以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲が以下の実施の形態に限定される趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、モータ制御装置が画像形成装置に設けられる場合について説明するが、モータ制御装置が設けられるのは画像形成装置に限定されるわけではない。例えば、記録媒体や原稿等のシートを搬送するシート搬送装置等にも用いられる。
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられるシート搬送装置を有するモノクロの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置の形式はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
以下に、図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、原稿読取装置200及び画像印刷装置301を有する。
<原稿読取装置>
原稿読取装置200には、原稿を読取位置に給送する原稿給送装置201が設けられている。原稿給送装置201の原稿積載部2に積載された原稿Pは、ピックアップローラ3によって1枚ずつ給送され、その後、給紙ローラ4によって搬送される。給紙ローラ4と対向する位置には、給紙ローラ4に圧接する分離ローラ5が設けられている。分離ローラ5は、該分離ローラ5に所定のトルク以上の負荷トルクがかかると、回転する構成となっており、2枚重なった状態で給送された原稿を分離する機能を有する。
ピックアップローラ3と給紙ローラ4は揺動アーム12によって連結されている。揺動アーム12は、給紙ローラ4の回転軸を中心にして回動できるように給紙ローラ4の回転軸によって支持されている。
原稿Pは、給紙ローラ4等によって搬送されて、排紙ローラ11によって排紙トレイ10へ排紙される。なお、図1に示すように、原稿積載部2には、原稿積載部2に原稿が積載されているか否かを検知する原稿セットセンサSS1が設けられている。また、原稿が通過する搬送路には、原稿の先端を検知する(原稿の有無を検知する)シートセンサSS2が設けられている。
原稿読取装置201には、搬送される原稿の第1面の画像を読み取る原稿読取部16が設けられている。原稿読取部16に読み取られた画像情報は、画像印刷装置301へ出力される。
また、原稿読取装置200には、搬送される原稿の第2面の画像を読み取る原稿読取部17が設けられている。原稿読取部17に読み取られた画像情報は、原稿読取部16において説明した方法と同様にして画像印刷装置301へ出力される。
前述の如くして、原稿の読取が行われる。即ち、原稿給送装置201及び読取装置202は、原稿読取装置として機能する。
また、原稿の読取モードとして、第1読取モードと第2読取モードがある。第1読取モードは、上述した方法で搬送される原稿の画像を読み取るモードである。第2読取モードは、読取装置202の原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を、一定速度で移動する原稿読取部16によって読み取るモードである。通常、シート状の原稿の画像は第1読取モードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿の画像は第2読取モードで読み取られる。
画像印刷装置301の内部には、シート収納トレイ302、304が設けられている。シート収納トレイ302、304には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ302にはA4サイズの普通紙が収納され、シート収納トレイ304にはA4サイズの厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等は記録媒体に含まれる。
シート収納トレイ302に収納された記録媒体は、給紙ローラ303によって給送されて、搬送ローラ306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。また、シート収納トレイ304に収納された記録媒体は、給紙ローラ305によって給送されて、搬送ローラ307及び306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。
原稿読取装置200から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含む光走査装置311に入力される。また、感光ドラム309は、帯電器310によって外周面が帯電される。感光ドラム309の外周面が帯電された後、原稿読取装置200から光走査装置311に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置311からポリゴンミラー及びミラー312、313を経由し、感光ドラム309の外周面に照射される。この結果、感光ドラム309の外周面に静電潜像が形成される。なお、感光ドラムの帯電には、例えば、コロナ帯電器や帯電ローラを用いた帯電方法が用いられる。
続いて、静電潜像が現像器314内のトナーによって現像され、感光ドラム309の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム309に形成されたトナー像は、感光ドラム309と対向する位置(転写位置)に設けられた転写帯電器315によって記録媒体に転写される。この転写タイミングに合わせて、レジストレーションローラ308は記録媒体を転写位置へ送り込む。
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト317によって定着器318へ送り込まれ、定着器318によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319、324によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ319、搬送ローラ320、及び反転ローラ321によって、反転パス325へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ322、323によって再度レジストレーションローラ308へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ319、324によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
また、第1面に画像形成された記録媒体がフェースダウンで画像形成装置100の外部へ排紙される場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319を通って搬送ローラ320へ向かう方向へ搬送される。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ320のニップ部を通過する直前に搬送ローラ320の回転が反転することによって、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体が排紙ローラ324を経由して、画像形成装置100の外部へ排出される。
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。なお、本発明における負荷とはモータによって駆動される対象物である。例えば、給紙ローラ204、303、305、レジストレーションローラ308及び排紙ローラ319等の各種ローラ(搬送ローラ)や感光ドラム309、搬送ベルト317、原稿読取部16等は本発明における負荷に対応する。本実施形態のモータ制御装置は、これら負荷を駆動するモータに適用することができる。
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。システムコントローラ151は、図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部112、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、センサ類159、ACドライバ160と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御装置157に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが記憶される。
システムコントローラ151は、画像処理部112における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部112に送信する。更に、システムコントローラ151は、センサ類159からの信号を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器310、現像器314、転写帯電器315等)に必要な電圧を供給する。なお、センサ類159には、搬送ローラによって搬送される記録媒体を検知するセンサ等が含まれる。
モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、負荷を駆動するモータ509を制御する。なお、図2においては、画像形成装置のモータとしてモータ509のみが記載されているが、実際には、画像形成装置には複数個のモータが設けられている。また、1個のモータ制御装置が複数個のモータを制御する構成であっても良い。更に、図2においては、モータ制御装置が1個しか設けられていないが、実際には、複数個のモータ制御装置が画像形成装置に設けられている。
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいてACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器318に含まれる。
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、ユーザが設定した情報を操作部152から受信し、ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成動作の進行状況、原稿読取装置201及び画像印刷装置301におけるシートのジャムや重送等に関する情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。
前述の如くして、システムコントローラ151は画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。
[モータ制御装置]
次に、本実施形態におけるモータ制御装置について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置は、第1制御モードとしてのベクトル制御と第2制御モード、第3制御モードとしての定電流制御とのいずれの制御方法でもモータを制御することができる。
<ベクトル制御>
まず、図3及び図4を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157がベクトル制御を行う方法について説明する。なお、以下の説明におけるモータには、モータの回転子の回転位相を検出するためのロータリエンコーダなどのセンサは設けられていないものとする。
図3は、A相(第1相)とB相(第2相)との2相から成るステッピングモータ(以下、モータと称する)509と、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。図3では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸であるα軸と、B相の巻線に対応した軸であるβ軸とが定義されている。また、図3では、回転子402に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向に沿ってd軸が定義され、d軸から反時計回りに90度進んだ方向(d軸に直交する方向)に沿ってq軸が定義されている。α軸とd軸との成す角度はθと定義され、回転子402の回転位相は角度θによって表される。ベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。具体的には、ベクトル制御では、巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの、回転座標系における電流成分であって、回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)と巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)とが用いられる。
ベクトル制御とは、回転子の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御方法である。また、回転子の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する方法もある。
図4は、モータ509を制御するモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。なお、モータ制御装置157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
図4に示すように、モータ制御装置157は、定電流制御を行う定電流制御器700、ベクトル制御を行うベクトル制御器701を有する。
モータ制御装置157は、ベクトル制御を行う回路として、位相制御器502、電流制御器503、504、座標逆変換器505、座標変換器511、モータの巻線に駆動電流を供給するPWMインバータ506等を有する。座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系からq軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、巻線に流れる駆動電流は、回転座標系における電流値であるq軸成分の電流値(q軸電流)とd軸成分の電流値(d軸電流)とによって表される。なお、q軸電流は、モータ509の回転子402にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータ509の巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流に相当する。モータ制御装置157は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。この結果、モータ制御装置157は、回転子402にかかる負荷トルクに応じてq軸電流を制御することによって、回転子402が回転するために必要なトルクを効率的に発生させることができる。即ち、ベクトル制御においては、図3に示す電流ベクトルの大きさは、回転子402にかかる負荷トルクに応じて変化する。
モータ制御装置157は、モータ509の回転子402の回転位相θを後述する方法により決定し、その結果に基づいてベクトル制御を行う。CPU151aは、モータ509の回転子402の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、指令位相θ_refをモータ制御装置157へ出力する。なお、実際には、CPU151aはモータ制御装置157に対してパルス信号を出力しており、パルスの数が指令位相に対応する。また、パルスの周波数は目標速度に対応し、目標速度は所定周期で変化する。指令位相θ_refは、例えば、モータ509の目標速度に基づいて生成される。
減算器101は、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差を演算して出力する。
位相制御器502は、偏差Δθを周期T(例えば、200μs)で取得する。位相制御器502は、比例制御(P)、積分制御(I)、微分制御(D)に基づいて、減算器101から出力される偏差が小さくなるように、目標値としてのq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、P制御、I制御、D制御に基づいて減算器101から出力される偏差が0になるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。なお、P制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、I制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間積分に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、D制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間変化に比例する値に基づいて制御する制御方法である。本実施形態における位相制御器502は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、位相制御器502は、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しても良い。なお、回転子402に永久磁石を用いる場合、通常は巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸電流指令値id_refは0に設定されるが、これに限定されるものではない。
モータ509のA相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。また、モータ509のB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。なお、電流検出器507、508が電流を検出する周期は、例えば、位相制御器502が偏差Δθを取得する周期T以下の周期(例えば、25μs)である。
A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、図3に示す電流ベクトルの位相θeを用いて次式によって表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義される。また、Iは電流ベクトルの大きさを示す。
iα=I*cosθe (1)
iβ=I*sinθe (2)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511,517及び誘起電圧決定器512に入力される。
座標変換器511は、静止座標系における電流値iα及びiβを、次式によって、回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
id= cosθ*iα+sinθ*iβ (3)
iq=-sinθ*iα+cosθ*iβ (4)
ベクトル制御においては、位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refが切替スイッチ516aを介して減算器102に入力される。また、減算器102には座標変換器511から出力された電流値iqが入力される。減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、ベクトル制御においては、位相制御器502から出力されたd軸電流指令値id_refが切替スイッチ516aを介して減算器103に入力される。また、減算器103には座標変換器511から出力された電流値idが入力される。減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器504に出力する。なお、切替スイッチ516aについては、後に説明する。
電流制御器503は、PID制御に基づいて、減算器102から出力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vqを生成する。具体的には、電流制御器503は、減算器102から出力される偏差が0になるように駆動電圧Vqを生成して座標逆変換器505に出力する。
また、電流制御器504は、PID制御に基づいて、減算器103から出力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vdを生成する。具体的には、電流制御器504は、減算器103から出力される偏差が0になるように駆動電圧Vdを生成して座標逆変換器505に出力する。
なお、本実施形態における電流制御器503、504は、PID制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、電流制御器503、504は、PI制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しても良い。
座標逆変換器505は、電流制御器503、504から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
Vα=cosθ*Vd-sinθ*Vq (5)
Vβ=sinθ*Vd+cosθ*Vq (6)
座標逆変換器505は、逆変換された駆動電圧Vα及びVβを誘起電圧決定器512及びPWMインバータ506に出力する。
PWMインバータ506は、フルブリッジ回路を有する。フルブリッジ回路は座標逆変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM信号によって駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβを生成し、駆動電流iα及びiβをモータ509の各相の巻線に供給することによって、モータ509を駆動させる。なお、本実施形態においては、PWMインバータはフルブリッジ回路を有しているが、PWMインバータはハーフブリッジ回路等であっても良い。
次に、回転位相θを決定する構成について説明する。回転子402の回転位相θの決定には、回転子402の回転によってモータ509のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧Eα及びEβの値が用いられる。誘起電圧の値は誘起電圧決定器512によって決定(算出)される。具体的には、誘起電圧Eα及びEβは、A/D変換器510から誘起電圧決定器512に入力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器505から誘起電圧決定器512に入力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって決定される。
Eα=Vα-R*iα-L*diα/dt (7)
Eβ=Vβ-R*iβ-L*diβ/dt (8)
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。巻線レジスタンスR及び巻線インダクタンスLの値は使用されているモータ509に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置157に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
誘起電圧決定器512によって決定された誘起電圧Eα及びEβは位相決定器513に出力される。
位相決定器513は、誘起電圧決定器512から出力された誘起電圧Eαと誘起電圧Eβとの比に基づいて、次式によってモータ509の回転子402の回転位相θを決定する。
θ=tan^-1(-Eβ/Eα) (9)
なお、本実施形態においては、位相決定器513は、式(9)に基づく演算を行うことによって回転位相θを決定したが、この限りではない。例えば、位相決定器513は、ROM151b等に記憶されている、誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβと誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβとに対応する回転位相θとの関係を示すテーブルを参照することによって回転位相θを決定してもよい。
前述の如くして得られた回転子402の回転位相θは、減算器101、切替スイッチ516b及び座標変換器517に入力される。ベクトル制御が行われる場合は、回転位相θは切替スイッチ516bを介して座標逆変換器505、座標変換器511に入力される。なお、切替スイッチ516b及び座標変換器517については、後に説明する。
モータ制御装置157は、ベクトル制御を行う場合は、上述の制御を繰り返し行う。
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置157は、指令位相θ_refと回転位相θとの偏差が小さくなるように回転座標系における電流値を制御する位相フィードバック制御を用いたベクトル制御を行う。ベクトル制御を行うことによって、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。また、位相フィードバック制御を行うことによって、回転子の回転位相が所望の位相になるように回転子の回転位相を制御することができる。したがって、画像形成装置において、回転子の回転位相を精度よく制御する必要がある負荷(レジストレーションローラ等)を駆動するモータに位相フィードバック制御によるベクトル制御が適用されることによって、記録媒体への画像形成を適切に行うことができる。
<定電流制御>
次に、本実施形態における定電流制御を、従来の定電流制御と比較して説明する。
定電流制御においては、モータの動作シーケンスに基づいて予め決められた電流がモータの巻線に供給されることによって、巻線に流れる駆動電流が制御される。定電流制御においては、回転子にかかる負荷トルクの変動が起こったとしてもモータが脱調しないように、回転子の回転に必要と想定されるトルクに所定のマージンが加算されたトルクに対応する振幅を持った駆動電流が供給される。これは、定電流制御においては、決定(推定)された回転子の回転位相や回転速度に基づいて駆動電流の振幅が制御される構成は用いられない(フィードバック制御が行われない)ので、回転子にかかる負荷トルクに応じて駆動電流を調整できないからである。なお、電流の振幅が大きいほど回転子に与えるトルクは大きくなる。また、振幅は電流ベクトルの大きさに対応する。
図5は、従来の定電流制御の制御構成の例を示すブロック図である。まず、従来の定電流制御について説明する。
CPU151aは、定電流制御器801に指令位相θ_refを出力する。定電流制御器801は、CPU151aから出力された指令位相θ_refに対応した、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。なお、本実施形態においては、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refに対応する電流ベクトルの大きさは常に一定である。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器806、807によって検出される。検出された駆動電流は、A/D変換器809によってアナログ値からデジタル値へと変換され、式(1)及び(2)のように電流値iα及びiβとして表される。
減算器802には、A/D変換器809から出力された電流値iαと定電流制御器801から出力された電流指令値iα_refとが入力される。減算器802は、電流指令値iα_refと電流値iαとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器804に出力する。
また、減算器803には、A/D変換器809から出力された電流値iβと定電流制御器801から出力された電流指令値iβ_refとが入力される。減算器803は、電流指令値iβ_refと電流値iβとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器804に出力する。
電流制御器804は、入力される偏差が小さくなるように、PID制御に基づいて駆動電圧Vα及びVβを出力する。具体的には、電流制御器804は、入力される偏差が0に近づくように駆動電圧Vα及びVβを出力する。
PWMインバータ506は前述した方法で、入力された駆動電圧Vα及びVβに基づいて、モータ509の各相の巻線に駆動電流を供給してモータ509を駆動させる。
このように、従来の定電流制御では、静止座標系における電流値iα及びiβが用いられる。
次に、本実施形態における定電流制御について説明する。
図6は、本実施形態における定電流制御を説明する図である。図6に示すdc軸はα軸から反時計回りに指令位相θ_ref進んだ方向を示し、qc軸はdc軸から反時計回りに90度進んだ方向(dc軸に直交する方向)を示す。本実施形態における定電流制御では、指令位相θ_refを基準とした、dc軸とqc軸とで表される回転座標系が用いられる。具体的には、本実施形態における定電流制御では、図6に示すように、巻線に供給する駆動電流に対応する電流ベクトルの位相θeがθ_refに設定される。即ち、巻線に供給する駆動電流に対応する電流ベクトルの方向がdc軸と一致するように巻線に供給する駆動電流が生成される。なお、図6では、図3に示すようなモータの巻線等の構成は省略されている。
定電流制御器700は、q軸電流の指令値iq_ref及びd軸電流の指令値id_refを出力する。具体的には、定電流制御器700は、q軸電流の指令値iq_refを、例えば0に設定して出力する。また、定電流制御器700は、モータ509が加速している期間は、回転子の回転に必要と想定されるトルクに所定のマージンが加算されたトルクに対応する値に予め設定されたd軸電流の指令値id_refを出力する。また、定電流制御器700は、モータ509が減速している期間は後述する方法により設定されるd軸電流の指令値id_refを出力する。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出される。検出された駆動電流は、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換され、式(1)及び(2)のように電流値iα及びiβとして表される。
定電流制御においては、スイッチ516bを介して指令位相θ_refが座標変換器511に入力される。座標変換器511は、A/D変換器510から出力された静止座標系における電流値iα及びiβを、式(3)及び(4)によって、指令位相θ_refを基準とする回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
定電流制御においては、定電流制御器700から出力されたq軸電流指令値iq_refが切替スイッチ516aを介して減算器102に入力される。また、減算器102には座標変換器511から出力された電流値iqが入力される。減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、定電流制御においては、定電流制御器700から出力されたd軸電流指令値id_refが切替スイッチ516aを介して減算器103に入力される。また、減算器103には座標変換器511から出力された電流値idが入力される。減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器504に出力する。なお、切替スイッチ516aについては、後に説明する。
電流制御器503、504は、入力される偏差が小さくなるように、指令位相θ_refを基準とする回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを出力する。具体的には、電流制御器503は、504は、入力される偏差が0に近づくように駆動電圧Vq及びVdを出力する。
定電流制御においては、スイッチ516bを介して指令位相θ_refが座標逆変換器505に入力される。座標逆変換器505は、電流制御器503、504から出力された、指令位相θ_refを基準とする回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、式(5)及び(6)によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
座標逆変換器505は、逆変換された駆動電圧Vα及びVβをPWMインバータ506に出力する。PWMインバータ506は前述した方法でモータ509の各相の巻線に駆動電流を供給してモータ509を駆動させる。
このように、本実施形態における定電流制御では、指令位相θ_refを基準とした、dc軸とqc軸とで表される回転座標系が用いられる。
<ベクトル制御と定電流制御との切り替え>
次に、ベクトル制御と定電流制御との切り替え方法について説明する。図4に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157は、定電流制御とベクトル制御とを切り替える構成を有する。具体的には、モータ制御装置157は、制御切替器515、切替スイッチ516a、516b、遅延回路518を有する。なお、定電流制御が行われている期間中、ベクトル制御を行う回路も稼働している。即ち、定電流制御が行われている期間中、回転子の回転位相θを決定する回路は稼働している。一方、ベクトル制御が行われている期間中、定電流制御を行う回路は稼働していても良いし、停止していてもよい。
図4に示すように、制御切替器515には、CPU151aが指令位相θ_refに基づいて決定した目標速度に対応する回転速度ω_ref´が入力される。制御切替器515は、回転速度ω_ref´と所定値としての閾値ωthとを比較することによって、定電流制御とベクトル制御との切り替えを行い、更に、制御の切り替えを示す切替信号を出力する。
図7は、回転速度ω_ref´と閾値ωthとの関係、切替信号及び電流値iq´を示す図である。本実施形態における閾値ωthは、回転位相θが精度よく決定される回転速度のうち最も小さい回転速度に設定されるが、この限りではない。例えば、閾値ωthは、回転位相θが精度よく決定される回転速度のうち最も小さい回転速度以上の値に設定されてもよい。
図7に示すように、制御切替器515は、定電流制御が行われる場合は切替信号を‘H’にし、ベクトル制御が行われる場合は、切替信号を‘L’にする。制御切替器515から出力された切替信号は、図4に示すように、位相制御器502、遅延回路518及び定電流制御器700に入力される。なお、制御切替器515は、例えば、CPU151aが回転速度ω_ref´を出力する周期Tと同じ周期で切替信号を出力している。
遅延回路518は、切替信号が制御切替器515から出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を出力する。なお、所定の遅延時間は、切替信号が制御切替器515から出力されてから定電流制御器700が当該切替信号に応じてiq_ref及びid_refを出力するまでの時間よりも長い時間である。また、所定の遅延時間は、切替信号が制御切替器515から出力されてから位相制御器502が当該切替信号に応じてiq_ref及びid_refを出力するまでの時間よりも長い時間である。
定電流制御器700による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上(ω_ref´≧ωth)になると、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を定電流制御器700からベクトル制御器701に切り替えるように、切替信号を‘H’から‘L’に切り替えて出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替信号に応じて切替スイッチ516a、516bの状態が切り替わり、ベクトル制御器701によるベクトル制御が行われる。なお、閾値ωthは、例えば、ROM151bに予め保存されている。
また、定電流制御器700による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωthより小さい(ω_ref´<ωth)場合は、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替えない。即ち、制御切替器515は、モータ509が定電流制御器700によって制御される状態を維持するように、切替信号‘H’を出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が維持され、定電流制御器700による定電流制御が続行される。
ベクトル制御器701による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωthより小さくなると(ω_ref´<ωth)、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器をベクトル制御器701から定電流制御器700に切り替えるように切替信号を‘L’から‘H’に切り替えて出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が切り替わり、定電流制御器700による定電流制御が行われる。
また、ベクトル制御器701による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上(ω_ref´≧ωth)の場合は、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替えない。即ち、制御切替器515は、モータ509がベクトル制御器701によって制御される状態を維持するように、切替信号‘L’を出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が維持され、ベクトル制御器701によるベクトル制御が続行される。
<制御切替時の処理>
{定電流制御からベクトル制御への切り替え}
次に、モータの制御方法が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際にモータ制御装置157が行う処理について説明する。
図4に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157には、座標変換器517が設けられている。なお、以下の説明において、定電流制御が行われている期間中、座標変換器517は稼働している。また、ベクトル制御が行われている期間中も、座標変換器517は稼働している。また、以下の説明においては、定電流制御が行われている期間中、位相制御器502は稼働している。
図4に示すように、座標変換器517には、A/D変換器510から出力される電流値iα及びiβと位相決定器513から出力された回転位相θとが入力される。座標変換器517は、位相決定器513から出力された回転位相θに基づいて、電流値iα及びiβを式(3)及び(4)を用いて、回転位相θを基準とする回転座標系の電流値iq´及びid´に変換する。座標変換器517によって変換された電流値iq´は位相制御器502及び定電流制御器700に入力される。なお、座標変換器517は、電流検出器507,508が電流を検出する周期と同じ周期でiq´を出力する。
位相制御器502は、切替信号が‘H’から‘L’に切り替わると、当該切替信号が切り替わる直前に取得した電流値iq´に基づいて、積分制御(I)の初期値を設定する。
なお、切替信号が制御切替器515から出力されてから、遅延回路518が当該切替信号を遅延させる所定の遅延時間は、位相制御器502が積分制御(I)の初期値を設定する処理を行う時間より長く、切替信号が制御切替器515から出力される周期より短い時間である。
以上のように、本実施形態では、定電流制御の実行中に検出した電流値に基づいて、積分制御(I)の初期値を設定する。この結果、モータの制御が切り替わる直前に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクと、モータの制御が切り替わった直後に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクとに差異が生じることを抑制することができる。この結果、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に、モータの回転速度が変動してしまうことを抑制することができる。
{ベクトル制御から定電流制御への切り替え}
次に、モータの制御方法が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際にモータ制御装置157が行う処理について説明する。
前述したように、モータの制御がベクトル制御から定電流制御に切り替わる際には、瞬間的にモータの回転速度が変動する可能性がある。これは、モータの制御が切り替わる直前に回転子に発生するトルクとモータの制御が切り替わった直後に回転子に発生するトルクとに差異が生じてしまうためである。
そこで、本実施形態では、以下の構成がモータ制御装置157に適用されることによって、モータの制御が不安定になることを抑制する。
図4に示すように、座標変換器517によって変換された電流値iq´は定電流制御器700にも入力される。以下に、電流値iq´に基づいて定電流制御器700がd軸電流指令値id_refを設定する方法を説明する。
図4に示すように、定電流制御器700は、座標変換器517から出力された電流値iq´を記憶するメモリ700aを有する。定電流制御器700は、座標変換器517から電流値iq´が出力される毎に当該電流値iq´をメモリ700aに記憶する。定電流制御器700は、メモリ700aに記憶されている電流値iq´のうち、モータ509が一定速度で駆動されている期間の所定タイミングにおける電流値iq´_rateとモータ509が加速している期間の所定タイミングにおける電流値iq´_accとに基づいて、d軸電流指令値id_refを設定する。具体的には、定電流制御器700は、例えば、以下の式(10)に基づいてd軸電流指令値id_refを設定する。
id_ref=iq´_rate―(iq´_acc-iq´_rate) (10)
なお、切替信号が制御切替器515から出力されてから、遅延回路518が当該切替信号を遅延させる所定の遅延時間は、定電流制御器700がd軸電流指令値id_refを設定する処理を行う時間より長く、切替信号が制御切替器515から出力される周期より短い時間である。
図8は、モータ制御装置157によるモータの制御方法を示すフローチャートである。以下に、図8を用いて、本実施形態におけるモータ509の制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aからの指示を受けたモータ制御装置157によって実行される。
まず、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動を開始する。enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を禁止する。即ち、モータ制御装置157によるモータ509の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を許可して、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の制御を行う。
次に、S1001において、制御切替器515は、モータ509の駆動が定電流制御器517によって制御される状態になるように切替信号‘H’を出力する。その結果、定電流制御器700による定電流制御が行われる。
その後、S1002において、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。
また、S1002おいて、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘H’を出力している場合は、モータ制御装置157は処理をS1003に進める。
次に、S1003において、回転速度ω_ref´が閾値ωth未満である場合は、処理は再びS1001に戻る。即ち、定電流制御器700による定電流制御が維持される。
また、S1003において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上である場合は、S1004において、制御切替器515は、切替信号を‘H’から‘L’に切り替えて出力する。
その後、S1005において、位相制御器502は、切替信号が切り替わる前に取得した電流値iq´に基づいて積分制御の初期値を設定する。
そして、S1006において、所定の遅延時間が経過すると、S1007において、遅延回路518から切替スイッチ516a、516bに切替信号‘L’が出力される。この結果、ベクトル制御器701によるベクトル制御が行われる。
S1008において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上である場合は、処理は再びS1007に戻り、ベクトル制御器701によるベクトル制御が続行される。
また、S1008において、回転速度ω_ref´が閾値ωthより小さい場合は、処理はS1009において、制御切替器515は、切替信号を‘L’から‘H’に切り替えて出力する。
その後、S1010において、定電流制御器700は、メモリ700aに記憶されている電流値iq´に基づいてid_refを設定する。
そして、S1011において、所定の遅延時間が経過すると、S1012において、遅延回路518から切替スイッチ516a、516bに切替信号‘H’が出力される。この結果、定電流制御器700による定電流制御が行われる。
以降、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力するまで、モータ制御装置157は上述の制御を繰り返し行う。なお、ベクトル制御中であっても、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータの制御を中止する。
以上のように、本実施形態では、ベクトル制御が実行されている期間における電流値iq´に基づいて、定電流制御においてモータの巻線に供給されるべき電流の大きさが設定される。具体的には、モータ509が一定速度で駆動されている期間の電流値iq´_rateとモータ509が加速している期間の電流値iq_accとに基づいて、定電流制御におけるd軸電流指令値id_refが設定される。この結果、モータの制御が切り替わる直前に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクと、モータの制御が切り替わった直後に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクとに差異が生じることを抑制することができる。この結果、モータの制御がベクトル制御から定電流制御に切り替わる際に、モータの回転速度が変動してしまうこと及びモータが振動してしまうことを抑制することができる。
なお、本実施形態では、モータ509が一定速度で駆動されている期間の電流値iq´_rateとモータ509が加速している期間の電流値iq_accとに基づいて、定電流制御におけるd軸電流指令値id_refが設定されたが、この限りではない。例えば、切替信号が‘L’から‘H’に切り替わる直前の電流値iq´、即ち、モータが減速している状態における電流値iq´に基づいて、定電流制御におけるd軸電流指令値id_refが設定されてもよい。
また、本実施形態では、iq´_rateとして、モータ509が一定速度で駆動されている期間における所定のタイミングで定電流制御器700に入力された電流値iq´が用いられたが、この限りではない。例えば、iq´_rateとして、モータ509が一定速度で駆動されている期間において定電流制御器700に入力された複数の電流値iq´の平均値が用いられてもよい。
また、本実施形態では、iq´_accとして、モータ509が加速している期間における所定のタイミングで定電流制御器700に入力された電流値iq´が用いられたが、この限りではない。例えば、iq´_accとして、モータ509が加速している期間において定電流制御器700に入力された複数の電流値iq´の平均値が用いられてもよい。
以上のように、ベクトル制御が実行されている期間における電流値iq´に基づいて、定電流制御におけるd軸電流指令値id_refが設定される構成でもよい。
また、モータ509が加速している期間における電流値iq´として、ベクトル制御中における電流値iq´が用いられてもよいし、定電流制御中の電流値iq´が用いられてもよい。
また、本実施形態では、モータ509の加速度aの絶対値と減速度bの絶対値とが同じ値である場合について説明したが、これに限定されるわけではない。例えば、モータ509の加速度aの絶対値と減速度bの絶対値とが異なる値であってもよい。モータ509の加速度aの絶対値と減速度bの絶対値とが異なる値である場合、d軸電流指令値id_refは、例えば以下の式(11)のように設定される。
id_ref=(iq´_rate―(iq´_acc-iq´_rate))*b/a(11)
即ち、d軸電流指令値id_refは、例えば加速度aの絶対値と減速度bの絶対値との比に基づいて設定される。
また、本実施形態では、電流値iq´に基づいて定電流制御におけるd軸電流指令値が設定されたが、この限りではない。例えば、ベクトル制御におけるq軸電流指令値iq_refに基づいて定電流制御におけるd軸電流指令値が設定されてもよい。
また、本実施形態における定電流制御では、指令位相θ_refを基準とする回転座標系に基づいて駆動電流が制御されたが、この限りではない。例えば、本実施形態において説明した従来の定電流制御が用いられてもよい。従来の定電流制御が用いられる場合、当該定電流制御において巻線に供給されるべき電流(ベクトル)の大きさが、電流値iq´に基づいて設定される。
なお、本実施形態におけるモータ制御装置は、ベクトル制御を行う回路と定電流制御を行う回路とにおいて、一部共有している部分(電流制御器503、504、PWMインバータ506等)があるが、この限りではない。例えば、ベクトル制御を行う回路と定電流制御を行う回路とがそれぞれ独立に設けられている構成であっても良い。
また、本実施形態において、ベクトル制御器518を用いてモータ509の駆動を制御する回路は本発明における第1制御回路に相当する。更に、第1実施形態及び第2実施形態において、定電流制御器517を用いてモータ509の駆動を制御する回路は本発明における第2制御回路に相当する。
また、本実施形態におけるベクトル制御では、位相フィードバック制御を行うことによってモータ509を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、回転子402の回転速度ωをフィードバックしてモータ509を制御する構成であっても良い。具体的には、図9に示すように、モータ制御装置内部に速度決定器514を設け、速度決定器514が位相決定器513から出力された回転位相θの時間変化に基づいて回転速度ωを決定する。なお、速度の決定には、次式(12)が用いられるものとする。
ω=dθ/dt (12)
そして、CPU151aは回転子の目標速度を表す指令速度ω_refを出力する。更に、モータ制御装置内部に速度制御器500を設け、速度制御器500が回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_refを生成して出力する構成とする。このような速度フィードバック制御を行うことによって、モータ509を制御する構成であっても良い。このような構成においては回転速度をフィードバックしているため、回転子の回転速度が所定の速度になるように制御することができる。したがって、画像形成装置において、記録媒体への画像形成を適切に行うために回転速度を一定速度に制御する必要がある負荷(例えば、感光ドラム、搬送ベルト等)を駆動するモータに速度フィードバック制御を用いたベクトル制御を適用する。この結果、記録媒体への画像形成を適切に行うことができる。なお、この場合、定電流制御を行う際にも指令速度ω_refが用いられるものとする。また、制御の切り替えは、指令速度ω_refに基づいて行われてもよいし、速度決定器514によって決定された回転速度ωに基づいて行われてもよい。
また、回転速度ω_ref´は、例えば、駆動電流iα又はiβ、駆動電圧Vα又はVβ、誘起電圧Eα又はEβ等、回転子402の回転周期と相関のある周期的な信号の大きさが0になる周期に基づいて決定されても良い。
また、本実施形態においては、負荷を駆動するモータとしてステッピングモータが用いられているが、DCモータやブラシレスDCモータ等の他のモータであっても良い。また、モータは2相モータである場合に限らず、3相モータ等の他のモータであっても本実施形態を適用することができる。
また、本実施形態においては、回転子として永久磁石が用いられているが、これに限定されるものではない。