(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置であって、発光ダイオード素子又は半導体レーザ素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。
図1に示すように、n型のIII-V族窒化物半導体からなる第1半導体層11と、p型のIII-V族窒化物半導体からなる第2半導体層13との間に、III-V族窒化物半導体からなる活性領域としての発光層12が形成されている。
第2半導体層13における両側部には、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいた酸化領域13aが、該第2半導体層13自体を酸化して形成されている。
第1の実施形態においては、酸化領域13aの下部は発光層12にまで達していない。また、酸化領域13aは、発光ダイオード素子の場合には、第2半導体層13がチップ状に分割された場合の該チップの周縁部に環状に形成される。これに対し、半導体レーザ素子の場合には、共振器構造を得るために、チップの両側部に形成される。
第2半導体層13の上には酸化領域13aを含む全面に、ニッケル(Ni)と金(Au)との積層体からなる第1のオーミック電極であるp側電極14が形成されている。また、第1半導体層11における第2半導体層13の反対側の面上には、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)との積層体からなる第2のオーミック電極であるn側電極15が形成されている。
ここで、例えば、第1半導体層11は、n側電極15側にn型の窒化ガリウム(GaN)層を介在させたn型の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなるn型クラッド層とし、第2半導体層13は、p側電極14側にp型の窒化ガリウム層を介在させたp型の窒化アルミニウムガリウムからなるp型クラッド層としてもよい。また、発光層12は、窒化インジウムガリウム(InGaN)を井戸層とする量子井戸構造としてもよい。
さらに、n側電極15及びp側電極14の下側には、例えば窒化ガリウムからなるコンタクト層をそれぞれ設けてもよい。
なお、酸化領域13aは、第2半導体層13に設ける代わりに、第1半導体層11に設けてもよい。
また、酸化領域13aの上面と第2半導体層13の上面とは必ずしも一致している必要はない。
また、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
このように、第1の実施形態に係る半導体装置は、第1半導体層11、発光層12及び第2半導体層13を結晶成長する単結晶基板を有していないため、p側電極14及びn側電極15は発光層12を挟んで対向する位置に設けられている。このため、p側電極14とn側電極15との間の直列抵抗の値を大幅に低減できる。その上、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aは、ドライエッチングを受けることなく電流狭窄部を形成する。このため、発光層12の側部がエッチングダメージを受けることがなくなるので、発光層12における動作時の漏れ電流を大幅に低減することができる。その結果、発光ダイオード素子の場合には動作電流が低減し、また、半導体レーザ素子の場合にはしきい値電流の値を確実に低減することができる。
また、前述したように、通常用いられるサファイアからなる基板を有していないため、発光層12を含む各半導体層11、13を、サファイアの面方位に規制されることなく、窒化ガリウム系半導体に固有の面方位でへき開することが可能となる。その結果、半導体レーザ素子の場合には、良好なへき開面を持つ共振器を得られるため、しきい値電流値が低減する等の動作特性の向上を図ることができる。
(第1の実施形態の第1製造方法)
以下、前記のような構成を持つ半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図2(a)〜図2(e)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の第1製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図2(a)に示すように、例えば、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法により、サファイア(単結晶Al2 O3 )からなる基板20上に、n型の窒化アルミニウムガリウムからなるn型クラッド層である第1半導体層11、窒化インジウムガリウムを含む発光層12、及びp型の窒化アルミニウムガリウムからなるp型クラッド層である第2半導体層13を順次成長する。ここで、第1半導体層11における基板20との界面の近傍部分は、n側電極とのコンタクト層となるよう窒化ガリウムとしてもよい。同様に、第2半導体層13における表面の近傍部分は、p側電極とのコンタクト層となるよう窒化ガリウムとしてもよい。
また、例えば、III 族源には、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)及びトリメチルインジウム(TMIn)を用い、窒素源には、アンモニア(NH3 )を用いている。また、n型ドーパントには、例えばモノシラン(SiH4 )ガスを用い、p型ドーパントには、例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)を用いている。
次に、図2(b)に示すように、例えば、気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により、モノシラン(SiH4 )を分解して得られるシリコン(Si)からなるマスク形成膜を第2半導体層13の上に堆積し、堆積したマスク形成膜に対して、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、酸化マスク膜31を形成する。酸化マスク膜31は、発光ダイオード素子の場合には、素子(チップ)、すなわち第2半導体層13の周縁部が露出するように中央部分に配置する。また、半導体レーザ素子の場合には、第2半導体層13における電流狭窄部分にストライプ状に配置する。
次に、図2(c)に示すように、例えば酸素(O2 )ガスを含む酸化性雰囲気で、酸化マスク膜31が形成された第2半導体層13に対して、例えば900℃の温度で約4時間の熱処理を行なう。ここで、酸化性雰囲気は水蒸気(H2 O)であってもよい。これにより、第2半導体層13に、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aが形成される。このように、酸化性雰囲気に、酸素ガス又は水蒸気を用いると、短時間で且つ再現性良く酸化領域13aを形成することができる。
次に、図2(d)に示すように、例えばフッ硝酸により酸化マスク膜31を除去し、その後、例えば電子ビーム蒸着法を用いて、酸化領域13aを含む第2半導体層13の全面に、ニッケルと金との積層体からなるp側電極14を形成する。続いて、基板20における第1半導体層11の反対側の面から、フッ化クリプトン(KrF)による波長が248nmでパルス状のエキシマレーザ光を基板20の全面にわたってスキャンするように照射する。これにより、照射されたエキシマレーザ光は基板20では吸収されずに第1半導体層11で吸収されるため、第1半導体層11は発熱する。この発熱により窒化ガリウムが熱分解して基板20と第1半導体層11とが分離する。ここでは、基板20と接合した窒化ガリウムが分解されるように、エキシマレーザ光におけるピークパワー密度又はパルス幅を設定する。このように、エキシマレーザ光をパルス状態で発振するため、レーザ光の出力パワーを著しく増加させることができるので、第1半導体層11から基板20を容易に分離することができるようになる。その上、エキシマレーザ光を基板20の面内をスキャンするように照射するため、光源のビーム径に依らずに、面積が比較的に大きい基板20であっても確実に分離することができる。
また、結晶成長後の冷却時に生じる窒化物半導体とサファイアとの熱膨張係数の差により生じるストレスを緩和するために、基板20を500℃程度の温度で加熱しながらエキシマレーザ光を照射してもよい。
また、照射光には、KrFエキシマレーザ光に代えて、波長が355nmのYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザの第3高調波を用いてもよく、また、波長が365nmの水銀(Hg)ランプの輝線を用いてもよい。
例えば、水銀ランプの輝線を用いた場合には、光の出力パワーではレーザシステムに劣るものの、スポットサイズを大きくできるため、基板20の分離を短時間で行なうことができる。
さらに、基板20を第1半導体層11から分離する他の方法として、光を照射する代わりに、研磨法によって基板20を除去してもよい。
ここで、基板20の分離法として、光照射法を用いる場合には、分離の際に第1半導体層11に与えるダメージを小さくできると共に、基板20が反った状態であっても、容易に分離を行なえる。これに対し、研磨法を用いる場合には、レーザシステム等の光源が不要となるため、製造コストを低減することができる。
次に、図2(e)に示すように、例えば電子ビーム蒸着法により、第1半導体層11における発光層12と反対側の面上に、チタンとアルミニウムとの積層体からなるn側電極15を形成する。
(第1の実施形態の第2製造方法)
以下、本発明の第1の実施形態の第2製造方法について図面を参照しながら説明する。
図3(a)〜図3(e)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の第2製造方法の工程順の断面構成を示している。第1製造方法は、第1半導体層11から成膜したが、第2製造方法はこれとは逆に第2半導体層13から成膜する。従って、図3において、図2に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付している。
まず、図3(a)に示すように、MOCVD法により、基板20の上に、p型の窒化アルミニウムガリウムからなる下部第2半導体層13Aを成長する。その後、下部第2半導体層13Aの上に、第1製造方法と同様に、シリコンからなる酸化マスク膜31を選択的に形成する。
次に、図3(b)に示すように、酸素ガス又は水蒸気を含む酸化性雰囲気で、酸化マスク膜31が形成された下部第2半導体層13Aに対して、例えば900℃の温度で約4時間の熱処理を行なう。これにより、下部第2半導体層13Aに、基板面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aが形成される。
次に、図3(c)に示すように、例えばフッ硝酸により酸化マスク膜31を除去し、その後、再度、MOCVD法により、下部第2半導体層13Aの上に、p型の窒化アルミニウムガリウムからなる上部第2半導体層13Bと、発光層12と、n型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11とを順次成長する。ここでは、下部第2半導体層13Aと上部第2半導体層13Bとを第2半導体層13とする。また、下部第2半導体層13Aはその基板20の近傍部分の組成を窒化ガリウムとしてもよく、第1半導体層11はその表面の近傍部分の組成を窒化ガリウムとしてもよい。
次に、図3(d)に示すように、第1半導体層11の上に、チタンとアルミニウムとの積層体からなるn側電極15を蒸着により形成する。続いて、基板20における下部第2半導体層13Aの反対側の面から、KrFエキシマレーザ光を基板20の全面にわたってスキャンするように照射して、第2半導体層13から基板20を分離する。ここで、レーザ光はパルス状に発振することが好ましく、また、レーザ光の照射中に、基板20を500℃程度の温度で加熱することが好ましい。また、基板20の分離除去には、水銀ランプの輝線を用いてもよく、さらには研磨法を用いてもよい。
次に、図3(e)に示すように、第2半導体層13における発光層12と反対側の面上に、ニッケルと金との積層体からなるp側電極14を形成する。
なお、第1製造方法及び第2製造方法において、発光層12を含む各半導体層11、13の結晶成長方法として、MOCVD法を用いたが、少なくとも発光層12の成長に、分子線エピタキシ(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法を用いてもよい。
さらには、第1半導体層11及び第2半導体層13の一部を、ハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)法によって成膜してもよい。
HVPE法は、成長速度が100μm/h以上であり、MOCVD法及びMBE法と比べて成長速度が極めて大きいため、第1及び第2半導体層11、13の厚膜化が容易である。また、各半導体層11、13を厚膜化することにより、成膜後のウエハ状態の基板20の扱いが容易となる。その上、高速成長による結晶性の改善も期待できる。従って、第1半導体層11及び第2半導体層13の少なくとも一方に、例えば10μm以上の厚さのHVPE法による成長層を含ませてもよい。
従って、発光層12が量子井戸構造を含む場合に、数原子層の薄膜からなる多層構造を容易に且つ再現性良く制御できるMOCVD法又はMBE法により発光層12を成膜すると、半導体レーザ素子におけるしきい値電流の値を低減できる等の動作特性の向上を図ることができる。また、各半導体層11、13を、成長速度が大きいHVPE法により成膜すると、厚膜化が容易となるため、量子井戸構造を含むデバイス構造を効率良く形成できるので、動作特性に優れる半導体装置を低コストで得られるようになる。
また、酸化領域13aを選択的形成するための酸化マスク膜31は、シリコンに限られず、窒化ガリウム系半導体と比べて酸化されにくい材料であればよく、例えば窒化シリコン(Si3N4)を用いてもよい。
(第1の実施形態の一変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例について図面を参照しながら説明する。
図4(a)〜図4(c)は本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図4(a)に示すように、サファイアからなる基板20の上に、第2半導体層13、酸化領域13a、発光層12及び第1半導体層11を形成し、その後、第1半導体層11の上面に、例えば、面方位が(100)面のn型のシリコン(Si)からなる支持基板40を、公知の貼り合わせ法を用いて貼り合わせる。このとき、支持基板40を該支持基板40のへき開面と第1半導体層11のへき開面とが互いに平行となるように貼り合わせれば、支持基板40を含め各半導体層11、13のへき開を容易に且つ確実に行なえるようになる。
次に、図4(b)に示すように、基板20における下部第2半導体層13Aの反対側の面から、パルス状のKrFエキシマレーザ光を基板20の全面にわたってスキャンするように照射して、第2半導体層13から基板20を分離する。ここで、基板20の分離除去には、水銀ランプの輝線を用いてもよく、さらには研磨法を用いてもよい。
次に、図4(c)に示すように、第1半導体層11の上面に、金(Au)とアンチモン(Sb)との合金(Au−Sb合金)からなるn側電極16を形成する。その後、第2半導体層13における発光層12と反対側の面上に、ニッケルと金との積層体からなるp側電極14を形成する。
なお、基板20と比べて放熱性に優れた、例えば銅(Cu)からなる支持基板40を貼り合わせれば、半導体装置の放熱性がさらに向上する。
なお、支持基板40は、シリコンに限られず、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)又はリン化インジウム(InP)を用いてもよい。これにより、例えば半導体装置を半導体レーザ素子とする場合には、しきい値電流の値の低減及び素子の長寿命化を図ることができる。
また、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2変形例について図面を参照しながら説明する。
図5は本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置の断面構成を示している。図5において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図5に示すように、第2変形例に係る半導体装置の酸化領域13bは、発光層12及びn型の第1半導体層11の上部を含むように形成されている。これにより、外部から注入される注入電流の電流狭窄をより確実に行なえるため、発光層12における漏れ電流がさらに減少する。
酸化領域13bの形成方法は、第1製造方法の場合には、第2半導体層13までを成長した後、酸化領域13bが第1半導体層11の上部にまで達するまで酸化すれば良い。また、第2製造方法の場合には、p型の第2半導体層13、発光層12、及びn型の第1半導体層11の一部(下部)までを成長し、その後、これらの成長層を選択的に酸化して酸化領域13bを形成する。その後、第1半導体層11の残部を再成長すると良い。
なお、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
また、第1の実施形態及びその変形例において、基板20には、サファイアに代えて、酸化マグネシウム(MgO)、又は酸化リチウムガリウムアルミニウム(LiGax Al1−x O2 (但し、xは0≦x≦1とする))からなる単結晶基板を用いてもよい。これらの単結晶基板は、格子定数がIII-V族窒化物半導体と近似しているため、その上に窒化物半導体結晶が良好に成長するので、高性能な青色又は青紫色可視域発光素子、すなわち、発光ダイオード素子又は半導体レーザ素子を実現できる。
また、第2変形例においても、酸化領域13aの上面と第2半導体層13の上面とは必ずしも一致している必要はない。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置であって、発光ダイオード素子又は半導体レーザ素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。図6において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第2の実施形態に係る半導体装置は、p型の第2半導体層13における発光層12の反対側の面上に、面方位が例えば(0001)面のp型の炭化シリコン(SiC)からなる基板21が設けられている。
また、基板21における第2半導体層13の反対側の面上に、アルミニウム(Al)とシリコン(Si)との合金、例えばAl−Si合金(Al:89%)からなる第1のオーミック電極としてのp側電極17が形成されている。
このように、第2の実施形態によると、第2半導体層13には、導電性を有する基板21が設けられているため、p側電極17及びn側電極15は発光層12を挟んで対向する位置に形成できる。このため、p側電極17とn側電極15との間の直列抵抗の値を大幅に低減できる。その上、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aが、ドライエッチングを受けることなく電流狭窄部を形成する。このため、発光層12の側部がエッチングダメージを受けることがなくなるので、発光層12における動作時の漏れ電流を大幅に低減することができる。その結果、発光ダイオード素子の場合には動作電流が低減し、また、半導体レーザ素子の場合にはしきい値電流の値を低減することができる。
さらに、基板21には、サファイアよりも放熱性がすぐれた炭化シリコンを用いているため、半導体装置の一層の長寿命化を達成することができる。
なお、酸化領域13aの上面と第2半導体層13の上面とは必ずしも一致している必要はない。
また、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
また、酸化領域13aは、第2半導体層13のみに限らず、発光層12又は第1半導体層11にまで達するように形成してもよい。
また、基板21には、炭化シリコンに代えて、シリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)、リン化インジウム(InP)、酸化亜鉛(ZnO)又は金属、例えば銅(Cu)からなる基板を用いてもよい。例えば、酸化亜鉛は、格子定数がIII-V族窒化物半導体と近似しているため、また、シリコン、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム及びリン化インジウムは、いずれも結晶性が優れているため、その上に窒化物半導体結晶が良好に成長するので、高性能な青色又は青紫色可視域発光素子、すなわち、発光ダイオード素子又は半導体レーザ素子を実現できる。
また、金属を用いた場合には、放熱性が良好となるため、例えば半導体レーザ素子に適用した場合には、高温下での動作が可能となり、該半導体レーザ素子の長寿命化を図ることができる。
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図7(a)〜図7(d)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
ここでは、第1の実施形態における第2製造方法と同様に、基板21の上に第2半導体層13、発光層12及び第1半導体層11を順次成膜する方法を説明する。
まず、図7(a)に示すように、MOCVD法により、p型の炭化シリコンからなる基板21の上に、p型の窒化アルミニウムガリウムからなる下部第2半導体層13Aを成長する。その後、下部第2半導体層13Aの上に、第1の実施形態と同様に、シリコンからなる酸化マスク膜31を選択的に形成する。
次に、図7(b)に示すように、酸素ガス又は水蒸気を含む酸化性雰囲気で、酸化マスク膜31が形成された下部第2半導体層13Aに対して、例えば900℃の温度で約4時間の熱処理を行なう。これにより、下部第2半導体層13Aに、基板面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aが形成される。
次に、図7(c)に示すように、例えばフッ硝酸により酸化マスク膜31を除去し、その後、再度、MOCVD法により、下部第2半導体層13Aの上に、p型の窒化アルミニウムガリウムからなる上部第2半導体層13Bと、発光層12と、n型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11とを順次成長する。ここでも、下部第2半導体層13Aと上部第2半導体層13Bとを第2半導体層13とする。また、下部第2半導体層13Aはその基板21の近傍部分の組成を窒化ガリウムとしてもよく、第1半導体層11はその表面の近傍部分の組成を窒化ガリウムとしてもよい。
次に、図7(d)に示すように、例えば電子ビーム蒸着法により、第1半導体層11の全面に、チタンとアルミニウムとの積層体からなるn側電極15を形成する。続いて、例えば電子ビーム蒸着法により、基板21における下部第2半導体層13Aの反対側の面上に、Al−Si合金(Al:89%)からなるp側電極17を形成する。
なお、発光層12を含む各半導体層11、13の結晶成長方法として、MOCVD法を用いたが、少なくとも発光層12はMBE法を用いて成膜してもよい。
さらには、第1半導体層11及び第2半導体層13の少なくとも一方に、例えば10μm以上の厚さのHVPE法による成長層を含ませてもよい。
このように、第2の実施形態に係る製造方法は、半導体層の成長用の基板21に導電性を持たせているため、該基板21を除去しなくても、n側電極15とp側電極17とが互いに対向するように配置することができるので、プロセスを簡略化することができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図8は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置であって、発光ダイオード素子又は半導体レーザ素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。図8において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第3の実施形態に係る半導体装置は、電流狭窄部である酸化領域13aの露出面が、酸化シリコン(SiO2 )からなる絶縁膜18により覆われていることを特徴とする。また、p側電極14は、第2半導体層13における酸化領域13aに挟まれた領域の上に選択的に形成されている。
このように、第3の実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態と同様に、結晶成長する基板を有していないため、p側電極14及びn側電極15は発光層12を挟んで対向する位置に設けられる。このため、p側電極14とn側電極15との間の直列抵抗の値を大幅に低減できる。その上、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aは、ドライエッチングを受けることなく電流狭窄部が形成される。このため、発光層12の側部がエッチングダメージを受けることがない。
その上、p側電極14は、絶縁膜18によりその形成位置が規制されており、第2半導体層13の露出面の上にのみ形成されている。このため、酸化領域13aを介しての漏れ電流を防止できるので、発光層12における動作時の漏れ電流をさらに抑制することができる。その結果、半導体装置の動作電流を低減することができる。
また、結晶成長用の基板を有していないことから、発光層12を含む各半導体層11、13を基板材料の面方位に規制されることなく、窒化ガリウム系半導体に固有の面方位でへき開できるようになる。従って、半導体レーザ素子の場合には、良好なへき開面を持つ共振器を実現できるので、しきい値電流値を低減できる等の動作特性の向上を図ることができる。
なお、酸化領域13aは、第2半導体層13に設ける代わりに、第1半導体層11に設けてあってもよい。
また、酸化領域13aの上面と第2半導体層13の上面とは必ずしも一致している必要はない。
また、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
また、酸化領域13aは、第2半導体層13のみに限らず、発光層12又は第1半導体層11にまで達するように形成してもよい。
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図9(a)〜図9(d)及び図10(a)〜図10(d)は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
ここでは、第1の実施形態における第1製造方法と同様に、基板20の上に第1半導体層11から順次成膜する方法を説明する。
まず、図9(a)に示すように、例えばMOCVD法により、サファイアからなる基板20上に、n型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11、窒化インジウムガリウムを井戸層に含む発光層12、及びp型の窒化アルミニウムガリウムからなる第2半導体層13を順次成長する。ここで、第1半導体層11における基板20との界面の近傍部分は、n側電極とのコンタクト層となるよう窒化ガリウムとしてもよい。同様に、第2半導体層13における表面の近傍部分は、p側電極とのコンタクト層となるよう窒化ガリウムとしてもよい。
次に、図9(b)に示すように、第1の実施形態と同様にして、第2半導体層13の上に、シリコンからなる酸化マスク膜31を選択的に形成する。
次に、図9(c)に示すように、酸素ガス又は水蒸気を含む酸化性雰囲気で、酸化マスク膜31が形成された第2半導体層13に対して、例えば900℃の温度で約4時間の熱処理を行なう。これにより、第2半導体層13に、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいてなる酸化領域13aが形成される。
次に、図9(d)に示すように、CVD法により、酸化領域13aを含む第2半導体層13の上の全面にわたって、厚さが約300nmの酸化シリコンからなる絶縁膜18を堆積する。
次に、図10(a)に示すように、リソグラフィ法により、絶縁膜18の上に、第2半導体層13における酸化領域13aに挟まれた部分の上側であって、電極形成領域に開口パターン32aを持つレジストパターン32を形成する。
次に、図10(b)に示すように、レジストパターン32をマスクとして、例えばフッ化水素酸(HF)を含む水溶液(以下、フッ酸と呼ぶ)を用いて絶縁膜18にウエットエッチングを行なう。これにより、絶縁膜18に開口パターン32aを転写して、第2半導体層13の酸化領域13aに挟まれた部分を露出する。その後、第2半導体層13を含むレジストパターン32の上に、ニッケルと金との積層体からなる電極形成膜14Aを蒸着により成膜する。
次に、図10(c)に示すように、レジストパターン32を除去する、いわゆるリフトオフ法によって、第2半導体層13の酸化領域13aに挟まれた部分の上に、電極形成膜14Aからなるp側電極14を形成する。続いて、基板20における第1半導体層11の反対側の面から、パルス状のKrFエキシマレーザ光を基板20の全面にわたってスキャンするように照射する。このレーザ光の照射により、第1半導体層11における基板20との界面が熱分解して、基板20と第1半導体層11とが分離する。ここで、レーザ光の照射中に、基板20を500℃程度の温度で加熱してもよい。また、基板20を分離又は除去するには、KrFエキシマレーザ光の他に、波長が355nmのYAGレーザの第3高調波を用いてもよく、波長が365nmの水銀ランプの輝線を用いてもよく、さらには研磨法を用いてもよい。
次に、図10(d)に示すように、第1半導体層11における発光層12の反対側の面上に、チタンとアルミニウムとの積層体からなるn側電極15を蒸着により形成する。
このように、第3の実施形態に係る製造方法によると、絶縁膜18は、酸化領域13aの表面保護膜として機能するだけでなく、図10(b)に示す電極形成膜14Aの成膜工程において、電極形成膜14Aにおけるレジストパターン32上に位置する部分と第2半導体層13上に位置する部分とを互いに切断するスペーサ層としても機能する。
従って、酸化領域13a上に絶縁膜18を設けておき、p側電極14をその形成位置が絶縁膜18に規制されるように形成するため、前述したように漏れ電流を低減することができる上に、p側電極14の歩留まりが向上するので、コストの低減が可能となる。
なお、絶縁膜18には酸化シリコンを用いたが、これに代えて窒化シリコン(Si3N4)を用いてもよい。酸化シリコン及び窒化シリコンは、ウエットエッチングにより除去し易く、また、比較的に低温で形成することができる。このため、発光層12に対する熱的なダメージを抑制することができるので、半導体装置の動作特性を劣化させるおそれがない。その上、電極形成膜14Aに対するリフトオフをも容易に且つ再現性良く行なうことができる。
また、基板20の上に第2半導体層13から成長する第2製造方法を用いてもよい。
また、基板20を第1半導体層11から分離するよりも前に、例えば絶縁膜18を堆積する前に、シリコン等からなる支持基板を、第2半導体層13における発光層12の反対側の面に貼り合わせてもよい。又は、基板20を分離した後で且つn側電極15を形成するよりも前に、第1半導体層11における発光層12の反対側の面にシリコン等からなる支持基板を貼り合わせてもよい。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図11は本発明の第4の実施形態に係る半導体装置であって、発光ダイオード素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。図11において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第4の実施形態に係る半導体装置は、n型の第1半導体層11、発光層12及びp型の第2半導体層13を成長する基板20に、絶縁性のサファイアを用いており、該基板20を第1半導体層11から分離しない構成を採る。
従って、発光層12を含む第1半導体層11及び第2半導体層13には、断面凸状にエッチングされた電流狭窄部200が形成されている。第1のオーミック電極であるp側電極14は、電流狭窄部200における第2半導体層13の上に形成され、第2のオーミック電極であるn側電極15は、第1半導体層11における電流狭窄部200の側方の露出領域の上に形成されている。
さらに、第4の実施形態の特徴として、ドライエッチング等によって露出した電流狭窄部200の露出面には、発光層12を含め各半導体層11、13自体が酸化されてなり、該発光層12を両側部から挟むように酸化領域13bが形成されている。
このように、第4の実施形態によると、従来のようにドライエッチング等により電流狭窄部200を設ける構成であっても、発光層12の側部を含む電流狭窄部200の露出面を酸化して酸化領域13bを形成する。このため、該電流狭窄部200の露出面がエッチングによるダメージを受けたとしても、このダメージを受けた部分が酸化されて酸化領域13bに取り込まれることになる。その結果、発光層12における漏れ電流が大幅に低減するので、半導体装置の動作電流を低減することができる。
なお、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
また、第1半導体層11、発光層12及び第2半導体層13は、例えば、MOCVD法又はMBE法で形成されていてもよく、さらには、第1半導体層11及び第2半導体層13の少なくとも一方には、厚さが10μm以上のHVPE法による成長部分を含んでいてもよい。
また、基板20には、サファイアに代えて、酸化マグネシウム、又は酸化リチウムガリウムアルミニウム(LiGax Al1−x O2 (但し、xは0≦x≦1とする))からなる単結晶基板を用いてもよい。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図12は本発明の第5の実施形態に係る半導体装置であって、発光ダイオード素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。図12において、図11に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第5の実施形態に係る半導体装置は、酸化領域13bの露出面の上に、表面保護膜である酸化シリコンからなる絶縁膜18が形成されている。
また、p側電極14及びn側電極15の各端部は、酸化領域13bの端部の上に重なるように形成されている。
なお、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
また、基板20には、サファイアに代えて、酸化マグネシウム、又は酸化リチウムガリウムアルミニウム(LiGax Al1−x O2 (但し、xは0≦x≦1とする))からなる単結晶基板を用いてもよい。
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図13(a)〜図13(d)及び図14(a)〜図14(d)は本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図13(a)に示すように、例えばMOCVD法により、サファイアからなる基板20の上に、n型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11、窒化インジウムガリウムを井戸層に含む発光層12、及びp型の窒化アルミニウムガリウムからなる第2半導体層13を順次成長する。ここで、第1半導体層11における基板20との界面の近傍部分は窒化ガリウムとしてもよい。同様に、第2半導体層13における表面の近傍部分は窒化ガリウムとしてもよい。
次に、図13(b)に示すように、例えば、塩素(Cl2 )ガスをエッチングガスとする反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)法により、第2半導体層13における電流狭窄部形成領域をマスクして、第2半導体層13、発光層12、及び第1半導体層11の上部に対して順次ドライエッチングを行なって、第1半導体層11、発光層12及び第2半導体層13を含む断面凸状の電流狭窄部200を形成する。
次に、図13(c)に示すように、例えばモノシランを分解するCVD法により、電流狭窄部200を含む第1半導体層11上の全面に、シリコンからなるマスク形成膜を成膜する。続いて、リソグラフィ法及びエッチング法により、マスク形成膜から、電流狭窄部200における第2半導体層13の上にその周縁部を残してマスクする第1の酸化マスク膜31Aを形成する。これと共に、マスク形成膜から、第1半導体層11における電流狭窄部200の側方の露出領域の上に第2の酸化マスク膜31Bを形成する。
ここで、図13(b)に示す工程において、レジストマスク等を用いてエッチングを行なう代わりに、第1の酸化マスク膜31Aをマスクとしてエッチングを行なうと、図13(b)に示すリソグラフィ工程を省略することができる。
次に、図13(d)に示すように、酸素ガス又は水蒸気を含む酸化性雰囲気で、第1の酸化マスク膜31A及び第2の酸化マスク膜31Bが形成された基板20に対して、温度が約900℃で4時間程度の熱処理を行なう。これにより、電流狭窄部200の表面及び第1半導体層11の露出面に酸化領域13bが形成される。
次に、図14(a)に示すように、第1の酸化マスク膜31A及び第2の酸化マスク膜31Bを、例えばフッ硝酸により除去する。続いて、CVD法により、基板20の上に電流狭窄部200を含む全面にわたって、膜厚が約300nmの酸化シリコンからなる絶縁膜18を堆積する。
次に、図14(b)に示すように、リソグラフィ法により、絶縁膜18の上に、電流狭窄部200における第2半導体層13の上側であって、p側電極形成領域に第1の開口パターン33aを持つ第1のレジストパターン33を形成する。続いて、第1のレジストパターン33をマスクとして、例えばフッ化酸により絶縁膜18にウエットエッチングを行なう。これにより、絶縁膜18に第1の開口パターン33aを転写して、第2半導体層13を露出する。その後、露出した第2半導体層13を含む第1のレジストパターン33の上に、ニッケルと金との積層体からなるp側電極形成膜14Aを蒸着により成膜する。続いて、第1のレジストパターン33を除去する、いわゆるリフトオフ法によって、電流狭窄部200における第2半導体層13の上に、p側電極形成膜14Aからなるp側電極14を形成する。ここでは、第1の開口パターン33aからは、酸化領域13bの端部が露出しているため、形成されたp側電極14の端部が、酸化領域13bの端部の上に重なる。
次に、図14(c)に示すように、再度、リソグラフィ法により、絶縁膜18及びp側電極14の上に、第1半導体層11における電流狭窄部200の側方に位置するn側電極形成領域に第2の開口パターン34aを持つ第2のレジストパターン34を形成する。続いて、第2のレジストパターン34をマスクとして、例えばフッ酸により絶縁膜18にウエットエッチングを行なう。これにより、絶縁膜18に第2の開口パターン34aを転写して、第1半導体層11を露出する。その後、露出した第1半導体層11を含む第2のレジストパターン34の上に、チタンとアルミニウムの積層体からなるn側電極形成膜15Aを蒸着により成膜する。
次に、図14(d)に示すように、第2のレジストパターン34を除去するリフトオフ法により、第1半導体層11の上に、n側電極形成膜15Aからなるn側電極15を形成する。なお、p側電極14とn側電極15とは、いずれを先に形成しても構わない。
このように第5の実施形態に係る製造方法によると、絶縁膜18は、酸化領域13aの表面保護膜として機能するだけでなく、図14(b)に示すp側電極形成膜14Aの成膜工程において、p側電極形成膜14Aにおける第1のレジストパターン33上に位置する部分と第2半導体層13上に位置する部分とを互いに切断するスペーサ層としても機能する。これは、n側電極形成膜15Aに対しても同様である。
従って、第5の実施形態によると、第4の実施形態と同様に、電流狭窄部200をドライエッチングにより形成する構成であっても、電流狭窄部200の側面に、半導体層自体を酸化してなる酸化領域13bを形成するため、発光層12による漏れ電流を低減できる。その結果、半導体装置の動作電流を低減することができる。
その上、酸化領域13a上に絶縁膜18を設けておき、該絶縁膜18に規制されてp側電極14及びn側電極15を形成するため、各電極14、15の歩留まりがそれぞれ向上するので、コストの低減が可能となる。
なお、絶縁膜18には酸化シリコンを用いたが、これに代えて、窒化シリコン(Si3N4)を用いてもよい。
また、発光層12を含む各半導体層11、13の結晶成長方法として、MOCVD法を用いたが、少なくとも発光層12はMBE法を用いて成膜してもよい。
さらには、第1半導体層11及び第2半導体層13の少なくとも一方に、例えば10μm以上の厚さのHVPE法による成長層を含ませてもよい。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図15は本発明の第6の実施形態に係る半導体装置であって、半導体レーザ素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。図15において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第6の実施形態に係る半導体装置は、サファイアからなる基板20の主面上に、n型の窒化ガリウム又はn型の窒化アルミニウムガリウムからなる下地層19と、該下地層19の上にストライプ状パターン又はドット(島)状パターンを持つの酸化シリコンからなる選択成長用マスク層41と、該選択成長用マスク層41の開口部から露出する下地層19の上に選択的に成長し、n型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11と、該第1半導体層11の上に成長してなり、窒化インジウムガリウムを井戸層とする量子井戸構造を持つ発光層12と、該発光層12の上に成長したp型の窒化アルミニウムガリウムからなる第2半導体層13とを有している。なお、選択成長用マスク層41の開口部から選択的に成長させる成長方法は、一般に、選択的横方向成長(Epitaxial Lateral Overgrowth:ELO)法と呼ばれている。また、下地層19はアンドープであってもよい。
また、n側電極15及びp側電極14の下側には、例えば窒化ガリウムからなるコンタクト層をそれぞれ設けてもよい。
第2半導体層13、発光層12及び第1半導体層11には、断面凸状にエッチングされた電流狭窄部200が形成されている。さらに、電流狭窄部200における第2半導体層13の上部には、幅が電流狭窄部200よりも小さいリッジ部201が形成されている。このリッジ部201は、電流狭窄の機能を高めると共に、導波路として機能する。従って、導波路内で生成される生成光は、酸化領域13aの屈折率が各半導体層11、13の屈折率よりも小さいため、リッジ部201に閉じ込められてレーザ発振が可能となる。
リッジ部201の上面には、第1のオーミック電極としてのp側電極14が形成されており、第1半導体層11における電流狭窄部200の側方の露出面の上には、第2のオーミック電極としてのn側電極15が形成されている。
さらに、第6の実施形態の特徴として、ドライエッチング等によって露出した第1半導体層11、発光層12及び第2半導体層13の露出面には、発光層12を含め各半導体層11、13自体が酸化されてなり、該発光層12の両側部を挟むように酸化領域13bが形成されている。
このように、第6の実施形態によると、従来のようにドライエッチング等により電流狭窄部200を設ける構成であっても、発光層12の側部を含む電流狭窄部200の露出面を酸化して酸化領域13bを形成する。このため、該電流狭窄部200の露出面がエッチングによるダメージを受けたとしても、このダメージを受けた部分が酸化されて酸化領域13bに取り込まれることになる。その結果、発光層12における漏れ電流が大幅に低減するので、半導体レーザ素子としてのしきい値電流の値を低減することができる。
その上、第1半導体層11は、ELO法により形成されているため、その上に成長する発光層12の結晶性が良好となり、結晶欠陥密度が低減されるので、半導体レーザ素子における長寿命化及びしきい値電流の値の低減を図ることができる。
なお、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
また、基板20には、サファイアに代えて、酸化マグネシウム、又は酸化リチウムガリウムアルミニウム(LiGax Al1−x O2 (但し、xは0≦x≦1とする))からなる単結晶基板を用いてもよい。
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図16(a)〜図16(d)及び図17(a)〜図17(c)は本発明の第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図16(a)に示すように、例えばMOCVD法により、サファイアからなる基板20上に、厚さが約0.5μmのn型の窒化アルミニウムガリウムからなる下地層19を成長する。続いて、例えばCVD法により、下地層19の上に、厚さが約200nmの酸化シリコンからなる選択成長用マスク形成層を堆積し、続いて、リソグラフィ法、及びフッ酸を用いたエッチング法により、選択成長用マスク形成層からストライプ状のパターンを持つ選択成長用マスク層41を形成する。
次に、図16(b)に示すように、再度MOCVD法により、下地層19における選択成長用マスク層41から露出する露出部分の上に、厚さが約0.5μmのn型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11を選択成長(ELO成長)する。これにより、厚さが約1μmのn型の窒化アルミニウムガリウム中に、選択成長用マスク層41が選択的に埋め込まれた構造を得る。ここで、選択成長用マスク層41は窒化ガリウム系半導体が実質的に成長しない材料であれば良く、酸化シリコンの他には、絶縁膜では窒化シリコンが好ましく、金属ではタングステンが好ましい。
従って、第1半導体層11における選択成長用マスク層41の上に再成長した部分は、下地層19の結晶状態の影響を受けることなく、基板面に平行な方向(横方向)に成長している。このため、第1半導体層11の結晶性は下地層19よりも向上し、例えば、結晶欠陥密度のうちの結晶転移密度は、下地層19では107 cm−2台であり、一方、第1半導体層11では106 cm−2台である。
次に、図16(c)に示すように、リソグラフィ法により、第2半導体層13上のリッジ部形成領域に第1のレジストパターン35を形成する。続いて、形成した第1のレジストパターン35をマスクとして、第2半導体層13に対して、例えば塩素ガスを用いたRIE法によるドライエッチングを行なって、第2半導体層13の上部に、リッジ部201を形成する。
次に、図16(d)に示すように、第1のレジストパターン35を除去した後、再度リソグラフィ法により、第2半導体層13上のリッジ部201を含む電流狭窄部形成領域に第2のレジストパターン36を形成する。続いて、形成した第2のレジストパターン36をマスクとして、第2半導体層13、発光層12及び第1半導体層11の上部に対して、塩素ガスを用いたRIE法によるドライエッチングを順次行なうことにより、第1半導体層11の上部、発光層12及び第2半導体層13を含む電流狭窄部200を形成する。
次に、図17(a)に示すように、例えばモノシランを分解するCVD法により、リッジ部201及び電流狭窄部200を含む第1半導体層11上の全面に、シリコンからなるマスク形成膜を成膜する。続いて、リソグラフィ法及びエッチング法により、マスク形成膜から、リッジ部201における第2半導体層13の上にその周縁部を残してマスクする第1の酸化マスク膜31Aを形成する。これと共に、マスク形成膜から、第1半導体層11における電流狭窄部200の側方の露出領域の上に第2の酸化マスク膜31Bを形成する。
次に、図17(b)に示すように、酸素ガス又は水蒸気を含む酸化性雰囲気で、第1の酸化マスク膜31A及び第2の酸化マスク膜31Bが形成された基板20に対して、温度が約900℃で4時間程度の熱処理を行なう。これにより、電流狭窄部200及びリッジ部201の表面並びに第1半導体層11の露出面に酸化領域13bが形成される。
次に、図17(c)に示すように、第1の酸化マスク膜31A及び第2の酸化マスク膜31Bを、例えばフッ硝酸により除去する。続いて、電子ビーム蒸着法等により、リッジ部201に露出する第2半導体層13の上に、ニッケルと金との積層体からなるp側電極14を選択的に形成する。続いて、第1半導体層11における露出領域の上に、チタンとアルミニウムとの積層体からなるn側電極15を形成する。ここでも、p側電極14とn側電極15との形成順序は問われない。
なお、基板20における下地層19の反対側の面から、KrFエキシマレーザ光等を照射することにより、下地層19から基板20を分離してもよい。
さらには、下地層19及び選択成長用マスク層41を研磨により除去してもよい。
また、基板20を分離する場合には、面方位が(100)面のシリコン又は銅からなる支持基板を貼り合わせた後に行なってもよい。
また、発光層12を含む各半導体層11、13の結晶成長方法として、MOCVD法を用いたが、少なくとも発光層12はMBE法を用いて成膜してもよい。
さらには、第1半導体層11及び第2半導体層13の少なくとも一方に、例えば10μm以上の厚さのHVPE法による成長層を含ませてもよい。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図18は本発明の第7の実施形態に係る半導体装置であって、半導体レーザ素子に適用可能な半導体発光装置の断面構成を示している。図18において、図1に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
第7の実施形態に係る半導体装置は、p型の第2半導体層13に、断面凸状のリッジ部201を選択的に設けている。リッジ部201の露出面には、第2半導体層13自体が酸化されてなる酸化領域13aが形成されている。すなわち、酸化領域13aは、発光層12が形成する面と平行な方向に互いに間隔をおいて形成される。
リッジ部201は、前述したように、電流狭窄のみならず導波路として機能するため、該導波路内で生成される生成光は、酸化領域13aの屈折率が各半導体層11、13の屈折率よりも小さいため、リッジ部201に閉じ込められてレーザ発振が可能となる。
また、半導体層の成長用の基板を有しておらず、従って、p側電極14とn側電極15とは、量子井戸構造を有する発光層12を挟んで互いに対向するように形成されている。
従って、第7の実施形態によると、p側電極14及びn側電極15が対向しているため、pn接合の直列抵抗値が低減する。
また、従来のようにドライエッチング等によりリッジ部201を設ける構成であっても、第2半導体層13におけるリッジ部201の露出面を酸化して酸化領域13aを形成する。このため、該リッジ部201の露出面がエッチングによるダメージを受けたとしても、このダメージを受けた部分が酸化されて酸化領域13aに取り込まれる。その結果、発光層12における漏れ電流が大幅に低減するので、半導体レーザ素子としてのしきい値電流の値を低減することができる。
また、第2半導体層13に対して行なうドライエッチング工程は、リッジ部201の形成時の1回だけであり、これによりプロセスを簡略化できる。
なお、第1半導体層11と第2半導体層13との導電型を互いに入れ換えてもよい。
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図19(a)〜図19(d)及び図20(a)〜図20(c)は本発明の第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図19(a)に示すように、例えばMOCVD法により、サファイアからなる基板20の上に、n型の窒化アルミニウムガリウムからなる第1半導体層11、窒化インジウムガリウムを井戸層に含む発光層12、及びp型の窒化アルミニウムガリウムからなる第2半導体層13を順次成長する。ここで、第1半導体層11における基板20との界面の近傍部分は窒化ガリウムとしてもよい。同様に、第2半導体層13における表面の近傍部分は窒化ガリウムとしてもよい。
次に、図19(b)に示すように、例えば、塩素ガスをエッチングガスとするRIE法により、第2半導体層13におけるリッジ部形成領域をマスクして、第2半導体層13に対してドライエッチングを行なって、第2半導体層13に、平面ストライプ状で且つ断面凸状のリッジ部201を形成する。
次に、図19(c)に示すように、例えばCVD法により、リッジ部201を含む第2半導体層13上の全面に、シリコンからなるマスク形成膜を成膜し、続いて、リソグラフィ法及びエッチング法により、マスク形成膜から、第2半導体層13におけるリッジ部201上にその周縁部を残してマスクする酸化マスク膜31を形成する。
ここで、図19(b)に示す工程において、レジストマスク等を用いてエッチングを行なう代わりに、酸化マスク膜31をマスクとしてエッチングを行なうと、図19(b)に示すリソグラフィ工程を省略することができる。
次に、図19(d)に示すように、酸素ガス又は水蒸気を含む酸化性雰囲気で、酸化マスク膜31が形成された第2半導体層13に対して、温度が約900℃で4時間程度の熱処理を行なう。これにより、第2半導体層13の露出面に酸化領域13aが形成される。
次に、図20(a)に示すように、酸化マスク膜31を例えばフッ硝酸により除去する。続いて、電子ビーム蒸着法等により、リッジ部201に酸化領域13aから露出する第2半導体層13の上に、ニッケルと金との積層体からなるp側電極14を選択的に形成する。その後、基板20における第1半導体層11の反対側の面から、パルス状のKrFエキシマレーザ光を基板20の全面にわたってスキャンするように照射する。このレーザ光の照射により、第1半導体層11における基板20との界面が熱分解して、図20(b)に示すように、基板20と第1半導体層11とが分離する。ここで、レーザ光の照射中に、基板20を500℃程度の温度で加熱してもよい。また、基板20を分離又は除去するには、YAGレーザの第3高調波又は水銀ランプの輝線を用いてもよく、さらには研磨法を用いてもよい。
次に、図20(c)に示すように、第1半導体層11における発光層12の反対側の面上に、チタンとアルミニウムとの積層体からなるn側電極15を蒸着により形成する。その後、各電極14、15が形成された、発光層12を含む各半導体層11、13をへき開して、レーザ光を発振する共振器を形成する。このとき、基板20は除去されているため、発光層12を含む各半導体層11、13はサファイアの面方位に規制されることなく、窒化ガリウム系半導体に固有の面方位でへき開することができる。その結果、良好なへき開面を持つ共振器を得られるため、しきい値電流値の低減等の動作特性の向上を図ることができる。
なお、発光層12を含む各半導体層11、13の結晶成長方法として、MOCVD法を用いたが、少なくとも発光層12はMBE法を用いて成膜してもよい。
さらには、第1半導体層11及び第2半導体層13の少なくとも一方に、例えば10μm以上の厚さのHVPE法による成長層を含ませてもよい。
また、基板20に、サファイアのような絶縁性材料ではなく、炭化シリコン等からなる導電性材料を用いてもよい。このようにすると、基板20の除去工程が不要となる。
また、基板20を分離した後で、且つn側電極15を形成するよりも前に、第1半導体層11における発光層12の反対側の面に、導電性を有するシリコン等からなる支持基板を貼り合わせてもよい。
また、これまでに説明した各実施形態及びその変形例に用いた基板20、21の主面の面方位は、特定の面に限られない。例えば、サファイアや炭化シリコンの典型的な面方位である(0001)面はいうまでもなく、該(0001)面からわずかにオフセットした、いわゆるオフアングルを持つ主面でもよい。
また、第6の実施形態において、ELO法を用いたが、他の実施形態やその変形例においてもELO法を用いてもよい。
また、各実施形態に係る半導体装置は、n型の第1半導体層11及びp型の第2半導体層13との間にアンドープの発光層12を設けた、いわゆるpin接合構造を採るが、必ずしもpin接合構造である必要はない。特に、発光ダイオード素子に適用する場合には、第1半導体層11及び第2半導体層13からなるpn接合構造であってもよい。
また、第1半導体層11、発光層12及び第2半導体層13はIII-V族窒化物半導体には限られない。