JP3900324B2 - 一成分形弾性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた貯蔵安定性と接着発現性を併せ持つ一成分形弾性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂に変成シリコーン樹脂を配合することによって、硬化物に可撓性を付与した弾性エポキシ樹脂組成物は従来、建築現場等でコンクリートやモルタル面に用いる接着剤として用いられている。
このエポキシ樹脂は反応性が高いため、アミン成分と混合すると容易に反応し、硬化する。したがって、従来は2液型がほとんどであった。
これに対して、ケチミン系化合物を中心とする潜在性硬化剤を用いた一液化の検討も種々なされているが、未だ貯蔵安定性、硬化性のバランスがとれた系は見出されていない。
例えば特開平5−132541号公報には、ケチミン化合物の骨格を長鎖のポリオキシレンにすることで、貯蔵中の反応性を落とし、結果的に貯蔵安定性を上げようとする技術が開示されている。しかしながら、容器から出した際の硬化速度も遅く、実用的な一液型エポキシ樹脂組成物としては使えない。
また特開平5−230182号公報には、長鎖のポリエーテルを骨格に持つエポキシ樹脂にケチミン化合物を混合した組成物が開示されているが、やはり一液型エポキシ樹脂組成物として使えるような硬化速度はない。
一方、アミンあるいはチオールをトリアルキルシリル基でキャップしたものを潜在性硬化剤として用いる技術も開示されている(特開平1−138221号公報、特開平2−36220号公報等)が、これらの硬化剤は、微量の水分に対しても敏感に反応するため、貯蔵中に系中の微量水分によりゲル化してしまう。
一方、ウレタン樹脂において硬化剤として広く用いられているオキサゾリジンを、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤として使用する試みも本発明者らによりなされているが、貯蔵安定性はケチミンに比べて改善されるものの、接着発現性が十分ではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、容器から出した際の硬化速度が速い一成分形弾性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
発明者は立体障害の大きいケトンと立体障害の少ないアミンから合成されるケチミンを潜在性硬化剤として用いた一成分形弾性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性、接着発現性に優れることを見出し本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(7)を提供する。
(1) 少なくとも、エポキシ樹脂(a)、
ケチミン化合物(b)として、下記式(4)または下記式(5)で表される化合物、
変成シリコーン樹脂(c)、
および変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)としてスズ化合物を含有することを特徴とする一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
【化3】
(2) 前記ケチミン化合物(b)の量が、当量比で、(前記ケチミン化合物(b)のイミノ基)/(前記エポキシ樹脂中のエポキシ基)が0.01〜2である上記(1)に記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
(3) 前記変成シリコーン樹脂(c)が、下記式(3)で示される加水分解性ケイ素官能基を末端に有するシリコーン樹脂である上記(1)または(2)に記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
【化4】
(式中、R 5 は炭素数1〜12の1価の炭化水素基、R 6 は炭素数1〜6の1価の炭化水素基、nは0〜2の整数である。)
(4) 前記変成シリコーン樹脂(c)が、ポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル)である上記(1)または(2)に記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
(5) 前記変成シリコーン樹脂(c)の量が、前記エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、10〜500重量部である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
(6) 前記変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)が、ジブチル錫ビストリエチルシリケートである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
(7) 前記変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)の量が、前記変成シリコーン樹脂(c)100重量部に対して0.1〜10重量部である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において、ケチミン化合物(b)として含有される化合物は、下記式(4)または下記式(5)で表されるものである。
【化1】
本発明に用いるケチミン化合物(b)は、ケトンとしてメチルイソプロピルケトンまたはメチルt−ブチルケトンと、ポリアミンとしてα位がメチレンであり、ポリエーテル骨格のジアミンであるジェファーミンEDR148(サンテクノケミカル社製)を無溶媒下、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒存在下、加熱還流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることで得られる。
α位に置換基をもつケトン(すなわち、カルボニル基から数えてα位に置換基を有するケトン)としてのメチルイソプロピルケトン、メチルt−ブチルケトンを用いて合成したケチミンをエポキシ樹脂硬化剤として用いた場合、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性と接着発現性のバランスが優れる。
【0007】
本発明で用いるケチミン化合物(b)は、硬化速度と貯蔵安定性のバランスが特に優れる。
具体的には、サンテクノケミカル社製のポリエーテル骨格のジアミンであるジェファーミンEDR148とメチルイソプロピルケトンから得られるもの、ジェファーミンEDR148とメチルt−ブチルケトンから得られるものである。α位に置換基を持つケトンとα位がメチレンであるアミノ基を2個以上有するポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物はケチミン基の2重結合の近くに嵩高い基を有するので硬化速度と貯蔵安定性という相反する特性を満たす。
【0008】
本発明に用いるケチミン化合物(b)は、前記のケトンとポリアミンを無溶媒下、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒存在下、加熱還流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることで得られる。
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物中へのケチミン化合物(b)の添加量は、当量比で、(ケチミン化合物のイミノ基)/(エポキシ樹脂中のエポキシ基)が0.01〜2、好ましくは0.1〜1.0である。これらの範囲外では、硬化性が悪くなる。
【0010】
本発明において用いるエポキシ樹脂(a)は、常温における性状が液状であるエポキシ樹脂であれば、いずれでもよい。
エポキシ樹脂(a)としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のエビクロールヒドリンを反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等や、これらに水添したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、メタキシレンジアミンやヒダントインなどをエポキシ化した含窒素エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂等があげられるが、これらに限定されるものではない。
また、エポキシ樹脂(a)は、一種類のみでも、二種類以上を併用してもよい。
【0011】
本発明に用いる変成シリコーン樹脂(c)とは、例えば、アミノ基、フェニル基、アルコキシ基等の官能基が導入されたシリコーン樹脂をいうが、下記式(3)で示される加水分解性ケイ素官能基を末端に有するシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
【化5】
【0013】
(式中、R5 は炭素数1〜12の1価の炭化水素基、R6 は炭素数1〜6の1価の炭化水素基、nは0〜2の整数である)
より具体的には、ポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル)等が例示され、市販のものが使用できる。
これらの変成シリコーン樹脂は、一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
このような変成シリコーン樹脂の使用は、エポキシ樹脂組成物の硬化物に可撓性を付与するために重要である。また、変成シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性向上にも寄与する。
変成シリコーン樹脂の使用量は、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、10〜500重量部、好ましくは50〜300重量部である。10重量部未満であると、エポキシ樹脂組成物の硬化物が十分な可撓性を示さず、一方、500重量部を超えると、接着性が悪くなるので好ましくない。
【0014】
変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)とは、上記の変成シリコーン樹脂(c)を硬化させる触媒である。即ち、変成シリコーン樹脂(c)の硬化は、変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)の存在で、空気中の水分により行われる。
より具体的には、変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)は、ジブチル錫オキサイド等のスズ化合物である。変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)は、一種類のみを使用しても良いし、または二種類以上を併用してもよい。
変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)の使用量は、一般的には、変成シリコーン樹脂(c)100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0015】
また、本発明に係る一成分形弾性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加物を添加してもよい。
添加物の例としては、酸化チタン等の老化防止剤、カーボンブラック等の顔料、炭酸カルシウム、ポルトランドセメント等の充填剤あるいは紫外線吸収剤、可塑剤、溶剤、難燃剤、乾燥剤等が挙げられる。
【0016】
乾燥剤は、エポキシ樹脂中の水分を取り除き、さらに貯蔵安定性を高めるためのものである。具体例としては、イソシアネート化合物、アルコキシシリル化合物、オルソエステルなどが挙げられる。乾燥剤を添加する場合、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部、特に1〜10重量部であるのが貯蔵安定性を高める上で好ましい。
【0017】
本発明の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(a)、ケチミン化合物(b)、変成シリコーン樹脂(c)、シリコーン樹脂硬化触媒(d)、および脱水剤等の添加剤を、常法により混合することで製造され、密封容器に保存される。
【0018】
得られた一成分形弾性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性、硬化発現性に優れ、湿気で短時間に硬化可能である。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例について本発明を一層具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0020】
表1に示す割合で、エポキシ樹脂、変成シリコーン樹脂、および充填剤を高粘度用混合攪拌機を使用し、常温、減圧(20Torr以下)下で攪拌、混合した。次いで、脱水剤を添加し、減圧攪拌し、また変成シリコーン樹脂硬化触媒、ケチミン、オキサゾリジン、およびその他の添加剤を添加し、減圧攪拌し、一成分形弾性エポキシ樹脂組成物を製造した。
その後得られた樹脂組成物に対して以下のような物性評価を行なった。結果はフロータイプのものを表1に、ノンサグタイプのものを表2に記載した。
【0021】
(物性評価)
(1)貯蔵安定性の評価
製造直後に、表1ではBH形粘度計を用い、ローター#6を10rpmで回転させて、得られた組成物の粘度(Pa・s)を測定した。表2では、BS形粘度計を用い、ローター#7を1rpmまたは10rpmで回転させて、得られた組成物の粘度(Pa・s)を測定した。一方得られた組成物を密閉容器にいれ、60℃で1日放置し、同様に粘度を測定し、粘度の上昇率を計算し、貯蔵安定性を評価した。
(2)接着性の評価
難接着性の湿潤モルタルを被着体とし、その上面に各樹脂組成物を流し、20℃相対湿度55%で28日間放置した。その後、手による剥離試験を行なった。
結果は凝集体破壊を○、界面剥離を×と評価した。
(3)揺変性の評価
表2で測定した1rpmの粘度の値を10rpmの粘度の値で除して、チクソインデックス(T.I.)を算出した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
表中の記載は以下のとおりである。なお、表中各添加物の配合量は重量部で表す。
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ELA128、住友化学工業社製)
変成シリコーン樹脂:ポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル)(MSP−S203、鐘淵化学工業社製):
充填剤1:ポルトランドセメント(ポルトランドセメント、日本セメント社製)
充填剤2:コロイダル炭酸カルシウム(カルファイン2000、丸尾カルシウム社製)
変成シリコーン樹脂硬化触媒:ジブチル錫ビストリエチルシリケート(ネオスタンU−303、日東化成社製)
ケチミン1:(H−3、油化シェルエポキシ社製)
ケチミン2:148MTB、下記式(4)
【0025】
【化6】
【0026】
ケチミン3:148MIP、下記式(5)
【0027】
【化7】
【0028】
オキサゾリジン:MS−PLUS、アンガス社製
溶媒:トルエン
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性および硬化発現性の双方に優れる一成分形弾性エポキシ樹脂組成物が得られる。
Claims (7)
- 前記ケチミン化合物(b)の量が、当量比で、(前記ケチミン化合物(b)のイミノ基)/(前記エポキシ樹脂中のエポキシ基)が0.01〜2である請求項1に記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
- 前記変成シリコーン樹脂(c)が、ポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル)である請求項1または2に記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
- 前記変成シリコーン樹脂(c)の量が、前記エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、10〜500重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
- 前記変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)が、ジブチル錫ビストリエチルシリケートである請求項1〜5のいずれかに記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
- 前記変成シリコーン樹脂硬化触媒(d)の量が、前記変成シリコーン樹脂(c)100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項1〜6のいずれかに記載の一成分形弾性エポキシ樹脂組成物。
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