JP3893420B2 - 平版印刷版の作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般軽印刷分野、とりわけオフセット印刷、特に簡易に印刷版を製作できる新規なオフセット印刷方法及び印刷版に関するものである。さらに具体的には、印刷用原版の反復再生使用を可能にするオフセット印刷方法とその印刷用原版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷法は、数多くの印刷方法の中でも印刷版の製作工程が簡単であるために、とくに一般的に用いられてきており、現在の主要な印刷手段となっている。この印刷技術は、油と水の不混和性に基づいており、画像領域には油性材料つまりインクが、非画像領域には湿し水が選択的に保持される。したがって印刷される面と直接あるいはブランケットと称する中間体を介して間接的に接触させると画像部のインクが転写されて印刷が行われる。
【0003】
オフセット印刷の主な方法は、アルミニウム基板を支持体としてその上にジアゾ感光層を塗設したPS板である。PS板においては、アルミニウム基板を支持体としてその表面を砂目立て、陽極酸化、その他の諸工程を施してインク受容能と非画像部のインク反発性を強め、耐刷力を向上させ、印刷面の精彩化を図るなどを行い、その表面に印刷用画像を形成させる。したがってオフセット印刷は、簡易性に加えて耐刷力や印刷面の高精彩性などの特性も備わってきている。
しかしながら、印刷物の普及に伴って、オフセット印刷法の一層の簡易化が要望され、数多くの簡易印刷方法が提案されている。
【0004】
その代表例がAgfa-Gevaert社から市販されたCopyrapid オフセット印刷版をはじめ、米国特許3511656号、特開平7−56351号などでも開示されている銀塩拡散転写法による印刷版作製に基づく印刷方法であって、この方法は、1工程で転写画像を作ることができて、かつその画像が親油性であるために、そのまま印刷版とすることができるので、簡易な印刷方法として実用されている。しかしながら、簡易とはいいながらこの方法もアルカリ現像液による拡散転写現像工程を必要としている。現像液による現像工程を必要としないさらに簡易な印刷方法が要望されている。
【0005】
画像露光を行ったのちのアルカリ現像液による現像工程を省略した簡易印刷版の製作方法の開発は上記の背景から行われてきた。現像工程を省略できることから無処理刷版とも呼ばれるこの簡易印刷版の技術分野では、これまでに主として▲1▼像様露光による画像記録面上の照射部の熱破壊による像形成、▲2▼像様露光による照射部の親油性化(ヒートモード硬化)による画像形成、▲3▼同じく照射部の親油性化であるが、光モード硬化によるもの、▲4▼ジアゾ化合物の光分解による表面性質の変化、▲5▼画像部のヒートモード溶融熱転写などの諸原理に基づく手段が提案されている。
【0006】
上記の簡易オフセット印刷方法として開示されている技術には、米国特許第3,506,779号、同第3,549,733号、同第3,574,657号、同第3,739,033号、同第3,832,948号、同第3,945,318号、同第3,962,513号、同第3,964,389号、同第4,034,183号、同第4,081,572号、同第4,693,958号、同第731,317号、同第5,238,778号、同第5,353,705号、同第5,385,092号、同第5,395,729号等の米国特許及び欧州特許第1068号などがある。
【0007】
これらは、製版に際して現像液を必要としないように考案されているが、親油性領域と親水性領域との差異が不十分であること、したがって印刷画像の画質が劣ること、解像力が劣り、先鋭度の優れた印刷画面が得にくいこと、画像面の機械的強度が不十分で傷がつきやすいこと、そのために保護膜を設けるなどによって却って簡易性が損なわれること、長時間の印刷に耐える耐久性が不十分なことなどのいずれか一つ以上の欠点を伴っていて、単にアルカリ現像工程を無くすだけでは実用性は伴わないことを示している。印刷上必要とされる諸特性を具備し、かつ簡易に印刷版を製作できる印刷版作成方法への強い要望は、いまだに満たされていない。
【0008】
上記した無処理型印刷版作成方法の一つにジルコニアセラミックが光照射によって親水性化することを利用した印刷版作製方法が特開平9−169098号で開示されている。しかし、ジルコニアの光感度は不十分であり、かつ疎水性から親水性への光変換効果が不十分のため画像部と非画像部の識別性が不足している。
【0009】
上記した現像液を必要としない簡易な印刷方法とともに、使用済みの印刷用原版を簡単に再生して再使用できる手段があれば、コストの低減と廃棄物の軽減の2面から有利である。印刷用原版の再生使用には、その再生操作の簡易性が実用価値を左右するが、再生操作の簡易化は難度の高い課題であり、従来殆ど検討されきておらず、わずかに上記の特開平9−169098号でジルコニアセラミックという特殊な原版用材料について開示されているに過ぎない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとしている第1の課題は、アルカリ性現像液を必要としない簡易性と実用レベルの十分の画質を有するオフセット印刷方法、具体的には、第1にアルカリ現像液を必要とせず、第2に優れた解像力を有し、第3に画像部と非画像部の識別性が高く、したがって優れた画質の印刷画面を作りうる印刷方法を提供することである。
本発明の第2の解決課題は、印刷画質を損なうことなく簡易性を具備した印刷方法という上記の課題に加えて、さらに印刷原版を反復して使用することもできる印刷方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者たちは、上記の目的を達成するために、鋭意検討の結果、酸化チタン及び酸化亜鉛が光照射によって表面の親水性が変化する現象と変化した親水性が熱処理によってもとに戻る性質を有することを認め、この現象を印刷方法の簡易化と印刷版の再利用化に応用して上記の課題を解決できることを見いだし、これに基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0012】
1.表面に酸化チタン又は酸化亜鉛を主成分とする薄層を有する印刷用原版に活性光による全面照射を行った後、ヒートモードの描画を行って印刷版を作成することを特徴とする平版印刷版の作成方法。
【0013】
2. 前記印刷用原板が、前記平版印刷版を印刷に使用した後に該印刷版面上に残存するインクを洗浄除去したものであることを特徴とする前記1記載の平版印刷版の作成方法。
【0014】
3.酸化チタンが主としてアナターゼ型の結晶からなることを特徴とする前記1又は2に記載の平版印刷版の作成方法。
【0015】
4.オフセット印刷機の版胴の印刷面側の表面に酸化チタン又は酸化亜鉛を主成分とする薄層を設けたことを特徴とする前記1〜3に記載の平版印刷版の作成方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、酸化チタン及び酸化亜鉛が活性光の照射を受けてその表面が親水性へと性質を変える特性を有することと、熱によってその変化した表面の性質がもとの性質に戻ることとを発見し、それらの現象をインクの受容性と反撥性の識別へ応用して、それをオフセット印刷用の印刷版の作製と、使用済みの印刷版の再生に応用する技術を確立したことを特徴点としている。
【0017】
蛇足ながら、本明細書で用いている用語について触れておくと、活性光とは、酸化チタン及び酸化亜鉛がその光を吸収して励起されて、その表面を親水性に変化させる光を指しており、その光源や波長などの詳細は後述する。また、前記1で用いた全面照射とは、印刷版の全面にわたって実質的に一様で局部的な不均一が実用上認められない照射を指している。ヒートモードとは、当業界で通常用いている意味で用いており、微細な発熱体素子を接触させて画像状に昇温させる方法以外にも、吸収した光が熱エネルギーに変換される結果、光化学的変化ではなく熱的な変化を利用する方式をもさしている。
【0018】
酸化チタンや酸化亜鉛が感光性を有することはよく知られており、とくに酸化亜鉛では、帯電あるいは電圧印加状態で光照射を行って静電画像を得ることができ、これが静電写真分野でエレクトロファックスとして実用された。しかしながら、活性光の照射によって表面の親水性/親油性の性質が変化するという特性は上記の光電的電荷生成とは関連なくあらたに見いだした現象であって、酸化チタン及び酸化亜鉛の感光性を電子写真分野への利用が研究された当時には気づかなかった現象である。
まして、この表面の性質変化をオフセット印刷法に応用するという着想は、新しい技術思想である。
【0019】
本発明の感光体としては、酸化チタン及び酸化亜鉛のいずれも利用できるが、特に酸化チタンが感度(つまり表面性の光変化特性)などの点で好ましい。酸化チタンは、イルメナイトやチタンスラグの硫酸加熱焼成、あるいは加熱塩素化後酸素酸化など既知の任意の方法で作られたものを使用できる。あるいは後述するように酸化チタンそのものあるいは金属チタンを用いて印刷版製作段階で真空蒸着、スパッタリング等の真空薄膜形成法によって酸化物皮膜とする方法も用いることができる。
【0020】
酸化チタン(又は酸化亜鉛)を含有する層を原版の表面に設けるには、たとえば、▲1▼酸化チタン微結晶(又は酸化亜鉛微結晶)の分散物を印刷版の原版上に塗設する方法、▲2▼塗設したのち焼成してバインダーを減量或いは除去する方法、▲3▼印刷版の原版上に酸化チタン(又は酸化亜鉛)を蒸着する方法、▲4▼例えばチタニウムブトキシドのようなチタン有機化合物を原版上に塗布したのち、焼成酸化を施して金属チタン層とする方法など、既知の任意の方法を用いることができる。本発明においては、真空蒸着による酸化チタン層が特に好ましい。
【0021】
上記▲1▼又は▲2▼の酸化チタン微結晶を塗設する方法には、酸化チタンと酸化シリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、酸化チタンとオルガノポリシロキサンまたはそのモノマ−との混合物を塗布する方法などがある。また、酸化物層の中に酸化物と共存するできるポリマーバインダーに分散して塗布することもできる。酸化物微粒子のバインダ−には、酸化チタン微粒子に対して分散性を有するポリマーを広く用いることができる。好ましいバインダーポリマーの例としては、ポリエチレンなどのポリアルキレンポリマー、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリスチレンなどの疎水性バインダーが好ましく、それらの樹脂を混合して使用してもよい。
【0022】
上記▲3▼の酸化チタンの真空蒸着を行うには、通常真空蒸着装置内に基板を入れてこれを50〜300°Cに加熱し、真空度が1x10-5Torr以上になるように排気したのち、酸素ガス圧1x10-2〜1x10-5Torrの条件下で酸化チタンを電子ビーム加熱して酸化チタン薄膜を形成させる。
【0023】
一方、本発明に酸化亜鉛層を使用する場合、その酸化亜鉛層は既知の任意の方法で作ることができる。とくに金属亜鉛板の表面を電解酸化して酸化皮膜を形成させる方法と、真空蒸着によって酸化亜鉛皮膜を形成させる方法が好ましい。
酸化亜鉛の蒸着膜は、上記の酸化チタンの蒸着と同様に酸化亜鉛そのものあるいは金属亜鉛を酸素ガス存在下で蒸着して酸化膜を形成させる方法や、酸素のない状態で亜鉛金属膜を形成させたのち、空気中で温度を約700°Cにあげて酸化させる方法を用いることができる。
【0024】
蒸着膜の厚みは、酸化チタン層、酸化亜鉛層いずれの場合も1〜100000オングストロ−ムがよく、好ましくは10〜10000オングストロ−ムである。さらに好ましくは3000オングストロ−ム以下として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を十分に発現させるには厚みが50オングストローム以上あることが好都合である。
【0025】
酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用できるが、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ましい。アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得る過程の焼成条件を選ぶことによって得られることはよく知られている。その場合に無定形の酸化チタンやルチル型酸化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶が40%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の理由から好ましい。
酸化チタンあるいは酸化亜鉛を主成分とする層における酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積率は、それぞれ30〜100%であり、好ましくは50%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸化物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。
しかしながら、光照射によって表面の親水性が変化する性質を増進させるためにある種の金属をドーピングすることは有効な場合があり、この目的にはイオン化傾向が小さい金属のドーピングが適しており、Pt,Pd,Au,Ag,Cu,Ni,Fe,Coをドーピングするのが好ましい。また、これらの好ましい金属を複数ドーピングしてもよい。
【0026】
一方、酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積率が低いと層の表面の親水性/親油性の特性変化の敏感度が低下する。したがって、層中の酸化物の体積率は、30%以上であることが望ましい。
【0027】
本発明に係わる印刷版は、いろいろの形態と材料を用いることができる。例えば、印刷機の版胴の表面に酸化チタン層を蒸着、浸漬あるいは塗布するなど上記した方法で直接酸化物層を設ける方法、金属板の表面に酸化チタン層を設けてそれを版胴に巻き付けて印刷版とする方法、その金属板としては、アルミニウム板、ステンレス鋼、ニッケル、銅板が好ましく、また可撓性(フレキシブル)な金属板を用いることが出来る。また、ポリエステル類やセルローズエステルなどのフレキシブルなプラスチック支持体も用いることが出来る。防水加工紙、ポリエチレン積層紙、含浸紙などの支持体上に酸化物層を設けてもよく、それを印刷版として使用してもよい。
【0028】
本発明において、酸化チタン(又は酸化亜鉛)の層を支持体上に設ける場合、使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0029】
好ましい支持体は、ポリエステルフィルム、アルミニウム、又は印刷版上で腐食しにくいSUS板であり、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられる支持体の厚みはおよそ0.05mm〜0.6mm程度、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0030】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0031】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0032】
酸化チタンあるいは酸化亜鉛の表面層を有する印刷原版は、本来親油性であり、インクを受容するが、全面光照射によって印刷原版の表面は、親水性となり、インクを受け付けなくなる。そのようにしてから、ヒートモードの描画例えば熱媒体の接触描画や熱エネルギーに変換しうる光による像様露光を行うとその描画部分が親油性に変化してインクを受容する性質を持つようになる。したがってこのようにして描画した印刷原版にオフセット印刷用インクに接触させて非画像領域が湿し水を保持し、画像領域がインクを受け入れた印刷面を形成させ、該印刷面を印刷される面と接触させてインクを転写することによって印刷が行われる。
【0033】
本発明の基本となっている「光の照射による親油性と親水性の間の変化」はきわめて顕著である。画像部と非画像部の親水性と親油性の差が大きいほど識別効果が顕著であり、印刷面が鮮明となり、同時に耐刷性も大きくなる。親水性と親油性の相違度は、水滴に対する接触角によって表すことができる。親水性が大きいほど水滴は広がりをみせて接触角が小さくなり、逆に水滴を反発する(はっ水性つまり親油性)場合は接触角が大きくなる。つまり、本発明の酸化亜鉛又は酸化チタン表面層を有する原版は、本来水に対して高い接触角を有しているが、活性光の照射を受けるとその接触角が急激に低下し、親油性のインクをはじく性質に変化するので、版面上に画像状にインク保持部と水保持部ができて紙などの受像シートと接触することによってその被印刷面にインクが転写される。
【0034】
本発明では、親油性画像形成に先立って活性光による全面露光を行って、印刷版面を均一に親水性にする。全面露光に使用する活性光について述べると、同時に全面を照射するいわゆる面露光方式又はスリット状の光の移動による全面露光方式であっても、あるいは光束のビームを全面にわたって走査させるスキャニング露光方式でもよい。後者の場合は、ビームの走査間隔が実質的に印刷に支障無い程度に小さければ一様の全面露光とみてよい。一般的に光源がレーザー光源であれば、ビームスキャニング露光方式が好都合であり、電球や放電管のようなインコヒーレントな発散型光源であれば面露光方式が好都合である。
酸化チタン又は酸化亜鉛を主成分とする薄層を励起させる活性光は、酸化チタン又は酸化亜鉛の感光域の光である。酸化チタンは、アナターゼ型が387nm以下,ルチル型が413nm以下、酸化亜鉛は387nm以下に感光域を有するので、水銀灯、タングステンハロゲンランプ、その他のメタルハライドランプ、キセノン灯、その他紫外線光を発する放電管などを用いることが出来る。また、励起光としては、発振波長を325nmに有するヘリウムカドミウムレーザーや発振波長を351.1〜363.8nmに有する水冷アルゴンレーザーも用いることができる。さらに近紫外レーザー発振が確認されている窒化ガリウムレーザー系では、発振波長を360〜440nmに有するInGaN系量子井戸半導体レーザー、及び360〜430nmに発振波長を有する導波路 MgO-LiNbO3 反転ドメイン波長変換デバイス型のレーザーも適用できる。
酸化亜鉛の場合は、既知の方法で分光増感を行ってもよいが、その場合も上記の光源を使用でき、さらに分光増感域に分光分布を有する上記以外の例えばタングステンランプを使用することもできる。
【0035】
照射光量に応じて、表面層の酸化チタン又は酸化亜鉛を光吸収励起によって親水性に変化して行き、表面層を構成する酸化チタン又は酸化亜鉛がすべて変化しおわるとそれ以上の光照射によってさらに親水性の程度が変化することはない。好ましい照射光量は、酸化チタン又は酸化亜鉛の画像形成層の性質によって異なり、又照射光量とともに接触角が減少するので画像/非画像の識別性目標レベルによっても変わる性格の紫外光であるが、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が酸化チタン、酸化亜鉛ともに0.05〜100joule /cm2 、好ましくは0.05〜10joule /cm2 、より好ましくは0.05から5joule /cm2 である。
また、光照射には相反則がほぼ成立しており、例えば10mW/cm2 で100秒の露光を行っても、1W/cm2 で1秒の露光を行っても、同じ効果が得られるので活性光を発光する限り光源の選択には制約はない。この照射光量は、レーザーによるスキャニング方式あるいはな発散型光源を用いる面露光方式でもとくに支障がないレベルの光量である。
【0036】
全面が均一に親水化された印刷版面に親油性の画像部分を形成するには、その印刷版面を画像様に加熱することによって行われる。画像様に加熱する手段としては、熱ヘッド、光から熱への変換ヘッド(光熱変換ヘッド)、熱線を画像マスクを通して照射する方法等がある。熱ヘッドによる画像様加熱では、微細な発熱体を接触させて画像様に加熱する方法が代表的である。画像様に露光する方法には、スキャニング方式、面露光方式のいずれでもよい。前者は、ビームによる画像様の書き込みであり、後者は熱線不透過性の画像マスクを通してフラッシュ露光又はスリット移動露光などである。前者の光源としてとくに好ましいのは、赤外線光源であり、赤外線レーザー光源からの光ビームを走査させるスキヤニング露光方式でもよい。後者の場合も、赤外線光源がよく、赤外線電球による面露光方式の画像焼き付けが好ましい。また、大容量コンデンサーに蓄えた電気を一度に放出させて高照度短時間フラッシュ露光によっても描画できる。
適切な露光量は、0.05〜10joule /cm2 、好ましくは0.05から5joule /cm2 である。
【0037】
本発明は、ヒートモードの記録において、描画工程を像様露光以外の発熱体との接触電熱描画によって行う場合の好ましい描画手段は、感熱記録方式のプリンターに用いられるサーマルヘッドによる印字、印画である。
【0038】
上記の疎水性から親水性への光による変化をもたらす感光性は、性質及び機構共に従来開示されているジルコニアセラミック(特開平9−169098)の感光性とは異なるものである。たとえば、感度については、ジルコニアセラミックに対しては7W/μm2 のレーザー光と記されており、レーザー光のパルス持続時間を100ナノ秒として70joule /cm2 であって酸化チタン層の感度より約1桁低い。機構的にも、十分解明されてはいないが、親油性有機付着物の光剥離反応と考えられており、ジルコニアの光変化機構とは異なっている。
【0039】
全面照射によって親水性化した酸化チタン又は酸化亜鉛の表面層への画像焼き付け用ヒートモード露光を行ったのち、印刷原版は現像処理することなく、そのままオフセット印刷工程に送ることができる。
従って通常の公知の平版印刷法に比較して簡易性を中心に多くの利点を有する。すなわち上記したようにアルカリ現像液による化学処理が不要であり、それに伴うワイピング、ブラッシングの操作も不要であり、さらに現像廃液の排出による環境負荷も伴わない。
【0040】
以上のようにして得られた平版印刷版の全面露光部は十分に親水性化しているが、所望により、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージー、あるいは、スキージーローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0041】
次に印刷を終えた印刷版の再生工程について記す。
印刷終了後の印刷版は疎水性の石油系溶剤を用いて付着しているインクを洗い落とす。溶剤としては市販の印刷用インキ溶解液として芳香族炭化水素、例えばケロシン、アイソパ−などがあり、それらを用いることができるほか、ベンゾール、トルオール、キシロール、アセトン、メチルエチルケトン及びそれらの混合溶剤を用いてもよい。
【0042】
インクを洗浄除去した印刷版は、高温に曝さないかぎり任意の場所に保管して次の印刷に備える。この使用済み印刷版は、前記した全面露光によって表面が親水性となって再びヒートモードの像様露光を繰り返して再度印刷に使用することができる。
【0043】
本発明に係わる印刷原版の反復再生可能回数は、完全に把握できていないが、少なくとも15回以上であり、おそらく版面の除去不能な汚れ、修復が実際的でない刷面の傷や、版材の機械的な変形(ひずみ)などによって制約されるものと思われる。
【0044】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0045】
実施例1
99.5重量%アルミニウムに、銅を0.01重量%、チタンを0.03重量%、鉄を0.3重量%、ケイ素を0.1重量%含有するJISA1050アルミニウム材の厚み0.30mm圧延板を、400メッシュのパミストン(共立窯業製)の20重量%水性懸濁液と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用いてその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。
これを15重量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム4.5重量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が5g/m2になるようにエッチングした後、流水で水洗した。更に、1重量%硝酸で中和し、次に0.7重量%硝酸水溶液(アルミニウム0.5重量%含有)中で、陽極時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形波交番波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5796号公報実施例に記載されている電流波形)を用いて160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。水洗後、35℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2になるようにエッチングした後、水洗した。次に、50℃、30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットした後、水洗した。
【0046】
さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用いて、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極酸化皮膜重量2.7g/m2とした。
この支持体を水洗後、70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間浸漬処理し、水洗乾燥した。
以上のようにして得られたアルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは0.58μmであった。
次いでこのアルミニウム支持体を蒸着装置内に入れて、200°Cに加熱し、1.0x10-6Torrまで排気したのち、酸素ガス圧1.5x10-4Torrの条件下で酸化チタンを電子ビーム加熱して、アルミニウム支持体上に酸化チタン薄膜を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によって無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が2.5/4.5/3であり、酸化チタン薄膜の厚さは750オングストロームであった。サイズを510×400mmにカットしてサンプルとした。
【0047】
この原版にウシオ電気社製USIO焼き付け用光源装置ユニレックURM−600形式GH−60201Xを用いて、光強度10mW/cm2のもとで2分間照射した。再び上記の接触角測定装置で測定したところ、水に対する(空中水滴)接触角は版面中のいずれの部分も5〜7度の間にあった。
Ta-SiO2 発熱抵抗体上にサイアロン耐磨耗保護層を設けた150μmx150μmのサーマルヘッドを250μm間隔に並べた感熱プリンターを用いて、酸化チタン表面層と接触させて昇温印字を行った。使用したサーマルヘッドは、20msec通電によって450°Cに達することを別途温度測定を行って確認した。記録速度は、400msec/mで行った。
【0048】
このようにして得た印刷版を、サクライ社製オリバー52片面印刷機にセットし、湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製New Champion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで非画像部に汚れのない鮮明な印刷物が得られ、印刷版の損傷もみとめられなかった。
【0049】
実施例2
次いで実施例1で使用した印刷版の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)をウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。
ついで実施例1と同じ条件でウシオ電気社製USIO焼き付け用光源装置ユニレックURM−600形式GH−60201Xを用いて、光強度10mW/cm2のもとで2分間全面露光を行った。表面の接触角は、試料表面のどの部分も5〜7度の間に戻っていた。
ついで、この試料の表面に実施例1と同条件下でサーマルヘッドによる異なる描画画像の印字を行った。
【0050】
この版を、サクライ社製オリバー52片面印刷機にセットし、湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて500枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、印刷版の損傷も認められなかった。
以上の繰り返しを5回行ったところ、版の光による表面性変化の感度、感熱記録の感度、接触角の反復再現性などに変化は見られなかった。
以上、実施例1と2の結果から、酸化チタン感熱層を圧延板支持体上に設けた印刷原版によって、ヒートモードの光描画によるのみでなくサーマルヘッドによる直接の電熱印字もできて、かつその版をインク洗浄除去のみによって再生反復使用できることが示された。
【0051】
実施例3
250ミクロンの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を蒸着装置内に入れて90°Cに加熱し、1.0x10-6Torrまで排気したのち、酸素ガス圧1.5x10-4Torrの条件下で酸化チタンを電子ビーム加熱して、ポリエチレンテレフタレート支持体上に酸化チタン薄膜を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によって無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が2/5/3であり、酸化チタン薄膜の厚さは2ミクロンであった。サイズを510×400mmにカットしてサンプルとした。
【0052】
協和界面科学株式会社製CONTACT-ANGLE METER CA-Dを用いて空中水滴法で試料の表面の接触角を測定したところ65度であった。この酸化チタン薄膜表面をウシオ電気社製USIO焼き付け用光源装置ユニレックURM−600形式GH−60201Xを用いて、光強度9mW/cm2のもとで2分間照射した。再び上記の接触角測定装置で測定したところ、接触角は5〜7度の間にあった。
【0053】
この試料に1.06ミクロンの波長の10ワットのYAGレーザー(ヤグ・レーザー)光をビーム幅25ミクロン(1/e2 値)に絞り、走査露光を行った。
このようにして赤外線のレーザー光で描画された版を、サクライ社製オリバー52片面印刷機にセットし、湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製New Champion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。レーザー露光部がインク受容部となってスタートから終了まで非画像部に汚れのない鮮明な印刷物が得られ、印刷版の損傷もみとめられなかった。
【0054】
実施例4
実施例3で印刷を終わった版の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)をウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。これを実施例1と同じ条件でウシオ電気社製USIO焼き付け用光源装置ユニレックURM−600形式GH−60201Xを用いて、光強度9mW/cm2のもとで2分間全面露光を行った。表面の接触角は、試料表面のどの部分も5〜7度の間にあった。
ついで、この試料の表面に実施例3の半導体レーザーを用いて同条件下で描画画像のみ異なるレーザー画像露光を行った。
【0055】
この版を、サクライ社製オリバー52片面印刷機にセットし、湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて500枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、印刷版の損傷も認められなかった。
以上の繰り返しを5回実施したところ、版の光感度、接触角および加熱による接触角の回復スピードなどの変化は認められなかった。
この結果から、酸化チタン感光層をポリエチレンテレフタレート支持体上に設けた印刷原版によって、簡易な印刷が可能でしかも印刷原版をインク洗浄除去することにより、反復再生使用できることが示された。
【0056】
実施例5
真空蒸着装置内に厚さ100ミクロンのステンレス(SUS)板上WOセットして、全圧1.5x10-4Torrの真空下で酸化亜鉛を1000オングストロームの厚みに蒸着した。これを空気中600°Cで2時間酸化処理してSUS板の片面に酸化亜鉛の薄膜を形成させた。この酸化亜鉛薄膜付き100ミクロンSUS板を510×400mmのサイズにカットしてサンプルとした。協和界面科学株式会社製CONTACT-ANGLE METER CA-Dを用いて空中水滴法で試料の表面の接触角を測定したところ51度であった。この酸化亜鉛薄膜表面にウシオ電気社製USIO焼き付け用光源装置ユニレックURM−600形式GH−60201Xを用いて、光強度20mW/cm2のもとで10分間露光を行った。再び上記の接触角測定装置で接触角を測定したところ、17度に低下していた。
Ta-SiO2 発熱抵抗体上にサイアロン耐磨耗保護層を設けた150μmx150μmのサーマルヘッドを250μm間隔に並べた感熱プリンターを用いて、酸化亜鉛薄膜と接触させて昇温印字を行った。使用したサーマルヘッドは、20msec通電によって450°Cに達することを別途温度測定を行って確認した。記録速度は、200msec/mで行った。
【0057】
このようにして得た印刷版を、サクライ社製オリバー52片面印刷機にセットし、湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製New Champion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで非画像部に汚れのない鮮明な印刷物が得られ、印刷版の損傷もみとめられなかった。
【0058】
実施例6
次いで実施例5で使用した印刷版の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)をウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。
ついで実施例5と同じ条件でウシオ電気社製USIO焼き付け用光源装置ユニレックURM−600形式GH−60201Xを用いて、光強度20mW/cm2のもとで10分間全面露光を行った。表面の接触角は、試料表面のどの部分も17〜20度の間に戻っていた。
ついで、この試料の表面に実施例5と同条件下でサーマルヘッドによる異なる画像の描画印字を行った。
【0059】
この版を、サクライ社製オリバー52片面印刷機にセットし、湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて200枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、印刷版の損傷も認められなかった。
以上の繰り返しを5回行ったところ、版の光による表面性変化の感度、感熱記録の感度、接触角の反復再現性などに変化は見られなかった。
以上、実施例5と6の結果から、酸化亜鉛感熱層(薄膜)を圧延板支持体上に設けた印刷原版によって、ヒートモードの光描画によるのみでなくサーマルヘッドによる直接の電熱印字もできて、かつその版をインク洗浄除去のみによって再生反復使用できることが示された。
【0060】
実験例1
酸化チタン層を有する実施例1の試料を用いて露光前後の接触角の変化及び露光により接触角が低下した試料に熱処理を加えたときの接触角の増加速度を協和界面科学株式会社製CONTACT-ANGLE METER CA-Dを用いて空中水滴法によって求めた測定値を表1に示す。
この表から、露光によって極めて顕著な疎水性から親水性への変化が起こること及びそれが130°Cでも2時間程度、200°Cでは数分でもとの疎水性表面に戻ることが示される。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
表面に酸化チタン又は酸化亜鉛を主成分とする薄層を有する本発明の印刷原板は、活性光による全面露光によって親水性となり、その面にヒートモードの描画を行うのみで印刷画面が形成され、現像液が不要で、かつ印刷面の鮮明性が保たれたオフセット印刷が可能となり、かつ使用した印刷原版のインクを洗浄除去することによって、反復使用することができる。
Claims (4)
- 表面に酸化チタン又は酸化亜鉛を主成分とする薄層を有する印刷用原版に活性光による全面照射を行った後、ヒートモードの描画を行って印刷版を作成することを特徴とする平版印刷版の作成方法。
- 前記印刷用原板が、前記平版印刷版を印刷に使用した後に該印刷版面上に残存するインクを洗浄除去したものであることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の作成方法。
- 酸化チタンが主としてアナターゼ型の結晶からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版の作成方法。
- オフセット印刷機の版胴の印刷面側の表面に酸化チタン又は酸化亜鉛を主成分とする薄層を設けたことを特徴とする請求項1〜3に記載の平版印刷版の作成方法。
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