JP3933763B2 - エポキシ樹脂組成物及び電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐ブロッキング性に優れるとともに、速硬化性、流動性等の成形性に優れ、かつ機械的強度、耐熱性、低吸湿性、耐クラック性等に優れた硬化物を与える半導体素子等の電子部品封止用エポキシ樹脂組成物、及びそれを用いた電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物は、注型、封止、積層板等の電気・電子分野に広く使用されている。近年、電子部品の小型化、薄型化により、より低粘度のエポキシ樹脂組成物が望まれている。従来のエポキシ樹脂組成物は、比較的粘度の高いものが多く、このため部品間の微細な間隙に樹脂が完全に流れないとか、気泡を巻きこむなど成型不良を起こし、絶縁不良や耐湿性の劣化を起こすなどの問題があった。
【0003】
特に、半導体の分野においては、プリント基板への部品の実装の方法として、従来のピン挿入方式から表面実装方式への移行が進展している。表面実装方式においては、パッケージ全体がはんだ温度まで加熱され、熱衝撃によるパッケージクラックが大きな問題点となってきている。さらに、近年、半導体素子の高集積化、素子サイズの大型化、配線幅の微細化も急速に進展しており、パッケージクラックの問題が一層深刻化してきている。パッケージクラックを防止する方法として樹脂構造の強靱化、シリカの高充填化による高強度化、低吸水率化などの方法がある。
【0004】
上記問題点を克服するため、低粘度性に優れたエポキシ樹脂が望まれている。低粘度エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などが一般に広く用いられているが、これらのエポキシ樹脂において低粘度のものは常温で液状であり、取扱いが困難である。さらに、これらのエポキシ樹脂は、耐熱性、機械的強度、靱性の点で十分ではない。
【0005】
このような背景から、常温で固体である結晶性のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が最近数多く提案されている。特公平4−7365号公報には、取扱い作業性、耐熱性、靱性等を改良したものとしてビフェニル系エポキシ樹脂を主剤とした半導体封止用エポキシ樹脂組成物が提案されているが、低吸水性、低粘度性、硬化性の点で十分でない。また、特開平6−345850号公報には、主剤としてビスフェノールF型の固形エポキシ樹脂を用いることが提案されている。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は低粘度性に優れた特徴があるが、エポキシ樹脂組成物としての軟らかさに起因するブロッキング性に改良すべき余地がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物としての耐ブロッキング性に優れるとともに、速硬化性、流動性等の成形性に優れ、かつ機械的強度、耐熱性、低吸湿性、耐クラック性等に優れた硬化物を与える、特に表面実装型の半導体素子等の電子部品封止用のエポキシ樹脂組成物、及びそれを用いた電子部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、低粘度性のエポキシ樹脂又は特定のビスフェノール型エポキシ樹脂と特定の多官能型エポキシ樹脂を併用した場合に、上記目的を達成し得ることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材よりなるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、下記一般式(2)で表される二官能性のエポキシ樹脂であって、150℃での溶融粘度が0.3ポイズ以下の低粘度エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中10〜90重量%、下記一般式(1)で表されるアラルキル型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中90〜10重量%含有してなるエポキシ樹脂組成物である。
【化4】
(一般式(1)中、Aは同時に又は別々に炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し、R1 、R2 は同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を示し、Gはグリシジル基を示し、mは1又は2の整数、nは1〜15の数を示す。一般式(2)中、Gはグリシジル基を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜15の数を示し、R 3 は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子、メチレン基、エチリデン基又は1,4−フェニレンビスイソプロピリデン基を示す)
【0009】
また、本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材よりなるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、下記一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中10〜90重量%、下記一般式(1)で表されるアラルキル型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中90〜10重量%含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【化5】
(式中、R8 、R9 、R10は同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を示し、Gはグリシジル基を示し、qは0〜15の数を示す)
【化6】
(式中、Aは同時に又は別々に炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し、R1 、R2 は同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を示し、Gはグリシジル基を示し、mは1又は2の整数、nは1〜15の数を示す)
【0010】
さらに、本発明は、上記のエポキシ樹脂の硬化物で封止されてなる電子部品である。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる低粘度エポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、代表的には下記一般式(2)で表される二官能性のエポキシ樹脂が挙げられる。
【化7】
(式中、Gはグリシジル基を示し、R3 は1価の基を示し、pは0〜4の整数を示し、Xは単結合又は2価の基を示し、qは0〜15の数を示す)
【0012】
上記一般式(2)において、1価の基であるR3 としては、例えば水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基などが挙げられるが、グリシジル基の反応性の観点から3位、5位あるいは3’位、5’位が同時に炭素数3以上の2級又は3級炭素置換基であることは好ましくない。また、連結基Xは単結合又は2価の基であり、例えば酸素原子、硫黄原子、ケトン基、スルホン基又は下記一般式(a)又は(b)で表される炭化水素基であるが、好ましくは単結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、エチリデン基又は1,4−フェニレンビスイソプロピリデン基である。
【化8】
(式中、R4 、R5 は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す)
【化9】
(式中、R6 、R7 は水素原子又はメチル基を示す)
【0013】
このような低粘度エポキシ樹脂としては、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、2,2’−ジメチル−5,5’−ジターシャリーブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物、1,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物、1,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルのエポキシ化物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのエポキシ化物、2,2’−ジメチル−5,5−ジターシャリーブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのエポキシ化物、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化物、2,5−ジターシャリーブチル−ハイドロキノンのエポキシ化物、1,7−ナフタレンジオールのエポキシ化物などが挙げられる。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる低粘度エポキシ樹脂は、上記のエポキシ樹脂に限定されず、例えばハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン等のハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシン類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類等のジグリシジルエーテル化物などであってもよい。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる低粘度エポキシ樹脂の粘度は、150℃において0.3ポイズ以下、好ましくは0.2ポイズ以下である。粘度が0.3ポイズより高いと、無機充填材の高充填率化が困難となり、耐クラック性等の性能の向上が望めない。
【0016】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる低粘度エポキシ樹脂と同様に使用可能なエポキシ樹脂は、上記一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂である。一般式(3)において、R8 、R9 、R10は同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を示すが、好ましくはR8 とR9 がメチル基であり、R10が水素原子又はメチル基である。平均の繰り返し数qは0〜15、好ましくは0〜5である。なお、一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂は、150℃での溶融粘度が0.3ポイズ以下のものであってもよい。
【0017】
低粘度エポキシ樹脂又は一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール化合物に代表されるフェノール性水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることにより合成することができる。この反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。ビスフェノール化合物を用いる場合、例えば、ビスフェノール化合物を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、50〜150℃、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際、アルカリ金属水酸化物の使用量は、ビスフェノール化合物の水酸基1モルに対し0.8〜2モル、好ましくは0.9〜1.2モルである。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより、所望のエポキシ樹脂とすることができる。
【0018】
合成の際の条件によっては、ビスフェノール化合物の二量体以上の多量体を含む混合物として得られるが、低粘度性の観点からは、ビスフェノール化合物の単量体含有量の多いものほどよく、好ましくは単量体の含有量が50重量%以上である。単量体の含有量が50重量%より少ないと、二量体以上の多量体の含有量が増加して粘度が上昇する。
【0019】
合成されたエポキシ樹脂は、好ましくは結晶化させ固形化したのち使用する。エポキシ樹脂の融点範囲は、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜130℃である。40℃より低いと保存時にブロッキングの問題があり、150℃より高いと硬化剤又はその他の添加剤との溶融混合性に劣り、エポキシ樹脂組成物調製時の作業性が低下する。ここでいう融点とは、キャピラリー法により昇温速度2℃/分で得られる値である。
【0020】
低粘度エポキシ樹脂又は一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、封止する電子部品の信頼性向上の観点より少ない方がよい。特に限定するものではないが、好ましくは1000ppm以下がよい。なお、本発明でいう加水分解性塩素とは、以下の方法により測定された値をいう。すなわち、試料0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N−KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加え、0.002N−AgNO3 水溶液で電位差滴定を行い得られる値である。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、低粘度エポキシ樹脂又は一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂の含有率は、全エポキシ樹脂成分中、10〜90重量%、好ましくは30%〜80重量%である。これらのエポキシ樹脂の含有率が10重量%より少ないと耐クラック性に優れた硬化物を与えることができず、また粘度低下効果が小さく、無機充填材の充填率を高くできない。また、90重量%を超えるとエポキシ樹脂組成物の耐ブロッキング性が低下する。
【0022】
次に、上記一般式(1)で表されるアラルキル型エポキシ樹脂は、アラルキル型多価フェノール樹脂とエピクロルヒドリンを反応させることにより合成することができる。一般式(1)において、Aはベンゼン環又はナフタレン環を示し、これらの環は炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。好ましくは、Aは無置換若しくはメチル基で置換されたベンゼン環又はナフタレン環である。R1 とR2 は水素原子又はメチル基であり、これらは同一又は異なってもよい。mは1又は2であり、平均の繰り返し数nは1〜15であるが、好ましくは1〜5である。また、1分子内に存在するAはベンゼン環又はナフタレン環のいずれかであっても両方であってもよい。なお、一般式(1)において、エポキシ化する際にグリジル基が開環して一部オリゴマーが生成するが、これも一般式(1)のアラルキル型エポキシ樹脂に含まれるものとする。
【0023】
このようなアラルキル型エポキシ樹脂は、下記一般式(4)で表されるアラルキル型多価フェノール樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させることにより合成することができる。
【化10】
(式中、Aは同時に又は別々に炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し、R1 、R2 は同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の整数、nは1〜15の数を示す)
【0024】
一般式(4)で表されるアラルキル型多価フェノール樹脂は、アルキル置換又は未置換のフェノール性水酸基含有物質と芳香族架橋剤とを反応させることにより合成することができる。
【0025】
このフェノール性水酸基含有物質としては、アルキル置換又は未置換のフェノール類があり、Aがベンゼン環の場合、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール類、イソプロピルフェノール類、ターシャリーブチルフェノール類、アリルフェノール類、フェニルフェノール類、2,6−キシレノール、2,6−ジエチルフェノールなどが挙げられ、Aがナフタレン環である場合、例えば1−ナフトール、2−ナフトールなどが挙げられる。
【0026】
また、芳香族架橋剤としては、ベンゼン骨格を有するものとビフェニル骨格を有するものがある。ベンゼン骨格を有するものとしては、o−体、m−体又はp−体のいずれでもよいが、好ましくはm−体又はp−体である。ベンゼン骨格を有する芳香族架橋剤としては、例えばp−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、α,α’−ジエトキシ−p−キシレン、α,α’−ジイソプロポキシ−p−キシレン、α,α’−ジブトキシ−p−キシレン、m−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−m−キシレン、α,α’−ジエトキシ−m−キシレン、α,α’−ジイソプロポキシ−m−キシレン、α,α’−ジブトキシ−m−キシレン、1,4−ジ(α−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ジ(α−メトキシエチル)ベンゼン、1,4−ジ(α−エトキシエチル)ベンゼン、1,4−ジ(α−イソプロポキシエチル)ベンゼン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−エトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−イソプロポキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(α−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,3−ジ(α−メトキシエチル)ベンゼン、1,3−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジ(2−プロペニル)ベンゼン、1,3−ジ(2−プロペニル)ベンゼン、1,4−ジ(2−プロペニル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0027】
ビフェニル骨格を有する芳香族架橋剤としては、例えば4,4’−ジヒドロキシメチルビフェニル、2,4’−ジヒドロキシメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシメチルビフェニル、4,4’−ジメトキシメチルビフェニル、2,4’−ジメトキシメチルビフェニル、2,2’−ジメトキシメチルビフェニル、4,4’−ジイソプロポキシメチルビフェニル、2,4’−ジイソプロポキシメチルビフェニル、2,2’−ジイソプロポキシメチルビフェニル、4,4’−ジブトキシメチルビフェニル、2,4’−ジブトキシメチルビフェニル、2,2’−ジブトキシメチルビフェニル、4,4’−ジ(α−ヒドロキシエチル)ビフェニル、4,4’−ジ(α−メトキシエチル)ビフェニル、4,4’−ジ(α−エトキシエチル)ビフェニル、4,4’−ジ(α−イソプロポキシエチル)ビフェニル、4,4’−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ビフェニル、4,4’−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ビフェニル、4,4’−ジ(2−エトキシ−2−プロピル)ビフェニル、4,4’−ジ(2−イソプロポキシ−2−プロピル)ビフェニル、2,4’−ジ(α−ヒドロキシエチル)ビフェニル、2,4’−ジ(α−メトキシエチル)ビフェニル、2,4’−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ビフェニル、2,4’−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ビフェニル、2,4’−ジビニルビフェニル、2,2’−ジビニルビフェニル、4,4’−ジビニルビフェニル、2,4’−ジ(2−プロペニル)ビフェニル、2,2’−ジ(2−プロペニル)ビフェニル、4,4’−ジ(2−プロペニル)ビフェニルなどが挙げられる。メチロール基等の官能基のビフェニルに対する置換位置は4,4’−位、2,4’−位又は2,2’−位のいずれでもよいが、芳香族架橋剤として好ましい化合物は4,4’−体であり、全架橋剤中に4,4’−体が50重量%以上含まれるものが特に好ましい。これより少ないとエポキシ樹脂とした際の硬化速度が低下したり、得られた硬化物がもろくなるなどの欠点がある。
【0028】
一般式(4)において、平均の繰り返し数nは1〜15である。nの値は、フェノール性水酸基含有化合物と芳香族架橋剤とを反応させる際の両者のモル比を変えることにより容易に調整できる。すなわち、フェノール性水酸基含有化合物を芳香族架橋剤に対し過剰に用いるほどnの値は小さくコントロールできる。nの値が大きいほど得られた樹脂の軟化点と粘度が高くなる。また、nの値が小さいほど粘度が低下するが、合成時の未反応フェノール性水酸基含有化合物が多くなり、樹脂の生産効率が低下する。両者のモル比は、実用上フェノール性水酸基含有化合物1モルに対し芳香族架橋剤が1モル以下でなければならず、好ましくは0.1〜0.9モルである。芳香族架橋剤が0.1モルより少ないと未反応のフェノール性水酸基含有化合物量が多くなる。
【0029】
一般式(1)のアラルキル型エポキシ樹脂の軟化点は、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃である。軟化点が50℃より低いとエポキシ樹脂組成物の耐ブロッキング性の改良効果が小さく、120℃より高いと粘度上昇により無機充填材を高充填化できない。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、アラルキル型エポキシ樹脂の含有率は、全エポキシ樹脂成分中、10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%である。アラルキル型エポキシ樹脂の含有率が10重量%より少ないとエポキシ樹脂組成物の耐ブロッキング性の改良効果が小さく、90重量%を超えると粘度上昇により無機充填材の充填率を高くできない。
【0031】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の必須成分として用いられる低粘度エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂以外に、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂を併用することもできる。このようなエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類からそれぞれ誘導されるグリシジルエーテル化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤としては、特に制限はなく、従来より公知のエポキシ樹脂硬化剤を用いることができるが、好ましくは多価フェノール性化合物である。多価フェノール性化合物としては、エポキシ樹脂硬化剤として公知のものを使用できる他、アラルキル型構造を有する多価フェノール性化合物を使用することができる。アラルキル型構造を有する多価フェノール性化合物は、アルキル置換若しくは未置換のベンゼン環又はナフタレン環を有する多価フェノール性水酸基含有化合物と特定の芳香族架橋剤とを反応させることにより合成できる。
【0033】
この多価フェノール性水酸基含有化合物としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類や、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類や、さらにフェノール類、ナフトール類又はビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジメトキシメチルビフェニル類、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール性化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
硬化剤としての多価フェノール性化合物の軟化点は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。多価フェノール性化合物の軟化点が40℃より低いと保存時のブロッキングの問題があり、150℃を超えるとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性と成形性に問題がある。また、150℃における溶融粘度は、好ましくは20ポイズ以下、より好ましくは5ポイズ以下である。これより高いとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性及び成形性に問題がある。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填材として、例えばシリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体又はこれらを球形化したビーズ等の1種又は2種以上を配合する。無機充填材の高充填化には、球状の溶融シリカが好適に使用される。また、シリカは、数種類の粒径分布を持ったものを組み合わせて使用される。組み合わせるシリカの平均粒径は、0.5〜100μmがよい。これらの無機充填材の配合量は、70重量%以上が好ましく、さらに好ましくは80重量%以上である。無機充填材が70重量%より少ないとはんだ耐熱性の向上効果が小さい。
【0036】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、従来より公知の硬化促進剤を配合することができる。このような硬化促進剤としては、例えばアミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸などがあり、具体的には1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミンや、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類や、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類や、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。通常、その配合量はエポキシ樹脂100重量部に対し、0.2〜10重量部である。
【0037】
さらにまた、本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時の流動性改良及びリードフレーム等との密着性向上の観点より、熱可塑性のオリゴマー類を配合することができる。熱可塑性のオリゴマー類としては、例えばC5 系及びC9 系の石油樹脂、スチレン樹脂、インデン樹脂、インデン・スチレン共重合樹脂、インデン・スチレン・フェノール共重合樹脂、インデン・クマロン共重合樹脂、インデン・ベンゾチオフェン共重合樹脂などが挙げられ、その配合量はエポキシ樹脂100重量部に対し2〜30重量部である。
【0038】
さらに必要に応じて、本発明のエポキシ樹脂組成物には、例えば、臭素化エポキシ等の難燃剤、カルナバワックス、エステル系ワックス等の離型剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、シリコンオイル等の低応力化剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等の滑剤などを配合することができる。
【0039】
通常、本発明のエポキシ樹脂組成物は、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合したのち、ミキシングロール、押出機等によって混練し、冷却、粉砕することによって、成形材料とすることができる。
【0040】
本発明で得られる成形材料を用いて、電子部品を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、射出成形法、圧縮成形法によっても可能である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜6、比較例1〜5
下記に示すエポキシ樹脂成分、硬化剤、難燃剤及び無機充填材と、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン並びにその他の表1に示す添加剤を用い、表1に示す配合割合で混練してエポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表1中の数値は重量部で示されている。
【0042】
エポキシ樹脂A:3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物 (新日鐵化学製、ESLV−80XY;エポキシ当量193、加水分解性塩素250ppm、融点78℃、150℃での溶融粘度0.08ポイズ)
エポキシ樹脂B:2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物 (新日鐵化学製、GK−8001;エポキシ当量209、加水分解性塩素250ppm、融点115℃、150℃での溶融粘度0.18ポイズ)
エポキシ樹脂C:1,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物 (新日鐵化学製、ESLV−90CR;エポキシ当量256、加水分解性塩素660ppm、融点90℃、150℃での溶融粘度0.19ポイズ)
エポキシ樹脂D:2,2’−ジメチル−5,5’−ジターシャリーブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのエポキシ化物 (新日鐵化学製、ESLV−120TE;エポキシ当量251、加水分解性塩素380ppm、融点108℃、150℃での溶融粘度0.14ポイズ)
エポキシ樹脂E: 4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルのエポキシ化物 (新日鐵化学製、ESLV−80DE;エポキシ当量174、加水分解性塩素350ppm、融点78℃、150℃での溶融粘度0.06ポイズ)
エポキシ樹脂F:3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化物 (油化シェルエポキシ製、YX4000HK;エポキシ当量195、加水分解性塩素450ppm、融点105℃、150℃での溶融粘度0.11ポイズ)
エポキシ樹脂G:2−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂 (新日鐵化学製、ESN−185;エポキシ当量280、加水分解性塩素200ppm、軟化点85℃、150℃での溶融粘度4.6ポイズ)
エポキシ樹脂H:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 (日本化薬製、EOCN−1020−55;エポキシ当量196、加水分解性塩素400ppm、軟化点55℃、150℃での溶融粘度0.98ポイズ)
エポキシ樹脂I:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 (日本化薬製、EOCN−1020−70;エポキシ当量200、加水分解性塩素400ppm、軟化点70℃、150℃での溶融粘度3.4ポイズ)
【0043】
硬化剤A:フェノールノボラック (群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点82℃)
硬化剤B:フェノールアラルキル型樹脂 (三井東圧製、XL−225−LL;OH当量174、軟化点75℃)
臭素化エポキシA:ノボラック型臭素化エポキシ (日本化薬製、BREN−S;エポキシ当量284、加水分解性塩素600ppm、軟化点84℃)
シリカA:球状シリカ(平均粒径30μm)
シリカB:球状シリカ(平均粒径16μm)
シリカC:球状シリカ(平均粒径0.6μm)
【0044】
次に、これらのエポキシ樹脂組成物を175℃で成形し、175℃で12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。ガラス転移点は熱機械測定装置により昇温速度10℃/分の条件で求めた。また、吸水率はエポキシ樹脂組成物を用いて直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュアした後85℃、85%RHの条件で24時間及び100時間吸湿させたときのものである。クラック発生率はQFP−80pin(14×20×2.5mmt)を成形し、ポストキュア後、吸水率と同条件の85℃、85%RHの条件で所定の時間吸湿させた後、260℃のはんだ浴に10秒間浸漬させた後、パッケージの状態を観察し求めた。ブロッキング性は、微粉砕したエポキシ樹脂組成物を25℃で24時間放置後、凝集した組成物の重量割合とした。各種物性の測定結果を表2に示す。
【0045】
表2から、本発明で規定した条件を満たす実施例1〜6は全て耐ブロッキング性に優れるとともに、速硬化性、流動性等の成形性に優れ、かつ機械的強度、耐熱性、低吸湿性、耐クラック性等に優れた硬化物を与えることがわかる。一方、本発明で規定した条件を満たしていない比較例1〜5は実施例ほど前述の特性全てが優れてはいない。すなわち、比較例1及び2では、アラルキル型エポキシ樹脂を含有していないため、耐ブロッキング性が実施例に比べて低下している。比較例3及び4では、150℃での溶融粘度0.3ポイズ以下の低粘度エポキシ樹脂を含有していないため、エポキシ樹脂組成物の流動性が実施例に比べて低下しており、無機充填材の高充填に不適である。比較例5では、アラルキル型エポキシ樹脂を含有していないため、耐ブロッキング性が実施例に比べて低下しており、また硬化物の耐クラック性が実施例に比べて低下している。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、速硬化性、流動性等の成形性に優れるとともに、組成物としての耐ブロッキング性も良好であり、かつ機械的強度、耐熱性、低吸湿性、耐クラック性等に優れた硬化物を与え、半導体素子等の電子部品の封止に応用した場合、耐クラック性が大幅に改善し、優れたはんだ耐熱性を示す。
Claims (4)
- エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材よりなるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、下記一般式(2)で表される二官能性のエポキシ樹脂であって、150℃での溶融粘度が0.3ポイズ以下の低粘度エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中10〜90重量%、下記一般式(1)で表されるアラルキル型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中90〜10重量%含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材よりなるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、下記一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中10〜90重量%、下記一般式(1)で表されるアラルキル型エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂成分中90〜10重量%含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 硬化剤が、軟化点40〜150℃の多価フェノール性化合物である請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されてなる電子部品。
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