JP3923812B2 - 着色難燃樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少量で多彩なカラーニーズに対応できる着色難燃樹脂組成物の製造方法であって、薄肉成形体での難燃性と着色剤の分散性に優れ、しかも高温高湿環境下に長時間曝された場合の色調低下および強度低下が極めて少ない着色難燃樹脂組成物を得るための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂に難燃剤を配合した難燃樹脂材料は、安価で軽量かつ成形加工しやすいことから、難燃性が求められる様々な電気・電子機器の構造部材として、例えば、コンピューター用モニター、ノートブックパソコン、プリンター、ワープロ、コピー機等のハウジング材料として幅広く使用されている。
難燃樹脂材料は、多くの場合において着色されて使用されるが、難燃樹脂材料の着色では、多彩なカラーニーズに対応するために、予め着色剤を含まない未着色の難燃樹脂組成物(以下、「未着色難燃樹脂組成物」と称す。)のペレットを製造し、しかる後に、該「未着色難燃樹脂組成物」のペレットに着色剤を配合し、押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混練を行うことにより、着色を行う方法が広く用いられる。該方法は、少量の樹脂の着色に対して極めて適した着色方法であり、少量で多彩なカラーニーズに対して樹脂に着色を行うことができる。
【0003】
上記の樹脂の着色方法では、樹脂組成物中での着色剤の分散性を高め、さらに色調むらを解消する目的で、着色のための溶融混練に際して、着色剤分散剤(以下、「分散剤」と称す。)や、着色剤を良好に樹脂ペレット表面に展着させるための展着剤(以下、「展着剤」と称す。)を使用するのが一般的である。これらの分散剤や展着剤の使用により、着色樹脂組成物における着色剤の分散不良や色調むらを解消することができる。
しかしながら、該分散剤や該展着剤の使用により、着色後の組成物の難燃性が低下するという問題がしばしば発生することがある。従って、難燃樹脂組成物の着色では、高度な難燃性と好ましい着色剤の分散性を両立させることが必ずしも容易でなかった。
【0004】
近年、ポリカーボネート系樹脂に有機リン化合物を難燃剤として使用したポリカーボネート系難燃性樹脂組成物(以下、「有機リン系PC難燃樹脂組成物」と称す。)が、非臭素・非塩素系の難燃剤を使用する難燃樹脂材料として、コンピューター用モニター、ノートブックパソコン、プリンター、ワープロ、コピー機等のハウジング材料として広く使用されている。最近の電気・電子機器に使用される難燃樹脂材料は、軽量化に対する要求が強く、薄肉の成形体においても高度の難燃性が要求されるようになりつつあるが、該有機リン系難燃樹脂組成物では、樹脂の着色に一般的に使用されている分散剤や展着剤を用いて着色を行うと、難燃性能の低下、特に薄肉成形体における難燃性能が顕著に低下してしまうという問題があった。
【0005】
一方、特開平11−189714号公報では、有機リン化合物難燃剤を使用したポリカーボネート系樹脂組成物にエポキシ化合物を配合することにより、同組成物の耐湿熱性を改良できることが示されている。しかしながら、同公報では、同公報に示されている樹脂組成物に着色剤を含んでも良いことが記載されてはいるものの、樹脂組成物中において着色剤を良好に分散させる方法については全く記載が無く、特に、多種のカラーニーズに対応できる、前述の「未着色難燃樹脂組成物ペレットに着色剤を配合し、押出機等の装置を用いて溶融混練を行う着色方法」については全く触れられていない。
すなわち、多彩なカラーニーズに対応できる樹脂の着色方法であって、着色剤を良好に分散させることができ、かつ、着色樹脂組成物の難燃性能を低下させることがない難燃樹脂材料の着色方法が強く求められているにもかかわらず、その有効な解決手段が見い出せていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、少量で多彩なカラーニーズに対応できる着色難燃樹脂組成物の製造方法であって、薄肉成形体での難燃性と着色剤の分散性に優れ、しかも高温高湿環境下に長時間曝された場合の色調低下および強度低下が極めて少ない着色難燃樹脂組成物を工業的に容易に得るための製法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、少量で多彩なカラーニーズに対応できる着色難燃樹脂組成物の製造方法であって、着色された難燃樹脂組成物の難燃性と着色剤の分散性を両立させるための方法について鋭意検討した結果、未着色難燃樹脂組成物のペレットを所望とするカラーに着色するにあたり、該未着色難燃樹脂組成物のペレットに対して、ある特定の範囲の粘度を有するエポキシ化合物を着色剤の分散剤および/または展着剤として使用し、押出機を用いて溶融混練することにより、着色剤が良好に分散し、しかも難燃性が維持され、同時に、高温高湿環境下に長時間曝された場合の色調低下および強度低下が極めて小さい着色難燃樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]熱可塑性樹脂(A)100重量部、難燃剤(B)0.01〜40重量部を含む未着色難燃樹脂組成物のペレット100重量部に対して、着色剤(C)0.0001〜10重量部、及び、25℃における粘度が10〜10,000cp(センチポイズ)のエポキシ化合物(D)0.01〜3重量部を混合し、該未着色難燃樹脂組成物のペレットと該成分(C)と該成分(D)からなる混合物とし、該混合物を押出機を用いて溶融混練することにより着色難燃樹脂組成物を得ることを特徴とする着色難燃樹脂組成物の製造方法。
【0009】
[2]該未着色難燃樹脂組成物のペレット100重量部に対し、該成分(D)0.01〜3重量部を配合混合し、該未着色難燃樹脂組成物のペレット表面を該成分(D)で濡らし、しかる後に、該着色剤(C)0.0001〜10重量部を配合混合することにより、該未着色難燃樹脂組成物のペレット表面に該着色剤(C)が付着した混合物とし、該混合物を押出機を用いて溶融混練することにより着色難燃樹脂組成物を得ることを特徴とする前記[1]に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
【0010】
[3]熱可塑性樹脂(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂または芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする樹脂であることを特徴とする前記[1]および[2]に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
[4]難燃剤(B)が、下記式(1)の有機リン化合物オリゴマーで表される化合物群より選ばれることを特徴とする前記[1]〜[3]に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
【0011】
【化2】
【0012】
[5]該未着色難燃樹脂組成物が、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、さらに、フルオロポリマー(E)0.05〜2重量部を含むことを特徴とする前記[1]〜[4]に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
[6]該未着色難燃樹脂組成物が、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、さらに、タルク(F)0.1〜50重量部を含むことを特徴とする前記[5]に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
[7]押出機が、2軸押出機であることを特徴とする前記[1]〜[6]に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の組成物の成分(A)は熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、等の単独もしくは二種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明では、成分(A)として、芳香族ポリカーボネート樹脂または芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂を特に好ましく使用することができる。
本発明の成分(A)として好ましく使用することができる芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記式(2)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、Arは、炭素数5〜200の二価の芳香族基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレンや、下記式(3)で表されるものが挙げられる。)
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれアリーレン基である。例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表し、Yは下記式(4)で表されるアルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6低級アルキル基、炭素数5〜10シクロアルキル基、炭素数6〜30アリール基、炭素数7〜31アラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、炭素数1〜10アルコキシ基で置換されていてもよく、kは3〜11の整数であり、R5及びR6は、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に水素原子、または炭素数1〜6低級アルキル基、炭素数6〜30アリール基であって、場合によりハロゲン原子、炭素数1〜10アルコキシ基で置換されていてもよく、Xは炭素原子を表す。)
また、下記式(5)で示される二価の芳香族基を共重合体成分として含有していても良い。
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、Ar1、Ar2は式(3)と同じ。Zは単なる結合、または、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、−CON(R1)−(R1は式(4)と同じ)等の二価の基である。)
これら二価の芳香族基の例としては、下記式群から選ばれる基で表されるもの等が挙げられる。
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜10アルキル基、炭素数1〜10アルコキシ基、炭素数5〜10シクロアルキル基または炭素数6〜30アリール基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R8はそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
中でも、下記式(6)で表されるものが好ましい一例である。
【0025】
【化9】
【0026】
特に、上記の式(6)で表されるものをArとする式(2)の繰り返しユニットを85モル%以上(ポリカーボネート中の全モノマー単位を基準として)含むポリカーボネートが特に好ましい。
また、本発明に用いることができるポリカーボネートは、三価以上の炭素数6〜300の芳香族基を分岐点とする分岐構造を有していても良い。
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。アリールカーボネート末端基は、下記式(7)で表される。
【0027】
【化10】
【0028】
(式中、Ar3は炭素数6〜30の一価の芳香族基であり、芳香環は置換されていても良い。)
アリールカーボネート末端基の具体例としては、例えば、下記式群から選ばれる基で表されるものが挙げられる。
【0029】
【化11】
【0030】
アルキルカーボネート末端基は下記式(8)で表される。
【0031】
【化12】
【0032】
(式中、R9は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。)
アルキルカーボネート末端基の具体例としては、例えば下記式群から選ばれる基で表される基が挙げられる。
【0033】
【化13】
【0034】
これらの中で、フェノール基、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート等が好ましく用いられる。
本発明において、フェノール基末端と他の末端との比率は、特に限定されないが、優れた機械的強度や耐熱安定性を得る観点からは、フェノール基末端の比率が全末端基数の10%以上であることが好ましく、10〜80%の範囲にあることが更に好ましい。フェノール基末端の比率が全末端基数の80%を超えると、溶融時の熱安定性が若干低下する傾向にある。
【0035】
フェノール基末端量の測定方法は、一般にNMRを用いて測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定する方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定する方法(UV法もしくはIR法)で求めることができる。
本発明に好ましく用いられるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、一般に5,000〜50,000の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10,000〜40,000であり、さらに好ましくは15,000〜30,000であり、特に好ましくは18,000〜25,000である。5,000未満では耐衝撃性が不十分になる傾向があり、また、50,000を越えると、溶融流動性が不十分になる傾向がある。
【0036】
本発明において好ましく使用されるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行い、測定条件は以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
【0037】
本発明において好ましく使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、公知の方法で製造したものを使用することができる。具体的には、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体と反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033(米国特許第4,948,871号に対応)、特開平1−271426、特開平3−68627(米国特許第5,204,377号に対応)等の方法により製造されたものが用いられる。
【0038】
好ましいポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂があげられる。
本発明では異なる構造や分子量の2種以上の異なるポリカーボネートを組み合わせて成分(A)として使用することも可能である。
本発明の成分(A)として好ましく使用される、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂としては、前記芳香族ポリカーボネート樹脂とゴム変性樹脂からなる樹脂を挙げることができる。
【0039】
ここでゴム変性樹脂とは、ゴム質重合体、および、1種または2種以上のビニル化合物を成分に含むゴム変性樹脂全般を表す。
ゴム変性樹脂のゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば用いることができる。具体的には、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合ゴム等のブロック共重合体、およびそれらの水素添加物等を使用することができる。これらの重合体の中で、好ましくは、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリアクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0040】
ゴム変性樹脂中のゴム質重合体の割合は1〜95重量%の範囲で用いられるが、必要とする機械的強度、剛性、成形加工性に応じて決められる。好ましくは、5〜45重量%であり、より好ましくは10〜40重量%である。
ゴム変性樹脂に使用されるビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル単量体、マレイミド系単量体であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートである。これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、芳香族ビニル化合物と芳香族以外のビニル化合物の組み合わせである。この場合、芳香族ビニル化合物と芳香族以外のビニル化合物は任意の割合で用いられるが、芳香族以外のビニル化合物の好ましい割合は、ビニル化合物のみの合計量に対して、5〜80重量%の範囲である。
【0041】
ゴム変性樹脂として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・ブチルアクリレート・スチレン共重合樹脂(AAS樹脂)、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)等を例示することができる。
また、ゴム変性樹脂の製造方法は特に限定されず、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など通常公知の製造方法を挙げることができる。
中でも、バルク重合、あるいは溶液重合により製造されたゴム変性樹脂は、乳化剤を使用せずにゴム変性樹脂を得ることが出来るために、乳化剤に由来する脂肪酸あるいは脂肪酸金属塩をゴム変性樹脂中に実質的に含まないので、芳香族ポリカーボネート樹脂に組み合わせて使用するゴム変性樹脂として特に好適に使用できる。
【0042】
さらに、本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂に異なる構造や分子量の2種以上の異なるゴム変性樹脂を組み合わせて使用することも有効である。例えば、ゴム変性樹脂としてABS樹脂とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS樹脂)を組み合わせて使用することにより、優れた溶融流動性と耐衝撃性を同時に改良することができる。このようなMBS樹脂の具体例としては、三菱レーヨン(株)より製造されている「メタブレン C−223A」および「メタブレン C−323A」、鐘淵化学工業(株)より製造されている「カネエース M−511」および「カネエース B−564」、台湾国台湾プラスチック社より製造されている「M−51」等を挙げることができる。
【0043】
本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂にゴム変性樹脂を組み合わせて使用する場合、ゴム変性樹脂の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂とゴム変性樹脂の合計100重量部に対し、50〜5重量部が好ましく、より好ましくは40〜10重量部、さらに好ましくは30〜15重量部である。ゴム変性樹脂が50重量部を超えると耐熱性と薄肉成形体での難燃性が不十分になり、一方、5重量部未満であると溶融流動性が低下する傾向にある。
【0044】
本発明で使用される成分(B)とは難燃剤であり、好ましく用いることができる難燃剤として、例えば、有機リン化合物、オルガノポリシロキサン、ハロゲン含有化合物、金属酸化物、金属水酸化物、トリアジン 化合物、赤燐、ジルコニウム化合物、ポリリン酸塩化合物、スルファミン酸化合物、有機スルホン酸アルカリ金属塩、シリカ、等を挙げることができる。
上記に列挙した成分(B)の中で、本発明では有機リン化合物を特に好ましく使用することが出来る。
上記有機リン化合物の中で、本発明では成形加工時における揮発成分の発生をを低減できることから、式(1)で表されるリン原子をその構造内に2つ以上有する化合物である有機リン化合物オリゴマーを好ましく使用することがでる。
【0045】
【化14】
【0046】
上記式(1)における置換基Ra、Rb、Rc、Rdは、それぞれ独立的に炭素数6〜12のアリール基を示し、その1つ以上の水素原子が置換されていてもいなくてもよい。その一つ以上の水素原子が置換されている場合、置換基としては炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン化アリール基等が挙げられ、またこれらの置換基を組み合わせた基(例えばアリールアルコキシアルキル基等)またはこれらの置換基を酸素原子、硫黄原子、窒素原子等により結合して組み合わせた基(例えば、アリールスルホニルアリール基等)を置換基として用いてもよい。
【0047】
置換基Ra、Rb、Rc、Rdとして特に好ましいアリール基は、フェニル基、クレジル基、キシリル基、プロピルフェニル基、およびブチルフェニル基である。上記式(1)で表される化合物群において置換基Ra、Rb、Rc、Rdがアルキル基やシクロアルキル基である場合は一般に熱安定性が低下し、溶融混練の際に分解が起こりやすい。
式(1)において、Xは2価のフェノール類より誘導される芳香族基であって、例えば下記式群から選ばれる基で表すものが例示できる。
【0048】
【化15】
【0049】
(式中R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜10アルキル基、炭素数1〜10アルコキシ基、炭素数5〜10シクロアルキル基または炭素数6〜30アリール基である。)
本発明では、有機リン化合物オリゴマーの中でも、下記式で表される化合物群より選ばれるものは耐加水分解や熱安定性に優れるので、本発明で特に好ましく使用することができる。
【0050】
【化16】
【0051】
前記有機リン化合物オリゴマーは、通常、式(1)において異なるnの値(nは自然数)を有する複数の異なる有機リン化合物オリゴマーの混合物として使用される場合が多い。この際、複数の異なる有機リン化合物オリゴマーの重量平均縮合度(N)が1〜1.2未満であることが好ましい。Nはゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーあるいは液体クロマトグラフィーにより異なるnを有するそれぞれの成分の重量分率(An)を求め、
N=Σ(n・An)/Σ(An)
により算出される。
【0052】
ここで、Anを求めるために、検出器として、UV検出器、あるいはRI検出器が通常使用される。ただし、Nの計算において、式(1)におけるnが0である構造のものが、併用あるいは含まれる場合(すなわち1分子中のリン原子が1つのみである有機リン化合物を用いるあるいは含まれる場合)は、nが0の化合物はNの計算から除外する。重量平均縮合度Nは、通常1以上5以下であり、1以上2以下が好ましく、1以上1.5以下が更に好ましく、1以上1.2未満が特に好ましい。Nが小さいほど樹脂との相溶性に優れ、溶融流動性に優れ、かつ難燃性が高い。特に、N=1の化合物は樹脂組成物における難燃性と溶融流動性のバランスが特に優れる。有機リン化合物として、式(1)の化合物のNが5以上である場合は、該化合物の粘度が大きくなり、特に高せん断速度領域での溶融流動性が低下する傾向にあり、また、難燃性が低下する傾向がある。
【0053】
さらに、本発明で用いられる有機リン化合物は、その酸価が0.1mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.08mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.05mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.01mgKOH/g以下である。酸価が低い有機リン化合物を使用することにより、耐湿熱性が一層優れた難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0054】
また、前記式(1)で表される有機リン化合物は、米国特許第2,520,090号公報、特公昭62−25706号公報、特開昭63−227632号公報等に記載されている方法により、塩化マグネシウムや塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒の存在下にオキシ塩化リンとビスフェノールA及び一価フェノール類を反応させて合成し、その後、粗有機リン化合物を洗浄精製、乾燥することにより製品とすることができるが、本発明に使用される有機リン化合物では有機リン化合物中に含まれる主に触媒由来のマグネシウム、アルミニウムや洗浄精製にアルカリ、アルカリ土類などの金属イオンを含む水溶液を用いる場合において導入される可能性があるナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属分の総量が、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下、であることが耐湿熱性により優れた難燃性樹脂組成物を得る上で望ましい。
【0055】
さらに、有機リン化合物中に含まれる塩素濃分は、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下、であることが耐湿熱性により優れた難燃性樹脂組成物を得る上で望ましい。
本発明の樹脂組成物における成分(B)の量は、成分(B)の種類や成分(A)と成分(B)の組み合わせ等に依存するが、成分(A)100重量部に対し、0.01〜40重量部、好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。成分(B)が0.01重量部未満では薄肉成形体での難燃性が不十分になり、一方、40重量部を超えると樹脂組成物の耐衝撃性が不足する。
【0056】
本発明における成分(C)は着色剤である。着色剤とは、樹脂の着色に使用される顔料や染料であり、例えば、チタンホワイト(酸化チタン)、チタンイエロー、ベンガラ、群青、スピネルグリーン等の無機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、アンスラキノン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料等の有機顔料、カーボンブラック、ペリレン系染料、ペリノン系染料、アンスラキノン系染料、複素環系染料の染料をあげることができる。
【0057】
着色剤の中で、酸化チタンは製造方法および結晶構造によって限定されるものではないが、塩素法により製造され、ルチル形の結晶構造をとる酸化チタンが好ましい。また、使用される酸化チタンの平均粒子径としては、特に限定されるものではないが、0.01〜0.5μmのものが好ましく、0.1〜0. 3μmのものが特に好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、通常酸化チタンの表面処理剤として使用される処理剤であらかじめ処理されていても構わない。かかる処理剤としては、例えばアルミナおよびシリカが挙げられ、各々単独で使用しても、併用して使用しても構わない。また、表面処理剤として、有機分散剤や安定剤等が含まれる場合があるが、これらは本発明の範囲内で使用することが可能である。
【0058】
本発明における成分(C)は、通常は所望とする発色を行うために成分(C)が複数組み合わせて使用される場合が多く、その使用量は所望とする色調やベース樹脂の色調によって変化するが、成分(A)と(B)を主体とする未着色難燃樹脂組成物100重量部に対して0.0001〜10重量部であり、より好ましくは0.001〜5重量部、更に好ましくは0.01〜3重量部である。0.0001重量部未満であると着色剤の分散性が低下し、一方、10重量部を超えると樹脂組成物の機械的物性が低下したり、難燃性が低下したりすることがある。
【0059】
本発明に使用される成分(D)は、分子骨格中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であり、25℃における粘度が10〜10,000cpの範囲であるエポキシ化合物である。
本発明で使用される成分(D)は、上記の粘度範囲に有れば、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物から選ばれる1種または2種以上の混合物であってよい。
【0060】
本発明に使用される成分(D)は、25℃における粘度が10〜10,000cpの範囲であるエポキシ化合物であるが、好ましくは30〜5,000cp、より好ましくは50〜3,000cpである。成分(D)の粘度が10cp(25℃)未満である場合は、溶融混練の前処理として未着色難燃樹脂組成物ペレットと着色剤との混合物を調製する際に、未着色難燃樹脂組成物ペレットの表面に着色剤(C)を均一に展着させた混合状態を保持することが困難となり、該混合物を押出機に投入する際に混合組成に変動が生じ、着色難燃性樹脂組成物に色むらが発生しやすい傾向にある。一方、粘度が10,000cp(25℃)を超える場合は成分(D)が未着色難燃樹脂組成物ペレットの表面を均一に濡らすことが困難となり、該ペレット表面に着色剤(C)均一に展着する事が出来ずに着色むらの発生原因となる。
【0061】
なお、本発明では、成分(D)の粘度は粘度測定用ビーカーにサンプルを入れB型粘度計で25℃の粘度を求める方法、JIS規格K1557 6.3に準じて測定を行うことができる。
前記、脂環式エポキシ化合物とは、分子構造中に1個以上の二重結合を有する炭素数3〜300の脂肪族環状炭化水素化合物に対して、過酢酸等の過酸化物を用いて二重結合部分に酸素を付加してエポキシ基を導入する手法で合成されるものであり、下記式(9)で表される炭素数3〜20の脂環式エポキシ化合物を例示することが出来る。
【0062】
【化17】
【0063】
また、本発明では脂環式エポキシ化合物として下記式(10)で表される化合物が含まれる。
【0064】
【化18】
【0065】
(式中R10は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜10アルキル基、炭素数1〜10アルコキシ基、炭素数5〜10シクロアルキル基である。)
また、本発明では脂環式エポキシ化合物として下記式(11)で表される化合物が含まれる。
【0066】
【化19】
【0067】
(式中R10は式(10)と同じ。nは1以上の整数である。)
更に、本発明では脂環式エポキシ化合物として下記式(12)で表される化合物が含まれる。
【0068】
【化20】
【0069】
(式中、Bは炭素数1〜10アルキル基、炭素数1〜10アルコキシ基、炭素数5〜10シクロアルキル基である。)
前記、脂肪族エポキシ化合物とは、分子構造中に不飽和脂肪族を有するエポキシ化合物であり、本発明では、エポキシ化油脂系化合物、エポキシ化脂肪酸エステルを好ましく使用することができる。
ここで、エポキシ化油脂系化合物は天然油脂の二重結合に酸素を付加して得られるものであり、下記式(13)で表される化合物であり、具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが挙げられる。
【0070】
【化21】
【0071】
(式中、m及びnは1以上の整数である。)
また、エポキシ化脂肪酸エステルとは不飽和脂肪酸アルキルエステルをエポキシ化した化合物であり、下記式(14)で表される化合物であり、具体例としては、エポキシ化ステアリン酸ブチルなどが挙げられる。
【0072】
【化22】
【0073】
(式中Rは炭素数1〜10アルキル基、m及びnは1以上の整数である。)
前記、芳香族エポキシ化合物、あるいは、複素環式エポキシ化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0074】
本発明で用いられる成分(D)は、取り扱い性に優れ、かつ溶融混練に耐え得る熱安定性を有し、かつ低揮発性であるものがより好ましく、特に好ましい成分(D)は脂環式エポキシ化合物である。
本発明において特に好ましく用いることができる脂環式エポキシ化合物は、脂環式エポキシ構造単位がジオキサン構造単位やカルボキシル基構造単位等の結合単位で結合した化合物であり、例えばb、2−(3,4−エポキシシクロアルキル)−5−5’−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロアルキル−m−ジオキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5−5’−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン(商品名 ERL−4234 ユニオンカーバイド社製)、あるいは、下式(15)で表される、
【0075】
【化23】
【0076】
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3−4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名 ERL−4221 ユニオンカーバイド社製)を挙げることができる。さらに、ユニオンカーバイド社から商品名ERL−4299、あるいはERL−4206として工業的に入手することができる脂肪族環状エポキシ化合物も好適に使用することができる。
本発明における成分(D)の使用量は、成分(A)と成分(B)を含む未着色難燃樹脂組成物ペレット合計100重量部に対して、0.01〜3重量部の範囲であり、好ましくは0.03〜1.0重量部、より好ましくは0.05〜0.8重量部、更に好ましくは0.1〜0.5重量部である。成分(D)が0.01重量部未満であると着色難燃樹脂組成物を製造する際の展着剤および/または分散剤としての効果が小さく、着色難燃樹脂組成物中の着色剤(C)が分散不良となる傾向にある。一方、成分(D)の使用量が3重量部を超えると薄肉成形体での難燃性を維持する事が困難となる。
【0077】
本発明の着色難燃樹脂組成物の製法では、燃焼物の滴下を防止する目的で、未着色組成物に、さらにフルオロポリマー(E)を配合することができる。本発明では、フィブリル形成能力を有するフルオロポリマーを好ましく使用する事ができ、ファインパウダー状のフルオロポリマー、フルオロポリマーの水性ディスパージョン、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物等、様々な形態のフルオロポリマーを使用することができる。
【0078】
さらに、本発明では、剛性や難燃性の向上を目的として未着色難燃樹脂組成物に、さらにタルク(F)を配合する事ができる。
上記、タルク(F)とは含水ケイ酸塩であり、層状構造をもった層状ケイ酸塩である。層構造内は電気的にほぼ中性であって、層間物質をもたない構造となっている。化学式ではMg3Si4O10(OH)2で表され、MgO層はSiO2層に挟まれて存在しており、この両者間に(OH)基が存在し、MgO層とSiO2層とはOを共有することにより、化学的に強く結合した3層板状構造を有するものである。主成分はMgO、SiO2であるが、タルクの原料となる原石により化学成分に若干の差異があり、少量のFe2+、Ni、Alなどを含むことがある。本発明においては異なる原石から製造された、化学成分が若干異なるタルクをそれぞれ単独、または混合して使用することもできる。
【0079】
また、本発明では、好ましく用いられる成分(F)は、平均粒径が1〜50μmであり、且つ粒子径が7μm以上の粒子が成分(F)粒子全体の1〜80%である。より好ましい平均粒径は1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。1μm未満であると薄肉難燃性が低下するため好ましくなく、50μmを超えると耐衝撃性が低下するため好ましくない。7μm以上の大粒子の割合で好ましいのは3〜75%であり、より好ましくはは5〜70%、更に好ましくは10〜60%である。1%未満では難燃性が低下し、一方、80%を超えると耐衝撃性を維持することが困難となる傾向にある。
【0080】
本発明では、成分(F)は異なる平均粒径、及び粒子径が7μm以上の粒子の割合が異なるタルクを混合し、平均粒径が1〜50μmであり、且つ粒子径が7μm以上の粒子が成分(F)粒子全体の1〜80%である範囲に調製して使用することもできる。具体的には比較的均一粒径よりなる単分散タルクと比較的広い粒径範囲にある多分散タルクを単独、または混合して平均粒径が1〜50μmであり、且つ粒子径が7μm以上の大粒子が成分(F)粒子全体の1〜80%である範囲に調製して使用することもできる。したがって本発明で使用される成分(F)の粒径分布幅は特に限定されず、平均粒径が1〜50μmであり、且つ粒子径が7μm以上の粒子が成分(F)粒子全体の1〜80%であれば、使用することができる。
【0081】
尚、成分(F)の粒径分布測定方法は、ふるい分け法、顕微鏡法、コールタ・カウンタ法、沈降法、吸着法、透過法、レーザー回析法等があるが、本発明においては島津製作所社製SALD−2000を使用し、レーザー回析法により平均粒径、及び粒径分布を測定し、粒子径が7μm以上の粒子が成分(F)粒子全体に含まれる割合を測定した。また成分(F)の平均粒径の定義もメディアン径、モード径、算術平均径、重量平均径等があるが、本発明における平均粒子径はメディアン径に相当する。
【0082】
本発明では、成分(F)を使用する場合、成分(F)は表面改質されていてもいなくても良いが、樹脂との相溶性を向上させるためには表面改質されているものを使用するのが好ましい。ここでいう表面改質とはあらかじめ親油性の有機化合物を吸着させたり、シランカップリング剤を表面に塗布したりして、樹脂との親和性を向上させる方法を示す。
本発明で成分(F)を用いる場合、その使用量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、成分(F)の総量として、0.1〜50重量部の範囲であり、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部、更に好ましくは5〜25重量部である。成分(F)が0.1重量部未満であると組成物の難燃性、剛性が不十分となる傾向にあり、一方、成分(F)の使用量が50重量部を超えると、組成物の耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0083】
さらに、本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法では、本発明の趣旨を損なわない範囲内で必要に応じて、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等をさらに配合することができる。
また、本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法では、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、雲母、などの無機フィラーや炭素繊維、木炭等の強化材、あるいはその他の熱可塑性樹脂をさらに配合することもできる。
【0084】
次に、本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法について詳しく説明する。
本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法は、前記成分(A)、(B)を主体とする未着色難燃樹脂組成物のペレットに、前記成分(C)と成分(D)とを混合し、未着色難燃樹脂組成物ペレットと成分(C)および成分(D)とからなる混合物を調製し、該混合物を押出機により溶融混練することにより、着色難燃樹脂組成物中を製造する方法である。
【0085】
まず、未着色難燃組成物の製造方法について述べる。未着色難燃組成物の製造は、成分(A)、(B)およびその他の成分を溶融混練装置、好ましくは二軸押出機、を用いて溶融混練を行うことにより製造される。
未着色難燃組成物の製造では、原料となる各成分(A)、(B)およびその他の成分は、予め各成分をタンブラーやリボンブレンダー等の予備混合装置を使用して混合した後に、該混合物を押出機に供給して溶融混練することにより、該未着色難燃組成物を得ることも可能である。また、それぞれの原料成分を独立して押出機に供給し、溶融混練を行うことにより、未着色難燃組成物を得ることも可能である。特に、難燃剤(B)が液状である場合は、成分(B)をギアポンプあるいはプランジャーポンプ等を使用して押出機に直接供給して溶融混練を行うのが好ましい。また、成分(E)を使用し、成分(E)としてフルオロポリマーの水性ディスパージョンを使用する場合は、成分(E)を予め、成分(A)と混合した後に押出機に供給することも可能であるが、成分(E)を押出機に独立に供給して溶融混練を行うことも可能である。
【0086】
未着色難燃樹脂組成物の製造では、押出機は、押出機のシリンダー設定温度を200〜400℃、好ましくは220〜350℃、更に好ましくは230〜300℃とし、また、押出機スクリュー回転数を100〜700rpm、好ましくは200〜500rpmとし、さらに、押出機内の平均滞留時間を10〜150秒として溶融混練を行い、混練中に樹脂に過剰の発熱を与えないように配慮しながら溶融混練を行う。溶融混練された未着色難燃樹脂組成物は、押出機先端部に取り付けられたダイよりストランドとして押し出され、ペレタイズされて、未着色樹脂組成物のペレットが得られる。
本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法では、上記に例示する方法で得られた「未着色難燃樹脂組成物」ペレットに対して、成分(C)、成分(D)およびその他の成分がさらに混合された混合物を調製し、該混合物を押出機、好ましくはベント口を有する押出機に投入し、溶融混練を行うことにより着色難燃樹脂組成物が製造される。
【0087】
未着色難燃樹脂組成物のペレットに、成分(C)及び成分(D)を混合する好ましい方法としては、タンブラーやリボンブレンダーなどの混合装置を使用し、先ず、「未着色難燃樹脂組成物」のペレットに対して成分(D)を配合し、通常、1〜60分、好ましくは5〜40分混合撹拌し、成分(D)が未着色難燃樹脂組成物ペレットの表面を均質に濡らした混合状態を得る。しかる後に、更に、成分(C)を加えて、1〜60分、好ましくは5〜40分混合撹拌する。該混合において、温度は特に限定されないが、通常室温下で行われる。このようにして調製した、「未着色難燃樹脂組成物」ペレットと成分(C)及び成分(D)からなる混合物は、成分(D)により着色剤(C)が「未着色難燃樹脂組成物」ペレットの表面に均一に展着された混合状態であり、かつ、該混合状態が安定に保持されるので好ましい。
【0088】
本発明の着色難燃樹脂組成物の製造で使用される押出機としては、単軸または二軸の押出機が好ましく使用される。押出機として単軸の押出機を使用する場合は、混練分散機能を強化した押出機スクリュー構成を有する、例えば3〜6段のダルメージスクリューパーツ、好ましくはこれにユニメルトパーツを更に装着した単軸押出機を使用するのが好ましい。一方、押出機として2軸の押出機を使用する場合は、単軸押出機の場合と比較して混練機能が一般に優れるために、特に好ましい。
【0089】
また、本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法では、押出機による溶融混練を行う際に、脱揮を行うことが着色難燃樹脂組成物の難燃性を高める上でさらに好ましい。ここで、「脱揮」とは押出機に設けられたベント口を通じて、溶融混練工程で発生する揮発成分を、大気圧開放あるいは減圧により除去することを示す。
前記脱揮を行うために押出機に取り付けられるベント口は、押出機内部において原料である未着色難燃樹脂組成物ペレットの未溶融部分が実質的に全く含まれない溶融状態となる押出機位置を基準位置とした場合、該基準位置、または該基準位置よりも押出方向に対してさらに下流となる押出機位置に設置される。尚、該ベント口の取り付け位置が、原料樹脂組成物ペレットの未溶融部分が実質的に全く含まれない溶融状態であることの確認は、ベント口位置で溶融樹脂の状態を目視観察することにより、容易に判断を行うことができる。
【0090】
また、上記ベント口位置における押出機のスクリューの形状は、深溝型のフルフライトスクリュー形状であることが好ましい。ベント口位置における押出機のスクリューの形状が深溝型のフルフライトスクリュー形状である場合は、溶融樹脂の表面積を大きくできるので脱揮を効果的に行えると共に、溶融樹脂のベント口からのベントアップを防ぐことが出来るので、本発明において特に好ましい。
本発明では、脱揮を行う場合、押出機にとりつけたベント口を大気開放するのみでも好ましいが、該ベント口を通じて減圧脱揮を行うのが難燃効果を高める上でさらに効果的であり、好ましくは0.01〜400mmHg−G(ゲージ圧)、より好ましくは0.1〜300mmHg−G、更に好ましくは1〜150mmHg−Gで減圧脱揮が行われる。
【0091】
着色難燃樹脂組成物を製造する際に、押出機は、押出機シリンダー設定温度を好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜280℃、更に好ましくは220〜250℃とし、押出機スクリュー回転数を30〜500rpm、好ましくは50〜300rpm、更に好ましくは70〜200rpmとして、着色のための混練を行う。
また、着色難燃樹脂組成物を製造する際の、押出機内の樹脂の滞留時間は、通常、10〜150秒の範囲で適宜選択される。
【0092】
本発明の方法により得られた着色難燃樹脂組成物からなる成形品を得るための成形方法は特に限定されないが、例えば、射出成形、ガスアシスト成形、押出成形、圧縮成形等が挙げられるが、中でも射出成形が好ましく使用される。
本発明の方法により得られる着色難燃樹脂組成物は、薄肉の成形体においても優れた難燃性を有するので、薄肉部分を有する成形体を得る場合に好適であり、好ましくは成形品が肉厚2mm以下である部分が成形品全体の30重量%以上である成形品、より好ましくは肉厚2mm以下である部分が成形品全体の50重量%以上である成形品、さらに好ましくは肉厚2mm以下である部分が成形品全体の70重量%以上である成形品を得る場合において好適に使用することが出来る。
本発明により得られる着色難燃樹脂組成物を用いた成形品の例としては、パソコン用モニター、ノート型パソコン、コピー機、プリンター等のOA機器筐体、OA機器シャーシ、携帯電話筐体、等が挙げられる。
【0093】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例あるいは比較例においては、以下の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び必要に応じてその他の成分を用いて着色樹脂組成物を製造した。
1.成分(A):熱可塑性樹脂
(PC1)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造された、ビスフェノールA系ポリカーボネート
重量平均分子量(Mw)=22,400
フェノール性末端基比率(フェノール性末端基が全末端基数に占める割合)=29モル%
【0094】
(PC2)
ホスゲン法により得られたビスフェノールA系ポリカーボネート
重量平均分子量(Mw)=22,000
フェノール性末端基比率(フェノール性末端基が全末端基数に占める割合)=8モル%
(ABS)
乳化重合法により重合し、硫酸塩析法にて凝固させた後に、洗浄、乾燥処理を行って得たABSグラフト共重合体を、アクリロニトリル単位27wt%、スチレン単位73wt%からなり、重量平均分子量(Mw)が110,000であるAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)で希釈混練して得た、ブタジエンゴム含有量含有量が25wt%、ゴム重量平均粒径が0.26μmであるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂
【0095】
(MBS)
乳化重合法により重合し、硫酸塩析法にて凝固させた後に洗浄、乾燥処理を行って得た、ブタジエンゴム含有量が80wt%であり、スチレン単位50wt%とメチルメタクリレート単位50wt%からなる共重合成分が20wt%であり、ゴム重量平均粒径が0.21μmであるパウダー状のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂
【0096】
2.成分(B):難燃剤
(ホスフェート)
前記式(1)で表される有機リン化合物オリゴマーであって、Xがジフェニルジメチルメタン基であり、置換基Ra、Rb、Rc、Rdが全てフェニル基であり、重量平均縮合度(N)が1.08であり、マグネシウム含有量が7.2ppmであり、塩素含有量が1ppm以下であり、酸価が0.01mgKOH/gであるもの。
【0097】
3.成分(C):着色剤
(ホワイト)
デュポン社製酸化チタン(商品名 Ti−Ture R103−08)
(ブラック)
東海カーボン(株)製カーボンブラック(商品名 カーボンブラック 7550F)
【0098】
4.成分(D):エポキシ化合物
(エポキシ化合物1)
脂環式エポキシ化合物(ユニオンカーバイド日本(株)製 ERL−4221)25℃における粘度=350〜450cp(センチポイズ)
(エポキシ化合物2)
エポキシ化大豆油(花王(株)社製 カポックスS−6)
25℃における粘度=250〜300cp(センチポイズ)
(エポキシ化合物3)
ブチルグリシジルエーテル(日本油脂(株)社製 エピオールB)
25℃における粘度=5cp(センチポイズ)
(エポキシ化合物4)
エポキシ化1,2−ポリブタジエン(旭電化工業(株)製 BF−1000)
25℃における粘度=100,000cp(センチポイズ)
【0099】
5.成分(E):フルオロポリマー
(PTFE)
GEスペシャリティケミカルズ社製 ポリテトラフルオロエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体の混合粉末(商品名 Blendex449)
PTFE含有量=50wt%
6.成分(F):タルク
(タルク)
日本タルク(株)製タルク(商品名 ミクロエース P−3)
平均粒子径=0.4μm、L/D=8、嵩比容=2.3ml/g
【0100】
7.その他の成分
(I−1076:ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製(商品名 IRGANOX1076) オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(P−168:ホスファイト系熱安定剤)
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製(商品名 IRGAFOS168) トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
【0101】
[未着色難燃樹脂組成物の製造例1〜5]
未着色難燃樹脂組成物1〜5を表1に示す組成で製造した。溶融混練装置は2軸押出機(ZSK−25、L/D=37、Werner&Pfleiderer社製)を使用して、シリンダー設定温度245℃、スクリュー回転数300rpm、混練樹脂の吐出速度15〜20kg/Hr、押出機内部の樹脂の滞留時間が35〜100秒となる条件で溶融混練を行った。溶融混練中に、押出機ダイ部で熱電対により測定した溶融樹脂の温度は255〜260℃であった。
【0102】
未着色難燃樹脂組成物1〜5の製造において、二軸押出機への原材料の投入は、成分(A)、(E)、(F)およびその他の成分については予めタンブラーにより予備ブレンドを30分行い、重量フィーダーを通じて押出機に投入し、また、成分(B)は、予め80℃に予備加熱してギアポンプにより押出機の途中からインジェクションノズルを通じて圧入することにより配合した。また、未着色難燃樹脂組成物1〜5の製造では押出機の後段部分で10mmHg−G(ゲージ圧)で減圧脱揮を行った。溶融混練された組成物はダイよりストランドとして押出しを行い、ペレタイズを行うことにより、未着色難燃樹脂組成物1〜5を製造した。
【0103】
【表1】
【0104】
【実施例1〜19】
製造例1〜5で得た未着色難燃樹脂組成物のペレットを90℃で4時間乾燥した。該未着色難燃樹脂組成物のペレットが室温となった後、表2〜4に示す量(単位は重量部)で、該ペレットを100重量部に対して、着色剤(成分(C))、エポキシ化合物(成分(D))を配合し、タンブラーにより混合して、未着色難燃樹脂組成物ペレットと成分(C)および成分(D)からなる混合物を調製した。
【0105】
該混合物の調製は、先ず、未着色難燃樹脂組成物のペレットに成分(D)を配合してタンブラーにより10分間混合した。混合終了後、未着色難燃樹脂組成物ペレットの表面が成分(D)で均一に濡れている状態を目視により確認した。
上記未着色難燃樹脂組成物ペレットと成分(D)の混合物に対して、予め別途に酸化チタン(ホワイト)とカーボンブラック(ブラック)をホワイト:ブラック=1000:2の重量比で小型ミキサーにより混合した着色剤混合物を、表2〜4に示す配合比となるように分取配合し、さらにタンブラーにより30分間混合することにより、未着色難燃樹脂組成物ペレットと成分(C)および成分(D)からなる混合物を得た。該混合物は、未着色難燃樹脂組成物ペレットの表面に着色剤が均一に展着した混合状態であることを目視により確認した。
【0106】
このようにして得られた、未着色難燃樹脂組成物ペレットと成分(C)および成分(D)からなる混合物を押出機に投入し、溶融混練を行って着色難燃樹脂組成物を得た。
ここで、押出機としては単軸押出機(田辺プラスチックス機械(株)製 65mmφベント付き単軸押出機、5段ダルメージ+1段ユニメルト装着)、または二軸押出機(ZSK−25、L/D=37、Werner&Pfleiderer社製)を使用した。
【0107】
着色難燃樹脂組成物の製造では、押出機のシリンダー設定温度を200〜230℃とし、押出機の後段部分にベント口を設けて10mmHg−G(ゲージ圧)で減圧脱揮を行い、押出機ダイからストランドを押出してペレタイズを行って、着色難燃樹脂組成物のペレットを得た。
上記方法で得た着色難燃樹脂組成物のペレットを90℃で4時間乾燥した後、以下の各試験を実施した。
【0108】
(1)難燃性試験
射出成形機(オートショット50D ファナック社製)を用いてシリンダー温度260℃、金型温度60℃にて燃焼試験用の短冊形状成形体(厚さ2.0mm、1.5mm及び1.4mm)を成形した。各成形体を、温度23℃、湿度50%の環境下に2日保持した後、UL94規格20MM垂直燃焼試験を行いV−0、V−1またはV−2に分類した。なお、表中の記号NCは分類不能(non-classification)を意味する。(難燃性の程度:V−0>V−1>V−2>NC)
【0109】
(2)着色剤分散性
得られたペレット10gを用いて、230℃に加熱したプレス成形機により、厚さ0.25〜0.35mmの範囲となるようにプレスフィルムを調製し、着色剤の分散性を下記基準で目視観察した。
○印:直径0.2mmφ以上の大きさの着色剤凝集物、あるいは着色剤の筋状模様が全く観察されず、着色剤の分散性が良好である。
×印:直径0.2mmφ以上の大きさの着色剤凝集物、あるいは着色剤の筋状模様が存在し、着色剤の分散性が不良である。
【0110】
(3)湿熱環境下での耐色調劣化性
射出成形機(オートショット50D ファナック社製)によりシリンダー温度240℃、金型温度60℃にて1/8インチ厚ダンベル形状成形体を成形し、温度80℃、湿度95%雰囲気中に900hr保存した後サンプルの色調を下記の判断基準で目視にて評価した。
○印:成形直後サンプルと比べて目視にて色調劣化がほとんど確認できない。
×印:成形直後サンプルと比べて目視にて色調劣化(黄変)が観られる。
【0111】
(4)湿熱環境下での引張強度保持性
射出成形機(オートショット50D ファナック社製)によりシリンダー温度240℃、金型温度60℃にて1/8インチ厚ダンベル形状成形体を成形し、温度80℃、湿度95%雰囲気中に600時間および900時間保存した後、ASTM D638試験法に準じて引張り測定を実施し、下記判断基準で評価した。
○:引張強度が、初期引張強度(保存時間0時間の引張り強度)に対して90%以上保持されているもの。
△:引張強度が、初期引張強度に対して80%以上で90%未満保持されているもの。
×:引張強度が、初期引張強度に対して80%未満であるもの。
結果を表2、表3、表4に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
実施例1〜19は、薄肉成形体での高度な難燃性、良好な着色剤分散性を有すると共に、湿熱環境下での耐色調劣化性、および引張強度保持性が優れていることがわかる。
【0116】
【比較例1〜7】
製造例1で得た未着色難燃樹脂組成物1を乾燥し、表5に示す量(単位は重量部)で、実施例1と同様に押出機に投入して着色難燃樹脂組成物を得た。
得られたペレットを用いて、実施例1と同様に評価した。
結果を表5に示す。
【0117】
【表5】
【0118】
比較例1は、成分(D)を欠く例であるが、着色剤分散性、耐色調劣化性、引張強度保持性が劣る。
比較例2〜4は、成分(D)の使用量が本発明の範囲外の例である。比較例2では着色剤分散性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。比較例3および4では、難燃性および引張強度保持性が劣る。
比較例5および6は、成分(D)の粘度が本発明の範囲外の例であるが、着色剤分散性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。
比較例7は、成分(D)に替えて展着剤としてパラフィンオイル(沸点300℃以上)を使用する例であるが、難燃性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。
【0119】
【比較例8〜14】
製造例3で得た未着色難燃樹脂組成物3を乾燥し、表6に示す量(単位は重量部)で、実施例6と同様に押出機に投入して着色難燃樹脂組成物を得た。
得られたペレットを用いて、実施例6と同様に評価した。
結果を表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
比較例8は、成分(D)を欠く例であるが、着色剤分散性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。
比較例9〜11は、成分(D)の使用量が本発明の範囲外の例である。比較例9では着色分散性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。比較例10および11では難燃性および引張強度保持性が劣る。
比較例12および13は、成分(D)の粘度が本発明の範囲外の例であるが、着色剤分散性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。
比較例14は、成分(D)に替えて展着剤としてパラフィンオイル(沸点300℃以上)を使用する例であるが、難燃性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。
【0122】
【比較例15〜21】
製造例5で得た未着色難燃樹脂組成物5を乾燥し、表7に示す量(単位は重量部)で、実施例14と同様に押出機に投入して着色難燃樹脂組成物を得た。
得られたペレットを用いて、実施例と同様に評価した。
結果を表7に示す。
【0123】
【表7】
【0124】
比較例15は、成分(D)を欠く例であるが、着色剤分散性、耐色調劣化性、及び引張強度保持性が劣る。
比較例16〜18は、成分(D)の使用量が本発明の範囲外の例である。比較例16および比較例18では着色剤分散性、色調変化、及び、引張強度が劣る。比較例17では、難燃性、および引張強度保持性が劣る。
比較例19および20は、成分(D)の粘度が本発明の範囲外の例であるが、着色剤分散性、耐色調劣化性、及び、引張強度保持性が劣る。
比較例21は、成分(D)に替えて展着剤としてパラフィンオイル(沸点300℃以上)を使用する例であるが、難燃性、耐色調劣化性、および引張強度保持性が劣る。
【0125】
【発明の効果】
本発明の着色難燃樹脂組成物の製造方法は、少量で多彩なカラーニーズに対応できる着色難燃樹脂組成物の製造方法であって、薄肉成形体での難燃性と着色剤の分散性に優れ、しかも高温高湿環境下に長時間曝された場合の色調低下および強度低下が極めて少ない着色難燃樹脂組成物を得るための製造方法であり、本発明の製造方法により得られた着色難燃樹脂組成物は、コンピューター用モニター、ノートブックパソコン、プリンター、ワープロ、コピー機、携帯電話機等の筐体用材料として極めて有用であり、特に薄肉部分を有する成形体を得る場合において極めて有用な材料である。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部、難燃剤(B)0.01〜40重量部を含む未着色難燃樹脂組成物のペレット100重量部に対して、着色剤(C)0.0001〜10重量部、及び、25℃における粘度が10〜10,000cp(センチポイズ)のエポキシ化合物(D)0.01〜3重量部を混合し、該未着色難燃樹脂組成物のペレットと該成分(C)と該成分(D)からなる混合物とし、該混合物を押出機を用いて溶融混練することにより着色難燃樹脂組成物を得ることを特徴とする着色難燃樹脂組成物の製造方法。
- 該未着色難燃樹脂組成物のペレット100重量部に対し、該成分(D)0.01〜3重量部を配合混合し、該未着色難燃樹脂組成物のペレット表面を該成分(D)で濡らし、しかる後に、該着色剤(C)0.0001〜10重量部を配合混合することにより、該未着色難燃樹脂組成物のペレット表面に該着色剤(C)が付着した混合物とし、該混合物を押出機を用いて溶融混練することにより着色難燃樹脂組成物を得ることを特徴とする請求項1に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂または芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする樹脂であることを特徴とする請求項1および2に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
- 該未着色難燃樹脂組成物が、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、さらに、フルオロポリマー(E)0.05〜2重量部を含むことを特徴とする請求項1〜4に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
- 該未着色難燃樹脂組成物が、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、さらに、タルク(F)0.1〜50重量部を含むことを特徴とする請求項5に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
- 押出機が、2軸押出機であることを特徴とする請求項1〜6に記載の着色難燃樹脂組成物の製造方法。
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