JP3926271B2 - Iii族窒化物半導体レーザ素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、III族窒化物半導体から成る半導体レーザ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、InxGayAlzN(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表わされるIII族窒化物半導体は、大きなエネルギーバンドギャップと高い熱的安定性を有し、またその組成を調節することによってバンドギャップ幅を制御することも可能である。このことから、発光素子や高温デバイスをはじめとして、さまざまな半導体デバイスに応用開発が進められている。
【0003】
発光素子としては、青から緑の光波長域で数cd級の光度を有する発光ダイオード(LED)が既に実用化されており、また、レーザダイオード(LD)としても、実用化に向けて開発が進められている段階にある。レーザダイオードについては、開発当初より、サファイア等の比較的入手しやすい絶縁性基板を使用することが試みられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしサファイア基板を使用した素子では、基板とエピタキシャル層との大きな格子不整合(サファイアC面とGaN結晶で約14%)から生じる格子歪や、エピタキシャル層中に導入される高密度の転位欠陥(108〜1010cm-2)が素子寿命をはじめとする特性に悪影響を及ぼしてきた。また、半導体レーザ素子の基板としてサファイアを用いると、基板とエピタキシャル層の劈開方向が異なるため、共振器端面を形成する際に一般的な手法である劈開法を採用すると、良好な端面が得にくいといった問題もある。
【0005】
これらの問題点を回避するため、サファイア以外、例えばSiC等を基板として使用する試みもある。しかし、基板の大きさや入手のし易さ、格子不整合等については本質的な改善には至っていない。
【0006】
本発明者らは、基板とエピタキシャル層の格子不整合の解消や欠陥低減、良好な結晶性等の観点から、エピタキシャル層と同様III族窒化物半導体であるGaNを基板として使用した素子の開発を行っている。
【0007】
その結果、窒化物半導体レーザ素子の特性を大きく向上させることが可能になったが、GaN基板を用いても、常に良好な窒化物半導体レーザ素子が得られるとは限らず、動作電流が次第に増大したり、特性が急激に低下したりすることがあることも判明した。本発明者らがその原因について仔細に調査を行ったところ、GaN基板の製造にはいくつかの方法があり、それぞれの方法で製造される基板は構造的・品質的に異なるため、その影響が基板上の積層構造に現れて、窒化物半導体レーザ素子の特性を大きく左右していることが明らかになった。
【0008】
本発明は、基板としてもIII族窒化物半導体を備える窒化物半導体レーザ素子であって、素子の構造をそれぞれの基板に対して最適化することによって、動作特性に優れ、レーザ発振寿命の長いものを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の半導体レーザ素子は、III族窒化物半導体より成る基板と、基板の上面に設けられたIII族窒化物半導体より成る積層構造と、積層構造の上面に設けられた電極と、を備える基板には、その基板の下面から上面に達する転位集中領域と、転位集中領域を除く部位である低転位領域と、低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによって、その周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達する高ルミネセンス領域と、が含まれる。積層構造は、基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を有し、電極は、基板の低転位領域の上方のみに位置する
この半導体レーザ素子は、III族窒化物半導体より成る基板を備え、基板には上下方向に貫通する転位集中領域が存在するが、III族窒化物半導体より成る積層構造に含まれるレーザ光導波領域は、転位集中領域の上方には位置せず、転位集中領域以外の部位である低転位領域の上方に位置する。したがって、基板の転位集中領域の影響が積層構造に及んで、積層構造内の転位集中領域の上方の部位に欠陥が生じたとしても、レーザ光導波領域は、その欠陥から外れることになり、良好な特性を有するものとなる。また、積層構造の上面に設けられた電極も、転位集中領域の上方ではなく低転位領域の上方に位置しているから、転位集中領域の上方の部位の欠陥が積層構造の上面に達して露出したとしても、その部位から外れることになる。このため、電流が基板の転位集中領域やその上に生じる可能性のある積層構造内の欠陥の部位を流れるのを防止することができ、動作電流の増大によるレーザ光導波領域の劣化が抑えられる。
なお、本発明は、III族窒化物半導体より成る基板と、基板の上面に設けられたIII族窒化物半導体より成る積層構造と、積層構造の上面に設けられた電極と、を備える半導体レーザ素子であって、基板が周囲よりも蛍光発光強度が強い高ルミネセンス領域を有し、積層構造が基板の高ルミネセンス領域以外の領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を有する構成ともいえる。
【0010】
また、III族窒化物半導体より成る基板と、基板の上面に設けられたIII族窒化物半導体より成る積層構造と、基板の下面に設けられた電極と、を備える半導体レーザ素子では、基板には、その基板の下面から上面に達する転位集中領域と、転位集中領域を除く部位である低転位領域と、低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによって、その周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達する高ルミネセンス領域と、が含まれており、積層構造が基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を有し、電極が基板の低転位領域の下方のみに位置する構成とする。
この半導体レーザ素子の基板にも上下方向に貫通する転位集中領域が存在するが、レーザ光導波領域は、転位集中領域の上方ではなく低転位領域の上方に位置しているため、積層構造内の転位集中領域の上方の部位に欠陥が生じたとしても、その欠陥から外れることになって、良好な特性を有する。基板の下面には転位集中領域の下端が露出するが、基板の下面に設けられた電極は、転位集中領域の下方ではなく低転位領域の下方に位置しているから、転位集中領域が露出した部位から外れる。したがって、電流が転位集中領域を流れるのを防止することができ、動作電流の増大によるレーザ光導波領域の劣化が抑えられる。
なお、本発明、III族窒化物半導体より成る基板と、基板の上面に設けられたIII族窒化物半導体より成る積層構造と、基板の下面に設けられた電極と、を備える半導体レーザ素子であって、基板が周囲よりも蛍光発光強度が強い高ルミネセンス領域を有し、積層構造が基板の高ルミネセンス領域以外の領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を有する構成ともいえる。
【0013】
また、半導体レーザ素子の基板部分の側面が転位集中領域に形成されている構成としてもよい。また、基板の転位集中領域は、上方から見て、積層構造のレーザ光導波領域と略平行なストライプ状とするとよい。転位集中領域をこのような形状とすることで、レーザ光導波領域の形成が容易になる。また、電極の形成も容易になる。
【0016】
また、本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、以下の(1)〜(3)の領域を備えるIII族窒化物半導体より成基板の上面に、III族窒化物半導体より成る積層構造を形成する工程と、
(1)基板の下面から上面に達する転位集中領域
(2)転位集中領域を除く部位である低転位領域
(3)低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによ
って、その周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達
する高ルミネセンス領域
積層構造の上面のうち、基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を形成する工程と、
積層構造の上面に電極を形成する工程と、
を有し、
その電極を、基板の低転位領域の上方のみに形成することを特徴とする。
【0017】
また本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、以下の(1)〜(3)の領域を備えるIII族窒化物半導体より成基板の上面に、III族窒化物半導体より成る積層構造を形成する工程と、
(1)基板の下面から上面に達する転位集中領域
(2)転位集中領域を除く部位である低転位領域
(3)低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによ
って、その周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達
する高ルミネセンス領域
積層構造の上面のうち、基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を形成する工程と、
基板の下面に電極を形成する工程と、
を有し、
その電極を、基板の低転位領域の下方のみに形成することを特徴とする。
【0022】
前記基板は、表面が畝状の凹凸形状を保ったまま結晶成長することにより形成されるとしてもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態の説明に先立ち、各実施形態の半導体レーザ素子で用いるGaN基板について、図14〜図17を参照しながら、その作製方法を含めて説明する。なお、結晶の面や方位を示す指数が負の場合、絶対値の上に横線を付して表記するのが結晶学の決まりであるが、本明細書では、そのような表記ができないため、絶対値の前に負号「−」を付して負の指数を表す。
【0024】
図14は作製中のGaN基板の一部分を拡大して模式的に示す縦断面図であり、図15はその全体を模式的に示す斜視図である。まず、適切なウェハ表面にストライプ状のマスクを周期的に施した支持基体21を準備する。ここではウェハとして(111)面を表面とする2インチGaAsウェハ、マスクとしてSiO2を使用した。次に、HVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy)により、n型GaN層22を、ファセット{11−22}面23が成長中の表面に主として表出するように、[0001]方向に成長させる。その結果、図14に示すように、表面の断面は鋸歯状の凹凸形状となる。凸部の頂点付近には{0001}面25が表出した部分がストライプ状に現れた。
【0025】
上記凹凸形状は図14の奥行き方向に畝状に伸びており、凹凸のピッチは最初に支持基体21に形成したSiO2マスクの配置形状により規定される。即ち、凹凸形状の凹部下方にはSiO2マスクが存在しており、凸部から垂線を支持基体21に下ろすと、SiO2マスクの開口部のほぼ中心位置を横切る線となる。ここでは、SiO2マスクの形状を400μmピッチの周期構造としており、したがって、凹凸形状のピッチも同じく約400μmピッチとなっている。また、マスク開口部とn型GaN層22の[1−100]方向はほぼ平行になっている。
【0026】
なお、この例では、SiO2マスクをストライプ状としたため、n型GaN層22表面の凹凸形状も畝状になっているが、マスク形状は帯状に限られるものではなく、ドット形状とすることもできる。その場合のn型GaN層22の表面形状は、マスクの上方に位置する部分が底となるすり鉢状の凹みが並んだものとなり、すり鉢の斜面部分にはファセット{11−22}面が表出することになる。ファセット{11−22}面が表出した状態で、結晶成長を持続させる手法(成長条件)については、本出願人が先に出願した特願平11−273882号に詳細に開示している。なお、成長時に酸素をドーピングすることで、成長する結晶の導電型をn型とした。
【0027】
表面に上記の凹凸形状を有する成長モードを保ったまま、さらにn型GaN層の結晶成長を続けることで、図15に示すように、基体21上に高さ30mmのインゴットを作製した。図15において、インゴット上面の細かい線は、表面の畝の様子を模式的に表記したものである。
【0028】
このインゴットを、スライサーにより切断加工して薄片とし、さらにその薄片を研磨して、表面が平坦な2インチ(約5cm)径、厚さ350μmのウェハに加工して、n型GaN基板10とする。ウェハの表面は、後に行うエピタキシャル成長のために、鏡面に研磨する。この表面はほぼ(0001)面としたが、表面上にエピタキシャル成長させる窒化物半導体層のモフォロジを比較すると、(0001)面から任意の方向に0.2〜1°の範囲のオフ角度を有していることが望ましく、特に0.4〜0.8°の範囲でモフォロジが最良となる。図16および図17に、得られたn型GaN基板10の一部分の縦断面図および上面図をそれぞれ示す。
【0029】
次に、n型GaN基板10の評価を行った。まず、基板表面を光学顕微鏡で詳細に観察したところ、研磨加工された表面は必ずしも平坦でなく、n型GaN層22の結晶成長時に凹部の最底部24(図14)が生じていた部分に対応するストライプ状の領域がやや窪んでいた。これは図17では部位X2にあたる。
【0030】
さらに、250℃の硫酸および燐酸の混酸によりn型GaN基板10の表面を処理し、表出したエッチピットを観察したところ、前述の窪みに対応するストライプ状の領域に多数のエッチピットが観測され、ここは転位(欠陥)が極めて集中している領域であることが判明した。転位が集中した部分は機械的強度が他の部位よりも劣るため、研磨工程におけるダメージを受け易く、結果的に基板表面に窪みが生じたものと考えられる。
【0031】
なお、転位が集中したストライプ状の領域の幅は約5〜40μmであり、この部分のエッチピット密度は105〜109個/cm2と極めて大きくなっていた。一方、このストライプ状の領域以外の部位のエッチピット密度は102〜105個/cm2と低く抑えられていた。この結果が示すように、図14と図16の部位X1は、周囲と比較して転位密度が大きくなっている部分であり、本明細書では「転位集中領域」と呼称する。図17の部位X2は、この転位集中領域X1が表面に露出した部分である。
【0032】
また、n型GaN基板10に紫外線を照射し、表面からの蛍光発光を顕微鏡を用いて観察した(蛍光顕微鏡観察)。観察の結果、転位集中領域X1に挟まれた領域の中央に、比較的はっきりとした境界を持ち、周囲とコントラストが異なるストライプ状の発光を示す部分が確認された。この発光部分は周囲よりも蛍光発光強度が強く、やや黄色がかって明るく観察された。この部分は、n型GaN層22の結晶成長時に{0001}面が表出しつつ成長していた部分25(図14)に該当し、図17の部位Y2である。
【0033】
この部分の幅はやや揺らぎを有するが、広いところで30μmの程度であった。幅が揺らぐ原因は、n型GaN22の結晶成長時に、凸部25の成長が必ずしも均一に進行するのではないためと考えられる。また、蛍光発光が周囲と異なって観察されるのは、ドーパントの取込まれ具合が周囲と異なる等の理由が推測される。
【0034】
なお、この異なる蛍光発光を示す部分は、インゴットの製作条件や、切り出されるウェハのインゴット内における位置関係(支持基体21からの距離)によってはほとんど形成されないこともある。これらの事実から、本明細書では部位Y2を「高ルミネセンス領域」と呼称する。この高ルミネセンス領域は、n型GaN基板10の断面を示す図14、図16では、部位Y1に該当する。
【0035】
以下に述べる各実施形態の半導体レーザ素子は、上記のように転位集中領域X1および高ルミネセンス領域Y1を有するn型GaN基板上にIII族窒化物半導体の積層構造を設けたものであり、特に、転位集中領域X1の存在を考慮したものである。なお、各実施形態ではSiO2マスクを400μmピッチの周期的なストライプ状として作製した基板を用いており、したがって、転位集中領域X1、高ルミネセンス領域Y1のいずれも400μmピッチで存在する。
【0036】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の半導体レーザ素子1の構造を図3の縦断面図に模式的に示し、その作製工程の途中における層構造を図1および図2の縦断面図に模式的に示す。なお、各図においては、基板の転位集中領域X1と高ルミネセンス領域Y1も表している。
【0037】
半導体レーザ素子1は、次のようにして作製した。まず、上記のように製作したn型GaN基板100上に、MOCVD(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)法を用いて、3μmのn型GaN層102、40nmのn型In0.07Ga0.93Nクラック防止層103、1.2μmのn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層104、0.1μmのn型GaN光ガイド層105、4nmのIn0.1Ga0.9N井戸層と8nmのIn0.01Ga0.99N障壁層から成る3重量子井戸活性層106(障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層)、20nmのp型Al0.3Ga0.7Nキャリアブロック層107、0.1μmのp型GaN光ガイド層108、0.5μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層109、0.1μmのp型GaN第1コンタクト層110、50nmのp型In0.15Ga0.85N第2コンタクト層111を順次結晶成長し、積層構造101を形成した(図1)。
【0038】
このIII族窒化物半導体積層構造101の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、積層構造101の内部に転位(欠陥)が集中した領域が存在する場合があることが判明した。この転位の集中した領域は、n型GaN基板100の転位集中領域X1の上方に位置し、n型GaN層102の下面からp型InGaN第2コンタクト層111の上面に達していた。また、積層構造101の断面を蛍光顕微鏡観察したところ、周囲よりも蛍光発光強度が強く、やや黄色がかって明るく観察される領域が存在する場合があることも判明した。この蛍光発光の強い領域は、基板100の高ルミネセンス領域Y1の上方に位置し、やはり、n型GaN層102の下面からp型InGaN第2コンタクト層111の上面に達していた。
【0039】
積層構造101内部の転位の集中した領域と蛍光発光の強い領域は、基板100の転位集中領域X1と高ルミネセンス領域Y1にそれぞれ連なっており、転位集中領域X1や高ルミネセンス領域Y1の影響が及んで生じたものと考えられる。以下、積層構造101内部の転位の集中した領域を、基板100のものと同様に「転位集中領域」と呼称して、X3で表し、積層構造101内部の蛍光発光の強い領域を、基板100のものと同様に「高ルミネセンス領域」と呼称して、Y3で表す。
【0040】
転位集中領域X3が存在する場合に、その位置を考慮することなくレーザ光導波領域を設けると、レーザ光導波領域が転位集中領域X3を含んでしまうことになり、当然、その特性は良好にはならない。また、転位集中領域X3や転位集中領域X1には電流が流れやすく、露出した欠陥集中領域X3、X1に電極が触れると、動作電流の増大を招く。さらに、積層構造101上に設ける電極が露出した転位集中領域X3に接触すると、電極の材料である金属が転位集中領域X3を介して積層構造101内に拡散しやすくなり、積層構造101を成す各層の特性に変化をもたらす。GaN基板上にIII族窒化物半導体を積層して作製した従来の半導体レーザ素子で、動作電流が次第に増大したり特性が急激に低下したりする現象が見られたのは、これらが原因となった可能性が高い。
【0041】
そこで、本実施形態の半導体レーザ素子1では、以下に述べるように、レーザ光導波領域を転位集中領域X3から離れた位置に設け、また、電極も転位集中領域X3や転位集中領域X1から離れた位置に設けるようにしている。高ルミネセンス領域Y3も、周囲とは特性が異なり、レーザ光導波領域を設けるのに適しているとはいえないから、レーザ光導波領域は高ルミネセンス領域Y3からも離れた位置に設けるようにしている。
【0042】
なお、積層構造101の内部に常に転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3が生じるとは限らない。後述するように、半導体レーザ素子をチップ単位に分割する際に、転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3をチップ内部に存在しないように切断することができるが、ここでは、転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3が生じたと仮定して、これらを図1〜図3に示している。
【0043】
図1に示す積層構造101を形成した後、図2に示すように、基板100の転位集中領域X1と高ルミネセンス領域Y1との中央部の上方に、リッジ構造を周期的に形成した。このリッジ構造の下方の部位がレーザ光導波領域に相当することになる。リッジ構造は、p型第2コンタクト層111の上面からp型クラッド層109の途中までをドライエッチングにより掘り下げ、エッチング除去された部分にAl0.1Ga0.9N層112を再成長して埋め込むことにより形成した。以下、再成長させたAl0.1Ga0.9N層112を埋め込み層という。なお、Al0.1Ga0.9N埋め込み層112はn型でもi型でもよい。
【0044】
その後、リフトオフ技術あるいはエッチング技術を用いて、p型電極113およびn型電極114を形成した。その際、図3に示すように、電極113、114は、基板100の転位集中領域X1の上方や下方から外れる位置に形成した。
【0045】
こうして得られた半導体レーザ素子1では、レーザ光導波領域が、積層構造101の転位集中領域X3と高ルミネセンス領域Y3の中央に位置することになり、優れた特性を有することになる。また、積層構造101の転位集中領域X3が埋め込み層112の上面に達して露出していたとしてもp型電極113がこれに接触することはなく、電極113と転位集中領域X3の間を流れる電流は生じないし、電極113の材料金属の積層構造101内への拡散も抑えられる。基板100の下面には転位集中領域X1が露出するが、n型電極114がこれに接触することもなく、電極114と転位集中領域X1の間を流れる電流も生じない。したがって、半導体レーザ素子1では、動作電流の増大やこれに起因するレーザ光導波領域の劣化が生じ難くなっており、安定した動作特性が得られ、レーザ発振寿命も長くなる。
【0046】
半導体レーザ素子1の作製においては、レーザ光導波領域や電極113、114の位置の基準として、積層構造101の転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3そのものではなく、基板100の転位集中領域X1や高ルミネセンス領域Y1を採用している。積層構造101の転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3は基板100の転位集中領域X1や高ルミネセンス領域Y1の上方に位置するから、このようにしても、レーザ光導波領域や電極113、114を所望の位置に設定することができる。また、基板100の転位集中領域X1や高ルミネセンス領域Y1の位置は、基板100の作製時に設けたSiO2マスクの位置から特定することができる。
【0047】
積層構造101の転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3の位置を顕微鏡観察等により確認しておき、これを基準として直接レーザ光導波領域や電極113、114の位置を定めてもよいが、基板100の転位集中領域X1や高ルミネセンス領域Y1の位置を基準とする方が効率がよい。転位集中領域X3や高ルミネセンス領域Y3が発生していないときは、レーザ光導波領域や電極113、114の位置を上記のように設定することに特に意味はないが、それらが発生していた場合のために、レーザ光導波領域や電極113、114を常に基板100の転位集中領域X1や高ルミネセンス領域Y1の上方や下方から外れる位置に設定するのがよい。
【0048】
電極113、114の形成にエッチング技術を用いる場合には、一旦埋め込み層112の上面あるいはn型GaN基板10の下面の全体にp型電極あるいはn型電極を成膜し、その後所定の部分をエッチング除去する。このため、一度は転位集中領域X3、X1を電極金属が覆うことになる。しかし、前述の転位集中領域X3を介した電極金属の半導体層への拡散現象は、主として素子構造完成後の通電時点で発生するので、電極形成プロセス中に転位集中領域X3が一度覆われることは、素子特性上問題を引き起こすことはない。
【0049】
また、図3から分かるように、半導体レーザ素子1は、素子構造として重要なリッジ構造周辺の外側に転位集中領域X3を追い出したような構成になっている。このため、半導体レーザ素子をチップ単位に分割する場合には、この転位集中領域X3を境界として切断すればよい。転位集中領域X3は機械的強度が周囲より劣るため、硬度の高いIII族窒化物半導体であっても容易に分割することができる。分割された端面に露出した転位集中領域X3の部分は、ウェットエッチングや研磨などにより除去すれば、チップのエッジ部分を介して流れるリーク電流も抑止でき、素子特性向上に効果が高い。または、リッジ構造と転位集中領域X3の間の部分で分割し、転位集中領域X3そのものをチップ内部から追い出してしまえば、転位集中領域X3を介して流れるリーク電流を、未然に防止することができる。
【0050】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の半導体レーザ素子2の構造を図5の縦断面図に模式的に示し、その作製工程の途中における層構造を図4の縦断面図に模式的に示す。本実施形態の半導体レーザ素子2は、第1の実施形態の半導体レーザ素子1を修飾して、埋め込み層112の上面うちn型GaN基板100の転位集中領域X1の上方に位置する部位と、基板100の下面のうち転位集中領域X1の下方に位置する部位とに誘電体膜115を設けたものである。n型GaN基板100と積層構造101の構成や作製方法は第1の実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
【0051】
誘電体膜115は、図2のようにリッジ構造を形成した後、フォトリソグラフィプロセスおよびリフトオフプロセスにより、SiO2を用いて形成した(図4)。誘電体膜115の幅は50μm、膜厚は250nmである。積層構造101の内部に発生する転位集中領域X3の幅は、基板100内の転位集中領域X1の幅に略等しく、5〜40μmであり、埋め込み層112上面の誘電体膜115は転位集中領域X3が露出していてもその全体を覆い、基板100下面の誘電体膜115も露出した転位集中領域X1全体を覆う。
【0052】
誘電体膜115の形成後、誘電体膜115、リッジ構造のp型第2コンタクト層111および埋め込み層112の上面全体にp型電極116を形成し、n型GaN基板100の下面全体にn型電極117を形成した(図5)。
【0053】
電極116、117は、誘電体膜115によって、転位集中領域X3や転位集中領域X1から隔てられており、電極116と転位集中領域X3の間や電極117と転位集中領域X1の間を流れる電流はなく、また、電極116の材料金属が転位集中領域X3を介して積層構造101の内部に拡散することもない。したがって、半導体レーザ素子2も、安定した動作特性を示し、レーザ発振寿命の長い素子となる。
【0054】
なお、誘電体膜115の材料としては、SiO2の他に、SiN、SiO、ZnO、PbO、TiO2、ZrO2、CeO2、HfO2、Al23、Bi23、Cr23、In23、Nd23、Sb23、Ta25、Y23、AlF3、BaF2、CeF2、CaF2、MgF2、NdF3、PbF2、SrF2、ZnS、ZnSe等、あるいはこれらの混合物を用いることもできる。
【0055】
また、誘電体膜115の厚さは、1nm〜1μmの範囲、より好ましくは5nm〜500nmの範囲であればよい。膜厚が1nmより小さいと電流遮断や金属拡散防止の効果が不十分になったり、電圧が印加されたときに絶縁破壊が生じたりすることがあるので好ましくない。また、膜厚を1μmより大きくすると、誘電体膜内の応力が大きくなって、膜にひび割れが生じたり、あるいは膜剥れが生じやすくなるのでやはり好ましくない。
【0056】
誘電体膜115の幅に関しては、転位集中領域X3や転位集中領域X1の露出部分を完全に覆いうるようにすればよく、このためには下限はあるものの、特に上限はない。ただし、誘電体膜115の幅を過度に大きくすると、レーザ光導波領域に導くべき電流の妨げとなる可能性が生じ、これを避けるためにレーザ光導波領域を設ける位置が制約を受ける。したがって、誘電体膜115の幅は5〜300μmとするのが好ましい。
【0057】
<第3の実施形態>
第3の実施形態の半導体レーザ素子3の構造を図8の縦断面図に模式的に示し、その作製工程の途中における層構造を図6および図7の縦断面図に模式的に示す。本実施形態の半導体レーザ素子3は、第1の実施形態の半導体レーザ素子1を修飾して、積層構造101の内部のうちn型GaN基板100の転位集中領域X1の上方に位置する部位に誘電体膜118を設けたものである。積層構造101の他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0058】
誘電体膜118はリッジ構造を形成する途中で形成した。すなわち、前述のように、p型第2コンタクト層111上面からp型クラッド層109の途中までをドライエッチングにより掘り下げ、p型Al0.1Ga0.9N層109を露出させた段階で(図6)、基板100の転位集中領域X1の上方に位置する部位にSiO2膜118を成膜し、その後リッジ構造周辺にAl0.1Ga0.9N埋め込み層112を再成長させて埋め込んだ(図7)。
【0059】
誘電体膜118およびリッジ構造の形成後、リッジ構造のp型第2コンタクト層111と埋め込み層112の上面全体にp型電極116を形成し、n型GaN基板100の下面のうち転位集中領域X1の下方に位置する部位以外にn型電極114を形成した(図8)。
【0060】
誘電体膜118を設けたことにより、AlGaN埋め込み層112のエピタキシャル成長に転位集中領域X3の影響が及ばなくなり、埋め込み層112には転位集中領域は発生しない。このため、レーザ光導波領域以外を流れるリーク電流は低減され、電極116の材料金属の積層構造101内への拡散も抑えられる。したがって、半導体レーザ素子3も、安定した動作特性を示し、レーザ発振寿命の長い素子となる。
【0061】
なお、ここでは誘電体膜118をリッジ構造のエッチング底面に形成したが、他の界面に設けても構わない。例えば、n型InGaNクラック防止層103とn型AlGaNクラッド層104の界面に設けることもできる。ただし、本実施形態のように誘電体膜118をリッジ構造底面に形成する方が、半導体層の再成長回数を1回で済ませることができて半導体レーザ素子の結晶性が向上するという点と、電極の材料金属の拡散がレーザ光導波領域に及び難いという点の双方で好ましい。誘電体層118の材料、厚さおよび幅については、第2の実施形態で説明したことがそのまま当てはまる。
【0062】
<第4の実施形態>
第4の実施形態の半導体レーザ素子4の構造を図10の縦断面図に模式的に示し、その作製工程の途中における層構造を図9の縦断面図に模式的に示す。本実施形態の半導体レーザ素子4は、第1の実施形態の半導体レーザ素子1を修飾して、n型GaN基板100の上面のうち転位集中領域X1の上方に位置する部位に、SiO2の誘電体膜119を設けたものである。誘電体膜119は積層構造101を形成する前に基板100上に設けておく(図9)。積層構造101の作製工程および構成は第1の実施形態と同様である。
【0063】
基板100上に誘電体膜119を設けたことにより、n型GaN層102のうち誘電体膜119の上方および周辺の部分のモフォロジが多少低下するが、基板100の転位集中領域X1がGaN層102およびその上方の各層のエピタキシャル成長に影響しなくなって、積層構造101内に転位集中領域は発生しない。このため、p型電極116を積層構造101の上面全体に設けたりn型電極117を基板100の下面全体に設けたりしても、リーク電流は生じず、p型電極116の材料金属の積層構造101内への拡散も防止される。したがって、半導体レーザ素子4も、安定した動作特性を示し、レーザ発振寿命の長い素子となる。なお、誘電体層119の材料、厚さおよび幅については、第2の実施形態で説明したことがそのまま当てはまる。
【0064】
<第5の実施形態>
第5の実施形態の半導体レーザ素子5の構造を図12の縦断面図に模式的に示し、その作製工程の途中における層構造を図11の縦断面図に模式的に示す。本実施形態の半導体レーザ素子5は、第1の実施形態の半導体レーザ素子1を修飾して、リッジ構造の周囲を埋め込む材料としてAlGaNではなく誘電体を用い、p型AlGaNクラッド層109上に誘電体層122を設けたものである。
【0065】
誘電体層122の形成後(図11)、リッジ構造のp型第2コンタクト層111と誘電体層122の上面全体にp型電極116を形成し、n型GaN基板100の下面のうち転位集中領域X1の下方に位置する部位以外にn型電極114を形成した(図12)。
【0066】
本実施形態の半導体レーザ素子5では、積層構造101の内部に転位集中領域X3が発生しても、転位集中領域X3は誘電体層122で遮断されてp型電極116には達しない。したがって、半導体レーザ素子1〜4と同様に、安定した動作特性を示し、レーザ発振寿命の長い素子となる。
【0067】
<比較例>
図2に示した第1の実施形態の半導体レーザ素子1の作製途中の層構成を用いて、比較例の半導体レーザ素子9を作製した。この半導体レーザ素子9の構造を図13の縦断面図に模式的に示す。p型電極212は、積層構造101の上面のうち、基板100の転位集中領域X1の上方に位置する部位から高ルミネセンス領域Y1の上方に位置する部位にわたる広い範囲に設けられており、n型電極213も、基板100の下面のうち、転位集中領域X1の下方に位置する部位から高ルミネセンス領域Y1の下方に位置する部位にわたる広い範囲に設けられている。
【0068】
各実施形態の半導体レーザ素子1〜5および比較例の半導体レーザ素子9それぞれの多くのサンプルについて発光試験を行ったところ、半導体レーザ素子9では、60℃、30mWという条件下で、100時間以内に動作電流が増大する現象がいくつかのサンプルに現れ、レーザ発振寿命が1000時間を超えたサンプルは半数程度にとどまった。これに対し、各実施形態の半導体レーザ素子1〜5では、同じ条件下で、動作電流の増大は1000時間以上現れず、ほとんどのサンプルが3000時間以上のレーザ発振寿命を示した。これにより、III族窒化物半導体基板に転位集中領域が存在することがIII族窒化物半導体素子の特性を大きく左右し、各実施形態の構成がIII族窒化物半導体素子の特性向上に有用であることが確認された。
【0069】
なお、上記第1〜第5の実施形態の構成は、実施形態ごとに示したものに限らず、自由に組み合わせることが可能である。一例をあげれば、コンタクト層に誘電体膜を設けずにp型電極をパターニングする第1の実施形態の構成と、基板の下面に誘電体膜を設けてn型電極を全面に形成する第2の実施形態の構成とを、組み合わせることができる。
【0070】
また、第1〜第5の実施形態においては、リッジ構造の位置つまりレーザ光導波領域の位置を、転位集中領域X1と高ルミネセンス領域Y1の中央の上方に設定しているが、どちらかに寄っていても構わない。実質的にリッジ構造の部分に、転位集中領域X3と高ルミネセンス領域Y3のどちらも含まれていなければよい。さらに、積層構造側の電流注入部としてはリッジ構造に限らず、電極ストライプ型であってもBH型であってもよい。
【0071】
また、第1の実施形態では電極113、114の位置、第2〜第5の実施形態では誘電体層115、118、119、122の存在および位置が重要なのであって、他の層の構造や組成は自由に設定することができる。例えば、各実施形態ではp型コンタクト層を第1コンタクト層と第2コンタクト層の2層構造としているが、コンタクト層を1層としてもよい。電極についても、III族窒化物半導体に適合するオーミック電極となるものであれば、どのような材料を用いても構わない。例えば、p型電極としては、Au/Pd(Pdが半導体側)、Au/Mo/Pd、Au/Pt/Pd、Au/Pt/Mo/Pd、Au/Ni、Au/Mo/Ni/Pd等を、n型電極としては、Al/Hf、Al/Ti、Al/Hf/Ti、Al/Zr等を採用することができる。
【0072】
【発明の効果】
本発明の半導体レーザ素子では、レーザ光導波領域が良好な特性を有する上、基板に転位集中領域が存在することに起因する動作電流の増大と電極の材料金属の拡散による劣化を抑えることができるため、動作特性が安定し、レーザ発振寿命も長くなる。
【0073】
積層構造の上面に設ける電極や基板の下面に設ける電極を基板の低転位領域の上方や下方のみに位置させるようにすると、電極を形成する工程までは動作電流の増大や材料金属の拡散の防止について特別な配慮は必要でなく、積層構造の作製が容易である。積層構造の上面のうち転位集中領域の上方に位置する部位および基板の下面のうち転位集中領域の下方に位置する部位に電流遮断層を備えるようにしても、電流遮断層を形成する工程までは動作電流の増大や材料金属の拡散の防止についての配慮が必要でなく、積層構造の作製が容易である。また、積層構造の内部のうち基板の転位集中領域の上方に位置する部位に電流遮断層を備えるようにすると、電極の形成に際して動作電流の増大と材料金属の拡散の防止について考慮する必要がなく、電極の形状に制約がなくなる。
【0074】
基板の転位集中領域を、上方から見て、積層構造のレーザ光導波領域と略平行なストライプ状とすると、レーザ光導波領域の形成を含めた積層構造の作製が容易になり、電極や電流遮断層の形成も容易になる。
【0075】
電流遮断層の厚さを1nm以上かつ1μm以下とすると、動作電流の増大を確実に防止することができる上、ひび割れや剥がれ等の機械的欠陥が生じるおそれも少ない。
【0076】
転位集中領域をレーザ光導波領域と略平行なストライプ状とする場合、電流遮断層の幅を5μm以上かつ300μm以下とすると、動作電流の増大を確実に防止することができる上、電流遮断層がレーザ光導波領域に導くべき電流の妨げになるのを容易に避けることができ
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図2】 第1の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図3】 第1の実施形態の半導体レーザ素子の構造を模式的に示す縦断面図。
【図4】 第2の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図5】 第2の実施形態の半導体レーザ素子の構造を模式的に示す縦断面図。
【図6】 第3の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図7】 第3の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図8】 第3の実施形態の半導体レーザ素子の構造を模式的に示す縦断面図。
【図9】 第4の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図10】 第4の実施形態の半導体レーザ素子の構造を模式的に示す縦断面図。
【図11】 第5の実施形態の半導体レーザ素子の作製工程の途中における層構造を模式的に示す縦断面図。
【図12】 第5の実施形態の半導体レーザ素子の構造を模式的に示す縦断面図。
【図13】 比較例の半導体レーザ素子の構造を模式的に示す縦断面図。
【図14】 作製中のGaN基板の一部分を拡大して模式的に示す縦断面図。
【図15】 作製中のGaN基板の全体を模式的に示す斜視図。
【図16】 GaN基板の一部分の縦断面図。
【図17】 GaN基板の一部分の上面図。
【符号の説明】
1、2、3、4、5 半導体レーザ素子
10 n型GaN基板
21 支持基体
22 n型GaN層
23 {11−22}ファセット面
24 凹部の最底部
25 {0001}面
100 n型GaN基板
101 III族窒化物半導体積層構造
102 n型GaN層
103 n型In0.07Ga0.93Nクラック防止層
104 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層
105 n型GaN光ガイド層
106 In0.1Ga0.9N/In0.01Ga0.99N3重量子井戸活性層
107 p型Al0.3Ga0.7Nキャリアブロック層
108 p型GaN光ガイド層
109 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層
110 p型GaN第1コンタクト層
111 p型In0.15Ga0.85N第2コンタクト層
112 Al0.1Ga0.9N埋め込み層
113、116 p型電極
114、117 n型電極
115、118、119 SiO2
122 SiO2
X1 基板の転位集中領域
X2 基板の転位集中領域露出部
Y1 基板の高ルミネセンス領域
Y2 基板の高ルミネセンス領域露出部
X3 積層構造の転位集中領域
Y3 積層構造の高ルミネセンス領域

Claims (6)

  1. III族窒化物半導体より成る基板と、基板の上面に設けられたIII族窒化物半導体より成る積層構造と、積層構造の上面に設けられた電極と、を備える半導体レーザ素子であって、
    基板には、
    その基板の下面から上面に達する転位集中領域と、
    転位集中領域を除く部位である低転位領域と、
    低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによって、前記周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達する高ルミネセンス領域と
    が含まれ
    積層構造が基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を有し、
    前記電極が基板の低転位領域の上方のみに位置することを特徴とする半導体レーザ素子。
  2. III族窒化物半導体より成る基板と、基板の上面に設けられたIII族窒化物半導体より成る積層構造と、積層構造の下面に設けられた電極と、を備える半導体レーザ素子であって、
    基板には、
    その基板の下面から上面に達する転位集中領域と、
    転位集中領域を除く部位である低転位領域と、
    低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによって、前記周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達する高ルミネセンス領域と
    が含まれ
    積層構造が基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を有し、
    前記電極が基板の低転位領域の下方のみに位置することを特徴とする半導体レーザ素子。
  3. 基板の転位集中領域が、上方から見て、積層構造のレーザ光導波領域と略平行なストライプ状であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
  4. 以下の(1)〜(3)の領域を備えるIII族窒化物半導体より成基板の上面に、III族窒化物半導体より成る積層構造を形成する工程と、
    (1)基板の下面から上面に達する転位集中領域
    (2)転位集中領域を除く部位である低転位領域
    (3)低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによ
    って、前記周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達
    する高ルミネセンス領域
    積層構造の上面のうち、基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を形成する工程と、
    積層構造の上面に電極を形成する工程と、
    を有し、
    該電極を、基板の低転位領域の上方のみに形成することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 以下の(1)〜(3)の領域を備えるIII族窒化物半導体より成基板の上面に、III族窒化物半導体より成る積層構造を形成する工程と、
    (1)基板の下面から上面に達する転位集中領域
    (2)転位集中領域を除く部位である低転位領域
    (3)低転位領域の中央に形成され周囲と異なるドーパントの取り込みによ
    って、前記周囲よりも強い蛍光発光強度でかつ基板の下面から上面に達
    する高ルミネセンス領域
    積層構造の上面のうち、基板の転位集中領域と高ルミネセンス領域との間の低転位領域の上方のみに位置するストライプ状のレーザ光導波領域を形成する工程と、
    基板の下面に電極を形成する工程と、
    を有し、
    該電極を、基板の低転位領域の下方のみに形成することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 前記基板は、表面が畝状の凹凸形状を保ったまま結晶成長することにより形成されることを特徴とする請求項4または5に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
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