JP2018019510A - モータ制御装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 定電流制御においては、回転子にかかる負荷トルクの変動を考慮して、モータの巻線に余分な駆動電流が供給されている。その結果、消費電力の増大や、余剰トルクに起因したモータ音の増大が起こってしまう。【解決手段】 ベクトル制御が行われる場合において回転子の加速中に用いられたq軸電流値に基づいて、定電流制御が行われる際にモータに供給する駆動電流の振幅値を決定する。この結果、定電流制御中において、回転子が脱調することを抑制することができ、更に、従来の定電流制御に比べて、消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。【選択図】 図8

Description

本発明は、モータの駆動を制御するモータ制御装置及び該モータ制御装置を用いた画像形成装置に関する。
従来、モータを制御する方法として、モータの回転子の回転位相を基準とした回転座標系における電流値を制御することによってモータを制御する、ベクトル制御と称される制御方法が知られている。具体的には、例えば、回転子の指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるように前記電流値を制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する。また、回転子の指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるように前記電流値を制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する手法もある。
ベクトル制御を用いると、モータの巻線に供給する駆動電流を、回転子が回転するためのトルクを発生させる電流成分(q軸電流)と、回転子の磁束強度に影響する電流成分(d軸電流)とに分けて制御することができる。この結果、回転子にかかる負荷トルクが変化しても、負荷トルクの変化に応じてq軸電流を制御することによって、回転に必要なトルクを効率的に発生させることができる。即ち、従来問題とされていた、回転子にかかる負荷トルクがモータの巻線に供給した駆動電流に対応した出力トルクを超えて、回転子が入力信号に同期しない制御不能な状態(脱調状態)になることを防止することができる。また、消費電力の増大や、余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
ベクトル制御では、回転子の位相を推定する構成が必要となる。特許文献1では、モータの各相の巻線に発生する誘起電圧の比の逆正接を演算して回転子の位相を推定する推定方法が述べられている。
しかしながら、巻線に発生する誘起電圧の大きさは、回転子の回転速度が小さいほど小さくなる。巻線に発生する誘起電圧の大きさが回転子の位相を推定するのに十分な大きさでない場合は、精度良く位相推定を行うことができない可能性がある。即ち、回転子の回転速度が小さいと、回転子の位相を精度よく推定することができなくなってしまうことがある。
特許文献2では、回転子の指令速度が所定の回転速度よりも小さい場合は、前記巻線に定電流を供給することによって前記モータを制御する、定電流制御(オープン制御)を用いる。なお、定電流制御においては、前記位相フィードバック制御と速度フィードバック制御とのいずれも行わない。更に、前記指令速度が前記所定の回転速度以上の場合は、前述したベクトル制御を用いる、という構成が述べられている。
特表2012−509056号公報 特開2005−39955号公報
ところで、定電流制御においては、回転子にかかる負荷トルクの変動等を考慮して、モータの巻線に供給する駆動電流に所定のマージンが設けられている。即ち、モータの巻線に余分な駆動電流が供給されている。その結果、定電流制御を用いてモータの制御を行う期間においては、消費電力の増大や、余剰トルクに起因したモータ音の増大が起こってしまう。そのため、定電流制御における消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制できるより良い構成が求められていた。
本発明は、定電流制御を用いてモータの制御を行う期間における消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、
モータの回転子の目標位相を表す指令位相に基づいて前記モータを制御するモータ制御装置において、
前記回転子の回転位相を推定する位相推定手段と、
前記指令位相と前記位相推定手段によって推定された回転位相との偏差が小さくなるように、前記位相推定手段によって推定された回転位相を基準とした回転座標系の電流であって前記回転子にトルクを発生させるトルク電流を制御することによって、前記モータを制御する第1の制御モードと、前記モータの巻線に定電流を供給することによって前記モータを制御する第2の制御モードとを備えるモータ制御手段と、
前記第1の制御モードの実行中に用いられたトルク電流の電流値を記憶する電流値記憶手段と、
前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを、前記電流値記憶手段に記憶された電流値に基づいて決定する電流値決定手段と、
を有し、
前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードの実行中は前記電流値決定手段によって決定された電流の大きさに基づいて前記モータを制御することを特徴とする。
本発明によれば、定電流制御を用いてモータの制御を行う期間における消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
第1実施形態に係る画像形成装置を説明する断面図である。 前記画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 A相及びB相から成る2相のモータと回転座標系のd軸及びq軸との関係を示す図である。 速度フィードバック制御を行うモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係る定電流制御器の構成を示すブロック図である。 回転子の回転速度の変化と回転子にかかる負荷トルクとの関係を示す図である。 前記モータ制御装置を用いたモータ駆動の制御方法を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る定電流制御器の構成を示すブロック図である。 定電流制御の実行中にモータの巻線に供給するべき駆動電流の振幅値と搬送される記録媒体の種類との関係を示すテーブルである。 第2実施形態に係るモータ制御装置を用いたモータ駆動の制御方法を示すフローチャートである。 第3実施形態に係る定電流制御器の構成を示すブロック図である。 第3実施形態に係るモータ制御装置を用いたモータ駆動の制御方法を示すフローチャートである。
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。なお、モータ制御装置が設けられるのは画像形成装置に限定されるわけではない。
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられている画像形成装置であるモノクロの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
以下に、図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。画像形成装置100には、原稿自動送り装置201、原稿読取装置202及び画像形成装置本体301が設けられている。
原稿自動送り装置201の原稿載置部203に載置された原稿は、給紙ローラ204によって1枚ずつ給紙され、搬送ガイド206に沿って原稿読取装置202の原稿ガラス台214上に搬送される。更に、原稿は、搬送ベルト208によって一定速度で搬送されて、排紙ローラ205によって原稿自動送り装置201の外部に設けられた不図示の排紙トレイへ排紙される。この間、原稿読取装置202の読取位置において照明209によって照明された原稿画像からの反射光は、反射ミラー210、211、212からなる光学系によって画像読取部101に導かれ、画像読取部101によって画像信号に変換される。画像読取部101は、レンズ、光電変換素子であるCCD、CCDの駆動回路等で構成される。画像読取部101から出力された画像信号は、ASIC等のハードウェアデバイスで構成される画像処理部112によって、各種補正処理が行われた後、画像形成装置本体301へ出力される。前述の如くして、原稿の読取が行われる。
また、読取装置202における原稿の読取モードとして、流し読みモードと固定読みモードがある。流し読みモードは、照明系209及び光学系を所定の位置に固定した状態で、原稿を一定速度で搬送しながら原稿の画像を読み取るモードである。固定読みモードは、読取装置202の原稿ガラス214上に原稿を載置し、照明系209及び光学系を一定速度で移動させながら、原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を読み取るモードである。通常、シート状の原稿は流し読みモードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿は固定読みモードで読み取られる。
画像形成装置本体301の内部には、シート収納トレイ302、304が設けられている。シート収納トレイ302、304には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ302にはA4の普通紙が収納され、シート収納トレイ304にはA4の厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等が含まれる。
シート収納トレイ302に収納された記録媒体は、給紙ローラ303によって給送されて、搬送ローラ306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。また、シート収納トレイ304に収納された記録媒体は、給紙ローラ305によって給送されて、搬送ローラ307及び306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。
読取装置202から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含んでいる光走査装置311に入力される。また、感光ドラム309は、帯電器310によって外周面が帯電される。感光ドラム309の外周面が帯電された後、読取装置202から光走査装置311に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置311からポリゴンミラー及びミラー312、313を経由し、感光ドラム309の外周面に照射される。この結果、感光ドラム309の外周面に静電潜像が形成される。なお、感光ドラムの帯電方法は、例えば、コロナ帯電器や帯電ローラを用いた帯電方法を用いる。
続いて、その静電潜像が現像器314内のトナーによって現像され、感光ドラム309の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム309に形成されたトナー像は、感光ドラム309と対向する位置(転写位置)に設けられた転写分離器315によって記録媒体に転写される。この際、レジストレーションローラ308は、トナー像にタイミングを合わせて、記録媒体を転写位置へ送り込む。
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト317によって定着器318へ送り込まれ、定着器318によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319、324によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ319、搬送ローラ320、及び反転ローラ321によって、反転パス325へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ322、323によって再度レジストレーションローラ308へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ319、324によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
また、第1面に画像形成された記録媒体を、第1面が下向きになるように反転させて画像形成装置100の外部へ排紙する場合は、定着器318を通過した記録媒体を、排紙ローラ319を通って搬送ローラ320へ向かう方向へ搬送する。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ320のニップ部を通過する直前に、搬送ローラ320の回転を反転させる。この結果、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体を排紙ローラ324へ向かう方向へ搬送し、画像形成装置100の外部へ排紙することができる。
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。なお、本発明における負荷とはモータによって駆動される対象物である。例えば、給紙ローラ204、303、305、レジストレーションローラ308及び排紙ローラ319等の各種ローラ(搬送ローラ)や感光ドラム309、搬送ベルト208、317、照明系209及び光学系等は本発明における負荷に対応する。本実施形態のモータ制御装置は、これら負荷を駆動するモータに適用することができる。
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。システムコントローラ151は、図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部102、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、センサ類159、ACドライバ160と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御部157に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが格納される。
システムコントローラ151は、画像処理部102における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部102に送信する。更に、システムコントローラ151は、各種装置からの信号(センサ類159からの信号)を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器310、現像器314、転写分離器315等)に必要な電圧を供給する。なお、センサ類159には、搬送ローラによって搬送される記録媒体を検知するセンサ等が含まれる。
モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、前述した負荷を駆動するモータ509を制御する。
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、前記検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいて、ACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器318に含まれる。
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、使用する紙種等のユーザが設定した情報を操作部152から受信し、前記ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成中か否か、ジャム発生及びその発生箇所等の情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。
前述の如くして、システムコントローラ151は、画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。
[ベクトル制御]
次に、本実施形態におけるモータ制御装置について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置は、ベクトル制御(第1の制御モード)と定電流制御(第2の制御モード)とのいずれの制御方法でもモータを制御することができる。なお、以下の説明においては、負荷を駆動するモータとしてステッピングモータが用いられているが、これに限定されるものではない。また、モータは2相モータであるとは限らない。更に、本実施形態におけるモータには、モータの回転子の回転位相を検出するためのロータリエンコーダなどのセンサは設けられていないものとする。
図3は、ステッピングモータ(以下、モータと称する)509を制御するモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。本実施形態におけるモータ制御装置157には、定電流制御を行う定電流制御器517、ベクトル制御を行うベクトル制御器518が設けられている。さらに、モータ制御装置157には、定電流制御器517を用いてモータ509の駆動を制御するか、ベクトル制御器518を用いてモータ509の駆動を制御するかを、回転子402の回転速度に基づいて切り替える制御切替手段としての構成が設けられている。具体的には、制御切替器515、制御切替スイッチ516a、516b、516c(以下、各スイッチと称する)等が設けられている。なお、定電流制御器517、ベクトル制御器518、制御切替器515、各スイッチ516a、516b、516cは、本実施形態におけるモータ制御手段に対応している。また、本実施形態における第1の制御回路は、ベクトル制御器518を用いてモータ509の駆動を制御する回路に相当する。更に、本実施形態における第2の制御回路は、定電流制御器517を用いてモータ509の駆動を制御する回路に相当する。なお、本実施形態におけるモータ制御装置は、ベクトル制御を行う回路と定電流制御を行う回路とにおいて、一部共有している部分(電流制御器503、PWMインバータ506等)があるが、この限りではない。即ち、ベクトル制御を行う回路と定電流制御を行う回路とがそれぞれ独立に設けられている構成であっても良い。
まず、図3及び図4を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157がベクトル制御を行う方法について説明する。
図4は、A相(第1相)とB相(第2相)の2相から成るモータ509と回転座標系のd軸及びq軸との関係を示す図である。図4では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸をα軸、B相の巻線に対応した軸をβ軸と定義している。また、静止座標系におけるα軸と、回転子402に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向(d軸方向)との成す角度をθと定義している。回転子402の回転位相は、角度θによって表される。ベクトル制御では、回転子402の磁束方向に沿ったd軸と、d軸から反時計回りに90度進んだ方向に沿った(d軸と直交する)q軸とで表される、モータ509の回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。
ベクトル制御とは、モータの回転子の回転位相を基準とした回転座標系における電流値を制御することによってモータを制御する制御方法である。具体的には、例えば、回転子の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるように前記電流値を制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する。なお、回転子の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるように前記電流値を制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する手法もある。回転座標系における電流値とは、モータの回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)の電流値と、モータの回転子の磁束強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)の電流値とに対応する。
モータ制御装置157には、ベクトル制御を行う回路として、位相制御器502、電流制御器503、座標逆変換器505、座標変換器511、モータの巻線に駆動電流を供給するPWMインバータ506等が設けられている。座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系から、q軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、モータ509のA相及びB相の巻線に供給する駆動電流を、回転座標系において、q軸成分の電流値(q軸電流)及びd軸成分の電流値(d軸電流)を用いて表すことができる。なお、q軸電流は、モータ509の回転子402にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータ509の回転子402の磁束強度に影響する励磁電流に相当し、回転子402のトルクの発生には寄与しない。モータ制御装置157は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。即ち、回転子402が回転するために必要なトルクを、効率的に発生させることができる。
モータ制御装置157は、モータ509の回転子402の回転位相θを後述する方法により推定し、その推定結果に基づいてベクトル制御を行う。CPU151aは、モータ509の回転子402の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、所定の時間周期で指令位相θ_refをモータ制御装置157へ出力する。
加算器101は、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差を演算し、該偏差を位相制御器502に出力する。
位相制御器502は、比例(P)、積分(I)補償器から構成されている。位相制御器502は、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差が0になるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。なお、本実施形態における位相制御器502は、比例(P)、積分(I)補償器から構成されているが、比例(P)、積分(I)、微分(D)補償器から構成されていても良い。また、回転子402に永久磁石を用いる場合、通常は回転子402の磁束強度に影響するd軸電流指令値id_refは0に設定されるが、これに限定されるものではない。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。
A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、図4に示す電流ベクトルの位相θeを用いて次式によって表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義する。
iα=I*cosθe (1)
iβ=I*sinθe (2)
なお、Iは正弦波状に変化する電流値iα及びiβの振幅値(大きさ)である。これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511と誘起電圧決定器512に入力される。
座標変換器511において、電流値iα及びiβは、次式によって回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに座標変換される。
id= cosθ*iα+sinθ*iβ (3)
iq=−sinθ*iα+cosθ*iβ (4)
前述のように、座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系から、q軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。なお、本実施形態においては、q軸電流iqは定電流制御器517にも出力される。
加算器102は、位相制御器502から出力されたiq_refと座標変換器511から出力された前記電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。また、加算器103は、位相制御器502から出力されたid_refと座標変換器511から出力された前記電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
電流制御器503は、比例(P)、積分(I)補償器から構成されている。電流制御器503は、前記偏差がそれぞれ小さくなるように電流値iq*及びid*を生成する。具体的には、電流制御器503は、前記偏差がそれぞれ0になるように電流値iq*及びid*を生成する。その後、電流制御器503は、それぞれの電流値iq*及びid*に対応した駆動電圧Vq及びVdを生成して座標逆変換器505に出力する。なお、本実施形態における電流制御器503は、比例(P)、積分(I)補償器から構成されているが、比例(P)、積分(I)、微分(D)補償器から構成されていても良い。
座標逆変換器505は、電流制御器503から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに座標逆変換する。
Vα=cosθ*Vd−sinθ*Vq (5)
Vβ=sinθ*Vd+cosθ*Vq (6)
座標逆変換器505は、回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに座標逆変換した後、Vα及びVβを誘起電圧決定器512とPWMインバータ506に出力する。なお、本実施形態においては、電流値iq*及びid*に対応した駆動電圧Vq及びVdを生成し、前記駆動電圧Vq及びVdを座標逆変換することによって静止座標系における駆動電圧Vα及びVβを得たが、この限りではない。例えば、電流値iq*及びid*を静止座標系における電流値iα*及びiβ*に座標逆変換し、前記電流値iα*及びiβ*に対応した駆動電圧Vα及びVβを生成する構成であっても良い。
PWMインバータ506は、フルブリッジ回路を有している。フルブリッジ回路は座標逆変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβによって駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβを生成し、駆動電流iα及びiβをモータ509の各相の巻線に供給することによって、モータ509を駆動させる。なお、本実施形態においては、PWMインバータはフルブリッジ回路を有しているが、ハーフブリッジ回路等であっても良い。
次に、回転子402の回転位相θの推定方法について説明する。回転子402の回転位相θの推定には、回転子402の回転によってモータ509のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧Eα及びEβの値が用いられる。誘起電圧の値は誘起電圧決定器512によって算出される。具体的には、A/D変換器510から誘起電圧決定器512に入力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器505から誘起電圧決定器512に入力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって、誘起電圧Eα及びEβを決定(算出)する。
Eα=Vα−R*iα−L*diα/dt (7)
Eβ=Vβ−R*iβ−L*diβ/dt (8)
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。R及びLの値は使用されているモータ509に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置157に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
誘起電圧決定器512によって決定された誘起電圧Eα及びEβは、位相推定器513に入力される。位相推定器513は、A相の誘起電圧EαとB相の誘起電圧Eβとの比から、次式によってモータ509の回転子402の回転位相θを推定する。
θ=tan^−1(−Eβ/Eα) (9)
前述の如くして得られた回転子402の回転位相θは、加算器101、座標逆変換器505及び座標変換器511に入力され、その後は、前述の制御を繰り返し行う。
前述の如くして、本実施形態におけるベクトル制御では、指令位相θ_refと回転位相θとの偏差が小さくなるように、回転座標系における電流値を制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する。ベクトル制御を用いてモータの駆動を制御することによって、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。なお、本実施形態におけるベクトル制御では、前述した位相フィードバック制御を行うことによってモータ509を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、回転子402の回転速度ωをフィードバックしてモータ509の駆動を制御する構成であっても良い。具体的には、モータ制御装置内部に速度決定器514を設け、前記速度決定器514が位相推定器513から出力された回転位相θの時間変化に基づいて回転速度ωを決定する。速度の決定には、次式を用いる。
ω=dθ/dt (10)
そして、CPU151aはモータ制御装置157に回転子の目標速度を表す指令速度ω_refを出力する。更に、モータ制御装置内部に速度制御器501を設け、前記速度制御器501が回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する構成とする。以上のような速度フィードバック制御を行うことによって、モータ509を制御する構成であっても良い。
[ベクトル制御と定電流制御との切替]
しかし、巻線に発生する誘起電圧の大きさは、回転子の回転速度が小さいほど小さくなる。巻線に発生する誘起電圧の大きさが回転子の位相を推定するのに十分な大きさでない場合は、精度良く位相推定を行うことができない可能性がある。即ち、回転子の回転速度が小さいと、回転子の位相を精度よく推定することができなくなってしまうことがある。その結果、モータの駆動制御が不安定になってしまうことがある。
図3に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157には、定電流制御とベクトル制御とを切り替える構成が設けられている。具体的には、制御切替器515、各スイッチ516a、516b、516c等が設けられている。
以下に、図3を用いて、本実施形態における、定電流制御とベクトル制御との制御切り替え方法について説明する。
CPU151aは、モータ509の回転子の指令速度ω_refを制御切替器515及び定電流制御器517に出力する。
本実施形態においては、定電流制御とベクトル制御との切り替えを行うための回転子402の回転速度の切替閾値ωthが設定されている。なお、切替閾値ωthは、回転位相を精度よく推定できる最小の回転速度に設定されるものとする。
制御切替器515は、切替閾値ωthと指令速度ω_refとを比較する。なお、切替閾値ωthは制御切替器520に設けられたROM等に予め記憶されている。また、本実施形態においては、切替閾値ωthの値を3rpsとしたがこの限りではなく、回転子の回転位相を精度よく推定することができる回転速度であれば良い。
定電流制御器517による制御中において、指令速度ω_refが切替閾値ωth以上(ω_ref≧ωth)になると、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を定電流制御器517からベクトル制御器518に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、ベクトル制御器518によるベクトル制御が行われる。
また、定電流制御器517による制御中において、指令速度ω_refが切替閾値ωthより小さい(ω_ref<ωth)場合は、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替えない。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動が定電流制御器517によって制御される状態を維持するように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、定電流制御器517による定電流制御が続行される。
ベクトル制御器518による制御中において、指令速度ω_refが切替閾値ωthより小さくなると(ω_ref<ωth)、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器をベクトル制御器518から定電流制御器517に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、定電流制御器517による定電流制御が行われる。
また、ベクトル制御器518による制御中において、指令速度ω_refが切替閾値ωth以上(ω_ref≧ωth)の場合は、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替えない。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動がベクトル制御器518によって制御される状態を維持するように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、ベクトル制御器518によるベクトル制御が続行される。
なお、本実施形態では、CPU151aから出力された指令速度ω_refに基づいて制御の切り替えを行ったが、この限りではない。例えば、前記速度決定器514がCPU151aから出力された指令位相θ_refの時間変化に基づいて指令速度ω_refの代わりとなる回転速度を演算し、前記演算された回転速度に基づいて制御の切り替えを行っても良い。なお、演算には式(10)が用いられるものとする。
また、本実施形態では、モータの駆動制御を定電流制御からベクトル制御に切り替えるか否かの判断を行う場合に、指令速度ω_refと切替閾値ωthとを比較したが、指令速度ω_refではなく、実際の回転速度ωであっても良い。例えば、前記速度決定器514が位相推定器513から出力された回転位相θの時間変化に基づいて回転子の回転速度ωを、式(10)を用いて決定し、前記回転速度ωと切替閾値ωthとを比較しても良い。
[定電流制御]
前述のように、本実施形態におけるモータ制御装置157には、定電流制御とベクトル制御とを切り替える構成が設けられている。即ち、モータ509の制御においては、定電流制御を行う期間とベクトル制御を行う期間がある。定電流制御においては、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化によって回転子にかかる負荷トルクが変動することを考慮して、モータの巻線に供給する駆動電流に所定のマージンが加算されている。即ち、モータの巻線に余分な駆動電流が供給されている。その結果、定電流制御においては、消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大が起こってしまう。そのため、定電流制御における消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制できるより良い構成が求められている。
次に、本実施形態におけるモータ制御装置157が定電流制御を行う方法について説明する。定電流制御とは、モータの巻線に定電流を供給することによってモータを制御する制御方法である。なお、定電流制御においては、前記位相フィードバック制御と速度フィードバック制御とのいずれも行わない。
図3に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157には、定電流制御を行う回路として、定電流制御器517等が設けられている。
図6は、定電流制御器517の構成の例を示すブロック図である。図6に示すように、定電流制御器517には、以前のベクトル制御の実行中に用いられたq軸電流値を記憶する電流値記憶器517aが設けられている。また、定電流制御の実行中にモータ509の各相の巻線に供給するべき駆動電流の振幅値を、電流値記憶器517aに記憶されたq軸電流値に基づいて決定する電流値決定器517bが設けられている。更に、回転子の加速度を決定する加速度決定器517eが設けられている。
加速度決定器517eには、CPU151aから出力された指令速度ω_refが入力される。加速度決定器517eは、前記指令速度ω_refに基づいて回転子の加速度aを決定する。具体的には、CPU151aから出力された指令速度ω_refの時間変化を以下の式(11)を用いて演算する。
a=dω/dt (11)
電流値記憶器517aには、加速度決定器517eによって決定された加速度a及び座標変換器511から出力されたq軸電流値iqが入力される。
本実施形態における電流値記憶器517aは、ベクトル制御中に用いられたq軸電流値iqを異なるタイミングで取得する。具体的には、電流値記憶器517aは、座標変換器511がA/D変換器510から出力された駆動電流の電流値を座標変換し、q軸電流値iqを定電流制御器517に出力する毎に、該q軸電流値iqを取得する。電流値記憶器517aは、前記異なるタイミングで取得した複数個の電流値のうち、ベクトル制御において加速中に用いられたq軸電流値iqを記憶する。即ち、電流値記憶器517aは、加速度決定器517eから入力された加速度aが正の値(a>0)である場合はq軸電流値iqを記憶し、前記加速度aが正の値でない(a≦0)場合はq軸電流値iqを記憶しない。なお、本実施形態においては、定電流制御が実行されると、電流値記憶器517aは記憶した電流値を削除する。即ち、ベクトル制御の後に定電流制御が実行され、更に該定電流制御の後にベクトル制御が実行される場合は、電流値記憶器517aは、定電流制御が実行される際に1回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する構成とするが、この限りではない。例えば、所定回数ベクトル制御が行われるまでは電流値を削除せず、前記所定回数ベクトル制御が行われた後に定電流制御が行われると、記憶した電流値を削除する構成であっても良い。なお、定電流制御の後にベクトル制御が実行されてから、該ベクトル制御の後に定電流制御が実行されるまでの期間に行われるベクトル制御を、ベクトル制御1回分と定義する。
具体例として、前記所定回数が2回である場合について説明する。まず、ベクトル制御中に電流値を前記異なるタイミングで取得して複数個記憶する。該ベクトル制御の後に定電流制御が実行された場合は、電流値記憶器517aは記憶した電流値を削除しない。更に該定電流制御の後にベクトル制御が実行され、該ベクトル制御の後に定電流制御が実行された場合は、電流値記憶器517aは、1回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する。更に、4回目のベクトル制御が終了したら、電流値記憶器517aは、2回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する。なお、図5及び図6に示すように、電流値記憶器517aには、定電流制御が実行されたか否かを表す信号が制御切替器515から出力され、電流値記憶器517aは、前記信号に基づいて記憶した電流値を削除するものとする。
また、本実施形態においては、電流値記憶器517aが加速度aに基づいて回転子が加速中であるか否かを判断したが、この限りではない。例えば、加速度決定器517eが、決定した加速度に基づいて加速中であるか否かを判断し、判断結果に基づいて、電流値を記憶するか否かの信号を電流値記憶器517aに出力する。電流値記憶器517aは、前記信号に基づいて電流値の記憶を行う、という構成であっても良い。
電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されているq軸電流値iqに基づいて定電流制御の実行中にモータの巻線に供給するべき駆動電流の振幅値I_cを決定する。具体的には、電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されている一個又は複数個のq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。電流値決定器517bは、前記平均値iq_aveに所定のマージンを加算した値を振幅値I_cとして決定する。なお、電流値記憶器517aに記憶されている電流値が一個の場合は、電流値記憶器517aに記憶されている電流値が平均値iq_aveとなる。更に、電流値決定器517bは、前記振幅値I_cを電流値決定器517bの内部に設けられたメモリ等に記憶する。なお、電流値決定器517bは、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値I_cを新たに決定された振幅値I_cに更新する。以降、電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、前述した方法で振幅値I_cを決定し、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値に更新することを繰り返す。なお、本実施形態においては、電流値記憶器517aに記憶されている複数個のq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算し、前記平均値iq_aveに基づいて振幅値I_cを決定したが、この限りではない。例えば、電流値記憶器517aに記憶されている複数個のq軸電流値iqのうち最も大きい値iq_maxに基づいて前記振幅値を決定しても良い。また、iq_maxに基づいて前記振幅値を決定する場合は、電流値記憶器517aはベクトル制御の実行中に用いられたq軸電流値iqを複数個記憶する構成でなくても良い。例えば、電流値記憶器517aが、電流値記憶器517aに入力されたq軸電流値iqと記憶しているq軸電流値iqとを比較し、大きい方の値のみを記憶することを繰り返す構成であっても良い。また、本実施形態においては、平均値iq_aveに所定のマージンを加算することによって前記振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、平均値iq_aveに応じた振幅値のデータを予めROM等に記憶しておき、前記ROM等に記憶されたデータに基づいて前記振幅値を読み出す構成であっても良い。
電流値決定器517bは、定電流制御の実行中は、前記振幅値I_c及び指令位相θ_refに基づいて、静止座標系における電流値である電流指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。
電流検出器507、508はモータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流を検出する。その後、検出された駆動電流は、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換され、式(1)及び(2)のように電流値iα及びiβとして表される。
加算器102は、電流値決定器517bから出力されたiα_refとA/D変換器510から出力された前記電流値iαとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。また、加算器103は、電流値決定器517bから出力されたiβ_refとA/D変換器510から出力された前記電流値iβとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
電流制御器503は、前記偏差がそれぞれ小さくなるようにiα*及びiβ*を生成して、それぞれの電流値iα*及びiβ*に対応した駆動電圧Vα及びVβを出力する。具タ的には、電流制御器503は、前記偏差がそれぞれ0になるようにiα*及びiβ*を生成して、それぞれの電流値iα*及びiβ*に対応した駆動電圧Vα及びVβを出力する。電流制御器503から出力された駆動電圧Vα及びVβは、PWMインバータ506に入力され、PWMインバータ506は前述した方法でモータ509の各相の巻線に駆動電流を供給してモータ509を駆動させる。
次に、本実施形態における定電流制御器が、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値に基づいて振幅値I_cを決定する理由について説明する。
図7は、本実施形態における回転子の回転速度の変化と回転子にかかる負荷トルクとの関係を示す図である。図7に示すように、回転子にかかる負荷トルクは、加速中、定速中、減速中のうち、加速中に回転子にかかる負荷トルクが最も大きい。モータを制御する期間において最も負荷トルクの大きい加速中に用いられたq軸電流値に基づいて振幅値I_cを決定することによって、定電流制御における加速中において、回転に必要な最低限のトルクを回転子に与えることができる。また、定電流制御における減速中においても、回転に必要なトルクが回転子に与えたトルクを超えることを抑制することができる。即ち、定電流制御中においても回転子が脱調することを抑制することができる。また、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。なお、図7に示す回転速度の変化は、本実施形態における一例であり、これに限定されるものではない。例えば、加速中の回転速度が線形的に増加するのではなく、非線形的に増加しても良い。加速中において、回転速度が非線形的に増加する場合は、回転子にかかる負荷トルクが変動する。その場合は、前述したような、q軸電流値iqの最大値iq_maxに基づいて振幅値I_cを決定する方法が有効である。
図8は、モータ制御装置157を用いたモータ駆動の制御方法を示すフローチャートである。以下、図8を用いて、本実施形態におけるモータ509の駆動制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aからの指示を受けたモータ制御装置157によって実行される。
まず、S101において、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動制御を開始する。enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を禁止する。即ち、モータ制御装置157によるモータ509の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を許可して、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動制御を行う。
次に、S102において、制御切替器515は、モータ509の駆動が定電流制御器517によって制御される状態になるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。また、電流値決定器515aは、前記メモリに記憶されている振幅値を電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値として決定し、出力する。その結果、定電流制御器517による定電流制御が行われる。
その後、S103において、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。また、S103おいて、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘H’を出力した場合は、モータ制御装置157は処理をS104に進める。
S104において、回転子の指令速度ω_refが切替閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS102に戻り、定電流制御器517による定電流制御が続行される。
また、S104において、前記指令速度ω_refが切替閾値ωth以上の場合は、S105において、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を定電流制御器517からベクトル制御器518に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、ベクトル制御器518によるベクトル制御が行われる。
次に、S106において、回転子の加速度aが正の値(a>0)である場合は、S107において、電流値記憶器515aはq軸電流値iqを記憶する。その後、S108において、電流値決定器515bは、電流値記憶器515aに記憶されたq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。即ち、電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されているq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。更に、S109において、電流値決定器515bは、前記平均値iq_aveに所定のマージンを加算した値を振幅値I_cとして決定し、メモリに記憶する。その後、モータ制御装置157は処理をS110に進める。
また、S106において、回転子の加速度aが正の値でない(a≦0)場合は、処理はS110に進む。
S110において、前記指令速度ω_refが速度閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS102に戻り、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器をベクトル制御器518から定電流制御器517に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、定電流制御器518による定電流制御が行われる。
また、S110において、前記指令速度ω_refが速度閾値ωth以上の場合は、処理は再びS105に戻り、ベクトル制御器518によるベクトル制御が続行される。
以降、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力するまで、モータ制御装置157は前述した制御を繰り返し行い、モータ509を制御する。
以上のように、本実施形態における定電流制御器517は、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値の平均値に基づいて、振幅値I_cを決定する。加速中に用いられたq軸電流値の平均値に基づいて振幅値I_cを決定することによって、定電流制御中において回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。また、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値決定器517bは電流値記憶器517aに記憶されているq軸電流値の平均値に基づいて振幅値I_cを決定する。更に、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値に更新する。この結果、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化に対応した電流をモータに供給できる。具体的には、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化が起こり、回転子にかかる負荷トルクが変化したとしても、回転子が脱調すること抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて、消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、q軸電流値iqに基づいて、振幅値I_cを決定したが、この限りではない。例えば、ベクトル制御中に位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refが電流値記憶器515aに記憶され、前記q軸電流指令値iq_refに基づいて振幅値I_cを決定しても良い。
更に、本実施形態においては、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値に基づいて前記振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、ベクトル制御において回転子の加速中に回転子にかかる負荷トルク値を決定し、前記負荷トルク値に基づいて前記振幅値を決定する構成であっても良い。具体的には、例えば、回転子402の推定位相θとCPU151aから出力された指令位相θ_refとの偏差から負荷トルク値Tを決定する。前記負荷トルク値Tと振幅値I_cとの関係を示すテーブルを予めCPU151aに記憶しておいて、前記テーブルに基づいて振幅値I_cを読み出しても良い。
本実施形態におけるベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられているが、これに限定されるものではない。例えば、指令位相θ_refを基準とした回転座標系が用いられても良い。また、回転速度ω及び回転指令速度ω_refの決定は、式(10)を用いて行うことに限らない。例えば、モータ509のA相(またはB相)の巻線に流れる駆動電流、A相(またはB相)駆動電圧、A相(またはB相)の巻線に発生する誘起電圧等、回転子402の回転速度と相関のある周期的な信号を検出する。前記信号の値が0になる周期(ゼロクロス周期)を検出することによって、回転速度ω及び回転指令速度ω_refを決定しても良い。
更に、本実施形態においては、定電流制御の実行中に巻線に供給する電流が、式(1)及び(2)に示すような正弦波状の電流である場合について説明したが、この限りではない。例えば、各相の巻線にパルスを与えることによってモータを駆動させる構成であっても、本実施形態は適用できる。
〔第2実施形態〕
画像形成装置の構成は第1実施形態と同様である。本実施形態においては、定電流制御の実行中に巻線に供給するべき駆動電流の振幅値を、搬送される記録媒体の種類に応じて設定する。
以下、本実施形態におけるモータ制御装置がモータを制御する方法について説明する。なお、ベクトル制御を用いたモータの駆動制御方法及びベクトル制御と定電流制御との切替方法は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。また、定電流制御を用いたモータの駆動制御方法についても、第1実施形態と同様である部分については説明を省略する。
図9は、本実施形態における定電流制御器517の構成の例を示すブロック図である。本実施形態における定電流制御器517には、第1実施形態と同様に、電流値記憶器517a、電流値決定器517b、加速度決定器517e等が設けられている。また、電流値決定器517bには、紙種別に振幅値を記憶する振幅値記憶器(第2の電流値記憶手段)517fが設けられている。
第1実施形態において説明した様に、加速度決定器517eは、CPU151aから出力された指令速度ω_refに基づいて回転子の加速度aを決定する。
電流値記憶器517aには、加速度決定器517eによって決定された加速度a及び座標変換器511から出力されたq軸電流値iqが入力される。
本実施形態における電流値記憶器517aは、ベクトル制御中に用いられたq軸電流値iqを異なるタイミングで取得する。具体的には、電流値記憶器517aは、座標変換器511がA/D変換器510から出力された駆動電流の電流値を座標変換し、q軸電流値iqを定電流制御器517に出力する毎に、該q軸電流値iqを取得する。電流値記憶器517aは、前記異なるタイミングで取得した複数個の電流値のうち、ベクトル制御において加速中に用いられたq軸電流値iqを記憶する。即ち、電流値記憶器517aは、加速度決定器517eから入力された加速度aが正の値(a>0)である場合はq軸電流値iqを記憶し、前記加速度aが正の値でない(a≦0)場合はq軸電流値iqを記憶しない。なお、本実施形態においては、定電流制御が実行されると、電流値記憶器517aは記憶した電流値を削除する。即ち、ベクトル制御の後に定電流制御が実行され、更に該定電流制御の後にベクトル制御が実行される場合は、電流値記憶器517aは、定電流制御が実行される際に1回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する構成とするが、この限りではない。例えば、所定回数ベクトル制御が行われるまでは電流値を削除せず、前記所定回数ベクトル制御が行われた後に定電流制御が行われると、記憶した電流値を削除する構成であっても良い。なお、定電流制御の後にベクトル制御が実行されてから、該ベクトル制御の後に定電流制御が実行されるまでの期間に行われるベクトル制御を、ベクトル制御1回分と定義する。
具体例として、前記所定回数が2回である場合について説明する。まず、ベクトル制御中に電流値を前記異なるタイミングで取得して複数個記憶する。該ベクトル制御の後に定電流制御が実行された場合は、電流値記憶器517aは記憶した電流値を削除しない。更に該定電流制御の後にベクトル制御が実行され、該ベクトル制御の後に定電流制御が実行された場合は、電流値記憶器517aは、1回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する。更に、4回目のベクトル制御が終了したら、電流値記憶器517aは、2回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する。なお、図5及び図9に示すように、電流値記憶器517aには、定電流制御が実行されたか否かを表す信号が制御切替器515から出力され、電流値記憶器517aは、前記信号に基づいて記憶した電流値を削除するものとする。
また、本実施形態においては、電流値記憶器517aが加速度aに基づいて回転子が加速中であるか否かを判断したが、この限りではない。例えば、加速度決定器517eが、決定した加速度に基づいて加速中であるか否かを判断し、判断結果に基づいて、電流値を記憶するか否かの信号を電流値記憶器517aに出力する。電流値記憶器517aは、前記信号に基づいて電流値の記憶を行う、という構成であっても良い。
次に、本実施形態における電流値決定器517bが定電流制御の実行中にモータの巻線に供給するべき駆動電流の振幅値を決定する方法について説明する。
図10は、定電流制御の実行中にモータの巻線に供給するべき駆動電流の振幅値と搬送される記録媒体の種類(紙種)との関係を示すテーブルである。前記テーブルは、振幅値記憶器517f内に設けられている。なお、前記テーブルは本実施形態における一例であり、これに限定されるものではない。即ち、紙種の数が限定されているわけではない。本実施形態においては、ユーザによって設定された紙種の情報がCPU151aから電流値決定器517bに入力される。
電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されているq軸電流値iqに基づいて定電流制御の実行中にモータの巻線に供給するべき駆動電流の振幅値を決定する。具体的には、電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されている一個又は複数個のq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。前記平均値iq_aveに所定のマージンを加算した値を振幅値として決定する。なお、電流値記憶器517aに記憶されている電流値が一個の場合は、電流値記憶器517aに記憶されている電流値が平均値iq_aveとなる。なお、本実施形態においては、電流値記憶器517aに記憶されている複数個のq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算し、前記平均値iq_aveに基づいて振幅値I_cを決定したが、この限りではない。例えば、電流値記憶器517aに記憶されている複数個のq軸電流値iqのうち最も大きい値iq_maxに基づいて前記振幅値を決定しても良い。また、iq_maxに基づいて前記振幅値を決定する場合は、電流値記憶器517aはベクトル制御の実行中に用いられたq軸電流値iqを複数個記憶する構成でなくても良い。例えば、電流値記憶器517aが、電流値記憶器517aに入力されたq軸電流値iqと記憶しているq軸電流値iqとを比較し、大きい方の値のみを記憶することを繰り返す構成であっても良い。また、本実施形態においては、平均値iq_aveに所定のマージンを加算することによって前記振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、平均値iq_aveに応じた振幅値のデータを予めROM等に記憶しておき、前記ROM等に記憶されたデータに基づいて前記振幅値を読み出す構成であっても良い。
振幅値記憶器517fは、電流値決定器517bによって決定された振幅値を紙種別に記憶する。具体的には、電流値決定器517bによって決定された振幅値を、CPU151aから入力された紙種の情報に応じて記憶することによって、前記テーブルを更新する。
電流値決定器517bは、定電流制御の実行中は、設定された紙種に応じた振幅値を前記テーブルから読み出し、読み出した振幅値及び指令位相θ_refに基づいて電流指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。なお、設定された紙種が、以前に設定されたことのない紙種である場合は、予め設定された振幅値を電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値として決定し、電流指令値iα_ref及びiβ_refを出力する構成とする。
以降は、第1実施形態において説明した方法で、モータ制御装置157は定電流制御を行う。
図11は、本実施形態におけるモータ制御装置157を用いたモータの制御方法を示すフローチャートである。以下、図11を用いて、本実施形態におけるモータ509の制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aからの指示を受けたモータ制御装置157によって実行される。
まず、S201において、ユーザは操作部152を用いて、使用する紙種等の設定を行う。次に、S202において、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動制御を開始し、処理をS203に進める。
S203において、制御切替器515は、モータ509の駆動が定電流制御器517によって制御される状態になるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。また、電流値決定器515bは、ユーザによって設定された紙種に応じた振幅値を前記テーブルから読み出し、読み出した振幅値を電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値として決定し、電流指令値iα_ref及びiβ_refを出力する。その結果、定電流制御器517による定電流制御が行われる。
その後、S204において、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。また、S204おいて、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘H’を出力した場合は、モータ制御装置157は処理をS205に進める。
S205において、回転子の指令速度ω_refが切替閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS203に戻り、定電流制御器517による定電流制御が続行される。
また、S205において、前記指令速度ω_refが切替閾値ωth以上の場合は、S206において、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を定電流制御器517からベクトル制御器518に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、ベクトル制御器518によるベクトル制御が行われる。
次に、S207において、回転子の加速度aが正の値(a>0)である場合は、S208において、電流値記憶器517aはq軸電流値iqを記憶する。その後、S209において、電流値決定器517bは、電流値記憶器515aに記憶されたq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。即ち、電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されているq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。更に、S210において、電流値決定器517bは、前記平均値iq_aveに所定のマージンを加算した値を振幅値として決定する。また、振幅値記憶器517fは、電流値決定器517bによって決定された振幅値を、CPU151aから入力された紙種の情報に応じて記憶することによって、前記テーブルを更新する。その後、モータ制御装置157は処理をS211に進める。
また、S207において、回転子の加速度aが正の値でない(a≦0)場合は、処理はS211に進む。
S211において、前記指令速度ω_refが速度閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS203に戻り、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器をベクトル制御器518から定電流制御器517に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、定電流制御器518による定電流制御が行われる。
また、S211において、前記指令速度ω_refが速度閾値ωth以上の場合は、処理は再びS206に戻り、ベクトル制御器518によるベクトル制御が続行される。
以降、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力するまで、モータ制御装置157は前述した制御を繰り返し行い、モータ509の駆動を制御する。
以上のように、本実施形態における電流値決定器517bは、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値の平均値に基づいて、振幅値を決定する。具体的には、電流値決定器517bは、電流値記憶器517aが電流値を記憶する毎に、電流値記憶器517aに記憶されているq軸電流値iqの平均値に基づいて振幅値を決定する。加速中に用いられたq軸電流値の平均値に基づいて振幅値を決定することによって、定電流制御中において回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
また、振幅値記憶器517fは、電流値決定器517bによって決定された振幅値を、CPU151aから入力された紙種の情報に応じて記憶することによって、前記テーブルを更新する。更に、電流値決定器517bは、ユーザによって設定された紙種に応じた振幅値を前記テーブルから読み出し、読み出した振幅値を電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値として決定し、電流指令値iα_ref及びiβ_refを出力する。この結果、紙種に応じて、必要なトルク分だけ駆動電流を供給することができるため、回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。また、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化に対応した電流をモータに供給できる。具体的には、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化が起こり、回転子にかかる負荷トルクが変化したとしても、回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて、消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、q軸電流値iqに基づいて、振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、ベクトル制御中に位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refが電流値記憶器515aに記憶され、前記q軸電流指令値iq_refに基づいて振幅値を決定しても良い。
更に、本実施形態においては、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値に基づいて前記振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、ベクトル制御において回転子の加速中に回転子にかかる負荷トルク値を決定し、前記負荷トルク値に基づいて前記振幅値を決定する構成であっても良い。具体的には、例えば、回転子402の推定位相θとCPU151aから出力された指令位相θ_refとの偏差から負荷トルク値Tを決定する。前記負荷トルク値Tに対応する振幅値の関係を示すテーブルを予めCPU151aに記憶しておいて、前記テーブルに基づいて振幅値を読み出しても良い。
本実施形態におけるベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられているが、これに限定されるものではない。例えば、指令位相θ_refを基準とした回転座標系が用いられても良い。また、回転速度ω及び回転指令速度ω_refの決定は、式(10)を用いて行うことに限らない。例えば、モータ509のA相(またはB相)の巻線に流れる駆動電流、A相(またはB相)駆動電圧、A相(またはB相)の巻線に発生する誘起電圧等、回転子402の回転速度と相関のある周期的な信号を検出する。前記信号の値が0になる周期(ゼロクロス周期)を検出することによって、回転速度ω及び回転指令速度ω_refを決定しても良い。
更に、本実施形態においては、定電流制御の実行中に巻線に供給する電流が、式(1)及び(2)に示すような正弦波状の電流である場合について説明したが、この限りではない。例えば、各相の巻線にパルスを与えることによってモータを駆動させる構成であっても、本実施形態は適用できる。
〔第3実施形態〕
画像形成装置の構成は第1実施形態と同様である。本実施形態では、定電流制御において回転子の加速中に巻線に供給するべき駆動電流の振幅値(加速電流の大きさ)I_ac及び減速中に巻線に供給するべき駆動電流の振幅値(減速電流の大きさ)I_brを決定し、これらの振幅値に基づいて定電流制御を行う。
以下、本実施形態におけるモータ制御装置がモータを制御する方法について説明する。なお、ベクトル制御を用いたモータの駆動制御方法及びベクトル制御と定電流制御との切替方法は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。また、定電流制御を用いたモータの駆動制御方法についても、第1実施形態と同様である部分については説明を省略する。
図12は、本実施形態における定電流制御器517の構成の例を示すブロック図である。図12に示すように、本実施形態における定電流制御器517には、電流値記憶器517a、電流値決定器517b及び加速度決定器517eが設けられている。電流値記憶器517a内部には、以前のベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値を記憶する加速時電流記憶器517cが設けられている。更に、電流値記憶器517a内部には、以前のベクトル制御において回転子の減速中に用いられたq軸電流値を記憶する減速時電流記憶器517dが設けられている。
第1実施形態において説明した様に、加速度決定器517eは、CPU151aから出力された指令速度ω_refに基づいて回転子の加速度aを決定する。更に、加速度決定器517eは、決定した加速度に基づいて加速中(a>0)、定速中(a=0)、減速中(a<0)の判断を行い、判断結果を電流値記憶器517a及び電流値決定器517bに出力する。
電流値記憶器517aには、前記判断結果及び座標変換器511から出力されたq軸電流値iqが入力される。
本実施形態における電流値記憶器517aは、ベクトル制御中に用いられたq軸電流値iqを異なるタイミングで取得する。具体的には、電流値記憶器517aは、座標変換器511がA/D変換器510から出力された駆動電流の電流値を座標変換し、q軸電流値iqを定電流制御器517に出力する毎に、該q軸電流値iqを取得する。電流値記憶器517aは、前記異なるタイミングで取得した複数個の電流値のうち、ベクトル制御において加速中に用いられたq軸電流値iq及び減速中に用いられたq軸電流値iqを記憶する。具体的には、回転子が加速中である場合は、電流値記憶器517aは、取得したq軸電流値iqを加速時電流記憶器517cに記憶し、回転子が減速中である場合は、取得したq軸電流値iqを減速時電流記憶器517dに記憶する。なお、回転子が定速中である場合は、電流値記憶器517aは、取得したq軸電流値iqを記憶しない。
なお、本実施形態においては、定電流制御が実行されると、電流値記憶器517aは記憶した電流値を削除する。即ち、ベクトル制御の後に定電流制御が実行され、更に該定電流制御の後にベクトル制御が実行される場合は、電流値記憶器517aは、定電流制御が実行される際に1回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する構成とするが、この限りではない。例えば、所定回数ベクトル制御が行われるまでは電流値を削除せず、前記所定回数ベクトル制御が行われた後に定電流制御が行われると、記憶した電流値を削除する構成であっても良い。なお、定電流制御の後にベクトル制御が実行されてから、該ベクトル制御の後に定電流制御が実行されるまでの期間に行われるベクトル制御を、ベクトル制御1回分と定義する。
具体例として、前記所定回数が2回である場合について説明する。まず、ベクトル制御中に電流値を前記異なるタイミングで取得して複数個記憶する。該ベクトル制御の後に定電流制御が実行された場合は、電流値記憶器517aは記憶した電流値を削除しない。更に該定電流制御の後にベクトル制御が実行され、該ベクトル制御の後に定電流制御が実行された場合は、電流値記憶器517aは、1回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する。更に、4回目のベクトル制御が終了したら、電流値記憶器517aは、2回目のベクトル制御中に記憶した電流値を削除する。なお、図5及び図12に示すように、電流値記憶器517aには、定電流制御が実行されたか否かを表す信号が制御切替器515から出力され、電流値記憶器517aは、前記信号に基づいて記憶した電流値を削除するものとする。
また、本実施形態においては、加速度決定器517eが加速中、定速中、減速中の判断を行い、判断結果を電流値記憶器517a及び電流値決定器517bに出力したがこの限りではない。例えば、加速度決定器517eが決定した加速度aを電流値記憶器517a及び電流値決定器517bに出力し、電流値記憶器517a及び電流値決定器517bは、前記加速度aに基づいて加速中、定速駆動中、減速中の判断を行っても良い。
電流値決定器517bは、加速時電流記憶器517cが電流値を記憶する毎に、加速時電流記憶器517cに記憶されたq軸電流値iqに基づいて、振幅値I_acを決定する。また、電流値決定器517bは、減速時電流記憶器517dが電流値を記憶する毎に、減速時電流記憶器517dに記憶されたq軸電流値iqに基づいて、振幅値I_brを決定する。振幅値の決定方法は、第1実施形態において説明した方法と同様であるため、説明を省略する。
電流値決定器517bは、決定した振幅値I_ac及びI_brを電流値決定器517bの内部に設けられたメモリ等に記憶する。なお、電流値決定器517bは、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値に更新する。以降、電流値決定器517bは、加速時電流記憶器517cが電流値を記憶する毎に、振幅値I_acを決定し、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値I_acに更新することを繰り返す。また、電流値決定器517bは、減速時電流記憶器517dが電流値を記憶する毎に、振幅値I_brを決定し、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値I_brに更新することを繰り返す。
電流値決定器517bは、定電流制御における加速中は、振幅値I_acを電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値として決定し、前記振幅値I_ac及び指令位相θ_refに基づいて電流指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。また、定電流制御における減速中は、振幅値I_brを電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値として決定し、前記振幅値I_br及び指令位相θ_refに基づいて電流指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。
以降は、第1実施形態において説明した方法で、モータ制御装置157は定電流制御を行う。
図13は、本実施形態におけるモータ制御装置157を用いたモータの制御方法を示すフローチャートである。以下、図13を用いて、本実施形態におけるモータ509の制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aからの指示を受けたモータ制御装置157によって実行される。なお、第1実施形態におけるモータ制御装置157の制御方法と同じ制御方法である部分については説明を省略する。
まず、S301において、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はモータ509の駆動を開始する。
次に、S302において、制御切替器515は、モータ509の駆動が定電流制御器517によって制御される状態になるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。また、電流値決定器515aは、加速度決定器517eから出力された判断結果及び前記メモリに記憶されていた振幅値に基づいて電流指令値iα_ref及びiβ_refの振幅値を決定し、出力する。その結果、定電流制御器517による定電流制御が行われる。
その後、S303において、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。また、S303おいて、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘H’を出力した場合は、モータ制御装置157は処理をS304に進める。
S304において、回転子の指令速度ω_refが切替閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS302に戻り、定電流制御器517による定電流制御が続行される。
また、S304において、前記指令速度ω_refが切替閾値ωth以上の場合は、S305において、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を定電流制御器517からベクトル制御器518に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、ベクトル制御器518によるベクトル制御が行われる。
次に、S306において、回転子の加速度aが正の値である場合は、S307において、電流値記憶器517aは取得したq軸電流値iqを加速時電流記憶器517cに記憶する。その後、S308において、電流値決定器517bは、加速時電流記憶器517cに記憶されたq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。即ち、電流値決定器517bは、加速時電流記憶器517cが電流値を記憶する毎に、加速時電流記憶器517cに記憶されているq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。更に、S309において、電流値決定器517bは、前記平均値iq_aveに所定のマージンを加算した値を振幅値I_acとして決定し、メモリに記憶する。その後、モータ制御装置157は処理をS310に進める。
また、S306において、回転子の加速度aが正の値でない(a≦0)場合は、処理はS311に進む。S311において、回転子の加速度aが負の値(a<0)である場合は、S312において、電流値記憶器515aは取得したq軸電流値iqを減速時電流記憶器517dに記憶する。その後、S313において、電流値決定器515bは、減速時電流記憶器517cに記憶されたq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。即ち、電流値決定器517bは、減速時電流記憶器517dが電流値を記憶する毎に、減速時電流記憶器517dに記憶されているq軸電流値iqの平均値iq_aveを演算する。更に、S314において、電流値決定器515bは、前記平均値iq_aveに所定のマージンを加算した値を振幅値I_brとして決定し、メモリに記憶する。その後、モータ制御装置157は処理をS310に進める。
また、S311において、回転子の加速度aが負の値(a<0)でない場合は、処理はS310に進む。
S310において、前記指令速度ω_refが速度閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS302に戻り、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器をベクトル制御器518から定電流制御器517に切り替えるように各スイッチ516a、516b、516cの状態を制御する。その結果、定電流制御器517による定電流制御が行われる。
また、S310において、前記指令速度ω_refが速度閾値ωth以上の場合は、処理は再びS305に戻り、ベクトル制御器518によるベクトル制御が続行される。
以降、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力するまで、モータ制御装置157は前述した制御を繰り返し行い、モータ509の駆動を制御する。
以上のように、本実施形態では、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値の平均値に基づいて、定電流制御における駆動電流の振幅値I_acを決定し、定電流制御における加速中は、振幅値I_acに基づいてモータ制御を行う。この結果、回転子が加速するために必要最低限のトルクを発生させる電流を供給するため、定電流制御中において回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。また、ベクトル制御において回転子の減速中に用いられたq軸電流値の平均値に基づいて、定電流制御における駆動電流の振幅値I_brを決定し、定電流制御における減速中は、振幅値I_brに基づいてモータ制御を行う。この結果、減速中において必要最低限のトルクを発生させる電流を供給するため、定電流制御中において回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。また、電流値決定器517bは、加速時電流記憶器517cが電流値を記憶する毎に、振幅値I_acを決定し、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値I_acに更新する。また、電流値決定器517bは、減速時電流記憶器517dが電流値を記憶する毎に、振幅値I_brを決定し、前記メモリに以前に記憶されていた振幅値を新たに決定した振幅値I_brに更新する。この結果、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化に対応した電流をモータに供給できる。具体的には、モータの経年劣化や温度、湿度等の環境変化が起こり、回転子にかかる負荷トルクが変化したとしても、回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて、消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、q軸電流値iqに基づいて、振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、ベクトル制御中に位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refが電流値記憶器515aに記憶され、前記q軸電流指令値iq_refに基づいて振幅値を決定しても良い。
更に、本実施形態においては、ベクトル制御において回転子の加速中に用いられたq軸電流値に基づいて前記振幅値を決定したが、この限りではない。例えば、ベクトル制御において回転子の加速中に回転子にかかる負荷トルク値を決定し、前記負荷トルク値に基づいて前記振幅値を決定する構成であっても良い。具体的には、例えば、回転子402の推定位相θとCPU151aから出力された指令位相θ_refとの偏差から負荷トルク値Tを決定する。前記負荷トルク値Tと振幅値との関係を示すテーブルを予めCPU151aに記憶しておいて、前記テーブルに基づいて振幅値を読み出しても良い。
本実施形態におけるベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられているが、これに限定されるものではない。例えば、指令位相θ_refを基準とした回転座標系が用いられても良い。また、回転速度ω及び回転指令速度ω_refの決定は、式(10)を用いて行うことに限らない。例えば、モータ509のA相(またはB相)の巻線に流れる駆動電流、A相(またはB相)駆動電圧、A相(またはB相)の巻線に発生する誘起電圧等、回転子402の回転速度と相関のある周期的な信号を検出する。前記信号の値が0になる周期(ゼロクロス周期)を検出することによって、回転速度ω及び回転指令速度ω_refを決定しても良い。
更に、本実施形態においては、定電流制御の実行中に巻線に供給する電流が、式(1)及び(2)に示すような正弦波状の電流である場合について説明したが、この限りではない。例えば、各相の巻線にパルスを与えることによってモータを駆動させる構成であっても、本実施形態は適用できる。
なお、本実施形態においては、搬送される紙種に依らず振幅値を決定したが、この限りではなく、本実施形態と第2実施形態とを併用しても良い。即ち、紙種別に、加速中及び減速中の振幅値を決定し、前記振幅値に基づいて定電流制御を行っても良い。この結果、紙種に応じて、加速するために必要最低限のトルクを発生させる電流を供給するため、定電流制御中において回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。また、紙種に応じて、減速するために必要最低限のトルクを発生させる電流を供給するため、定電流制御中において回転子が脱調することを抑制することができる。更に、従来の定電流制御に比べて消費電力の増大や余剰トルクに起因したモータ音の増大を抑制することができる。
151a CPU
157 モータ制御装置
402 回転子
502 位相制御器
509 ステッピングモータ
513 位相推定器
517 定電流制御器
517a 電流値記憶器
517b 電流値決定器
518 ベクトル制御器

Claims (20)

  1. モータの回転子の目標位相を表す指令位相に基づいて前記モータを制御するモータ制御装置において、
    前記回転子の回転位相を推定する位相推定手段と、
    前記指令位相と前記位相推定手段によって推定された回転位相との偏差が小さくなるように、前記位相推定手段によって推定された回転位相を基準とした回転座標系の電流であって前記回転子にトルクを発生させるトルク電流を制御することによって、前記モータを制御する第1の制御モードと、前記モータの巻線に定電流を供給することによって前記モータを制御する第2の制御モードとを備えるモータ制御手段と、
    前記第1の制御モードの実行中に用いられたトルク電流の電流値を記憶する電流値記憶手段と、
    前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを、前記電流値記憶手段に記憶された電流値に基づいて決定する電流値決定手段と、
    を有し、
    前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードの実行中は前記電流値決定手段によって決定された電流の大きさに基づいて前記モータを制御することを特徴とするモータ制御装置。
  2. モータの回転子の目標速度を表す指令速度に基づいて前記モータを制御するモータ制御装置において、
    前記回転子の回転位相を推定する位相推定手段と、
    前記位相推定手段によって推定された前記回転位相の時間変化に基づいて前記回転子の回転速度を決定する速度決定手段と、
    前記指令速度と前記速度決定手段によって推定された回転速度との偏差が小さくなるように、前記位相推定手段によって推定された回転位相を基準とした回転座標系の電流であって前記回転子にトルクを発生させるトルク電流を制御することによって、前記モータを制御する第1の制御モードと、前記モータの巻線に定電流を供給することによって前記モータを制御する第2の制御モードとを備えるモータ制御手段と、
    前記第1の制御モードの実行中に用いられたトルク電流の電流値を記憶する電流値記憶手段と、
    前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを、前記電流値記憶手段に記憶された電流値に基づいて決定する電流値決定手段と、
    を有し、
    前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードの実行中は前記電流値決定手段によって決定された電流の大きさに基づいて前記モータを制御することを特徴とするモータ制御装置。
  3. 前記電流値記憶手段は、前記第1の制御モードにおいて前記モータの加速中に用いられたトルク電流の電流値を記憶し、
    前記電流値決定手段は、前記電流値記憶手段が電流値を記憶する毎に、前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを前記電流値記憶手段に記憶された電流値に基づいて決定し、
    前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードの実行中は、前記電流値決定手段によって決定された電流の大きさに基づいて前記モータを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記電流値記憶手段は、前記第1の制御モードの実行中に用いられたトルク電流の電流値を異なるタイミングで取得し、前記異なるタイミングで取得した複数個の電流値を記憶することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記電流値決定手段は、前記電流値記憶手段が電流値を記憶する毎に、前記電流値記憶手段に記憶された複数個の電流値の平均値を演算し、
    前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを、前記平均値に基づいて決定することを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
  6. 前記電流値決定手段は、前記電流値記憶手段が電流値を記憶する毎に、前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを、前記電流値記憶手段に記憶された複数個の電流値の最大値に基づいて決定することを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
  7. 更に、前記電流値記憶手段は、
    前記第1の制御モードにおいて前記モータの加速中に用いられたトルク電流の電流値を異なるタイミングで取得し、前記異なるタイミングで取得した複数個の電流値を記憶する加速時電流記憶手段と、
    前記第1の制御モードにおいて前記モータの減速中に用いられたトルク電流の電流値を異なるタイミングで取得し、前記異なるタイミングで取得した複数個の電流値を記憶する減速時電流記憶手段と、
    を有し、
    前記電流値決定手段は、前記加速時電流記憶手段が電流値を記憶する毎に、前記第2の制御モードにおいて前記モータの加速中に前記巻線に供給するべき電流である加速電流の大きさを、前記加速時電流記憶手段に記憶された複数個の電流値に基づいて決定し、
    更に、前記電流値決定手段は、前記減速時電流記憶手段が電流値を記憶する毎に、前記第2の制御モードにおいて前記モータの減速中に前記巻線に供給するべき電流である減速電流の大きさを、前記減速時電流記憶手段に記憶された複数個の電流値に基づいて決定し、
    前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードにおいて前記モータの加速中は、前記加速電流の大きさに基づいて前記モータを制御し、前記第2の制御モードにおいて前記モータの減速中は、前記減速電流の大きさに基づいて前記モータを制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  8. 前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードで前記モータの駆動を制御している状態で、前記上位装置から出力される、前記モータの回転子の回転速度を指令する指令速度が所定の値よりも小さい値から前記所定の値以上の値へと変化した場合は、制御モードを前記第2の制御モードから第1の制御モードへと切り替え、前記第1の制御モードで前記モータの駆動を制御している状態で、前記指令速度が前記所定の値以上の値から前記所定の値よりも小さい値へと変化した場合は、制御モードを前記第1の制御モードから第2の制御モードへと切り替えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  9. 前記電流値記憶手段は、前記第2の制御モードの後に第1の制御モードが実行されてから、該第1の制御モードの後に第2の制御モードが実行されるまでの期間に取得することで記憶したトルク電流の複数の電流値を、該第1の制御モードの後に第2の制御モードが実行される場合に削除することを特徴とする請求項8に記載のモータ制御装置。
  10. 前記モータ制御手段は、
    前記第1の制御モードにおける前記駆動電流の制御を実行するための第1の制御回路と、
    前記第2の制御モードにおける前記駆動電流の制御を実行するための第2の制御回路と、
    前記指令速度に基づいて、前記第1の制御回路を用いて前記モータを制御するか、前記第2の制御回路を用いて前記モータを制御するかを切り替える制御切替手段と、
    を有することを特徴とする請求項8又は9に記載のモータ制御装置。
  11. 更に、前記モータ制御手段は、
    前記モータの第1相の巻線及び第2相の巻線それぞれに駆動電流を供給する電流供給手段と、
    前記電流供給手段を駆動する駆動電圧を生成する電圧生成手段と、
    前記電流供給手段によって前記モータの第1相の巻線及び第2相の巻線それぞれに供給された駆動電流の電流値を検出する電流検出手段と、
    前記電圧生成手段によって生成された駆動電圧と、前記電流検出手段によって検出された電流値とに基づいて、前記モータの回転子の回転によって前記第1相の巻線及び第2相の巻線に誘起される誘起電圧を決定する誘起電圧決定手段と、
    前記誘起電圧決定手段によって決定された前記第1相の誘起電圧の大きさと前記第2相の誘起電圧の大きさとに基づいて前記モータの回転子の回転位相を推定する位相推定手段と、
    を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  12. 前記モータ制御手段は、
    前記指令位相と前記位相推定手段によって推定された回転位相との偏差が小さくなるように前記回転座標系における駆動電流の電流値を生成して出力する位相制御手段と、
    前記位相推定手段によって推定された回転位相に基づいて、前記電流検出手段によって検出された静止座標系の電流値を前記回転座標系の電流値へと座標変換する座標変換手段と、
    を有し、
    更に、前記モータ制御手段は、前記第1の制御モードが実行される際に、前記位相制御手段から出力された電流値と前記座標変換手段によって座標変換された電流値との偏差が小さくなるように前記モータの第1相の巻線及び第2相の巻線それぞれに供給する駆動電流の電流値を制御することによって前記モータを制御することを特徴とする請求項1を引用する請求項11に記載のモータ制御装置。
  13. 前記電圧生成手段は、前記位相制御手段から出力された電流値と前記座標変換手段によって座標変換された電流値との偏差が小さくなるように前記回転座標系の駆動電圧を生成し、
    前記モータ制御手段は、前記電圧生成手段によって生成された前記回転座標系の駆動電圧を前記静止座標系の駆動電圧に座標逆変換する座標逆変換手段を有し、
    前記電流供給手段は、前記座標逆変換手段によって座標逆変換された駆動電圧によって駆動されることを特徴とする請求項12に記載のモータ制御装置。
  14. 前記モータ制御手段は、
    前記指令速度と前記速度決定手段によって決定された回転速度との偏差が小さくなるように前記回転座標系における駆動電流の電流値を生成して出力する速度制御手段と、
    前記位相推定手段によって推定された回転位相に基づいて、前記電流検出手段によって検出された静止座標系の電流値を前記回転座標系の電流値へと座標変換する座標変換手段と、
    を有し、
    更に、前記モータ制御手段は、前記第1の制御モードが実行される際に、前記速度制御手段から出力された電流値と前記座標変換手段によって座標変換された電流値との偏差が小さくなるように前記モータの第1相の巻線及び第2相の巻線それぞれに供給する駆動電流の電流値を制御することによって前記モータを制御することを特徴とする請求項2を引用する請求項11に記載のモータ制御装置。
  15. 前記電圧生成手段は、前記速度制御手段から出力された電流値と前記座標変換手段によって座標変換された電流値との偏差が小さくなるように前記回転座標系の駆動電圧を生成し、
    前記モータ制御手段は、前記電圧生成手段によって生成された前記回転座標系の駆動電圧を前記静止座標系の駆動電圧に座標逆変換する座標逆変換手段を有し、
    前記電流供給手段は、前記座標逆変換手段によって座標逆変換された駆動電圧によって駆動されることを特徴とする請求項14に記載のモータ制御装置。
  16. 前記駆動電流は、前記回転座標系において、前記回転子にトルクを発生させるトルク電流成分と前記回転子の磁束強度に影響する励磁電流成分とを用いて表され、
    前記第1の制御回路は、前記励磁電流成分の値を0になるように制御し、前記トルク電流成分の値を制御することによって、前記モータを制御することを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  17. 前記所定の値は、前記誘起電圧決定手段が誘起電圧を決定することができる前記回転子の回転速度に応じて設定されることを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  18. 記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
    負荷を駆動するモータと、
    請求項1乃至17のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
    を有し、
    前記モータ制御装置は、前記負荷を駆動するモータの駆動を制御することを特徴とする画像形成装置。
  19. 前記電流値決定手段は、前記第2の制御モードの実行中に前記巻線に供給するべき電流の大きさを搬送される記録媒体の種類に応じて記憶する第2の電流値記憶手段を有し、
    前記モータ制御手段は、前記第2の制御モードの実行中は、前記第2の電流値記憶手段に記憶された、前記搬送される記録媒体の種類に応じた前記巻線に供給するべき電流の大きさに基づいて、前記モータを制御することを特徴とする請求項18に記載の画像形成装置。
  20. 前記負荷は、前記記録媒体を搬送する搬送ローラであることを特徴とする請求項18又は19に記載の画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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