JP3912905B2 - 油圧式パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、ダンパーバルブを有する車両用油圧式パワーステアリング装置に関し、特にダンパ効果を内燃機関の回転数に応じて可変にして、車両の低速域における転舵追行性の改善と高速域における操舵の安定感の向上等を図った油圧式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、車両に用いられる油圧式パワーステアリング装置であって、ギヤボックス内の油路切換弁とパワーシリンダの左右油室とをつなぐ作動油回路にダンパーバルブが配設された油圧式パワーステアリング装置として、実公平2−49109号公報に記載されたものがある。
【0003】
このものにおいては、図5に図示されるように、油圧式パワーステアリング装置01のギヤボックスに収容された油路切換弁011 とパワーシリンダ06の左右油室とをつなぐ作動油回路08、09に、油路切換弁011 側から左右油室側へのみ油の流れを許容するチェック弁010a、010aと、初期荷重を有し、油室側から油路切換弁011 側へのみ油の流れを許容する絞りチェック弁010b、010bとが配設されている。そして、これらのチェック弁010a、010a、絞りチェック弁010b、010bにより、ダンパーバルブが構成されている。
【0004】
パワーシリンダ06に作動油を供給する油圧源である油圧ポンプ013 は、流量制御弁023 、リリーフバルブ024 および固定オリフィス025 を備えていて、これらの協働作用により、その回転数に応じて図4に図示される特性線図に従う吐出量の作動油を吐出する。
【0005】
すなわち、油圧ポンプ013 の回転数が所定の低速回転数Nに達するまでの低回転数域では、漸次増大して略一定の高水準に至る量の作動油を吐出し、該回転数Nを越えると、漸次減少して略一定の低水準に至る量の作動油を吐出する。油圧ポンプ013 は、図示されない内燃機関のクランクシャフトに伝動機構を介して連結され、内燃機関の回転数と同じ回転数で回転する。
【0006】
前記従来の油圧式パワーステアリング装置01におけるダンパーバルブは、フリクションが発生する部位を有しないので、ステアリングハンドルの戻り性能がよい。また、絞りチェック弁010b、010bは、初期荷重を有しているので、パワーシリンダ06のピストンロッドを兼用するラックシャフト04が、タイヤのアンバランス等に起因して微小振動しようとしても、左右油室側から油路切換弁011 側への作動油の流れが抑制され、ラックシャフト04はほとんど移動しないので、ステアリングハンドルが微小振動する、いわゆるシミー現象の発生を防止することができる。012 はリザーバタンクである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のダンパーバルブは、内燃機関の回転数(油圧ポンプの回転数)や車速の高低にかかわらず、ダンパ効果が同じであったため、内燃機関の低回転時や車両の低速時にはダンパー効果が余り必要でなく、その反対の時にはダンパー効果が必要であるにもかかわらず、そのような必要の度合いに応じたダンパー効果の調整ができなかった。このため、特に車両の低速域におけるステアリングハンドルの転舵追行性(転追性)に改善の余地が残されていた。
【0008】
本願の発明は、前記のような問題点を解決して、内燃機関の回転数に応じてダンパーバルブのダンパー効果を可変にして、特に車両の低速域におけるステアリングハンドルの転舵追行性を改善するとともに、車両の高速域における操舵の安定感の向上、シミー現象やキックバック現象の発生の防止等を同時に可能にした油圧式パワーステアリング装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および効果】
本願の発明は、前記のような課題を解決した油圧式パワーステアリング装置に係わり、その請求項1に記載された発明は、ギヤボックス内の油路切換弁とパワーシリンダの左右油室とをつなぐ作動油回路にダンパーバルブが配設されてなる油圧式パワーステアリング装置において、前記ダンパーバルブは、スプールバルブからなり、前記スプールバルブの制御油室は、内燃機関により駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと前記油路切換弁とをつなぐ作動油供給路に接続され、その背圧室は、前記油路切換弁とリザーバタンクとをつなぐ作動油還流路に接続され、各接続油路にはオリフィスが介設されて、前記油圧ポンプの吐出油圧が上昇したとき、前記スプールバルブの開度が大きくなるようにされたことを特徴とする油圧式パワーステアリング装置である。
【0010】
請求項1に記載された発明は、前記のように構成されているので、油路切換弁とパワーシリンダの左右油室とをつなぐ作動油回路に配設されるダンパーバルブを構成するスプールバルブは、その制御油室が油圧ポンプと油路切換弁とをつなぐ作動油供給路に接続され、その背圧室が油路切換弁とリザーバタンクとをつなぐ作動油還流路に接続され、内燃機関により駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプの吐出油圧に応じて作動されて、吐出油圧が上昇したとき、その開度が大きくなるようにされる。
【0011】
この結果、内燃機関の回転数が低く、したがって、また、油圧ポンプの回転数が低く、パワーステアリングの特性線図に基づき作動油の吐出量が多くなるとき、ステアリングハンドルが操舵されると、作動油の吐出圧も上昇するので、ダンパーバルブの開度が開いて、作動油回路を大きく開通させる。これにより、作動油が該回路を流れ易くなり、ダンパーバルブのダンパー効果が弱体化されて、車両の低速域におけるステアリングハンドルの転舵追行性が向上し、操舵の軽快感が得られるようになる。
【0012】
また、内燃機関の回転数が高く、したがって、また、油圧ポンプの回転数が高く、パワーステアリングの特性線図に基づき作動油の吐出量が少なくなるとき、ステアリングハンドルが操舵されても、作動油の吐出圧はさほど上昇しないので、ダンパーバルブの開度が閉じて、作動油回路を小さく開通させる。これにより、作動油が該回路を流れにくくなり、ダンパーバルブのダンパー効果が発揮されて、車両の高速域におけるステアリングハンドルの転舵追行性が低下し、中立状態のふらつき感が減少して、操舵の安定感が得られるようになる。
【0013】
さらに、この場合には、ダンパーバルブは、その本来のダンパー効果を発揮するので、車輪側からパワーシリンダのピストンロッド(ラックシャフト)を介してステアリングハンドルに伝えられる車両走行中の微小振動(シミー現象)の発生が抑制される。また、車輪が石に乗り上げたときなどに、ステアリングハンドルが逆転する、いわゆるキックバック現象の発生も抑制される。これらにより、操舵の快適感が向上する。
【0014】
また、ダンパーバルブ(スプールバルブ)の制御油室を作動油供給路に接続する接続油路と、その背圧室を作動油還流路に接続する接続油路とには、それぞれオリフィスが介設されるので、ダンパーバルブのスプールの動きが緩慢化され、特に車両の低速域において、ステアリングハンドルが中立位置に戻されるとき、ダンパー効果が生じないうちに戻すことができ、操舵の一層の軽快感が得られるようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図4に図示される本願の請求項1に記載された発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における油圧式パワーステアリング装置の全体構成図、図2は、図1の油圧式パワーステアリング装置の概略構成図であって、一部を切断して示す図、図3は、図2の部分拡大図、図4は、図1の油圧式パワーステアリング装置における油圧ポンプの特性線図である。
【0016】
図1において、本実施形態における油圧式パワーステアリング装置1は、ラックアンドピニオン式パワーステアリング装置であって、図示されない車両のステアリングハンドルに連結された入力軸2が、ギヤボックス3の切換弁収容部分3a 内において、図示されない出力軸(ピニオン軸)とトーションバーを介して連結されており、該出力軸に形成されたピニオンと噛み合うラックを有するラックシャフト4が、ギヤボックス3のラックシャフト・パワーシリンダ収容部分3b 内に、図1において左右摺動自在に収容されている。
【0017】
ラックシャフト4の両端には、左右一対のタイロッド5、5がそれぞれ連結され、その中間部には、ラックシャフト・パワーシリンダ収容部分3b 内に収容されたパワーシリンダ6のピストン7が連結されている。したがって、ラックシャフト4は、ピストン7のピストンロッドを兼ねている。
【0018】
ギヤボックス3の切換弁収容部分3a 内には、油路切換弁11(ロータリーバルブ。図2参照)が収容されており、該油路切換弁11は、前記したトーションバーの歪み量、すなわち、入力軸2と出力軸との相対的な回転量差に応じて開弁して、作動油圧源である油圧ポンプ13から作動油供給路18を経て圧送されてきた作動油を、左方シリンダ油路8もしくは右方シリンダ油路9を介してパワーシリンダ6の左右油室の一方に供給し、該パワーシリンダ6の左右油室の他方から右方シリンダ油路9もしくは左方シリンダ油路8を経て戻って来た作動油を、作動油還流路19を介してリザーバタンク12に還流させる。
【0019】
油圧ポンプ13は、図示されてはいないが、伝動機構を介して内燃機関のクランクシャフトに連結されており、該内燃機関の回転数と同じ回転数で回転する。そして、図2に概略図示されているように、流量制御弁23、リリーフバルブ24および固定オリフィス25を備えていて、これらの協働作用により、その回転数に応じて図4に図示される特性線図に従う吐出量の作動油を吐出する。この特性線図は、従来の油圧ポンプ013 の特性線図と同じである。
【0020】
したがって、出力軸のピニオンがラックと噛み合って、ラックシャフト4が左右動したときには、該左右動に従って、タイロッド5、5が一体に左右動して、左右車輪の転舵を行なうとともに、内燃機関の回転数に応じて油圧ポンプ13から吐出されて油路切換弁11により切換制御された作動油がパワーシリンダ6の左右油室のいずれかに供給され、ピストン7、ラックシャフト4およびタイロッド5、5が一体に左右動して、操舵補助力に基づく左右車輪の重畳的転舵を行なうようになっている。
【0021】
ここで、ギヤボックス3の切換弁収容部分3a のケーシングには、図1に図示されるように、ダンパーバルブ10が取り付けられている。
このダンパーバルブ10は、図2および図3に詳細に図示されるように、スプールバルブからなり、油路切換弁11とパワーシリンダ6の左右油室とをつなぐ左右シリンダ油路(作動油回路)8、9に跨がって配設されて、これらの油路を同時に開閉し、ダンパー効果を強弱に調節することができる。
【0022】
したがって、これらの油路8、9が絞られてダンパー効果が強化されたとき、車両の走行中、車輪からの振動がパワーシリンダ6に伝わったとしても、ピストン7およびラックシャフト4の左右動が抑制されるので、該振動がラックシャフト4を介して図示されないステアリングハンドルに伝達するのを抑制することができる。これにより、ステアリングハンドルが微小振動するシミー現象の発生を防止することができる。
【0023】
また、車輪が石に乗り上げたときなどに、ステアリングハンドルが逆転する、いわゆるキックバック現象の発生も、同様の理由により防止することができる。これらにより、操舵の快適感が向上する。
以上のようなダンパーバルブ10のダンパー効果は、後述されるとおり、内燃機関の回転数に応じて可変にされる。
【0024】
次に、ダンパーバルブ10の詳細構造と作用、本実施形態の効果について説明する。
ダンパーバルブ10は、図3により良く図示されるように、バルブケーシング(スリーブ)26のスプール収納孔16内にスプール14がスプリング15により一方向(図3において左方向)に付勢されて収納されており、その中央のランド部14a の両側には、環状のU字溝14b 、14c がそれぞれ形成されている。
【0025】
これらの環状のU字溝14b 、14c は、左右シリンダ油路8、9がスプール収納孔16に開口するポート部分8a 、9a と接離して、これらのポート部分8a 、9a と重なり合う度合いに応じて、これらの油路8、9の開通の度合いを調節する。
【0026】
ダンパーバルブ10のスプール14を動かす作動油圧が供給される制御油室21は、スプール収納孔16の図3において左方端側に形成されていて、油路22、供給路18を介して油圧ポンプ13の吐出側に接続されている。スプリング15が収容されたスプール収納孔16の右方端側の背圧室17は、油路20、還流路19を介してリザーバタンク12に接続されている。そして、バルブケーシング26に近く、油路22、20の途中には、固定オリフィス27、28がそれぞれ介設されている。
【0027】
したがって、いま、内燃機関の回転数が低くて、油圧ポンプ13の回転数も図4の特性線図のNより低く、作動油の吐出量が比較的多いとき、ステアリングハンドルが操舵されると、油路切換弁11には絞り作用が生じて作動油の吐出圧が上昇するので、ダンパーバルブ10の制御油室21には作動油の高圧が作用して、スプール14をスプリング15の付勢力に打ち勝って図2において右方に移動させる。
【0028】
そうすると、スプール14の環状U字溝14b 、14c が左右シリンダ油路8、9のポート部分8a 、9a とより多く重なり合う方向に移動するので、左右シリンダ油路8、9がより大きく開通されて(ダンパーバルブ10の開度大)、作動油がこれらの油路を流れ易くなり、ダンパーバルブ10のダンパ効果が弱体化される。
【0029】
このように、ダンパーバルブ10のダンパ効果が弱体化されると、ラックシャフト4の左右動は円滑に行なわれるので、ステアリングハンドルの操舵が軽快となり、転舵がし易くなって、その転舵追行性が向上する。のみならず、ステアリングハンドルの戻りの追行性も向上するので、操舵の軽快感が得られるようになる。このようにして、通常のパワーアシストがなされる。
【0030】
しかも、このステアリングハンドルの戻り操作のとき、ダンパーバルブ10のスプール14の動きは、オリフィス27、28の作用により緩慢にされているので、ダンパーバルブ10がダンパー効果を発揮し始める前に、ステアリングハンドルを中立位置に迅速に戻すことができて、操舵のより一層の軽快感が得られる。
【0031】
なお、この場合、図示されない車輪側からパワーシリンダ6に伝えられる車両走行中の微小振動は、ラックシャフト4の左右動を介してステアリングハンドルにわずかに伝達され、シミー現象が発生するが、内燃機関が低速回転しているので、何等問題は生じない。
【0032】
次に、内燃機関の回転数が高くて、油圧ポンプ13の回転数も図4の特性線図のNより高く、作動油の吐出量が比較的少ないとき、ステアリングハンドルが操舵されて油路切換弁11に絞り作用が生じたとしても、作動油の吐出圧はさほど上昇しないので、ダンパーバルブ10の制御油室21には作動油の低圧が作用して、スプール14をスプリング15の付勢力により図2において左方に移動させる。
【0033】
そうすると、スプール14の環状U字溝14b 、14c が左右シリンダ油路8、9のポート部分8a 、9a から離れる方向に移動するので、左右シリンダ油路8、9が絞られて(ダンパーバルブ10の開度小)、作動油がこれらの油路を流れにくくなり、ダンパーバルブ10のダンパ効果が強化される。
【0034】
このように、ダンパーバルブ10のダンパ効果が強化されると、ラックシャフト4の左右動は円滑に行なわれなくなるので、ステアリングハンドルの操舵が重くなり、転舵がしにくくなって、その転舵追行性が低下する。これにより、車両の高速における中立位置のふらつき感が減少して、操舵の安定感が得られるようになる。
【0035】
なお、この場合、ダンパーバルブ10は、その本来のダンパー効果を発揮するので、図示されない車輪側からラックシャフト4を介してステアリングハンドルに伝えられる車両走行中の微小振動(シミー現象)の発生が抑制される。また、車輪が石に乗り上げたときなどに、ステアリングハンドルが逆転するキックバック現象の発生も、同様の理由により、抑制される。これらにより、操舵の快適感が向上する。
【0036】
本実施形態においては、ダンパーバルブ10は、ギヤボックス3の切換弁収容部分3a のケーシングに取り付けられたが、これに限定されず、切換弁収容部分3a 内の油路切換弁11とパワーシリンダ6の左右油室とをつなぐ作動油回路8、9中であって、レイアウト上可能な個所に取り付けられればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の請求項1に記載された発明の一実施形態における油圧式パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図2】図1の油圧式パワーステアリング装置の概略構成図であって、一部を切断して示す図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図1の油圧式パワーステアリング装置における油圧ポンプの特性線図である。
【図5】従来例を示す図である。
【符号の説明】
1…油圧式パワーステアリング装置、2…入力軸、3…ギヤボックス、3a …切換弁収容部分、3b …ラックシャフト・パワーシリンダ収容部分、4…ラックシャフト、5…タイロッド、6…パワーシリンダ、7…ピストン、8…左方シリンダ油路、8a …ポート部分、9…右方シリンダ油路、9a …ポート部分、10…ダンパーバルブ、11…油路切換弁(ロータリーバルブ)、12…リザーバタンク、13…油圧ポンプ、14…スプール、14a …ランド部、14b 、14c …環状U字溝、15…スプリング、16…スプール収納孔、17…スプリング収容背圧室、18…作動油供給路、19…作動油還流路、20…油路、21…制御油室、22…油路、23…流量制御弁、24…リリーフバルブ、25…固定オリフィス、26…バルブケーシング(スリーブ)、27、28…固定オリフィス。
Claims (1)
- ギヤボックス内の油路切換弁とパワーシリンダの左右油室とをつなぐ作動油回路にダンパーバルブが配設されてなる油圧式パワーステアリング装置において、
前記ダンパーバルブは、スプールバルブからなり、
前記スプールバルブの制御油室は、内燃機関により駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと前記油路切換弁とをつなぐ作動油供給路に接続され、その背圧室は、前記油路切換弁とリザーバタンクとをつなぐ作動油還流路に接続され、各接続油路には、オリフィスが介設されて、前記油圧ポンプの吐出油圧が上昇したとき、前記スプールバルブの開度が大きくなるようにされたことを特徴とする油圧式パワーステアリング装置。
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