JP3914313B2 - Hst式ミッション装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クローラ式作業機において、車速を変更する走行用のHST式無段変速機構を具備したHST式ミッション装置の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、クローラ式作業機等においては、例えば、実開昭60−89454号公報に示すように、走行駆動をHST式無段変速機構により行う技術は公知とされている。
また、HST式無段変速機構を構成する油圧ポンプの斜板を操作する機構を、自動斜板角度制御バルブ等によりサーボ機構として構成し、作業機の操向操作を行う技術は、特願平8−211678号に示すように、本出願人より提案済である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、HST式無段変速機構による走行駆動においては、HST式無段変速機構を構成する油圧ポンプの斜板角度の操作は手動スプールバルブで行われているのみであり、サーボ機構を構成して電気的に制御することは行われていなかった。
また、作業機の変速レバーからHST式無段変速機構までの間に、電動モータや油圧シリンダ等を設けて電気的に制御しようとすると、大きなスペースが必要となり、制御量の精度を高めるためにリンク構造や調整作業に多くのコストがかかることとなっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
請求項1においては、クローラ式作業機の車速の変速操作を、ミッションケース(22)中のギア機構に、走行用のHST式無段変速機構(25)により回転を与えることにより行うHST式ミッション装置において、該車速変速用のHST式無段変速機構(25)を構成する走行油圧ポンプ(23)の斜板を操作する機構を、手動斜板角度制御バルブ(74)と走行変速サーボ機構(61)により構成し、該手動斜板角度制御バルブ(74)は、ピストン(71)及びその内部に配置したスプール(72)により構成し、該走行変速サーボ機構(61)は、自動斜板角度制御バルブ(73)と、前記手動斜板角度制御バルブ(74)のピストン(71)とスプール(72)により構成し、前記スプール(72)に、微小変速時の設定回転となるピストン(71)の移動量に相当する切欠部(172・・・)を設けたものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載のHST式ミッション装置において、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)を、両ソレノイド形の3位置4方弁に構成したものである。
【0007】
請求項3においては、請求項1記載のHST式ミッション装置において、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)を、片ソレノイド形のポート2位置切換弁に構成したものである。
【0008】
請求項4においては、請求項1記載のHST式ミッション装置において、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)のポンプポート(91)及びタンクポート(92)に、絞り(98)及び絞り(99)の回路を設けたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1はクローラ式作業機としてのコンバインに、本発明のHST式ミッション装置を搭載した状態の全体側面図、図2は同じく平面図、図3はHST式ミッション装置の側面断面図、図4は同じく平面一部断面図、図5は同じく部分側面図、図6は同じく正面一部断面図、図7は走行変速サーボ機構の安定時を示す断面図、図8は走行変速サーボ機構の動作初期を示す断面図である。
【0010】
図9は走行変速サーボ機構のクローズ位置状態を示す断面図、図10は走行変速サーボ機構のピストンの構造を示す図、図11は走行変速サーボ機構のスプールを示す図、図12は走行変速サーボ機構の油圧回路を示す図、図13は走行変速サーボ機構の第二の実施例を示す断面図、図14は走行変速サーボ機構の第三の実施例を示す断面図、図15は走行変速サーボ機構の第四の実施例を示す断面図、図16は走行変速サーボ機構の第5の実施例を示す断面図である。
【0011】
まず、本発明のHST式ミッション装置を搭載したコンバインの全体構成について説明する。
図1及び図2において、トラックフレーム1には左右一対の走行クローラ2が装設され、該トラックフレーム1の上方には機台3が架設されている。機台3上方の左右一側に配設した脱穀部4にはフィードチェーン5が張架され、該脱穀部4は扱胴6及び処理胴7等を内蔵している。
また、機体前部には刈刃9及び穀稈搬送機構10等を備える刈取部8が配設され、該刈取部8は刈取フレーム12を介して、油圧シリンダ11により昇降されるように構成している。
【0012】
前記脱穀部4の後方には排藁チェン14の終端を臨ませる排藁処理部13が設され、左右方向における機台3の脱穀部4配設側とは反対側には、穀物タンク15が配設されている。該穀物タンク15には、脱穀部4からの穀粒が揚穀筒16を介して搬入され、該穀物タンク15に貯留された穀粒は排出オーガ17によって機外へ搬出される。穀物タンク15の前方には、操向ハンドル19及び運転席20等を備える運転キャビンが配設され、該運転キャビン20の下方には、エンジン21、及び、前記走行クローラ2を駆動する運転駆動部であり、本発明のHST式ミッション装置を備えるミッションケース22を配設している。コンバインは以上のように構成されて、連続的に穀稈を刈取って脱穀するようにしている。
【0013】
前記ミッションケース22は、図3に示す、走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24からなる主変速機構である走行用のHST式無段変速機構25等と、ギア機構とから構成されている。該走行油圧ポンプ23の入力軸26は、前記エンジン21の出力軸に連動連結され、走行油圧モータ24の出力軸31は、ミッションケース22内の前記ギア機構を介して、図1における走行クローラ2の駆動輪34と連動連結されている。
そして、エンジン21から走行油圧ポンプ23へ入力された駆動回転は、該走行油圧ポンプ23の斜板146の角度変更調節により正逆回転と回転数との制御が行われて走行油圧モータ24へ伝達され、この制御された駆動回転が前記ギア機構を介して走行クローラ2を駆動するのである。
【0014】
図3乃至図6において、本発明のHST式ミッション装置について説明する。該HST式ミッション装置は、走行油圧ポンプ23及び走行油圧モータ24からなる走行用のHST式無段変速機構25と、チャージポンプ29と、走行変速サーボ機構61等とにより構成されている。走行油圧ポンプ23と走行油圧モータ24とは上下に並設され、走行油圧ポンプ23の入力軸26の前端部にはチャージポンプ29が付設されている。
また、走行油圧ポンプ23の一側方には走行変速サーボ機構61が配設されている。該走行変速サーボ機構61は、走行油圧ポンプ23の上面に付設された自動斜板角度制御バルブ73と、ピストン71と、該ピストン71の内部に配置された手動斜板角度制御バルブとの間で全体的に構成されている。
そして、走行変速サーボ機構61は、走行油圧ポンプ23のケースの内部に埋め込まれて一体的に構成されている。
【0015】
次に、走行変速サーボ機構61の構成について説明する。
図3乃至図6において、該走行変速サーボ機構61は、ピストン71を上下することにより、クレイドル型の油圧ポンプの斜板146の横に設けたピン軸190を上下に移動させて、該斜板146が最終的に変速のために回動するように構成している。
そして、該ピストン71の内部にはスプール72が摺動自在に嵌装されており、該スプール72は、走行変速アーム151の回動により、衝撃吸収バネ162を介して、走行中立カム149とクランクアーム159とが回動し、スプール72を上下動させる。
尚、該ピストン71の内部でスプール72が上下動することにより、前記手動斜板角度制御バルブが構成されている。
【0016】
また、自動斜板角度制御バルブ73は電磁弁により構成されており、エンジン21の負荷や足回りの負荷等をセンサー等の検出手段により検出して、検出した負荷の大きさ等により自動斜板角度制御バルブ73を切り換えて、スプール72の位置を上下する方向に、該スプール72の上下の位置から圧油を供給するのである。該自動斜板角度制御バルブ73は両ソレノイド形の4ポート3位置切換弁に構成されて、ポンプポート91、タンクポート92、Aポート93、Bポート94を有している。
尚、作業機がトラクタである場合には、駆動力を外部へ取り出すPTO軸のトルクを検出して自動斜板角度制御バルブ73を切り換えることも可能である。
【0017】
このように、手動斜板角度制御バルブと自動斜板角度制御バルブ73とにより、ピストン71とスプール72とを操作することで斜板146を回動し、走行用のHST式無段変速機構25を変速するのである。
そして、該HST式無段変速機構25が中立位置に位置する場合は、該中立位置で保持する必要があり、走行中立保持アーム148を設けて、該走行中立保持アーム148の先端に走行中立保持ローラ152を枢支している。
【0018】
該走行中立保持ローラ152は、走行変速操作アーム151と一体的に、走行中立カム149が回動し、該走行中立カム149の中央の凹部に前記走行中立保持ローラ152が嵌入して中立を保持するように構成している。
また、該走行変速操作アーム151は衝撃吸収バネ162を介して、共に回動する走行ストッパー杆150が設けられており、該走行ストッパー杆150がストッパー板157と係合して、走行変速アーム151がそれ以上回動してもクランクアーム159がそれ以上回動することを阻止するように構成している。
また、前記走行変速操作アーム151には、衝撃吸収バネ162を介してスプール72を操作するクランクアーム159が設けられており、該クランクアーム159が、スプール72の凹部161と係合している。
【0019】
前述の如く、自動斜板角度制御バルブ73の電気的な切り換えによりスプール72を上下動させるべく、ピストン71の上下に圧油を供給する場合には、図7、図8、図9に示すように、そのまま直接供給される。
しかし、前記斜板角度制御バルブよりピストン71の上下に油圧を供給する場合には、図7乃至図10に示すように、先ず、圧油がチャージポンプ29から、スプール72の内周の長孔部分に構成されたポンプポート165に供給される。該ポンプポート165からの圧油が、スプール72の上下により、外周油路166から、ピストン71の内周油路170及び穿設油路167を経て、ピストン71の下方に至る場合と、外周油路166から他方の内周油路169を経て、ピストン71の上部に至る場合とに切り換えられる。
【0020】
そして、ピストン71の上下からの戻り油は、ピストン71の下方に圧油が供給されて該ピストン71上方へ移動する場合には、穿設油路169からスプール72の排出油路168を経てドレーン回路へ排出される。
また、ピストン71が下方へ移動する場合には、ピストン71の下方の圧油は穿設油路167から排出油路179を経て排出される。
【0021】
以上のような構成において、本発明はスプール72に、図11に示すように外周油路166の上下部分の位置と、排出油路168の上部の位置と、排出油路170の下部の位置とに、微小変速時の設定回転数に応じたオーバーラップ部を設け、該部分を、平行切欠部172・173・174・175に構成している。
このように、このスプール72の平行切欠部172・173・174・175のオリフィスの条件は、図12に示す、自動斜板角度制御バルブ73の絞り176よりも小さく構成している。これにより、手動斜板角度制御バルブ74による手動操作時には、平行切欠部172・173・174・175により流量制御を行い、自動斜板角度制御バルブ73による自動走行変速時には、自動斜板角度制御バルブ73の絞り176により流量制御を行い、ある位置までピストン71が移動すると、スプール72の流量制御により該ピストン71の移動が停止するように構成している。
【0022】
この構成を油圧回路図で示すと、図12の如くとなり、オリフィスの条件としては、絞り176>平行切欠部172としている。
また、自動斜板角度制御バルブ73への回路の絞り177と手動斜板角度制御バルブ74への絞り178では、絞り177>絞り178となるように構成している。
【0023】
図7乃至図9においては、自動斜板角度制御バルブ73は両ソレノイド形の4ポート3位置切換弁に構成され、ポンプポート91、タンクポート92、Aポート93、Bポート94を有している。
そして、図7に示すように該自動斜板角度制御バルブ73をONすると、ピストン71上方の油室81に圧油が流入して該油室81内の圧力が上昇し、これにより、走行変速サーボ機構61内の圧力の均衡が崩れてピストン71が下方に移動し、スプール72の平行切欠部172・173・174・175の切欠長さ分だけ動いて、その位置で釣合状態になる。
即ち、ピストン71がそれ以上下方に回動しようとすると、油室81からオイルタンクへ通じる油路が大きく開放されて、該油室81の圧力が低下する。一方、油室82は、外周油路166(制御圧供給ポート)に大きく開放されて、該油室82の圧力が上昇する。従って、ピストン71はそれ以上下方に移動しないで釣合い状態となるのである。
そして、ピストン71が移動した分だけ走行油圧ポンプ23の斜板146が回動して、走行油圧モータ24の出力回転数が変化する。
また、図9に示すように、自動斜板角度制御バルブ73をOFFしてクローズ位置とすると、本来の走行変速サーボ機構61の釣合い状態に戻り、ピストン71及び斜板146は元の位置に戻って、走行油圧モータ24の出力回転数も復帰するのである。
【0024】
以上のように、手動斜板角度制御バルブ74と自動斜板角度制御バルブ73とにより走行変速サーボ機構61を構成し、該走行変速サーボ機構61によって、走行用のHST式無段変速機構25の斜板146の角度制御を行うように構成したので、電磁弁にて構成した自動斜板角度制御バルブ73を励磁させることで、電気信号により強制的に任意の油室81・82へパイロット圧力を導き、該斜板146の角度を制御することができるのである。
【0025】
また、スプール72に任意の切欠幅に切欠いた平行切欠部172・173・174・175を形成することにより、斜板146を該切欠幅分の微小角度だけ回動制御することができる。
これにより、例えば、作業機の増速・減速といった車速制御が電気的に制御することが可能となり、さらに、作業機の負荷に応じて車速を制御する負荷制御(ミッション部と作業部との動力分配の制御)が可能となる。そして、これらの車速制御及び負荷制御は、スプール72の平行切欠部172・173・174・175によって、微妙な制御を行うことができるのである。
尚、平行切欠部172・173・174・175の切欠形状は、スプール72の周方向全域に渡って形成したり、略三角形状に形成した所謂ノッチ形状とすることもできる。
【0026】
前記走行変速サーボ機構61は次のようにも構成することができる。
即ち、図13に示す走行変速サーボ機構62は、走行変速サーボ機構61における自動斜板角度制御バルブ73を自動斜板角度制御バルブ83にて構成したものである。自動斜板角度制御バルブ83は、片ソレノイド形の4ポート2位置切換弁に構成され、ポンプポート91、タンクポート92、Aポート93、Bポート94を有している。該走行変速サーボ機構62において、該自動斜板角度制御バルブ83をONすると、前述の走行変速サーボ機構61の場合と同様に、ピストン71上方の油室81に圧油が流入して該油室81内の圧力が上昇し、これにより、走行変速サーボ機構61内の圧力の均衡が崩れてピストン71が下方に移動し、スプール72の平行切欠部172・173・174・175の切欠長さ分だけ動いて、その位置で釣合状態になる。即ち、ピストン71がそれ以上下方に回動しようとすると、油室81からオイルタンクへ通じる油路が大きく開放されて、該油室81の圧力が低下する。一方、油室82は、外周油路166(制御圧供給ポート)に大きく開放されて、該油室82の圧力が上昇する。従って、ピストン71はそれ以上下方に移動しないで釣合い状態となるのである。
そして、ピストン71が移動した分だけ走行油圧ポンプ23の斜板146が回動して、走行油圧モータ24の出力回転数が低下し、これによりエンジン21の負荷が軽減される。そして、エンジン21の負荷が軽減されると、自動斜板角度制御バルブ83をOFFしてクローズ位置とすると、本来の走行変速サーボ機構62の釣合い状態に戻り、ピストン71及び斜板146は元の位置に戻って、走行油圧モータ24の出力回転数も復帰するのである。
【0027】
以上のように構成した走行変速サーボ機構62は、前進走行作業中にエンジン21に過負荷が作用した場合に、走行速度を微小減少させて該エンジン21の負荷を低減することができ、例えば、コンバインやトラクタのように前進での作業が主である作業機に採用することができる。
このように、コンバインやトラクタのように前進での作業が主である作業機の場合は、前述の走行変速サーボ機構61のように両ソレノイド形の電磁弁である自動斜板角度制御バルブ73を使用するまでもなく、片ソレノイド形の電磁弁である自動斜板角度制御バルブ83で走行変速サーボ機構62を構成すれば充分に本発明の作用を奏することができる。これにより、走行変速サーボ機構62のコストダウンを図ることができる。
また、自動斜板角度制御バルブ73は4ポート2位置切換弁に構成されているので、該自動斜板角度制御バルブ73を簡単でコンパクトな構成にすることができ、さらにコストダウンを図ることができる。
【0028】
また、走行変速サーボ機構61は次のようにも構成することができる。即ち、図14に示す走行変速サーボ機構63は、走行変速サーボ機構61における自動斜板角度制御バルブ73を自動斜板角度制御バルブ84にて構成したものである。自動斜板角度制御バルブ84は、両ソレノイド形の3ポート3位置切換弁に構成されており、タンクポート92、Aポート93、Bポート94を有している。 該走行変速サーボ機構63においては、自動斜板角度制御バルブ84をONすると、ピストン71上方の油室81、又は、ピストン71下方の油室82がオイルタンクに開放されて該油室81、又は、油室82内の圧力が降下する。
すると、走行油圧ポンプ23の斜板146は中立位置方向に付勢されているので、該斜板146はスプール72の平行切欠部172・173・174・175の切欠長さの分だけ中立方向に回動することとなる。
また、自動斜板角度制御バルブ84をOFFしてクローズ位置とすると、本来の走行変速サーボ機構64の釣合い状態に戻り、ピストン71及び斜板146は元の位置に戻って、走行油圧モータ24の出力回転数も復帰する。
【0029】
このように、ポンプポート91を有しない自動斜板角度制御バルブ84を用いて構成した走行変速サーボ機構63においても、走行変速サーボ機構61と同様に走行油圧ポンプ23の斜板146を制御することができるため、自動斜板角度制御バルブ84への制御圧配管が不要となり、構造も簡単となるため、故障を低減することができ、コストダウンを図ることができる。
【0030】
また、走行変速サーボ機構61は次のようにも構成することができる。即ち、図15に示す走行変速サーボ機構64は、前記走行変速サーボ機構61における自動斜板角度制御バルブ73を自動斜板角度制御バルブ85にて構成したものである。該自動斜板角度制御バルブ85は、片ソレノイド形の2ポート2位置切換弁に構成されて、タンクポート92、Aポート93を有している。
そして、自動斜板角度制御バルブ85のAポート93は、油室81又は油室82のうちのどちらか一方と、適宜選択して連結されている。
尚、該自動斜板角度制御バルブ85は、図15の自動斜板角度制御バルブ86のように構成することもできる。
【0031】
該走行変速サーボ機構64においては、自動斜板角度制御バルブ85をONすると、ピストン71上方の油室81、又は、ピストン71下方の油室82の内、Aポート93と連結されたほうの油室81、又は、油室82内の圧力がオイルタンクに開放されて該油室81、又は、油室82内の圧力が降下する。
すると、走行油圧ポンプ23の斜板146は中立位置方向に付勢されているので、該斜板146はスプール72の平行切欠部172・173・174・175の切欠長さの分だけ中立方向に回動することとなる。
また、自動斜板角度制御バルブ85をOFFしてクローズ位置とすると、本来の走行変速サーボ機構65の釣合い状態に戻り、ピストン71及び斜板146は元の位置に戻って、走行油圧モータ24の出力回転数も復帰する。
このように、走行変速サーボ機構64は一方向のみを適宜選択して、走行速度を微小量制御することができるのである。
【0032】
これにより、該走行変速サーボ機構64を走行用のHST式ミッション装置に使用した場合、作業機の前進、又は、後進の内一方向のみ、走行速度を微小量制御することができる。従って、該制御が前進、又は、後進の内一方向のみでよい場合には、前述の走行変速サーボ機構63よりも構成が簡単でコンパクトとなって、更なるコストダウンを図ることができるのである。
【0033】
更に、走行変速サーボ機構61は次のようにも構成することができる。即ち、図16に示す走行変速サーボ機構65は、前記走行変速サーボ機構61における自動斜板角度制御バルブ73のポンプポート91及びタンクポート92に、それぞれ絞り98及び絞り99を設けたものである。該走行変速サーボ機構65において、該自動斜板角度制御バルブ73をONすると、前述の走行変速サーボ機構61の場合と同様に、ピストン71上方の油室81に圧油が流入して該油室81内の圧力が上昇し、これにより、走行変速サーボ機構61内の圧力の均衡が崩れてピストン71が下方に移動し、スプール72の平行切欠部172・173・174・175の切欠長さ分だけ動いて、その位置で釣合状態になる。
即ち、ピストン71がそれ以上下方に回動しようとすると、油室81からオイルタンクへ通じる油路が大きく開放されて、該油室81の圧力が低下する。一方、油室82は、外周油路166(制御圧供給ポート)に大きく開放されて、該油室82の圧力が上昇する。従って、ピストン71はそれ以上下方に移動しないで釣合い状態となるのである。
そして、ピストン71が移動した分だけ走行油圧ポンプ23の斜板146が回動して、走行油圧モータ24の出力回転数が低下し、これによりエンジン21の負荷が軽減される。エンジン21の負荷が軽減された後に、自動斜板角度制御バルブ73をOFFしてクローズ位置とすると、本来の走行変速サーボ機構65の釣合い状態に戻り、ピストン71及び斜板146は元の位置に戻って、走行油圧モータ24の出力回転数も復帰するのである。
【0034】
そして、前述の如く、ピストン71が上下に移動する際には、ポンプポート91及びタンクポート92に設けた絞り98・99により、作動油の流量がコントロールされている。
これにより、該絞り98・99を設けていない走行変速サーボ機構61においては、ピストン71の移動速度が速過ぎて、平行切欠部172・173・174・175の切欠長さ分以上に、該ピストン71が移動してしまう恐れがあるが、走行変速サーボ機構65においては、ピストン71の移動速度を調節して、確実に平行切欠部172・173・174・175の切欠長さ分だけ移動させることができるのである。
【0035】
以上のように走行変速サーボ機構65を構成したことにより、スプール72に形成した平行切欠部172・173・174・175と、ポンプポート91及びタンクポート92に設けた絞り98・99との流量バランスを変化させることで、ピストン71の移動に対する応答性、即ち、HST式ミッション装置の変速応答性を変化させることができるのである。
尚、本実施例において、ポンプポート91及びタンクポート92に設けた絞り98・99は、Aポート93及びBポート94に設けても同様の効果を奏することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。
請求項1に記載の如く、クローラ式作業機の車速の変速操作を、ミッションケース(22)中のギア機構に、走行用のHST式無段変速機構(25)により回転を与えることにより行うHST式ミッション装置において、該車速変速用のHST式無段変速機構(25)を構成する走行油圧ポンプ(23)の斜板を操作する機構を、手動斜板角度制御バルブ(74)と走行変速サーボ機構(61)により構成し、該手動斜板角度制御バルブ(74)は、ピストン(71)及びその内部に配置したスプール(72)により構成し、該走行変速サーボ機構(61)は、自動斜板角度制御バルブ(73)と、前記手動斜板角度制御バルブ(74)のピストン(71)とスプール(72)により構成し、前記スプール(72)に、微小変速時の設定回転となるピストン(71)の移動量に相当する切欠部(172・・・)を設けたので、自動斜板角度制御バルブを励磁させることで、電気信号により強制的に任意の油室へパイロット圧力を導き、該斜板の角度を制御することができることとなった。
これにより、例えば、作業機の増速・減速といった車速制御が電気的に制御することが可能となり、さらに、作業機の負荷に応じて車速を制御する負荷制御(ミッション部と作業部との動力分配の制御)が可能となった。
【0037】
また、手動斜板角度制御バルブを構成する前記スプールに微小変速時の設定回転となるピストンの移動量に相当する切欠部を設けたので、斜板を該切欠幅分の微小角度だけ回動制御することができた。
これにより、前記の車速制御及び負荷制御は、このスプールの平行切欠部によって、微妙な制御を行うことができることとなった。
【0038】
更に、請求項2記載の如く、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)を、両ソレノイド形の3位置4方弁に構成したので、該自動斜板角度制御バルブの如く、ポンプポートを有しない自動斜板角度制御バルブを用いて構成した走行変速サーボ機構においても、ポンプポートを有した走行変速サーボ機構と同様に走行油圧ポンプの斜板を制御することができるため、自動斜板角度制御バルブへの制御圧配管が不要となり、構造も簡単となるため、故障を低減することができ、コストダウンを図ることができた。
【0040】
更に、請求項3記載の如く、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブを片ソレノイド形の2ポート2位置切換弁に構成したので、該自動斜板角度制御バルブを用いて構成した走行変速サーボ機構を走行用のHST式ミッション装置に使用した場合、作業機の前進、又は、後進のうち一方向のみ、走行速度を微小量制御することができることとなった。
これにより、該制御が前進、又は、後進の内一方向のみでよい場合には、自動斜板角度制御バルブの構成を簡単でコンパクトにすることができて、更なるコストダウンを図ることができた。
【0041】
更に、請求項4記載の如く、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブのポンプポート及びタンクポートに絞り回路を設けたので、スプールに形成した前記平行切欠部と、ポンプポート及びタンクポートに設けた絞りとの流量バランスを変化させることで、ピストンの移動に対する応答性、即ち、HST式ミッション装置の変速応答性を変化させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 クローラ式作業機としてのコンバインに、本発明のHST式ミッション装置を搭載した状態の全体側面図である。
【図2】 同じく平面図である。
【図3】 HST式ミッション装置の側面断面図である。
【図4】 同じく平面一部断面図である。
【図5】 同じく部分側面図である。
【図6】 同じく正面一部断面図である。
【図7】 走行変速サーボ機構の安定時を示す断面図である。
【図8】 走行変速サーボ機構の動作初期を示す断面図である。
【図9】 走行変速サーボ機構のクローズ位置状態を示す断面図である。
【図10】 走行変速サーボ機構のピストンの構造を示す図である。
【図11】 走行変速サーボ機構のスプールを示す図である。
【図12】 走行変速サーボ機構の油圧回路を示す図である。
【図13】 走行変速サーボ機構の第二の実施例を示す断面図である。
【図14】 走行変速サーボ機構の第三の実施例を示す断面図である。
【図15】 走行変速サーボ機構の第四の実施例を示す断面図である。
【図16】 走行変速サーボ機構の第五の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
2 走行クローラ
22 ミッションケース
23 油圧ポンプ
24 油圧モータ
25 HST式無段変速機構
61 走行変速サーボ機構
71 ピストン
72 スプール
73 自動斜板角度制御バルブ
146 斜板
172・173・174・175 平行切欠部
Claims (4)
- クローラ式作業機の車速の変速操作を、ミッションケース(22)中のギア機構に、走行用のHST式無段変速機構(25)により回転を与えることにより行うHST式ミッション装置において、該車速変速用のHST式無段変速機構(25)を構成する走行油圧ポンプ(23)の斜板を操作する機構を、手動斜板角度制御バルブ(74)と走行変速サーボ機構(61)により構成し、該手動斜板角度制御バルブ(74)は、ピストン(71)及びその内部に配置したスプール(72)により構成し、該走行変速サーボ機構(61)は、自動斜板角度制御バルブ(73)と、前記手動斜板角度制御バルブ(74)のピストン(71)とスプール(72)により構成し、前記スプール(72)に、微小変速時の設定回転となるピストン(71)の移動量に相当する切欠部(172・・・)を設けたことを特徴とするHST式ミッション装置。
- 請求項1記載のHST式ミッション装置において、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)を、両ソレノイド形の3位置4方弁に構成したことを特徴とするHST式ミッション装置。
- 請求項1記載のHST式ミッション装置において、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)を、片ソレノイド形のポート2位置切換弁に構成したことを特徴とするHST式ミッション装置。
- 請求項1記載のHST式ミッション装置において、前記走行変速サーボ機構(61)を構成する自動斜板角度制御バルブ(73)は、前記走行油圧ポンプ(23)のケースに一体的に構成し、前記自動斜板角度制御バルブ(73)のポンプポート(91)及びタンクポート(92)に、絞り(98)及び絞り(99)の回路を設けたことを特徴とするHST式ミッション装置。
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