JP3915557B2 - 洗濯機のモータ駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータ回路によりモータを駆動する洗濯機のモータ駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、洗濯兼脱水槽の回転数変動より衣類のアンバランスを検出して、洗濯機のモータをインバータ回路により回転数制御するものが提案されている。
【0003】
従来、この種の洗濯機は、特開平7−265587号公報に示すように構成していた。すなわち、洗濯兼脱水槽と直結されたモータの1回転当たりの回転数変動を検出し、回転数変動値を基準値と比較して脱水振動の度合いを検出し、検出結果に基づいて脱水回転数を制御していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の構成では、回転数変動を検出する場合のモータ駆動トルクが一定に制御されておらず、電源電圧変動等により回転数が変動するため検知精度が悪くなる欠点があった。
【0005】
本発明は上記従来課題を解決するもので、ベクトル制御によりモータを駆動することにより、洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス検出時に定トルク制御ができるようにし、脱水回転時の回転数変動を検出することにより衣類のアンバランスを検出し、衣類のアンバランスに応じて回転数を制御することで、アンバランスの検出精度を向上させるとともに、洗濯兼脱水槽を高速回転させて脱水率を向上することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、交流電源に接続した整流回路の直流電力をインバータ回路により交流電力に変換して直流ブラシレスモータに加え、直流ブラシレスモータにより洗濯兼脱水槽を駆動し、ロータ位置検出手段により直流ブラシレスモータのロータ位置を検出し、電流検出手段により直流ブラシレスモータの電流を検出し、制御手段によりインバータ回路を制御するよう構成し、制御手段は、直流ブラシレスモータのモータ電流を磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解し、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分とがそれぞれ独立の所定値になるように制御し、前記ロータ位置検出手段の回転数変化より洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたものである。
【0007】
これにより、直流ブラシレスモータのモータ電流のベクトル制御により定トルク制御が可能となり、定トルク制御期間中の回転数変動より負荷のアンバランス量を精度よく検知することができ、さらに、ベクトル制御によりモータ電流を弱め界磁制御して回転数を制御することにより高速回転制御が容易となり、アンバランスが少ない場合にはベクトル制御により高速回転させることにより脱水率を向上することができ、脱水時間と乾燥時間を短縮することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、交流電源と、前記交流電源に接続した整流回路と、前記整流回路の直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路により駆動され洗濯兼脱水槽を駆動する直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータの電気角60度ごとのロータ位置を検出するロータ位置検出手段と、前記直流ブラシレスモータの電流を検出する電流検出手段と、前記インバータ回路を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記直流ブラシレスモータのモータ電流を磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解し、前記磁束に対応した電流成分と前記トルクに対応した電流成分とがそれぞれ独立の所定値になるように制御し、前記ロータ位置検出手段の回転数変化より前記洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたものであり、直流ブラシレスモータのモータ電流を検出して、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解してベクトル制御することで、定トルク制御ができ、定トルク制御期間中の回転数変動より負荷のアンバランス量を精度よく検知することができ、さらに、ベクトル制御によりモータ電流を弱め界磁制御して回転数を制御することにより高速回転制御が容易となり、アンバランスが少ない場合にはベクトル制御により高速回転させることにより脱水率を向上することができ、脱水時間と乾燥時間を短縮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、直流ブラシレスモータの回転数を検出する回転数検知手段と、モータ電流を制御することにより回転数を制御する回転数制御手段と、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解してモータ電流をそれぞれ制御するモータ電流制御手段と、前記回転数制御手段と前記モータ電流制御手段による制御対象を切り換えるようにした設定変更手段とを備え、制御手段は、前記モータ電流制御手段によるモータ電流優先制御において洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたものであり、モータ電流をベクトル制御して定トルク制御することによりアンバランス検知精度を向上させることができ、アンバランス検知後は、モータ電流をベクトル制御して回転数制御することにより高速回転制御が容易となるので、脱水回転数を高くすることが可能となり、脱水率を向上させ、脱水時間を短縮することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明において、制御手段は、回転数制御手段により所定回転数に制御した後、モータ電流制御手段によるモータ電流優先制御に切り換えるようにして洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたものであり、アンバランス量に応じて回転数変動が大きくなる所定回転数に設定した後、定トルク電流制御に切り換えるので、所定回転数近傍における定トルク制御の回転数変動よりアンバランス量の検知精度を向上することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、制御手段は、トルクに対応した電流成分より負荷量を検知した後、トルクに対応した電流成分と磁束に対応した電流成分を所定値に制御して回転数変化を検知し、前記負荷量と前記回転数変化より洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたものであり、負荷量が増加することにより慣性が増加して回転数変動が減少するので、負荷量と回転数変動よりアンバランス量を検知することにより検知精度を向上させることができ、さらに、負荷量と回転数変動よりアンバランス量と布量を検知して脱水回転数を制御することにより、脱水率を向上できるとともに、脱水時間を短縮することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施例1)
図1に示すように、交流電源1は、整流回路2に交流電力を加え、整流回路2は整流器20とコンデンサ21により直流電力に変換し、直流電圧をインバータ回路3に加える。
【0014】
インバータ回路3は、6個のパワースイッチング半導体と逆並列ダイオードよりなる3相フルブリッジインバータ回路により構成し、通常、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)と逆並列ダイオードおよびその駆動回路と保護回路を内蔵したインテリジェントパワーモジュール(以下、IPMという)で構成している。インバータ回路3の出力端子にモータ4を接続し、撹拌翼(図示せず)または洗濯兼脱水槽(図示せず)を駆動する。
【0015】
モータ4は直流ブラシレスモータにより構成し、回転子を構成する永久磁石と固定子との相対位置(回転子位置)をロータ位置検出手段4aにより検出する。ロータ位置検出手段4aは、通常、3個のホールICにより構成し、電気角60度ごとの位置信号を検出する。電流検出手段5は、モータ4の相電流Iu、Iv、Iwを検出するもので、通常は直流電流を含む低周波数から測定可能な直流電流トランスを用いる。また、交流電流トランスあるいはシャント抵抗でも検出可能である。また、3相モータの場合、2相の電流を求め、キルヒホッフの法則(Iu+Iv+Iw=0)より残りの1相を求める方法が一般的である。
【0016】
制御手段6は、ロータ位置検出手段4aと、電流検出手段5によりインバータ回路3をベクトル制御してモータ4の回転数を制御するものである。制御手段6は、インバータ回路3によりモータ4の回転数を制御するもので、マイクロコンピュータと、マイクロコンピュータに内蔵したインバータ制御タイマー(PWMタイマー)、高速A/D変換回路、メモリ回路(ROM、RAM)等より構成し、ロータ位置検出手段4aの出力信号より電気角を検知する電気角検知手段60と、電流検出手段5の出力信号と電気角検知手段60の信号より磁束に対応した電流成分Idとトルクに対応した電流成分Iqに分解する3相/2相dq変換手段61と、静止座標系から回転座標系に変換、あるいは逆変換するのに必要な正弦波データ(sin、cosデータ)を格納する記憶手段62と、磁束に対応した電圧成分Vdとトルクに対応した電圧成分Vqを3相モータ駆動制御電圧vu、vv、vwに変換する2相/3相dq逆変換手段63と、3相モータ駆動制御電圧vu、vv、vwに応じてインバータ回路3のIGBTのスイッチングを制御するPWM制御手段64などを備えている。
【0017】
さらに、行程に応じてモータ4の起動、停止、回転数、および制動等を制御する設定変更手段65と、ロータ位置検出手段4aの出力信号より回転数を検知する回転数検知手段66と、回転数検知手段66の出力信号に応じてモータ5の回転数を制御する回転数制御手段67と、設定変更手段65と回転数制御手段67からのd軸(direct−axis)電流設定信号Ids、q軸(quadrature−axis)電流設定信号Iqsと、3相/2相dq変換手段61より演算したIdとIqを比較しモータ電流を制御するための磁束に対応した電圧成分Vdとトルクに対応した電圧成分Vqを演算するモータ電流制御手段68とを備えている。
【0018】
トルクに対応したq軸電流Iqが設定値Iqsとなるようにフィードバック制御することにより定トルク制御が可能となる。しかし、回転数が上昇するとモータ誘起電圧が上昇してトルク電流Iqが増加しなくなるので、回転数に応じてd軸電流を増加させる、いわゆる弱め磁束制御によりq軸電流も増加させることができ、トルクを増加させることができる。
【0019】
図2は各部の波形関係を示し、ロータ位置検出手段4aの出力信号H1、H2、H3のエッジ信号は60度ごとに変化して、各部状態信号より360度を6分割した角度が判別できる。信号H1がローからハイとなるハイエッジを基準電気角0度として示し、モータ4のU相巻線誘起電圧Ecは、基準信号H1から30度遅れた波形となる。U相モータ電流Iuとモータ誘起電圧Ecの位相を同じにすると最大効率が得られる。モータ誘起電圧Ecがq軸と同等軸となり、d軸は90度遅れている。q軸電流はモータ誘起電圧位相と同相なのでトルク電流と呼ばれる。
【0020】
図2において、U相モータ電流Iuは、U相巻線誘起電圧Ecよりわずかに進んで、モータ印加電圧VuはU相巻線誘起電圧Ecより30度進んだ波形を示す。vcはPWM制御手段64内で生成される鋸歯状波形のキャリヤ信号で、vuは正弦波状のU相制御電圧でキャリヤ信号vcとU相制御電圧vuを比較したPWM信号uをPWM制御手段64内で発生させ、インバータ回路3のU相上アームトランジスタの制御信号として加える。ckはキャリヤ信号vcの同期信号で、キャリヤカウンタがカウントアップしてオーバーフローしたときの割込信号である。
【0021】
モータ4のロータ磁石軸とステータの磁束軸が一致した電気角をd軸として基準電気角0度として静止座標系から回転座標系への座標変換、すなわち、dq変換を行うので、電気角検知手段60は、ロータ位置検出手段4aの出力信号H1、H2、H3より30度、90度、150度等の電気角を検知し、60度毎以外は推定により電気角θを求める。
【0022】
一般的に、磁束に対応した電流成分をd軸電流Idと呼び、永久磁石の磁束と界磁の磁束が同軸上で永久磁石が界磁に吸引された状態なのでトルクは零となる。また、d軸から電気角で90度の角度で誘起電圧位相と同じ位相となりトルク最大となる軸をq軸と呼び、トルクに対応した電流成分なのでq軸電流Iqと呼ぶ。さらに、d軸電流を負の方向に増加させるとd軸上の界磁磁束を弱めることと等価となるので界磁弱め制御、あるいは弱め磁束制御(または磁束弱め制御)と呼ばれる。また、d軸電流とq軸電流に分解してそれぞれ独立に制御するのでベクトル制御と呼ばれる。
【0023】
3相/2相dq変換手段61は、モータ電流Iu、Iv、Iwを(数1)によりd軸電流Idとq軸電流Iqに変換するもので、電気角θに対応して検出したモータ電流瞬時値よりId、Iqを演算する。
【0024】
【数1】
【0025】
記憶手段62には、sinθとcosθのデータを記憶しているので、電気角データに対応したデータを呼び出して積和演算を行うことにより、d軸電流Idとq軸電流Iqに分解できる。電気角θの検知とモータ電流瞬時値の検出はキャリヤ信号に同期して行うもので、後述するフローチャートに従い、詳細な説明を行う。
【0026】
回転数検知手段66は、ロータ位置検出手段4aの出力基準信号H1よりモータ回転数を検知し、回転数信号を設定変更手段65、回転数制御手段67に加える。設定変更手段65は、モータ4の起動制御と回転数の設定、回転数優先制御あるいは電流優先制御の切り換え、および回転数とq軸電流設定値Iqsに応じたd軸電流Idsの演算を行い、回転数制御手段67に回転数設定信号Ns、あるいは、電流優先制御信号Iqoを加え、モータ電流制御手段68にd軸設定信号Idsを加える。
【0027】
回転数制御手段67は、検知回転数nと設定回転数Nsを比較する回転数比較手段67aと、検知回転数nと設定回転数Nsとの誤差信号Δnと、回転数の変化率(加速度)に応じてq軸電流設定値Iqsを制御するトルク電流設定手段67bと、q軸電流設定値Iqsをトルク電流設定手段67bからそのまま出力するか、あるいは、設定変更手段65からの指令により電流優先制御にするかを切り換えるq軸電流切り換え手段67cより構成される。
【0028】
回転数制御の場合には、誤差信号Δnに応じてq軸電流設定値Iqsを制御する、いわゆる、回転数制御電流マイナーループ制御を行い、電流制御の場合には、設定変更手段65からq軸電流設定値Iqoが設定され、Iqs=Iqoとなる。
【0029】
モータ電流制御手段68は、3相/2相dq変換手段61の出力信号Iq、Idと設定信号Iqs、Idsをそれぞれ比較して制御電圧信号Vq、Vdを出力するもので、q軸電流比較手段68a、q軸電圧設定手段68b、d軸電流比較手段68c、d軸電圧設定手段68dより構成し、q軸電流とd軸電流をそれぞれ制御する電圧信号Vq、Vdを生成する。
【0030】
d軸電流設定値Idsは、設定変更手段65からモータ電流制御手段68に信号が加えられるもので、埋め込み磁石モータの場合には回転数に応じてd軸電流設定値Idsを増加させて弱め界磁制御を行う。表面磁石モータの場合には、通常、Idsは零に設定し、高回転数駆動の場合にIdsを増加させる。
【0031】
2相/3相dq逆変換手段63は、電圧信号Vq、Vdより3相モータ駆動制御電圧vu、vv、vwを(数2)より演算するもので、キャリヤ信号に同期して、電気角検知手段60により検知した電気角θに対応した正弦波状の信号をPWM制御手段に加える。記憶手段62に記憶したsinθ、cosθの積和演算の方法は、3相/2相dq変換手段61の演算とほぼ同じである。
【0032】
【数2】
【0033】
図3は、モータ印加電圧Vaがモータ誘起電圧Ecよりも大きい場合(Va>Ec)での、モータ印加電圧Vaとモータ誘起電圧Ecを一定(モータ回転数一定)にしてモータ印加電圧Vaの位相を変えた場合のモータ電流ベクトルIoの軌跡を示す。図に示すように、電流軌跡は楕円形状となる。
【0034】
電流ベクトルIo1は、q軸と同相の場合(Id=0)で、ベクトルIo1はq軸電流Iq1と等しくなり、表面磁石モータの場合には最大効率となる。電流ベクトルIo2は、磁束弱め制御(弱め界磁制御)して最大トルクとなる場合で、このとき、q軸電流Iq2はIq1より増加するが、d軸電流Id2を負の方向に大きくする、すなわち、弱め界磁制御する必要があり、表面磁石モータの場合効率は低下する。しかし、埋め込み磁石モータの場合には、リラクタンストルクが発生してトルクが増加するので効率は低下しない。高速回転させるためには、弱め界磁制御させる必要があり、埋め込み磁石モータは高速回転でもトルクが発生するので、洗濯機の撹拌翼と洗濯兼脱水槽を直接駆動するDDモータ(direct drive motor)に向いており、脱水回転数を高くする場合に適している。
【0035】
弱め界磁制御を行うために、通常、回転数に応じてd軸電流を増加させるが、本発明では、q軸からの進角値δを回転数に応じて制御するもので、q軸電流Iqと進角値δを設定して、次式によりd軸電流Idを演算する。
【0036】
Id=Iq・tanδ
電流ベクトルIo3は位相角δをさらに進角させた場合で、このときにはq軸電流は負となり制動トルクが発生する。このとき、Va>Ecなので低速回転での制動運転となる。
【0037】
図4は、設定回転数に応じて電流位相角(進角値)δを制御するもので、M1は埋め込み磁石モータの場合の制御特性、M2は表面磁石モータの場合の制御特性であり、埋め込み磁石モータの場合には回転数と共に位相角δを増加させることによりリラクタンストルクを発生させ、効率を低下させずに高速運転が可能となる。表面磁石モータの場合には、弱め界磁制御を行うと効率が低下するので、通常、d軸電流は零に設定して制御する。高速回転させる場合のみ位相角δを増加させる。
【0038】
回転数に応じてd軸電流を増加させる制御方法と、回転数に応じて位相角δを制御する方法を比較すると、埋め込み磁石モータにおいてはd軸電流もトルクを発生させるので、回転数に応じてq軸電流とは別途にd軸電流を制御すると、フィードバックループ外でトルク制御を行うことになり、回転数制御の変動幅が非常に大きくなる。
【0039】
d軸電流Idを上述の式に示したように、q軸電流Iqに比例して制御することにより、d軸電流によるトルク成分をq軸電流に関連付けて制御でき、回転数変動を減らすことができる。
【0040】
上記構成において図5、図6および図7を参照しながら動作を説明する。図5および図6は脱水行程のフローチャートで、ステップ100より脱水行程を開始し、ステップ101にて脱水行程の各種初期設定を行い、つぎにステップ102に進んで回転数制御設定を行い、設定回転数となるようにモータ電流を制御する。つぎに、ステップ103に進んで、時間とともに設定回転数を高くする制御を行う。
【0041】
つぎに、ステップ104に進んで、図8に示すモータ駆動サブルーチンを実行する。このときの制御は、ステップ102にて設定された回転数制御となる。つぎに、ステップ105にてモータ回転数nが設定値N0に達したかどうか判定し、設定値N0に達したらステップ106に進み、設定値以下ならばステップ103に戻る。
【0042】
ステップ106にて、モータ回転数が設定値N0に達したときのモータ電流ベクトル値Iq、Idを記憶する。このときのIq、Idは、q軸電流設定値Iqs、d軸電流設定値Idsとなる。電流フィードバック制御しているので、常に、Iq=Iqs、Id=Idsとなる。つぎに、ステップ107に進んで電流制御設定とし、つぎに、ステップ108に進んでモータ駆動サブルーチンを実行する。このとき、モータ電流優先制御となり、q軸電流設定値Iqs、d軸電流設定値Idsとなるようにベクトル制御される。
【0043】
埋め込み磁石モータの場合には、弱め界磁制御する方がトルクが大きくなるので、q軸電流設定値Iqs、d軸電流設定値Idsが所定値となるように制御するが、表面磁石モータの場合には、d軸電流を零に設定して制御すると、トルク電流のみで制御するので、より回転数変動が大きくなりアンバランス検知精度が向上する特徴がある。
【0044】
図7は、脱水運転時の脱水時間tとモータ回転数nの回転数制御タイムチャートを示している。G1は負荷のアンバランスが非常に大きい場合、G2はアンバランスが通常の場合、G3はアンバランスが小さい場合の回転数制御特性である。
【0045】
時間t0から時間t1の区間は、電流制御の区間で負荷のアンバランス状態に応じて回転数が変動する。アンバランス量が大きいG1の場合には、回転数変動、すなわち、最大回転数nmaxと最小回転数nminの差ΔNが大きくなる。
【0046】
図5に戻り、ステップ109は、回転数変動ΔNを検出するサブルーチンで詳細は省略するが、洗濯兼脱水槽1回転、あるいは数回転における最大回転数と最小回転数の差を検出する。実際には、ロータ位置検出手段4aの位置信号の周期を測定し、最大周期と最低周期の差より回転数変動を検出する。つぎに、ステップ110に進んで回転数変動ΔNが最大設定値ΔN1以上かどうか判定し、ΔN1以上ならばステップ111に進んでアンバランス修正フラグを設定し、ステップ112に進んでブレーキ制御を行い、脱水行程を終了してステップ113に進んでリターンする。アンバランス修正フラグがセットされているので、次行程はアンバランス修正行程となるが、詳細説明は省略する。
【0047】
回転数変動ΔNが最大設定値ΔN1よりも小さければ、図6のステップ114に進み、回転数変動ΔNが設定値ΔN2以上かどうか判定する。回転数変動ΔNが設定値ΔN2以上ならば、ステップ115に進み、脱水回転数をN1に設定する。図7において、G2の制御タイムチャートがこれに相当する。
【0048】
つぎに、ステップ116に進んで図8に示すモータ駆動サブルーチンを実行する。このときの制御は、モータ電流を制御して回転数を設定値に制御する回転数制御である。つぎに、ステップ117に進んで設定時間t3経過したかどうか判定し、所定期間、回転数N1にて制御した後、ブレーキ行程124に進んで脱水行程を終了する。
【0049】
ステップ114にて、回転数変動が所定値ΔN2よりも小さければ、アンバランス量は小さいと判定し、ステップ118に進んで脱水回転数をN1よりも高いN2に設定し、つぎに、ステップ119に進んでステップ116と同様、図8に示すモータ駆動サブルーチンを実行する。つぎに、ステップ120に進んで設定時間t2経過したかどうか判定し、t2時間経過すると、ステップ112に進んで、更に脱水回転数を高くするためにNmaxに設定して、ステップ122のモータ駆動サブルーチンを実行する。つぎに、ステップ123に進んで設定時間t3経過したかどうか判定し、所定期間、脱水回転数Nmaxにて制御した後、ブレーキ行程124に進んで脱水行程を終了する。
【0050】
つぎに、図8に示すモータ駆動サブルーチンのフローチャートについて説明する。ステップ200よりモータ駆動サブルーチンが開始する。ステップ201はサブルーチン実行の最初に判断する初期判定で、起動あるいは制動初期を判定し、起動あるいは制動初期であればステップ202に進み、各種初期設定を行い、メインルーチンからのパラメータの受け渡しと各種設定を実行する。
【0051】
つぎに、ステップ203に進んで回転起動制御あるいは制動初期制御を行う。ステップ202、203は最初に一回だけ実行する。起動制御は、回転数フィードバック制御ができない起動時に、所定のモータ印加電圧に設定して120度通電するものであり、低いモータ印加電圧から高い電圧まで時間経過とともに電圧を上昇させるソフトスタートを行う。制動運転の場合には負のd軸電流を増やして、負のq軸電流を減らし、急激なブレーキトルクが加わらないようなソフトブレーキを行う。
【0052】
つぎに、ステップ204に進んでキャリヤ信号割込の有無を判定する。キャリヤ信号割込とは、PWM制御手段65のキャリヤカウンタがオーバーフローすると発生する割込信号ckにより実行するもので、ステップ205に進んでキャリヤ信号割込サブルーチンを実行する。
【0053】
図9は、キャリヤ信号割込サブルーチンの詳細フローチャートを示し、ステップ300よりキャリヤ信号割込サブルーチンを開始し、ステップ301にて割込信号ckをカウントする。つぎに、ステップ302に進んでロータ位置電気角θを演算する。ロータ位置信号θは、別途求めたキャリヤ信号1周期当たりの電気角Δθとキャリヤカウンタのカウント値kを掛けた値k・Δθを、ロータ位置検出手段4aより検知できる60度ごとの電気角φを加えることで推定演算する。
【0054】
モータ4を8極、キャリヤ周波数を15.6kHz、回転数を900r/minとするとモータ駆動周波数は60Hzとなり、電気角60度内のキャリヤカウンタカウント値kは約43となる。よって、Δθは約1.4度となる。モータ回転数が低い程、電気角60度内のカウント値kは高くなり、演算上の電気角検知分解能は向上するので、回転数が低く精度が要求される場合でも問題はないことがわかる。
【0055】
つぎに、ステップ303に進んでモータ電流Iu、Ivを検出する。電流検出1回ではノイズが含まれる可能性があるので、ステップ304に進んで再度検出し、ステップ305にて平均値を求めてノイズを除去し、Iw=−(Iu+Iv)よりモータ電流Iwを演算する。
【0056】
つぎに、ステップ306に進んで電気角θとモータ電流より、(数1)に示した演算を行い、3相/2相dq変換を行い、d軸電流Id、q軸電流Iqを求める。つぎにステップ307に進んでId、Iqをメモリし、別途回転数制御データとして用いる。
【0057】
つぎに、ステップ308に進んでd軸制御電圧Vd、q軸制御電圧Vqを呼び出し、ステップ309に進んで(数2)に従い2相/3相dq逆変換を行い、3相制御電圧vu、vv、vwを求める。この逆変換は、ステップ306と同じように記憶手段62の電気角に対応したsinθ、cosθデータを用い、積和演算を高速で行う。つぎに、ステップ310に進んで3相制御電圧vu、vv、vwに対応したPWM制御を行い、ステップ311に進んでサブルーチンをリターンする。
【0058】
PWM制御は、図2でも説明したように、U相、V相、W相各相に対応して、鋸歯状波(または三角波)のキャリヤ信号と制御電圧vu、vv、vwを比較してインバータ回路3のIGBTオンオフ制御信号を発生させ、モータ4を正弦波駆動するもので、上アームトランジスタと下アームトランジスタの信号は逆転された波形で、上アームトランジスタの導通比を増加すると出力電圧は正電圧が増加し、下アームトランジスタの導通比を増加させると出力電圧は負電圧が増加する。導通比を50%にすると出力電圧は零となる。
【0059】
電気角θに対応して制御電圧を正弦波状に変化させると正弦波状の電流が流れる。正弦波駆動の場合、トランジスタの導通比を最大値100%にしたとき、出力電圧は最大となり変調度Amは100%で、導通比の最大値を50%にしたとき、出力電圧は最低となり変調度Amは0%と呼ぶ。
【0060】
モータ電流をベクトル制御するための、3相/2相dq変換と2相/3相dq逆変換をキャリヤ毎に高速で実行するので、高速の電流制御が可能となり、さらに、キャリヤ毎にトルク電流Iqを検出するので負荷量が瞬時に判定できる特長がある。また、キャリヤ毎にベクトル制御することにより常に一定トルクで駆動でき、洗濯兼脱水槽を負荷変動に関わらず定トルク駆動することにより、負荷変動による回転数変動が顕著になる特徴があり、回転数変動によりアンバランス量を精度よく検知できる。
【0061】
図8に戻って、キャリヤ信号割込サブルーチンを実行した後、ステップ206に進み、位置信号割込の有無を判定する。位置信号H1、H2、H3のいずれかの信号が変化すると割込信号が発生し、ステップ207に進んで、図10に示す位置信号割込サブルーチンを実行する。図2に示すように、電気角60度ごとに割込信号が発生する。
【0062】
ここで、位置信号割込サブルーチンについて説明する。ステップ400より位置信号割込サブルーチンを開始し、ステップ401に進んで位置信号H1、H2、H3を入力し位置検出を行い、つぎに、ステップ402に進んで位置信号よりロータ電気角θcを検出する。つぎに、ステップ403に進んでキャリヤ信号割込サブルーチンでカウントしているカウント値kをkcにメモリし、ステップ404に進んでカウント値kをクリヤし、ステップ405に進み、電気角60度間のキャリヤカウンタカウント値kcより1キャリヤの電気角Δθを演算する。
【0063】
つぎに、ステップ406に進んで基準位置信号H1による割込信号かどうかを判定し、基準位置信号割込ならばステップ407に進んで回転周期測定タイマーTのカウント値Tを周期Toとしてメモリし、ステップ408に進んでタイマーTをクリヤし、ステップ409に進んでモータ回転数nを演算する。つぎに、ステップ410に進んで回転周期測定タイマーのカウントを開始させ、ステップ411に進んでサブルーチンをリターンする。
【0064】
回転周期測定タイマーの検知分解能を8bit精度にすると、クロックは64μsとなりキャリヤ信号をクロックに使用できるが、回転制御性能を向上するためには回転周期検知分解能を向上させる必要があり、クロックの周期は1〜10μsに設定する必要がある。この場合には、マイクロコンピュータのシステムクロックを分周してクロックに使用する。
【0065】
以上に説明した回転数検知方法は、位置信号H1の周期から求める方法を示したが、位置信号H1、H2、H3をすべて使用してもよい。また、キャリヤ信号を三角波にすると、キャリヤカウンタタイマーの周期は鋸歯状波の2倍となるので、三角波のオーバーフロー信号をクロックにすると分解能が向上するので三角波タイマーのオーバーフロー信号をクロックにしてもよい。
【0066】
つぎに、図8において、位置信号割込サブルーチン207を実行した後、ステップ208に進み回転数制御フラグの有無を判定し、回転数制御設定ならば、ステップ209に進んで回転数制御サブルーチンを実行し、電流制御設定ならば、ステップ210に進んで、電流制御サブルーチンを実行する。回転数制御サブルーチンの詳細は図11に示す。
【0067】
図11において、ステップ500より回転数制御サブルーチンを開始し、ステップ501にてモータ回転数nを呼び出し、ステップ502に進んで通常駆動か減速制動かのフラグ判定する。
【0068】
通常駆動ならばステップ503に進み設定回転数と検知回転数の誤差によりq軸電流設定値Iqsを制御してトルク制御を行い、つぎに、ステップ504に進んでq軸電流設定値Iqsを上限値Iqmaxと比較し、大ならばステップ505に進んでIqsをIqmaxとして、q軸電流Iqが上限値Iqmax以上とならないようにする。減速制動ならばステップ506に進んで負のトルク制御、すなわち、ブレーキトルク制御のためにq軸電流設定値を−Iqsに設定する。
【0069】
つぎに、ステップ507に進んで設定回転数Nsより位相角δを設定し、つぎに、ステップ508に進んで、Iqsと位相角δよりd軸電流設定値Idsを演算する。設定回転数のみでd軸電流を制御するとq軸電流Iqが小さい場合、進角し過ぎてトルクが得られない場合があるので、設定回転数とq軸電流設定値Iqsに応じたd軸電流を設定する必要がある。
【0070】
つぎに、ステップ509にてd軸電流Idを呼び出し、ステップ510にてIdとIdsの大小比較判定を行い、d軸電流Idが設定値Idsよりも大きければステップ511に進んでd軸制御電圧Vdを減らし、d軸電流Idが設定値Idsよりも小さければステップ512に進んでd軸制御電圧Vdを増やす。
【0071】
つぎに、ステップ513に進んで3相/2相dq変換手段61より求めたq軸電流Iqを呼び出し、ステップ514にてIqとIqsの大小比較判定を行い、q軸電流Iqが設定値Iqsよりも大きければステップ515に進んでq軸制御圧Vqを減らし、q軸電流Iqが設定値Iqsよりも小さければステップ516に進んでq軸制御電圧Vqを増やす。
【0072】
つぎに、ステップ517に進んで演算されたd軸制御電圧Vd、q軸制御電圧Vqをそれぞれメモリし、ステップ518に進んでサブルーチンをリターンする。
【0073】
d軸電流Id、q軸電流Iqは、基本的にはキャリヤ信号ごとに変換するので、トルクリップルも含めて変動が大きい。変換したd軸電流Id、q軸電流Iqと設定値Ids、Iqsをキャリヤごとに比較判断制御すると変動要素が大きく制御が安定しないので、平均化するなどの積分要素を加える必要がある。よって、回転数制御サブルーチンは、図10に示すように、キャリヤ信号割込サブルーチン、あるいは、位置信号割込サブルーチンの中で実行せず、モータ駆動制御の中で独立に実行させる。ただし、回転制御の応答速度を速めるために、位置信号割込サブルーチンの中で行う方法も考えられるが、回転数が低い場合には逆に応答が遅くなる欠点がある。
【0074】
図12は、電流制御サブルーチンで、図11に示す回転数制御サブルーチンの電流制御部分を取り出したものである。すなわち、ステップ600より電流制御サブルーチンが開始し、ステップ601にて3相/2相dq変換手段61より求めたd軸電流Idを呼び出し、ステップ602にてIdとIdsの大小比較判定を行い、d軸電流Idが設定値Idsよりも大きければステップ603に進んでd軸制御電圧Vdを減らし、d軸電流Idが設定値Idsよりも小さければステップ604に進んでd軸制御電圧Vdを増やす。
【0075】
つぎに、ステップ605に進んで3相/2相dq変換手段61より求めたq軸電流Iqを呼び出し、ステップ606にてIqとIqsの大小比較判定を行い、q軸電流Iqが設定値Iqsよりも大きければステップ607に進んでq軸制御圧Vqを減らし、q軸電流Iqが設定値Iqsよりも小さければステップ608に進んでq軸制御電圧Vqを増やす。
【0076】
つぎに、ステップ609に進んで演算されたd軸制御電圧Vd、q軸制御電圧Vqをそれぞれメモリし、ステップ610に進んでサブルーチンをリターンする。
【0077】
以上述べた電流制御サブルーチンを実行することにより、モータ電流が所定の電流値に制御される。回転数変動よりアンバランス量を検知する場合には、以上述べたように、モータ電流をベクトル制御することにより定トルク制御が可能となり、アンバランス量に応じた回転数変動を検出でき、電圧変動に関わらずトルク一定制御が可能なので、アンバランス検知精度を向上させることができる。
【0078】
(実施例2)
図13に示すように、制御手段6’は、上記実施例1の制御手段6に、負荷量検知手段69を追加している。負荷量検知手段69は、ベクトル制御の所定回転数におけるq軸電流とd軸電流から負荷トルクを判別して負荷量を判定するものである。回転数変動は負荷の慣性モーメントに大きな影響を受けるので、単に回転数変動からアンバランス量を判別するのではなく、負荷量と回転数変動からアンバランス量を判別するものである。他の構成は上記実施例1と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
表面磁石モータの場合には、d軸電流を零に制御すると、q軸電流がトルクに比例して負荷トルクの判別が可能であるが、埋め込み磁石モータの場合には、d軸電流もトルクを発生させるので、q軸電流とd軸電流、あるいは、q軸電流と位相角δより負荷量を判別する必要がある。
【0080】
上記構成において図14を参照しながら動作を説明する。図14は、基本的に上記実施例1で説明した図5および図6の脱水行程フローチャートに負荷量判定ステップを追加したもので、ステップ701からステップ706までの動作は上記実施例1のステップ101からステップ106までの動作と同じであるので説明を省略する。
【0081】
ステップ706にてq軸電流Iq、d軸電流Idを入力した後、ステップ707に進んで布量判定を行う。設定回転数N0におけるq軸電流Iqが大きいほど負荷量が大きいので、q軸電流より負荷量が判定できる。ステップ708にて電流制御設定した後、ステップ709に進んで上記実施例1と同じモータ駆動サブルーチンを実行する。つぎに、ステップ710に進んで回転数変動ΔNを検出し、ステップ711に進み、q軸電流から判定した負荷量と、回転数変動ΔNよりアンバランス量を判定する。
【0082】
図15は、負荷量と回転数変動ΔNよりアンバランス量を判定するアンバランス量判定図である。負荷量が大きいほど慣性モーメントが大きくなって、アンバランス量が増加しても回転数変動は減少するので、負荷量が増加すると回転数変動ΔNの大小判定レベルを下げるようにしたものである。すなわち、アンバランス判定レベルを、U1、U2、U3とし、U1判定レベルから左下はアンバランス量が小さく、右上の方向ではアンバランス量が大きいと判定し、アンバランス量が小さい場合には脱水回転数を高く設定し、アンバランス量が非常に大きい場合(U3右上方向)には、脱水運転を中止してアンバランス修正行程を行うものである。
【0083】
ステップ711の後のステップは、上記実施例1とほぼ同様の制御動作となるので説明は省略する。
【0084】
以上述べた如く本発明の特徴は、直流ブラシレスモータのモータ電流を検出して、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解してベクトル制御するもので、脱水運転の初期低速回転制御区間にて、モータ電流をベクトル制御して定トルク制御を行い、回転数変動より負荷のアンバランス量を検出するものであり、定トルク制御によりアンバランス検出精度を向上させることができる。
【0085】
特に、ベクトル制御の場合には、瞬時の定トルク制御が可能なため、回転軸が水平方向となるドラム洗の場合において、アンバランス負荷を持ち上げるときに回転数が低下し、アンバランス負荷が落ちる方向では負荷トルクが低下して回転数が上昇するので、回転数変動がより顕著になり、アンバランス検知精度を高くすることができる。
【0086】
また、ベクトル制御の場合には、トルク電流成分より負荷量が容易に判定でき、負荷量と回転数変動よりアンバランス量が精度よく検出でき、アンバランス量に応じて回転数制御ができるので、特に、アンバランス量が少ない場合には弱め界磁制御により高速回転制御が可能となり、脱水率を高くすることにより、洗濯機と乾燥機が一体となった洗濯乾燥機においては、乾燥時間の短縮が可能となる。
【0087】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に記載の発明によれば、交流電源と、前記交流電源に接続した整流回路と、前記整流回路の直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路により駆動され洗濯兼脱水槽を駆動する直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータの電気角60度ごとのロータ位置を検出するロータ位置検出手段と、前記直流ブラシレスモータの電流を検出する電流検出手段と、前記インバータ回路を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記直流ブラシレスモータのモータ電流を磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解し、前記磁束に対応した電流成分と前記トルクに対応した電流成分とがそれぞれ独立の所定値になるように制御し、前記ロータ位置検出手段の回転数変化より前記洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたから、直流ブラシレスモータのモータ電流を検出して、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解してベクトル制御することで、定トルク制御ができ、アンバランス検出精度を向上することができる。
【0088】
また、請求項2に記載の発明によれば、直流ブラシレスモータの回転数を検出する回転数検知手段と、モータ電流を制御することにより回転数を制御する回転数制御手段と、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解してモータ電流をそれぞれ制御するモータ電流制御手段と、前記回転数制御手段と前記モータ電流制御手段による制御対象を切り換えるようにした設定変更手段とを備え、制御手段は、前記モータ電流制御手段によるモータ電流優先制御において洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたから、モータ電流をベクトル制御して定トルク制御することによりアンバランス検知精度を向上させることができ、アンバランス検知後は、モータ電流をベクトル制御して回転数制御することにより高速回転制御が容易となるので、脱水回転数を高くすることが可能となり、脱水率を向上させ、脱水時間を短縮することができる。
【0089】
また、請求項3に記載の発明によれば、制御手段は、回転数制御手段により所定回転数に制御した後、モータ電流制御手段によるモータ電流優先制御に切り換えるようにして洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたから、アンバランス量に応じて回転数変動が大きくなる所定回転数に設定した後、定トルク電流制御に切り換えるので、所定回転数近傍における定トルク制御の回転数変動よりアンバランス量の検知精度を向上することができる。
【0090】
また、請求項4に記載の発明によれば、制御手段は、トルクに対応した電流成分より負荷量を検知した後、トルクに対応した電流成分と磁束に対応した電流成分を所定値に制御して回転数変化を検知し、前記負荷量と前記回転数変化より洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにしたから、負荷量が増加することにより慣性が増加して回転数変動が減少するので、負荷量と回転数変動よりアンバランス量を検知することにより検知精度を向上させることができ、さらに、負荷量と回転数変動よりアンバランス量と布量を検知して脱水回転数を制御することにより、脱水率を向上できるとともに、脱水時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例の洗濯機のモータ駆動装置の一部ブロック化した回路図
【図2】 同洗濯機のモータ駆動装置のタイムチャート
【図3】 同洗濯機のモータ駆動装置のモータ電流をd軸電流とq軸電流に分解した電流ベクトルの軌跡を示す図
【図4】 同洗濯機のモータ駆動装置の回転数−電流位相角制御特性図
【図5】 同洗濯機のモータ駆動装置の脱水行程の負荷のアンバランスが大きい場合のフローチャート
【図6】 同洗濯機のモータ駆動装置の脱水行程の負荷のアンバランスが小さい場合のフローチャート
【図7】 同洗濯機のモータ駆動装置の脱水行程の制御タイミングチャート
【図8】 同洗濯機のモータ駆動装置のモータ駆動サブルーチンのフローチャート
【図9】 同洗濯機のモータ駆動装置のキャリヤ信号割込サブルーチンのフローチャート
【図10】 同洗濯機のモータ駆動装置の位置信号割込サブルーチンのフローチャート
【図11】 同洗濯機のモータ駆動装置の回転数制御サブルーチンのフローチャート
【図12】 同洗濯機のモータ駆動装置の電流制御サブルーチンのフローチャート
【図13】 本発明の第2の実施例の洗濯機のモータ駆動装置の一部ブロック化した回路図
【図14】 同洗濯機のモータ駆動装置の第2の実施例の脱水行程のフローチャートの一部を示す図
【図15】 同洗濯機のモータ駆動装置の第2の実施例のアンバランス量判定図
【符号の説明】
1 交流電源
2 整流回路
3 インバータ回路
4 モータ
4a ロータ位置検出手段
5 電流検出手段
6 制御手段
Claims (4)
- 交流電源と、前記交流電源に接続した整流回路と、前記整流回路の直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路により駆動され洗濯兼脱水槽を駆動する直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータの電気角60度ごとのロータ位置を検出するロータ位置検出手段と、前記直流ブラシレスモータの電流を検出する電流検出手段と、前記インバータ回路を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記直流ブラシレスモータのモータ電流を磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解し、前記磁束に対応した電流成分と前記トルクに対応した電流成分とがそれぞれ独立の所定値になるように制御し、前記ロータ位置検出手段の回転数変化より前記洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにした洗濯機のモータ駆動装置。
- 直流ブラシレスモータの回転数を検出する回転数検知手段と、モータ電流を制御することにより回転数を制御する回転数制御手段と、磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分に分解してモータ電流をそれぞれ制御するモータ電流制御手段と、前記回転数制御手段と前記モータ電流制御手段による制御対象を切り換えるようにした設定変更手段とを備え、制御手段は、前記モータ電流制御手段によるモータ電流優先制御において洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにした請求項1記載の洗濯機のモータ駆動装置。
- 制御手段は、回転数制御手段により所定回転数に制御した後、モータ電流制御手段によるモータ電流優先制御に切り換えるようにして洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにした請求項2記載の洗濯機のモータ駆動装置。
- 制御手段は、トルクに対応した電流成分より負荷量を検知した後、トルクに対応した電流成分と磁束に対応した電流成分を所定値に制御して回転数変化を検知し、前記負荷量と前記回転数変化より洗濯兼脱水槽の負荷のアンバランス量を検知するようにした請求項1記載の洗濯機のモータ駆動装置。
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