JP4639412B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低溶融粘度で高い耐熱性を有し、且つ耐半田クラック性に優れた低コストの半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子を、外的刺激(機械的・熱的衝撃、化学的作用等)から保護するために、汎用の半導体装置には、主にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂/フェノールノボラック樹脂硬化剤系を樹脂成分とするエポキシ樹脂組成物が用いられてきた。このエポキシ樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度が高く、硬化性、熱時曲げ強さに優れた特性を有しているが、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の溶融粘度が比較的高く、無機充填材の高充填化には限界があり、耐半田クラック性には若干の問題があった。
【0003】
一方、近年の半導体素子の高集積度化とそれに伴う大型化に加え、電子機器の小型化により、半導体装置の小型化・薄型化が求められ、且つプリント回路基板への実装方法も、従来のピン挿入型から表面実装型に移行してきている。
このような半導体装置の封止方法・実装方法では、表面実装の半田リフロー時の熱衝撃によるクラックや半導体素子・リードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の剥離といった問題が生じ、そのため耐半田クラック性に優れたエポキシ樹脂組成物が強く求められている。
一般的に、半導体装置のクラックや半導体素子・リードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の剥離は、半田リフロー時の高温下で、吸湿されていた水分が水蒸気爆発を起こすことによって生じるとされており、これを防ぐためにエポキシ樹脂組成物に低吸湿性を付与する等の手法がよく用いられている。低吸湿化の一つの手法として、低粘度の結晶性エポキシ樹脂であるビフェニル型エポキシ樹脂等を用いて無機充填材を高充填化し、樹脂成分の含有量を減少する技術がある。
【0004】
このエポキシ樹脂組成物は、耐半田クラック性等に優れている特徴を生かして、主に表面実装対応の最先端の半導体装置に用いられているが、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物に較べて、ガラス転移温度が低く、且つ硬化が遅いのが問題であった。
一方、近年の電子機器の品質安定化、ひいては半導体装置の信頼性向上の要求により、汎用の半導体装置に対しても耐半田クラック性が求められるようになってきた。しかしながら、低粘度の結晶性エポキシ樹脂であるビフェニル型エポキシ樹脂等を使用し、溶融球状シリカを高充填化したエポキシ樹脂組成物は、硬化性と熱時曲げ強さに若干問題があり、且つコストが高く汎用の半導体装置にそのまま適用するには難点がある。
この要求に対して、熱時曲げ強さ、耐半田クラック性に優れ、且つ最先端用材料よりコストが安いエポキシ樹脂組成物を得るため、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の特徴を生かすべく、エポキシ樹脂組成物の製造時に両方のエポキシ樹脂を併用したり、予め両方のエポキシ樹脂を溶融混合したものを用いる試みがなされているが、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をベースとしたエポキシ樹脂組成物に較べると、若干硬化性が劣り、汎用の半導体装置に適用するには依然不十分である。従って、熱時曲げ強さ、耐半田クラック性に優れ、且つ低コストのエポキシ樹脂組成物が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低溶融粘度で低内部応力の特性を有し、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物と同等の耐熱性を有し、且つ耐半田クラック性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、(a)と(b)との重量比(a/b)が0.1〜19であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、無機充填材の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり200重量部以上900重量部未満であり、硬化促進剤の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。
【化5】
(ただし、式中のR1は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜3の整数。nは平均値であり、1以上の正数。)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(a)と結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)との重量比(a/b)を0.1〜19とした混合物(以下、混合多価フェノールという)をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂は、結晶性エポキシ樹脂に由来する低粘度化が図られており、これにより無機充填材の高充填化、ひいてはエポキシ樹脂組成物の低吸湿化が可能となり、エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が殆ど低下せず、又、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時曲げ強さと較べても遜色なく、且つ低弾性率で、硬化性も同等の特性を有している。この方法で得られるエポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂がより均一化されることにより、結晶性エポキシ樹脂を使用する場合の問題点である硬化反応性も向上するものと考えられる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置は、プリント回路基板への実装時の半田リフロー処理後でも高い信頼性を得ることができる。
【0008】
一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂としては、種々の構造のものがあるが、耐熱性の点からオルソクレゾールノボラック型フェノール樹脂が好ましい。nの値としては、5〜8が特に好ましい。
本発明に用いる結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)としては、例えば一般式(2)のビフェニル型フェノール、一般式(3)のフェノール類、一般式(4)のスチルベン型フェノール等が挙げられる。
【化6】
(ただし、式中のR2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜4の整数。)
【0009】
【化7】
【0010】
【化8】
(ただし、式中のR5は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R6は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜4の整数。)
【0011】
一般式(2)のビフェニル型フェノールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルビフェニル等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられる。
【0012】
一般式(3)のフェノール類としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−ターシャリブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等が挙げられる。
【0013】
一般式(4)のスチルベン型フェノールとしては、例えば、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,3’−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,6−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルスチルベン等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられる。
【0014】
これらの内では、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(以上7種のフェノール類を、以下a群という)、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン(以上3種のフェノール類を、以下b群という)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン(以上6種のフェノール類を、以下c群という)から選択される1種以上が好ましい。
a群の内、ビフェニル型フェノールでは、低粘度化効果が大きく、且つ反応性に富む4,4’−ジヒドロキシビフェニルが含まれているものが特に好ましい。その他のa群では、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドが特に好ましい。
又、スチルベン型フェノールでは、b群から選ばれる1種以上と、c群から選ばれる1種以上との混合物が、グリシジルエーテル化物の軟化点が低くなるため好ましい。これらの混合比、混合方法等は特に限定しない。
【0015】
本発明のノボラック型フェノール樹脂(a)と結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)との混合比は、重量比(a/b)で0.1〜19が好ましく、特に、0.5〜9が好ましい。重量比が0.1未満だと、グリシジルエーテル化したときに生成したノボラック型エポキシ樹脂に由来するガラス転移温度、熱時曲げ強さを十分に発現できないので好ましくない。又、重量比が19を越えると、グリシジルエーテル化したときに生成した結晶性エポキシ樹脂に由来する低粘度化の効果が薄くなり、無機充填材の高充填化ができないので好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂の合成方法については特に限定しないが、例えば、混合多価フェノールを過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。生成したエポキシ樹脂の塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
本発明のエポキシ樹脂の軟化点としては、80〜110℃の範囲にあることが好ましく、特に、90〜100℃が好ましい。80℃未満だと、常温で液状又は半固形状であり、グリシジルエーテル化処理後の作業性の問題や、これを用いたエポキシ樹脂組成物の常温保存性の低下、或いはその硬化物のガラス転移温度の低下のおそれがあるので好ましくない。110℃を越えると、グリシジルエーテル化したときに生成したノボラック型エポキシ樹脂自体の粘度が高くなり、同時に生成した結晶性エポキシ樹脂成分の低粘度化の効果が薄くなるので好ましくない。軟化点の測定方法は、JIS K 7234の環球法に準じた。
本発明のエポキシ樹脂の融解熱量としては、5〜35mJ/mgが好ましい。この融解熱量は、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)のグリシジルエーテル化により生成する結晶性エポキシ樹脂に由来している。5mJ/mg未満だと、エポキシ樹脂は低軟化点のノボラック型エポキシ樹脂のような挙動を示し、作業性が著しく低下するので好ましくない。35mJ/mgを越えると、結晶性エポキシ樹脂のような挙動を示し、ノボラック型エポキシ樹脂に由来する高いガラス転移温度や硬化性(成形性)を維持することができなくなるため好ましくない。
本発明での融解熱量とは、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)・製)を用い、エポキシ樹脂10mg前後を精秤し、昇温速度5℃/分で測定した吸熱ピークの熱量を言う。
又、本発明のエポキシ樹脂の特性を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用できる。併用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。
【0016】
本発明で用いられるフェノール樹脂硬化剤は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマー全般を言う。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。これらのフェノール樹脂硬化剤は、分子量、軟化点、水酸基当量等に制限なく使用することができる。
全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比としては、好ましくは0.5〜2.0、特に好ましくは0.7〜1.5である。0.5〜2.0の範囲を外れると、硬化性、耐湿信頼性等が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明で用いられる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、特に溶融球状シリカが好ましい。形状は限りなく真球状であることが好ましく、又、粒子の大きさの異なるものを混合することにより充填量を多くすることができる。
無機充填材の含有量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤との合計量100重量部当たり200重量部以上900重量部未満が好ましい。特に400〜800重量部であれば、従来のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を主として用いたエポキシ樹脂組成物よりも吸湿率が低くなり、クラックの発生を防止することができるのでより好ましい。200重量部未満だと、無機充填材による補強効果が十分に発現せず、且つ吸湿要因である樹脂成分の含有量が多くなるので、高吸湿性となるおそれがあり、900重量部以上だと、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、成形時に充填不良等が生じるおそれがあるので好ましくない。
本発明の無機充填材は、予め十分に混合しておくことが好ましい。又、必要に応じて無機充填材をカップリング剤やエポキシ樹脂或いはフェノール樹脂硬化剤で予め処理して用いても良く、処理の方法としては、溶剤を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や、直接無機充填材に添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
【0018】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤との架橋反応を促進するものであれば良く、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いても差し支えない。
含有量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤との合計量100重量部当たり0.4〜20重量部が好ましい。0.4重量部未満だと、加熱成形時に十分な硬化性が得られないおそれがあり、一方、20重量部を越えると、硬化が速すぎて成形時に流動性の低下による充填不良等を生じるおそれがあるので好ましくない。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例のエポキシ樹脂A〜Eの合成に使用したオルソクレゾールノボラック型フェノール樹脂(軟化点62℃)の構造式(5)、及び結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類の構造式(6)〜式(8)を以下に示す。
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
又、実施例及び比較例で使用したエポキシ樹脂A〜Eについて、その特性を表1に示す。エポキシ樹脂A〜Eは、式(5)〜式(8)を表1の配合割合で常法によりグリシジルエーテル化して得た。配合割合は重量部とする。軟化点、融解熱量は、前述した方法で測定した。
【表1】
【0025】
実施例1の配合を以下に示す。配合割合は重量部とする。
エポキシ樹脂A 9.1重量部
式(9)のフェノールノボラック樹脂硬化剤(水酸基当量105g/eq.、軟化点83℃) 5.2重量部
【化13】
溶融球状シリカ(平均粒径20μm) 82.0重量部
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという)
0.2重量部
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量359g/eq.)
1.0重量部
三酸化アンチモン 1.0重量部
カーボンブラック 0.2重量部
カルナバワックス 0.5重量部
その他添加剤 1.0重量部
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて30回混練し、得られた混練物シートを冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0026】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
バコール硬度:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で16pSOPを成形した。金型が開いて10秒後の成形品の表面硬度をバコール硬度計#935を用いて測定した。
吸湿率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、175℃、8時間で後硬化し、85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、重量変化を測定して吸湿率を求めた。単位は重量%。
熱時強度:熱時曲げ強度、及び熱時曲げ弾性率をJIS K 6911に準じて(240℃で)測定した。単位はいずれもN/mm2。
耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で100pTQFP(パッケージサイズは14×14mm、厚み1.4mm、半導体素子の寸法は8.0×8.0mm、リードフレームは42アロイ製)を成形し、175℃、8時間で後硬化し、得られたパッケージを85℃、相対湿度85%で168時間放置し、その後240℃の半田槽に10秒間浸漬した。顕微鏡でパッケージを観察し、外部クラックの発生率((クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100)を求めた。単位は%。又、半導体素子とエポキシ樹脂組成物の剥離面積の割合を超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率((剥離面積)/(半導体素子面積)×100)を求めた。単位は%。
【0027】
実施例2〜5、比較例1〜4
表2、表3の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表2、表3に示す。
実施例5に用いた式(10)のフェノール樹脂硬化剤(水酸基当量174g/eq.、軟化点72℃)、比較例1、4に用いた式(11)のエポキシ樹脂(エポキシ当量196g/eq.、軟化点60℃)、比較例4に用いた式(12)を主成分とするエポキシ樹脂(エポキシ当量192g/eq.、融点105℃)の構造を以下に示す。
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【発明の効果】
本発明に従うと、低溶融粘度で低内部応力の特性を有し、且つ耐熱性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は耐半田クラック性に優れている。
Claims (7)
- (A)一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、(a)と(b)との重量比(a/b)が0.1〜19であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、無機充填材の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり200重量部以上900重量部未満であり、硬化促進剤の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材(C)の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり400〜800重量部である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)が、軟化点80〜110℃である請求項1、又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)が、融解熱量5〜35mJ/mgである請求項1、2、又は3記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、
4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(以上、a群)、又は、
3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン(以上、b群)の3種から選ばれる1種以上と
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン(以上、c群)の6種から選ばれる1種以上との混合物である
請求項1、2、3、4、又は5記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 - 請求項1、2、3、4、5、又は6記載のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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