JP3916026B2 - 半導体素子のパッケージおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体チップ、特に電力用半導体チップの成形パッケージに関し、ボンディングワイヤの倒れを無くし、かつ室温で液状の熱硬化性樹脂を用い大型パッケージに適用可能な液状真空射出成形による成形が可能で、さらに、半導体チップの発熱を有効に熱放散させることが可能な絶縁層構造を持つパッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子のパッケージは、半導体素子を外部環境から保護すること、半導体素子に機械的強度を持たせた形状にして容易に取り扱えるようにすること、および電気的に外部と接合できる形態にすることを主な目的とする。
【0003】
従来、半導体素子を樹脂内に埋設する樹脂封止型の成形パッケージとしては、金属回路基板または熱放散用の金属板をセラミック製の絶縁層を介して、半導体チップを搭載したリードフレームとハンダ接合し一体にしたものについて、それらの片面のみをトランスファー成形したもの、またはリードフレーム、半導体チップ、ボンディングワイヤを先にトランスファー成形した後、絶縁層を再度成形すると同時に金属板と一体に成形したもの、等が知られている。
【0004】
しかしながら、かかる成形パッケージの製造方法においては、ボンディングワイヤの倒れ、ボイドの発生、成形樹脂の収縮による反り、等の問題があり、これらは成形パッケージのみならず半導体素子の性能低下や故障発生の原因となる。従って、それらの問題点をできるだけ低減する必要がある。
【0005】
また、高度な集積回路の普及に伴い、熱放散性の向上(低熱抵抗化)および反りを低減させた大型成形パッケージに対応できる技術が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の成形パッケージの製造方法におけるボンディングワイヤの倒れ、ボイドの発生、成形樹脂の収縮による反り(特に大型成形パッケージに関する)、等の問題を改良し、かつ少ない工程数で、絶縁性、耐水性、熱サイクル性、熱放散性に優れた半導体素子のパッケージおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための半導体素子のパッケージおよびその製造方法は以下の通りである。すなわち、
本発明の第1の態様は、一面が露出した金属板と、該金属板の他面上に形成された高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記絶縁層は、アルミナクロスを備える半導体素子のパッケージに関するものである。
【0008】
本発明の第2の態様は、一面が露出した高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂層の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記絶縁層は、アルミナクロスを備える半導体素子のパッケージに関するものである。
【0009】
本発明の第3の態様は、一面が露出した金属板と、該金属板の他面上に形成された高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記半導体素子のパッケージは、前記熱硬化性樹脂層の周囲に硬質樹脂の成形部材を備え、該恒湿樹脂の成形部材にて前記リードフレームが支持されている半導体素子のパッケージに関するものである。
【0010】
本発明の第4の態様は、一面が露出した高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂層の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記半導体素子のパッケージは、前記熱硬化性樹脂層の周囲に硬質樹脂の成形部材を備え、該恒湿樹脂の成形部材にて前記リードフレームが支持されている半導体素子のパッケージに関するものである。
【0014】
本発明の第5の態様は、絶縁層の寸法を維持する手段を伴って、金属板上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層を介し前記金属板と半導体チップを搭載させたリードフレームとを真空接着させた後、加圧し絶縁層の寸法を調整する工程と、前記絶縁層を介して一体化された前記リードフレームと金属板とを成形金型に挿入する工程と、前記成形金型に熱硬化性樹脂を室温で真空射出成形し硬化させる工程とを備え、前記絶縁層の寸法を維持する手段として、前記金属板と前記半導体チップを搭載したリードフレームとの間にアルミナクロスを使用する半導体素子のパッケージの製造方法に関するものである。
【0015】
本発明の第6の態様は、絶縁層を形成するための隙間を確保する手段を伴って、半導体チップを搭載したリードフレームを金属板上に載せ、成形金型に挿入する工程と、該成形金型に熱硬化性樹脂を真空射出成形しキャビティ内をフル充填する工程と、さらに加圧しながら前記絶縁層を形成するための隙間に前記熱硬化性樹脂を侵入させ、硬化させる工程とを具え、前記絶縁層を形成するための隙間を確保する手段として、前記金属板と前記半導体チップを搭載したリードフレームとの間にアルミナクロスを使用する半導体素子のパッケージの製造方法に関するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、ボンディングワイヤの倒れ、ボイドの発生、成形樹脂の収縮による反り(特に大型成形パッケージに関する)を改良した成形パッケージ構造体を1回の成形で製造することを可能にするものである。かかる製造では、成形パッケージ構造体において、少なくとも半導体チップおよびボンディングワイヤの部分にはボンディングワイヤが倒れないような粘度、すなわち、成形温度100℃〜150℃において200〜500ポイズの粘度、を持つ室温で液状の熱硬化性樹脂を用い、ボイドの発生をなくすために真空射出成形を用いる。
【0021】
本発明に係わる半導体素子のパッケージには、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂といった、通常、封止に使用される熱硬化性樹脂を用いることができ、必要に応じて、該熱硬化性樹脂に、可撓化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、難燃剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、改質剤、等の添加剤を加えても良い。例えば、応力に関する問題を改善するためには、熱硬化性樹脂としてエポキシ系樹脂を選択し、該エポキシ系樹脂にシリカフィラー等の無機フィラーを添加したものを使用するか、または該エポキシ系樹脂に可撓化剤を添加して可撓性樹脂としたものを使用することで熱膨張係数および機械的強度を改善することができる。
【0022】
また、成形パッケージを形成するための真空射出成形と同時に、高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層を形成する場合を考慮して、高熱伝導率である物質を前記熱硬化性樹脂に添加し、熱伝導率を少なくとも3.2〜3.6W/m・kの範囲に高くすることが望ましい。ここでは、高熱伝導率であるアルミナフィラーを添加した熱硬化性樹脂を以下、高熱伝導性樹脂といい、熱伝導率が3.6W/m・kの高熱伝導性樹脂が最も好ましい。本発明の一実施態様例では、アルミナフィラーをエポキシ系樹脂に添加したものを使用する。高熱伝導性樹脂の充分な流動性を確保するためには、粒度分布が10〜80μmであるアルミナフィラーを使用することが好ましい。また、熱伝導率を向上させるためには、できるだけ多くのアルミナフィラーを添加することが望ましいが、絶縁層の形状を充分維持するために85〜89重量%(アルミナフィラー+樹脂+各種添加剤の重量基準)の割合で添加することが好ましい。
【0023】
本発明の成形パッケージの製造において実施される液状熱硬化性樹脂の真空射出成形は、真空下で液状熱硬化性樹脂を射出成形することによりボイドの発生をなくす手段である。その際、狭い隙間に樹脂を侵入させ、かつ成形サイクルを上げるために、かかる液状熱硬化性樹脂は速硬化する必要がある。しかしながら、速硬化すると樹脂の含浸距離が短くなるため、侵入速度を上げなければならない。そのため、キャビティ内に樹脂が入るまではボンディングワイヤの倒れを考慮して低圧で射出し、キャビティ内がフル充填された後は、加圧力を上げることにより狭い隙間の侵入速度を上げ細密充填する。その結果、樹脂の硬化における収縮を低減し、ボイドの発生をなくすことが可能となる。
【0024】
また、成形樹脂の収縮による反りを低減するために、成形パッケージにヒートシンクへの取り付け用ネジ穴を設け、これらをネジ止めして固定する。一般的に半導体素子のパッケージは、その構造においてバイメタルとなるため、大型の成形パッケージは特に反りが生じやすい。したがって、パッケージ構造体の一部に硬質樹脂の成形部材を用い、この硬質部材でリードフレームを支持して反りを低減する。そのために硬質成形部材にリードフレームを差し込むスリットを設け、ヒートシンクへの固定には硬質成形部材に設けたネジ穴を利用する。
【0025】
本発明の成形パッケージの熱放散性を向上させるためには、絶縁層の熱伝導率を上げること、および絶縁層の機械的強度に問題が生じない範囲内においてできるだけ薄型化することにより熱抵抗を小さくする必要がある。本発明の実施態様においては、薄くて均一な絶縁層を形成するために、以下のような方法を用いた。すなわち、第1にアルミナクロスの基材厚さを利用する方法、第2に成形樹脂中に粒径をそろえたガラスビーズを配合する方法、第3にリードフレームに成形樹脂ピンを取り付ける方法である。
【0026】
第1の方法では、アルミナクロスが絶縁層の厚さを保持すること、および熱伝導性を向上させることの双方に作用しており、かかる方法は、アルミナクロスをプリプレグにして絶縁層を形成する方法と、金属板とリードフレームの間にアルミナクロスを挟み、成形樹脂の真空射出成形と同時に絶縁層を形成する方法とに分けられる。前者におけるアルミナクロスのプリプレグは、アルミナクロスを基材にして、例えば、ビスマレイミドトリアジン樹脂、高耐熱エポキシ樹脂といった耐熱性樹脂に、必要に応じてアルミナフィラーを添加したものを塗工することにより実施される。
【0027】
第2の方法では、絶縁層の所望の厚さに応じてガラスビーズの粒径を変えることができる。ガラスビーズは、成形樹脂の3〜5重量%の範囲で配合することが好ましく、この範囲より低い配合では絶縁層の厚さを維持するのに充分でなく、この範囲より高い配合では熱伝導性を低下させることになる。
【0028】
第3の方法では、成形樹脂ピンの先端の錐の高さを変えることにより所望の厚さの絶縁層を形成することができる。成形樹脂ピンの形状の詳細については、以降の実施例において説明する。かかる方法を使用することにより、成形樹脂の真空射出成形と同時に絶縁層を形成することができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明に係わる半導体素子の成形パッケージの製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。製造において用いられた成形樹脂および成形条件は、本発明の一実施態様であり、これらに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
図1(a)は、真空射出成形により形成された可撓性樹脂層1および硬質樹脂の成形部材2を組み合わせた成形パッケージ構造体を示す断面図である。図1(b)は、図1(a)の成形パッケージ構造に適用可能な半導体素子の一例を示す平面図である。
【0031】
図1(a)および図1(b)から分かるように、成形パッケージ構造に適用可能な半導体素子は、半導体チップ3を搭載したリードフレーム4が絶縁層5を介して金属板6と一体化されており、半導体チップ3とリードフレーム4の上部が可撓性樹脂層1でモールドされている。その際、半導体チップ3とリードフレーム4は、80μmのAlのワイヤ7(以下、ボンディングワイヤという)でボンディングされている。そして、そのような構造体が硬質樹脂の成形部材2と組み合わされている。
【0032】
かかる成形パッケージの構造は、大型成形パッケージにおける反りまたは応力が問題になる場合について有効である。製造方法は以下の通りである。
【0033】
全周に切り欠きを付けたAl板6をその長手方向において、取り付けネジ用穴8およびリードフレーム4の差込スリットを有するPPS製の硬質プラスチック成形部材2でホールドする。その際、Al板6には、絶縁層5になる熱伝導率が3.6W/m・kである高熱伝導性樹脂(アルミナフィラーを89wt%、液状エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、減粘剤を11wt%含む)を250μmの厚さに印刷し、真空度0.4torrにおいて前処理し印刷時の巻き込み気泡を抜いた。
【0034】
次に、半導体チップ3を搭載したリードフレーム4を硬質プラスチック成形部材2でホールドしながら、0.3torrの真空中、150℃においてAl板6と組み合わせ、ボイドなしで接着させた。その際、硬質プラスチック成形部材2のAl板6との接触部分に1液性加熱硬化型シリコーン接着剤を塗布しておき、上述の真空接着の際に一緒に接着させた。
【0035】
絶縁層5と接着剤を硬化させた後、成形金型に挿入して、可撓性樹脂である東芝シリコーン社製のTSE 3232(商品名)を用いて室温で液状真空射出成形することにより可撓性樹脂層1を形成し、硬化させることで成形パッケージを製造した。かかる方法に従って製造された半導体素子の成形パッケージは、モジュールの特性を満足し、反りが小さく、成形収縮によって半導体チップにかかる応力を低減でき、半導体チップのコートも兼用した。また、成形パッケージのヒートシンク9などへの締め付け時や熱衝撃試験による外部応力および熱応力を低減することで、絶縁層にかかる応力も低減でき、信頼性のある半導体素子のパッケージとなった。
【0036】
(実施例2)
図2は、真空射出成形により形成された熱硬化性樹脂層1からなる成形パッケージ構造体を示す断面図である。すなわち、本実施例の構造は図1に示した硬質樹脂の成形部材2を用いず、熱硬化性樹脂層1および金属板6に設けた取り付けネジ用穴8を用いてヒートシンク9などへ半導体素子の成形パッケージを取り付ける。かかる成形パッケージの構造は、パッケージの成形を1回で完了させる際に薄型化した絶縁層を形成するのに有効な手段を伴う。かかる手段は、以下の実施例において記述する。
【0037】
(実施例2−1)
図3(a)は、プリプレグにしたアルミナクロスを絶縁層5に使用した半導体素子の断面図、図3(b)は、図3(a)における絶縁層5の断面拡大図である。 半導体素子および該半導体素子のパッケージの製造方法は、以下の通りである。
【0038】
全周に切り欠きを付けたAl板6と半導体チップ3を搭載したリードフレーム4の間に、アルミナクロス10を基材にしたプリプレグを挟み、真空プレスで接着して厚さ150μmの絶縁層5を形成する。高熱伝導性にするためにアルミナを基材にしたアルミナクロス10のプリプレグは、アルミナフィラーを65wt%配合したジシアンジアミド系エポキシ樹脂11を塗工したものを用いた。これを真空プレスにより3気圧に加圧しながら硬化させ、厚さ150μmのボイドのない絶縁層5にした。この場合の絶縁層の熱伝導率は3.6W/m・kであった。
【0039】
引き続き、絶縁層5を介して一体化された半導体チップ3を搭載したリードフレーム4を成形金型に挿入して、真空度1torrにおいて、5kg/cm2 でアミン系硬化剤、シリカフィラーをそれぞれ添加した脂環式エポキシ樹脂を室温で真空射出成形し、硬化させ成形パッケージを製造した。
【0040】
参考例2−2
図4(a)および(b)は、絶縁層の厚さを保持するために粒径を揃えたガラスビーズ12を使用した半導体素子の製造方法を説明するための断面図である。半導体素子および該半導体素子のパッケージの製造方法は、以下の通りである。
【0041】
切り欠きを付けた金属板6上に、図4(a)に示すように、粒径が150μmのガラスビーズ12を5wt%(高熱伝導性樹脂の重量基準)含む実施例1と同様の高熱伝導性樹脂11を印刷して、厚さ250μmの絶縁層を設けた。その際、真空度0.4torrにおいて前処理し、印刷時の巻き込み気泡を抜いた。
【0042】
次に、図4(b)に示すように、真空度0.3torrにおいて、前処理したAl板6とリードフレーム4とを絶縁層を介して接着させた。その際、300g/cm2 で加圧しながら硬化させ、スペーサになるガラスビーズ12の直径と同じ寸法である厚さ150μmの絶縁層を形成した。
【0043】
引き続き、絶縁層を介して一体化された半導体チップ3を搭載したリードフレーム4を成形金型に挿入して、真空度1torrにおいて、5kg/cm2 でアミン系硬化剤、シリカフィラーをそれぞれ添加した脂環式エポキシ樹脂を室温で真空射出し、硬化させ成形パッケージを製造した。
【0044】
参考例2−3
図5(a)〜(c)は、絶縁層の厚さを保持するために成形樹脂ピン13を使用する半導体素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0045】
半導体素子および該半導体素子のパッケージの製造方法は、以下の通りである。
【0046】
先ず、図5(a)に示すように、全周に切り欠きを付けた金属板6上に実施例1と同様の高熱伝導性樹脂11を印刷して、厚さ250μmの絶縁層を設けた。その際、真空度0.4torrにおいて前処理し、印刷時の巻き込み気泡を抜いた。
【0047】
次に、図5(b)に示すように、絶縁層の厚さを保持するために成形樹脂ピン13の錐の高さを150μmにして、リードフレーム4のランド間に差し込み90度まわすことで固定したものと前処理したAl板6とを、絶縁層を介して真空度0.3torrにおいて接着させた。その際、50g/ピンで加圧しながら硬化させ、スペーサになる成形樹脂ピン13の錐の高さと同じ寸法である厚さ150μmの絶縁層を形成した。
【0048】
図6は、本発明の実施態様において使用することができる成形樹脂ピン13の形状を示すものであり、図6(a)は正面図、図6(b)は断面図である。成形樹脂中のフィラーに成形樹脂ピン13の先端がのり絶縁層の寸法14が大きくならないように、成形樹脂ピンの先端を錐にして尖らせた。また、図6から分かるように成形樹脂ピン13の表面には凹凸をつけ、成形樹脂との接着面積を増やし、かつ界面から水分が侵入し難い形状とした。さらに、上型寸法17は、リードフレームと一緒に加圧し接着する際、ボンディングワイヤに当たらない高さであれば問題無い。
【0049】
最後に、図5(c)に示すように、絶縁層を介して一体化された半導体チップを搭載したリードフレームを成形金型に挿入して、真空度1torrにおいて、5kg/cm2 で絶縁層と同様の高熱伝導性樹脂を室温で真空射出成形し、硬化させ成形パッケージを製造した。
【0050】
以上の方法により得られた成形パッケージは、安定した絶縁寸法および機械的強度を保持し、かつ熱抵抗に優れており、さらにパッケージの成形を1回で完了することが可能である。
【0051】
(実施例3)
図7および図8は、1回の成形で絶縁層および成形パッケージを同時成形することが可能な成形パッケージ構造体の断面図である。より詳細には、絶縁層を形成する隙間を確保する方法として、図7ではアルミナクロス10を使用し、図8では成形樹脂ピン13を使用している。それぞれの製造方法は以下の通りである。
【0052】
(実施例3−1)
図7は、絶縁層を形成する隙間を確保する方法としてアルミナクロス10を使用したパッケージの製造方法を説明する断面図である。
【0053】
図7(a)に示すように、全周に切り欠きを付けたAl板6と半導体チップ3を搭載したリードフレーム4との間にアルミナクロス10を挟み、絶縁層5の厚さが150μmになるようにリードフレーム4を押さえ込むピン18を使い成形金型19で押さえ込む。
【0054】
尚、図7(b)は、アルミナクロスを挟んだ絶縁層の拡大断面図である。この状態で、図7(c)に示すように、真空度1torrにおいて、可撓性樹脂である東芝シリコーン社製のTSE 3232(商品名)を5kg/cm2 で射出成形しキャビティ内をフル充填し、さらに50kg/cm2 で射出成形し細密充填した後、硬化させることにより成形パッケージを形成し、同時にアルミナクロスに成形樹脂を含浸させたボイドのない絶縁層を形成した。この場合の絶縁層の熱伝導率は3.2W/m・kであった。
【0055】
参考例3−2
図8(a)は、絶縁層を形成する隙間を確保する方法として成形樹脂ピン13を使用した成形パッケージの断面図である。
【0056】
図8(a)に示すように、絶縁層の厚さを保持するために錐の高さが150μmである成形樹脂ピンを取り付けたリードフレームを全周に切り欠きを付けたAl板6の上にのせる。その際、成形樹脂ピン13の後ろを成形金型に差し込む。尚、ここで使用する成形樹脂ピン13は、参考例2−3で使用したものと同様である。
【0057】
この状態で、真空度1torrにおいて、実施例1と同様の高熱伝導性樹脂を5kg/cm2 で射出成形しキャビティ内をフル充填し、さらに50kg/cm2 で射出成形し細密充填した後、硬化させることにより図8(b)に示すような成形パッケージとボイドのない絶縁層が同時に形成された。
【0058】
以上の方法により得られた成形パッケージは、安定した絶縁寸法および機械的強度を保持し、かつ熱抵抗に優れており、さらに絶縁層およびパッケージの成形を1回で完了することが可能である。
【0059】
参考例4
図9は、半導体チップを搭載したリードフレームの周囲が全て熱硬化性樹脂層1である成形パッケージ構造体を示す断面図である。かかる成形パッケージは、絶縁層の厚さを保持するために錐の高さが150μmである成形樹脂ピンを、半導体チップを搭載したリードフレームに取り付け、成形金型に挿入し真空射出成形を行うことを除いて、参考例3−2と同様に実施することにより製造した。
【0060】
以上の方法により得られた成形パッケージは、安定した絶縁寸法および機械的強度を保持し、かつ熱抵抗に優れており、さらに絶縁層およびパッケージの成形を1回で完了することが可能である。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、従来の成形パッケージの製造方法におけるボンディングワイヤの倒れ、ボイドの発生、成形樹脂の収縮による反りを改良した成形パッケージの提供が可能となり、かつ成形回数が減少されるため生産効率を向上することが可能となった。また、熱放散性の向上を考慮した絶縁層を効率よく形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に基づく成形パッケージの第1の実施例を示すものであって、(a)は成形パッケージ構造を示す断面図、(b)は(a)の成形パッケージ構造に適用可能な半導体素子の一例を示す平面図である。
【図2】 本発明に基づく成形パッケージの第2の実施例を示す断面図である。
【図3】 図2に示す成形パッケージ構造に適用される半導体素子の絶縁層を形成する第1の実施態様を説明するための半導体素子の断面図である。
【図4】 図2に示す成形パッケージ構造に適用される半導体素子の絶縁層を形成する第2の参考の実施態様を説明するための半導体素子の断面図である。
【図5】 図2に示す成形パッケージ構造の製造方法および該成形パッケージに適用される半導体素子の絶縁層を形成する第3の参考の態様を説明するためのものであって、(a)〜(c)は、各工程に対応した半導体素子の断面図である。
【図6】 本発明の参考の態様において使用される成形樹脂ピンの形状を示す概略図である。
【図7】 本発明に基づく成形パッケージ構造の第3の実施例において、該成形パッケージおよび絶縁層を形成する第1の実施態様を説明するための断面図である。
【図8】 本発明に基づく成形パッケージ構造の第3の実施例において、該成形パッケージおよび絶縁層を形成する第2の参考の態様を説明するための断面図である。
【図9】 本発明に基づく成形パッケージの第4の参考例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 熱硬化性樹脂層(可撓性樹脂層)
2 硬質樹脂の成形部材
3 半導体チップ
4 リードフレーム
5 絶縁層
6 金属板(Al板)
7 ボンディングワイヤ
8 取り付けネジ用穴
9 ヒートシンク
10 アルミナクロス
11 高熱伝導性樹脂(アルミナフィラー含有樹脂)
12 ガラスビーズ
13 成形樹脂ピン
14 絶縁層寸法
15 リードフレーム寸法
16 リードフレームランド間寸法
17 上型寸法
18 リードフレームを押さえ込むピン
19 成形金型
20 樹脂の流れ

Claims (6)

  1. 一面が露出した金属板と、
    該金属板の他面上に形成された高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、
    該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記絶縁層は、アルミナクロスを備えることを特徴とする半導体素子のパッケージ。
  2. 一面が露出した高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、
    該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂層の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記絶縁層は、アルミナクロスを備えることを特徴とする半導体素子のパッケージ。
  3. 一面が露出した金属板と、
    該金属板の他面上に形成された高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、
    該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記半導体素子のパッケージは、前記熱硬化性樹脂層の周囲に硬質樹脂の成形部材を備え、該硬質樹脂の成形部材にて前記リードフレームが支持されていることを特徴とする半導体素子のパッケージ。
  4. 一面が露出した高熱伝導性で、かつ高電気抵抗性の絶縁層と、
    該絶縁層上に設けられた半導体チップが搭載されたリードフレームとを有し、少なくとも前記半導体チップおよび前記リードフレームを覆って常温で液体の熱硬化性樹脂層の真空射出成形による熱硬化性樹脂層が形成されており、前記半導体素子のパッケージは、前記熱硬化性樹脂層の周囲に硬質樹脂の成形部材を備え、該硬質樹脂の成形部材にて前記リードフレームが支持されていることを特徴とする半導体素子のパッケージ。
  5. 絶縁層の寸法を維持する手段を伴って、金属板上に絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層を介し前記金属板と半導体チップを搭載させたリードフレームとを真空接着させた後、加圧し絶縁層の寸法を調整する工程と、
    前記絶縁層を介して一体化された前記リードフレームと金属板とを成形金型に挿入する工程と、
    前記成形金型に熱硬化性樹脂を室温で真空射出成形し硬化させる工程
    とを備え、前記絶縁層の寸法を維持する手段として、前記金属板と前記半導体チップを搭載したリードフレームとの間にアルミナクロスを使用することを特徴とする半導体素子のパッケージの製造方法。
  6. 絶縁層を形成するための隙間を確保する手段を伴って、半導体チップを搭載したリードフレームを金属板上に載せ、成形金型に挿入する工程と、
    該成形金型に熱硬化性樹脂を真空射出成形しキャビティ内をフル充填する工程と、
    さらに加圧しながら前記絶縁層を形成するための隙間に前記熱硬化性樹脂を侵入させ、硬化させる工程
    とを具え、前記絶縁層を形成するための隙間を確保する手段として、前記金属板と前記半導体チップを搭載したリードフレームとの間にアルミナクロスを使用することを特徴とする半導体素子のパッケージの製造方法。
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