樹脂フィルム等の耐熱温度が低い(例えば耐熱温度が200℃未満の)基板への適用は不可能である。
上記に鑑み、本発明は、高温プロセスを必要とせずに、グラフェン等の炭素膜を基板上に大面積で形成可能な方法の提供を目的とする。
本発明の方法では、金属触媒層が表面に設けられた基板の前記金属触媒層上に、炭素をスパッタすることにより、基板と金属触媒層との界面に炭素膜が形成される。金属触媒層としては、例えば、Ni,Co,Cu,Fe,Pt,Ag,Au,Al,Cr,Cu,Mg,Mn,Mo,Rh,Ta,Ti,W,U,V,Zr等の金属が用いられる。
炭素をスパッタする際の基板温度は、好ましくは200℃未満である。スパッタ時の温度を200℃未満とすることにより、可撓性樹脂フィルム等を基板として用いることができる。炭素をスパッタ後には、基板の表面から金属触媒層を除去してもよい。
本発明の炭素膜の形成方法においては、炭素のスパッタ時、または炭素のスパッタ後に、スパッタ製膜面が水素と接触することが好ましい。炭素のスパッタ時にスパッタ製膜面を水素と接触させる方法としては、金属触媒層の内部および/または表面に水素を含有させる方法、炭素のスパッタ時に水素ガス等の水素原子含有ガスを導入する方法、炭素のスパッタ後に、水素や水等の水素含有ガスに膜表面を接触させる方法が挙げられる。
金属触媒層は、スパッタにより基板上に製膜されることが好ましい。金属触媒層の製膜時に、水素を供給しながらスパッタを実施することにより、内部および表面に水素を含有する金属触媒層を形成できる。金属触媒層をスパッタ製膜後は、製膜表面を大気に曝すことなく、炭素のスパッタが行われることが好ましい。
本発明の方法は、200℃以上の高温プロセスを必要としない。そのため、樹脂フィルム基板上への炭素膜の形成にも適用可能であり、大面積化や低コスト化に有利である。
本発明では、金属触媒層を備える基板上に、スパッタ法により炭素を供給することにより、基板と金属触媒層との界面に、グラフェンやグラフェンライクカーボン等の炭素膜が形成される。図1は、基板1上への炭素膜5の形成工程の一形態を表す工程概念図である。
まず、基板1上に金属触媒層3が設けられる(図1(A)および(B)参照)。基板1の材料は特に限定されず、ガラス板、シリコン基板、サファイア基板等の剛性基板でもよく、樹脂フィルム等の可撓性基板でもよい。本発明の方法は、高温プロセス(例えば基板を200℃以上に加熱するプロセス)を必要としない。そのため、基板1は、金属触媒層の製膜時および炭素膜形成時の基板温度における耐熱性を有していればよく、可撓性の樹脂フィルム等も適用可能である。
炭素をスパッタする際のスパッタ粒子の基板内部への浸入防止等を目的として、基板1の表面には、酸化ケイ素や窒化ケイ素等の絶縁膜が設けられていてもよい。基板表面にSiO2等の絶縁膜が設けられることにより、基板1と金属触媒層3との密着性を高めることもできる。基板の表面に絶縁膜が設けられる場合、その厚みは5〜300nm程度が好ましく、10〜200nm程度がより好ましい。
金属触媒層3は、スパッタにより供給された炭素のグラフェン構造形成を促進する作用を有する。金属触媒層3の材料としては、グラファイト化触媒として知られている金属材料が用いられ、例えば、Ni,Co,Cu,Fe,Pt,Ag,Au,Al,Cr,Cu,Mg,Mn,Mo,Rh,Ta,Ti,W,U,VおよびZr等の金属を含む。金属触媒層は2種以上の金属を含んでいてもよい。中でも、金属触媒層は、Ni、Cr、CoおよびCuからなる群から選択される1種以上の金属を含むことが好ましく、これらの金属を合計50原子%以上含有することが好ましい。
本発明の方法では、金属触媒層3の表面にスパッタされた炭素が、金属触媒層中に拡散して、金属触媒層3と基板1との界面に到達する。金属触媒層3と基板1との界面に炭素膜5を形成するために、金属触媒層3は、触媒機能を発揮可能な範囲で出来る限り膜厚が小さいことが好ましい。金属触媒層3の膜厚は、20〜200nmが好ましく、40〜100nmがより好ましい。
基板1上への金属触媒層3の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、CVD法等を適用できる。これらの中でも、金属触媒層の表面を大気に接触させることなく、金属触媒層の製膜と、炭素のスパッタとを連続して実施できることから、スパッタ法により金属触媒層を形成することが好ましい。
金属触媒層3は、膜中および膜表面に水素を含むことが好ましい。金属触媒層が膜中および表面に水素を含むことにより、金属触媒層3上に炭素をスパッタした際に、金属触媒層による触媒機能が高められ、金属触媒層中への炭素原子の拡散およびグラフェン構造の形成が促進される傾向がある。金属触媒層に水素を含ませる方法としては、製膜時に水素を供給する方法が最も簡便である。例えば、スパッタ法により金属触媒層を形成する場合は、アルゴン等の不活性ガスに加えて水素を供給しながら、金属Mのスパッタ製膜を実施すればよい(図1(A)参照)。
金属触媒層3の表面に炭素をスパッタすることにより、スパッタされた炭素が金属触媒層3の内部に拡散し、基板1と金属触媒層3との界面に炭素膜5が形成される(図1(B)および(C)参照)。金属触媒層3の作用により、基板1と金属触媒層3との界面に形成される炭素膜5は、炭素原子が平面に並んだグラフェン膜、あるいはsp2構造の含有率が高いグラフェンライクな膜となりやすい。
金属触媒層3がスパッタにより形成される場合、金属触媒層の表面を大気に曝すことなく、連続して炭素のスパッタが行われることが好ましい。金属触媒層の形成と炭素のスパッタを連続して実施することにより、工程を簡素化し、生産性を向上できる。また、金属触媒層3の表面を大気に曝すことなく連続してスパッタを実施すれば、表面に酸化膜が形成され難いため、金属触媒層3の膜中へのスパッタ粒子の拡散が促進される傾向がある。水素を供給しながら金属触媒層のスパッタ製膜が行われる場合は、金属触媒層3の表面に水素が存在する状態を維持しながら炭素のスパッタが実施される。そのため、スパッタ製膜面が水素と接触する状態で炭素のスパッタを実施でき、金属触媒層へのスパッタ粒子の拡散がさらに促進される傾向がある。
炭素のスパッタは、炭素原子を含むスパッタターゲットを用い、アルゴン等の不活性ガスを導入しながら放電を行うことにより行われる。炭素を含むターゲットとしては、カーボンターゲット(グラファイトターゲット)が好ましく用いられる。
スパッタ時の印加電圧および電力を大きくすると、ターゲットから飛び出すスパッタ粒子(炭素原子)のエネルギーが大きくなる。そのため、スパッタ粒子が金属触媒層の内部に浸入しやすくなり金属触媒層への炭素原子の拡散が促進されるとともに、炭素原子が金属触媒層3と基板1との界面に到達しやすくなると考えられる。従って、基板1の表面へのグラフェンライクな炭素膜の形成を促進するために、炭素のスパッタは高パワーで行われることが好ましい。炭素をスパッタする際のパワー密度は、0.5W/cm2以上が好ましく、0.8W/cm2以上がより好ましく、1W/cm2以上がさらに好ましい。炭素をスパッタする際のパワー密度の上限は特に限定されないが、ターゲットの熱割れや基板へのダメージ防止等の観点から、10W/cm2以下が好ましく、8W/cm2以下がより好ましく、6W/cm2以下がさらに好ましい。
炭素をスパッタする際の基板温度は特に限定されないが、200℃未満が好ましく、180℃以下がより好ましく、170℃以下がさらに好ましい。スパッタ時の基板温度が200℃未満であれば、樹脂フィルム等が基板として用いられる場合でも、基板が耐熱性を有する温度範囲で、スパッタを実施できる。本発明においては、炭素をスパッタする際の基板温度が低い場合でも、高パワーでスパッタを行うことや、スパッタ製膜面を水素と接触させることにより、金属触媒層中への炭素原子の拡散を促進し、基板と金属触媒層との界面に炭素膜を形成できる。
水素との接触により炭素原子の拡散が促進される理由は定かではないが、水素による結合末端の終端処理が寄与している可能性が考えられる。スパッタにより形成された膜は、スパッタ雰囲気中の酸化ガスや製膜後の空気との接触により結合末端が酸素により終端される場合が多い。金属触媒層の製膜表面や炭素膜の表面が、水素との接触により金属や炭素の末端が水素で終端処理されることにより、金属による触媒作用や、金属中への炭素の拡散性が向上する可能性が考えられる。
スパッタ製膜面を水素と接触させる方法としては、前述のように、金属触媒層の表面に水素を含んでいる状態で炭素をスパッタする方法や、炭素のスパッタ時に水素を供給する方法が挙げられる。スパッタ製膜面と水素との接触は、炭素をスパッタした後に実施してもよい。スパッタ製膜面と水素との接触は、水素ガスとの接触に限定されず、水素含有ガス等との接触でもよい。例えば、膜表面と空気中の水分とを接触させることにより、膜表面への水素の接触を実施してもよい。
金属触媒層表面に炭素をスパッタした後、必要に応じて加熱が行われてもよい。加熱により、金属触媒層内への炭素原子の拡散および基板と金属触媒層との界面への炭素膜の形成が促進される場合がある。樹脂フィルム基板等の耐熱性の低い基板を用いる場合、加熱温度は、基板の耐熱温度よりも低温で行われることが好ましい。加熱が行われる場合、加熱温度は200℃未満が好ましく、180℃以下がより好ましく、170℃以下がさらに好ましい。
上記の様に、金属触媒層の表面に高パワー密度で炭素をスパッタした場合は、高温での熱処理を行わなくとも、金属触媒層内に炭素原子を拡散させることができる。そのため、本発明の方法では、炭素をスパッタ後に高温で加熱を行わなくとも、基板1と金属触媒層3との界面に炭素膜5を形成できる。
炭素膜5を形成後、金属触媒層3をエッチングにより基板上から除去してもよい(図1(D)参照)。金属触媒層は、塩酸や硫酸等の酸系エッチング剤や、過酸化水素等の公知のエッチング液を用いて除去すればよい。金属触媒層を除去することにより、基板1上にグラフェンライクな構造を有する炭素膜5が設けられた炭素膜付き基板が得られる。
本発明により得られる炭素膜付き基板は、例えば、電極材料や放熱材料等に適用可能である。電極としては、二次電池用電極、透明電極、センサー用電極等が挙げられる。本発明の方法では、樹脂フィルム等の可撓性基板を利用できるため、種々の形状のデバイスへの適用や、ディスプレイ材料としての応用も期待できる。また、電池や電極等の界面を活性化する物質や、触媒等としての応用も期待できる。
[参考例1:フィルム上への金属膜の形成]
ポリエチレンテレフタレートフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、スパッタ装置のチャンバー内に設置した。カソードに銅ターゲットをセットし、チャンバー内を真空排気後に、アルゴンをチャンバー内に導入しながら、基板温度30℃、チャンバー内圧力0.8Paの条件下で、DC電源を用いて0.02kWの放電電力(放電パワー密度:1.0W/cm2)で60秒間、スパッタ製膜を行った。得られた銅薄膜の膜厚は、80nmであった。
ポリエチレンテレフタレートフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、スパッタ装置のチャンバー内に設置した。カソードに銅ターゲットをセットし、チャンバー内を真空排気後に、アルゴンをチャンバー内に導入しながら、基板温度30℃、チャンバー内圧力0.8Paの条件下で、DC電源を用いて0.02kWの放電電力(放電パワー密度:1.0W/cm2)で60秒間、スパッタ製膜を行った。得られた銅薄膜の膜厚は、80nmであった。
[参考例2:フィルム上へのグラファイト膜の形成]
ポリエチレンテレフタレートフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、スパッタ装置のチャンバー内に設置した。カソードにグラファイトターゲットをセットし、チャンバー内を真空排気後に、アルゴンをチャンバー内に導入しながら、基板温度30℃、チャンバー内圧力0.8Paの条件下で、DC電源を用いて0.1kWの放電電力(放電パワー密度:5.1W/cm2)で27秒間、スパッタを行った。得られたグラファイト薄膜の膜厚は、2nmであった。
ポリエチレンテレフタレートフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、スパッタ装置のチャンバー内に設置した。カソードにグラファイトターゲットをセットし、チャンバー内を真空排気後に、アルゴンをチャンバー内に導入しながら、基板温度30℃、チャンバー内圧力0.8Paの条件下で、DC電源を用いて0.1kWの放電電力(放電パワー密度:5.1W/cm2)で27秒間、スパッタを行った。得られたグラファイト薄膜の膜厚は、2nmであった。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、スパッタ装置のチャンバー内に設置した。カソードに銅ターゲットおよびグラファイトターゲットをセットし、参考例1と同一の条件で銅薄膜を製膜後、参考例2と同一の条件で、銅薄膜の表面に炭素のスパッタを実施した。
ポリエチレンテレフタレートフィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、スパッタ装置のチャンバー内に設置した。カソードに銅ターゲットおよびグラファイトターゲットをセットし、参考例1と同一の条件で銅薄膜を製膜後、参考例2と同一の条件で、銅薄膜の表面に炭素のスパッタを実施した。
[実施例2〜4]
銅または/および炭素のスパッタ時のチャンバー内への導入ガスを、アルゴン:水素=100:8の混合ガスに変更した。実施例2では銅製膜時の導入ガスを混合ガスに変更し、実施例3では銅薄膜の表面に炭素をスパッタする際の導入ガスを混合ガスに変更し、実施例4では銅薄膜をスパッタ製膜する際、および銅薄膜の表面に炭素をスパッタする際の導入ガスを混合ガスに変更した。それ以外は実施例1と同様にして、銅薄膜の表面に炭素のスパッタを実施した。
銅または/および炭素のスパッタ時のチャンバー内への導入ガスを、アルゴン:水素=100:8の混合ガスに変更した。実施例2では銅製膜時の導入ガスを混合ガスに変更し、実施例3では銅薄膜の表面に炭素をスパッタする際の導入ガスを混合ガスに変更し、実施例4では銅薄膜をスパッタ製膜する際、および銅薄膜の表面に炭素をスパッタする際の導入ガスを混合ガスに変更した。それ以外は実施例1と同様にして、銅薄膜の表面に炭素のスパッタを実施した。
[評価]
<表面観察>
原子間力顕微鏡(SII製 NanoNavi II)により、シリコン製のカンチレバー(SI−DF40、ばね定数:40〜45N/m、共振周波数:250〜390kHz)を用い、0.5μm角の観察範囲で、参考例1(銅のみ)および実施例1(銅上に炭素をスパッタ)で得られた薄膜の表面を観察した。観察像(形状像および位相像)を図2に示す。
原子間力顕微鏡(SII製 NanoNavi II)により、シリコン製のカンチレバー(SI−DF40、ばね定数:40〜45N/m、共振周波数:250〜390kHz)を用い、0.5μm角の観察範囲で、参考例1(銅のみ)および実施例1(銅上に炭素をスパッタ)で得られた薄膜の表面を観察した。観察像(形状像および位相像)を図2に示す。
実施例1と参考例1の形状像を対比すると、銅の表面に炭素をスパッタした実施例1では、溝状の凹部が埋まった様な形状や、表面に析出した粒子のような形状が確認された。実施例1の位相像では、材料の相違に由来する画像の濃淡が確認された。これらの結果から、金属の表面に炭素をスパッタすることにより、炭素が表面に島状に付着すると同時に、銅表面の凹部からの内部へ浸入していると考えられる。
<炭素被覆率>
上記参考例1,2および実施例1〜4において、フィルム基板上に形成された薄膜の表面の仕事関数を紫外線電子分光法(UPS)により測定した。参考例1(銅薄膜)の仕事関数は4.6eVであり、参考例2(グラファイト薄膜)の仕事関数は5.4eVであった。仕事関数Wと表面に存在する炭素の比率C%(表面の炭素被覆率)との間に線形関係が成立すると仮定して、関係式:C=125W−575に基づいて、実施例1〜4の薄膜の表面の炭素の比率Cを算出した。結果を表1に示す。
上記参考例1,2および実施例1〜4において、フィルム基板上に形成された薄膜の表面の仕事関数を紫外線電子分光法(UPS)により測定した。参考例1(銅薄膜)の仕事関数は4.6eVであり、参考例2(グラファイト薄膜)の仕事関数は5.4eVであった。仕事関数Wと表面に存在する炭素の比率C%(表面の炭素被覆率)との間に線形関係が成立すると仮定して、関係式:C=125W−575に基づいて、実施例1〜4の薄膜の表面の炭素の比率Cを算出した。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜4では、いずれも薄膜表面の炭素被覆率が50%未満であった。これらの結果から、金属表面に炭素をスパッタすることにより、炭素原子が、金属触媒層としての銅薄膜の内部に浸入していることが分かる。すなわち、金属触媒層上に炭素をスパッタすれば、高温での加熱を実施しない場合でも、金属触媒層内に高エネルギーを有する炭素原子を拡散させることができ、これにより、基板と金属触媒層との界面に炭素膜を形成できることが分かる。
銅のスパッタ製膜時、および炭素スパッタ時の少なくともいずれかにおいて水素を導入した実施例2〜4では、実施例1に比べて表面の炭素被覆率が小さく、より多くの炭素が銅薄膜の内部に浸入していることが分かる。特に、銅をスパッタ製膜する際に水素を導入した実施例2および実施例4では、表面の炭素被覆率がより小さくなる傾向がみられた。
これらの結果から、金属触媒層上に炭素をスパッタする際に、金属触媒層の表面または製膜雰囲気中に水素が存在することにより、スパッタされた炭素の金属触媒層内への浸入および拡散が促進され、基板と金属触媒層との界面に効率よく炭素膜を形成できることが分かる。
1 基板
3 金属触媒層
5 炭素膜
3 金属触媒層
5 炭素膜
Claims (10)
- 基板上への炭素膜の形成方法であって、
Ni,Co,Cu,Fe,Pt,Ag,Au,Al,Cr,Cu,Mg,Mn,Mo,Rh,Ta,Ti,W,U,VおよびZrからなる群から選択される1種以上の金属を含む金属触媒層が表面に設けられた基板の前記金属触媒層上に、炭素をスパッタすることにより、
前記基板と前記金属触媒層との界面に炭素膜が形成される、炭素膜の形成方法。 - 前記炭素のスパッタ時、または炭素のスパッタ後に、スパッタ製膜面が水素と接触する、請求項1に記載の炭素膜の形成方法。
- 前記金属触媒層が水素を含む、請求項2に記載の炭素膜の形成方法。
- 前記金属触媒層は、スパッタにより前記基板上に製膜される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素膜の形成方法。
- 前記金属触媒層の製膜時に、水素を供給しながらスパッタが行われる、請求項4に記載の炭素膜の形成方法。
- 前記金属触媒層を製膜後に、金属触媒層の表面を大気に曝すことなく、炭素のスパッタが行われる、請求項4または5に記載の炭素膜の形成方法。
- 炭素をスパッタする際に、水素を供給しながらスパッタが行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭素膜の形成方法。
- 炭素をスパッタする際の基板温度が200℃未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭素膜の形成方法。
- 前記基板が樹脂フィルムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭素膜の形成方法。
- 炭素をスパッタ後に、前記基板の表面から前記金属触媒層が除去される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭素膜の形成方法。
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