以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲が以下の実施の形態に限定される趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、モータ制御装置が画像形成装置に設けられる場合について説明するが、モータ制御装置が設けられるのは画像形成装置に限定されるわけではない。例えば、記録媒体や原稿等のシートを搬送するシート搬送装置等にも用いられる。
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられるシート搬送装置を有するモノクロの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置の形式はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
以下に、図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、原稿給送装置201、読取装置202及び画像印刷装置301を有する。
原稿給送装置201の原稿積載部203に積載された原稿は、給紙ローラ204によって1枚ずつ給紙され、搬送ガイド206に沿って読取装置202の原稿ガラス台214上に搬送される。更に、原稿は、搬送ベルト208によって一定速度で搬送されて、排紙ローラ205によって不図示の排紙トレイへ排紙される。読取装置202の読取位置において照明209によって照明された原稿画像からの反射光は、反射ミラー210、211、212からなる光学系によって画像読取部111に導かれ、画像読取部111によって画像信号に変換される。画像読取部111は、レンズ、光電変換素子であるCCD、CCDの駆動回路等で構成される。画像読取部111から出力された画像信号は、ASIC等のハードウェアデバイスで構成される画像処理部112によって各種補正処理が行われた後、画像印刷装置301へ出力される。前述の如くして、原稿の読取が行われる。即ち、原稿給送装置201及び読取装置202は、原稿読取装置として機能する。
また、原稿の読取モードとして、第1読取モードと第2読取モードがある。第1読取モードは、一定速度で搬送される原稿の画像を、所定の位置に固定された照明系209及び光学系によって読み取るモードである。第2読取モードは、読取装置202の原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を、一定速度で移動する照明系209及び光学系によって読み取るモードである。通常、シート状の原稿の画像は第1読取モードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿の画像は第2読取モードで読み取られる。
画像印刷装置301の内部には、シート収納トレイ302、304が設けられている。シート収納トレイ302、304には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ302にはA4サイズの普通紙が収納され、シート収納トレイ304にはA4サイズの厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等は記録媒体に含まれる。
シート収納トレイ302に収納された記録媒体は、給紙ローラ303によって給送されて、搬送ローラ306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。また、シート収納トレイ304に収納された記録媒体は、給紙ローラ305によって給送されて、搬送ローラ307及び306によってレジストレーションローラ308へ送り出される。
読取装置202から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含む光走査装置311に入力される。また、感光ドラム309は、帯電器310によって外周面が帯電される。感光ドラム309の外周面が帯電された後、読取装置202から光走査装置311に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置311からポリゴンミラー及びミラー312、313を経由し、感光ドラム309の外周面に照射される。この結果、感光ドラム309の外周面に静電潜像が形成される。なお、感光ドラムの帯電には、例えば、コロナ帯電器や帯電ローラを用いた帯電方法が用いられる。
続いて、静電潜像が現像器314内のトナーによって現像され、感光ドラム309の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム309に形成されたトナー像は、感光ドラム309と対向する位置(転写位置)に設けられた転写帯電器315によって記録媒体に転写される。この転写タイミングに合わせて、レジストレーションローラ308は記録媒体を転写位置へ送り込む。
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト317によって定着器318へ送り込まれ、定着器318によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319、324によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ319、搬送ローラ320、及び反転ローラ321によって、反転パス325へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ322、323によって再度レジストレーションローラ308へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ319、324によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
また、第1面に画像形成された記録媒体がフェースダウンで画像形成装置100の外部へ排紙される場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319を通って搬送ローラ320へ向かう方向へ搬送される。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ320のニップ部を通過する直前に搬送ローラ320の回転が反転することによって、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体が排紙ローラ324を経由して、画像形成装置100の外部へ排出される。
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。なお、本発明における負荷とはモータによって駆動される対象物である。例えば、給紙ローラ204、303、305、レジストレーションローラ308及び排紙ローラ319等の各種ローラ(搬送ローラ)や感光ドラム309、搬送ベルト208、317、照明系209及び光学系等は本発明における負荷に対応する。本実施形態のモータ制御装置は、これら負荷を駆動するモータに適用することができる。
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。システムコントローラ151は、図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部112、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、センサ類159、ACドライバ160と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御装置157に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが記憶される。
システムコントローラ151は、画像処理部112における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部112に送信する。更に、システムコントローラ151は、センサ類159からの信号を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器310、現像器314、転写帯電器315等)に必要な電圧を供給する。なお、センサ類159には、搬送ローラによって搬送される記録媒体を検知するセンサ等が含まれる。
モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、負荷を駆動するモータ509を制御する。なお、図2においては、画像形成装置のモータとしてモータ509のみが記載されているが、実際には、画像形成装置には複数個のモータが設けられているものとする。また、1個のモータ制御装置が複数個のモータを制御する構成であっても良い。更に、図2においては、モータ制御装置が1個しか設けられていないが、実際には、複数個のモータ制御装置が画像形成装置に設けられているものとする。
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいてACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器318に含まれる。
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、ユーザが設定した情報を操作部152から受信し、ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成動作の進行状況、原稿読取装置201及び画像印刷装置301におけるシート材のジャムや重送等に関する情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。
前述の如くして、システムコントローラ151は画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。
[モータ制御装置]
次に、本実施形態におけるモータ制御装置について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置は、第1制御モードとしてのベクトル制御と第2制御モードとしての定電流制御とのいずれの制御方法でもモータを制御することができる。
<ベクトル制御>
まず、図3及び図4を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157がベクトル制御を行う方法について説明する。なお、以下の説明におけるモータには、モータの回転子の回転位相を検出するためのロータリエンコーダなどのセンサは設けられていないものとする。
図3は、A相(第1相)とB相(第2相)との2相から成るステッピングモータ(以下、モータと称する)509と、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。図3では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸であるα軸と、B相の巻線に対応した軸であるβ軸とが定義されている。また、図3では、回転子402に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向に沿ってd軸が定義され、d軸から反時計回りに90度進んだ方向(d軸に直交する方向)に沿ってq軸が定義されている。α軸とd軸との成す角度はθと定義され、回転子402の回転位相は角度θによって表される。ベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。具体的には、ベクトル制御では、巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの、回転座標系における電流成分であって、回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)と巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)とが用いられる。
ベクトル制御とは、回転子の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御方法である。また、回転子の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する方法もある。
図4は、モータ509を制御するモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。なお、モータ制御装置157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
図4に示すように、モータ制御装置157は、定電流制御を行う定電流制御器700、ベクトル制御を行うベクトル制御器701を有する。
モータ制御装置157は、ベクトル制御を行う回路として、位相制御器502、電流制御器503、504、座標逆変換器505、座標変換器511、モータの巻線に駆動電流を供給するPWMインバータ506等を有する。座標変換器511は、モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系からq軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、巻線に流れる駆動電流は、回転座標系における電流値であるq軸成分の電流値(q軸電流)とd軸成分の電流値(d軸電流)とによって表される。なお、q軸電流は、モータ509の回転子402にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータ509の巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流に相当し、回転子402のトルクの発生には寄与しない。モータ制御装置157は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。この結果、モータ制御装置157は、回転子402にかかる負荷トルクに応じてq軸電流を制御することによって、回転子402が回転するために必要なトルクを効率的に発生させることができる。即ち、ベクトル制御においては、図3に示す電流ベクトルの大きさは、回転子402にかかる負荷トルクに応じて変化する。
モータ制御装置157は、モータ509の回転子402の回転位相θを後述する方法により決定し、その決定結果に基づいてベクトル制御を行う。CPU151aは、モータ509の回転子402の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、所定の時間周期Tで指令位相θ_refをモータ制御装置157へ出力する。
減算器101は、モータ509の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差を演算し、該偏差を位相制御器502に出力する。
図5は、位相制御器502の構成を示すブロック図である。なお、図5に示す位相制御器502の構成は本実施形態における一例であり、位相制御器502の構成がこれに限定されるわけではない。
図5に示すように、位相制御器502は、比例制御(P)を行う比例制御部502a、積分制御(I)を行う積分制御部502b、微分制御(D)を行う微分制御部502cを有する。また、位相制御器502は、比例制御部502a、積分制御部502b、微分制御部502cから出力された信号を加算する加算器502dを有する。更に、位相制御器502は、加算器502dから出力された信号に基づいてq軸電流指令値(目標値)iq_refを生成するq軸電流生成部502eと、d軸電流指令値(目標値)id_refを生成するd軸電流生成部502fを有する。
位相制御器502は、比例制御(P)、積分制御(I)、微分制御(D)に基づいて、減算器101から出力される偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、P制御、I制御、D制御に基づいて減算器101から出力される偏差が0になるように、q軸電流指令値iq_refを生成して出力する。
より具体的には、比例制御部502aは、減算器101から出力される偏差が0になるように、当該偏差に比例する値を出力する。また、積分制御部502bは、減算器101から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間積分に比例する値を出力する。また、微分制御部502cは、減算器101から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間変化に比例する値を出力する。なお、積分制御部502bに入力される電流値iq´については後述する。
そして、加算器502dは、比例制御部502a、積分制御部502b、微分制御部502cから出力された値を加算し、加算された値がq軸電流生成部502eに出力される。q軸電流生成部502eは、加算器502dから出力された値に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成して出力する。具体的には、例えば、加算器502dから出力された値に予め設定された比例係数を乗算することによってq軸電流指令値iq_refを生成して出力する。
また、d軸電流生成部502fはd軸電流指令値id_refを0に設定して出力する。なお、本実施形態においては、d軸電流生成部502fは、巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸電流指令値id_refを0に設定したが、これに限定されるものではない。例えば、d軸電流生成部502fは、CPU151aからの指令に基づいて、d軸電流指令値id_refを0以外の値に設定して出力してもよい。
なお、本実施形態における位相制御器502は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、位相制御器502は、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_refを生成しても良い。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。なお、電流検出器507、508が電流を検出する周期は、例えば、CPU151aがモータ制御装置157に指令位相θ_refを出力する周期Tと同じ周期でも良いし、周期Tより短くてもよい。
A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、図3に示す電流ベクトルの位相θeを用いて次式によって表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義される。また、Iは電流ベクトルの大きさを示す。
iα=I*cosθe (1)
iβ=I*sinθe (2)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511,517及び誘起電圧決定器512に入力される。
座標変換器511は、静止座標系における電流値iα及びiβを、次式によって、回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
id= cosθ*iα+sinθ*iβ (3)
iq=−sinθ*iα+cosθ*iβ (4)
ベクトル制御においては、位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refが切替スイッチ516aを介して減算器102に入力される。また、減算器102には座標変換器511から出力された電流値iqが入力される。減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、ベクトル制御においては、位相制御器502から出力されたd軸電流指令値id_refが切替スイッチ516aを介して減算器103に入力される。また、減算器103には座標変換器511から出力された電流値idが入力される。減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器504に出力する。なお、切替スイッチ516aについては、後に説明する。
図6は、電流制御器503の構成を示すブロック図である。なお、図6に示す電流制御器503の構成は本実施形態における一例であり、電流制御器503の構成がこれに限定されるわけではない。
図6に示すように、電流制御器503は、P制御を行う比例制御部503a、I制御を行う積分制御部503b、D制御を行う微分制御部503cを有する。また、電流制御器503は、比例制御部502a、積分制御部502b、微分制御部502cから出力された信号を加算する加算器503dを有する。更に、電流制御器503は、加算器503dから出力された信号に基づいてモータ509の巻線に印加するべき駆動電圧に対応する電圧ベクトルのq軸成分の値として駆動電圧Vqを生成する駆動電圧生成部503eを有する。
電流制御器503は、PID制御に基づいて、減算器102から出力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vqを生成する。具体的には、電流制御器503は、減算器102から出力される偏差が0になるように駆動電圧Vqを生成して座標逆変換器505に出力する。
より具体的には、比例制御部503aは、減算器102から出力される偏差が0になるように、当該偏差に比例する値を出力する。また、積分制御部503bは、減算器102から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間積分に比例する値を出力する。また、微分制御部503cは、減算器102から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間変化に比例する値を出力する。
そして、加算器503dは、比例制御部503a、積分制御部503b、微分制御部503cから出力された値を加算し、加算された値が駆動電圧生成部503eに出力される。駆動電圧生成部503eは、加算器503dから出力された値に基づいて駆動電圧Vqを生成して出力する。具体的には、例えば、加算器503dから出力された値に予め設定された比例係数を乗算することによって駆動電圧Vqを生成して出力する。
このように、電流制御器503は、駆動電圧を生成する生成手段として機能する。なお、電流制御器504は、電流制御器503と同様の構成を有し、電流制御器503と同様の方法で、モータ509の巻線に印加するべき駆動電圧に対応する電圧ベクトルのd軸成分の値として駆動電圧Vdを生成する。
なお、本実施形態における電流制御器503、504は、PID制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、電流制御器503は、PI制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しても良い。
座標逆変換器505は、電流制御器503、504から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
Vα=cosθ*Vd−sinθ*Vq (5)
Vβ=sinθ*Vd+cosθ*Vq (6)
座標逆変換器505は、逆変換された駆動電圧Vα及びVβを誘起電圧決定器512及びPWMインバータ506に出力する。
PWMインバータ506は、フルブリッジ回路を有する。フルブリッジ回路は座標逆変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM信号によって駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβを生成し、駆動電流iα及びiβをモータ509の各相の巻線に供給することによって、モータ509を駆動させる。即ち、PWMインバータ506は、モータ509の各相の巻線に電流を供給する供給手段として機能する。なお、本実施形態においては、PWMインバータはフルブリッジ回路を有しているが、PWMインバータはハーフブリッジ回路等であっても良い。
次に、回転位相θを決定する構成について説明する。回転子402の回転位相θの決定には、回転子402の回転によってモータ509のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧Eα及びEβの値が用いられる。誘起電圧の値は誘起電圧決定器512によって決定(算出)される。具体的には、誘起電圧Eα及びEβは、A/D変換器510から誘起電圧決定器512に入力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器505から誘起電圧決定器512に入力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって決定される。
Eα=Vα−R*iα−L*diα/dt (7)
Eβ=Vβ−R*iβ−L*diβ/dt (8)
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。巻線レジスタンスR及び巻線インダクタンスLの値は使用されているモータ509に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置600に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
誘起電圧決定器512によって決定された誘起電圧Eα及びEβは位相決定器513に出力される。
位相決定器513は、誘起電圧決定器512から出力された誘起電圧Eαと誘起電圧Eβとの比に基づいて、次式によってモータ509の回転子402の回転位相θを決定する。
θ=tan^−1(−Eβ/Eα) (9)
なお、本実施形態においては、位相決定器513は、式(9)に基づく演算を行うことによって回転位相θを決定したが、この限りではない。例えば、位相決定器513は、ROM151b等に記憶されている、誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβと誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβとに対応する回転位相θとの関係を示すテーブルを参照することによって回転位相θを決定してもよい。
前述の如くして得られた回転子402の回転位相θは、減算器101、切替スイッチ516b及び座標変換器517に入力される。ベクトル制御が行われる場合は、回転位相θは切替スイッチ516bを介して座標逆変換器505、座標変換器511に入力される。なお、切替スイッチ516b及び座標変換器517については、後に説明する。
モータ制御装置157は、ベクトル制御を行う場合は、上述の制御を繰り返し行う。
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置157は、指令位相θ_refと回転位相θとの偏差が小さくなるように回転座標系における電流値を制御する位相フィードバック制御を用いたベクトル制御を行う。ベクトル制御を行うことによって、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。また、位相フィードバック制御を行うことによって、回転子の回転位相が所望の位相になるように回転子の回転位相を制御することができる。したがって、画像形成装置において、回転子の回転位相を精度よく制御する必要がある負荷(レジストレーションローラ等)を駆動するモータに位相フィードバック制御によるベクトル制御が適用されることによって、記録媒体への画像形成を適切に行うことができる。
<定電流制御>
次に、本実施形態における定電流制御を、従来の定電流制御と比較して説明する。
定電流制御においては、モータの動作シーケンスに基づいて予め決められた電流がモータの巻線に供給されることによって、巻線に流れる駆動電流が制御される。定電流制御においては、回転子にかかる負荷トルクの変動が起こったとしてもモータが脱調しないように、回転子の回転に必要と想定されるトルクに所定のマージンが加算されたトルクに対応する振幅を持った駆動電流が供給される。これは、定電流制御においては、決定(推定)された回転子の回転位相や回転速度に基づいて駆動電流の振幅が制御される構成は用いられない(フィードバック制御が行われない)ので、回転子にかかる負荷トルクに応じて駆動電流を調整できないからである。なお、電流の振幅が大きいほど回転子に与えるトルクは大きくなる。また、振幅は電流ベクトルの大きさに対応する。
以下の説明では、定電流制御中は、振幅が一定の大きさである電流がモータの巻線に供給されることによってモータが制御されるが、この限りではない。例えば、定電流制御中は、モータの加速中及び減速中のそれぞれに応じて、振幅が予め決められた電流がモータの巻線に供給されることによってモータが制御されてもよい。
図7は、従来の定電流制御の制御構成の例を示すブロック図である。まず、従来の定電流制御について説明する。
CPU151aは、定電流制御器801に指令位相θ_refを出力する。定電流制御器801は、CPU151aから出力された指令位相θ_refに対応した、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。なお、本実施形態においては、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refに対応する電流ベクトルの大きさは常に一定である。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器806、807によって検出される。検出された駆動電流は、A/D変換器809によってアナログ値からデジタル値へと変換され、式(1)及び(2)のように電流値iα及びiβとして表される。
減算器802には、A/D変換器809から出力された電流値iαと定電流制御器801から出力された電流指令値iα_refとが入力される。減算器102は、電流指令値iα_refと電流値iαとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器804に出力する。
また、減算器803には、A/D変換器809から出力された電流値iβと定電流制御器801から出力された電流指令値iβ_refとが入力される。減算器803は、電流指令値iβ_refと電流値iβとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器804に出力する。
電流制御器804は、入力される偏差が小さくなるように、PID制御に基づいて駆動電圧Vα及びVβを出力する。具体的には、電流制御器804は、入力される偏差が0に近づくように駆動電圧Vα及びVβを出力する。
PWMインバータ506は前述した方法で、入力された駆動電圧Vα及びVβに基づいて、モータ509の各相の巻線に駆動電流を供給してモータ509を駆動させる。
このように、従来の定電流制御では、静止座標系における電流値iα及びiβが用いられる。
次に、本実施形態における定電流制御について説明する。
図8は、本実施形態における定電流制御を説明する図である。図8に示すdc軸はα軸から反時計回りに指令位相θ_ref進んだ方向を示し、qc軸はdc軸から反時計回りに90度進んだ方向(dc軸に直交する方向)を示す。本実施形態における定電流制御では、指令位相θ_refを基準とした、dc軸とqc軸とで表される回転座標系が用いられる。具体的には、本実施形態における定電流制御では、図8に示すように、巻線に供給する駆動電流に対応する電流ベクトルの位相θeがθ_refに設定される。即ち、巻線に供給する駆動電流に対応する電流ベクトルの方向がdc軸と一致するように巻線に供給する駆動電流が生成される。なお、図8では、図3に示すようなモータの巻線等の構成は省略されている。
図9は、図4に示す定電流制御器700の構成の例を示すブロック図である。図9に示すように、定電流制御器700は、電流生成器700a及び座標変換器700bを有する。
以下に、図4、図8及び図9を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157が定電流制御を行う方法について説明する。
CPU151aは、定電流制御器700に設けられた電流生成器700a及び座標変換器700bに指令位相θ_refを出力する。電流生成器700aは、CPU151aから出力された指令位相θ_refに対応した、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refを生成して座標変換器700bに出力する。
座標変換器700bは、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refを、式(3)、(4)によって、指令位相θ_refを基準とする回転座標系におけるq軸電流の指令値iq_ref及びd軸電流の指令値id_refに変換して出力する。なお、本実施形態においては、電流の指令値iα_ref及びiβ_refに対応する電流ベクトルの大きさ(q軸電流の指令値iq_ref及びd軸電流の指令値id_refに対応する電流ベクトルの大きさ)は常に一定である。
モータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出される。検出された駆動電流は、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換され、式(1)及び(2)のように電流値iα及びiβとして表される。
定電流制御においては、スイッチ516bを介して指令位相θ_refが座標変換器511に入力される。座標変換器511は、A/D変換器510から出力された静止座標系における電流値iα及びiβを、式(3)及び(4)によって、指令位相θ_refを基準とする回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
定電流制御においては、定電流制御器700から出力されたq軸電流指令値iq_refが切替スイッチ516aを介して減算器102に入力される。また、減算器102には座標変換器511から出力された電流値iqが入力される。減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、定電流制御においては、定電流制御器700から出力されたd軸電流指令値id_refが切替スイッチ516aを介して減算器103に入力される。また、減算器103には座標変換器511から出力された電流値idが入力される。減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器504に出力する。なお、切替スイッチ516aについては、後に説明する。
電流制御器503、504は、入力される偏差が小さくなるように、指令位相θ_refを基準とする回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを出力する。具体的には、電流制御器503は、504は、入力される偏差が0に近づくように駆動電圧Vq及びVdを出力する。
定電流制御においては、スイッチ516bを介して指令位相θ_refが座標逆変換器505に入力される。座標逆変換器505は、電流制御器503、504から出力された、指令位相θ_refを基準とする回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、式(5)及び(6)によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
座標逆変換器505は、逆変換された駆動電圧Vα及びVβをPWMインバータ506に出力する。PWMインバータ506は前述した方法でモータ509の各相の巻線に駆動電流を供給してモータ509を駆動させる。
このように、本実施形態における定電流制御では、指令位相θ_refを基準とした、dc軸とqc軸とで表される回転座標系が用いられる。
また、本実施形態における定電流制御では、位相フィードバック制御と速度フィードバック制御とのいずれも行われない。即ち、本実施形態における定電流制御では、巻線に供給する駆動電流が回転子の回転状況に応じて調整されない。したがって、定電流制御では、モータが脱調状態にならないように、回転子を回転させるために必要な電流に所定のマージンが加算された電流が巻線に供給される。具体的には、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refには、回転子を回転させるために必要な電流値と所定のマージンに対応する電流値とが含まれる。
<ベクトル制御と定電流制御との切り替え>
次に、ベクトル制御と定電流制御との切り替え方法について説明する。図4に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157は、定電流制御とベクトル制御とを切り替える構成を有する。具体的には、モータ制御装置157は、制御切替器515、切替スイッチ516a、516b、遅延回路518を有する。なお、定電流制御が行われている期間中、ベクトル制御を行う回路も稼働している。即ち、定電流制御が行われている期間中、回転子の回転位相θを決定する回路は稼働している。一方、ベクトル制御が行われている期間中、定電流制御を行う回路は稼働していても良いし、停止していてもよい。
図4に示すように、制御切替器515には、CPU151aが指令位相θ_refに基づいて決定した回転子の指令速度の代わりとなる回転速度ω_ref´が入力される。制御切替器515は、回転速度ω_ref´と閾値ωthとを比較することによって、定電流制御とベクトル制御との切り替えを行い、更に、制御の切り替えを示す切替信号を出力する。なお、CPU151aは、指令位相θ_refの所定期間における変化量に基づいて回転速度ω_ref´を決定する。即ち、回転速度ω_ref´は所定の時間周期Tで変化する。
図10は、回転速度ω_ref´と閾値ωthとの関係及び切替信号を示す図である。本実施形態における閾値ωthは、回転位相θが精度よく決定される回転速度のうち最も小さい回転速度に設定されるが、この限りではない。例えば、閾値ωthは、回転位相θが精度よく決定される回転速度のうち最も小さい回転速度以上の値に設定されてもよい。
図10に示すように、制御切替器515は、定電流制御が行われる場合は切替信号を‘H’にし、ベクトル制御が行われる場合は、切替信号を‘L’にする。制御切替器515から出力された切替信号は、図4に示すように、位相制御器502と遅延回路518とに入力される。なお、制御切替器515は、例えば、CPU151aが回転速度ω_ref´を出力する周期Tと同じ周期で切替信号を出力している。
遅延回路518は、切替信号が制御切替器515から出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を出力する。なお、所定の遅延時間は、切替信号が制御切替器515から出力されてから位相制御器502が当該切替信号に応じてiq_ref及びid_refを出力するまでの時間よりも長い時間である。位相制御器502が切替信号に応じてiq_ref及びid_refを出力する構成については後述する。
定電流制御器700による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上(ω_ref´≧ωth)になると、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を定電流制御器700からベクトル制御器701に切り替えるように、切替信号を‘H’から‘L’に切り替えて出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替信号に応じて切替スイッチ516a、516bの状態が切り替わり、ベクトル制御器701によるベクトル制御が行われる。なお、閾値ωthは、例えば、ROM151bに予め保存されている。
また、定電流制御器700による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωthより小さい(ω_ref´<ωth)場合は、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替えない。即ち、制御切替器515は、モータ509が定電流制御器700によって制御される状態を維持するように、切替信号‘H’を出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が維持され、定電流制御器700による定電流制御が続行される。
ベクトル制御器701による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωthより小さくなると(ω_ref´<ωth)、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器をベクトル制御器701から定電流制御器700に切り替えるように切替信号を‘L’から‘H’に切り替えて出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が切り替わり、定電流制御器700による定電流制御が行われる。
また、ベクトル制御器701による制御中において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上(ω_ref´≧ωth)の場合は、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器を切り替えない。即ち、制御切替器515は、モータ509がベクトル制御器701によって制御される状態を維持するように、切替信号‘L’を出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が維持され、ベクトル制御器701によるベクトル制御が続行される。
<制御切替時の処理>
次に、モータの制御方法が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際にモータ制御装置157が行う処理について説明する。
前述したように、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際には、瞬間的にモータの回転速度が減少(又は増大)する可能性がある。これは、モータの制御が切り替わる直前に回転子に発生するトルクとモータの制御が切り替わった直後に回転子に発生するトルクとに差異が生じてしまうためである。
そこで、本実施形態では、以下の構成がモータ制御装置157に適用されることによって、モータの制御が不安定になることを抑制する。
図4に示すように、本実施形態におけるモータ制御装置157には、座標変換器517が設けられている。なお、以下の説明において、定電流制御が行われている期間中、座標変換器517は稼働しているものとする。また、ベクトル制御が行われている期間中、座標変換器517は稼働していても良いし、停止していてもよい。また、以下の説明においては、定電流制御が行われている期間中、位相制御器502は稼働しているものとする。
図4に示すように、座標変換器517には、A/D変換器510から出力される電流値iα及びiβと位相決定器513から出力された回転位相θとが入力される。座標変換器517は、位相決定器513から出力された回転位相θに基づいて、電流値iα及びiβを式(3)及び(4)を用いて、回転位相θを基準とする回転座標系の電流値iq´及びid´に変換する。座標変換器517によって変換された電流値iq´は位相制御器502に入力される。具体的には、図5に示すように、電流値iq´は位相制御器502の内部に設けられた積分制御部502bに入力される。なお、座標変換器517は、電流検出器507,508が電流を検出する周期と同じ周期でiq´を出力する。
積分制御部502bは、切替信号が‘H’から‘L’に切り替わると、当該切替信号が切り替わる直前に取得した電流値iq´に基づいて、積分制御部502bの制御結果を出力する。具体的には、積分制御部502bは、切替信号が‘H’から‘L’に切り替わると、当該切替信号が切り替わる直前に取得した電流値iq´に比例係数Kqを乗算した値を積分制御部502bの積分の初期値として設定する。即ち、積分制御部502bは、切替信号が‘H’から‘L’に切り替わると、当該切替信号が切り替わる直前までの積分結果を削除し、当該切替信号が切り替わる直前に取得した電流値iq´に比例係数Kqを乗算した値を積分の初期値として設定する。なお、比例係数Kqは、定電流制御においてモータが脱調状態にならないように電流に加算されたマージンに対応する値が電流値iq´に含まれないようにするための係数である。したがって、比例係数Kqを電流値iq´に乗算することによって、積分制御部502bは、前記マージンに対応する値が含まれていない値に基づいて積分制御を行うことができる。この結果、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後に回転子に与えられるトルクが、比例係数Kqが乗算されていない電流値iq´が初期値として設定された場合よりも適切なトルクになる。なお、切替信号が制御切替器515から出力されてから、遅延回路518が当該切替信号を遅延させる所定の遅延時間は、位相制御器502が上述の処理を行う時間より長く、切替信号が制御切替器515から出力される周期より短い時間である。
図11は、モータ制御装置157によるモータの制御方法を示すフローチャートである。以下に、図11を用いて、本実施形態におけるモータ509の制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aからの指示を受けたモータ制御装置157によって実行される。
まず、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の駆動を開始する。enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を禁止する。即ち、モータ制御装置157によるモータ509の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を許可して、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータ509の制御を行う。
次に、S1001において、制御切替器515は、モータ509の駆動が定電流制御器517によって制御される状態になるように切替信号‘H’を出力する。その結果、定電流制御器700による定電流制御が行われる。
その後、S1002において、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータ509の駆動を終了する。
また、S1002おいて、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘H’を出力している場合は、モータ制御装置157は処理をS1003に進める。
次に、S1003において、回転速度ω_ref´が閾値ωth未満である場合は、処理は再びS1001に戻る。即ち、定電流制御器700による定電流制御が維持される。
また、S1003において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上である場合は、S1004において、制御切替器515は、切替信号を‘H’から‘L’に切り替えて出力する。
その後、S1005において、積分制御部502bは、切替信号が‘L’切り替わる直前までの積分結果を削除し、当該切替信号が切り替わる直前に取得した電流値iq´を積分の初期値として設定して出力する。
そして、S1006において、所定の遅延時間が経過すると、S1007において、遅延回路518から切替スイッチ516a、516bに切替信号‘L’が出力される。この結果、ベクトル制御器701によるベクトル制御が行われる。
S1008において、回転速度ω_ref´が閾値ωth以上である場合は、処理は再びS1007に戻り、ベクトル制御器701によるベクトル制御が続行される。
また、S1008において、回転速度ω_ref´が閾値ωthより小さい場合は、処理は再びS1001に戻り、制御切替器515は、モータ509の駆動を制御する制御器を切り替える。即ち、制御切替器515は、モータ509を制御する制御器をベクトル制御器701から定電流制御器700に切り替えるように切替信号を‘L’から‘H’に切り替えて出力する。遅延回路518は、制御切替器515から切替信号が出力されてから所定の遅延時間後に、入力された当該切替信号を切替スイッチ516a、516bに出力する。その結果、切替スイッチ516a、516bの状態が切り替わり、定電流制御器700による定電流制御が行われる。
以降、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力するまで、モータ制御装置157は上述の制御を繰り返し行う。なお、ベクトル制御中であっても、CPU151aがモータ制御装置157にenable信号‘L’を出力した場合は、モータ制御装置157はモータの制御を中止する。
以上のように、本実施形態では、定電流制御中に検出した電流値に基づいて、回転子にかかる負荷トルクに対応する電流値iq´を決定する。そして、切替信号が‘H’から‘L’に切り替わる直前の電流値iq´に基づいて、切替信号が‘H’から‘L’に切り替わった直後のq軸電流指令値iq_refが生成される。具体的には、電流の検出結果としての電流値iq´に基づく値が位相制御器502における積分の初期値として設定される。この結果、モータの制御が切り替わる直前に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクと、モータの制御が切り替わった直後に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクとに差異が生じることを抑制することができる。この結果、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に、モータの回転速度が変動してしまうことを抑制することができる。
また、検出された電流値が積分の初期値として設定されることによって、負荷トルクを演算し、演算された負荷トルクに基づいて巻線に供給すべき駆動電流が設定されるよりも短時間で、巻線に供給すべき駆動電流を設定することができる。その結果、モータの制御が切り替わる直前の負荷トルクに基づいて決定された供給すべき電流に対応するトルクと、モータの制御が切り替わった直後の負荷トルクとに差異が生じることを可能な限り抑制することができる。即ち、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に負荷トルクが変動したとしても、モータの回転速度が変動してしまうことを抑制することができ、モータの制御が不安定になることを抑制することができる。
図12は、モータの制御方法の切り替えに伴う駆動電流、駆動電圧の波形及び回転速度の変化を表す実験結果を示す図である。なお、図12における回転速度は、実験のためにモータにロータリエンコーダを取り付けて測定されたものである。
図12(a)は、本実施形態が適用されない、即ち、積分制御部502bの初期値が定電流制御中の電流値iq´に基づいて設定されない状態における、静止座標系の電流値iα及びiβ、回転速度ωを示す図である。図12(a)に示すように、本実施形態が適用されない場合、積分制御部502bの初期値が0であるため、定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後の電流値がおおよそ0になっている。これは、定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後は回転子にトルクが発生しないことを意味する。即ち、モータの制御が切り替わる直前に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクと、モータの制御が切り替わった直後に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクとに差異が生じていることを意味する。この結果、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に、回転速度ωが変動してしまう。
図12(b)は、本実施形態が適用された状態における、静止座標系の電流値iα及びiβ、ロータリエンコーダの信号に基づく回転速度ωを示す図である。図12(b)に示すように、本実施形態が適用された場合、積分制御部502bの初期値が電流値iq´に基づいて設定されるため、定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後であっても電流波形が正弦波状に変化している。これは、定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後も回転子にトルクが発生していることを意味する。更に、本実施形態では、定電流制御中に検出した電流値iq´に基づいて積分制御部502bの初期値を設定しているため、定電流制御中に回転子に与えていたトルクと制御切替直後に回転子に与えるトルクとに生じる差異を可能な限り小さくすることができる。即ち、モータの制御が切り替わる直前に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクと、モータの制御が切り替わった直後に供給された電流に対応する、回転子に発生するトルクとに差異が生じることを抑制することができる。この結果、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に、モータの回転速度が変動してしまうことを抑制することができる。
図12(c)は、本実施形態が適用された状態における、回転座標系の駆動電夏Vd及びVqを示す図である。本実施形態においては、電流制御器503、504は、定電流制御及びベクトル制御のいずれの制御方法においても、回転座標系の電流値の偏差に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成した。即ち、電流制御器における積分制御部は、定電流制御とベクトル制御との両方において用いられた。したがって、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後の電流制御器における積分制御部の制御は、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる直前の積分制御部の積分値に基づいて行われる。このような構成によって、図12(c)に示すように、制御切替時に駆動電圧Vq及びVdの値を急激に変動させることを抑制することができる。この結果、モータの制御が不安定になってしまうことを抑制することができる。
〔第2実施形態〕
画像形成装置の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第1実施形態においては、指令位相θ_refを基準とした回転座標系における電流の指令値iq_refと電流値iqとの偏差及び前記回転座標系における電流の指令値id_refと電流値idとの偏差に基づいて定電流制御が行われた。本実施形態においては、静止座標系における電流の指令値iα_refと電流値iαとの偏差及び静止座標系における電流の指令値iβ_refと電流値iβとの偏差に基づいて定電流制御が行われる構成について説明する。なお、以下の説明において、ベクトル制御の構成及びモータの制御を切り替える構成が第1実施形態と同様の構成である部分については、説明を省略する。
<定電流制御>
図13は、本実施形態におけるモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。なお、モータ制御装置157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
CPU151aは、定電流制御器700に指令位相θ_refを出力する。定電流制御器700は、CPU151aから出力された指令位相θ_refに対応した、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refを生成して出力する。
次に、電流検出器507、508はモータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流を検出する。その後、検出された駆動電流は、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換され、式(1)及び(2)のように電流値iα及びiβとして表される。
定電流制御器700から出力された指令値iα_refは、切替スイッチ516aを介して減算器102に入力される。また、A/D変換機510から出力された電流値iαは切替スイッチ516cを介して減算器102に入力される。減算器102は、電流値iαと指令値iα_refとの偏差を電流制御器503に出力する。
また、定電流制御器700から出力された指令値iβ_refは、切替スイッチ516aを介して減算器103に入力される。また、A/D変換機510から出力された電流値iβは切替スイッチ516cを介して減算器103に入力される。減算器103は、電流値iβと指令値iβ_refとの偏差を電流制御器504に出力する。
図14は、本実施形態における電流制御器503の構成を示すブロック図である。なお、図14に示す電流制御器503の構成は本実施形態における一例であり、電流制御器503の構成がこれに限定されるわけではない。
図14に示すように、電流制御器503は、ベクトル制御が行われる場合にP制御を行う比例制御部503aq、I制御を行う積分制御部503bq、D制御を行う微分制御部503cqを有する。また、電流制御器503は、比例制御部502aq、積分制御部502bq、微分制御部502cqから出力された信号を加算する加算器503dqを有する。更に、電流制御器503は、加算器503dqから出力された信号に基づいてモータ509の巻線に印加するべき駆動電圧に対応する電圧ベクトルのq軸成分の値として駆動電圧Vqを生成する駆動電圧生成部503eqを有する。なお、各構成の処理方法は、第1実施形態において説明した方法と同様であるため、説明を省略する。
また、電流制御器503は、定電流制御が行われる場合にP制御を行う比例制御部503aα、I制御を行う積分制御部503bα、D制御を行う微分制御部503cαを有する。また、電流制御器503は、比例制御部502aα、積分制御部502bα、微分制御部502cαから出力された信号を加算する加算器503dαを有する。更に、電流制御器503は、加算器503dαから出力された信号に基づいてモータ509の巻線に印加するべき駆動電圧に対応する電圧ベクトルのα軸成分の値として駆動電圧Vαを生成する駆動電圧生成部503eαを有する。
定電流制御において、電流制御器503は、切替スイッチ516dを介して入力される偏差が小さくなるようにPID制御に基づいて駆動電圧Vαを生成する。具体的には、電流制御器503は、入力される偏差が0になるように駆動電圧Vαを生成して出力する。
より具体的には、比例制御部503aαは、減算器102から出力される偏差が0になるように、当該偏差に比例する値を出力する。また、積分制御部503bαは、減算器102から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間積分に比例する値を出力する。また、微分制御部503cαは、減算器102から出力される偏差が0になるように、当該偏差の時間変化に比例する値を出力する。
そして、加算器503dαは、比例制御部503aα、積分制御部503bα、微分制御部503cαから出力された値を加算し、加算された値が駆動電圧生成部503eαに出力される。駆動電圧生成部503eαは、加算器503dαから出力された値に基づいて駆動電圧Vαを生成して出力する。具体的には、例えば、加算器503dから出力された値に予め設定された比例係数を乗算することによって駆動電圧Vαを生成し、切替スイッチ516eを介して出力する。
このように、電流制御器503は、駆動電圧を生成する生成手段として機能する。なお、電流制御器504は、電流制御器503と同様の構成を有し、電流制御器503と同様の方法で、モータ509の巻線に印加するべき駆動電圧に対応する電圧ベクトルのβ軸成分の値として駆動電圧Vβを生成する。
なお、本実施形態における電流制御器503、504は、PID制御に基づいて駆動電圧Vα及びVβを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、電流制御器503、504は、PI制御に基づいて駆動電圧Vα及びVβを生成しても良い。
電流制御器503、504から出力された駆動電圧Vα及びVβは、スイッチ516bを介してPWMインバータ506に入力され、PWMインバータ506は、第1実施形態と同様の方法でモータ509の各相の巻線に駆動電流を供給してモータ509を駆動させる。
このように、定電流制御においては、位相フィードバック制御と速度フィードバック制御とのいずれも行われない。即ち、定電流制御においては、巻線に供給する駆動電流が回転子の回転状況に応じて調整されない。したがって、定電流制御においては、モータが脱調状態にならないように、回転子を回転させるために必要な電流に所定のマージンが加算された電流が巻線に供給される。具体的には、静止座標系における電流の指令値iα_ref及びiβ_refには、回転子を回転させるために必要な電流値と所定のマージンに対応する電流値とが含まれる。
以上が、本実施形態における定電流制御についての説明である。なお、本実施形態においては、図13に示すように、モータの制御が切り替わる際には、制御切替器515は切替信号を切替スイッチ516a乃至516eに出力する。
<制御切替時の電流制御器の処理>
電流制御器503、504が、定電流制御において用いられる(静止座標系用の)PID制御の構成とベクトル制御において用いられる(回転座標系用の)PID制御の構成とを有する場合、以下のような問題が起こる可能性がある。具体的には、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わった直後の駆動電圧Vq及びVdが、初期値が適切でない(0である)状態の積分制御部に基づいて生成される可能性がある。初期値が適切でない場合、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に駆動電圧Vq及びVdが急激に変動し(不連続に変化し)、モータの制御が不安定になってしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、以下の構成が適用されることによって、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わる際に駆動電圧Vq及びVdが急激に変動してしまうことを抑制する。具体的には、図14に示すように、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わると、切替信号が入力される直前の積分制御部503bαの積分値に基づいて、CPU151aが積分制御部503bqの積分の初期値を設定する。
このような構成が用いられることによって、制御切替時に駆動電圧Vq及びVdの値を急激に変動させることなく、徐々に変化させることができる。この結果、モータの制御が不安定になってしまうことを抑制することができる。
なお、本実施形態においては、切替信号が入力される直前の積分制御部503bαの積分値に基づいてCPU151aが積分制御部503bqの積分の初期値を設定(決定)したが、この限りではない。例えば、モータの制御が定電流制御からベクトル制御に切り替わると、CPU151aが積分制御部503bqの積分の初期値を予め決められた値に設定してもよい。
また、本実施形態では、切替信号が切り替わる直前の積分制御部503bαの積分値に基づいて、CPU151aが積分制御部503bqの積分の初期値を設定(決定)したが、この限りではない。例えば、CPU151aは、直前ではなく、2回前の積分制御部503bαの積分値に基づいて積分制御部502bにおける積分の初期値を設定してもよい。
また、本実施形態におけるモータ制御装置は、ベクトル制御を行う回路と定電流制御を行う回路とにおいて、一部共有している部分(電流制御器503、504、PWMインバータ506等)があるが、この限りではない。例えば、ベクトル制御を行う回路と定電流制御を行う回路とがそれぞれ独立に設けられている構成であっても良い。
第1実施形態及び第2実施形態における定電流制御では、モータが脱調状態にならないように、回転子を回転させるために必要な電流に所定のマージンが加算された電流が巻線に供給される。そのため、電流値iq´にも、前記マージンに対応する値が含まれている。
第1実施形態及び第2実施形態では、位相制御器502は、電流値iq´に比例係数Kqが乗算された値を積分制御部502bにおける積分の初期値に設定したが、この限りではない。例えば、位相制御器502は、電流値iq´から所定の値を減算することによって得られた値を積分制御部502bにおける積分の初期値に設定してもよい。また、電流値iq´がそのまま積分制御部502bにおける積分の初期値に設定されてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、切替信号が切り替わる直前に取得した電流値iq´に基づいて積分制御部502bにおける積分の初期値が設定されたが、この限りではない。例えば、直前ではなく、2回前の電流値iq´に基づいて積分制御部502bにおける積分の初期値が設定されてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、位相制御器502は、電流値iq´に対応する値を積分制御部502bにおける積分の初期値に設定し、設定された初期値に基づくPID制御によってq軸電流指令値iq_refを生成したが、この限りではない。例えば、位相制御器502は、電流値iq´をそのままq軸電流指令値iq_refとしてもよい。なお、電流値iq´がそのままq軸電流指令値iq_refとして出力される場合、積分制御部502bにおける積分の初期値が0であるため、次のPID制御時は初期値が0である状態で積分制御が行われてしまう。したがって、この場合、回転位相θのフィードバック(電流値iq´に基づくq軸電流指令値iq_refによる積分制御)が少なくとも1回行われるまでは、電流値iq´がそのままq軸電流指令値iq_refとして出力される。即ち、PID制御に基づくq軸電流指令値iq_refは、2回目以降の回転位相θのフィードバックによって生成される。また、電流値iq´がそのままq軸電流指令値iq_refとして出力される場合であっても、当該電流値iq´が積分制御部の初期値として設定される構成であれば、上述のような構成は必要ない。即ち、回転位相θのフィードバックが少なくとも1回行われるまでは、電流値iq´がそのままq軸電流指令値iq_refとして出力されるような構成は必要ない。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、定電流制御中、位相制御器502は稼働している構成であったが、位相制御器502は停止していてもよい。具体的には、例えば、位相制御器502に設けられた構成のうち、積分制御部が稼働している構成であればよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態において、ベクトル制御器518を用いてモータ509の駆動を制御する回路は本発明における第1制御回路に相当する。更に、第1実施形態及び第2実施形態において、定電流制御器517を用いてモータ509の駆動を制御する回路は本発明における第2制御回路に相当する。
また、第1実施形態及び第2実施形態におけるベクトル制御では、位相フィードバック制御を行うことによってモータ509を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、回転子402の回転速度ωをフィードバックしてモータ509を制御する構成であっても良い。具体的には、図15に示すように、モータ制御装置内部に速度決定器514を設け、速度決定器514が位相決定器513から出力された回転位相θの時間変化に基づいて回転速度ωを決定する。なお、速度の決定には、次式(10)が用いられるものとする。
ω=dθ/dt (10)
そして、CPU151aは回転子の目標速度を表す指令速度ω_refを出力する。更に、モータ制御装置内部に速度制御器500を設け、速度制御器500が回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_refを生成して出力する構成とする。このような速度フィードバック制御を行うことによって、モータ509を制御する構成であっても良い。このような構成においては回転速度をフィードバックしているため、回転子の回転速度が所定の速度になるように制御することができる。したがって、画像形成装置において、記録媒体への画像形成を適切に行うために回転速度を一定速度に制御する必要がある負荷(例えば、感光ドラム、搬送ベルト等)を駆動するモータに速度フィードバック制御を用いたベクトル制御を適用する。この結果、記録媒体への画像形成を適切に行うことができる。なお、この場合、定電流制御を行う際にも指令速度ω_refが用いられるものとする。また、制御の切り替えは、指令速度ω_refに基づいて行われてもよいし、速度決定器514によって決定された回転速度ωに基づいて行われてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、指令位相θ_refの所定期間における変化量に基づいて回転速度ω_ref´が決定されたが、これに限定されるものではない。例えば、駆動電流iα又はiβ、駆動電圧Vα又はVβ、誘起電圧Eα又はEβ等、回転子402の回転周期と相関のある周期的な信号の大きさが0になる周期に基づいて回転速度ω_ref´が決定されても良い。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、負荷を駆動するモータとしてステッピングモータが用いられているが、DCモータ等の他のモータであっても良い。また、モータは2相モータである場合に限らず、3相モータ等の他のモータであっても本実施形態を適用することができる。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、回転子として永久磁石が用いられているが、これに限定されるものではない。