JPH0146348B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

本発明は、カウルトツプアウタパネルと、カウ
ルトツプインナパネルとを函状に連結した、自動
車等のカウルトツプ構造に関し、詳しくは、カウ
ルトツプを変形させるような不測の外力がカウル
トツプの前面に作用する場合に、カウルトツプの
後上縁部に連設させたウインドシールド支持部に
その外力による変形が波しないように改善された
ものに関する。

【従来の技術】

たとえば、エンジンを車室の前方に搭載してい
る自動車では、エンジンンルームを覆うカウリン
グまたはボンネツトの後端部を受止めるためにカ
ウルトツプが設けられる。このカウルトツプは、
所要のねじれ剛性を得るために略逆Ｌ字形断面を
有するカウルトツプアウタパネルと、コ字形、Ｌ
字形などの断面形状のカウルトツプインナパネル
とを連結した薄板閉断面形状に形成されたものが
多い。このようなカウルトツプの後上縁部には、
普通、ウインドシールドを支持する支持部が連設
される。 しかしながら、薄板閉断面形状に形成されたカ
ウルトツプでは、その一部に大きな外力が作用す
ればその外力が全体に波及し、全体にその外力に
起因する変形が波及するという欠点がある。この
欠点が現れる最も好ましくない例は、衝突事故な
どで車体前部が大きな衝撃力で押しつぶされ、エ
ンジン等がカウルトツプ前面に衝突したときにウ
インドシールドを支持する支持部にまでその衝撃
力による変形が波及し、ウインドシールドの上記
支持部からの離脱や破損が生じる危険が高まり、
乗員に加わる危険が拡大される場合である。乗員
の安全確保という観点からはこのような危険の拡
大は極力防止されなければならない。 このような危険の拡大を防止するために、たと
えば、実開昭57−70980号公報に示されているよ
うに、カウルトツプの下側にビードを形成すると
ともに、その前面の上部を所定の高衝撃荷重で水
平方向に剪断されるねじ等で連結された分離部を
設けたカウルトツプ構造が提案されている。この
ようなカウルトツプ構造では、カウルトツプが水
平に後方のみに変形する場合には、分離部が水平
方向に分離し、ビード部が圧縮されて外力による
カウルトツプの変形がその後上縁部に波及しな
い。ところが、実際には、カウルトツプの前下縁
部が車室の前壁を介して車室床板ないしはシヤー
シに連結されており、カウルトツプの前下縁に衝
突するエンジン等は同時に車室前壁にも衝突して
これを凹曲させるのが普通である。この車室前壁
の凹曲により、カウルトツプの前面が下方に引張
られ、カウルトツプのの上壁がその後上縁部を中
心としてねじられる。一方、上記支持部は雨仕舞
を良好に行えるようにカウルトツプ上面の後縁部
から一体的に延出され、あるいはさらに支持部を
強化するためにカウルトツプインナパネルの後上
縁を重ね合わせて溶接する構造になつている。し
たがつて、カウルトツプ上壁のねじれが上記支持
部に波及し易く、ウインドシールドの離脱や破損
に伴う危険の拡大を防止する上でなお不満が残さ
れる。

【発明の解決すべき課題】

本発明は、このような事情のもとで発明された
ものであつて、その解決すべき課題は、カウルト
ツプ前面へのエンジンなどの衝突が生じた際にカ
ウルトツプ後上縁部に支持されたウインドシール
ドの離脱、破損などの危険の拡大を効果的に防止
することである。

【課題を解決するための手段】

本発明は、このような技術的課題を解決するた
めに次のような技術的手段が講じられている。 すなわち、カウルトツプアウタパネルとカウル
トツプインナパネルとを閉断面形状に連結してな
るカウルトツプの前面に、車幅方向の所定の範囲
わたつて分離用開口部を設けるとともに、 上記カウルトツプの前面に、上記分離用開口部
を塞ぐ蓋を、この蓋の下縁部と上記カウルトツプ
前面における上記分離用開口部の下部とを連結
し、かつ比較的容易に破断する連結具を介して、
着脱可能に取付けることにより、 上記カウルトツプ前面に、所定値以上の高衝撃
荷重を受けたときに上方向および前後方向に分離
する分離部を車幅方向の所定の範囲にわたつて形
成したことを特徴としている。 分離部を設ける範囲は、具体的には、上記カウ
ルトツプの変形をできるだけ小範囲内に局限する
ために、カウルトツプに衝突する可能性があるエ
ンジンなどの他物の後方で、この他物の左右幅よ
りも若干大きく左右に広がる範囲とすることが好
ましい。

【発明の作用および効果】

カウルトツプ前面に高衝撃荷重が作用した場
合、カウルトツプ前面の開口部を塞ぐ蓋の下縁部
と、カウルトツプ前面における上記開口部の下部
とを連結する連結具が破断する。これにより、カ
ウルトツプ前面が上記蓋の下縁と上記開口部の下
縁との間で上下および前後に二分される。すなわ
ち、カウルトツプ前面が、その分離部において分
断されるのである。 ところで、事故等によりエンジン等の他物がカ
ウルトツプの前面に衝突すると、カウルトツプの
前面に後向きの高衝撃荷重が作用するとともに、
カウルトツプの前下縁部に連結された車室前壁が
凹曲させられたカウルトツプ前下縁部を下方に衝
撃的に引下げる。したがつて、カウルトツプの前
下縁部は後向きと下向きとの両方向に向う衝撃力
を同時に受ける。カウルトツプの前下縁部がこれ
らの衝撃力を受け、分離部にこれらの衝撃力が波
及すると、上述したようにカウルトツプの前面は
分離部から二分され、カウルトツプ前下縁部の変
形がカウルトツプ前面の分離部よりも上の部分に
伝達されなくなる。したがつて、これらの衝撃力
によつて、カウルトツプの上面に変形せず、カウ
ルトツプ上面の後縁に連続する上記支持部も変形
しなくなる。カウルトツプ前面の分離部よりも上
の部分に作用する衝撃力は、カウルトツプの前面
と上面との接続部に形成された屈曲部でこの前面
部分を後屈させることにより吸収され、カウルト
ツプの上面がねじり変形させられることはない。
また、カウルトツプ前下縁に作用する衝撃力は、
カウルトツプ後下縁の屈曲部をその挟角を開く方
向に変形させることにより吸収される。したがつ
て、支持部がカウルトツプインナパネルの後上縁
部で補強された構造ものでも上述の衝撃力による
変形が支持部に波及することはない。このよう
に、本発明に係る自動車等のカウルトツプ構造に
よれば、エンジン等の他物がカウルトツプの前面
に衝突してカウルトツプが変形するような場合で
も、その変形がカウルトツプの後上縁部に連設さ
れた支持部に波及しないので、ウインドシールド
の離脱や破損が発生せず、これに伴う危険の拡大
を効果的に防止できるのである。 また、本発明の場合、上記分離部を構成するに
あたり、カウルトツプ前面に、開口部を設けると
ともに、この開口部を塞ぐ蓋を着脱可能に取付け
る。したがつて、上記開口を、カウルトツプ内に
装着するワイパモータ等の機器の取付けに際し
て、上記開口を、その作業穴として利用できるの
で、上記機器の取付けを容易に行える利点もあ
る。

【実施例の説明】

以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ具体
的に説明する。 第１図は本発明の一実施例の縦断面図であり、
第２図はその要部の分解斜視図である。このカウ
ルトツプは、カウルトツプアウタパネル１とカウ
ルトツプインナパネル２とを接続して閉断面形状
に形成されている。カウルトツプアウタパネル１
は、略水平の上面１１と、これの前縁から略垂直
下方に延出された前面１２と、前面１２の下縁か
ら前方に連出された接続用リツプ部１３とを有
し、その上面１１の後縁から斜め上方向に支持部
３がクランク形状に延出されている。また、カウ
ルトツプインナパネル２は、中間が後方に突なほ
ぼく字形断面の後面２１と、その下縁から前方に
ほぼ水平に連出された下面２２と、上記後面２１
の上縁から略後方に延出された接続用リツプ２３
とを有している。上記カウルトツプアウタパネル
１のリツプ部１３はカウルトツプインナパネル２
の下面２２の前縁部に重ね合わされ、適当間隔置
きのスポツト溶液などより強固に連結されてい
る。また、上記カウルトツプインナパネル２のリ
ツプ部２３は、支持部３の略水平部分の下側に重
ね合わせられ、適当間隔置きのスツト溶接などに
より連結されている。 上記前面１２の左右方向中間部には、図示しな
いエンジンの後方でこのエンジンの左右幅よりも
若干左右両側方に拡大された範囲にわたつて所定
値以上の高衝撃荷重で容易に破断して上下方向お
よび前後方向に分離する分離部４が設けられる。
この分離部４は上記前面１２の上記範囲にわたり
開口する分離用開口部４１と、この開口部４１を
全面的に覆い、たとえば６本のボルト４２により
この開口部４１の左右両側縁および上縁に強固に
固定された蓋４３と、この蓋４３の下縁部と上記
前面１２の下部とを通常は連結し、上記高衝撃荷
重を上記前面が受けたときに容易に破断する連結
具、たとえばタツピンねじよりなる破断部材４４
とからなる。上記開口部４１の上下方向の丈はこ
の前面１２の丈よりも若干小さくしてある。 なお、上記カウルトツプアウタパネル１の前下
縁に連設されたリツプ部１３とカウルトツプイン
ナパネル２の下面２２との接合部には車室前壁５
の上縁リツプ部が下から重ね合わされ、スポツト
溶接などにより強固に連結されている。符号６は
ゴム等の弾性体よりなるパツキンである。 このように構成された自動車のカウルトツプ構
造によれば、事故等によりエンジン等の他物がカ
ウルトツプの前面１２の分離部４および車室前壁
５に衝突すると、この分離部４に後向きの高衝撃
荷重が作用するとともに、カウルトツプの前下縁
部に連結された車室前壁５が後方に凹曲させられ
てカウルトツプ前下縁部を下方に衝撃的に引下げ
る。したがつて、カウルトツプの前下縁部は後向
きと下向きとの両方に向う衝撃力を同時に受け
る。カウルトツプの前面１２の分離部４は、上記
連結具４４が後向きと下向きとの２方向の高衝撃
荷重を受けて破断することにより、蓋４３の下縁
と開口部４１の下縁との間で上下および前後に二
分割され、カウルトツプ前下縁部の変形がカウル
トツプ前面１２の分離部４の蓋４３よりも上の部
分に伝達されなくなる。したがつて、これらの衝
撃によつてカウルトツプアウタパネル１の上面１
１は変形せず、この上面１１の後縁に連続する上
記支持部３も変形しなくなる。上記前面１２の分
離部４の蓋４３よりも上の部分に作用する衝撃力
は、カウルトツプの前面１２と上面１１との接続
部に形成された屈曲部でこの前面１２の蓋４３よ
りも上の部分を後屈させることにより吸収され、
カウルトツプの上面１１がねじり変形させられる
ことはない。また、カウルトツプ前下縁に作用す
る衝撃力は、カウルトツプインナパネル２の下面
２２の後縁と後面２１の接続部に形成された屈曲
部、後面２１の中間高さの屈曲部および後面２１
の上縁とリツプ部２３との接続部に形成された屈
曲部をそれらの挟角を開く方向または閉じる方向
に屈曲させるとともに、カウルトツプインナパネ
ル２の下面２２および後面２１を車室内に曲げ変
形させることにより吸収される。したがつて、支
持部３にカウルトツプインナパネル２の上記衝撃
力による変形が波及することはない。 このように、上記自動車等のカウルトツプ構造
によれば、エンジン等の他物がカウルトツプの前
面に衝突してカウルトツプが変形するような場合
でも、その変形がカウルトツプの後上縁部に連設
された支持部３に波及しないので、ウインドシー
ルドの離脱や破損が発生せず、これに伴う危険の
拡大を効果的に防止できるのである。 また、所定の範囲にわたつてカウルトツプの前
面１２を上下に大きく開き、その開口部４１を覆
うために別体を形成された蓋４３をこの開口部４
１の周囲にボルト４２およびタツピンネジよりな
る連結具４４で連結してあるので、これらボルト
４２および分離具４４を螺解することにより容易
に蓋４３を離脱でき、その蓋４３を取外すことに
よりカウルトツプ内への図示しないワイパモータ
等の機器の取付を容易に行える点も得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の縦断面図、第２図
はその要部の分解斜視図である。 １……カウルトツプアウタパネル、２……カウ
ルトツプインナパネル、４……分離部、１２……
前面、４１……分離用開口部、４３……蓋、４４
……連結具。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ カウルトツプアウタパネルとカウルトツプイ
   ンナパネルとを閉断面形状に連結してなるカウル
   トツプの前面に、車幅方向の所定の範囲にわたつ
   て分離用開口部を設けるとともに、 上記カウルトツプの前面に、上記分離用開口部
   を塞ぐ蓋を、この蓋の下縁部と上記カウルトツプ
   前面における上記分離用開口部の下部とを連結
   し、かつ比較的容易に破断する連結具を介して、
   着脱可能に取付けることにより、 上記カウルトツプの前面に、所定値以上の高衝
   撃荷重を受けたときに上下方向および前後方向に
   分離する分離部を車幅方向の所定の範囲にわたつ
   て形成したことを特徴とする、自動車等のカウル
   トツプ構造。