JP3917757B2 - 車両の前部車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車体前部構造、特に車体前部のフレーム構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の車体前部に形成されるエンジンルームの最前端部には、左右のラジエータパネルサイドがエンジンルームの左右の側壁を構成する左右のホイールエプロンの前端縁部及び該ホイールエプロンに接合固着された左右のサイドフレームの前端縁部に接合固着され、該左右のラジエータパネルサイドはその上下をラジエータパネルアッパとフロントクロスメンバとによりそれぞれ連結され、上記左右のラジエータパネルサイドとラジエータパネルアッパとフロントクロスメンバとにより囲まれた空間部にエンジン冷却水冷却用のラジエータ及び空調装置のコンデンサが配設されている。
【0003】
そして、前面衝突時の衝突荷重は、ホイールエプロンの下縁部に沿って接合固着された左右のサイドフレームに入力されるが、例えば実開平3−55381号公報に開示されているように、閉断面をなすサイドフレームの前端部分の断面高さを増やし、衝突に対する初期車体抗力を充分高くし、その後に生ずる車体減速度のピーク値を下げるようにしたものが従来より開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記先行技術のように、サイドフレーム前端部分の断面高さを増やした構造としたものは、衝突荷重によりサイドフレームに下向きのモーメントが生じ、サイドフレームの安定的な座屈による衝突エネルギー吸収のためにはサブフレームを設けるといった手段が必要があると共に、サイドフレームの歩留まりが悪くコスト的に不利である、という課題を有している。
【0005】
又、サイドフレーム前端部分の断面高さを増やす代わりに、サイドフレーム前端にブラケットを設け、該ブラケットにてバンパからサイドフレームへの衝突荷重伝達をスムーズにする方策も従来より開発されているが、この方策はサイドフレームの歩留まりは良好であるが、荷重伝達の面では充分とはいえず、前記と同様にサイドフレームに下向きのモーメントが生じるという課題を有している。
【0006】
本発明は上記のような従来の課題を解決することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車体前部の側壁に沿って前後方向に配設され、その前端部にてバンパを取付支持する閉断面のサイドフレームの前方部分の下面部に、補助部材として、閉断面形状のコンプレッションメンバを、サイドフレーム前端部から所定寸法だけ後方へずらせた状態で、サイドフレーム下面との間に所定の隙間をもたせて取付けたことを特徴とするものであり、これにより前面衝突時に、衝突に対する初期車体抗力を必要以上に上げることなく、コンプレッションメンバが上方へ凸に湾曲変形してサイドフレームに当接し、該コンプレッションメンバのサイドフレームへの当接によってサイドフレームの折れ曲がり変形が抑えられ、サイドフレーム及びコンプレッションメンバの安定した座屈変形及びそれによる衝突エネルギーの効果的な吸収が行なわれる。又、上記によりサイドフレームの歩留まりの向上と、コンプレッションメンバの板厚,形状,材質等により任意の衝突エネルギー吸収特性が得られることから、車体の基本的構成部分の変更が不要となり、チューニングのし易い衝突エネルギー吸収構造を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
図1,図2は本発明の第1の実施例を示すものであり、図1において、フロントボデーにおけるラジエータパネル1とサイドフレーム2との位置関係を示し、サイドフレーム2は外側が開放したほぼコ字型断面部材2aと該コ字型断面部材2aの外側の開放端部を覆うクロージングプレート2b(又はフロントホイールエプロン)とにより車体前後方向の閉断面を構成しており、その前端部は、ラジエータパネル1のラジエータパネルサイド11の下方に位置し、バンパブラケット9を介して図示しないバンパが取付けられる。又、サイドフレーム2の後端部はトーボード3に突き合わせ固着されている。そして、サイドフレーム2の下面には後述するコンプレッションメンバ5をスペーサ4を介して取付けるための孔2cが設けられている。コンプレッションメンバ5の前端部にはプレート6が取付けられ、該プレート6によりコンプレッションメンバ5の前端部はサイドフレーム2の下面に所定の隙間Lをもって取付けられ、又フロントクロスメンバ12へも結合されている。尚、図1において、13は車体前部の側壁をなすフロントホイールエプロンである。
【0010】
コンプレッションメンバ5は、図2に示すように、上部構成部材7と底面部材8とから側面視で後方ほど細くなる楔形状をなす閉断面に形成されている。上部構成部材7は上面部7aと左右の側面部7bとからなる下向きに開放したほぼコ字型断面に形成され、その前端部分の高さはフロントクロスメンバ12の高さとほぼ同じになるよう構成されている。上面部7aの後部には、サイドフレーム2への取付用の孔7dが形成され、また上面部7aの車幅方向の幅は、サイドフレーム2の底面部の幅よりも若干狭めに設定されている。側面部7bの前端部にはプレート6を取付るためのフランジ7cが設けられている。底面部材8は、底面8aとその底面8aの左右端部のフランジ8bとを有する形状に構成され、該底面8aの前端にはプレート6を取付けるための取付孔8dを設けたフランジ8cが形成されている。
【0011】
上記コンプレッションメンバ5の前端部には、図1(B)に示すように、プレート6が取付けられる。プレート6は、前面部6aと車内側の側面取付部6bと上面フランジ6cとを有する構造に構成され、該前面部6aの下方部には取付孔6dが設けられ、該取付孔6dがコンプレッションメンバ5の底面部材8の前端部に設けた取付孔8dに対応するようになっており、ボルトを上記取付孔6d,8dに差し込み締付けることにより、コンプレッションメンバ5の前端を前面部6aが覆った状態にてプレート6が取付けられ、プレート6の側面取付部6bとフロントクロスメンバ12とを結合すると共に、上面フランジ6cをサイドフレーム2の下面に固着することにより、コンプレッションメンバ5の前端部はサイドフレーム2の下部に所定の隙間Lをもって結合される。
【0012】
コンプレッションメンバ5は、サイドフレーム2の下面部に、コンプレッションメンバ5の前端部がサイドフレーム2前端部よりフロントクロスメンバ12の幅分だけ後方位置に来るように、後部をスペーサ4を介してボルト締めにて取付けられると共に、前端部をプレート6の上面フランジ6cにてサイドフレーム2に取付けられることにより、前後の取付箇所以外のコンプレッションメンバ5上面部7aとサイドフレーム2下面部との間には、スペーサ4の厚み分だけの隙間L(例えばほぼ5mm程度の隙間)が形成される。
【0013】
上記構成により、車両の前面衝突時、先ずサイドフレーム2の前端部が圧縮変形し始め(この場合、初期抗力はあまり高くない)、続いてコンプレッションメンバ5が前面部から圧縮変形し始めるが、その時コンプレッションメンバ5は、前後の取付個所の中間部分において前記隙間L分だけ上方へ湾曲変形して上面部7aが、図2(B)の鎖線示7a′のようにサイドフレーム2の下面部に当接する。この当接によりサイドフレーム2は下方への折れ曲がりが抑制され、それ以後はサイドフレーム2とコンプレッションメンバ5は互いに折れ曲がり変形が抑えられて安定した座屈変形を行ない、効果的に衝突エネルギーを吸収する。
【0014】
図1,2ではスペーサ4を介してコンプレッションメンバ5をサイドフレーム2にボルトにて取付けた例を示しているが、図3の第2の実施例に示すように、コンプレッションメンバ5の上面部7aの後端部にサイドフレーム2の下面への取付座4′を一体に突出形成し、該取付座4′をサイドフレーム2の下面に接合しボルト締め等にて取付固定することにより、コンプレッションメンバ5の上面部7aとサイドフレーム2の下面との間に上記取付座4′の突出高さにより所定の隙間Lが形成されるようにしてもよく、このようにすればスペーサ4が不要となり、部品点数の削減及びそれに伴うコストダウンをはかることができる。
【0015】
又、図4は本発明の第3の実施例を示すもので、コンプレッションメンバ5の前後の取付個所の中間の上面部7aを若干上方へ湾曲した形状に構成した例を示している。このように予めコンプレッションメンバ5の上面部7aを上方に凸に湾曲した形状に構成しておくことにより、衝突荷重の入力時コンプレッションメンバ5は上方へ湾曲変形し易く、サイドフレーム2の折れ曲がり規制及び衝突エネルギー吸収といった機能の更なる安定化をはかることができる。
【0016】
図5は本発明の第4の実施例を示すもので、コンプレッションメンバ5の前端下部に剛性の高い部材10を取付け、前面衝突荷重が該剛性の高い部材10を介してコンプレッションメンバ5に入力するよう構成した例を示している。このように構成することにより、前面衝突荷重の入力中心がコンプレッションメンバ5の下方に設定され、これによりコンプレッションメンバ5が上方へ湾曲変形し易くなり、上記第3実施例の場合と同様、サイドフレーム2の折れ曲がり規制及び衝突エネルギー吸収といった機能のより一層の安定化をはかることができる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サイドフレームの下面に、閉断面をなすコンプレッションメンバを、サイドフレーム前端部より少し後にずらせて、且つ、サイドフレーム下面との間に所定の隙間をもって取付けたことにより、前面衝突時、サイドフレームとコンプレッションメンバとの座屈変形開始に時間差をもたせ、又コンプレッションメンバの座屈開始に伴ないコンプレッションメンバの上方への湾曲変形による押圧によってサイドフレームの折れ曲がり変形は抑えられ、衝突に対する初期車体抗力を必要以上に高くすることなく、サイドフレーム及びコンプレッションメンバの安定した座屈による衝突エネルギー吸収を行うことができるので、トーボードの車室内側への後退量やフロアパネルの変形等を最小限に抑えることができる。
【0018】
更に、サイドフレームの歩留まりの向上と、コンプレッションメンバの板厚,形状,材質により任意の衝突エネルギー吸収特性が得られることから、車体の基本的構成部分の変更が不要となり、チューニングのし易い衝突エネルギー吸収構造を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明を適用した車両のフロントボデーの概略を示す斜視図、(B)は(A)の要部の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示すもので、(A)はサイドフレームとコンプレッションメンバとの取付位置関係を示す斜視図、(B)は(A)の側面図、(C)は(B)のC−C断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示すもので、コンプレッションメンバの後方部分の側面図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示すコンプレッションメンバの縦断側面図である。
【図5】本発明の第4の実施例を示すコンプレッションメンバの縦断側面図である。
【符号の説明】
1 ラジエータパネル
2 サイドフレーム
4 スペーサ
4′ 取付座
5 コンプレッションメンバ
6 プレート
6a 前面部
6b 側面取付部
6c 上面フランジ
6d 取付孔
7 上部構成部材
7a 上面部
7b 側面部
7c フランジ
7d 孔
8 底面部材
8a 底面
8b フランジ
8c フランジ
8d 取付孔
9 バンパブラケット
10 剛性の高い部材
11 ラジエータパネルサイド
12 フロントクロスメンバ
13 フロントホイールエプロン
Claims (6)
- 車体前部の側壁に沿って前後方向に配設され、その前端部にてバンパを取付支持する閉断面のサイドフレームにおいて、該サイドフレームの前方部分の下面部に、車体前後方向に閉断面形状で側面視にて前端から後方にかけて徐々に細くなる楔形状に形成されたコンプレッションメンバを、サイドフレーム下面との間に所定の隙間をもたせて取付けたことを特徴とする車両の前部車体構造。
- 請求項1に記載の車両の前部車体構造において、コンプレッションメンバは、その前端部がサイドフレームの前端部より所定寸法だけ後方へずらしてサイドフレーム下面部に取付けられていることを特徴とする車両の前部車体構造。
- 請求項1乃至2の何れかに記載の車両の前部車体構造において、コンプレッションメンバの後端部は、スペーサを介してサイドフレーム下面に取付けら
れ、該スペーサの厚み分だけサイドフレーム下面とコンプレッションメンバ上面部との間に隙間が形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。 - 請求項1乃至2の何れかに記載の車両の前部車体構造において、コンプレッションメンバの後端部には、サイドフレーム下面への取付座が一体に突出形成されており、該取付座にてサイドフレーム下面に取付けられることにより、該取付座の突出高さ分だけサイドフレーム下面とコンプレッション上面部との感に隙間が形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
- 請求項1乃至4の何れかに記載の車両の前部車体構造において、コンプレッションメンバの上面部を上方へ凸なるよう湾曲形成させたことを特徴とする車両の前部車体構造。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の車両の前部車体構造において、コンプレッションメンバの前端部下方に、剛性の高い部材を取付け、前面衝突時に衝突荷重が該剛性の高い部材を介してコンプレッションメンバに入力するよう構成することにより、衝突荷重の入力中心をコンプレッションメンバ下方部に設定したことを特徴とする車両の前部車体構造。
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JPH11348825A JPH11348825A (ja) | 1999-12-21 |
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1998
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