JP4772209B2 - 車両のフードヒンジ構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フードヒンジ周辺のエンジンフード上に衝撃荷重が印加された場合であっても、高い衝撃吸収性を得ることのできる車両のフードヒンジ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、歩行者が走行中の車両の正面に衝突すると、すくい上げられて上体が腰を中心に車体後方へ回転する。このとき頭部がエンジンフード上に落下すると、エンジンフードが変形して、衝撃エネルギが吸収され、歩行者の頭部が保護される。
【0003】
例えば、特開2000-6846号公報には、車体側に固設されているヒンジブラケット(支持体)に屈曲部を形成し、エンジンフードのフードヒンジ周辺に対応する部位に、車体上方から衝撃荷重が印加された場合、ヒンジブラケットが座屈変形して、フードヒンジ全体を下方へ移動させて、衝撃エネルギを吸収する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した公報に開示されている技術では、ヒンジブラケットに屈曲部が形成されているため、ヒンジブラケットの剛性が低下してしまい、通常のエンジンフードの開閉動作に支障を来す可能性がある。
【0005】
一方、エンジンフードとヒンジブラケットとの間隙を増大することによって、エンジンフードのフードヒンジ周辺に対応する部位に、車体上方から衝撃荷重が印加された場合、衝撃吸収性を向上させることができる。しかし、エンジンフードとヒンジブラケットの間隙、特にエンジンフードの回転中心であるヒンジセンタとヒンジブラケット下端との距離を増大させると、車体の前方衝突時に車体前部に衝撃荷重が印加された場合、エンジンフードがヒンジブラケットと共に、車体後方へ移動して、エンジンフードの後端縁がフロントウインドウガラスに当たって、このフロントウインドウガラスを割ってしまう可能性がある。その対策として、エンジンフード後端縁をフロントウインドウガラスから、ある程度離間させて配設しなげばならず、車体の外観が損なわれてしまう不都合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、剛性を低下させることなく、フードヒンジ周辺に位置するエンジンフード上方からの衝撃荷重に対して高い衝撃吸収性を得ることができ、しかも車体の前方衝突時に車体前部に衝撃荷重が印加された場合でも、このエンジンフードが後方へ移動することを防ぐことができる車両のフードヒンジ構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、車体フレームの固定面にヒンジブラケットの取付け面を固設し、エンジンルームを開閉自在に閉塞するエンジンフードの端縁にヒンジアームを固設し、上記ヒンジブラケットと上記ヒンジアームとをヒンジピンで連結することで上記エンジンフードを車体フレームに回動自在に支持する車両のフードヒンジ構造において、上記取付け面の後部に後取付け面を形成すると共に該取付け面の前部に該後取付け面よりも低位置の前取付け面を形成し、上記前取付け面と上記後取付け面とを第1の斜面部で連設し、上記固定面に上記前取付け面と後取付け面とに当接する前固定面と後固定面とを形成し、上記前固定面と上記後固定面とを第2の斜面部で連設し、上記第1の斜面部と上記第2の斜面部との間に空隙部を形成したことを特徴とする。
【0008】
このような構成では、ヒンジブラケットの取付け面に、後取付け面と、この後取付け面よりも低位置の前取付け面とを形成し、この両取付け面を第1の斜面部で連設したので、エンジンフードの内面と第1の斜面部との距離が広くなり、ヒンジブラケットの剛性を低下させることなく、車体上方からの衝突荷重を受けたときエンジンフードを大きく変形させて、衝撃吸収性を高めることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、上記ヒンジピンの中心を上記第1の斜面部よりも後方で上記後取付け面の上方に設定したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。ここで、図1は車体前部の斜視図、図2はエンジンフードを開放した状態のフードヒンジの斜視図、図3はフードヒンジの側面図である。
【0012】
図中の符号1は車両の一例である自動車、2は自動車の車体前部であり、この車体前部2に形成されているエンジンルーム3の両側にフロントフェンダ4が配設され、このフロントフェンダ4の車体後部のエンジンルーム3側にカウルトップパネル5が配設され、このカウルトップパネル5の後端にフロントガラス6が連設されている。更に、カウルトップパネル5の両側が、車体フレームを構成するカウルサイドパネル7に連設され、このカウルサイドパネル7が、フロントガラス6の両側を保持するフロントピラー8に連設されている。
【0013】
又、エンジンルーム3の上面がエンジンフード9にて開放自在に閉塞されている。このエンジンフード9は前開き方式であり、後端縁の車幅方向両側がカウルサイドパネル7に対しフードヒンジ10を介して回動自在に支持されている。尚、両側に配設されているフードヒンジ10は対称形状であるため、以下の説明では、車体左側のフードヒンジ10についてのみ説明し、車体右側のフードヒンジ10についての説明は省略する。
【0014】
フードヒンジ10は、エンジンフード3の内面に固定されているヒンジアーム11と、カウルサイドパネル7に固定されるヒンジブラケット12とを有している。ヒンジブラケット12は、取付け面13と、この取付け面13の一側から垂立された立面14とを有するL字形に曲げ形成されている。更に、取付け面13は、前取付け面13aと後取付け面13bとを有し、前取付け面13aが後取付け面13bに対して、平行で且つ低い位置に設定され、この両取付け面13a,13bが斜面部13cを介して連設されている。更に、立面14の斜面部13bに対応する部位に、斜面部13cとほぼ平行な立面側斜面部14aが形成されている。
【0015】
一方、カウルサイドパネル7は、取付け面13の前取付け面13aと後取付け面13bとを固設する前固定面7a、後取付け面7bが形成されており、この両固定面7a,7bが斜面部7cを介して連設されている。
【0016】
図3に示すように、取付け面13に形成された前後取付け面13a,13bを、カウルサイドパネル7に形成した前後固定面7a,7bにボルト15とナット16とを介して締結固定すると、取付け面13とカウルサイドパネル7とに各々形成された斜面部13c,7cとが互いに平行で且つ所定間隔を開けて対設され、この斜面部13c,7c間に空隙部17が形成される。
【0017】
又、ヒンジアーム11はエンジンフード3の内面にボルト15を介して固設されている基準面11aと、この基準面11aからほぼ垂直に曲げ形成された立面11bとを有し、この立面11bの後端が、ヒンジブラケット12の立面14の後端上部すなわち、ヒンジブラケット12の斜面部13cよりも後方で後取付け面13bの上方の立面14に対し、ヒンジピン18を介して回動自在に支持されている。
【0018】
このような構成によれば、例えば歩行者が走行中の車両に衝突して、頭部がエンジンフード3のフードヒンジ10周辺に落下すると、先ず、エンジンフード3が頭部の外形に沿って局所変形を起こして初期反力が増大する。その後、エンジンフード3は頭部から受けた慣性力により、広い範囲での沈み込みを開始して、反力を次第に減少させる。
【0019】
このとき、ヒンジブラケット12が後部から前部へ下方に傾斜されているため、エンジンフード3とヒンジブラケット12の立面側斜面部14aとの距離Lが、従来のものに比し長くなり、その分、エンジンフード3の内面がヒンジブラケット12に衝突するまでに、エンジンフード3を大きく変形させることができる。そのため、フードヒンジ10周辺のエンジンフード3に対し上方から衝撃荷重が印加された場合であっても、衝撃エネルギを効率的に吸収することができ、後述する二次反力の発生を極力抑えることができる。
【0020】
一方、エンジンフード3の変形で吸収しきれなかった衝撃エネルギは、ヒンジアーム側ボルト15,15→ヒンジアーム11→ヒンジピン18の経路でヒンジブラケット12の立面14の後端上部に伝達される。
【0021】
ヒンジピン18を介して立面14の後端上部に伝達される衝撃エネルギが比較的大きい場合、図4に示すように、この立面14の後端上部に対して、前傾させる方向の荷重が作用し、ヒンジブラケット12は、前後取付け面13a,13bをボルト15でカウルサイドパネル7に固定されているため、前後取付け面13a,13b間の斜面部13cに応力が集中する。このとき、ヒンジブラケット12の斜面部13cとカウルサイドパネル7の斜面部7との間に空隙部17が形成されているため、この斜面部13cを変形させて二次反力が発生し、衝撃エネルギを吸収することができる。
【0022】
その後、斜面部13cの背面がカウルサイドパネル7に形成されている斜面部7cに接触したところで、変形が停止し、衝撃エネルギが完全に吸収される。
【0023】
一方、車体フレームを構成するカウルサイドパネル7は、取付け面13におけるヒンジピン18の中心であるヒンジ先端の下方に対応する後取付け面7bに対して、前取付け面7aが平行で且つ低い位置に設定され、すなわち、カウルサイドパネル7の後取付け面7bにおけるフレーム断面よりも後取付け面7bの前方におけるフレーム断面の方が断面積が小さいため、車体の前方衝突時に車体前部に衝撃荷重が印加された場合でも、後取付け面7bよりも前方において十分な衝撃荷重を吸収することができ、後取付け面7bの上方の立面14に位置するヒンジセンタの後退、すなわち、エンジンフード3の後退を防ぐことができる。
【0024】
又、図3に示すように、従来のヒンジブラケットでは、後取付け面13bと前取付け面13aとが同一面に設定されているため、本実施の形態のようにエンジンフード3とヒンジブラケット12のストロークを増大しようとすると、後取付け面13bからヒンジセンタまでの高さH’が長くなるため、剛性が相対的に低下する。これに対して、本実施の形態では、後取付け面13bを前取付け面13bよりも高い位置に設定することで、高さHが短くなり、相対的にヒンジブラケット12の剛性を高めることができると共に、車体の前方衝突時に車体前部に衝撃荷重が印加された場合におけるエンジンフード3の後退を防ぐことができる。
【0025】
尚、本発明は上述した実施の形態に限るものではなく、例えば、ヒンジブラケット12のヒンジピン18を支持する位置を、エンジンフード3の後端縁よりもフロントピラー8の方向へ移動させるようにしても良く。ヒンジピン18をフロントピラー8の方向へ移動させることで、エンジンフード3の後端縁の打撃安全領域を拡大させることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、剛性を低下させることなく、フードヒンジ周辺のエンジンフードに対して上方から衝撃荷重が印加されても、高い衝撃吸収性を得ることができる。更に、車体の前方衝突時に車体前部に衝撃荷重が印加された場合でも、このエンジンフードの後方への移動を完全に阻止することができ、フロントガラス等の破損を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車体前部の斜視図
【図2】エンジンフードを開放した状態のフードヒンジの斜視図
【図3】フードヒンジの図2の右側面図
【図4】変形時のフードヒンジの図3相当の側面図
【符号の説明】
1 自動車
3 エンジンフード
3 エンジンルーム
7 カウルサイドパネル(車体フレーム)
7a 前固定面
7b 後固定面
7c 斜面部(第2の斜面部)
9 エンジンフード
10 フードヒンジ
11 ヒンジアーム
12 ヒンジブラケット
13 取付け面
13a 前取付け面
13b 後取付け面
13c 斜面部(第1の斜面部)
17 空隙部
18 ヒンジピン

Claims (2)

  1. 車体フレームの固定面にヒンジブラケットの取付け面を固設し、
    エンジンルームを開閉自在に閉塞するエンジンフードの端縁にヒンジアームを固設し、
    上記ヒンジブラケットと上記ヒンジアームとをヒンジピンで連結することで上記エンジンフードを車体フレームに回動自在に支持する車両のフードヒンジ構造において、
    上記取付け面の後部に後取付け面を形成すると共に該取付け面の前部に該後取付け面よりも低位置の前取付け面を形成し、
    上記前取付け面と上記後取付け面とを第1の斜面部で連設し
    上記固定面に上記前取付け面と後取付け面とに当接する前固定面と後固定面とを形成し、
    上記前固定面と上記後固定面とを第2の斜面部で連設し、
    上記第1の斜面部と上記第2の斜面部との間に空隙部を形成したことを特徴とする車両のフードヒンジ構造。
  2. 上記ヒンジピンの中心を上記第1の斜面部よりも後方で上記後取付け面の上方に設定したことを特徴とする請求項1記載の車両のフードヒンジ構造。
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