以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、モータ制御装置が画像形成装置に設けられる場合について説明するが、モータ制御装置が設けられるのは画像形成装置に限定されるわけではない。例えば、記録媒体や原稿等のシートを搬送するシート搬送装置やその他の装置にも用いられる。
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられるシート搬送装置を有するモノクロの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
以下に、図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。画像形成装置100には、原稿給送装置201、読取装置202及び画像形成装置本体301が設けられている。
原稿給送装置201の原稿積載部203に積載された原稿は、給紙ローラ204によって1枚ずつ給紙され、搬送ガイド206に沿って読取装置202の原稿ガラス台214上に搬送される。更に、原稿は、搬送ベルト208によって一定速度で搬送されて、排紙ローラ205によって不図示の排紙トレイへ排紙される。読取装置202の読取位置において照明209によって照射された原稿画像からの反射光は、反射ミラー210、211、212からなる光学系によって画像読取部111に導かれ、画像読取部111によって画像信号に変換される。画像読取部111は、レンズ、光電変換素子であるCCD、CCDの駆動回路等で構成される。画像読取部111から出力された画像信号は、ASIC等のハードウェアデバイスで構成される画像処理部112によって、各種補正処理が行われた後、画像形成装置本体301へ出力される。前述の如くして、原稿の読取が行われる。即ち、原稿給送装置201及び読取装置202は原稿読取装置として機能する。
また、読取装置202における原稿の読取モードとして、流し読みモードと固定読みモードがある。流し読みモードは、照明系209及び光学系を所定の位置に固定した状態で、原稿を一定速度で搬送しながら原稿の画像を読み取るモードである。固定読みモードは、読取装置202の原稿ガラス214上に原稿を載置し、照明系209及び光学系を一定速度で移動させながら、原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を読み取るモードである。通常、シート状の原稿は流し読みモードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿は固定読みモードで読み取られる。
画像形成装置本体301の内部には、シート収納トレイ302、304が設けられている。シート収納トレイ302、304には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ302にはA4サイズの普通紙が収納され、シート収納トレイ304にはA4サイズの厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等が含まれる。
シート収納トレイ302に収納された記録媒体は、給紙ローラ303によって給送されて、搬送ローラ306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。また、シート収納トレイ304に収納された記録媒体は、給紙ローラ305によって給送されて、搬送ローラ307及び306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。なお、図1に示すように、搬送ローラ307の上流側及び下流側には、記録媒体の有無を検知するシートセンサ330、331が設けられている。シートセンサ330、331の用途については後述する。なお、本実施形態におけるシートセンサは、光学式センサであるが、これに限定されるものではなく、例えば、フラグセンサ等であっても良い。
読取装置202から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含んでいる光走査装置311に入力される。また、感光ドラム309は、帯電器310によって外周面が帯電される。感光ドラム309の外周面が帯電された後、読取装置202から光走査装置311に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置311からポリゴンミラー及びミラー312、313を経由し、感光ドラム309の外周面に照射される。この結果、感光ドラム309の外周面に静電潜像が形成される。なお、感光ドラムの帯電には、例えば、コロナ帯電器や帯電ローラを用いた帯電方法が用いられる。
続いて、その静電潜像が現像器314内のトナーによって現像され、感光ドラム309の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム309に形成されたトナー像は、感光ドラム309と対向する位置(転写位置)に設けられた転写帯電器315によって記録媒体に転写される。この際、レジストレーションローラ308は、トナー像にタイミングを合わせて、記録媒体を転写位置へ送り込む。
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト317によって定着器318へ送り込まれ、定着器318によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319、324によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ319、搬送ローラ320、及び反転ローラ321によって、反転パス325へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ322、323によって再度レジストレーションローラ308へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ319、324によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
また、第1面に画像形成された記録媒体をフェースダウンで画像形成装置100の外部へ排紙する場合は、定着器318を通過した記録媒体を、排紙ローラ319を通って搬送ローラ320へ向かう方向へ搬送する。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ320のニップ部を通過する直前に、搬送ローラ320の回転を反転させる。この結果、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体が排紙ローラ324を経由して、画像形成装置100の外部へ排出される。
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。なお、本発明における負荷とはモータによって駆動される対象物である。例えば、給紙ローラ204、303、305、レジストレーションローラ308及び排紙ローラ319等の各種ローラ(搬送ローラ)や感光ドラム309、搬送ベルト208、317、照明系209及び光学系等は本発明における負荷に対応する。本実施形態のモータ制御装置は、これら負荷を駆動するモータに適用することができる。
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。図2に示すように、画像形成装置100には電源1が備えられている。電源1は交流電源(AC)に接続されており、画像形成装置100の内部の各種装置は電源1から出力される電力によって稼働する。また、システムコントローラ151は、図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部112、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、シートセンサ330、331、センサ類159、ACドライバ160と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御装置157に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが格納される。
システムコントローラ151は、画像処理部112における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部112に送信する。更に、システムコントローラ151は、各種装置からの信号(センサ類159等からの信号)を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器310、現像器314、転写分離器315等)に必要な電圧を供給する。
また、システムコントローラ151は、シートセンサ330、331の検知結果に基づいて、モータ制御装置157を制御する。モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、前述した負荷を駆動するモータ509を制御する。なお、図2においては、負荷を駆動するモータとしてモータ509のみが記載されているが、実際には、画像形成装置には複数個のモータが設けられているものとする。また、モータ制御装置1個で複数個のモータを制御する構成であっても良い。更に、図2においては、モータ制御装置が1個しか設けられていないが、実際には、複数個のモータ制御装置が設けられているものとする。
電源1はモータ制御装置157に設けられたフルブリッジ回路50に電圧Vccを供給する。なお、フルブリッジ回路50については後述する。
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいて、ACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器318に含まれる。
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、ユーザが設定した情報を操作部152から受信し、ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成中か否か、ジャム発生及びその発生箇所等の情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。
前述の如くして、システムコントローラ151は、画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。
[ベクトル制御]
次に、本実施形態におけるモータ制御装置について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置は、ベクトル制御を用いてモータを制御する。なお、以下の説明においては、負荷を駆動するモータとしてステッピングモータが用いられているが、DCモータ等の他のモータであっても良い。また、以下の説明においては、モータが2相モータである場合について説明するが、3相モータ等の他のモータであっても良い。更に、本実施形態におけるモータには、モータの回転子の回転位相を検出するためのロータリエンコーダなどのセンサは設けられていないが、ロータリエンコーダなどのセンサが設けられている構成であっても良い。
まず、図3及び図4を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157がベクトル制御を行う方法について説明する。
図3は、ステッピングモータ(以下、モータと称する)509を制御するモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。
また、図4は、A相(第1相)とB相(第2相)の2相から成るモータ509と回転座標系のd軸及びq軸との関係を示す図である。図4では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸をα軸、B相の巻線に対応した軸をβ軸と定義している。また、静止座標系におけるα軸と、回転子402に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向(d軸方向)との成す角度をθと定義している。回転子402の回転位相は、角度θによって表される。ベクトル制御では、回転子402の磁束方向に沿ったd軸と、d軸から反時計回りに90度進んだ方向に沿った(d軸と直交する)q軸とで表される、モータ509の回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。
ベクトル制御とは、モータの回転子の回転位相を基準とした回転座標系における電流値を制御することによってモータを制御する制御方法である。具体的には、例えば、回転子の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるように電流値を制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する。また、回転子の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるように電流値を制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する手法もある。回転座標系における電流値とは、モータの回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)の電流値と、モータの巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)の電流値とに対応する。
図3に示すように、モータ制御装置157には、ベクトル制御を行う回路として、位相制御器502、電流制御器503、座標逆変換器505、座標変換器511、モータの巻線に駆動電流を供給するPWMインバータ506等が設けられている。座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系から、q軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、モータ509のA相及びB相の巻線に供給する駆動電流を、回転座標系において、q軸成分の電流値(q軸電流)及びd軸成分の電流値(d軸電流)を用いて表すことができる。なお、q軸電流は、モータ509の回転子402にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータ509の回転子402の巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流に相当し、回転子402のトルクの発生には寄与しない。モータ制御装置157は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。即ち、回転子402が回転するために必要なトルクを、効率的に発生させることができる。
モータ制御装置157は、モータ509の回転子402の回転位相θを後述する方法により決定し、その決定結果に基づいてベクトル制御を行う。CPU151aは、モータ509の回転子402の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、所定の時間周期で指令位相θ_refをモータ制御装置157へ出力する。
減算器101は、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差を演算し、該偏差を位相制御器502に出力する。
位相制御器502は、比例制御(P)、積分制御(I)、微分制御(D)に基づいて、減算器101から出力された偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、P制御、I制御、D制御に基づいて減算器101から出力された偏差が0になるように、q軸電流指令値iq_ref(目標値)を生成して出力する。なお、P制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、I制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間積分に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、D制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間変化に比例する値に基づいて制御する制御方法である。本実施形態における位相制御器502は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成しているが、例えば、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成しても良い。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。
A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、図4に示す電流ベクトルの位相θeを用いて次式によって表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義する。
iα=I*cosθe (1)
iβ=I*sinθe (2)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511と誘起電圧決定器512に入力される。
座標変換器511において、電流値iα及びiβは、次式によって回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに座標変換される。
id= cosθ*iα+sinθ*iβ (3)
iq=−sinθ*iα+cosθ*iβ (4)
前述のように、座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系から、q軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。
減算器102には、位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refと座標変換器511から出力された電流値iqとが入力される。減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、減算器103には、界磁制御器540から出力されたd軸電流指令値id_refと座標変換器511から出力された電流値idとが入力される。減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。なお、界磁制御器540については後述する。
電流制御器503は、PID制御に基づいて、前記偏差がそれぞれ小さくなるように駆動電圧Vq及びVdを生成する。具体的には、電流制御器503は、前記偏差がそれぞれ0になるように駆動電圧Vq及びVdを生成して座標逆変換器505に出力する。即ち、電流制御器503は、電圧生成手段として機能する。なお、本実施形態における電流制御器503は、PID制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しているが、例えば、PI制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しても良い。
座標逆変換器505は、電流制御器503から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに座標逆変換する。
Vα=cosθ*Vd−sinθ*Vq (5)
Vβ=sinθ*Vd+cosθ*Vq (6)
座標逆変換器505は、回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに座標逆変換した後、Vα及びVβを誘起電圧決定器512及びPWMインバータ506に出力する。
PWMインバータ506は、フルブリッジ回路を有している。図5は、PWMインバータ506に設けられているフルブリッジ回路50の構成の例を示す図である。前述したように、フルブリッジ回路50には、電源1から電圧Vccが供給されている。また、フルブリッジ回路50には、スイッチング素子としてのFET Q1乃至Q4、モータ509の巻線L1等が設けられている。
FET Q1乃至Q4は座標逆変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM(パルス幅変調)信号によって駆動される。その結果、巻線L1には電源1から電圧が印加される。この結果、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβが巻線L1に供給される。即ち、PWMインバータ506は、電流供給手段として機能する。なお、本実施形態においては、PWMインバータはフルブリッジ回路を有しているが、PWMインバータ506はハーフブリッジ回路等を有していてもよい。また、フルブリッジ回路は、モータ509のA相とB相とのそれぞれに対応して設けられている。なお、本実施形態では、電源はA相、B相にそれぞれ一つずつ設けられているが、この限りではない。また、図3及び図5においては、モータの巻線はモータ制御装置157の内部に設けられているように示されているが、実際には、巻線はモータ509に設けられている。即ち、巻線はモータ制御装置157の外部に設けられている。
次に、回転位相θの決定方法について説明する。回転子402の回転位相θの決定には、回転子402の回転によってモータ509のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧Eα及びEβの値が用いられる。誘起電圧の値は誘起電圧決定器512によって決定(算出)される。具体的には、誘起電圧Eα及びEβは、A/D変換器510から誘起電圧決定器512に入力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器505から誘起電圧決定器512に入力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって決定される。
Eα=Vα−R*iα−L*diα/dt (7)
Eβ=Vβ−R*iβ−L*diβ/dt (8)
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。R及びLの値は使用されているモータ509に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置157に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
誘起電圧決定器512によって決定された誘起電圧Eα及びEβは位相決定器513に出力される。
位相決定器513は、誘起電圧決定器512から出力された誘起電圧Eαと誘起電圧Eβとの比に基づいて、次式によってモータ509の回転子402の回転位相θを決定する。
θ=tan^−1(−Eβ/Eα) (9)
なお、本実施形態においては、位相決定器513は、式(9)に基づく演算を行うことによって回転位相θを決定したが、この限りではない。例えば、誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβと誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβとに対応する回転位相θとの関係を示すテーブルをROM151b等に記憶しておき、前記テーブルを参照することによって回転位相θを決定してもよい。
前述の如くして得られた回転子402の回転位相θは、減算器101、座標逆変換器505及び座標変換器511に入力される。
その後、モータ制御装置157はこの制御を繰り返し行う。
前述の如くして、本実施形態におけるベクトル制御では、指令位相θ_refと回転位相θとの偏差が小さくなるように、回転座標系における電流値を制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する。ベクトル制御を行うと、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。また、位相フィードバック制御を行っているため、回転子の回転位相が所望の位相になるように制御することができる。したがって、画像形成装置において、記録媒体への画像形成を適切に行うために回転位相を精度よく制御する必要がある負荷(例えば、レジストレーションローラ等)を駆動するモータに位相フィードバック制御を用いたベクトル制御を適用する。この結果、記録媒体への画像形成を適切に行うことができる。
なお、本実施形態におけるベクトル制御では、前述した位相フィードバック制御を行うことによってモータ509を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、回転子402の回転速度ωをフィードバックしてモータ509を制御する構成であっても良い。具体的には、図6に示すように、CPU151aが回転子の目標速度を表す指令速度ω_refを出力する。また、モータ制御装置内部に速度制御器500及び速度決定器515を設け、速度制御器500が回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_refを生成して出力する構成とする。なお、速度決定器515は、位相決定器513から出力された回転位相θの時間変化に基づいて回転速度ωを決定する。速度の決定には、次式(10)が用いられるものとする。
ω=dθ/dt (10)
[弱め界磁]
<従来の弱め界磁>
次に、弱め界磁について説明する。前述したように、モータの各相の巻線には、回転子が回転することによって誘起電圧が発生する。モータの巻線に誘起電圧が発生すると、モータの巻線に印加できる電圧(以下、使用可能電圧と称する)が小さくなってしまう。具体的には、例えば、電源1から出力される電圧値がVccである場合、使用可能電圧Vα´及びVβ´は、各相の巻線に誘起電圧が発生することに起因して、以下の式(11)及び(12)に示す値に制限されてしまう。
Vα´=Vcc−eα (11)
Vβ´=Vcc−eβ (12)
ここで、eαは正弦波状に変化する誘起電圧Eαの振幅を示す。また、eβは正弦波状に変化する誘起電圧Eβの振幅を示す。
また、回転子が回転することによって各相の巻線に発生する誘起電圧の振幅eは、回転子の回転速度が大きくなればなるほど大きくなる。即ち、回転子の回転速度が速くなればなるほど、使用可能電圧は小さくなる。使用可能電圧が小さくなると、回転子に与えることができるトルク(以下、出力可能トルクと称する)も小さくなってしまう。
誘起電圧は、巻線を貫く磁束が変化することに伴って発生する。したがって、回転子の磁束よりも弱い磁束が巻線を貫くように励磁電流成分を制御することによって、巻線に発生する誘起電圧の大きさが増大することを抑制することができる。具体的には、励磁電流成分を負の値に制御することによって、見かけ上、回転子の磁束の強度が弱め、回転子の磁束よりも弱い磁束が巻線を貫くようにする。この結果、巻線に発生する誘起電圧の大きさが増大することを抑制することができ、使用可能電圧Vα´及びVβ´が小さくなることを抑制することができる。その結果、出力可能トルクが小さくなることを抑制することができる。以上のような手法は、弱め界磁と称される。なお、励磁電流成分が負の値であって且つ絶対値が大きいほど、出力可能トルクが小さくなることをより抑制することができる。
前述したように、回転子が所定速度で回転する期間において、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間における負荷トルクは搬送ローラが記録媒体を狭持していない期間における負荷トルクよりも大きい。したがって、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間における負荷トルクが出力可能トルクを超えないように励磁電流成分の値が設定される。
励磁電流成分の値の絶対値が大きいほど、モータの巻線に供給される電流は大きくなる。したがって、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間における負荷トルクが出力可能トルクを超えないように励磁電流成分の値が設定されると、搬送ローラが記録媒体を狭持していない期間においては、不要な電流が巻線に供給されてしまう。この結果、消費電力が増大してしまう。
そこで、本実施形態では、以下の構成がモータ制御装置157に適用されることによって、モータの制御を効率的に行うことができる。
<弱め界磁を行う条件1>
次に、本実施形態における弱め界磁について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置157は、以下の2つの条件を満たす場合に弱め界磁を行う。
まず、弱め界磁を行うための1つ目の条件について説明する。
図7は、出力可能トルクTと回転子の回転速度ωとの関係を示す図である。図7には、d軸電流を0に制御した場合のトルクT−回転速度ω特性(破線)とd軸電流を負の値に制御した場合のトルクT−回転速度ω特性(実線)が示されている。なお、図7に示すトルク−回転数特性は、本実施形態における一例であり、これに限定されるものではない。
図7に示すように、回転速度ωがω0より小さい(ω<ω0)場合は、d軸電流を負の値に制御する場合における出力可能トルクTよりもd軸電流を0に制御する場合における出力可能トルクTのほうが大きい。即ち、回転速度ωがω0より小さい(ω<ω0)場合は、弱め界磁を行う場合よりも弱め界磁を行わない場合のほうがより大きなトルクを回転子に与えることができる。
また、図7に示すように、回転速度ωがω0より大きい(ω>ω0)場合は、d軸電流を0に制御する場合における出力可能トルクTよりもd軸電流を負の値に制御する場合における出力可能トルクTのほうが大きい。即ち、回転速度ωがω0より大きい(ω>ω0)場合は、弱め界磁を行わない場合よりも弱め界磁を行う場合のほうがより大きなトルクを回転子に与えることができる。
以上のように、回転速度ωがω0より小さい(ω<ω0)場合は、弱め界磁を行う場合よりも弱め界磁を行わない場合のほうがより大きなトルクを回転子に与えることができる。また、回転速度ωがω0より大きい(ω>ω0)場合は、弱め界磁を行わない場合よりも弱め界磁を行う場合のほうがより大きなトルクを回転子に与えることができる。
したがって、本実施形態においては、回転子の回転速度がω0以上であることを、弱め界磁を行う1つ目の条件とする。
図3に示すように、本実施形態においては、CPU151aは、指令位相θ_refに基づいて、式(10)を用いて指令速度ω_refの代わりとなる回転速度ω_ref´を算出し、界磁制御器540に出力する。
界磁制御器540は、回転速度ω_ref´が以下の式(13)を満たすか否かを判断する。なお、速度閾値ωth(=ω0)は、メモリ540aに記憶されているものとする。
ω_ref´>ωth (13)
<弱め界磁を行う条件2>
しかしながら、式(13)のみを、弱め界磁を行う条件としてしまうと、前述したように、搬送ローラが記録媒体を狭持していない期間においては、不要な電流を巻線に供給してしまう。この結果、消費電力が増大してしまう。
次に、弱め界磁を行うための2つ目の条件について説明する。
前述したように、回転子が所定速度で回転する期間において、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間における負荷トルクは搬送ローラが記録媒体を狭持していない期間における負荷トルクよりも大きい。即ち、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間においては、搬送ローラが記録媒体を狭持していない期間よりも大きな出力可能トルクが必要となる。
図8は、弱め界磁が行われる期間を説明する図である。図1において説明したように、記録媒体が搬送される搬送方向において搬送ローラ307の上流側の所定位置には、記録媒体の有無を検知するシートセンサ331が設けられている。また、前記搬送方向において搬送ローラ307の下流側の第2所定位置には、記録媒体の有無を検知するシートセンサ330が設けられている。CPU151aには、シートセンサ330、331の検知結果が入力される。本実施形態においては、記録媒体の先端をシートセンサ331が検知すると弱め界磁が開始される。また、記録媒体の後端がシートセンサ330を通過すると(シートセンサ330が記録媒体を検知しなくなると)弱め界磁が終了される。即ち、搬送ローラが記録媒体を狭持する期間においてのみ弱め界磁が行われ、搬送ローラが記録媒体を狭持しない期間においては、弱め界磁は行われない。この結果、励磁電流成分の値が0以外の値に設定されることに起因して消費電力が増大することを抑制することができる。
<弱め界磁を行う具体的な方法>
次に、弱め界磁を行う具体的な方法について説明する。
図9は、本実施形態における弱め界磁制御のタイムチャートを示す図である。界磁制御器540は、回転子の回転速度ω_ref´が速度閾値ωth以上の所定速度である期間のうち、シートセンサ331が記録媒体の先端を検知するまでの期間(シートセンサ331が‘H’である期間)は、d軸電流指令値として0Aを出力する。即ち、弱め界磁は行われない。
その後、回転速度ω_ref´が所定速度である状態で、シートセンサ331が記録媒体の先端を検知する(シートセンサ331が‘H’から‘L’になる)と、CPU151aは、d軸電流指令値の値を切り替える切替信号を界磁制御器540に出力する。界磁制御器540は、切替信号に応じて、出力するd軸電流指令値id_refを0Aから徐々に変化させることによって負の値(例えば−0.3A)に切り替える。この結果、弱め界磁が行われる。なお、設定されるid_refの値が負の値であり且つ絶対値が大きすぎると、回転子である永久磁石から発生する磁界を過剰に弱めてしまい、結果として、回転子に発生させるトルクが小さくなってしまう。また、設定されるid_refの値が負の値であり且つ絶対値が0に近い値であると、回転子である永久磁石から発生する磁界を弱めることができず、結果として、巻線に発生する誘起電圧を低減することができなくなってしまう。前記負の値は、以上のようなことを考慮して予め実験等に基づいて決定されている。また、d軸電流指令値id_refは、メモリ540aに記憶されており、界磁制御器540はメモリ540aに記憶されている値をd軸電流指令値id_refとして出力する。
そして、搬送ローラ307のニップ部に記録媒体の先端が突入し、記録媒体が搬送ローラ307によって搬送されると、シートセンサ330が記録媒体の先端を検知する(シートセンサ330が‘H’から‘L’になる)。更に記録媒体が搬送され、記録媒体の後端がシートセンサ330を通過する(シートセンサ330が‘L’から‘H’になる)と、CPU151aは、切替信号を界磁制御器540に出力する。界磁制御器540は、切替信号に応じて、出力するd軸電流指令値id_refを負の値(例えば−0.3A)から徐々に変化させることによって0Aに切り替える。この結果、弱め界磁が終了される。なお、本実施形態においては、d軸電流指令値id_refを徐々に変化させることによって切り替えているが、これに限定されるものではなく、例えば、0Aから−3Aに直接切り替えても良い。また、−3Aから0Aに直接切り替えても良い。
なお、搬送ローラ307の駆動が再開される際には、界磁制御器540は、d軸電流指令値id_refとして0Aを出力する。その後、CPU151aは、前述した方法で、弱め界磁制御を行う。また、前述したように、記録媒体が搬送ローラ307のニップ部に狭持されている状態で搬送ローラ307の駆動が停止される場合は、界磁制御器540が出力するd軸電流指令値が負の値に設定された状態で搬送ローラ307の駆動が停止されてしまう。この場合、CPU151aは、搬送ローラ307の駆動が再開される際に切替信号を界磁制御器540に出力する。この結果、界磁制御器540からd軸電流指令値として0Aが出力される状態で搬送ローラ307の駆動を再開することができる。
また、シートセンサ331は、記録媒体の先端を検知してから記録媒体の先端が搬送ローラ307のニップ部に突入するまでにd軸電流指令値の切り替えを行うことができるような位置であって、可能な限り搬送ローラ307に近い位置に設けられるものとする。また、シートセンサ330は、可能な限り搬送ローラ307に近い位置に設けられるものとする。この結果、弱め界磁を行う期間を可能な限り短縮することができ、消費電力が増大することを抑制することができる。
図10は、弱め界磁制御を行う方法を説明するフローチャートである。以下、図10を用いて、弱め界磁制御を行う方法を説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aによって実行される。
まず、S1001において、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動制御を開始する。enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を禁止する。即ち、モータ制御装置157によるモータ509の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を許可して、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動制御を行う。
次に、S1002において、モータ制御装置157はベクトル制御を行う。その後、S1003において、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。また、S1003おいて、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘H’を出力した場合は、モータ制御装置157は処理をS1004に進める。
その後、S1004において、界磁制御器540は、d軸電流指令値id_refとして0Aを出力する。即ち、弱め界磁は行われない。
次に、S1005において、回転速度ω_ref´が速度閾値ωth未満である場合は、処理は再びS1002に戻り、ベクトル制御が継続される。なお、弱め界磁は行われない。
また、S1005において、回転速度ω_ref´が速度閾値ωth以上である場合は、処理はS1006に進む。
S1006において、シートセンサ331が記録媒体の先端を検知すると、S1007において、CPU151aは、切替信号を界磁制御器540に出力する。界磁制御器540は、切替信号に応じて、出力するd軸電流指令値id_refを0Aから負の値(例えば−0.3A)に切り替える。この結果、弱め界磁が行われる。
その後、搬送ローラ307によって記録媒体が搬送され、S1008において、シートセンサ330が記録媒体の先端を検知する。更に記録媒体が搬送され、S1009において、記録媒体の後端がシートセンサ330を通過すると、S1010において、CPU151aは、切替信号を界磁制御器540に出力する。界磁制御器540は、切替信号に応じて、出力するd軸電流指令値id_refを負の値(例えば−0.3A)から0Aに切り替える。この結果、弱め界磁が終了される。その後、処理は再びS1002に戻り、ベクトル制御が継続される。
以降、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力するまで、モータ制御装置157は前述した制御を繰り返し行い、モータ509を制御する。
以上のように、本実施形態においては、弱め界磁を行う必要がある期間にのみ弱め界磁を行う。具体的には、回転子の回転速度ω_ref´が速度閾値ωth以上の所定速度である期間のうち、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間においてのみ弱め界磁を行う。なお、本実施形態においては、回転子の回転速度が所定速度である状態で、記録媒体の先端が該搬送ローラのニップ部に到達し、記録媒体の後端が前記ニップ部を抜けるように、予め画像形成動作のシーケンスで定められている。即ち、回転子が加速している最中及び減速している最中に記録媒体が搬送ローラに狭持されることが無いように予め画像形成動作のシーケンスで定められている。したがって、本実施形態においては、回転子の回転速度が所定速度よりも遅い速度である期間、即ち、回転子が加速している最中及び減速している期間は、d軸電流指令値id_refは0であるものとする。この結果、搬送ローラを駆動する期間における弱め界磁を行う期間を短縮することができ、消費電力が増大することを抑制することができる。即ち、回転子を所定速度で回転させる期間に所定速度に対応する所定のd軸電流値を設定することに起因して消費電力が増大することを抑制することができる。
なお、本実施形態においては、メモリ540aに記憶されているd軸電流指令値id_refは0Aと−3.0Aであったが、これに限定されるものではなく、3個以上の値が記憶されていても良い。この場合、例えば、どの値を用いるかを示す信号をCPU151aが界磁制御器540に出力し、界磁制御器540は信号に基づいて、出力するd軸電流指令値id_refを切り替える。
また、本実施形態においては、記録媒体の後端が搬送ローラ307のニップ部を抜けると搬送ローラ307の駆動を停止する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、搬送ローラ307によって搬送された記録媒体が、搬送ローラ307よりも下流側に設けられた搬送ローラによって搬送されるようになったら、搬送ローラ307の駆動を停止する構成であっても良い。即ち、記録媒体が搬送ローラ307のニップ部に狭持されている状態であっても搬送ローラ307の駆動を停止する構成であっても良い。この場合、搬送ローラ307は、搬送ローラ307よりも下流側に設けられた搬送ローラによって搬送される記録媒体に連れ回る構成となる。なお、本実施形態においては、搬送ローラ307の駆動を停止する際には、モータ509の駆動を停止する方法を用いるが、クラッチを切ることによってモータ509の駆動力を搬送ローラ307に伝達しないようにする方法を用いても良い。
〔第2実施形態〕
画像形成装置及びモータ制御装置の構成が第1実施形態と同様である部分については、説明を省略する。
第1実施形態において弱め界磁を行う際には、d軸電流指令値id_refを紙種に関係なく−3.0Aとした。しかしながら、記録媒体の先端が搬送ローラのニップ部に突入する際に回転子にかかる負荷トルクの増大幅や記録媒体を搬送する際に回転子にかかる負荷トルクは、紙種によって異なる。具体的には、例えば、普通紙が搬送される場合に回転子にかかる負荷トルクは厚紙が搬送される場合に回転子にかかる負荷トルクよりも小さい。
したがって、d軸電流指令値id_refを紙種に関係なく設定すると、例えば、厚紙が搬送される場合には、弱め界磁を行っているにもかかわらず回転子にかかる負荷トルクが出力可能トルクを超えてしまう可能性がある。また、d軸電流指令値id_refを紙種に関係なく設定すると、例えば、普通紙が搬送される場合には、本来普通紙が搬送される際に必要なd軸電流の大きさよりも大きい電流を巻線に供給してしまう可能性がある。即ち、消費電力が増大してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、紙種に応じて、d軸電流指令値id_refの値を変更する。なお、弱め界磁を行う条件は、第1実施形態において説明した条件と同様であるため説明を省略する。
図11は、本実施形態におけるモータ制御装置157の構成を示すブロック図である。
本実施形態における界磁制御器540には、紙種とd軸電流指令値id_refとの対応関係を記憶するメモリ540aが設けられている。なお、記録媒体の坪量が大きくなればなるほど、d軸電流指令値id_refは負の値であり且つ絶対値が大きな値となる。具体的には、例えば、普通紙に対応するd軸電流指令値id_refを−2.0Aとし、厚紙に対応するd軸電流指令値id_refを−4.0Aとする。なお、紙種とd軸電流指令値id_refとの対応関係は、予め実験等に基づいて決定されているものとする。
図2において説明したように、CPU151aは、ユーザが設定した紙種の情報を操作部152から受信する。CPU151aは、受信した紙種の情報を界磁制御器540に出力する。界磁制御器540は、受信した紙種の情報と前記対応関係とに基づいて、出力するd軸電流指令値id_refを決定する(切り替える)。
以上のように、本実施形態においては、紙種に応じて、d軸電流指令値id_refの値を変更する。この結果、弱め界磁を行っているにもかかわらず回転子にかかる負荷トルクが出力可能トルクを超えてしまったり、必要なd軸電流の大きさよりも大きい電流を巻線に供給してしまうことによって消費電力が増大してしまったりすることを抑制することができる。
なお、第1実施形態及び第2実施形態においては、シートセンサ330、331の検知結果に基づいて、弱め界磁の制御を行ったが、この限りではない。例えば、搬送ローラ307の駆動を開始してから記録媒体の先端が搬送ローラのニップ部に突入する前の所定のタイミングまでの所定時間T1が経過すると弱め界磁を開始する。また、搬送ローラ307の駆動を開始してから記録媒体の後端が搬送ローラのニップ部を抜けた後の所定のタイミングまでの所定時間T2が経過すると弱め界磁を終了する。以上のような構成であっても良い。なお、前記所定のタイミングは、予め設定されている画像形成装置の動作シーケンスに基づいて決定されるものとする。また、モータに出力されるパルス数に基づいて前記所定のタイミングを決定しても良い。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、d軸電流指令値id_refの値は、予め実験等によって得られた値であるものとしたが、この限りではない。例えば、界磁制御器540が、回転子の回転速度ω_ref´に基づいてd軸電流指令値id_refの値を変える構成であっても良い。具体的には、界磁制御器540は、回転速度ω_ref´が大きければ大きいほどd軸電流指令値id_refの値をより小さく設定する構成であっても良い。この結果、巻線に発生する誘起電圧が回転速度の増大に伴って大きくなることを抑制することができる。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、回転子の回転速度が速度閾値以上の所定速度である期間のうち、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間以外の期間においてはd軸電流指令値を0Aとしたが、0A以外の値に設定しても良い。具体的には、回転子の回転速度が速度閾値以上の所定速度である期間のうち、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間において設定されているd軸電流指令値としての負の値よりも大きい値であればよい。即ち、回転子の回転速度が速度閾値以上の所定速度である期間のうち、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間以外の期間において巻線を貫く磁束が、搬送ローラが記録媒体を狭持している期間において巻線を貫く磁束よりも強ければよい。但し、可能な限り0Aに近い値に設定されるほうが効果的に消費電力の増大を抑制することができる。
また、弱め界磁を行う場合におけるd軸電流指令値は、弱め界磁を行うことによって巻線に発生する誘起電圧が小さくなったとしても、回転子の回転位相を精度よく決定することができるような値に設定されるものとする。
第1実施形態及び第2実施形態において説明した弱め界磁制御の構成は、搬送ローラ307に限らず、その他のローラ(例えば、搬送ローラ306、322等)にも適用できる。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、速度閾値ωthをω0に設定したが、これに限定されるものではない。例えば、速度閾値ωthをω0よりも小さい値に設定しても良いし、速度閾値ωthをω0よりも大きい値に設定しても良い。