第1の発明のモータ駆動装置は、電源に接続される整流回路と、前記整流回路の直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路により駆動され洗濯兼脱水槽等の負荷を駆動するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータのロータ位置を検出するロータ位置検出手段と、前記ブラシレスモータのモータ電流を検出する電流検出手段と、前記インバータ回路を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ブラシレスモータのモータ電流を磁束に対応した電流成分とトルクに対応した電流成分とに分解してそれぞれ所望の値となるように制御するベクトル制御と、前記ロータ位置検出手段によるモータ回転数を指令回転数となるように制御する速度制御とを行うとともに、前記トルクに対応した電流成分を制限する1次電流判定手段を備え、前記1次電流判定手段は、前記モータ回転数に応じて、前記トルクに対応した電流成分があらかじめ設定したテーブルの制限値を超える場合には前記指令回転数の変化を緩やかにすることを特徴とする。
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記1次電流判定手段において、前記テーブルの制限値は、前記モータ回転数の2乗に比例する項を有し単調減少する関数によって規定される構成である。
この構成により、高価な1次電流検出部を用いずとも、必要以上にトルクに対応した電流成分を制限せずに、入力電流が過大になることを防止できる、低コストなモータ駆動装置を提供することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記整流回路の直流電圧を検出する電圧検出手段を備えるとともに前記テーブルを複数備え、前記制御手段は、前記電圧検出手段で検出された電圧を、あらかじめ決められた標準値と比較し、その大小関係によって、前記複数のテーブルを選択的に適用して前記テーブルの制限値を切り替える構成である。
この構成により、電源電圧が変動した場合でも、高価な1次電流検出部を用いずとも、必要以上にトルクに対応した電流成分を制限せずに、入力電流が過大になることを防止できる、低コストなモータ駆動装置を提供することができる。
第4の発明は、特に、第3の発明において、前記電圧検出手段で検出された電圧を、あらかじめ決められた標準値と比較し、それよりも高電位と判定された場合、前記テーブルの制限値は、前記モータ回転数の2乗に比例する項を有し、単調減少する関数の係数を大きくするように構成するものである。
この構成により、電源電圧が高く変動した場合でも、高価な1次電流検出部を用いずとも、必要以上にトルクに対応した電流成分を制限せずに、入力電流が過大になることを防止できる、低コストなモータ駆動装置を提供することができる。
第5の発明は、特に第3の発明において、前記電圧検出手段で検出された電圧を、あらかじめ決められた標準値と比較し、それよりも低電位と判定された場合、前記テーブルの制限値は、前記モータ回転数の2乗に比例する項を有し単調減少する関数の係数を小さくする構成である。
この構成により、電源電圧が低く変動した場合でも、高価な1次電流検出部を用いずとも、必要以上にトルクに対応した電流成分を制限せずに、入力電流が過大になることを防止できる、低コストなモータ駆動装置を提供することができる。
第6の発明は、第1から5のいずれかの発明のモータ駆動装置を洗濯機又は洗濯乾燥機に用いたものである。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1のモータ駆動装置の一部ブロック化した回路図である。図1に示すように、交流電源1は、整流回路2に交流電圧を加え、整流回路2は整流器20とコンデンサ21により直流電圧に変換し、直流電圧をインバータ回路3に加える。
インバータ回路3は、6個のパワースイッチング半導体と逆並列ダイオードよりなる3相フルブリッジインバータ回路により構成し、通常、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)と逆並列ダイオードおよびその駆動回路と保護回路を内蔵したインテリジェントパワーモジュール(以下、IPMという)で構成している。パワースイッチング半導体はIGBTの他、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などで構成しても良い。このインバータ回路3の構成は、よく知られたものと同様であるので、詳しい説明は省略する。
インバータ回路3の出力端子にモータ4を接続し、洗濯機や洗濯乾燥機の撹拌翼(図示せず)または洗濯兼脱水槽(図示せず)等の負荷を駆動する。モータ4は、ブラシレスモータにより構成し、回転子(ロータ)を構成する永久磁石と固定子との相対位置(回転子位置)をロータ位置検出手段4aにより検出する。ロータ位置検出手段4aは、通常、3個のホールICにより構成し、電気角60度ごとの位置の出力基準信号H1〜H3を検出する。
電流検出手段5は、モータ4のモータ電流Iu、Iv、Iwを検出するもので、通常はシャント抵抗5a、5bを用いる。また、直流電流を含む低周波数から測定可能な直流電流トランスや、交流電流トランスでも検出可能である。また、3相モータの場合、2相の電流(例えばIu、Iv)を求め、キルヒホッフの法則(Iu+Iv+Iw=0)より残りの1相の電流(Iw)を求める方法が一般的である。
なお、ロータ位置検出手段4aは、出力基準信号H1〜H3を元にロータの位置を検出しているが、ホールICを用いず、モータの相電流と3相モータ駆動制御電圧からロータ位置を演算により検出する方法でもよい(図示せず)。
制御手段6は、ロータ位置検出手段4aと電流検出手段5によりインバータ回路3をベクトル制御してモータ4の回転を制御するものである。
制御手段6は、マイクロコンピュータと、マイクロコンピュータに内蔵したインバータ制御タイマー(PWMタイマー)、高速A/D変換回路、メモリ回路(ROM、RAM)等より構成し、ロータ位置検出手段4aの出力信号より電気角を検知する電気角検知手段60と、電流検出手段5の出力信号と電気角検知手段60の信号より磁束に対応した電流成分Id(d軸電流)とトルクに対応した電流成分(トルク電流)Iq(q軸電流)に分解する3相/2相dq変換手段61と、静止座標系から回転座標系に変換、あるいは逆変換するのに必要な正弦波データ(sin、cosデータ)を格納する記憶手段62と、磁束に対応した電圧成分Vdとトルクに対応した電圧成分Vqを3相モータ駆動制御電圧Vu、Vv、Vwに変換する2相/3相dq逆変換手段63と、3相モータ駆動制御電圧Vu、Vv、Vwに応じてインバータ回路3のIGBTのスイッチングを制御するPWM制御手段64などを備えている。
さらに、行程に応じてモータ4の起動、停止、回転数、および制動等を制御する設定変更手段65と、ロータ位置検出手段4aの出力信号より回転数を検知する回転数検知手段66と、回転数検知手段66によって検知された検知回転数Nと設定変更手段65によって設定された速度指令Nsを参照してトルクに対応した電流成分であるトルク電流Iqのq軸電流指令値Iqsを決定するトルク電流制御手段67と、設定変更手段65からのd軸(direct−axis)電流指令値Ids、トルク電流制御手段67からのq軸(quadrature−axis)電流指令値Iqsと、3相/2相dq変換手段61より演算したId、Iqをそれぞれ比較し、モータ電流を制御するための磁束に対応した電圧成分Vdとトルクに対応した電圧成分Vqを演算するモータ電流制御手段68とを備えている。
磁束に対応した電圧成分Vdとトルクに対応した電圧成分Vqから逆変換して得られる2相/3相dq逆変換手段63からの入力(3相モータ駆動制御電圧Vu、Vv、Vw)に応じて、PWM制御手段64は、インバータ回路3に制御信号を出力する。
トルクに対応したq軸電流Iqがq軸電流指令値Iqsとなるようにフィードバック制御することにより定トルク制御が可能となる。しかし、回転数が上昇するとモータ誘起電圧が上昇してトルク電流Iqが増加しなくなるので、回転数に応じてd軸電流Idを増加させる、いわゆる弱め磁束制御によりq軸電流Iqも増加させることができ、トルクを増加させることができる。
図2は、モータ駆動装置動作時の各部の波形関係を示し、ロータ位置検出手段4aの出力基準信号H1、H2、H3のエッジ信号は60度ごとに変化して、各部状態信号より360度を6分割した角度が判別できる。出力基準信号H1がローからハイとなるハイエッジを基準電気角0度として示し、モータ4のU相巻線誘起電圧Ecは、出力基準信号H1から30度遅れた波形となる。U相モータ電流IuとU相巻線誘起電圧Ecの位相を同じにすると、最大効率が得られる。U相巻線誘起電圧Ecがq軸と同等軸となり、d軸は、90度遅れている。q軸電流は、モータ誘起電圧位相と同相なので、トルク電流と呼ばれる。
図2において、U相モータ電流Iuは、U相巻線誘起電圧Ecよりわずかに進んで、モータ印加電圧Vuは、U相巻線誘起電圧Ecより30度進んだ波形を示す。Vcは、PWM制御手段64内で生成される鋸歯状(または三角波)波形のキャリヤ信号で、Vuは、正弦波状のU相制御電圧でキャリヤ信号VcとU相制御電圧Vuを比較したPWM信号UをPWM制御手段64内で発生させ、インバータ回路3のU相上アームトランジスタの制御信号として加える。ckは、キャリヤ信号Vcの同期信号で、キャリヤカウンタがカウントアップしてオーバーフローしたときの割込信号である。
モータ4のロータ磁石軸とステータの磁束軸が一致した電気角をd軸として基準電気角0度として静止座標系から回転座標系への座標変換、すなわち、dq変換を行うので、電気角検知手段60は、ロータ位置検出手段4aの出力基準信号H1、H2、H3より30度、90度、150度等の電気角を検知し、60度毎以外は推定により電気角θを求める。
一般的に、ロータのマグネットの磁束の方向に対応した電流成分をd軸電流Idと呼び、永久磁石の磁束と界磁の磁束が同軸上で永久磁石が界磁に吸引された状態なので、トルクは零となる。また、d軸から電気角で90度の角度で誘起電圧位相と同じ位相となり、トルク最大となる軸をq軸と呼び、トルクに対応した電流成分なので、q軸電流Iqと呼ぶ。さらに、d軸電流Idを負の方向に増加させると、d軸上の界磁磁束を弱めることと等価となるので、弱め界磁制御、あるいは弱め磁束制御(または磁束弱め制御)と呼ばれる。また、d軸電流Idとq軸電流Iqに分解してそれぞれ独立に制御するので、ベクトル制御と呼ばれる。
3相/2相dq変換手段61は、モータ電流Iu、Iv、Iwを数式1によりd軸電流Idとq軸電流Iqに変換するもので、電気角θに対応して検出したモータ電流瞬時値よりId、Iqを演算する。
記憶手段62には、sinθとcosθのデータを記憶しているので、電気角データに対応したデータを呼び出して積和演算を行うことにより、d軸電流Idとq軸電流Iqに分解できる。電気角θの検知とモータ電流瞬時値の検出は、キャリヤ信号に同期して行うもので、後述するフローチャートに従い、詳細な説明を行う。
回転数検知手段66は、ロータ位置検出手段4aの出力基準信号H3よりモータ回転数を検知し、回転数信号を設定変更手段65、トルク電流制御手段67に加える。設定変更手段65は、モータ4の回転数の設定、回転数に応じたd軸電流指令値Idsの設定、トルク電流制御手段67への設定回転数である速度指令Nsの設定を行なうとともに、モー
タ電流制御手段68にd軸電流指令値Idsを加える。なお、出力基準信号はH1、H2をそれぞれ使用しても良いし、H1〜H3の信号から求めた回転数の平均値を用いてもよい(図示せず)。
トルク電流制御手段67(1次電流判定手段)は、検知回転数Nと速度指令Nsを比較する回転数比較手段67aと、検知回転数Nと速度指令Nsとの誤差信号ΔNと、回転数の変化率(加速度)に応じてq軸電流指令値Iqsを制御するトルク電流設定手段67bと、q軸電流指令値Iqsの値に対し、現在の検知回転数Nとの関数より導出される最大Iqsの値と比較し、制限を掛けるIq指令リミッタ部67cより構成される。
トルク電流設定手段67bは、誤差信号ΔNに応じてq軸電流指令値IqsをPI制御する、いわゆる、回転数制御電流マイナーループ制御を行う。PI制御の際のゲインなどの設定切り換えについては、設定変更手段65からの指示を受けるもので、後述するフローチャートに従い説明を行う。
モータ電流制御手段68は、3相/2相dq変換手段61の出力信号Iq、Idと電流指令値Iqs、Idsをそれぞれ比較して制御電圧信号Vq、Vdを出力するもので、q軸電流比較手段68a、q軸電圧設定手段68b、d軸電流比較手段68c、d軸電圧設定手段68dより構成し、q軸電流Iqとd軸電流Idをそれぞれ制御する電圧信号Vq、Vdを生成する。
d軸電流指令値Idsは、設定変更手段65からモータ電流制御手段68に信号が加えられるもので、埋め込み磁石モータの場合には、回転数に応じてd軸電流指令値Idsを増加させて弱め界磁制御を行う。表面磁石モータの場合には、通常d軸電流指令値Idsは零に設定し、高回転数駆動の場合にd軸電流指令値Idsを増加させる。本実施の形態では、交流電源1から整流回路2に流入する電流を制限するための説明であり、表面磁石モータでは、d軸電流指令値Idsは零近くの所定の値に設定するため、以降、d軸電流指令値Idsについては特に記載しないこととする。
2相/3相dq逆変換手段63は、電圧信号Vq、Vdより3相モータ駆動制御電圧Vu、Vv、Vwを数式2によって演算するもので、キャリヤ信号に同期して、電気角検知手段60により検知した電気角θに対応した正弦波状の信号をPWM制御手段64に加える。記憶手段62に記憶したsinθ、cosθのデータを呼び出して行う積和演算の方法は、3相/2相dq変換手段61の演算とほぼ同じである。
上記構成のモータ駆動装置について、図3から図8を参照しながら動作、作用を説明する。図3は、本実施の形態におけるモータ制御の切り替わりを示すフローチャートで、ステップ100により洗濯機や洗濯乾燥機のモータ4の速度制御を行うためのモータ制御を開始する。
ステップ101において、速度指令Nsを決定し、ステップ102において、現在の回転数Nを検出する。速度指令Nsの決定方法については後述する。その後、ステップ103において、電流指令値(Iq指令値)を算出するが、同時にステップ104において、Iq指令値のリミット値(Iqリミット値)を後述する方法で取得する。
ステップ105において、電流指令値とIqリミット値を比較し、Iqリミット値よりも電流指令値が高い場合は、ステップ107へ、低い場合は、ステップ106へ進む。
ステップ106では、q軸電流IqがIqリミット値を越えていないことを示すため、Iqリミットフラグを0として保存する。ステップ107では、q軸電流IqがIqリミット値を越えたことを示すため、Iqリミットフラグを1として保存する。
ステップ108では、電流指令値に応じてモータ制御のサブルーチン処理を行う。その後、ステップ109において、モータ制御が継続中ならば、ステップ101に戻り、速度制御を継続する。モータ制御が終了した場合は、速度制御を終了する。
ステップ108で行なわれるモータ駆動サブルーチン(モータ制御サブルーチン)の制御に関して、図4を用いて説明する。ステップ600によりモータ駆動サブルーチンが開始すると、次にステップ601に進んで、キャリヤ信号割込の有無を判定する。キャリヤ信号割込とは、PWM制御手段64のキャリヤカウンタがオーバーフローすると発生する割込信号ckにより実行するもので、キャリヤ信号割込があった場合は、ステップ602に進んで、キャリヤ信号割込サブルーチンを実行する。
図5は、キャリヤ信号割込サブルーチンの詳細フローチャートを示し、ステップ700によりキャリヤ信号割込サブルーチンを開始し、ステップ701にて割込信号ckをカウントする。
つぎに、ステップ702に進んで電気角検知手段60によりロータ位置の電気角θを演
算する。ロータ位置の電気角θは、別途求めたキャリヤ信号1周期当たりの電気角Δθとキャリヤカウンタのカウント値kを掛けた値k・Δθを、ロータ位置検出手段4aより検知できる60度ごとの電気角φを加えることで推定演算する。
モータ4を8極、キャリヤ周波数を15.6kHz、回転数を900r/minとすると、モータ駆動周波数は、60Hzとなり、電気角60度内のキャリヤカウンタのカウント値kは約43となる。よって、Δθは、約1.4度となる。モータ回転数が低い程、電気角60度内のカウント値kは高くなり、演算上の電気角検知分解能は向上するので、回転数が低く精度が要求される場合でも問題はないことがわかる。
つぎに、モータ電流Iu、Ivを検出する。ステップ703に進んで、1回目のモータ電流検出を行ない、Iu1、Iv1を得る。電流検出1回では、ノイズが含まれる可能性があるので、ステップ704に進んで、再度検出し、Iu2、Iv2を得る。ステップ705にて、これら2回の検出値の平均値を求めて、ノイズを除去してモータ電流Iu、Ivを算出し、Iw=−(Iu+Iv)よりモータ電流Iwを演算する。
ここでは、ノイズ除去の為に単純な二回平均値にてモータ電流Iu、Ivとしたが、この方式に限定されるものではない。たとえば、前回のキャリヤ信号割込の際に検出した電流と今回のキャリヤ信号割込の際に検出した電流との変化分を算出し、変化分を一定比率で低減して前回検出した電流に足し合わせるようなローパスフィルター機能を構成してノイズ除去を実施しても良い。
つぎに、ステップ706に進んで、3相/2相dq変換手段61によって電気角θとモータ電流Iu、Iv、Iwより、前記数式1に示した演算を行い、3相/2相dq変換を行い、d軸電流Id、q軸電流Iqを求める。つぎに、ステップ707に進んで、求められた電流値Id、Iqをメモリし、別途ベクトル制御データとして用いる。
次に、ステップ708に進んで、d軸制御電圧Vd、q軸制御電圧Vqを呼び出し、ステップ709に進んで、前記数式2に従い2相/3相dq逆変換手段63によって2相/3相dq逆変換を行い、3相制御電圧Vu、Vv、Vwを求める。この逆変換は、ステップ706と同じように、記憶手段62の電気角θに対応したsinθ、cosθデータを用い、積和演算を高速で行う。
つぎに、ステップ710に進んで、PWM制御手段64によって3相制御電圧Vu、Vv、Vwに対応したPWM制御を行い、ステップ711に進んで、サブルーチンを終了してリターンする。
PWM制御は、図2でも説明したように、U相、V相、W相各相に対応して、鋸歯状波(または三角波)のキャリヤ信号と制御電圧Vu、Vv、Vwを比較してインバータ回路3のIGBTオンオフ制御信号を発生させ、モータ4を正弦波駆動するもので、上アームトランジスタと下アームトランジスタの信号は、逆転された波形で、上アームトランジスタの導通比を増加させると、出力電圧は正電圧が増加し、下アームトランジスタの導通比を増加させると、出力電圧は負電圧が増加する。
導通比を50%にすると、出力電圧は零となる。電気角θに対応して制御電圧を正弦波状に変化させると、正弦波状の電流が流れる。正弦波駆動の場合、トランジスタの導通比を最大値100%にしたとき、出力電圧は最大となり、変調度Amは100%で、導通比の最大値を50%にしたとき、出力電圧は最低となり、変調度Amは0%と呼ぶ。
モータ電流をベクトル制御するための、3相/2相dq変換と2相/3相dq逆変換を
キャリヤ信号毎に高速で実行するので、高速の電流制御が可能となり、さらに、キャリヤ信号毎にベクトル制御することにより、撹拌翼や洗濯兼脱水槽を負荷変動に対応して適切にトルク駆動することができる。
図4に戻って、キャリヤ信号割込サブルーチン(ステップ602)を実行した後、ステップ603に進み、位置信号割込の有無を判定する。ロータ位置検出手段4aの出力基準信号H1、H2、H3のいずれかの信号が変化すると、割込信号が発生し、ステップ604に進んで、図6に示す位置信号割込サブルーチンを実行する。図2に示すように、電気角60度ごとに割込信号が発生する。
ここで、図6に基づいて、位置信号割込サブルーチンについて説明する。ステップ800により位置信号割込サブルーチンを開始し、ステップ801に進んで、出力基準信号H1、H2、H3を電気角検知手段60に入力して位置検出を行い、つぎに、ステップ802に進んで、位置信号よりロータ電気角θcを検出する。つぎに、ステップ803に進んで、キャリヤ信号割込サブルーチンでカウントしているカウント値kをkcにメモリし、ステップ804に進んで、カウント値kをクリヤし、ステップ805に進み、電気角60度間のキャリヤカウンタのカウント値kcより1キャリヤの電気角Δθを演算する。
つぎに、ステップ806に進んで、回転数検知手段66によって、出力基準信号H3による割込信号か否かを判定し、基準位置信号割込ならば、ステップ807に進んで、回転周期測定タイマーのカウント値Tを周期Toとしてメモリし、ステップ808に進んで、カウント値Tをクリヤし、ステップ809に進んで、モータ回転数Nを演算する。次に、ステップ810に進んで、回転周期測定タイマーのカウントを開始させ、ステップ811に進んで、サブルーチンを終了してリターンする。
回転周期測定タイマーの検知分解能を8bit精度にすると、クロックは、64μsとなり、キャリヤ信号をクロックに使用できるが、回転制御性能を向上するためには、回転周期検知分解能を向上させる必要があり、クロックの周期は、1〜10μsに設定する必要がある。この場合には、マイクロコンピュータのシステムクロックを分周してクロックに使用する。
以上に説明した回転数検知方法は、出力基準信号H3の周期から求める方法を示したが、出力基準信号H1、H2、H3をすべて使用してもよい。また、キャリヤ信号を三角波にすると、キャリヤカウンタタイマーの周期は、鋸歯状波の2倍となるので、三角波のオーバーフロー信号をクロックにすると分解能が向上するので、三角波タイマーのオーバーフロー信号をクロックにしてもよい。
続いて、図3のステップ104におけるIq指令値のリミット値を取得するIqリミットテーブル及びステップ101の速度指令作成方法について以下に説明する。
図7は、本発明のモータ駆動装置のIq指令値のリミット値を取得するIqリミットテーブルの一例を示している。交流電源1の電圧がAC100Vの時に、整流回路2へ流れる電流の実効値を7Aとした時の、モータ回転数とIq指令値の関係性を示す特性図である。図7の特性曲線よりも回転数を示すx軸側にIq指令値を保持することにより、整流回路2へ流れる電流の実効値を常に7A以下に制御できることを示している。図7の曲線を数式で表したものが数式3である。
数式3は、2次曲線で表記しているが、Iq指令値が回転数に対してべき乗で単調減少する特性であれば、これに限られるものではなく、数式3であらわされる曲線からx軸、y軸方向の領域にIq指令値を制限することで、1次電流の実効値を検出することなく、任意の値に制限することが可能となる。
たとえば、モータ回転数を700rpmに速度制御している場合、Iq指令値を2.58Aを超えないよう制御することで、整流回路2へ流れる電流の実効値を7A以下に制御することが可能となる。
同様に、モータ回転数を400rpmに速度制御している場合、Iq指令値を3.33Aを超えないよう制御することで、整流回路2へ流れる電流の実効値を7A以下に制御することが可能となる。
以上のようにして、モータ回転数に対応させてIq指令値のリミット値を取得し、Iqリミットフラグ生成時の基準として使用する。
次に、上記のIqリミットフラグの値と関連付けて行なう速度指令Nsの作成について説明する。
速度指令Nsの作成は、q軸電流指令値Iqsが前述したIqリミットテーブルによってモータ回転数に応じて取得したIq指令値のリミット値を超えないように加速度を制御する方法によって行なう。すなわち、トルクに対応した電流成分(q軸電流指令値Iqs)があらかじめ設定したテーブルの制限値(Iq指令値のリミット値)を超える場合には指令回転数(速度指令Ns)の変化を緩やかにするという方法によって行なう。
図8は、速度指令Nsの作成の方法を示したフローチャートである。説明のため、ブラシレスモータの加速時のフローチャートを示している。
速度指令Nsのサンブル周期(制御周期)の前回の値を添え字n−1で、今回の値を添え字nで表記する。今回の速度指令をNs(n)、前回の速度指令をNs(n−1)、今回の加速度指令をΔNs(n)、前回の加速度指令をΔNs(n−1)、加速が終了した後の速度の目標値をNss、加速度の目標値をΔNss、加速度の増減値をαとする。
速度指令Nsの作成は、以下のように行う。ステップ300により、速度指令Nsの作成を開始する。ステップ301により、前に説明した図3で設定したIqリミットフラグを調べる。
Iqリミットフラグが0すなわちq軸電流指令値Iqsが前述したIqリミットテーブルの設定値を超えていなければ、ステップ302へ進む。ステップ302〜305では、前回の加速度指令ΔNs(n−1)に対して加速度の目標値ΔNssを超えない範囲で加速度の増減分αを増やす。その後、ステップ307により、速度指令を作成する。
ステップ301により、Iqリミットフラグが1、すなわちq軸電流指令値IqsがIqリミットテーブルの設定値を超えている場合には、ステップ306に進む。ステップ306では、前回の加速度指令ΔNs(n−1)より加減速の増減値αを減じた値を今回の
加速度指令ΔNs(n)とする。その後、ステップ307により、速度指令を作成する。
ステップ307では、前回の速度指令Ns(n−1)にステップ301〜306のフローに従って求めた今回の加速度指令ΔNs(n)を加えることで、今回の速度指令Ns(n)を決定する。
また、今回の速度指令Ns(n)、今回の加速度指令ΔNs(n)は保存され、次回の速度指令作成時の速度指令Ns(n−1)、加速度指令ΔNs(n−1)として使用される。このようにした求められた速度指令Ns(n)は、前述した設定変更手段65からトルク電流制御手段67に入力される速度指令Nsとして使用される。
また、図示は省いているが、ステップ307により、今回の速度指令Ns(n)を決定するが、加速が終了した後の速度の目標値Nssを超えない範囲で増加させる処理が必要である。
なお、本実施の形態では、q軸電流指令値Iqsが前述したIqリミットテーブルを超えないように加速度を制御する方法の一例として、加速度の増減値αを用いて制御を行う方法を説明したが、加速度の増減の作成の方法にこだわるものではない。また、同様に一定速に移行後にq軸電流指令値Iqsが前述したIqリミットテーブルを超えないように速度指令の増減を行うことも有効である。
以上で説明したIq指令値のリミット制御により、整流回路2へ流れる電流を検出せずとも、所望の値に電流を制御することが可能となり、低回転時に必要以上にIq指令値をリミットさせず、モータ回転数に応じてリミット値を適切に変更することができるため、低回転時のトルク不足による不具合が発生しないようにすることができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、電源電圧が一定の場合における単一の電流リミット制限特性を用いて述べたが、電源電圧が変動する場合については、考慮されていない。本実施の形態2では、電源電圧が変動した場合にも、必要以上にトルク指令電流を低減させず、1次側電流を所望の値に制限できる構成について図を用いて説明する。
図9は、実施の形態2のモータ駆動装置の一部ブロック化した回路図である。本実施の形態2のモータ駆動装置は、実施の形態1の構成に加えて、整流回路2の電圧を検出する電圧検出手段69を備えており、その他の構成は実施の形態1の構成と同じである。以降、実施の形態1と異なる部分について説明し、その他の構成については説明を省略する。
図10は、電圧検出手段69で行う整流電圧検出によるIqリミットテーブルの切替処理をステップごとに図示している。ステップ200において、整流回路2のコンデンサ21の電圧Vpを検出し、ステップ201において、あらかじめ決められた高位規定値と比較を行う。ステップ201において、Vp電圧が高位規定値よりも高い場合は、ステップ203へ進み、高電位対応のIqリミットテーブルを選択し、低い場合は、ステップ202に進む。ステップ202では、更に低位規定値とVp電圧を比較し、Vp電圧が低位規定値よりも低い場合は、ステップ204に進み、低電位対応のIqリミットテーブルを選択し、高い場合は、ステップ205に進み、標準のIqリミットテーブルを選択する。ステップ203〜205において選択されたテーブルを、Iq指令リミッタ部67cのIqリミットテーブルとして設定する。
ステップ201、202において、Vp電圧値と比較する規定値について、図11〜図13を用いて、説明する。
図11は、電源電圧85Vとした条件下での電圧検出手段69による整流電圧検出部の電圧波形(計算波形)を示している。図11(a)では、モータ4の状態は通電中(回転中)であり、電圧値は、210V〜225Vに脈動し、平均値は、215V程度である。図11(b)では、モータ4の状態は停止中であり、電圧値の脈動は小さく、平均値として235V程度である。電源電圧が85Vの場合、モータ回転中であれば、平均値で235V以下、停止時では、255V以下を低位規定値としてテーブルを設定することで、電源電圧変動に対する適切なIqリミットテーブルを選択することができる。
同様に、図12は、標準的な電圧である電源電圧100Vとした条件下での電圧検出手段69による整流電圧検出部の電圧波形(計算波形)を示している。図12(a)では、モータ4の状態は、通電中(回転中)であり、電圧値は、235V〜265Vに脈動し、平均値は、255V程度である。図12(b)では、モータ4の状態は、停止中であり、電圧値の脈動は小さく、平均値として275V程度である。電源電圧が100Vの場合、モータ回転中であれば、平均値で235V以上275V未満、停止時では、255V以上295V未満として標準テーブルを設定することで、電源電圧変動に対する適切なIqリミットテーブルを選択することができる。
さらに、同様に、図13は、電源電圧115Vとした条件下での電圧検出手段69による整流電圧検出部の電圧波形(計算波形)を示している。図13(a)では、モータ4の状態は、通電中(回転中)であり、電圧値は、285V〜305Vに脈動し、平均値は、295V程度である。図13(b)では、モータ4の状態は、停止中であり、電圧値の脈動は小さく、平均値として315V程度である。電源電圧が115Vの場合、モータ回転中であれば、平均値で275V以上、停止時であれば、295V以上を高位規定値としてテーブルを設定することで、電源電圧変動に対する適切なIqリミットテーブルを選択することができる。
図14は、交流電源1の電圧がそれぞれ、高電圧条件(AC115V)、標準電圧(AC100V)、低電圧条件(AC85V)の時に、整流回路2へ流れる電流の実効値を7Aとした時の、モータ回転数とIq指令値の関係性を示す特性図である。図14のそれぞれの特性曲線よりも回転数を示すx軸側にIq指令値を保持することにより、電源電圧に応じて、整流回路2へ流れる電流の実効値を常に7A以下に制御できることを示している。
図14の曲線において、高電圧条件(高電位のIqリミットテーブル)の曲線を数式で表したものが数式4、低電圧条件(低電位のIqリミットテーブル)の曲線を数式で表したものが数式5である。標準電圧時(標準電位のIqリミットテーブル)の曲線を数式で表したものは、実施の形態1と同じ数式3である。
数式4、数式5は2次曲線で表記しているが、Iq指令値が回転数に対してべき乗で単
調減少する特性であれば、これに限られるものではなく、数式4、数式5であらわされる曲線からx軸、y軸方向の領域にIq指令値を制限することで、1次側電流の実効値を検出することなく、任意の値に制限することが可能となる。
なお、上述のIqリミットテーブルは3通りで説明したが、電源電圧変動に応じた基準値を4通り以上で設定しても良い。さらに、電源電圧変動幅に対して、モータ回転数の2乗に比例する項を有し単調減少する関数の係数を連続的に変化させても良い。
上記のモータ駆動装置を用いた洗濯機、又は洗濯乾燥機は、異常時などに交流入力電流が過大にならないように制限しつつ、モータによって駆動されるドラム内の被洗濯物の容量や偏りに応じて変動する負荷に応じた最適なトルク制御でモータを駆動することができるとともに、省エネ性の向上を図ることができる。また、多様な洗濯、すすぎ、乾燥の条件に応じてきめ細かく、効率的にドラムの回転数を制御することができるので、多機能で使い勝手の良い洗濯機、洗濯乾燥機を提供することができる。また、モータ駆動装置の回路構成を簡素化でき、フォトカプラ等の高価な部品も不要とすることができるので、安価な洗濯機、洗濯乾燥機を提供することができる。