JP3901848B2 - フード取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の前部のエンジンルームを開閉するフードを、ヒンジを介して車体フレームに取付けるフード取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
フード取付構造には、上方からフードへ作用する衝撃力を配慮をしたものや、車両前方からフードへ作用する衝撃力を配慮をしたものがある。このようなものとして、例えば、▲1▼特開平4−212677号公報「フード支持装置」や▲2▼実公平1−28213号公報「フードヒンジ」がある。
【0003】
上記▲1▼は、その公報の図1によれば、フード側の支持体5(番号は公報に記載されたものを引用した。以下同じ。)と車体側の支持体7とをヒンジ軸9で連結してなるヒンジ3にて、車体前部にフード1を取付けるというものである。また、公報の図11によれば、支持体7の取付ベース部7bは、車体前方側に切込み状の前方エネルギ吸収部15を設け、車体後方側をシェアピン37でフードリッジレインフォース21に連結したものである。
公報の図4(b)にも示すように、フード1の後端部に上方から衝撃力Fが作用した場合に、フード1が変形してヒンジ3に当ることにより、ヒンジ3に下向きの力が作用して、シェアピン37を破断する。この結果、取付ベース部7bが下降することにより、衝撃力Fを吸収して、障害物への衝撃を緩和するというものである。
【0004】
上記▲2▼は、その公報の第3図及び第4図によれば、フード側金具6と車体側金具7とを回転可能に連結してなるフードヒンジ5にて、車体前部にフード12を取付けるというものである。フードヒンジ5は、フード側金具6に車体前後方向に細長いピン孔9を開け、このピン孔9の後端に、車体側金具7のヒンジピン8を嵌合することで、金具6と金具7とを連結したものである。
車両前方からフード12へ衝撃力が作用した場合に、その力でフード側金具6が後方へ移動することに伴い、ピン孔9も移動し、ピン孔9の途中のくびれ部がヒンジピン8に当って変形することにより、ヒンジピン8がピン孔9の前端に嵌合する。同時に、車体側金具7のフック10にてフード側金具6を押さえることによって、フード12の後部の持上がりを防止する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼は、フード1に上方から障害物が当ったときに、障害物への衝撃を緩和する機能を有する。一方、上記▲2▼は、フード12に車両前方から障害物が当ったときに、フード12の後部の持上がりを防止する機能を有する。
ところで、一般のフードにあっては、上記2つの機能の両方を備えていることが、より望ましい。しかし、上記▲1▼の機構及び▲2▼の機構を単に組合せたのでは、フード取付構造が複雑になると共に、部品数が多くなり、得策ではない。
【0006】
そこで本発明の目的は、(1)フードに上方から障害物が当ったときに、障害物への衝撃を緩和する機能と、(2)フードに車両前方から障害物が当ったときに、フード後部の持上がりを防止する機能とを、簡単な構成によって備えたフード取付構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体フレームに支持体を取付け、フードにフード取付用アームを取付け、このフード取付用アームを支持体の先端に回転可能に取付けたフード取付構造において、支持体を底板と、この底板から立上げるブラケットとで構成し、底板を、車体フレームに開けたヒンジ貫通孔の縁に下から当て、この縁と底板とを所定の力で破断するヒューズピンで連結することで、車体フレームに支持体を取付け、ブラケットは、平板を略横向きの谷折り線と山折り線とで折り曲げた屈曲板であり、取付けに際しては、平板を車両前後方向に略平行にし、フードは、アウタパネルの下に補強材としてのインナフレームを、所定の隙間を有して重ねて一体化した部材であって、インナフレームの下面を、フード取付用アームにフード取付ボルトで取付けた構成であり、このフード取付ボルトは、頭部の高さ寸法が小さい平頭ボルトであり、この平頭ボルトの頭部をフード内に設け、アウタパネルをフード取付ボルトの頭部に当るまで変形させる衝撃力をF1、支持体を谷折り線と山折り線の位置で座屈変形が起きる衝撃力をF2、ヒューズピンを破断させる引張り力をF3とするときに、F1〜F3の関係をF1<F2、且つF1<F3に設定することを特徴とする。
【0008】
ヒューズピンは、上から下への力に対して所定の引張り力で破断し、また、前から後への水平力に対して所定の剪断力で破断する。
ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、引張り力によってヒューズピンが破断し、車体フレームから底板が分離する。この結果、ブラケットは大きく下降することによって衝撃力を吸収し、障害物への衝撃を十分に緩和する。
また、車両前方からフードへ衝撃力が作用した場合に、剪断力によってヒューズピンが破断し、車体フレームから底板が分離する。この結果、ブラケットは大きく後方移動することによって衝撃力を吸収し、障害物への衝撃を十分に緩和する。しかも、ヒンジ貫通孔の縁に、底板を下から当てているので、底板は車体フレームによって上方への移動が規制される。従って、フード後部やヒンジが持ち上がって、フロントガラスに当る心配はない。
このように、フードに上方から障害物が当ったときに、障害物への衝撃を緩和するための機構は、フードに車両前方から障害物が当ったときに、障害物への衝撃を緩和するとともにフードの後部やヒンジの持上がりを防止する機構を兼ねたので、2つの機構を分離独立させて設けた場合に比べて、構成が簡単であり、部品数が少なくてすむ。
【0010】
ブラケットの先端(上端)に下向きの力を受けた場合に、谷折り線と山折り線の位置で簡単に座屈変形させることができる。ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、下向きの力を先端に受けたブラケットは、大きく座屈変形することによって衝撃力を吸収し、障害物への衝撃を十分に緩和する。
【0011】
しかも、ブラケット自体が座屈変形するので、ブラケットが所定の力で適切に座屈変形するように、設定するだけでよい。従って、ヒンジを自由に且つ容易に設定することができるので、設計の自由度は高まる。
さらには、ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、(1)ブラケットが座屈変形するか、(2)ヒューズピンが破断するか、若しくは(3)これら両方の作用が同時に発生するかによって、支持体は下降することができる。従って、衝撃力をより一層確実に吸収することができる。
【0012】
さらにまたブラケットは、平板が車両前後方向に略平行になるように、車体フレームに取付けたので、ブラケットが大きく座屈変形した場合であっても、車幅方向に変形することになり、車体前後方向への変形量は小さくてすむ。このため、ブラケットの前又は後に配置されたワイパ駆動部やフェンダミラーの基部などと、ブラケットとが、干渉する心配はなく、車体への配置は容易である。
【0017】
フード取付ボルトは、頭部の高さ寸法が小さい平頭ボルトである。この平頭ボルトの頭部をフード内に設けた。このため、アウタパネルの下面からフード取付ボルトの頭部の上端までの離間寸法は大きい。
ところで、アウタパネルは、ヒンジの近傍で上方から衝撃力が作用した場合に、フード取付ボルトの頭部に当るまで変形可能であり、この変形可能な距離は、離間寸法と一致する。離間寸法が大きいので、アウタパネルの変形可能な距離も大きい。変形可能な距離が大きいので、アウタパネルを大きく変形させることができ、この結果、上方からの衝撃力を十分に吸収させることができる。ヒンジの近傍において、アウタパネルに上方から障害物が当ったときに、衝撃力を十分に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
【0018】
さらには、ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、先に、アウタパネルが変形して上方からの衝撃力を吸収し、その後に、(1)ヒューズピンが破断するか、(2)屈曲板からなるブラケットが座屈変形するか、(3)斜め材からなるブラケットが変形するか、上記(1)と(2)の作用が同時に発生するか、上記(1)と(3)の作用が同時に発生するかによって、支持体は下降することができる。従って、上方からの衝撃力を、より一層十分に且つ確実に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和させることができる。
また、アウタパネルをフード取付ボルトの頭部に当るまで変形させる衝撃力をF1、支持体を谷折り線と山折り線の位置で座屈変形が起きる衝撃力をF2、ヒューズピンを破断させる引張り力をF3とするときに、F1〜F3の関係をF1<F2、且つF1<F3に設定することで、上方からの衝撃力が作用すると、先に、アウタパネルが変形して衝撃力を吸収し、その後に、支持体が座屈変形したり、ヒューズピンが破断することによって、支持体が下降し、衝撃力をより一層十分に且つ確実に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車幅中心を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る自動車の前半部の斜視図である。
自動車1は、車体前部のエンジンルーム2を開閉するためにフード10を設け、このフード10の後端部を、左右のヒンジ20L,20Rを介して図示せぬ車体フレームに取付けたものである。フード10は前開き形式の部材であって、その前部をフードロック3にて車体にロック可能である。図中、4はフロントガラスである。
【0020】
図2は本発明に係る右のヒンジの取付け状態を示す斜視図であり、車体フレーム5における右のサイドメンバ6Rに、右のヒンジ20Rを取付けたことを示す。7はクロスメンバである。
【0021】
図3は図2の3−3線断面図である。但し、この図では、右のヒンジ20Rにフード10を取付けた状態を示し、さらに、ヒンジ20Rとフロントガラス4との配置関係を示す。
ヒンジ20Rは、サイドメンバ6Rに取付ける支持体21と、フード10に取付けるフード取付用アーム31と、フード取付用アーム31を支持体21の先端(上端)に上下回転可能に取付けるヒンジピン32とからなる。支持体21は、底板22と、この底板22から立上げるブラケット23とからなり、ブラケット23のベースプレート24と底板22とを、2個のボルト・ナット33,33で固定したものである。底板22廻りの詳細については後述する。
【0022】
フード10は、アウタパネル11の下に、補強材としてのインナフレーム12を、所定の隙間Cを有して重ねて一体化し、さらに、インナフレーム12の内面12aに、スチフナ13を重ねて一体化したものである。
インナフレーム12は、下面12bをフード取付用アーム31に重ねて、2組のフード取付ボルト34,34並びにナット35,35で上下に取付けたものである。フード取付ボルト34は、頭部34aの高さ寸法hが小さい平頭ボルトであり、この平頭ボルトの頭部34aをフード10内に設けたことを特徴とする。
【0023】
ここで、「平頭ボルト」とは、頭部34aの高さ寸法hが小さいボルト全般を指すものであり、六角頭、四角頭、丸頭、円筒頭、皿頭、なべ頭等の各種形状の頭部を有するものを包含する。頭部34aの高さ寸法hは、フード取付用アーム31とフード10とを固定するのに必要な強度を有する程度であればよい。例えば、頭部34aをインナフレーム12に溶接等で固定した場合には、頭部34aに工具を掛けるようにする配慮は不要である。また、頭部34aに工具を掛ける場合であっても、頭部34aにスパナ、六角レンチ等の各種工具が掛かる最小の高さであればよい。
図中、29はフード全開用ストッパである。
【0024】
図4は本発明に係る右のヒンジの底板廻りを示す断面図であり、上記図3に示す底板22廻りを拡大して示した。
サイドメンバ6Rは、上下貫通したヒンジ貫通孔6aを開けたものであり、このヒンジ貫通孔6aは、車体前後方向に細長い平面視矩形孔である。底板22は、ヒンジ貫通孔6aの縁6bに下から当て、この縁6bと底板22とを前後2個のヒューズピン36,36で連結したものである。この結果、サイドメンバ6Rに底板22を介して、ブラケット23を取付けたことになり、このブラケット23は、ヒンジ貫通孔6aを通って上方へ略鉛直に延びることができる。
【0025】
図5(a)〜(c)は本発明に係るヒューズピンの構成図であり、(a)はヒューズピン36の構成図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図である。
ヒューズピン36は、予め設定した所定の力(引張り力並びに剪断力)で破断するピンであり、例えば、この図に示すようなボルトからなり、このボルトにナット37をねじ込むことによって、想像線にて示すサイドメンバ6Rと底板22とを固定するものである。詳しくは、(a)に示すヒューズピン36は、想像線にて示すサイドメンバ6Rと底板22との合わせ面の位置で破断するように、この位置に小径部36bを形成したものである。
【0026】
具体的には、(b)に示すようにねじ部36aの谷径、すなわち、大径部36aの径をDとし、(c)に示すように小径部36bの径をdとしたときに、例えば、大径部36aの径Dを小径部36bの径dの略2倍に設定する(D=2d)。小径部36bでの破断を確実にするためである。
ここで、大径部36aを破断させるための引張り力をF、小径部36bを破断させるための引張り力をfとして、両者の関係を検討する。σはヒューズピン36の引張り応力である。
F=(π・D2/4)・σ=(π・(2d)2/4)・σ ……(1)
f=(π・d2/4)・σ ……(2)
上記(1)式と(2)式とから、次の(3)式が導かれる。
f=F/4 ……(3)
以上の説明から明らかなように、小径部36bは大径部36aの1/4の引張り力で破断する。剪断力に対しても同様である。
【0027】
ヒューズピン36は、より確実に破断するために、サイドメンバ6Rや底板22に比べて、引張り応力や剪断応力が大幅に小さい材料を、選定することが好ましい。例えば、サイドメンバ6Rや底板22が鋼材であれば、ヒューズピン36に砲金、真鍮、樹脂等を採用する。なお、ヒューズピン36は構造、材質、寸法を限定するものではない。
【0028】
図6は本発明に係る左右のヒンジの取付け状態を示す斜視図であり、左右のヒンジ20L,20Rが車幅中心に対して対称形であることを示す。すなわち、上記図2〜図5においては、右のヒンジ20Rについて説明したが、左のヒンジ20Lについても右のヒンジ20Rと同様の構成である。
ブラケット23は、平板をプレス成形又は溶接等の接合により形成された正面視L字状部材であり、ベースプレート24から起立した起立部25は、略横向きの谷折り線26,26と山折り線27とで折り曲げた屈曲板である。これらの谷折り線26,26並びに山折り線27は、互いに略平行であり、しかも、車両前方から後方へ斜め上向きに傾斜した線である。
【0029】
左右のブラケット23,23は、起立部25,25の平板面同士を互いに対向させて、サイドメンバ6L,6Rに取付けたものである。すなわち、支持体21,21の取付けに際して、平板を車両前後方向に略平行にしたことを特徴とする。
フード取付用アーム31は、ヒンジピン32の位置から前方へ延出した、正面視略逆L字状アームであって、上面にフード取付ボルト孔31a,31aを有する。
【0030】
図7は本発明に係る左右のヒンジの正面図(左右のヒンジ20L,20R間距離を小さくして示す。)であり、ブラケット23の起立部25が、高さ途中に外向きに折り曲げた屈曲部28を有することを示す。この屈曲部28は、高さ中央の山折り線27と、その上下の谷折り線26,26とで折れ曲がることによって、正面視略「く」字状に形成したものであり、予め設定した所定の下向きの力を受けた場合に、谷折り線26,26と山折り線27の位置で座屈変形するようにしたものである。
【0031】
このように、支持体21(ブラケット23)は、平板を谷折り線26,26と山折り線27とで折り曲げた屈曲板からなる、簡単な構成であり、しかも、その先端(上端)に下向きの力を受けた場合に、谷折り線26,26と山折り線27の位置で座屈変形することは容易である。さらには、平板が車両前後方向に略平行になるように、サイドメンバ6Rに取付けたので、支持体21が大きく座屈変形した場合であっても、車幅方向に変形することになり、車体前後方向(図表裏方向)への変形量は小さくてすむ。このため、支持体21の前又は後に配置された、図示せぬワイパ駆動部やフェンダミラーの基部などと干渉する心配はなく、車体への配置は容易である。
【0032】
次に、上記構成のフード取付構造の作用を、図8〜図11に基づき説明する。
図8(a),(b)はフード取付構造の作用説明図(その1)である。
(b)に示す比較例のフード取付構造は、ナット101をインナフレーム12の内面に固定し、通常の六角ボルト102をフード取付用アーム31の下方からフード10内へ挿入して、ナット101にねじ込んだものである。このため、六角ボルト102の先端がフード10内に深く入り込むので、アウタパネル11の下面から六角ボルト102の先端までの離間寸法L2は小さい。離間寸法L2が小さいので、アウタパネル11の変形可能な距離も小さい。
【0033】
これに対して、(a)に示す本発明のフード取付構造は、フード取付ボルト34に、頭部34aの高さ寸法が小さい平頭ボルトを採用し、この平頭ボルトの頭部34aをフード10内に設けたものである。このため、アウタパネル11の下面からフード取付ボルト34の頭部34aの上端までの離間寸法L1は大きい。
アウタパネル11は、ヒンジ20Rの近傍で上方から所定の衝撃力F1が作用した場合に、フード取付ボルト34の頭部34aに当るまで変形可能であり、この変形可能な距離は、離間寸法L1と一致する。離間寸法L1が大きいので、アウタパネル11の変形可能な距離も大きい。変形可能な距離が大きいので、アウタパネル11は大きく凹み変形することができ、この結果、上方からの衝撃力F1を十分に吸収する。
従って、ヒンジ20Rの近傍において、アウタパネル11に上方から障害物Sが当ったときに、アウタパネル11は衝撃力F1を十分に吸収して、障害物Sへの衝撃を十分に緩和することができる。
【0034】
図9(a),(b)は本発明に係るフード取付構造の作用説明図(その2)である。
(a)のように、ヒンジ20Rの近傍で、上方からフード10へ所定の衝撃力が作用した場合に、この衝撃力が下向きの力F2としてフード10→フード取付ボルト34,34→フード取付用アーム31→ヒンジピン32の経路で支持体21の上部に作用する。下向きの力F2を先端に受けた支持体21は、(b)のように、谷折り線26,26と山折り線27の位置で大きく座屈変形し、下降することによって、下向きの力F2を十分に吸収する。
従って、ヒンジ20Rの近傍において、フード10に障害物Sが当ったときに、ヒンジ20Rは衝撃力を十分に吸収して、障害物Sへの衝撃を十分に緩和することができる。
ところで、支持体21自体が座屈変形する構成なので、支持体21が所定の力で適切に座屈変形するように設定するだけでよい。従って、ヒンジ20Rを自由に且つ容易に設定することができるので、設計の自由度は高い。
【0035】
図10(a),(b)は本発明に係るフード取付構造の作用説明図(その3)である。
(a)のように、ヒンジ20Rの近傍で、上方からフード10へ所定の衝撃力が作用した場合に、この衝撃力が下向きの力F3としてフード10→フード取付ボルト34,34→フード取付用アーム31→ヒンジピン32→ブラケット23→ベースプレート24→底板22の経路で、ヒューズピン36,36に引張り力として作用する。ヒューズピン36,36が、所定の引張り力で破断すると、(b)のように、サイドメンバ6Rから底板22が分離して下降するので、支持体21は大きく下降することができ、この結果、下向きの力F3を十分に吸収する。
従って、ヒンジ20Rの近傍において、フード10に障害物Sが当ったときに、ヒンジ20Rは衝撃力を十分に吸収して、障害物Sへの衝撃を十分に緩和することができる。
【0036】
このように、上記図8〜図10の説明から明らかな如く、ヒンジ20Rの近傍で、上方からフード10へ所定の衝撃力が作用した場合に、この衝撃力は下向きの力F1〜F3としてフード10に作用する。
ここで、アウタパネル11を所定量だけ変形させる力F1を、支持体21を所定量だけ座屈変形させる力F2や、ヒューズピン36を破断させる引張り力F3よりも、小さく設定してある(F1<F2、F1<F3)。従って、上方からの衝撃力が作用すると、先に、アウタパネル11が変形して衝撃力を吸収し、その後に、支持体21が座屈変形したり、ヒューズピン36が破断することによって、支持体21が下降し、衝撃力をより一層十分に且つ確実に吸収して、障害物Sへの衝撃を十分に緩和することができる。
【0037】
さらには、力F2とF3との大小関係により、次の3つの形態で作用をなす。
(1)F2<F3であれば、支持体21が座屈変形した後に、ヒューズピン36,36が破断する。
(2)F2=F3であれば、支持体21が座屈変形と、ヒューズピン36,36の破断とが同時に発生する。
(3)F2>F3であれば、ヒューズピン36,36が破断する。
なお、力F1を力F2,F3と概ね同一としたり、力F2,F3よりも大きく設定してもよい。
【0038】
図11(a),(b)は本発明に係るフード取付構造の作用説明図(その4)である。
(a)のように、車両前方からフード10へ衝撃力が作用した場合に、この衝撃力が後向きの力F4としてフード10→フード取付ボルト34,34→フード取付用アーム31→ヒンジピン32→ブラケット23→ベースプレート24→底板22の経路で、ヒューズピン36,36に剪断力として作用する。ヒューズピン36,36が、所定の剪断力で破断すると、(b)のように、サイドメンバ6Rから底板22が分離して後方へ移動することができる。しかも、サイドメンバ6Rのヒンジ貫通孔6aの縁6bに、底板22を下から当てているので、底板22はサイドメンバ6Rによって上方への移動が規制され、持ち上がることはない。底板22から立上がったブラケット23は、底板22と共に後方へ移動し、ヒンジ貫通孔6aの縁6bに当って停止する。
従って、車両前方からフード10に障害物Sが当ったときに、ヒンジ20Rが後方へ確実に移動して、衝撃力を十分に吸収することができるとともに、フード10の後部やヒンジ20Rが持ち上がって、フロントガラス4に当る心配はない。
【0039】
ところで、上記図10の説明から明らかなように、サイドメンバ6L,6Rのヒンジ貫通孔6a並びにその縁6bと、底板22と、ブラケット23と、ヒューズピン36との組合せ構造は、フード10に上方から障害物Sが当ったときに、障害物Sへの衝撃を緩和するための、上方衝撃緩和機構Aをなす。
この上方衝撃緩和機構Aは、上記図11の説明から明らかなように、フード10に車両前方から障害物Sが当ったときに、障害物Sへの衝撃を緩和するとともに、フード10の後部やヒンジ20Rの持上がりを防止する前方衝撃緩和機構の役割を兼ねる。
このように、上方衝撃緩和機構Aが2つの役割を兼ねるので、2つの機構を分離独立させて設けた場合に比べて、構成が簡単であり、部品数が少なくてすむ。
【0040】
図12は本発明に係るフード取付構造の変形例図であり、上記図3に対応して表した、変形例の右のヒンジ40Rを示す。
なお、上記図2〜図7に示す構成と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。また、図示していないが、変形例の左のヒンジは、右のヒンジ40Rと車幅中心に対して左右対称形の部材であり、その説明を省略する。
【0041】
ヒンジ40Rは、サイドメンバ6Rに取付ける支持体41と、上記フード取付用アーム31と、フード取付用アーム31を支持体41の先端(上端)に上下回転可能に取付けるヒンジピン32とからなる、簡単な構成である。
支持体41は、底板22と、この底板22から立上げるブラケット43とからなる。ブラケット43は、ベースプレート44と、ベースプレート44から斜め上に車体の後方(図の右方)へ立上げた斜め材45とからなる。ベースプレート44は、底板22に重ねて2個のボルト・ナット33,33で固定したものである。これにより、ベースプレート44はサイドメンバ6R(車体フレーム5)に臨むことになる。
【0042】
ところで、上述のように、底板22は車体前後方向に細長い平板であり、ベースプレート44の前・後方に設けた2個のヒューズピン36,36で、サイドメンバ6Rに連結したものである。特に、後方のヒューズピン36は、フード10を閉めた状態であっても見える位置にある。このため、フード10の取付位置の微調整をすることができる。
【0043】
図13は本発明に係る右のヒンジ(変形例)の斜視図であり、斜め材45が、車幅方向を帯幅とした帯板からなる、極めて単純な形状であることを示す。このように簡単な構成の斜め材45を組込んだ、ヒンジ40Rの全体も、簡単な構成である。
また、斜め材45は、片持ち梁状の部材であり、しかも、車幅方向を帯幅とする帯板からなるので、先端(自由端)に下向きの力を受けた場合に、下方への変形は容易である。斜め材45自体が上下方向に変形するので、斜め材45が所定の力で適切に変形するように、設定するだけでよい。従って、ヒンジ40Rを自由に且つ容易に設定することができるので、設計の自由度は高い。
【0044】
さらには、斜め材45が、片持ち梁状の部材であるから、その部材の長さや傾きを適宜設定するだけで、サイドメンバ6Rから斜め材45の先端までの高さH(ヒンジピン32までの離間距離H)や、斜め材45の変形特性を自由に設定することができる。例えば、離間距離Hを大きく設定すれば、斜め材45の変形量を大きくすることができる。このように、斜め材45の変形量や変形特性を、衝撃力の吸収に必要な最適な値に、自由に且つ容易に設定することができ、設計の自由度は高い。
【0045】
また、斜め材45を、板厚方向に半径r(図12参照)で曲げた湾曲板としたことを特徴とする。斜め材45が、このような湾曲板であるから、下方への変形が一層容易である。このため、上方からの衝撃力を、支持体41でより一層効率良く吸収することができる。
図中、46はリブ(取付けは任意)、49はフード全開用ストッパである。
【0046】
図14(a)〜(c)は本発明に係る右のヒンジ(変形例)の作用説明図である。
(a)のように、ヒンジ40Rの近傍で、上方からフード10へ所定の衝撃力が作用した場合に、この衝撃力が下向きの力F2としてフード10→フード取付ボルト34,34→フード取付用アーム31→ヒンジピン32の経路で斜め材45の先端に作用する。力F2を先端に受けた斜め材45は、(b)のように下方に変形して力F2を吸収する。さらに(c)のように、サイドメンバ6Rに当るまで下方に大きく変形することによって、力F2を十分に吸収する。
従って、ヒンジ40Rの近傍において、フード10に障害物Sが当ったときに、ヒンジ40Rは衝撃力を十分に吸収して、障害物Sへの衝撃を十分に緩和することができる。
【0047】
変形例の右のヒンジ40Rにおいても、上記図8〜図10に示す作用と同様に、上方からの衝撃力が作用すると、先に、アウタパネル11が変形して衝撃力を吸収し、その後に、斜め材45が変形したり、ヒューズピン36が破断することによって、支持体41が下降し衝撃力をより吸収して、障害物Sへの衝撃を緩和することができる。
また、図11の作用と同様に、車両前方からフード10に障害物Sが当ったときに、ヒンジ40Rが後方へ移動して、衝撃力を吸収する。しかも、フード10の後部やヒンジ40Rが持ち上がって、フロントガラス4に当る心配はない。
このようなことから、サイドメンバ6L,6Rのヒンジ貫通孔6a並びにその縁6bと、底板22と、ブラケット43と、ヒューズピン36との組合せ構造は、上方衝撃緩和機構Aをなす。
【0048】
なお、上記本発明の実施の形態及び変形例において、(1)底板22は、ベースプレート24,44を兼ねたものでもよい。例えば、底板22に起立部25や斜め材45を、溶接等により固定したものであってもよい。
(2)斜め材45は、ベースプレート44から斜め上に車体の前方若しくは後方へ立上げたものであればよい。
(3)ヒンジ20L,20R,40L,40Rは、サイドメンバ6L,6Rに取付ける構成に限定されず、車体フレーム5に取付ける構成であればよい。
(4)屈曲部28を外向きと内向きのどちらにするかは、任意である。また、屈曲部28の数量も任意である。
(5)フード取付ボルト34やヒューズピン36の、数量や配列は任意である。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、支持体を底板と、この底板から立上げるブラケットとで構成し、底板を、車体フレームに開けたヒンジ貫通孔の縁に下から当て、この縁と底板とを所定の力で破断するヒューズピンで連結することで、車体フレームに支持体を取付けたので、支持体に下向きの力を受けた場合に、その力がブラケット及び底板を介し、ヒューズピンに引張り力として作用し、破断させることができる。ヒューズピンの破断に伴い、車体フレームから底板が分離して下降するので、支持体は大きく下降することができ、この結果、上方からの衝撃力を十分に吸収する。従って、ヒンジの近傍において、フードに上方から障害物が当ったときに、衝撃力を十分に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
【0050】
また、支持体に車両前方から後向きの力の力を受けた場合に、その力がブラケット及び底板を介し、ヒューズピンに剪断力として作用し、破断させることができる。ヒューズピンの破断に伴い、車体フレームから底板が分離して後方へ移動することができ、この結果、前方からの衝撃力を十分に吸収する。しかも、車体フレームに開けたヒンジ貫通孔の縁に、底板を下から当てているので、底板は車体フレームによって上方への移動が規制され、持ち上がることはない。従って、車両前方からフードに障害物が当ったときに、ヒンジが後方へ確実に移動して、衝撃力を十分に吸収することができるとともに、フードの後部やヒンジが持ち上がって、フロントガラスに当る心配はない。
【0051】
このように、フードに上方から障害物が当ったときに、障害物への衝撃を緩和する機構が、フードに車両前方から障害物が当ったときに、障害物への衝撃を緩和すると共にフードの後部やヒンジの持上がりを防止する機構を兼ねることができるので、2つの機構を分離独立させて設けた場合に比べて、構成が簡単であり、部品数が少なくてすむ。
【0052】
ブラケットが、平板を略横向きの谷折り線と山折り線とで折り曲げた屈曲板からなるので、その先端(上端)に下向きの力を受けた場合に、ブラケットが谷折り線と山折り線の位置で、座屈変形することは容易である。ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、下向きの力を先端に受けたブラケットは、大きく座屈変形することができ、この結果、上方からの衝撃力を十分に吸収することができる。従って、ヒンジの近傍において、フードに障害物が当ったときに、ブラケットで衝撃力を十分に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
【0053】
しかも、ブラケット自体を座屈変形させるようにしたので、ブラケットが所定の力で適切に変形するように設定するだけでよく、自由に且つ容易に設定することができ、設計の自由度が高い。
さらには、ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、(1)ブラケットが座屈変形するか、(2)ヒューズピンが破断するか、若しくは(3)これら両方の作用が同時に発生するかによって、支持体は下降することができる。従って、衝撃力をより一層確実に吸収することができる。
【0054】
さらにまた、ブラケットが、平板を谷折り線と山折り線とで折り曲げた屈曲板からなる、簡単な構成なので、ヒンジ全体も簡単な構成になる。
しかも、平板が車両前後方向に略平行になるように、車体フレームに取付けたので、ブラケットが大きく座屈変形した場合であっても、車幅方向に変形することになり、車体前後方向への変形量は小さくてすむ。このため、ブラケットの前又は後に配置されたワイパ駆動部やフェンダミラーの基部などと干渉する心配はなく、車体への配置は容易である。
【0057】
フード取付ボルトを、頭部の高さ寸法が小さい平頭ボルトとし、この平頭ボルトの頭部をフード内に設けたので、アウタパネルの下面からフード取付ボルトの頭部の上端までの離間寸法が大きい。アウタパネルは、ヒンジの近傍で上方から衝撃力が作用した場合に、フード取付ボルトの頭部に当るまで変形可能である。この変形可能な距離は、離間寸法と一致する。離間寸法が大きいので、アウタパネルの変形可能な距離も大きい。アウタパネルが大きく変形することによって、上方からの衝撃力を十分に吸収することができる。従って、ヒンジの近傍において、アウタパネルに当った障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
【0058】
さらには、ヒンジの近傍で、上方からフードへ衝撃力が作用した場合に、先に、アウタパネルが変形して上方からの衝撃力を吸収し、その後に、(1)ヒューズピンが破断するか、(2)屈曲板からなるブラケットが座屈変形するか、(3)斜め材からなるブラケットが変形するか、上記(1)と(2)の作用が同時に発生するか、上記(1)と(3)の作用が同時に発生するかによって、支持体は下降することができる。従って、上方からの衝撃力を、より一層十分に且つ確実に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
また、アウタパネルをフード取付ボルトの頭部に当るまで変形させる衝撃力をF1、支持体を谷折り線と山折り線の位置で座屈変形が起きる衝撃力をF2、ヒューズピンを破断させる引張り力をF3とするときに、F1〜F3の関係をF1<F2、且つF1<F3に設定したので、上方からの衝撃力が作用すると、先に、アウタパネルが変形して衝撃力を吸収し、その後に、支持体が座屈変形したり、ヒューズピンが破断することによって、支持体が下降し、衝撃力をより一層十分に且つ確実に吸収して、障害物への衝撃を十分に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動車の前半部の斜視図
【図2】本発明に係る右のヒンジの取付け状態を示す斜視図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】本発明に係る右のヒンジの底板廻りを示す断面図
【図5】本発明に係るヒューズピンの構成図
【図6】本発明に係る左右のヒンジの取付け状態を示す斜視図
【図7】本発明に係る左右のヒンジの正面図
【図8】フード取付構造の作用説明図(その1)
【図9】本発明に係るフード取付構造の作用説明図(その2)
【図10】本発明に係るフード取付構造の作用説明図(その3)
【図11】本発明に係るフード取付構造の作用説明図(その4)
【図12】本発明に係るフード取付構造の変形例図
【図13】本発明に係る右のヒンジ(変形例)の斜視図
【図14】本発明に係る右のヒンジ(変形例)の作用説明図
【符号の説明】
1…自動車、4…フロントガラス、5…車体フレーム、6L,6R…サイドメンバ、6a…ヒンジ貫通孔、6b…ヒンジ貫通孔の縁、10…フード、11…アウタパネル、12…インナフレーム、12b…インナフレームの下面、20L,20R…ヒンジ、21…支持体、22…底板、23…ブラケット、24…ベースプレート、26…谷折り線、27…山折り線、28…屈曲部、31…フード取付用アーム、32…ヒンジピン、34…フード取付ボルト、34a…頭部、36…ヒューズピン、40R…ヒンジ、41…支持体、43…ブラケット、44…ベースプレート、45…斜め材、A…上方衝撃緩和機構、C…隙間、h…フード取付ボルトの頭部の高さ寸法、L1…離間寸法、S…障害物。
Claims (1)
- 車体フレームに支持体を取付け、フードにフード取付用アームを取付け、このフード取付用アームを支持体の先端に回転可能に取付けたフード取付構造において、前記支持体を底板と、この底板から立上げるブラケットとで構成し、前記底板を、車体フレームに開けたヒンジ貫通孔の縁に下から当て、この縁と底板とを所定の力で破断するヒューズピンで連結することで、車体フレームに支持体を取付け、
前記ブラケットは、平板を略横向きの谷折り線と山折り線とで折り曲げた屈曲板であり、取付けに際しては、平板を車両前後方向に略平行にし、
前記フードは、アウタパネルの下に補強材としてのインナフレームを、所定の隙間を有して重ねて一体化した部材であって、インナフレームの下面を、前記フード取付用アームにフード取付ボルトで取付けた構成であり、このフード取付ボルトは、頭部の高さ寸法が小さい平頭ボルトであり、この平頭ボルトの頭部をフード内に設け、
前記アウタパネルを前記フード取付ボルトの頭部に当るまで変形させる衝撃力をF1、前記支持体を谷折り線と山折り線の位置で座屈変形が起きる衝撃力をF2、前記ヒューズピンを破断させる引張り力をF3とするときに、F1〜F3の関係をF1<F2、且つF1<F3に設定することを特徴とするフード取付構造。
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