以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲が以下の実施の形態に限定される趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、モータ制御装置が画像形成装置に設けられる場合について説明するが、モータ制御装置が設けられるのは画像形成装置に限定されるわけではない。例えば、記録媒体や原稿等のシートを搬送するシート搬送装置等にも用いられる。
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられるシート搬送装置を有するモノクロの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置の形式はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
以下に、図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、原稿給送装置201、読取装置202及び画像印刷装置301を有する。
原稿給送装置201の原稿積載部203に積載された原稿は、給紙ローラ204によって給送され、搬送ガイド206に沿って読取装置202の原稿ガラス台214上に搬送される。更に、原稿は、搬送ベルト208によって搬送されて、排紙ローラ205によって不図示の排紙トレイへ排紙される。読取装置202の読取位置において照明209によって照明された原稿画像からの反射光は、反射ミラー210、211、212からなる光学系によって画像読取部111に導かれ、画像読取部111によって画像信号に変換される。画像読取部111は、レンズ、光電変換素子であるCCD、CCDの駆動回路等で構成される。画像読取部111から出力された画像信号は、ASIC等のハードウェアデバイスで構成される画像処理部112によって各種補正処理が行われた後、画像印刷装置301へ出力される。前述の如くして、原稿の読取が行われる。即ち、原稿給送装置201及び読取装置202は、原稿読取装置として機能する。
また、原稿の読取モードとして、第1読取モードと第2読取モードがある。第1読取モードは、一定速度で搬送される原稿の画像を、所定の位置に固定された照明系209及び光学系によって読み取るモードである。第2読取モードは、読取装置202の原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を、一定速度で移動する照明系209及び光学系によって読み取るモードである。通常、シート状の原稿の画像は第1読取モードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿の画像は第2読取モードで読み取られる。
画像印刷装置301の内部には、シート収納トレイ302、304が設けられている。シート収納トレイ302、304には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ302にはA4サイズの普通紙が収納され、シート収納トレイ304にはA4サイズの厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等は記録媒体に含まれる。
シート収納トレイ302に収納された記録媒体は、ピックアップローラ303によって給送されて、搬送ローラ306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。また、シート収納トレイ304に収納された記録媒体は、ピックアップローラ305によって給送されて、搬送ローラ307及び306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。
読取装置202から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含む光走査装置311に入力される。また、感光ドラム309は、帯電器310によって外周面が帯電される。感光ドラム309の外周面が帯電された後、読取装置202から光走査装置311に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置311からポリゴンミラー及びミラー312、313を経由し、感光ドラム309の外周面に照射される。この結果、感光ドラム309の外周面に静電潜像が形成される。
続いて、静電潜像が現像器314内のトナーによって現像され、感光ドラム309の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム309に形成されたトナー像は、感光ドラム309と対向する位置(転写位置)に設けられた転写帯電器315によって記録媒体に転写される。この転写タイミングに合わせて、レジストレーションローラ308は記録媒体を転写位置へ送り込む。
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト317によって定着器318へ送り込まれ、定着器318によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319、324によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ319、搬送ローラ320、及び反転ローラ321によって、反転パス325へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ322、323によって再度レジストレーションローラ308へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ319、324によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
また、第1面に画像形成された記録媒体がフェースダウンで画像形成装置100の外部へ排紙される場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319を通って搬送ローラ320へ向かう方向へ搬送される。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ320のニップ部を通過する直前に搬送ローラ320の回転が反転することによって、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体が排紙ローラ324を経由して、画像形成装置100の外部へ排出される。
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。なお、本実施形態における負荷とはモータによって駆動される対象物である。例えば、給紙ローラ204、303、305、レジストレーションローラ308及び排紙ローラ319等の各種ローラ(搬送ローラ)は本実施形態における負荷に対応する。本実施形態のモータ制御装置は、これら負荷を駆動するモータに適用することができる。
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。システムコントローラ151は、図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部112、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、センサ類159、ACドライバ160と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御装置157に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが記憶される。
システムコントローラ151は、画像処理部112における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部112に送信する。更に、システムコントローラ151は、センサ類159からの信号を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。
高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器310、現像器314、転写帯電器315等)に必要な電圧を供給する。
モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、負荷を駆動するモータ509を制御する。なお、図2においては、画像形成装置のモータとしてモータ509のみが記載されているが、実際には、画像形成装置には2個以上のモータが設けられている。また、1個のモータ制御装置が複数個のモータを制御する構成であっても良い。更に、図2においては、モータ制御装置が1個しか設けられていないが、実際には、2個以上のモータ制御装置が画像形成装置に設けられている。
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいてACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器318に含まれる。
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、ユーザが設定した情報を操作部152から受信し、ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成動作の進行状況、原稿読取装置201及び画像印刷装置301におけるシート材のジャムや重送等に関する情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。
前述の如くして、システムコントローラ151は画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。
[モータ制御装置]
次に、本実施形態におけるモータ制御装置157について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置157は、ベクトル制御を用いてモータを制御する。
<ベクトル制御>
まず、図3及び図4を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157がベクトル制御を行う方法について説明する。なお、以下の説明におけるモータには、モータの回転子の回転位相を検出するためのロータリエンコーダなどのセンサは設けられていないが、ロータリエンコーダなどのセンサが設けられていてもよい。
図3は、A相(第1相)とB相(第2相)との2相から成るステッピングモータ(以下、モータと称する)509と、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。図3では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸であるα軸と、B相の巻線に対応した軸であるβ軸とが定義されている。また、図3では、回転子402に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向に沿ってd軸が定義され、d軸から反時計回りに90度進んだ方向(d軸に直交する方向)に沿ってq軸が定義されている。α軸とd軸との成す角度はθと定義され、回転子402の回転位相は角度θによって表される。ベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。具体的には、ベクトル制御では、巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの、回転座標系における電流成分であって、回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)と巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)とが用いられる。
ベクトル制御とは、回転子の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御方法である。また、回転子の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する方法もある。
図4は、モータ509を制御するモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。なお、モータ制御装置157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
図4に示すように、モータ制御装置157は、ベクトル制御を行う回路として、位相制御器502、電流制御器503、座標逆変換器505、座標変換器511、モータの巻線に駆動電流を供給するPWMインバータ506等を有する。座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系からq軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、巻線に流れる駆動電流は、回転座標系における電流値であるq軸成分の電流値(q軸電流)とd軸成分の電流値(d軸電流)とによって表される。なお、q軸電流は、モータ509の回転子402にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータ509の巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流に相当し、回転子402のトルクの発生には寄与しない。モータ制御装置157は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。この結果、モータ制御装置157は、回転子402にかかる負荷トルクに応じてq軸電流を制御することによって、回転子402が回転するために必要なトルクを効率的に発生させることができる。即ち、ベクトル制御においては、図3に示す電流ベクトルの大きさは、回転子402にかかる負荷トルクに応じて変化する。
モータ制御装置157は、モータ509の回転子402の回転位相θを後述する方法により決定し、その決定結果に基づいてベクトル制御を行う。CPU151aは、モータ509の回転子402の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、指令位相θ_refをモータ制御装置157へ出力する。なお、実際には、CPU151aはモータ制御装置157に対してパルス信号を出力しており、パルスの数が指令位相に対応し、パルスの周波数が目標速度に対応する。指令位相θ_refは、例えば、モータ509の目標速度に基づいて生成される。
減算器101は、位相決定器513から出力された、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差Δθを演算して出力する。
位相制御器502は、偏差Δθを周期T(例えば、200μs)で取得する。位相制御器502は、比例制御(P)、積分制御(I)、微分制御(D)に基づいて、減算器101から取得する偏差Δθが小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、P制御、I制御、D制御に基づいて減算器101から取得する偏差Δθが0になるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。なお、P制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、I制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間積分に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、D制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間変化に比例する値に基づいて制御する制御方法である。本実施形態における位相制御器502は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成するが、これに限定されるものではない。例えば、位相制御器502は、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しても良い。なお、本実施形態においては、巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸電流指令値id_refは0に設定されるが、これに限定されるものではない。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。なお、電流検出器507、508が電流を検出する周期は、例えば、位相制御器502が偏差Δθを取得する周期T以下の周期(例えば、25μs)である。
A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、図3に示す電流ベクトルの位相θeを用いて次式によって表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義される。また、Iは電流ベクトルの大きさを示す。
iα=I*cosθe (1)
iβ=I*sinθe (2)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511と誘起電圧決定器512に入力される。
座標変換器511は、次式によって、静止座標系における電流値iα及びiβを回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
id= cosθ´*iα+sinθ´*iβ (3)
iq=-sinθ´*iα+cosθ´*iβ (4)
座標変換器511は、変換された電流値iqを減算器102に出力する。また、座標変換器511は、変換された電流値idを減算器103に出力する。
減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
電流制御器503は、PID制御に基づいて、入力される偏差がそれぞれ小さくなるように駆動電圧Vq及びVdを生成する。具体的には、電流制御器503は、入力される偏差がそれぞれ0になるように駆動電圧Vq及びVdを生成して座標逆変換器505に出力する。なお、本実施形態における電流制御器503は、PID制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、電流制御器503は、PI制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しても良い。
座標逆変換器505は、電流制御器503から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
Vα=cosθ´*Vd-sinθ´*Vq (5)
Vβ=sinθ´*Vd+cosθ´*Vq (6)
座標逆変換器505は、逆変換されたVα及びVβを誘起電圧決定器512及びPWMインバータ506に出力する。
PWMインバータ506は、フルブリッジ回路を有する。フルブリッジ回路は座標逆変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM(パルス幅変調)信号によって駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβを生成し、駆動電流iα及びiβをモータM2の各相の巻線に供給することによって、モータ509を駆動させる。なお、本実施形態においては、PWMインバータはフルブリッジ回路を有しているが、PWMインバータはハーフブリッジ回路等であっても良い。
次に、回転位相θの決定方法について説明する。回転子402の回転位相θの決定には、回転子402の回転によってモータ509のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧Eα及びEβの値が用いられる。誘起電圧の値は誘起電圧決定器512によって決定(算出)される。具体的には、誘起電圧Eα及びEβは、A/D変換器510から誘起電圧決定器512に入力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器505から誘起電圧決定器512に入力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって決定される。
Eα=Vα-R*iα-L*diα/dt (7)
Eβ=Vβ-R*iβ-L*diβ/dt (8)
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。巻線レジスタンスR及び巻線インダクタンスLの値は使用されているモータM2に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置157に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
誘起電圧決定器512によって決定された誘起電圧Eα及びEβは位相決定器513に出力される。
位相決定器513は、誘起電圧決定器512から出力された誘起電圧Eαと誘起電圧Eβとの比に基づいて、次式によってモータ509の回転子402の回転位相θを決定する。
θ=tan^-1(-Eβ/Eα) (9)
なお、本実施形態においては、位相決定器513は、式(9)に基づく演算を行うことによって回転位相θを決定したが、この限りではない。例えば、位相決定器513は、ROM151b等に記憶されている、誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβと誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβとに対応する回転位相θとの関係を示すテーブルを参照することによって回転位相θを決定してもよい。
前述の如くして得られた回転子402の回転位相θは、減算器101及び位相調整器520に入力される。
位相調整器520は、入力される回転位相θを後述する方法により調整し、調整後の回転位相θ´を座標変換器511及び座標逆変換器505に出力する。
モータ制御装置157は、上述の制御を繰り返し行う。
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置157は、指令位相θ_refと回転位相θとの偏差が小さくなるように回転座標系における電流値を制御するベクトル制御を行う。ベクトル制御を行うことによって、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。
<位相調整器>
図13は、電流ベクトルの位相θeと回転位相θとの位相差(負荷角δ)と電流ベクトルに対応する電流に起因してモータに発生するトルクとの関係の一例を示す図である。図13の破線はモータに発生するマグネットトルクを示し、図13の一点鎖線はモータに発生するリラクタンストルクを示す。また、図13の実線は、マグネットトルクとリラクタンストルクとの和(合成トルク)を示す。なお、図13には、電流ベクトルが所定の大きさである状態における負荷角δと各トルクとの関係が示されている。
図13に示すように、0°≦δ≦180°において、マグネットトルクは負荷角δが90°である状態において最大となる。一方、モータの出力トルク(合成トルク)は、リラクタンストルクに起因して負荷角δが90°とは異なる値(図13に示す例では115°)である状態において最大となる。なお、合成トルクが最大となる負荷角δは、モータに発生するリラクタンストルクの大きさによって異なる。リラクタンストルクの大きさは、モータの巻線のインダクタンスのd軸方向の成分とq軸方向の成分との差が大きいほど大きくなる。巻線のインダクタンスの値はモータ毎に異なる。即ち、リラクタンストルクの大きさはモータ毎に異なり、例えば、リラクタンストルクの大きさは、HBモータよりもPMモータの方が大きい。以下の説明では、ステッピングモータ509としてPMモータが用いられる場合について説明するが、HBモータが用いられる場合であっても、同様の構成が適用される。
上述のベクトル制御においては、d軸電流指令値id_refが0に設定され、q軸電流指令値iq_refが偏差Δθに基づいて設定されるため、負荷角δは略90°となる。d軸電流指令値id_refが0に設定され、q軸電流指令値iq_refが偏差Δθに基づいて設定されている(即ち、負荷角δが90°である)状態において、モータにかかる負荷トルクが、モータの巻線に流し得る最大の電流に対応するトルクを超えると、モータを駆動させることができなくなってしまう。
そこで、本実施形態では、以下の構成が適用されることによって、モータを効率的に駆動する。
図4に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157には、位相決定器513によって決定された回転位相θを調整する位相調整器520が設けられている。位相調整器520には、モータの正回転、逆回転を示す信号(CW/CCW)がCPU151aから入力される。
位相調整器520は、正回転、逆回転を示す信号に基づいて、座標変換及び座標逆変換に用いられる回転位相θ´を生成する。具体的には、位相調整器520は、正回転を示す信号がCPU151aから入力されると、以下の式(10)に基づいて回転位相θ´を生成する。
θ´=θ+θofs (10)
また、位相調整器520は、逆回転を示す信号がCPU151aから入力されると、以下の式(11)に基づいて回転位相θ´を生成する。
θ´=θ-θofs (11)
なお、調整値θofsは、モータに固有の値であり、予め実験によって設定された値である。調整値θofsは、0°<θofs<90°であり、例えば、ROM151bに格納されている。本実施形態では、調整値θofsは25°に設定されている。
図5は、回転位相θ、調整値θofs、回転位相θ´、電流ベクトル及び負荷角δの関係を示す図である。図5(a)は、回転位相θに基づいて巻線に流れる電流が制御される場合、即ち、負荷角δが90°である場合における回転位相θ、電流ベクトル及び負荷角δの関係を示す図である。図5(b)は、回転位相θ´に基づいて巻線に流れる電流が制御される場合における回転位相θ、調整値θofs、回転位相θ´、電流ベクトル及び負荷角δの関係を示す図である。図5(b)では、回転位相θ´を基準とする回転座標系として、d´軸及びq´軸が示されている。
本実施形態では、図5(b)に示すように、回転位相θ´に基づいて巻線に流れる駆動電流が制御される。具体的には、回転位相θ´を基準とする回転座標系における電流値が電流値id及び電流値iqとして座標変換器511から出力される。この結果、巻線に供給される駆動電流の電流ベクトルの向きが、回転位相θ´を基準とする回転座標系におけるq´軸方向になるように駆動電流が制御される。即ち、電流ベクトルが所定の大きさである(巻線に所定の電流が流れている)状態においてモータが出力できるトルクが最大となるように負荷角δが調整される。その結果、巻線に所定の電流が供給されているときにモータが出力できるトルクを、負荷角δが90°である場合(図5(a)に示す場合)よりも大きくすることができる。その結果、モータにかかる負荷トルクが、モータの巻線に流し得る最大の電流に対応するトルクを超えてしまうことを、負荷角δが90°である状態でモータが制御される場合よりも抑制することができる。即ち、モータを効率的に駆動することができる。
〔第2実施形態〕
画像形成装置及びモータ制御装置の構成が第1実施形態と同様である部分については、説明を省略する。
第1実施形態では、位相決定器513によって決定された回転位相θが位相調整器520によって調整された回転位相θ´に基づいて、巻線に流れる電流が制御されることによって負荷角δが制御された。本実施形態では、位相制御器502がq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを制御することによって、負荷角δが制御される。
図6は、本実施形態におけるモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。図6に示すように、本実施形態では、座標変換器511及び座標逆変換器505は、回転位相θに基づいて電流値の変換を行う。
図7は、モータ制御装置157に設けられた位相制御器502の構成の例を示すブロック図である。図7に示すように、位相制御器502は、比例制御(P)を行う比例制御部502a、積分制御(I)を行う積分制御部502b、微分制御(D)を行う微分制御部502cを有する。また、位相制御器502は、比例制御部502a、積分制御部502b、微分制御部502cから出力された信号を加算する加算器502dを有する。更に、位相制御器502は、加算器502dから出力された信号に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成するq軸電流生成部502e及びq軸電流指令値iq_refに基づいてd軸電流指令値id_refを生成するd軸電流生成部502fを有する。
比例制御部502aは、減算器101から出力される偏差が0になるように、当該偏差に比例する値を出力する。また、積分制御部502bは、減算器101から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間積分に比例する値を出力する。また、微分制御部502cは、減算器101から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間変化に比例する値を出力する。
そして、加算器502dは、比例制御部502a、積分制御部502b、微分制御部502cから出力された値を加算し、加算された値がq軸電流生成部502eに出力される。
q軸電流生成部502eは、加算器502dから出力された値に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成して出力する。具体的には、例えば、加算器502dから出力された値に予め設定された比例係数を乗算することによってq軸電流指令値iq_refを生成して出力する。
d軸電流生成部502fは、合成トルクが最大となる負荷角δに関する情報が記憶されたメモリ502gを有する。本実施形態では、メモリ502gには、負荷角δが115°(即ち、調整値θofsが25°)であることを示す情報が記憶されている。
d軸電流生成部502fは、図8に示すように、入力されるq軸電流指令値iq_refとメモリ502gに記憶されている負荷角δ(調整値θofs)に関する情報とに基づいてd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、d軸電流生成部502fは、q軸電流指令値iq_refとd軸電流指令値id_refとの比が、調整値θofsに対応する所定の値になるようにd軸電流指令値id_refを生成する。なお、d軸電流生成部502fは、例えば、メモリ502gに記憶されている、負荷角δ(調整値θofs)に基づくq軸電流指令値iq_refとd軸電流指令値id_refとの関係を示すテーブルに基づいて、d軸電流指令値id_refを生成する。また、d軸電流生成部502fは、q軸電流指令値iq_refの絶対値が大きいほど、負の値であり且つ絶対値が大きいd軸電流指令値id_refを生成する。
なお、本実施形態における位相制御器502は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、位相制御器502は、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成しても良い。
以上のように、本実施形態では、位相制御器502がq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを制御することによって、合成トルクが最大となる負荷角になるように負荷角δが制御される。具体的には、q軸電流指令値iq_refとd軸電流指令値id_refとの比が調整値θofsに対応する所定の値になるように位相制御器502がd軸電流指令値id_refを生成することによって、合成トルクが最大となる負荷角になるように負荷角δが制御される。この結果、巻線に供給される駆動電流の電流ベクトルの向きが、回転位相θ´を基準とする回転座標系におけるq´軸方向になるように駆動電流が制御される。即ち、電流ベクトルが所定の大きさである(巻線に所定の電流が流れている)状態においてモータが出力できるトルクが最大となるように負荷角δが調整される。その結果、巻線に所定の電流が供給されているときにモータが出力できるトルクを、負荷角δが90°である場合(図5(a)に示す場合)よりも大きくすることができる。その結果、モータにかかる負荷トルクが、モータの巻線に流し得る最大の電流に対応するトルクを超えてしまうことを、負荷角δが90°である状態でモータが制御される場合よりも抑制することができる。即ち、モータを効率的に駆動することができる。
〔第3実施形態〕
画像形成装置及びモータ制御装置の構成が第1実施形態と同様である部分については、説明を省略する。
第1実施形態では、モータの回転状態に拘わらず位相決定器513によって決定された回転位相θが位相調整器520によって調整された回転位相θ´に基づいて、巻線に流れる電流が制御されることによって負荷角δが制御された。本実施形態では、電流値iqが閾値iqth以上になったら回転位相θ´に基づく負荷角δの制御が行われる。
図9は、本実施形態におけるモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。図9に示すように、本実施形態では、座標変換器511から出力される電流値iqが位相調整器520に入力される。
図10は、位相調整器520の構成の例を示すブロック図である。図10に示すように、位相調整器520は、位相決定器513から出力される回転位相θを調整する調整部520a及び座標変換器511から出力される電流値iqが閾値iqth以上であるか否かを判定する判定部520bを有する。また、位相調整器520は、位相決定器513から出力される回転位相θと調整部520aによって調整された回転位相θ´とのいずれか一方を、電流値の変換に用いられる回転位相θ´´として出力するスイッチ520cを有する。
調整部520aは、第1実施形態における式(10)、(11)に基づいて、位相決定器513から出力される回転位相θを調整し、調整後の回転位相θ´を出力する。
判定部520bは、座標変換器から出力される電流値iqが閾値iqth以上である場合は、調整部520aから出力される回転位相θ´が、電流値の変換に用いられる回転位相θ´´として出力されるようにスイッチ520cを制御する。この結果、調整部520aから出力される回転位相θ´が回転位相θ´´として位相調整部520から出力される。即ち、合成トルクが最大になるように負荷角δが制御される。
また、判定部520bは、座標変換器から出力される電流値iqが閾値iqth未満である場合は、位相決定器513から出力される回転位相θが、電流値の変換に用いられる回転位相θ´´として出力されるようにスイッチ520cを制御する。この結果、位相決定器513から出力される回転位相θが回転位相θ´´として位相調整部520から出力される。即ち、負荷角δが90°である状態でモータ509が制御される。
なお、閾値iqthは、負荷角δが90°である状態でモータ509が制御される際にモータ509の巻線に流し得る最大の電流が流れるときに、モータ509が出力するトルクに対応する電流値iqよりも小さい値に設定される。
図11は、本実施形態におけるモータ制御装置157がモータ509を制御する方法を説明するフローチャートである。以下に、図11を用いて、モータ制御装置157がモータ509を制御する方法を説明する。このフローチャートの処理は、モータ制御装置157によって実行される。なお、このフローチャートの処理中、位相調整器520は、例えば電流検出器507、508が電流を検出する周期と同じ周期で電流値iqを取得する。
まず、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の制御を開始する。enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、モータ制御装置157の稼働が禁止される。即ち、モータ制御装置157によるモータ509の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、モータ制御装置157の稼働は許可され、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の制御を行う。
次に、S1001において、モータ制御装置157は、モータ509をベクトル制御によって駆動する。
その後、S1002において、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘L’が出力された場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。
また、S1002において、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力された場合は、モータ制御装置157は処理をS1003に進める。
S1003において、電流値iqが閾値iqth以上である場合は、処理はS1004に進む。
S1004において、モータ制御装置157は、調整部520aから出力される回転位相θ´が回転位相θ´´として位相調整器520から出力されるように、位相調整器520を制御する。この結果、回転位相θ´に基づく負荷角δの制御が行われる。即ち、合成トルクが最大になるように負荷角δが制御される。
また、S1003において、電流値iqが閾値iqth未満である場合は、処理はS1005に進む。
S1005において、モータ制御装置157は、位相決定器513から出力される回転位相θが回転位相θ´´として位相調整器520から出力されるように、位相調整器520を制御する。この結果、即ち、負荷角δが90°である状態でモータ509が制御される。
以降、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘L’が出力されるまで、モータ制御装置157は前述した制御を繰り返し行い、モータ509の駆動を制御する。
以上のように、本実施形態では、電流値iqが閾値iqth未満である場合は、位相決定器513から出力される回転位相θが回転位相θ´´として位相調整部520から出力される。即ち、負荷角δが90°である状態でモータ509が制御される。また、電流値iqが閾値iqth以上である場合は、調整部520aから出力される回転位相θ´が回転位相θ´´として位相調整部520から出力される。即ち、合成トルクが最大になるように負荷角δが制御された状態でモータ509が制御される。なお、閾値iqthは、負荷角δが90°である状態でモータ509が制御される際にモータ509の巻線に流し得る最大の電流が流れるときに、モータ509が出力するトルクに対応する電流値iqよりも小さい値に設定される。
電流値iqが閾値iqth以上になったら合成トルクが最大になるように負荷角δが制御されることによって、電流値iqに拘わらず常に合成トルクが最大になるように負荷角δが制御される場合よりも、d軸電流により回転子402が減磁することに起因してモータの寿命が短くなることを抑制することができる。また、電流値iqが閾値iqth以上になったら合成トルクが最大になるように負荷角δが制御されることによって、モータにかかる負荷トルクがモータの巻線に流し得る最大の電流に対応するトルクを超えてしまうことを、負荷角δが90°である状態でモータが制御される場合よりも抑制することができる。即ち、モータを効率的に駆動することができる。
なお、本実施形態では、位相調整器520は、電流値iqに基づいてスイッチ520cを制御することによって、回転位相θ´´として出力する回転位相を回転位相θと回転位相θ´との間で切り替えたが、この限りではない。例えば、位相調整器520は、調整部520aが用いる調整値θofsを電流値iqに基づいて切り替える構成でもよい。具体的には、位相調整器520は、電流値iqが閾値iqth以上である場合は合成トルクが最大になるように(例えば25°に)調整値θofsを設定する。また、位相調整器520は、電流値iqが閾値iqth未満である場合は負荷角δが90°になるように(例えば、0°に)調整値θofsを設定する。そして、位相調整器520は、設定された調整値θofsに基づいて調整部520aが調整した回転位相θ´を出力し、当該回転位相θ´に基づいて電流値の変換が行われる。
第1実施形態乃至第3実施形態の構成は、正方向及び逆方向に回転するモータに限らず、正方向にのみ回転するモータにも適用される。
また、第1実施形態乃至第3実施形態においては、負荷を駆動するモータとしてステッピングモータが用いられているが、DCモータ等の他のモータであっても良い。また、モータは2相モータである場合に限らず、3相モータ等の他のモータであっても第1実施形態乃至第3実施形態を適用することができる。
また、第1実施形態乃至第3実施形態におけるベクトル制御では、位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、回転子402の回転速度ωをフィードバックしてモータを制御する構成であっても良い。具体的には、図12に示すように、モータ制御装置内部に速度決定器514を設け、速度決定器514が位相決定器513から出力された回転位相θの所定期間における変化量に基づいて回転速度ωを決定する。なお、速度の決定には、以下の式(12)が用いられるものとする。
ω=dθ/dt (12)
そして、CPU151aは回転子の目標速度を表す指令速度ω_refを出力する。更に、モータ制御装置内部に速度制御器500を設け、速度制御器500が回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する構成とする。このような速度フィードバック制御を行うことによって、モータを制御する構成であっても良い。なお、図12では、速度決定器514は、位相決定器513から出力された回転位相θの所定期間における変化量に基づいて回転速度ωを決定しているが、速度決定器514は、位相調整器520から出力される回転位相θ´の所定期間における変化量に基づいて回転速度ωを決定してもよい。
また、第1実施形態乃至第3実施形態においては、回転子として永久磁石が用いられているが、これに限定されるものではない。