JP4163281B2 - エポキシ樹脂組成物及び硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体での取り扱い性、保存安定性に優れるとともに、成形性、低吸湿性、高耐熱性及び異種材料との密着性に優れ、かつ電気絶縁性に優れた硬化物を与える耐ブロッキング性が改良された電気・電子部品類の封止、回路基板材料等に有用なエポキシ樹脂組成物、さらにはその硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズは大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。半田耐熱性向上の有力な方法には、低吸水率化と、リードフレーム、チップ等との異種材料界面における密着性の向上がある。
【0003】
低吸水率化のためには、無機充填材の高充填率化が指向されており、低粘度なエポキシ樹脂が望まれている。これらの背景から、ビフェニル系エポキシ樹脂(特公平4−7365号公報)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(特開平6−345850公報)等の二官能型のエポキシ樹脂を用いた半導体封止材用エポキシ樹脂組成物が提案されている。これらのエポキシ樹脂は低粘度性に優れ、フィラー高充填率化、流動性向上に特徴があるが、コンパウンドの耐ブロッキング性、及び保存安定性等の取り扱い性に劣るとともに、二官能性のために架橋密度を高くすることが困難であり、硬化物の硬度、ガラス転移点が低くなり、成形性と耐熱性が低下する欠点がある。
【0004】
成形性及び耐熱性に優れたエポキシ樹脂としては、従来より多官能性のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が広く使用されてきているが、粘度が高い欠点が有り、フィラー高充填率化に限界があった。従って、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の低分子量化が検討され、150℃の溶融粘度で1ポイズ以下のものが提案されているが、樹脂の軟化点が60℃以下に低下し耐ブロッキング性が悪化する問題がある。また、低粘度性を保持し、かつ耐ブロッキング性を向上させたものとして、二官能成分及び高分子量物を少なくし、分子量分布をシャープにした材料が提案されているが、密着性が低下する問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、耐ブロッキング性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにあり、また固体での取り扱い性、保存安定性に優れるとともに成形性、低吸湿性、高耐熱性及び異種材料との高密着性等に優れ、かつ電気絶縁性に優れた硬化物を与える耐ブロッキング性が改良されたエポキシ樹脂組成物、さらにはその硬化物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、二官能成分が異種材料界面での密着性向上及び流動性向上に大きく寄与する一方、耐ブロッキング性が低下すること、高分子量成分が耐ブロッキング性及び耐熱性向上に寄与する一方、流動性が低下することを考慮し、二量体含有量の少ないo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に特定の二官能型エポキシ樹脂を組み合わせるとともに、さらに特定の芳香族オリゴマーを組み合わせることにより、優れた固体での取り扱い性、保存安定性を保持しつつ、優れた成形性、高耐熱性、低吸水性及び高密着性が発現されることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、二量体の含有量が10%以下であるo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100重量部に、エポキシ当量が180〜300、150℃での溶融粘度が0.05〜0.5ポイズである二官能型エポキシ樹脂20〜80重量部、及び軟化点が70〜150℃で、150℃での溶融粘度が2〜200ポイズであり、インデン類の含有率が50重量%以上であるインデン類、スチレン及びフェノールからなるモノマーをカチオン重合して得られる熱可塑性の芳香族オリゴマー5〜100重量部を配合してなるエポキシ樹脂組成物であり、また当該エポキシ樹脂組成物、フェノール系硬化剤及び75重量%以上の無機充填材を含有してなるエポキシ樹脂組成物であり、それを硬化してなるエポキシ樹脂硬化物である。ここで、上記エポキシ樹脂組成物は、有機チタン化合物又は金属アセチルアセトナート錯体を含まない。
【0008】
本発明に用いるo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、特にその製造方法を限定するものではないが、二量体の含有量が10%以下である必要があり、好ましくは二量体の含有量が7%以下である。二量体の含有量がこれより多いと、エポキシ樹脂組成物としての耐ブロッキング性が低下する。
【0009】
三量体以上の成分の含有量は、90%を超えることがよいことを除いて特に制限はないが、硬化物の硬度、耐熱性向上の観点から六量体以上の好ましい含有量は50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。ここでいう各成分の含有量は、GPC 測定により求めたものであり、その測定条件は、装置:HLC-82A (東ソー(株)製)、カラム:TSK-GEL 2000×3本及びTSK-GEL4000 ×1本(何れも東ソー(株)製)、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/分、温度:38℃、検出器:RIである。
【0010】
このo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の軟化点は、好ましくは60℃〜120℃、さらに好ましくは70℃〜100℃である。この軟化点が60℃より低いとエポキシ樹脂組成物としての耐ブロッキング性が低下し、120℃より高いと成形時の流動性が低下するとともにフィラーの高充填率化が困難となる。
【0011】
本発明に用いる二量体の少ないo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、二量体の少ないo−クレゾールノボラック樹脂をエピクロルヒドリンと反応させることによって製造してもよいし、エポキシ樹脂を製造したのち分子蒸留等の方法で二量体のエポキシ化物を除くことによって製造してもよい。
【0012】
また、本発明に用いる二官能型エポキシ樹脂としては、その構造を限定するものではないが、エポキシ当量が180〜300、150℃での溶融粘度が0.05〜0.5ポイズであることを要する。エポキシ当量及び溶融粘度がこれより小さいと、耐ブロッキング性の向上効果が小さく、これより大きいと成形時の流動性が低下するとともに、架橋密度が低下し硬化物の熱時硬度及び耐熱性が低下する。
【0013】
好ましい二官能型エポキシ樹脂としては、例えば3.3' ,5,5' −テトラメチル−4,4' −ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、2,2' ,3,3' ,5,5' −ヘキサメチル−4,4' −ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、2,2' −ジメチル−5,5' −ジtertブチル−4,4' −ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物、1,4−ビス(3ーメチルー4ーヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物、1,4−ビス(3,5ージメチルー4ーヒドロキシクミル)ベンゼンのエポキシ化物、2,2' −ジメチル−5,5−ジtertブチル−4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルフィドのエポキシ化物、3,3' ,5,5' −テトラメチル−4,4' −ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化物などが挙げられる。これらの二官能型エポキシ樹脂は単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
二官能型エポキシ樹脂の配合割合は、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部である。これより少ないと成形時の流動性が低下するとともに、硬化物の異種材料界面での密着性向上効果が小さい。また、これより多いと耐ブロッキング性が低下するとともに、架橋密度が低下し、硬化物の熱時硬度及び耐熱性が低下する。
【0015】
本発明に用いるエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、封止する電子部品の信頼性向上の観点から少ない方がよい。特に限定するものではないが、1000ppm以下が好ましい。なお、本発明でいう加水分解性塩素とは、以下の方法により測定された値をいう。すなわち、試料0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N−KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加え、0.002N−AgNO3 水溶液で電位差滴定を行い得られる値である。
【0016】
また、本発明に用いる芳香族オリゴマーとしては、芳香族構造を有する熱可塑性のオリゴマーは全て使用でき、例えばスチレン、アルキルスチレン類、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン、クマロン、ベンゾチオフェン、ビニルナフタレン類、ビニルビフェニル類、アセナフチレン等の芳香族ビニル系モノマーから誘導されるオリゴマー、2,6−キシレノール、2,6−ジフェニルフェノール等の2,6−ジ置換フェノール類を重合して得られるポリフェニレンオキサイドのオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドのオリゴマー、芳香族ポリエステルのオリゴマーなどが挙げられる。工業的には、スチレン樹脂、インデン樹脂、インデンスチレン樹脂、インデンクマロン樹脂、インデンクマロンスチレン樹脂、石油樹脂などが代表例として挙げられる。
【0017】
これらの芳香族オリゴマーの内、好ましくは芳香族ビニル系モノマーから誘導されるオリゴマーであり、より好ましくはインデン類を主成分とするモノマーを重合して得られるものであり、重合成分中のインデン類の含有率が50重量%以上のものがよい。芳香族ビニル系モノマーからオリゴマーを合成する際、芳香族系以外のビニルモノマーを共重合させてもよい。共重合モノマーとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル類、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル類、無水マレイン酸、フマル酸、ジビニルベンゼン類、ジイソプロペニルベンゼン等の不飽和結合を有するモノマーが挙げられる。
【0018】
芳香族オリゴマーの製法は、制限はなく、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などいずれの方法でもよいが、一般的にはカチオン重合が好適である。この際、カチオントラップ剤としてフェノール、クレゾール類等のアルキルフェノール類、キシレノール等のジアルキルフェノール類、ナフトール類等のフェノール化合物を添加してもよい。通常、これらフェノール化合物の添加量は、全モノマー成分中20重量%以下である。これより多いとエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、耐湿性を低下させる。
【0019】
本発明に用いる芳香族オリゴマーは、軟化点が70〜150℃、好ましくは80〜130℃であり、150℃での溶融粘度が2〜200ポイズ、好ましくは5〜100ポイズである。溶融粘度及び軟化点が、これより低いと耐ブロッキング性の向上効果が小さく、これより高いと成形時の流動性が低下する。この芳香族オリゴマーの分子量は、数平均分子量で300〜3000程度である。
【0020】
また、本発明に用いる芳香族オリゴマーは、イオン成分の含有量が少ない高純度のものが好ましい。特に、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン及び塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンの少ないものがよく、アルカリ金属イオン及びハロゲンイオンの含有量は、30ppm以下であり、好ましくは10ppm以下である。
【0021】
本発明に用いる芳香族オリゴマーの配合割合は、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは20〜80重量部である。これより少ないと成形時の流動性が低下するとともに、耐ブロッキング性の向上効果が小さいとともに、硬化物の吸水率低減効果及び異種材料界面での密着性向上効果が小さい。また、これより多いと硬化物の熱時硬度及び耐熱性が低下するとともに難燃性も低下する。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、二官能型エポキシ樹脂と芳香族オリゴマーを混合することにより調製することができる。混合方法は溶融混合でもよいし、溶媒に溶解混合したのち脱溶媒する方法でもよい。溶媒を用いる際の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒などが挙げられる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必須成分として配合する上記エポキシ樹脂組成物以外に、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂を配合してもよい。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよいが、通常、必須のエポキシ樹脂組成物の50重量%以内である。
【0024】
前記のエポキシ樹脂組成物にフェノール系硬化剤とフィラーを配合した組成物とすれば、封止材として優れた硬化物を与える。フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラックなどエポキシ樹脂硬化剤として従来より公知のものを使用できる他、アラルキル型構造を有する多価フェノール系硬化剤を使用することができる。アラルキル型構造を有する多価フェノール系硬化剤は、アルキル置換若しくは未置換のベンゼン環又はナフタレン環を有するフェノール性水酸基含有化合物と特定の芳香族架橋剤とを反応させることにより製造されるものである。
【0025】
また、多価フェノール系硬化剤としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類、さらにはフェノール類、ナフトール類又は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4' −ビフェノール、2,2' −ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジメトキシメチルビフェニル類、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール性化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
フェノール系硬化剤の軟化点範囲は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。これより低いと保存時のブロッキングの問題があり、これより高いとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性と成形性に問題がある。また、好ましい150℃における溶融粘度は20ポイズ以下であり、より好ましくは5ポイズ以下である。これより高いとエポキシ樹脂組成物調製時の混練性、及び成形性に問題がある。
【0027】
硬化剤を配合したエポキシ樹脂組成物におけるフェノール系硬化剤の配合割合は、通常採用される範囲で差し支えないが、好ましくはエポキシ基1モルに対しフェノール性の水酸基が0.7〜1.2モルになるように配合することがよい。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物に配合する無機充填材としては、シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニアなどの1種又は2種以上が挙げられ、その形態は粉体、球形化したビーズなどが挙げられる。これらの内、無機充填材の高充填化の観点から球状の溶融シリカが好ましい。通常、シリカは、数種類の粒径分布を持ったものを組み合わせて使用される。組み合わせるシリカの平均粒径の範囲は、0.5〜100μmがよい。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填材の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の75重量%以上、好ましくは80重量%以上である。これより少ないと半田耐熱性の向上効果が小さい。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、従来より公知の硬化促進剤、例えばアミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸などを添加してもよい。具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して0.2〜10重量部である。
【0031】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、カルナバワックス、エステル系ワックス等の離型剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、シリコンオイル等の低応力化剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等の滑剤などを配合してもよい。
【0032】
一般的には、以上のような原材料を所定の配合量でミキサーなどによって十分混合した後、ミキシングロール、押し出し機などによって混練し、冷却、粉砕することによって、成形材料用のエポキシ樹脂組成物を調製することができる。
【0033】
本発明で得られる成形材料を用いて、電子部品を封止するための方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、射出成形法、圧縮成形法によっても可能である。
【0034】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1〔芳香族オリゴマーAの合成例〕
インデン70g、スチレン25g、フェノール5gをトルエン250gに溶解し、115℃に加熱した。その後、撹拌しながら三弗化ホウ素ジメチルエーテルコンプレックス1gを15分かけて滴下した。滴下後、さらに3時間反応させた。その後、水酸化カルシウム2.4gを加え中和した。中和塩及び過剰の水酸化カルシウムをろ過により除去し、さらにイオン交換水100mlで3回洗浄を繰り返した後、減圧蒸留により、トルエン及び未反応モノマーを除去し、芳香族オリゴマー89gを得た。得られた樹脂の軟化点は98℃であり、150℃における溶融粘度は8ポイズであった。
【0035】
参考例2〔芳香族オリゴマーBの合成例〕
反応温度を90℃として参考例1と同様に反応し、芳香族オリゴマー92gを得た。得られた樹脂の軟化点は118℃であり、150℃における溶融粘度は64ポイズであった。
【0036】
実施例1〜5及び比較例1〜5
OCNE型エポキシ樹脂としては、軟化点90℃のO−クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂A:エポキシ当量200、加水分解性塩素400ppm、150℃溶融粘度11ポイズ、二量体含有量4.7%)、軟化点65℃のo−クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂B:日本化薬製、EOCN-1020-65;エポキシ当量200、加水分解性塩素400ppm、150℃溶融粘度3ポイズ、二量体含有量8.5%)、軟化点55℃のO−クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C:日本化薬製、EOCN-1020-55;エポキシ当量200、加水分解性塩素400ppm、150℃溶融粘度1ポイズ、二量体含有量13.3%)、軟化点55℃のO−クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂の低二量体品(エポキシ樹脂D:日本化薬製、EOCN-4500 ;エポキシ当量200、加水分解性塩素400ppm、150℃溶融粘度1ポイズ、二量体含有量4.5%)を用い、2官能型エポキシ樹脂としては、3,3' ,5,5' −テトラメチル−4,4' −ジヒドロキシジフェニルメタンのエポキシ化物(エポキシ樹脂E:新日鐵化学製、ESLV-80XY ;エポキシ当量193、加水分解性塩素250ppm、融点78℃、150℃溶融粘度0.08ポイズ)、2,2' −ジメチル−5,5' −ジターシャリーブチル−4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルフィドのエポキシ化物(エポキシ樹脂F:新日鐵化学製、ESLV-120TE;エポキシ当量245、加水分解性塩素300ppm、融点118℃、150℃溶融粘度0.16ポイズ)、3,3' ,5,5' −テトラメチル−4,4' −ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化物(エポキシ樹脂G:油化シェルエポキシ製、YX-4000H;エポキシ当量190、加水分解性塩素280ppm、融点105℃、150℃溶融粘度0.11ポイズ)を用いた。また、芳香族オリゴマ−としては、参考例1及び2の芳香族オリゴマ−を用いた。
【0037】
上記エポキシ樹脂と芳香族オリゴマーを表1に示す配合(重量部)で混合し、150℃で30分間溶融混合を行い、エポキシ樹脂組成物とした。エポキシ樹脂組成物の物性及びブロッキング試験の結果を表1に示す。なお、ブロッキング試験の結果は、エポキシ樹脂混合物の2mmパスの粉体を用い、20℃で6時間放置後のブロッキング割合を重量%で表した。また、樹脂の軟化点はグリセリンを熱媒として測定した値であり、150℃溶融粘度はコントラバス社製レオマット115を用いて測定した値である。
【0038】
実施例6〜10及び比較例6〜10
エポキシ樹脂として実施例1〜5、比較例1〜5のエポキシ樹脂組成物、硬化剤として軟化点80℃のフェノ−ルノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM-4261;OH当量103、軟化点80℃)、難燃剤としてノボラック型臭素化エポキシ(臭素化エポキシA:日本化薬製、BREN-S;エポキシ当量284、加水分解性塩素600ppm、軟化点84℃)、充填剤として球状シリカ(シリカA:平均粒径、18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、及び表2に示す添加剤を用い、表2に示す配合(重量部)で混練してフィラー含有エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を175℃で成形し、175℃、12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。
【0039】
ガラス転移点は、熱機械測定装置により、昇温速度7℃/分の条件で求めた。曲げ強度及び曲げ弾性率は、3点曲げ法により求めた。接着強度は、42アロイ板、2枚の間に25mm×12.5mm×0.5mmの成形物を圧縮成型機により175℃で成形し、175℃、12時間ポストキュアを行った後、引張剪断強度を求めることにより評価した。また、吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて、直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させたときのものであり、クラック発生率は、QFP−80pin(14mm×20mm×2.5mm、194アロイ)を成形し、ポストキュア後、85℃、85%RHの条件で所定の時間吸湿後、260℃の半田浴に10秒間浸漬させた後、パッケージの状態を観察し求めた。結果をまとめて表3に示す。
【0040】
なお、ブロッキング試験の結果は、エポキシ樹脂組成物の1mmパスの粉体を用い、25℃で24時間放置後のブロッキング割合を重量%で表した。また、保存安定性はエポキシ樹脂組成物を25℃、1週間放置後のスパイラルフロー残存率で表した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐ブロッキング性が改善され、取り扱い作業性にも優れているとともに、低吸湿性、高耐熱性及び異種材料との高密着性等に優れた硬化物を与え、電子部品封止材として好適に使用することができる。
Claims (3)
- 二量体の含有量が10%以下であるo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100重量部に、エポキシ当量が180〜300、150℃での溶融粘度が0.05〜0.5ポイズである二官能型エポキシ樹脂20〜80重量部、及び軟化点が70〜150℃で、150℃での溶融粘度が2〜200ポイズであり、インデン類の含有率が50重量%以上であるインデン類、スチレン及びフェノールからなるモノマーをカチオン重合して得られる熱可塑性の芳香族オリゴマー5〜100重量部を配合してなるエポキシ樹脂組成物(有機チタン化合物又は金属アセチルアセトナート錯体を含む場合を除く)。
- 請求項1記載のエポキシ樹脂組成物、フェノール系硬化剤及び75重量%以上の無機充填材を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
- 請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
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