JP2000289362A - 平版印刷用原板及び平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷用原板及び平版印刷方法

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JP2000289362A
JP2000289362A JP9783099A JP9783099A JP2000289362A JP 2000289362 A JP2000289362 A JP 2000289362A JP 9783099 A JP9783099 A JP 9783099A JP 9783099 A JP9783099 A JP 9783099A JP 2000289362 A JP2000289362 A JP 2000289362A
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JP9783099A
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Katsuyuki Teraoka
克行 寺岡
Hisashi Hotta
久 堀田
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Fuji Photo Film Co Ltd
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  • Manufacture Or Reproduction Of Printing Formes (AREA)
  • Printing Plates And Materials Therefor (AREA)
  • Photosensitive Polymer And Photoresist Processing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】アルカリ現像液を要しない簡易な製版方法で、
しかも画像部と非画像部の識別性が十分に維持されて優
れた画質の印刷版を作る平版印刷用原板及び印刷方法を
提供する。また、直接に印刷機に装着して製版すること
が可能な、耐刷性にすぐれ、印刷面上の印刷汚れも少な
い平版印刷版用原板を提供する。 【解決手段】Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo及びW
のうち、少なくともいずれか1つの金属を陽極酸化した
層を有する印刷用原板。また、その印刷用原板に、像様
の活性光(ヒートモード型)あるいはアブレーション型
のレーザー光の照射によって画像を記録し、照射面を印
刷用インキに接触させて、照射領域がインキを受け入れ
た印刷面を形成させて印刷を行う平版印刷方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般印刷分野、と
りわけ平版印刷、特に簡易に印刷版を製作できる新規な
平版印刷用原板およびその原板を用いる印刷方法に関す
るものである。とりわけ、レーザー光に基づいた走査露
光による画像記録も可能であり、且つ現像することなく
そのまま印刷機に装着し印刷することも可能な平版印刷
版用原板に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、平版印刷版は、印刷過程でイン
クを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性
の非画像部とからなる。このような平版印刷版用原板と
しては、従来から、親水性支持体上に親油性の感光性樹
脂層を設けたPS版が広く用いられている。その製版方
法として、通常は、リスフイルムなどの画像を通して露
光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除去する
方法であり、この方法により所望の印刷版を得ている。
【0003】従来のPS版に於ける製版行程は、露光の
後、非画像部を溶解除去する操作が必要であり、このよ
うな付加的な湿式の処理を不要化又は簡易化すること
が、従来技術に対して改善が望まれてきた一つの課題で
ある。特に近年は、地球環境への配慮から湿式処理に伴
って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事
となっているので、この面での改善の要請は一層強くな
っている。
【0004】この要望に応じた簡易な製版方法の一つと
して、印刷版用原板の非画像部の除去を通常の印刷過程
の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機
上で現像し最終的な印刷版を得る方法が提案されてい
る。このような方法による平版印刷版の製版方式は機上
現像方式と呼ばれる。具体的方法としては、例えば、湿
し水やインク溶剤に可溶な画像記録層の使用、印刷機中
の圧胴やブランケット胴との接触による力学的除去を行
う方法等が挙げられる。しかしながら、機上現像方式の
大きな問題は、印刷用原板は露光後も、画像記録層が定
着されないため、例えば、印刷機に装着するまでの間、
原板を完全に遮光状態又は恒温条件で保存する、といっ
た手間のかかる方法をとる必要があった。
【0005】一方、近年のこの分野のもう一つの動向と
しては、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処
理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及して
きており、このような、ディジタル化技術に対応した、
新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきて
いる。これに伴い、レーザ光のような高収斂性の輻射線
にディジタル化された画像情報を担持してこの光で原板
を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接印
刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注
目されている。それに伴ってこの目的に適応した印刷版
用原板を得ることが重要な技術課題となっている。した
がって、製版作業の簡素化、乾式化、無処理化は、上記
した環境面と、ディジタル化への適合化の両面から、従
来にも増して、強く望まれるようになっている。
【0006】この要請に対して、無処理型印刷版作成方
法の一つにジルコニアセラミックに活性光を照射して照
射部を親水性化することを利用した印刷版作製方法が特
開平9−169098号で開示されている。しかし、ジ
ルコニアの光感度は小さく、かつ疎水性から親水性への
光変換効果が不十分のため画像部と非画像部の識別性が
不足している。
【0007】さらに、酸化チタンも活性光の照射によっ
て表面が親水性になることが判り、この現象の簡易な印
刷原板へのに適用が提示された。一般的に酸化チタン皮
膜は、真空蒸着法、化学的蒸着法、スパッタリング法、
CVD法などの気相法、スピンコート法、ディッピング
法等の液相法、溶射法や固相反応を用いた固相法などの
皮膜生成方法が知られているが、従来から知られている
これらの方法で得た酸化チタン皮膜は、前記の各方法よ
りは優れた画像形成特性を示すものの、なお画像部と非
画像との識別性を更に向上させることが望まれた。
【0008】デジタル化技術に組み込みやすい走査露光
による印刷版の製造方法の別の一つとして、最近、半導
体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザで高出力のもの
が安価に入手できるようになってきたことから、特に、
これらのレーザを画像記録手段として用いる製版方法が
有望視されるようになっている。従来方式の製版方法で
は、感光性原板に低〜中照度の像様露光を与えて光化学
反応による原板面の像様の物性変化によって画像記録を
行っているが、高出力レーザを用いた高パワー密度の露
光を用いる方法では、露光領域に瞬間的な露光時間の間
に大量の光エネルギーを集中照射して、光エネルギーを
効率的に熱エネルギーに変換し、その熱により化学変
化、相変化、あるいは形態や構造の変化などの物理変化
を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。つまり、
画像情報はレーザー光などの光エネルギーによって入力
されるが、画像記録は熱エネルギーによる反応によって
記録される。通常、このような高パワー密度露光による
発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼び、光
エネルギーを熱エネルギーに変えることを光熱変換と呼
んでいる。
【0009】ヒートモード記録手段を用いる製版方法の
大きな長所は、室内照明のような通常の照度レベルの光
では感光せず、また高照度露光によって記録された画像
は定着が必須ではないことにある。つまり、画像記録に
ヒートモード感材を利用すると、露光前には、室内光に
対して安全であり、露光後にも画像の定着は必須ではな
い。従って、例えば、ヒートモード露光により不溶化若
しくは可溶化する画像記録層を用い、露光した画像記録
層を像様に除去して印刷版とする製版工程を機上現像方
式で行えば、現像(非画像部の除去)は、画像露光後あ
る時間、たとえ室内の環境光に暴露されても、画像が影
響を受けないような印刷システムが可能となる。従って
ヒートモード記録を利用すれば、機上現像方式に望まし
い平版印刷版用原板を得ることも可能となると期待され
る。
【0010】ヒートモード記録に基づく平版印刷版の好
ましい製造法の一つとして、親水性の基板上に疎水性の
画像記録層を設け、画像状にヒートモード露光し、疎水
性層の溶解性・分散性を変化させ、必要に応じ、湿式現
像により非画像部を除去する方法が提案されている。こ
のような原板の例として、例えば、特公昭46ー279
19号には、親水性支持体上に、熱により溶解性が向上
するいわゆるポジ作用を示す記録層、具体的には糖類や
メラミンホルムアルデヒド樹脂等の特定の組成を有する
記録層を設けた原板をヒートモード記録することによっ
て、印刷版を得る方法が開示されている。
【0011】しかしながら、開示された記録層はいずれ
も感熱性が十分でないため、ヒートモード走査露光に対
しては、感度がはなはだ不十分であった。また、露光前
後の疎水性/親水性のディスクリミネーション、即ち、
溶解性の変化が小さいことも、実用上問題であった。デ
ィスクリミネーションが乏しければ、機上現像方式の製
版を行うことは実質的に困難である。
【0012】また、従来のヒートモードのポジ方式の印
刷原板には別の大きな問題として非画像部における残膜
と呼ばれる欠陥を伴うものがある。即ち、ヒートモード
ポジ型原板においては、ヒートモード露光時の熱の発生
は記録層中の光吸収物質の光吸収に基くものであるた
め、熱の発生量は記録層表面で大きく、支持体近傍では
小さいことが多い。このため、記録層の支持体近傍での
露光による溶解性変化が少なく、親水化の程度が減少し
てしまうことである。その結果、本来、親水性表面を提
供すべき露光部において、しばしば、疎水性の膜が除去
されきれずに残膜となることがある。このような、残膜
は、印刷物に印刷汚れを引き起こすのでその点の改良が
必要である。
【0013】前記した活性光の照射による画像記録及び
ヒートモードの画像記録を利用する製版・印刷方法は、
いずれも版下からフィルムを介することなく直接に刷版
を作ることができ、したがって機上で製版することも可
能であり、現像操作を省くこともできるなどの利点を持
ちながら、上記した感度の不足や、画像記録層の表面と
底部での感度の相違などの弱点を有している。これらの
弱点は基本的には画像部と非画像部との識別性の不足に
起因して生じる欠陥であり、また印刷品質や耐刷性に直
結する欠陥でもある。したがって活性光の照射、ヒート
モードの光照射のいずれの画像記録を利用する製版・印
刷方法も、印刷品質と耐刷性の両面を向上させるための
基本的な方策は、識別性を向上させることに尽きるとも
いえるのが、現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
している課題は、アルカリ現像液を要しない簡易な製版
方法で、しかも画像部と非画像部の識別性が十分に維持
されて優れた画質の印刷版を作りうる平版印刷用原板及
び印刷方法を提供することである。本発明のさらなる目
的は、レーザー露光を用いる製版方式の前記した欠陥を
解決することであり、すなわち、短時間での走査露光の
のちに現像処理を行うことなく直接に印刷機に装着して
製版することが可能であり、耐刷性にすぐれ、印刷面上
の印刷汚れも少ない平版印刷版用原板を提供することに
ある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達成するために、画像と非画像部との識別作用が大き
く、かつ着肉性や耐刷性などの印刷版としての必要特性
も具備した材料の探索を行ったが、その過程で遷移金属
の中には、同種の金属酸化物であっても、その製造方法
によって上記の識別作用などの印刷版としての特性が異
なるものがあることが判った。この点に着目してさらに
追求した結果、遷移金属の中には電解酸化によって目的
を満たす性質を発揮するものがあることを発見し、それ
に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発
明は、下記の通りである。
【0016】1.Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo及
びWのうち、少なくとも1つの金属を陽極酸化した層を
有することを特徴とする印刷用原板。
【0017】2.印刷される画像がレーザー光を像様に
照射して、照射部の陽極酸化皮膜の一部又は全部を熱飛
散・除去することにより記録した画像であることを特徴
とする上記1に記載の印刷用原板。
【0018】3.表面が粗面化されていることを特徴と
する上記1又は2に記載の印刷用原板。
【0019】4.Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo及
びWのうち、少なくとも1つの金属を陽極酸化した層を
有する印刷用原板に、像様の光の照射によって画像を記
録し、照射面を印刷用インキに接触させて、照射領域が
インキを受け入れた印刷面を形成させて印刷を行うこと
を特徴とする平版印刷方法。
【0020】5.像様の光の照射による画像の記録が,
レーザー光を像様に照射して、照射部の陽極酸化皮膜の
一部又は全部を熱飛散・除去することにより行われるこ
とを特徴とする上記4に記載の平版印刷方法。
【0021】本発明は、Zr、Hf、V、Nb、Ta、
Mo及びWを陽極酸化して得た皮膜層が活性光の照射を
受けてその表面が親水性から親油性になる性質、又は陽
極酸化処理条件によっては、活性光の照射を受けてその
表面が親油性から親水性になる性質を有することを発見
したことに基づいており、それら2つの特性をインキの
受容性と反撥性の識別へ応用して、それを平版印刷用の
印刷版の作製に応用する技術を確立したものである。こ
の表面の光による物性変換特性は、上記金属の陽極酸化
皮膜において顕著に発現されるもので、それぞれの金属
酸化物(電解酸化によらない酸化物)そのものから作ら
れた皮膜より優れている。この特性を利用して、本来は
印刷インキを受け付けない親水性の表面である陽極酸化
した上記金属表面に像様の活性光を照射すると、光の照
射を受けた部分の表面が親油性から親水性に変化して印
刷インキを受け付けるようになるので、そのまま印刷に
かけられる印刷版ができ上がり、現像処理などの操作を
行う必要がない。一方、上記の遷移金属は、陽極酸化条
件によっては、活性光の照射を受けた部分の表面が親油
性から親水性に変化して印刷インキを受け付けなくなる
ので、そのまま印刷にかけられる印刷版ができ上がり、
現像処理などの操作を行う必要がない。つまり、上記金
属の陽極酸化した皮膜層は、無処理印刷用原板として使
用できる。
【0022】以下の記述において、上記のZr、Hf、
V、Nb、Ta、Mo及びWを一まとめに呼ぶとき、
「本発明にかかわる遷移金属」と呼ぶ。また、前記した
表面の親油性又は親水性を変化させる「活性光」は、高
照度の可視光線や赤外光線、好ましくは赤外光線であっ
て、この光の照射による表面物性の変化はおそらくヒー
トモードの機構によるものと考られる。この点でいわゆ
る光触媒能を有する金属酸化物の表面を励起して親水性
化させる活性光とは区別する必要がある。後者は、照射
した光が光化学的に表面電子を活性化すると解釈されて
おり、ヒートモードの作用ではない。また、後者の活性
光として作用する光は、紫外線や比較的短波長の可視光
線であって、本発明で好ましく用いられる好ましくは長
波長の可視光線や赤外光線とは異なる。本発明では、こ
のヒートモードで作用する光線を「活性光」と呼ぶ。
【0023】本発明にかかわる遷移金属が陽極酸化され
ることは一般的に知られていることであるが、陽極酸化
して得られる遷移金属の酸化皮膜が、活性光の照射によ
って表面の親水性・親油性の性質が変化するという特性
はあらたに見いだした現象であって、この表面の性質変
化を平版印刷法に応用するという着想は、新しい技術思
想である。また、本発明に関わる遷移金属を陽極酸化し
て得られる皮膜は、レーザー光による光熱変換の感度が
高く、いわゆるアブレーションと呼ばれる照射部の皮膜
の飛散・除去を容易に引き起こす。陽極酸化皮膜が飛散
して基板の金属が露出した部分は、皮膜の部分よりも親
油性であり、照射を受けた部分がインキを受け入れる親
油性領域となる。しかも、本発明にかかわる遷移金属表
面を陽極酸化して得られる皮膜に見いだされた親水性と
親油性の間の特性変化は、前記した従来知られているジ
ルコニアセラミックに比べると、はるかに大きいもので
あり、また、アルミニウム支持体上に設けた光熱変換性
の画像記録層にこれらの遷移金属元素を含有させた場合
と比較しても、その親水性、親油性の間の極性変化は、
大きいことが認められた。すなわち、親水性領域と親油
性領域の識別性の高い画像形成が可能である。
【0024】また、本来親水性の陽極酸化皮膜表面を、
より親水性化することが望ましい場合には、陽極酸化皮
膜表面に親水性物質を塗布することもできる。陽極酸化
皮膜表面に親水性物質を塗布する方法については、陽極
酸化皮膜表面よりも親水性の高い表面が得られる塗布液
であれば使用できる。その態様のさらに詳細は、のちに
説明する。
【0025】
〔本発明にかかわる遷移金属の陽極酸化皮膜〕
(本発明にかかわる遷移金属板)本発明にかかわる遷移
金属とは、前記のようにV、Zr、Nb、Mo、Hf、
Ta及びWであり、表面を陽極酸化して平版印刷原板と
するこの遷移金属板の材料は、それぞれの通常得られる
品位の金属板でよく、例えば市販の99.5〜99.9
%の純度の金属を使用することができる。表面の親水性
/親油性変化特性は、純度による著しい影響はないの
で、上記の純度のものをさらに高純度化する必要はな
い。不純物は、多くの場合、アルミニウム、銅、鉄、炭
素、窒素、酸素などであるが、通常レベルの純度では、
とくに問題はない。また、該遷移金属は、機械的性質や
耐蝕性を改良するために、4〜5%程度のアルミニウ
ム、パナジウム、マンガン、鉄、クロム、モリブデンな
どを含んだ合金にして用いられることも多いが、このよ
うな合金も本発明に使用できる。
【0026】一方、後に述べるように該遷移金属の薄層
を他の適当な支持体上に真空蒸着、スパッタリング、電
気メッキなどの公知の方法で設けた金属膜(板)を用い
てもよい。蒸着金属膜(板)の厚みは、0.01〜10
0μmがよく、好ましくは0.05〜10μmである。
さらに好ましくは0.30μm以下として光干渉の歪み
を防ぐのがよい。また活性光の表面物性変換作用を充分
に発現させるには厚みが0.01μm以上あることが好
都合である。
【0027】(陽極酸化の方法)本発明にかかわる遷移
金属板の表面の陽極酸化処理は、次に示す電解質水溶液
の中で行われる。 (1)硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸から選
択された1つ以上を含む水溶液。 (2)上記無機酸の他にさらに過酸化水素を含む混合水
溶液。 (3)上記(1)の無機酸の他に、さらにそのアルカリ
金属塩及びアルカリ土類金属塩の一つ以上を含む混合水
溶液。 (4)上記(1)の無機酸のアンモニウム塩を一つ以上
含む水溶液または、エチレングリコールと水の混合液を
溶媒とした溶液。 (5)シュウ酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、乳酸、琥珀
酸、グルタミン酸、スルホサリチル酸、ナフタレンジス
ルホン酸などの有機酸から選択された一つ以上を含む水
溶液。 (6)上記有機酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金
属塩の一つ以上を含む水溶液。 (7)上記(5)の有機酸のアンモニウム塩を一つ以上
含む水溶液または、エチレングリコールと水の混合液を
溶媒とした溶液。 (8)Na、K、Ca、Li、Mgの水酸化物、水溶性
の炭素塩、水酸化アンモニウムなどのアルカリ水溶液か
ら選択された一つ以上を含む水溶液。 (9)グリセロリン酸、そのアルカリ金属塩及びアルカ
リ土類金属塩の少なくとも一つを含んで、さらに好まし
くは酢酸、そのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩
の少なくとも一つを含む水溶液。 (10)以上の(1)〜(9)の溶液成分を組み合わせ
て含む水溶液。
【0028】上記の電解質水溶液の濃度は、電解質の種
類によって適宜決められ、また、陽極酸化の処理条件
は、選択した電解質水溶液に依存して種々の条件が選ば
れるが、一般的には電解質の濃度が0.001〜3mol/
L好ましくは0.005〜1mol/L、液温は5〜70℃、
好ましくは、20〜50℃、電流密度1〜60A/dm2
好ましくは2〜10A/dm2、電圧1〜500V好ましく
は100〜400V、電解時間10秒〜10分好ましく
は1〜5分の範囲にあれば適当である。個々の代表的な
電解質水溶液の適切な陽極酸化条件は、実施例に示す。
陽極酸化皮膜の厚みは、0.001〜10ミクロン程
度、好ましくは0.1〜5.0ミクロン、特に好ましく
は0.3〜1.0ミクロンである。
【0029】また、光照射によって表面の親水性が変化
する性質を増進させるために、陽極酸化した表面にある
種の金属をドーピングすることは有効な場合があり、こ
の目的にはイオン化傾向が小さい金属のドーピングが適
しており、Pt,Pd,Au,Ag,Cu,Ni,F
e,Coをドーピングするのが好ましい。また、これら
の好ましい金属を複数ドーピングしてもよい。
【0030】(本発明に係わる遷移金属板の陽極酸化前
処理)本発明に係わる遷移金属板は、金属板の単一構成
のもの及び支持体で補強されたものを含めて、陽極酸化
に先立って表面の粗面化処理を施してもよい。粗面化に
よって表面を親水性にしたときの保水性を高めることが
でき、したがって画像と非画像部の識別性を向上させる
ことができる。粗面化処理を施す場合には、必要によ
り、粗面化処理に先立って表面の圧延油を除去するため
の例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液
などによる脱脂処理が行われる。
【0031】金属板(薄層)の表面の粗面化処理は、種
々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化す
る方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および
化学的に表面を選択溶解させる方法のいずれか又はそれ
らの組み合わせによって行われる。機械的方法として
は、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バ
フ研磨法などの公知の方法を用いることができる。ま
た、電気化学的な粗面化法もアルミニウム金属表面の粗
面化の方法として公知の方法、たとえば塩酸または硝酸
電解液中で交流または直流により行う方法を遷移金属表
面の粗面化に適用することができる。また、特開昭54
−63902号に開示されているように両者を組み合わ
せた方法も利用することができる。また、化学的な粗面
化処理は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナ
トリウム、ピロリン酸ナトリウムなどから選ばれるアル
カリ性の塩類混合水溶液へ浸漬して金属表面をエッチン
グして行われる。このようにして粗面化された金属板に
前記した陽極酸化処理が施される。しかし、金属板表面
の粗面化は本発明には必須ではない。
【0032】〔支持体〕本発明に係わる印刷原板は、支
持体に関していろいろの形態で用いることができる。特
に好ましいのは、金属板そのものを支持体にしてその表
面を陽極酸化した金属板の単一構成の形態である。その
場合の金属板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、
好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.
2mm〜0.3mmである。
【0033】また、金属に支持体を兼ねさせないで、金
属は、薄板(薄層)にしてそれを強度の面で補強できる
低コストの金属板、あるいは可撓性の大きい(フレキシ
ブルな)金属板、の表面に金属板を設けてその表面を陽
極酸化してもよい。強度があって低コストの、あるいは
可撓性の大きい、好ましい金属板は、例えばアルミニウ
ム、ステンレス鋼、ニッケル、銅などの金属板である。
これらの支持体金属板と本発明にかかわる遷移金属板と
は、張り合わせてもよく、また支持体金属板上に遷移金
属を薄層上に真空蒸着してもよいが、前者の方が経済的
であり、かつ簡単である。
【0034】そのほか、化学的に安定であって可撓性も
十分なポリエステル類やセルローズエステルなどのプラ
スチック支持体の上に遷移金属薄層を設けることもでき
る。また、防水加工紙、ポリエチレン積層紙、含浸紙な
どの支持体上に遷移金属層を設けてもよい。
【0035】好ましく使用されるプラスチック及び紙支
持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン
又はポリスチレンがラミネートされた紙、二酢酸セルロ
ース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪
酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチ
レン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニル
アセタール等のプラスチックフィルム、アルミニウムが
ラミネート又は蒸着された紙、もしくはプラスチックフ
ィルム等が挙げられる。
【0036】上記の中でも好ましい支持体は、ポリエス
テルフィルム、アルミニウム、又は印刷版上で腐食しに
くいSUS板であり、その中でも寸法安定性がよく、比
較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適な
アルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウ
ムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更
にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラス
チックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる
異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウ
ム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどが
ある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下で
ある。本発明において特に好適なアルミニウムは、純ア
ルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬
技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有する
ものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニ
ウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来よ
り公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用するこ
とができる。
【0037】金属板を陽極酸化された本発明にかかわる
遷移金属板の支持体に用いる場合は、その金属支持体は
公知の方法によって粗面化されていてもよい。粗面化
は、機械的な手段、電気化学的な手段又は化学的エッチ
ング手段のいずれでもよく、またそれらを組み合わせて
行ってもよい。粗面化によってその上に設けられた陽極
酸化された遷移金属皮膜の保水性が向上する場合もあ
る。粗面化された好ましい金属支持体はアルミニウム支
持体である。
【0038】遷移金属板とは別に金属支持体を設ける場
合、用いられる支持体の厚みはおよそ0.06mm〜0.
6mm程度、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好まし
くは0.1mm〜0.3mmであり、遷移金属の薄層の厚み
は、0.001mm〜0.1mm程度、好ましくは0.00
5mm〜0.05mm、特に好ましくは0.01mm〜0.0
5mmである。
【0039】(表面の親水性化処理)印刷用原板への画
像記録をレーザー光照射による皮膜の除去すなわちいわ
ゆるアブレーションによって行う場合は、陽極酸化皮膜
層の表面に整面液などの表面塗布によって表面の一層の
親水性化を図ることが好ましい。好ましい塗布液は、一
般に平版印刷版を製版する際、版面を保護するために、
版面保護剤(いわゆる、ガム液)を含んだ整面液を塗布
する「ガム引き」といわれる工程が行なわれるが、この
整面液を使用することが好ましい。整面液を、平版印刷
版の親水性表面が空気中の微量混入成分の影響を受けて
親水性が低下するのを防ぐため、平版印刷版を取り扱う
時に指の油、インキなどが付着して非画像がインキ受容
性となって、汚れるのを防止するため、更に、平版印刷
版を取り扱う時に傷が発生することを防止するため、な
どの種々の目的をもって行われ、本発明の表面処理にも
好都合である。
【0040】整面液には、水溶性樹脂、例えばアラビア
ガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロ
ーズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ
等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘
導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及び
その共重合体、アクリル酸共重合体、ビニルメチルエー
テル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレ
イン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、
焙焼デキストリン、酸素分解デキストリン、酵素分解エ
ーテル化デキストリン等を添加されている。整面液中の
保護剤中の上記水溶性樹脂の含有量は、3〜25重量%
が適当であり、好ましい範囲は10〜25重量%であ
る。なお、本発明においては上記水溶性樹脂を2種以上
混合使用しても良い。
【0041】平版印刷版用版面保護剤には、そのほかに
種々の界面活性剤を添加してもよい。使用できる界面活
性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性
剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては脂肪族ア
ルコール硫酸エステル塩類、脂酒石酸、リンゴ酸、乳
酸、レプリン酸、有機スルホン酸などがあり、鉱酸とし
ては硝酸、硫酸、燐酸等が有用である。鉱酸、有機酸又
は無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上併用して
もよい。
【0042】上記成分の他必要により湿潤剤としてグリ
セリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール
等の低級多価アルコールも使用することができる。これ
ら湿潤剤の使用量は保護剤中に0.1〜5.0重量%が
適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0重量%であ
る。以上の他に本発明の平版印刷版用版面保護剤には、
防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及
びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸
ナトリウム等を0.005〜2.0重量%の範囲で添加
できる。
【0043】版面保護剤には消泡剤を添加することもで
きる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含ま
れ、その添加量は0.0001〜0.1重量%の範囲が
好ましい。
【0044】本発明において陽極酸化表面を親水性化処
理するには、上記した整面液を用いてもよく、またその
成分から適宜選択して処理液を調製してもよい。
【0045】〔製版〕陽極酸化した遷移金属板の印刷原
板の表面は、基本的には親水性であり、インキを受けつ
けないが、活性光による画像露光を行うと、光の照射を
受けた部分は、親油性となり、インキを受容するように
なる。また、陽極酸化処理条件によっては、陽極酸化し
た遷移金属板の印刷原板の表面は親油性であり、インキ
を受けつけるが、活性光による画像露光を行うと、光の
照射を受けた部分は親水性となり、インキを受けつけな
いようになる。したがって、いずれの場合であっても、
画像露光の際の像様光のネガ・ポジ関係を選択して画像
露光を行った印刷原版に平版印刷用インキに接触させて
非画像領域が湿し水を保持し、画像領域がインキを受け
入れた印刷面を形成させ、該印刷面を印刷される面と接
触させてインキを転写することによって印刷が行われ
る。
【0046】本発明の基本となっている「光の照射によ
る親油性と親水性の間の変化」は、本発明にかかわる遷
移金属の陽極酸化された皮膜ではきわめて大きく現れ
る。画像部と非画像部の親水性と親油性の差が大きいほ
ど識別効果が顕著であり、印刷面が鮮明となり、同時に
耐刷性も大きくなる。親水性と親油性の相違度は、水滴
に対する接触角によって表すことができる。親水性が大
きいほど水滴は広がりをみせて接触角が小さくなり、逆
に水滴を反発する(はっ水性つまり親油性)場合は接触
角が大きくなる。つまり、本発明の陽極酸化された遷移
金属皮膜を有する原版は、水に対して低い接触角を有し
ているが、活性光の照射を受けるとその接触角が大きく
なり、親油性のインキに馴染む性質に変化する。また、
陽極酸化処理条件によっては、陽極酸化した遷移金属皮
膜を有する原板は、水に対して高い接触角を有している
が、活性光の照射を受けるとその接触角が大きく低下
し、親油性のインキをはじく性質に変化するので、いず
れの場合も版面上に画像状にインキ保持部と水保持部が
できる。
【0047】前記した陽極酸化した遷移金属皮膜が親油
性で、水に対して高い接触角を有しているが、活性光の
照射を受けるとその接触角が大きく低下し、親水性とな
るような陽極酸化処理条件は、現在のところその発現に
ついて系統的な法則は見いだしてなく、経験的にこれに
該当する場合を見いだしている段階である。例えば、エ
チレングリコールのような水溶性の有機化合物の存在の
もとで陽極酸化する場合にこのような陽極酸化皮膜が比
較的親油性で光照射によって親水性化する例が認められ
る。
【0048】(活性光の照射)本発明において陽極酸化
された金属皮膜を励起させる活性光は、この皮膜の感光
域の光であればいずれの光源からの光でもよい。好まし
い光源は、水銀灯、タングステンハロゲンランプ、その
他のメタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアー
ク灯などを用いることが出来る。また、励起光の発振波
長を325nmに有するヘリウムカドミウムレーザーや
発振波長を351.1〜363.8nmに有する水冷ア
ルゴンレーザーも用いることができる。さらに近紫外レ
ーザー発振が確認されている発振波長を330nmに有
する硫化亜鉛レーザー、370nmに有する硫化亜鉛レ
ーザー、330〜440nmに有する硫化亜鉛/カドミ
ウムレーザーも適用できる。そのほか、GaAs,Ga
P,PbS,PbSeなどの半導体レーザー、ArF,
KrF,XeCl,XeFなどのエキシマレーザー、ヘ
リウムネオンレーザー及びYAGレーザーを用いること
ができる。
【0049】好ましい照射露光量は、光の波長や照度に
よっても異なるが、通常は、印刷される画像で変調する
前の面露光量として0.05〜100joule /cm2
好ましくは0.2〜10joule /cm2 、より好ましく
は0.5から5joule /cm 2 である。
【0050】(アブレーションによる記録)レーザー光
によるいわゆるアブレーションによって画像記録を行う
場合には、赤外線成分を多く含むレーザー光源を使用し
て、レーザービームを画像で変調して原板上を走査する
方式が行わうのが好ましいが、可視光レーザーであって
も吸光物質が効率よく吸収する輻射であれば、光熱変換
は行われる。レーザー光源の例として、半導体レーザ
ー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレー
ザー、YAGレーザーを挙げることができる。レーザー
出力が0.1〜300Wのレーザーで照射をすることが
できる。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピー
ク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザー
を照射するのが好ましい。この場合の露光量は、印刷用
画像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm2
範囲であることが好ましく、0.3〜1J/cm2 の範囲で
あることがより好ましい。
【0051】また、1064nmの波長を有するNd:
YAGレーザーを用いることもできる。とりわけ、Qス
イッチを装備し、パルス発振によってクリプトンマーク
ランプで工学的にポンピングされるNd:YAGレーザ
ーが好ましい。陽極酸化された繊維金属皮膜に画像を形
成させる場合、ピーク出力が1000〜8000W,好
ましくは1500〜4000W、平均出力0.1〜20
W,パルスレート1.0〜50kHz、パルス持続時間
0.1〜0.2μsのレーザー光を照射するのが好まし
い。この場合の露光量は、印刷用画像で変調される前の
面露光量として0.05〜100joule /cm2 、好ま
しくは0.2〜10joule /cm2 、より好ましくは
0.5から5joule /cm2 である。
【0052】上記の感光性は、性質及び機構共に従来開
示されているジルコニアセラミック(特開平9−169
098号公報)の感光性とは異なるものである。たとえ
ば、感度については、ジルコニアセラミックに対しては
7W/μm2 のレーザー光と記されており、レーザー光
のパルス持続時間を100ナノ秒として70joule /c
2 であって陽極酸化した本発明にかかわる遷移金属皮
膜の感度より1桁以上低い。
【0053】(印刷工程)陽極酸化した遷移金属皮膜の
表面への画像焼き付け露光を行ったのち、印刷原版は現
像処理することなく、そのまま平版印刷工程に送ること
ができる。従って通常の公知の平版印刷法に比較して簡
易性を中心に多くの利点を有する。すなわち上記したよ
うにアルカリ現像液による化学処理が不要であり、それ
に伴うワイピング、ブラッシングの操作も不要であり、
さらに現像廃液の排出による環境負荷も伴わない。
【0054】以上のようにして得られた平版印刷版の露
光部は十分に親水性化しているが、所望により、水洗
水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや
澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の
画像記録材料を印刷用版材として使用する場合の後処理
としては、これらの処理を種々組み合わせて用いること
ができる。
【0055】その方法としては、該整面液を浸み込ませ
たスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、
整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する
方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。ま
た、塗布した後でスキージー、あるいは、スキージーロ
ーラーで、その塗布量を均一にすることは、より好まし
い結果を与える。整面液の塗布量は一般に0.03〜
0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。この様な処理に
よって得られた平版印刷版は平版印刷機等にかけられ、
多数枚の印刷に用いられる。
【0056】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに説明する
が、本発明は以下に限定されるものではない。 〔実施例1〜19及び比較例1〜3〕実施例1〜19及
び比較例1〜3においては、市販の本発明に係わる遷移
金属板(厚み0.2mm)を使用して陽極酸化条件を変
えて本発明の陽極酸化した金属印刷原板の特性を測定し
た結果を示す。
【0057】表1に実施例1〜19に示す電解質、電解
質濃度、電解質温度、電流密度、電圧及び電解時間の条
件下で陽極酸化処理を行い、本発明にかかわる移金属板
の表面に陽極酸化皮膜を形成させた。また比較例1は、
アルミニウム支持体(厚み0.2mm)を表に示す電解
質、電解質濃度、電解質温度、電流密度、電圧及び電解
時間の条件下で陽極酸化処理を行い、表面に陽極酸化皮
膜を形成させた。
【0058】次いで、実施例及び、比較例の各試料にN
b:YAGレーザー光を照射し、アブレーションを行っ
た。このNd:YAGレーザーはQ−スイッチを装備
し、クリプトアークランプで光学的にポンピングする方
式のもので、そのスポットサイズつまりビーム径は、約
340μmであった。また、ベタ画像ができるように走
査速度を50mm/sec.に設定した。具体的なレー
ザー照射条件を下記に示す。 レーザービームモード シングルモード(TEM00) ピーク出力 2000W 平均出力 1.5W パルスレート 2.0kHz パルス持続時間 0.12μsec. スポット径 340μm 走査速度 50mm/sec.
【0059】照射前と照射後に接触角計(共和界面化学
(株)製コンタクトアングルメーター(contact
−angle meter)CA−12型)を用いて表
面の水に対する接触角の測定を行った。測定には蒸留水
を用い、レーザー光を照射した部分と照射してない部分
について接触角を測定し比較した。表面の接触角が大き
いことは表面が親油性であることを、表面の接触角が小
さいことは表面が親水性であることを意味する。
【0060】実施例1〜19で表面に陽極酸化皮膜を形
成させた各試料のレーザー光照射部分の接触角の測定を
行ったところ、実施例8以外では、レーザー光照射前の
接触角が約10度であった部分がレーザー光照射によっ
て接触角が約50度へと大きな接触角変化が測定され
た。また、実施例8では、レーザー光照射前の接触角が
約70度であった部分がレーザー光照射によって接触角
が約10度へと大きな接触角変化が認められた。一方、
比較例1のアルミニウムの表面に陽極酸化皮膜を形成さ
せた試料の接触角はほとんど変化しなかった。
【0061】
【表1】
【0062】実施例1〜19と同様の方法でレーザー照
射により画像形成した各試料原版をなんら後処理するこ
となく印刷機にかけて印刷を行った。印刷機としてはハ
リス菊半単色機(ハリス(株)製)を用い、インキとし
てGeos−G(N)量(大日本インキ化学工業(株)
製)、湿し水として、湿し水 EU−3(富士写真フィ
ルム(株)製)を1:100に水で希釈したもの90v
ol%とイソプロパノール10vol%との混合物をそ
れぞれ用いて、上質紙上に印刷を行った。いずれも10
00枚印刷しても汚れのない鮮明な印刷物が得られた。
一方、本発明に関わる遷移金属には該当しないアルミニ
ウム板の表面を陽極酸化した比較試料を用いた比較例1
ではインキが付着せず、印刷物は得られなかった。比較
例2は焼結したZrO2 (特開平第9−169098号
公報に記載の薄膜の追試)は感度が低くて高精細な描画
ができなかった。一方、比較例3は、比較例1の陽極酸
化アルミニウム支持体上の画像記録層を設けてその層に
遷移金属化合物として硝酸ジルコニウムを添加した試料
の例である。この遷移金属元素を含有する画像記録層を
支持体上に持つ比較例3の結果を、遷移金属元素を陽極
酸化した皮膜をもつ実施例1〜3と比較すると、実施例
1〜3は着肉性、耐刷性が優れていることが判る。
【0063】なお、比較例3において、画像記録層は、
つぎのようにして設けた。 <比較例3の画像記録層の塗設> ・テトラエトキシシラン分散液の調製>ゾルゲル変換性
の成分としてテトラエトキシシランを含んだ下記の処方
のゾルゲル液性の分散液を調製した。調製方法として
は、シリコンテトラエトキシド、エタノール、純水、硝
酸の順に混合してゆき、室温で1時間攪拌して分散液を
作成した。 ゾルゲル分散液処方 シリコンテトラエトキシド 18.37g エタノール(95%) 32.56g 純水 32.56g 硝酸 0.02g
【0064】<画像記録層用塗布液の調製>画像記録層
用塗布液として上記のゾルゲル分散液と硝酸ジルコニウ
ムを加えた下記処方の混合物にガラスビーズ10gを添
加してペイントシェーカーで10分間攪拌して塗布液と
した。 画像記録層用塗布液処方 光熱変換性微粒子(表1) 2.17g ゾルゲル分散液 3.34g ポリビニルアルコール〔PVA117、クラレ(株)製〕 (10%水溶液) 3.50g コロイダルシリカ〔スノーテックスC、日産化学(株)製〕 (20%水溶液) 6.0g 硝酸ジルコニウム(1N) 7 mL 純水 7.49g
【0065】〔実施例20〜38及び比較例4〜6〕実
施例1〜19及び比較例1〜3に用いた試料を用いて活
性光照射による製版方法への適用を行った。実施例20
〜38の各試料番号の陽極酸化基板は、実施例1〜19
の試料の順序で対応している。同様に比較例4〜6の各
試料は、比較例1〜3の各試料に番号の順に対応してい
る。
【0066】次いで、実施例20〜38及び比較例4〜
6の各試料に波長830nmの半導体レーザー光の照射
を行った。レーザー照射条件を下記に示す。 レーザー出力:1.5W ビーム半径:12.5μm 走査速度:1.7m/sec 出力:700mJ/cm2
【0067】レーザー照射により画像形成した各試料原
版を実施例1〜19と同様になんら後処理することなく
印刷機にかけて印刷を行った。印刷機としてはハリス菊
半単色機(ハリス(株)製)を用い、インキとしてGe
os−G(N)量(大日本インキ化学工業(株)製)、
湿し水として、湿し水 EU−3(富士写真フィルム
(株)製)を1:100に水で希釈したもの90vol
%とイソプロパノール10vol%との混合物をそれぞ
れ用いて、上質紙上に印刷を行った。いずれも1000
枚印刷しても汚れのない鮮明な印刷物が得られた。一
方、アルミニウム板の表面を陽極酸化した比較試料4を
用いた比較例4ではインキが付着せず、印刷物は得られ
なかった。ZrO2 皮膜を設けた比較例5も感度が低く
て高精細な描画ができなかった。一方、硝酸ジルコニウ
ム含有画像記録層を有する比較例6は、着肉性に乏しか
った。また、実施例27では、照射部が湿し水に馴染
み、非照射部が印刷インキを受け入れた印刷面を形成し
た。以上の結果から、本発明の遷移金属を陽極酸化して
得られる皮膜を有する印刷用原版は、活性光照射による
画像記録方式の場合も、識別効果が改良された印刷用原
板となることが示された。
【0068】〔実施例39〕厚さ0.24mmのJIS
A1050アルミニウム板の表面をナイロンブラシと
400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いて砂目立
てしたのち、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウ
ムに70°Cで60秒間浸漬してエッチングしたのち、
流水で水洗後20%硝酸で中和洗浄し、水洗した。これ
をVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を
用いて1%硝酸水溶液中で230ク−ロン/dm2 の陽
極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを
測定したところ、0.55μm(Ra表示)であった。
引き続いて、30%硫酸水溶液中で電流密度30A/d
2 ,陽極酸化皮膜量が2.2g/m2 相当になるよう
に陽極酸化した。上記基板上にスパッタリング法で厚み
が2μmのZr膜を設けたのち、実施例1と同様の電解
質、電解質濃度、電解質温度、電流密度、電圧及び電解
時間のもとでZr膜の表面に陽極酸化皮膜を形成させ、
表面が粗面化されたZrの陽極酸化皮膜基板を作成し
た。
【0069】次いで、実施例39の試料に実施例1〜1
9と同様のレーザー光照射条件でレーザー光照射を行
い、画像形成した試料原版をなんら後処理することなく
印刷機にかけて印刷を行った。印刷機として、ハリス菊
半単色機(ハリス(株)製)を用い、インキとしてGe
os−G(N)量(大日本インキ化学工業(株)製)、
湿し水として、湿し水EU−3(富士写真フィルム
(株)製)を1:100に水で希釈したもの90vol
%とイソプロパノール10vol%との混合液をそれぞ
れ用いて、上質紙上に印刷を行ったところ、2000枚
印刷しても汚れのない鮮明な印刷物が得られた。この結
果を実施例1〜19と比較することによって、陽極酸化
された金属表面が粗面化されていると、耐刷枚数を向上
させることができること、及び水目盛り幅を拡大できる
ことが示された。
【0070】
【発明の効果】本発明にかかわる遷移金属の表面に陽極
酸化皮膜を設けた本発明の印刷原板は、活性光による像
様露光のみで非照射部がインキを受容する平版印刷画面
が形成され、また、レーザー光の像様照射によるアブレ
ーションによって照射部がインキを受容する平版印刷画
面が形成され、いずれの方式であっても現像液が不要
で、かつ印刷面の鮮明性が保たれた平版印刷が可能であ
る。また、機上製版も可能である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo及び
    Wのうち、少なくとも1つの金属を陽極酸化した層を有
    することを特徴とする印刷用原板。
  2. 【請求項2】 印刷される画像がレーザー光を像様に照
    射して、照射部の陽極酸化皮膜の一部又は全部を熱飛散
    ・除去することにより記録した画像であることを特徴と
    する請求項1に記載の印刷用原板。
  3. 【請求項3】 表面が粗面化されていることを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の印刷用原板。
  4. 【請求項4】 Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo及び
    Wのうち、少なくとも1つの金属を陽極酸化した層を有
    する印刷用原板に、像様の光の照射によって画像を記録
    し、照射面を印刷用インキに接触させて、照射領域がイ
    ンキを受け入れた印刷面を形成させて印刷を行うことを
    特徴とする平版印刷方法。
  5. 【請求項5】 像様の光の照射による画像の記録が,レ
    ーザー光を像様に照射して、照射部の陽極酸化皮膜の一
    部又は全部を熱飛散・除去することにより行われること
    を特徴とする請求項4に記載の平版印刷方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103395278A (zh) * 2013-07-02 2013-11-20 北京中钞钞券设计制版有限公司 一种高耐印力印刷版的加工方法及其印刷版材

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