JP3541942B2 - 一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた硬化特性と良好な貯蔵安定性を両立させた一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物に関する。特に、一液常温硬化型硬質エポキシ系接着剤、一液常温硬化型硬質パテ材、一液常温硬化型硬質塗料、一液常温硬化型硬質コーティング材、一液常温硬化型硬質ポッティング材に好適である一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂組成物は、物理的強度や接着性に優れ、接着剤、パテ材、塗料やコーティング材として広く利用されてきた。従来のエポキシ樹脂組成物は、反応性の高いアミン化合物を硬化剤として使用しているために、エポキシ樹脂と硬化剤成分を使用する直前に混合する二液型であった。しかし、二液型エポキシ樹脂組成物は、計量や混合などの作業が必要となり、このため作業性に劣るものであり、その煩雑さから計量ミスや混合不良といった諸問題も抱えていた。二液型のものは混合することで化学反応が始まるので、使用できる時間が限られるという欠点もあった。
【0003】
このため、一液化したエポキシ樹脂組成物の検討は種々なされており、ケチミン化合物を中心とする湿気分解型潜在性硬化剤を用いた一液型エポキシ樹脂組成物についての技術は多数知られている。中でも工業的見地から、カルボニル化合物としてメチルイソブチルケトンから得られるケチミン化合物を用いた一液型エポキシ樹脂組成物について、種々の技術が開示されている。
【0004】
ケチミン化合物は、エポキシ樹脂、イソシアネート末端のウレタンプレポリマーの潜在性硬化剤として、よく知られている。ケチミン化合物とエポキシ樹脂を配合した組成物の反応機構について説明する。ケチミン化合物は空気中の湿気と反応し、分解して活性水素を有するアミン化合物を生成する。この生成された活性水素を有するアミン化合物は、エポキシ樹脂と反応し、この機構によりエポキシ樹脂組成物は硬化する。すなわち、ケチミン化合物とエポキシ樹脂を配合した組成物において、もっとも重要なことは、▲1▼ケチミン化合物の加水分解速度が速いほど速硬化性が得られることである。さらに、▲2▼加水分解により生じたアミン化合物の反応性が高いほど、速硬化で高度な物性が得られやすい。ここで、加水分解速度が速いケチミン化合物は、貯蔵安定性が乏しいとの二律相反する難点があった。よく知られたメチルイソブチルケトンから得られるケチミン化合物を含有する一液型エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性は良い反面、初期接着強さや機械的強度の立ち上がりなどの硬化特性は遅いとの難点がある。従って貯蔵安定性を配慮するが故、エポキシ樹脂に対し反応性の高いアミン化合物から得られるケチミン化合物を用いる手段に頼らざるを得ないことが従来技術の限界であった。このように、速硬化性の向上を図れば、貯蔵安定性を損なうとのジレンマが存在するため、ケチミン化合物とエポキシ樹脂を配合した組成物において、速硬化性を与え、貯蔵安定性を両立させる技術は全く見出されていないのが現状である。
【0005】
最近では、国際公開WO98/31722公報で、立体障害のあるカルボニル化合物から得られる特定のケチミン化合物を用いることで貯蔵安定性を上げる技術が開示されている。ここでのケチミン化合物は、その立体構造から加水分解性を示す部位に水分が接触しにくくなり、加水分解性は遅いものであった。そのため、貯蔵安定性は良いが、速硬化性などの硬化特性が劣るという従来からの難点を備えていた。すなわち、ここでのケチミン化合物を用いた場合、エポキシ樹脂組成物の硬化は進行しにくく、初期接着強さや機械的強度の立ち上がりが鈍いという問題点を持っていた。使用に耐えうる物性が得られるまでに長時間の養生が必要であり、実用的には不十分であった。
【0006】
国際公開WO98/31722公報や特開平11−21532号公報、特開2000−169673公報、特開2000−178343公報においては、ケチミンに対する潜在的な加水分解触媒であるカルボン酸シリルエステルの添加によってケチミン化合物の加水分解速度を向上させる技術が開示されている。しかしながら、これらに使用されているケチミン自体の加水分解速度が遅いため、カルボン酸シリルエステルの添加によりケチミンの加水分解性が向上しても、実用に耐えうる速硬化性を得ることはできていない。
【0007】
従って、これらの技術においても実用的な硬化特性と貯蔵安定性が両立する技術をなし得るものではない。すなわち、従来技術の延長線上の技術手段であった。
【0008】
かくして、ケチミン化合物とエポキシ樹脂を配合した組成物において、速硬化性を与え、貯蔵安定性を両立させる組成物が見出されれば、これらを利用した接着剤、パテ材、塗料、コーティング材、ポッティング材などの基本技術となるため、産業上の有用性ははるかに向上する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性が優れるという性能と、優れた速硬化性を示すために初期接着強さや機械的強度の立ち上がりを格段に速くするという性能の、相反する性能を両立させた、常温硬化できる一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、カルボン酸シリルエステル化合物と特定のケチミン化合物とを含有する一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物が、格段に優れた速硬化性を示すことを見いだした。特定のカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物とを反応させて得られるケチミン化合物が、格段に速い加水分解性を示すことを見いだした。そこでこの加水分解性の速さに着眼し、さらに研究を重ねていたところ、カルボン酸シリルエステル化合物と組み合わせて用いたときに、貯蔵安定性を損なうことなく、このケチミン化合物の特徴である、速い接着性や機械的強度の立ち上がりを更に向上させることを見いだした。従来技術においては、貯蔵安定性を向上しようとすると、速い硬化特性が犠牲になるというジレンマが存在していたが、ここでの技術が、このジレンマを解消する技術であることを確認した。すなわち、この出願の発明は、二つの技術から成り立っている。その一つは、ケチミン化合物の原料となるカルボニル化合物の構造がごく限られた範囲の化合物に限り、エポキシ樹脂との配合において、容器中などの湿気遮断の状態では全く不活性であるが、一旦容器から取り出された際には空気中の湿気で容易に加水分解することから、格段に速い、接着性や機械的強度の立ち上がりを示す機能に基づくものである。もう一つは、カルボン酸シリルエステルを前記の限られた範囲のエポキシ樹脂組成物に加えたときに、さらに速硬化性を向上させる機能に基づくものである。これら二つの機能を組み合わせることこそ、所期の目的である実用的な硬化特性と優れた貯蔵安定性とを両立させる技術である。
【0011】
本発明者らは、これらの発見に基づいて、さらにこれらのような特性を有する化合物の範囲、エポキシ樹脂との配合量、合成技術を広く研究した。その結果、初期接着強さ、接着強度、機械的強度の立ち上がりが格段に速く、長期保管しても問題なく使用できる一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物を開発することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
以下に前記課題を解決するための本発明の手段について説明する。
請求項1の発明では、下記化学式(1)に示されるカルボン酸シリルエステル化合物および/または下記化学式(2)に示されるカルボン酸シリルエステル化合物と、下記化学式(3)で示されるカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物とを反応させて得られる下記化学式(4)に示されるケチミン化合物と、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0013】
【化5】
ただし、R1、R2、R3、R4は有機基であり、R1、R2、R3、R4は同じか、または異なる有機基である。
【0014】
【化6】
ただし、R5、R6、R7、R8、R9、R10は有機基であり、R5、R6、R7、R8、R9、R10は同じか、または異なる有機基である。mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。
【0015】
【化7】
ただし、R11、R12は炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれるいずれか1つのアルキル基であり、R11、R12は同じか、または異なるアルキル基である。
【0016】
【化8】
ただし、R13はアミン化合物の1級アミノ基を除く残基であり、R11、R12は炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれるいずれか1つのアルキル基であり、R11、R12は同じか、または異なるアルキル基である。nは1以上の整数である。
【0017】
ここでのケチミン化合物とは、前記化学式(4)で表される加水分解性の、C原子とN原子間の二重結合を有する化合物をいう。この部位は水と反応して、1級アミノ基を有するアミン化合物と、同一のまたは異なる、2個のアルキル基を有するカルボニル化合物に加水分解される。一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物においては、アミン化合物が生成されてからエポキシ樹脂と反応し、硬化する。すなわち、ケチミン化合物の加水分解速度は、エポキシ樹脂組成物の硬化性を左右する。ここでの硬化性とは、接着強さや機械的強度などの立ち上がりをいっており、速硬化性とは、使用に耐えうる、実用的な物性が得られるのに長時間の養生を必要としないこと示している。本発明での、前記化学式(4)で表されるケチミン化合物は、N原子との間に二重結合を持つC原子に、炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれる、同一のまたは異なるアルキル基を有することで容易に水と反応して、1級アミノ基を有するアミン化合物に加水分解されるために、その組成物は格段に速い硬化性であった。
【0018】
また、ここでのカルボン酸シリルエステル化合物とは、前記化学式(1)、前記化学式(2)で表される加水分解性の、Si−O−C=O結合を有する化合物をいう。この部位は水と反応し、酸性を有するカルボン酸を生成する。カルボン酸シリルエステル化合物は、接着剤組成物の使用時に空気中の水分と反応しカルボン酸を生成し、エポキシ樹脂に対する潜在性硬化剤であるケチミンの加水分解反応を促進させ、硬化を速める。また貯蔵中には、酸性を有しないため貯蔵安定性は低下しない。すなわち、本発明の組成物は速硬化性を有し、使用に耐えうる実用的な物性が得られるのに長時間の養生を必要としないことを意味している。
【0019】
これらの、前記カルボン酸シリルエステル化合物と前記ケチミン化合物を組み合わせることで、速硬化性と貯蔵安定性との両立を飛躍的に向上させることができた。
【0020】
請求項2の発明では、前記ケチミン化合物が、α位の炭素原子がメチレン構造であるカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物とを反応させて得られる、請求項1の手段の一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物であって、速硬化性をさらに向上させた一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0021】
ここでのケチミン化合物は、C原子とN原子間の二重結合の近隣に立体障害となる構造を持たないので、加水分解性が阻害されないために、貯蔵安定性を損なうことなく、硬化特性をさらに向上することができた。
【0022】
請求項3の発明では、前記ケチミン化合物が、エチル基またはプロピル基から選ばれる、同一のまたは異なるアルキル基を有するカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物とを反応させて得られる、請求項1の手段の一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0023】
ここでのケチミン化合物は、その分子構造から、さらに高い加水分解性を有するために、貯蔵安定性を損なうことなく、速硬化性をさらに向上することができた。
【0024】
請求項4発明では、前記ケチミン化合物が、2個のエチル基を有するカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物とを反応させて得られる、請求項3に記載の一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0025】
ここでのカルボニル化合物とは、ジエチルケトン(3−ペンタノン)のことをいい、最も速い加水分解性を有するために、貯蔵安定性を損なうことなく、最も優れた、速硬化性を有することができた。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明において用いるカルボン酸シリルエステル化合物としては、下記化学式(1)および/または下記化学式(2)で表される、カルボン酸シリルエステル基を有する化合物であれば、どのようなものでもよい。カルボン酸シリルエステルの具体例としては、酢酸トリメチルシリルエステル、安息香酸トリメチルシリルエステル、2−エチルヘキサン酸トリメチルシリルエステル等が挙げられる。また、このようなカルボン酸シリルエステルは、各種の市販品が発売されており、これらの市販品が利用可能であり、具体例としては、信越化学工業(株)製のKF−910等が挙げられる。本発明において用いられるカルボン酸シリルエステルは、これらに限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせて使用してもよいことはいうまでもない。
【0027】
【化9】
ただし、R1、R2、R3、R4は有機基であり、R1、R2、R3、R4は同じか、または異なる有機基である。
【0028】
【化10】
ただし、R5、R6、R7、R8、R9、R10は有機基であり、R5、R6、R7、R8、R9、R10は同じか、または異なる有機基である。mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。
【0029】
本発明において用いる特定のケチミン化合物とは、下記の化学式(4)で表される加水分解性の、C原子とN原子間の二重結合を有する化合物をいう。このケチミン化合物は、カルボニル基のC原子に、炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれる、同一のまたは異なるアルキル基を有するカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物を反応させて得られる化合物である。化学式(4)の構造のものであれば、どのようなものでもよいが、例えば下記の化学式(5)で表されるN,N’−ジ(1−エチルプロピリデン)−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、下記の化学式(6)で表されるN,N’−ジ(1−エチルプロピリデン)−メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。それらは、各々1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとジエチルケトンとの脱水縮合物、メタキシリレンジアミンとジエチルケトンとの脱水縮合物である。
【0030】
【化11】
ただし、R13はアミン化合物の1級アミノ基を除く残基であり、R11、R12は炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれるいずれか1つのアルキル基であり、R11、R12は同じか、または異なるアルキル基である。nは1以上の整数である。
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
本発明に用いるケチミン化合物の原料となるカルボニル化合物は、下記の化学式(3)で表される、カルボニル基のC原子に、炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれる、同一のまたは異なるアルキル基を有するカルボニル化合物であればどのようなものでもよい。カルボニル化合物の具体例としては、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトンなどが挙げられる。
【0034】
【化14】
ただし、R11、R12は炭素数2〜6のアルキル基からなる群から選ばれるいずれか1つのアルキル基であり、R11、R12は同じか、または異なるアルキル基である。
【0035】
水分子との接触を妨げる立体障害を近隣に持つ、C原子とN原子間の二重結合の場合、加水分解性を低下させる。前記カルボニル化合物のα位の炭素原子はメチレン構造であることが、C原子とN原子間の二重結合の近隣に立体障害となる構造を持たないために加水分解性が阻害されないので、好ましい。炭素数2または3の、同一のまたは異なるアルキル基を有するカルボニル化合物が、これらのカルボニル化合物の中でも高い加水分解性を有するため、さらに好ましい。この中でも、炭素数2の同一のアルキル基を有するジエチルケトンが、最も高い加水分解性を示すため、エポキシ樹脂に配合した場合、最も速硬化性を与えるので、特に好ましい。
【0036】
本発明に用いるケチミン化合物の原料となるアミン化合物としては、1級のアミノ基を有する化合物であればどのようなものでもよく、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、メタキシリレンジアミン、イソフォロンジアミン、ポリオキシレン骨格を有するポリアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これに限定されない。1分子中に1級アミノ基を2個以上持つものが、優れた機械的強度が得られるため、好ましい。
【0037】
以上から、炭素数2の同一のアルキル基を有するジエチルケトンと1分子中に1級アミノ基を2個以上持つアミン化合物から得られたケチミン化合物を、エポキシ樹脂に配合した場合、もっとも速硬化性、および、優れた機械的強度を与えるため、もっとも好ましい組成物である。
【0038】
ケチミン化合物の製造は、どのような製造方法であってもよく、例えば、前記カルボニル化合物と前記アミン化合物とを無溶剤下、または非極性溶剤(ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼンなど)存在下で混合し、加熱環流し、生成する水を共沸により除去し得られる。使用されるカルボニル化合物および/またはアミン化合物は、2種類以上の化合物を原料として使用してもよい。また、一液型エポキシ樹脂組成物は、前記ケチミン化合物を2種類以上使用してもよいことはいうまでもなく、硬化性と貯蔵安定性を損なわない範囲であれば、通常のカルボニル化合物やアルデヒド化合物から合成されたケチミン化合物やアルジミン化合物などの他の潜在性硬化剤を併用してもよい。
【0039】
エポキシ樹脂は、ケチミン化合物が使用時に加水分解して得られるアミン化合物と反応し得るエポキシ基を有するものであれば、どのようなものでもよい。例えば、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSなどとエピクロルヒドリンを反応させて得られるビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などやこれらを水添化あるいは臭素化したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、メタキシレンジアミンやヒダントインなどをエポキシ化した含窒素エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。これらに限定されるものではなく、2種類以上のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してよい。
【0040】
本発明のカルボン酸シリルエステルとエポキシ樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部であることが好ましい。この配合割合より高い場合は、カルボン酸シリルエステルから生成してくるカルボン酸が、ケチミンから生成してくるアミンと中和反応を起こし、充分に硬化反応が進行しない。低い場合には、ケチミンの加水分解を促進する効果が弱く、速硬化しない。この配合割合の中であれば、実用的な速硬化性が得られるので好ましく、カルボン酸シリルエステルの配合割合が0.2〜10質量部であることが、さらに理想的な速硬化性が得られるのでさらに好ましい。
【0041】
本発明のケチミン化合物とエポキシ樹脂との配合割合は、ケチミン化合物が加水分解して発生するアミン化合物の活性水素の当量と、エポキシ化合物のエポキシ基の当量とで決定すればよい。すなわち、ケチミン化合物が加水分解して発生するアミン化合物の活性水素の当量が、エポキシ基の当量に比べて、0.5〜2.0倍であることが好ましい。この配合割合より低い場合には、エポキシ樹脂が過剰となり、硬化物において満足な架橋が進まず、実用的な機械的強度が得られない。高い場合には、加水分解して発生するアミン化合物が過剰となり、この場合にも同様の理由で、実用的な機械的強度が得られない。この配合割合の中であれば、実用的な機械的強度が得られる架橋構造となるので好ましく、配合割合が0.8〜1.2倍であることが、理想的な架橋構造となり、接着剤組成物としてのさらに優れた機械的強度となるのでさらに好ましい。
【0042】
本発明の組成物は、前記化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの充填剤、エポキシシランやビニルシランなどのカップリング剤、可塑剤、チクソトロピー付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着付与剤、分散剤、溶剤などを配合してもよい。この場合、上記配合成分の水分の影響を可能な限り除去することが、貯蔵安定性に好結果を与える。
【0043】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、好ましくは窒素雰囲気下または減圧下で混合ミキサーなどの攪拌機を用いて充分混練させて組成物とするのがよい。一例を挙げれば、以下のとおりである。攪拌機、コンデンサー、加熱装置、減圧脱水装置、窒素気流装置を備えた密閉式加工釜を用い、釜中にエポキシ樹脂を仕込む。窒素気流装置を用い、窒素還流下で、所望により改質剤或いは添加剤を配合し均質混合する。この後、最終的にケチミン化合物を配合し、均質混合して、一液湿気硬化型接着剤組成物を得る。そして、窒素置換を施した密閉容器にこの一液湿気硬化型接着剤組成物を収納すれば、最終製品となる。なお、改質剤或いは添加剤に水分が含まれている場合には、貯蔵中に硬化しやすくなり貯蔵安定性が低下するので、改質剤或いは添加剤の水分を脱水除去しておくのが好ましい。水分の脱水は、改質剤或いは添加剤を配合する前に行ってもよいし、エポキシ樹脂にこれらを配合したあとに、加熱や減圧などの手段で脱水してもよい。
【0044】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0045】
(ケチミン化合物の合成)
(合成例1)
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学製、商品名1,3−BAC)142gと、3倍mol等量のジエチルケトン258g、およびトルエン200gをフラスコに入れ生成する水を共沸により除きながら、トルエンとジエチルケトンとが還流する温度(120〜150℃)で20時間反応を続けた。そして、過剰のジエチルケトンとトルエンを蒸留して取り除き、ケチミン化合物Aを得た。
【0046】
(合成例2)
カルボニル化合物にエチルブチルケトン342gを用いた以外は、合成例1と同様に行い、ケチミン化合物Bを得た。
【0047】
(合成例3)
アミン化合物にノルボルナンジアミン(三井化学製、商品名NBDA)154gを用いた以外は、合成例1と同様に行い、ケチミン化合物Cを得た。
【0048】
(合成例4)
カルボニル化合物にメチルイソブチルケトン300gを用いた以外は、合成例1と同様に行い、ケチミン化合物Dを得た。
【0049】
(合成例5)
安息香酸(東京化成製)12.2gとサッカリン(東京化成製)0.1gをクロロホルム100mLに溶解させ、そこにヘキサメチルジシラザン9.7gを攪拌しながら滴下した。滴下終了後、60℃に加熱し溶液が透明になるまで攪拌を続けた。そして、溶媒のクロロホルムを留去し、カルボン酸シリルエステル化合物Aを得た。
【0050】
(合成例6)
カルボン酸に2エチルヘキサン酸を14.4g用いた以外は合成例5と同様に行い、カルボン酸シリルエステル化合物Bを得た。
【0051】
(合成例7)
カルボン酸にマレイン酸を11.6g、ヘキサメチルジシラザンを19.3g用いた以外は合成例5と同様に行い、カルボン酸シリルエステル化合物Cを得た。
【0052】
(実施例1)
エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製、商品名エピコート828)100質量部、重質炭酸カルシウム(日東粉化製、商品名NS100)40質量部、表面処理炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製、商品名MS700)80質量部を、100℃で15トールおよび2時間の条件で減圧・加熱し、均一になるまで撹拌混合する。均一になれば室温まで冷却し、そこへエポキシ樹脂用硬化剤としてケチミン化合物A40質量部、ビニルシランカップリング剤(信越化学工業製、商品名KBM1003)5質量部、エポキシシランカップリング剤(信越化学工業製、商品名KBM403)2質量部、加水分解促進剤としてカルボン酸シリルエステルA2質量部を加え、減圧撹拌して一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0053】
(実施例2)
加水分解促進剤としてカルボン酸シリルエステルBを用いる以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0054】
(実施例3)
加水分解促進剤としてカルボン酸シリルエステルCを用いる以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0055】
(実施例4)
エポキシ樹脂用硬化剤としてケチミン化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0056】
(実施例5)
エポキシ樹脂用硬化剤としてケチミン化合物Cを用いる以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0057】
(実施例6)
加水分解促進剤としてカルボン酸シリルエステルAを0.5質量部用いる以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0058】
(比較例1)
エポキシ樹脂用硬化剤としてケチミン化合物Dを用いる以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0059】
(比較例2)
カルボン酸シリルエステルを除くこと以外は、実施例1と同様にして、一液湿気硬化型接着剤組成物を得た。
【0060】
実施例1〜6、比較例1および比較例2に係る接着剤組成物を用いて、以下の試験を行った。そして、その結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
(接着性)
JIS A6024(建築補修用注入エポキシ樹脂)における接着強さ試験の標準条件(23℃で7日の養生)に準拠して行った。接着剤組成物の速硬化性を評価するために、特に接着性の立ち上がりを、養生時が23℃で1日および23℃で2日、23℃で3日の各条件で、前記接着強さ試験を行った。単位は、N/mm2であり、そのときの破壊状態を示した。
【0063】
(安定性)
一液湿気硬化型接着剤組成物を、カートリッジに充填密封して、23℃で2ヶ月間放置した後、粘度の測定を行った。そして、安定性を配合直後の粘度と比較し、以下の3段階で評価した。粘度測定は、23℃で、BH型粘度計の10r/min.で行った。
○… (23℃で2ヶ月間放置後の粘度)/(配合直後の粘度)<2
△…2 ≦(23℃で2ヶ月間放置後の粘度)/(配合直後の粘度)<3
×…3 ≦(23℃で2ヶ月間放置後の粘度)/(配合直後の粘度)
【0064】
実施例1〜6、比較例1および比較例2を対比すれば明らかなとおり、実施例に係る一液湿気硬化型接着剤組成物は、比較例に係る一液湿気硬化型接着剤組成物に比べて、優れた速硬化性を示していることが分かる。
【0065】
実施例1〜6と比較例1および比較例2を対比すれば明らかなとおり、実施例に係る一液湿気硬化型接着剤組成物は、比較例に係る一液湿気硬化型接着剤組成物に比べて、同等の貯蔵安定性を持つことが分かる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性を損なうことなく、初期接着強さや機械的強度の立ち上がりを格段に速くするという、相反する性能を両立させた、常温硬化できる接着剤組成物として用いられる一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物である。従って、本発明に係る一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物は、これらを利用した接着剤、パテ材、塗料、コーティング材、ポッティング材などに有効に使用され得る。
Claims (4)
- 下記化学式(1)に示されるシリルエステル化合物および/または下記化学式(2)に示されるシリルエステル化合物と、下記化学式(3)で示されるカルボニル化合物と1級アミノ基を有するアミン化合物とを反応させて得られる下記化学式(4)に示されるケチミン化合物と、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物。
- 前記カルボニル化合物が、α位の炭素原子がメチレン構造であることを特徴とする請求項1に記載の一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物。
- 前記カルボニル化合物が、エチル基またはプロピル基から選ばれる、同一のまたは異なるアルキル基を有することを特徴とする請求項2に記載の一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物。
- 前記カルボニル化合物が、2個のエチル基を有する請求項3に記載の一液湿気硬化型エポキシ樹脂組成物。
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