JP3924416B2 - 車両用エンジン始動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等のエンジンを始動する車両用エンジン始動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の車両用エンジン始動装置は、キーを持つ運転者が車室内に設けられた操作部材を押し込み操作すると、照合スイッチがオンし、車両内に搭載される送受信装置からキーにリクエスト信号が送信される。そのリクエスト信号をキーが受信すると、キーは予め設定されたIDコードを送受信装置に送信する。そして、そのIDコードと送受信装置に予め登録されたIDコードと一致するか否かの照合を行い、その一致が確認されたときには、エンジンを始動するための操作部材が回動操作可能になる。この操作部材は、LOCK位置、ACC(アクセサリ)位置、ON(イグニッションオン)位置、及びST(スタータ駆動)位置に切り換えできるようになっている。操作部材は、IDコードが一致したときのみLOCK位置から他の位置に回動できるようになっている。従って、運転者は、キーをキー挿入口に差し込むことなく、操作部材を回動させるという簡単な操作でエンジンを始動できるようになっている。
【0003】
又、キーを差し込み、ID照合を行うエンジン始動装置も提案されている。この装置は、キーをキー挿入口に差し込むことにより、照合スイッチをオンさせ、送受信装置とキーとの間で上述した相互通信を行うものである。そして、IDコードの一致が確認されたときには、LOCK位置から他の位置に回動できるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、キーを挿入せずにID照合を行うタイプ、キーを挿入してID照合を行うタイプいずれも照合スイッチがそれぞれ必要であり、それらの照合スイッチはリミットスイッチのような押圧式のものである。そのため、両タイプの機能を備えた車両用エンジン始動装置にする場合、複数の照合スイッチが必要となる。従って、照合スイッチの組み付けに手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、照合スイッチを手間をかけることなく簡単に組み付けることが可能な車両用エンジン始動装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、キーから車両に設けられた送受信装置にIDコードを送信し、そのIDコードと、前記送受信装置IDコードとが一致するか否かの照合を行い、一致が確認されたときのみに、ボディ内に設けられキー挿入口を有する操作部材を回動操作可能とし、その操作部材を回動操作することによりエンジンを始動するようにした車両用エンジン始動装置において、前記操作部材がボディ内に押し込まれることにより、前記IDコードの照合を開始するスライド式の照合スイッチと、前記キー挿入口にキーが挿入されることにより、前記IDコードの照合を開始するスライド式の照合スイッチとを、1つのスイッチで兼用したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用エンジン始動装置において、前記操作部材には、それと一体的に回動するロータが駆動連結され、そのロータの外周面には、前記操作部材を回動操作したときに、前記ロータと、前記照合スイッチをオンオフするための作動部材とが干渉するのを回避する回避溝が設けられていることを要旨とする。
【0008】
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1に記載の発明によると、操作部材をボディ内に押し込むと、照合スイッチがオンされる。また、キーをキー挿入口に挿入すると、前記照合スイッチがオンされる。そして、これらのように照合スイッチがオンされると、キーから送信されるIDコードと、送受信装置IDコードとの照合が開始される。すなわち、照合スイッチが1つしか設けられていないにも拘わらず、前記いずれの場合にもIDの照合を開始することができる。よって、照合スイッチの数を減らすことができるので、照合スイッチの取り付けにかかる手間を軽減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、操作部材を回動操作すると、回避溝内に照合スイッチが挿入されるため、ロータと照合スイッチとが干渉することはない。そのため、ロータと照合スイッチとの干渉を避けるために、例えばロータと照合スイッチとを離間させる機構部を余分に設ける必要がない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車のエンジン始動装置に具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
図1,図2に示すように、運転席前方のインストルメントパネルに設けられているエンジン始動装置11は、略円筒状のボディ12を備えている。ボディ12の内部には、その軸線周りに回動可能かつ軸線方向に沿って移動可能な操作部材としてのノブ13が挿入されている。ノブ13の外端部(図1の右側)は、ボディ12の外端開口部12aから突出されている。
【0012】
ノブ13の外周面には段差部13aが形成されている。その段差部13aがボディ12の内周面に形成された段部12cに当接されることにより、ノブ13は外側(図1の右側)への位置ずれが規制される。ノブ13の外端部には、その突出部分を覆うカバー14が設けられている。ノブ13の外端部中央及びカバー14の先端中央部には、長方形状のキー挿入口15が形成されている。
【0013】
図6に示すように、ノブ13は、それを回動操作することにより、LOCK位置、ACC(アクセサリ)位置、ON(イグニッションオン)位置、ST(スタータ駆動)位置に切り換えられる。そして、図7に示すキー42から送信されるIDコード信号が、予め登録してあるIDコードと一致するか否かを照合し、一致が確認されたときのみ、ノブ13がLOCK位置から他の位置に切り換え操作可能となっている。なお、本実施形態において、LOCK位置を除く他の位置(ACC位置、ON位置、ST位置)が所定の位置となっている。
【0014】
キー42には、トランスポンダ、アンテナコイル、コンデンサ、IC等(いずれも図示せず)が内蔵されている。前記ICには車両側のIDコードと同じIDコードが記憶されている。車両内に搭載される図示しない送受信装置から送信されるリクエスト信号を受信すると、キー挿入口15にキー42を挿入することなく、予め設定されたIDコードがキー42に内蔵した発信器から送受信装置に送信される。リクエスト信号は、キー42を持つ運転者がノブ13を押し込むことにより送信されるようになっている。
【0015】
又、キー42がキー挿入口15に挿入されたとき、トランスポンダは、車両側に設けた図示しない磁気発生装置からの磁気を受け、アンテナコイルに発生した電流をコンデンサに蓄電する。そして、その蓄電された電圧が所定値以上に達すると、トランスポンダに予め設定された特定のIDコードが発信されるようになっている。
【0016】
ノブ13にはシャッタ収容孔16が形成され、その内部にはボディ12の軸線方向に沿って移動可能なシャッタ17が収容されている。このシャッタ17は光透過性を有する合成樹脂材料によって形成されている。シャッタ17は、キー挿入口15を開放する開口位置(図7に示す位置)と、キー挿入口15を閉じる閉止位置(図1に示す位置)とを取り得るようになっている。
【0017】
シャッタ17の中央部には、係合突起18が形成され、その係合突起18はノブ13にその軸線方向に沿って形成されたガイド溝13bに摺動可能に係合されている。この係合により、ノブ13とシャッタ17とは一体的に回動するようになっている。又、ガイド溝13bと係合突起18との係合は、シャッタ17をその軸線方向に沿って移動させるために、ガイドする役割も担っている。
【0018】
図3(a),(b)、図5に示すように、ノブ13の外周面ほぼ中央部には、前記シャッタ収容孔16に連通する収容孔19が形成されている。収容孔19には合成樹脂製の移動体20がノブ13の径方向に沿って摺動可能に設けられている。移動体20の先端部(図3(a)の上側)には傾斜面20aが形成されている。移動体20は、その中央部に取付部としてのバネ取付孔20bが形成されており、全体がほぼ四角枠状に形成されている。バネ取付孔20bには弾性体としての圧縮バネ21が設けられている。この圧縮バネ21の一端は移動体20の内側面に当接され、他端は前記収容孔19の内側に突設された突部22に当接されている。そして、この圧縮バネ21の弾性力により、移動体20の先端はボディ12の内周面に押圧されている。
【0019】
ボディ12の外端開口部12aには、その軸線方向に沿って延びる案内溝23が形成され、その案内溝23には移動体20の先端部分が係入されている。案内溝23の内奥部には、前記移動体20に形成された傾斜面20aと平行である傾斜面23aが形成されている。
【0020】
そして、ノブ13を待機位置(図3(a)に示す位置)から、押圧位置(図4(a)に示す位置)に押し込むことにより、移動体20は案内溝23に沿って移動し、その先端部が圧縮バネ21の弾性力に抗して案内溝23内から抜け出る。この動作に伴い、移動体20はその基端が収容孔19からシャッタ収容孔16内に突出するようになっている。この突出状態において、移動体20の基端が前記シャッタ17に形成された係合部としての係合凹部24に移動配置されることにより、シャッタ17が閉止位置にロックされる。従って、本実施形態においては、移動体20と圧縮バネ21とからロック手段が構成されている。
【0021】
なお、ノブ13が待機位置に配置され、かつシャッタ17が開口位置に配置されている場合において、係合凹部24に隣接するように、シャッタ17に形成された突起17dは、移動体20の延長線上に配置されないようになっている。よって、キー挿入口15にキー42を挿入した状態で、ノブ13を押し込んでも、シャッタ17に形成された突起17dに移動体20が当たらないので、ノブ13を待機位置から押圧位置に移動させることができる。
【0022】
図1、図2に示すように、ボディ12の内端部には、位置決めストッパ27が固定されている。この位置決めストッパ27にはロック部材としてのロータ28が回動可能に支持されている。ロータ28の中央部に設けられた支軸28aは位置決めストッパ27に貫通され、その支軸28aの先端はボディ12に固定されたイグニッションスイッチ29に駆動連結されている。
【0023】
ロータ28の外周面には、その軸線方向に沿って延びる係合溝31が形成され、この係合溝31にはノブ13の内端に形成された突出部32が係合されている。この係合により、ノブ13とロータ28とは一体的に回動するようになっている。従って、ノブ13を回動すると、ロータ28を介してイグニッションスイッチ29がオンするようになっている。又、係合溝31と突出部32との係合は、ノブ13をその軸線方向に沿って移動させるために、ガイドする役割も担っている。
【0024】
ロータ28の中央部には、内側バネ収容部33が形成され、その内部には付勢部材としての小径圧縮スプリング34が収容されている。この小径圧縮スプリング34の一端は内側バネ収容部33の内奥面に当接され、他端は前記シャッタ17の内端部に突設された張出し部35に係止されている。そして、小径圧縮スプリング34の弾性力により、シャッタ17は図3(a)に示す閉止位置に常に付勢されている。
【0025】
ロータ28における内側バネ収容部33の外側箇所には、外側バネ収容部36が形成され、その内部には大径圧縮スプリング37が収容されている。この大径圧縮スプリング37の一端は外側バネ収容部36の内奥面に当接され、他端はノブ13の内端面に当接されている。そして、大径圧縮スプリング37の弾性力により、ノブ13は図3(a)に示す待機位置側に付勢されている。
【0026】
図2,図7に示すように、ノブ13の外周面には、2つのレバー収容穴38が対向して凹設され、その内部には回動レバー39が軸40を中心にして揺動可能に収容されている。各回動レバー39の先端には、その回動に伴いシャッタ収容孔16内に出没可能なフック部39aがそれぞれ突設されている。各レバー収容穴38内にはバネ41がそれぞれ収容され、その弾性力により、回動レバー39の先端に形成されたフック部39aは、レバー収容穴38からシャッタ収容孔16内に突出するように付勢されている。
【0027】
又、キー42の先端部両側には係止突部42aが突設され、その両側部には切欠き部43が形成されている。そして、キー挿入口15内に係止突部42aが挿入されると、バネ41の付勢力により、各切欠き部43に各フック部39aが係合されるようになっている。これにより、係止突部42aは、その両側から回動レバー39によって挟持されるようになっている。
【0028】
図7,図8に示すように、回動レバー39は、ノブ13が移動するのに伴って移動するようになっている。そして、ノブ13が図7に示す待機位置に配置されている場合には、回動レバー39の基端部39bは、ロータ28の先端部(図7、図8においてロータ28の右側)から僅かに離れた位置に配置される。そのため、各回動レバー39は、そのフック部39aと切欠き部43とが係合解除される方向にバネ41の弾性力に抗して回動可能である。
【0029】
これに対して、ノブ13が図8に示す押圧位置に配置されている場合には、回動レバー39の基端部39bがロータ28の先端外周面に対して当接するように配置される。そのため、切欠き部43からフック部39aが係合解除する方向に各回動レバー39が回動すると、基端部39bがロータ28の先端部に干渉するようになっている。これにより、各回動レバー39の回動はロックされる。従って、ロータ28は、ノブ13の回動に連動してイグニッションスイッチ29をオンすることと、回動レバー39をロックすることとを兼用している。なお、本実施形態では、前記ロータ28、回動レバー39、付勢部材としてのバネ41等により、キー挿入口15から係止突部42aが抜けないようにする抜け止め手段が構成されている。
【0030】
なお、キー42が電池切れした場合には、キー42からIDコード信号を送信できなくなるため、キー42に内蔵された図示しないトランスポンダを用いてエンジンの始動を行う。即ち、電池等の電源を必要としないトランスポンダには予め車両側のIDコードと同じIDコードが記憶されており、電池切れした場合には、キー挿入口15に係止突部42aを挿入することにより、トランスポンダからIDコードが発信される。
【0031】
図2,図9,図10に示すように、ボディ12の外周面には取付枠50が一体的に形成され、その取付枠50の内側にはスライド式照合スイッチ51が図示しないネジにより固定されている。この照合スイッチ51の裏面には、その内部に設けられた図示しない接点をオン・オフするための第1及び第2作動ピン52,53が突出されている。そして、両作動ピン52,53のうち1つが、図10に示す位置からボディ12の内端部側(図10の左側)に移動(スライド)されることにより、照合スイッチ51がオンする。
【0032】
第1作動ピン52は、第2作動ピン53よりもボディ12の外端開口部12a側に配置されている。各作動ピン52,53の先端部は、取付枠50の内側においてボディ12の外周面に形成された長孔54,55を介して、ボディ12の内部に突出されている。
【0033】
第1作動ピン52の先端部は、前記突出部32の先端部に形成された第1作動ピン係合溝56に挿入されている。この第1作動ピン係合溝56は、その一端部が開口され、ノブ13の外周に沿って形成されている。そして、ノブ13が図10に示す待機位置から、図11に示す押圧位置に移動されると、第1作動ピン52がオフ位置からオン位置に移動し、照合スイッチ51がオンするようになっている。このオンにより、キー42から送信されるIDコードと、車両に設けられた送受信装置に予め登録されたIDコードとの照合が開始される。
【0034】
図9,図10,図12に示すように、前記ロータ28の外周面には、第1回避溝60が形成され、その一端部は開口されている。そして、ノブ13が待機位置から押圧位置に移動されると、第1回避溝60と前記第1作動ピン係合溝56とが一致するようになっている。この一致により、ノブ13を回動操作したときに、第1作動ピン係合溝56にある第1作動ピン52が第1回避溝60に係入される。
【0035】
図16,図17に示すように、第2作動ピン53の先端部は、前記係合突起18の先端部に形成された第2作動ピン係合溝63に挿入されている。この第2作動ピン係合溝63は、その一端部が開口され、ノブ13の外周に沿って形成されている。そして、図16に示すように、キー42に設けた係止突部42aがキー挿入口15に挿入され、かつノブ13が待機位置から押圧位置に移動されると、第2作動ピン53がオフ位置からオン位置に移動し、照合スイッチ51がオンするようになっている。この照合スイッチ51がオンする。このオンにより、キー42から送信されるIDコードと、車両に設けられた送受信装置に予め登録されたIDコードとの照合が開始される。
【0036】
図16,図17に示すように、ノブ13の外周面には、所定の間隔をおいて第2回避溝65と第3回避溝66とが平行に形成され、それぞれの一端部は開口されている。そして、シャッタ17が閉止されると、第2回避溝65と第2作動ピン係合溝63とが一致するようになっている。この一致により、ノブ13を回動したときに、第2作動ピン係合溝63にある第2作動ピン53が第2回避溝65に係入される。一方、シャッタ17が開口されると、第3回避溝66と第2作動ピン係合溝63とが一致するようになっている。この一致により、ノブ13を回動したときに、第2作動ピン係合溝63にある第2作動ピン53が第3回避溝66に係入される。
【0037】
次に、上記のように構成された車両用エンジン始動装置の作用について説明する。
(ノブ13によって照合スイッチ51をオンする場合)
キー42の電池による電力が蓄積されている正常時において、自動車のエンジンを始動するには次のように行う。キー42を持つ運転者が車室内に入り、LOCK位置にあるノブ13を、大径圧縮スプリング37の弾性力に抗して図10に示す待機位置から、図11に示す押圧位置に移動させる。すると、突出部32が移動し、第1回避溝60と前記第1作動ピン係合溝56とが合致するとともに、第1作動ピン52がオフ位置からオン位置に移動する。この移動により、照合スイッチ51がオンされ、車両内に搭載される送受信装置からキー42にリクエスト信号が送信される。そのリクエスト信号をキー42が受信すると、キー42は予め設定されたIDコードを送受信装置に送信する。キー42から送信されるIDコードと、送受信装置に予め登録されたIDコードと一致するか否かの照合が行われる。IDコードの一致が確認されたときには、図示しないロック解除機構が作動し、ノブ13が回動操作可能な状態になる。
【0038】
そして、図12,図13に示すように、ノブ13を、押圧位置に保持した状態でLOCK位置からST位置に回動操作すると、第1作動ピン係合溝56にある第1作動ピン52が第1回避溝60に係入される。これにより、ロータ28と第1作動ピン52の第1作動ピン52との干渉が回避される。それとともに、図14,図15に示すように、第2作動ピン係合溝63にある第2作動ピン53が第2回避溝65に係入される。これにより、ノブ13と第2作動ピン53との干渉が回避される。
【0039】
又、図3(a),図4(a)に示すように、ノブ13を、待機位置から押圧位置に移動させると、移動体20が案内溝23に沿ってスライドし、圧縮バネ21の弾性力に抗して案内溝23内から抜け出る。このとき、案内溝23に形成された傾斜面23aに対して、移動体20に形成された傾斜面20aが摺動するため、移動体20は案内溝23からスムーズに抜け出る。
【0040】
移動体20が抜け出ることにより、収容孔19から移動体20の基端部が突出し、係合凹部24に移動配置される。これにより、シャッタ17は閉止位置にロックされる。そして、ノブ13をLOCK位置からST位置に回動させると、ロータ28が回動することによりイグニッションスイッチ29がオンし、エンジンが始動する。ノブ13が回動しても、係合凹部24に移動体20の基端部が係合されたままである。従って、ノブ13がLOCK位置以外の位置(ACC位置、ON位置、ST位置)にあるとき、シャッタ17は閉止位置にロック保持されているため、キー挿入口15にキー42の係止突部42aを挿入できなくなる。
【0041】
(キー42の係止突部42aによって照合スイッチをオンする場合)
キー42に使用される電池に電力が蓄積されていない非常時において、自動車のエンジンを始動するには次のように行う。キー42に設けた係止突部42aをキー挿入口15に挿入すると、シャッタ17が押し込まれるのに伴い係合突起18が移動し、第2作動ピン係合溝63と第3回避溝66とが合致する。それとともに、係合突起18の移動により、第2作動ピン53がオフ位置からオン位置に移動する。これにより、照合スイッチ51がオンされ、トランスポンダから送信されるIDコードと、送受信装置に予め登録されたIDコードと一致するか否かの照合が行われる。IDコードの一致が確認されたときには、図示しないロック解除機構が作動し、ノブ13が回動操作可能な状態になる。
【0042】
続いて、キー挿入口15にキー42を差し込んだままの状態で、更にノブ13を待機位置から押圧位置に移動させる。すると、上述したように、第1作動ピン52がオフ位置からオン位置に移動するとともに、第1作動ピン係合溝56と第1回避溝60とが合致する。
【0043】
この状態で、ノブ13をLOCK位置からST位置に回動操作すると、図12,図13に示すように、第1作動ピン係合溝56にある第1作動ピン52が第1回避溝60に係入される。これにより、ロータ28と第1作動ピン52との干渉が回避される。それとともに、図17,図18に示すように、第2作動ピン係合溝63にある第2作動ピン53が第3回避溝66に係入される。これにより、ノブ13と第2作動ピン53との干渉が回避される。
【0044】
又、キー挿入口15にキー42の係止突部42aが差し込まれると、回動レバー39の先端部は、係止突部42aの先端部両側面に沿うように、バネ41の弾性力に抗して一旦外側に開く。係止突部42aを更に差し込むと、回動レバー39はバネ41の弾性力により内側に閉じる。これにより、回動レバー39に設けたフック部39aが、係止突部42aに設けた切欠き部43に係合される。従って、ノブ13がLOCK位置以外の位置(ACC位置、ON位置、ST位置)にあるとき、キー挿入口15から係止突部42aが引き抜かれることはない。
【0045】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)ボディ12内にはIDコードの照合を開始するスライド式の照合スイッチ51が設けられている。そして、ノブ13がボディ12内に押し込まれることにより、照合スイッチ51に設けた第1作動ピン52がオン位置に移動され、照合スイッチ51がオンされるようになっている。又、キー挿入口15にキー42を挿入して押し込むと、照合スイッチ51に設けた第2作動ピン53がオフ位置からオン位置に移動され、照合スイッチ51がオンするようになっている。すなわち、照合スイッチ51が1つしか設けられていないにも拘わらず、前記いずれの場合にもIDの照合を開始することができる。よって、照合スイッチ51の数を減らすことができるので、照合スイッチ51の取り付けにかかる手間を軽減することができる。
【0046】
(2)ノブ13を回動操作したときに、第1作動ピン係合溝56から第1回避溝60に第1作動ピン52が係入されるようになっている。又、ノブ13を回動操作したときに、第2作動ピン係合溝63から第2回避溝65或いは第3回避溝66に第2作動ピン53が係入されるようになっている。そのため、ロータ28及び第1作動ピン52同士、ノブ13及び第2作動ピン53同士が干渉することはない。そのため、ロータ28と照合スイッチ51の第1作動ピン52との干渉を避けるために、例えばロータ28と照合スイッチ51とを離間させる機構等を余分に設けたりする必要がない。従って、車両用エンジン始動装置の構成が複雑になるのを防止することができるとともに、車両用エンジン始動装置全体が大型化するのを抑えることができる。
【0047】
(3)照合スイッチ51を構成する両作動ピン52,53が一箇所に集中配置されているため、1つの照合スイッチ51にてIDコードの照合を開始することができる。従って、照合スイッチ51の部品点数が少なくできるとともに、その組み付け工数を少なくすることができるので、エンジン始動装置11の製造コストを低減することができる。又、ボディ12内の構成を簡素化することにも貢献することができる。
【0048】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、ノブ13をボディ12内に押し込み操作することにより、照合スイッチ51をオンするようにした。この構成外にも、例えばノブ13を、ACC位置に回動する方向とは反対側の方向に回動操作することにより、照合スイッチ51をオンするようにしてもよい。又は、ノブ13全体をその径方向にスライド操作することにより、照合スイッチ51をオンするようにしてもよい。
【0049】
・ 前記実施形態では、2つの作動ピン52,53を1箇所に集中配置したが、別々に配置してもよい。
・ 前記実施形態では、2つの回動レバー39によりキー挿入口15からキー42の係止突部42aが抜けないようにした。これ以外にも、回動レバー39の数を1つ又は3つ以上に変更してもよい。
【0050】
・ 前記実施形態では、ロータ28の先端部に回動レバー39の基端部39bが干渉することにより、回動レバー39が回動しないようにした。これ以外にも、ロータ28とは別の部材を設け、その部材により回動レバー39の回動を阻止してもよい。
【0051】
・ 回動レバー39を回動付勢するバネ41は、コイルバネ以外にも、例えば板バネ等のように任意の部材に変更してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
【0052】
(1) 請求項1又は2において、前記各照合スイッチの前記作動部材は、前記操作部材が押し込まれたときに作動するものと、前記キー挿入口にキーが挿入されたときに作動するものがそれぞれ設けられ、各作動部材は一箇所に集中配置されていることを特徴とする車両用エンジン始動装置。この構成にすれば、部品点数を少なくすることができるとともに、組み付け工数も少なくなるので、製造コストの低減に繋げることができる。
【0053】
(2) 請求項1、2、前記(1)のいずれかにおいて、前記操作部材が所定の位置(LOCK位置)に切り換えられているときに、前記キー挿入口からキーが抜けないようにする抜け止め手段が設けられていることを特徴とする車両用エンジン始動装置。この構成にすれば、操作部材が所定の位置にあるときに、キー挿入口からキーが抜けるのを防止することができる。
【0054】
(3) 請求項1、2、前記(1)、(2)のいずれかにおいて、前記抜け止め手段は、前記キーに係合可能なフック部を有する回動レバーと、前記フック部が操作部材内に設けられたキー挿入部内に突出させるように前記回動レバーを付勢する付勢部材と、前記キーに対して前記回動レバーを係合した状態に保持するために、同回動レバーの回動をロックするロック部材とを含んで構成されていることを特徴とするエンジン始動装置。この構成にすれば、簡単な構成にも拘わらず、キー挿入口からキーが確実に抜けなくなる。
【0055】
(4) 請求項1、2、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記ロック部材は、前記操作部材の回動に連動してイグニッションスイッチを作動させる部材を兼ねており、前記操作部材が所定の位置(LOCK位置)に切り換えられると同時に、前記回動レバーの回動をロックするものであることを特徴とする請求項2に記載の車両用エンジン始動装置。この構成にすれば、操作部材の一操作によって、エンジン始動と、キーの抜け防止とを同時に行うことができる。
【0056】
(5) 請求項1、2前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、そのキー挿入口を開口する開口位置と、前記キー挿入口を閉じる閉止位置とをとり得るように、前記キーの挿入方向に沿って移動可能なシャッタが前記操作部材内に設けられ、前記操作部材が所定の位置(LOCK位置)に切り換えられている場合に、前記シャッタを前記閉止位置にロックさせるロック手段が設けられていることを特徴とする車両用エンジン始動装置。この構成にすれば、操作部材が所定の位置(LOCK位置)にあるときに、キー挿入口にキーを差し込むのを防止することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、照合スイッチの数を減らすことができるので、その照合スイッチを手間をかけることなく簡単に取り付けることができる。
【0058】
請求項2に記載の発明によれば、装置の構成が複雑になるのを防止することができるとともに、装置全体が大型化するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態を示すエンジン始動装置の断面図。
【図2】ノブ、シャッタ、ロータ等を示す分解斜視図。
【図3】(a)はノブが待機位置にある場合の断面図、(b)は(a)の3b−3b断面図。
【図4】(a)はノブが押圧位置にある場合の断面図、(b)は(a)の4b−4b断面図。
【図5】シャッタや移動体等を示す分解斜視図。
【図6】エンジン始動装置の一部を示す正面図。
【図7】キーをエンジン始動装置に差し込み、かつノブが待機位置にある状態を示す断面図。
【図8】キーをエンジン始動装置に差し込み、かつノブが押圧位置にある状態を示す断面図。
【図9】照合スイッチとボディを分解して示す斜視図。
【図10】ノブがLOCK位置かつ待機位置にある場合の断面図。
【図11】ノブがLOCK位置かつ押圧位置にある場合の断面図。
【図12】図11の12A−12A断面図。
【図13】図12に続く動作を示し、ノブが押圧位置にある状態でST位置に回動操作した場合の断面図。
【図14】図11の14A−14A断面図。
【図15】図14に続く動作を示し、ノブが押圧位置にある状態でST位置に回動操作した場合の断面図。
【図16】キー挿入口にキーを差し込み、ノブがLOCK位置かつ押圧位置にある場合の断面図。
【図17】図11の17A−17A断面図。
【図18】図17に続く動作を示し、キーを差し込み、ノブが押圧位置にある状態でST位置に回動操作した場合の断面図。
【符号の説明】
12…ボディ、13…ノブ(操作部材)、15…キー挿入口、28ロータ、42…キー、51…照合スイッチ、52…第1作動ピン(作動部材)、53…第2作動ピン(第2作動部材)、60…第1回避溝(回避溝)、65…第2回避溝(回避溝)、66…第3回避溝(回避溝)。

Claims (2)

  1. キーから車両に設けられた送受信装置にIDコードを送信し、そのIDコードと、前記送受信装置のIDコードとが一致するか否かの照合を行い、一致が確認されたときのみに、ボディ内に設けられキー挿入口を有する操作部材を回動操作可能とし、その操作部材を回動操作することによりエンジンを始動するようにした車両用エンジン始動装置において、
    前記操作部材がボディ内に押し込まれることにより、前記IDコードの照合を開始するスライド式の照合スイッチと、前記キー挿入口にキーが挿入されることにより、前記IDコードの照合を開始するスライド式の照合スイッチとを、1つのスイッチで兼用したことを特徴とする車両用エンジン始動装置。
  2. 前記操作部材には、それと一体的に回動するロータが駆動連結され、そのロータの外周面には、前記操作部材を回動操作したときに、前記ロータと、前記照合スイッチをオンオフするための作動部材とが干渉するのを回避する回避溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジン始動装置。
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