JP2000255022A - オフセット印刷方法 - Google Patents

オフセット印刷方法

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JP2000255022A
JP2000255022A JP5871699A JP5871699A JP2000255022A JP 2000255022 A JP2000255022 A JP 2000255022A JP 5871699 A JP5871699 A JP 5871699A JP 5871699 A JP5871699 A JP 5871699A JP 2000255022 A JP2000255022 A JP 2000255022A
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JP5871699A
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Takao Nakayama
隆雄 中山
Nobufumi Mori
信文 森
Takashi Nakamura
隆 中村
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Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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  • Manufacture Or Reproduction Of Printing Formes (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アルカリ性現像液を必要とせず、簡易に製版で
きて、かつ印刷面の画像部と非画像部の識別性が高い実
用レベルの印刷画質と十分な耐刷性を有し、さらに印刷
用原板を反復使用することも可能なオフセット印刷方法
及び印刷装置を提供する。 【解決手段】光の照射により、あるいは高温に加熱する
ことにより親水性となる特性を有する金属又は金属酸化
物の板の表面を疎水性としたのち、画像状に親水化を行
って疎水性領域と親水性領域の像様分布を形成したの
ち、その原板上に有機皮膜前駆体と電解質を含有する水
溶液の層を設けて、該原板と該水溶液層を挟んで原板に
対向して設けられた極板との間に電圧を印加することに
よって、親水性領域に有機皮膜を形成させ、さらに、必
要により該疎水性領域を親水性化する処理を施し、印刷
用原板をインキと接触させて有機皮膜がインキを受け入
れた印刷面を形成させるオフセット印刷方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般軽印刷分野、
とくにオフセット印刷、とりわけ簡易に印刷版を製作で
きる新規なオフセット印刷方法及び印刷原板に関するも
のである。その中でもとくに印刷用原板の反復再生使用
を可能にする、しかも印刷汚れの少ないオフセット印刷
方法及び印刷用原板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オフセット印刷法は、数多くの印刷方法
の中でも印刷版の製作工程が簡単であるために、とくに
一般的に用いられてきており、現在の主要な印刷手段と
なっている。この印刷技術は、油と水の非混和性に基づ
いており、画像領域には油性材料つまりインキが、非画
像領域には湿し水が選択的に保持される。したがって印
刷される面と直接あるいはブランケットと称する中間体
を介して間接的に接触させると画像部のインキが転写さ
れて印刷が行われる。
【0003】オフセット印刷の主な方法は、アルミニウ
ム基板を支持体としてその上にジアゾ感光層を塗設した
PS板である。PS板においては、支持体であるアルミ
ニウム基板の表面に砂目立て、陽極酸化、その他の諸処
理を施して画像領域のインキ受容能と非画像部のインキ
反発性を強め、耐刷力を向上させ、印刷面の精細化を図
るなどを行い、その表面に印刷用画像を形成させる。し
たがってオフセット印刷は、簡易性に加えて耐刷力や印
刷面の高精細性などの特性も備わってきている。
【0004】高精細化によってオフセット印刷法の利用
が拡がって一般印刷分野に普及する一方において、オフ
セット印刷法の一層の簡易化が要望され、数多くの簡易
印刷方法が提案されている。
【0005】その代表例がAgfa-Gevaert社から市販され
たCopyrapid オフセット印刷版をはじめ、米国特許35
11656号、特開平7−56351号などでも開示さ
れている銀塩拡散転写法による印刷版作製に基づく印刷
方法であって、この方法は、1工程で転写画像を作るこ
とができて、かつその画像が親油性であるために、その
まま印刷版とすることができるので、簡易な印刷方法と
して実用されている。しかしながら、簡易とはいいなが
らこの方法もアルカリ現像液による拡散転写現像工程を
必要としている。現像液による現像工程を必要としな
い、しかも簡易な印刷方法が要望されている。
【0006】上記の背景から、画像露光を行ったのちの
アルカリ現像液による現像工程を省略した簡易印刷版の
製作方法の開発が行われてきた。現像工程を省略できる
ことから無処理刷版とも呼ばれるこの簡易印刷版の技術
分野では、これまでに主として像様露光による画像記
録面上の照射部の熱破壊による像形成、像様露光によ
る照射部の親油性化による画像形成、同じく照射部の
親油性化であるが、光モード硬化によるもの、ジアゾ
化合物の光分解による表面性質の変化、画像部のヒー
トモード溶融熱転写などの諸原理に基づく手段が提案さ
れている。
【0007】上記の簡易オフセット印刷方法として開示
されている技術には、米国特許第3,506,779
号、同第3,549,733号、同第3,574,65
7号、同第3,739,033号、同第3,832,9
48号、同第3,945,318号、同第3,962,
513号、同第3,964,389号、同第4,03
4,183号、同第4,081,572号、同第4,6
93,958号、同第731,317号、同第5,23
8,778号、同第5,353,705号、同第5,3
85,092号、同第5,395,729号等の米国特
許及び欧州特許第1068号などがある。
【0008】上記のように、製版に際して現像液を必要
としない簡易な印刷方法が数多く考案されているが、親
油性領域と親水性領域との差異が不十分であること、し
たがって印刷画像の画質が劣ること、解像力が劣り、鮮
鋭度の優れた印刷画面が得にくいこと、画像面の機械的
強度が不十分で傷がつきやすいこと、そのために保護膜
を設けるなどによって却って簡易性が損なわれること、
長時間の印刷に耐える耐久性が不十分なことなどのいず
れか一つ以上の欠点を伴っていて、単にアルカリ現像工
程を無くすだけでは実用性は伴わないことを示してい
る。印刷上必要とされる諸特性を具備し、かつ簡易に印
刷版を製作できる印刷版作成方法への強い要望は、上記
の数々の改良にも係わらず、いまだに十分に満たされて
いない。
【0009】上記した無処理型印刷版の技術開発の一つ
として、ジルコニアセラミックが光照射によって親水性
化することを利用した印刷版作製方法が特開平9−16
9098号で開示されている。しかし、ジルコニアの光
感度は不十分であり、かつ疎水性から親水性への光変換
効果が不十分のため画像部と非画像部の識別性が不足し
ており、また耐刷性についても市場の要請に十分に応え
られてなく、無処理による簡易化の課題を解決するに至
っていない。
【0010】また、現像液を必要としない簡易性の追求
とともに、コストの低減と廃棄物の軽減の2面から、使
用済みの印刷用原板を簡単に再生して再使用できる再生
技術の開発も要望されている。印刷用原板の再生使用に
は、その再生操作の簡易性が実用価値を左右するが、再
生操作の簡易化は難度の高い課題であり、従来殆ど検討
されきておらず、わずかに上記の特開平9−16909
8号でジルコニアセラミックという特殊な原板用材料に
ついて開示されているに過ぎない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
している課題は、上記事情に鑑みてアルカリ性現像液を
必要としない簡易な印刷方法であって、かつ印刷面の画
像部と非画像部の識別性と耐刷性とが改良されていて、
さらに印刷用原板を反復して使用することも可能なオフ
セット印刷方法を提供することである。さらに、本発明
では、ネガ型の製版方式であって、かつ上記の目的を満
たした印刷方法を提供することを意図している。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者たちは、上記の
目的を達成するために、鋭意検討の結果、ある種の金属
酸化物及び金属の表面は、熱の作用によって表面を疎水
性化できることを認め、この性質を版面上への印刷用画
像の形成に利用したネガ型の印刷用画像形成方式に応用
できることを見いだした。さらに、本発明者たちは、原
板表面を加熱して疎水性化する際に、有機化合物の存在
下で加熱すると疎水性化が促進することも見いだした。
【0013】これらの発見に基づく印刷方法は、本発明
の上記の目的に対して効果のある方法であるが、現像液
を使用しない簡易性と画像部と非画像部の識別性の高い
優れた印刷品質とさらに大量の高速印刷に耐える耐刷性
のすべてを満足させる印刷方法に対する市場の強い要請
に十分答えるには、至っていなかった。そのため、画像
領域の補強手段についてさらに鋭意研究した結果、画像
領域補強層を設ける簡易な電解方法を見いだして、現像
液を必要としない簡易性と、印刷汚れを防止する画像部
と非画像部との識別性と、耐刷性を高める印刷版面の物
理的強度を満足させるという本発明の課題を満たすに至
った。すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0014】1.光照射されるか、もしくは高温に加熱
することで表面が親水性となる特性を有する金属又は金
属酸化物の板を、有機化合物と接触させるか、又は疎水
性となる温度に加熱することによって、該原板表面を疎
水性とし、次いで該表面を光で像様照射するか又は親水
性となる温度に像様加熱することにより該照射部又は加
熱部を親水性に変えて、疎水性領域と親水性領域の像様
分布を形成し、該像様分布を有する印刷用原板上に少な
くとも有機皮膜前駆体と電解質を含有する水溶液の層を
設けて、該原板と該水溶液層を挟んで原板に対向して設
けられた極板との間に電圧を印加することによって、該
原板上の親水性領域に該有機皮膜前駆体の反応による有
機皮膜を形成させ、さらに、該疎水性領域を親水性化す
る処理を施し、該印刷用原板をインキと接触させること
によって該有機皮膜がインキを受け入れた印刷面を形成
させ、印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方
法。
【0015】2.印刷に使用した印刷版面上に残存する
インキ及び有機皮膜を洗浄除去したのち、その印刷版を
印刷用原板として請求項1に記載の操作を反復して印刷
を行うことを特徴とする上記1に記載の印刷方法。
【0016】3.印刷用原板の表面が、周期律表の第3
〜6周期に属していて、かつ0及びVII A族(ハロゲン
元素)族以外の元素から選ばれる金属及び該金属の酸化
物からなる群の少なくとも一つによって構成されている
ことを特徴とする上記1又は2に記載のオフセット印刷
方法。
【0017】4.印刷用原板の表面が、TiO2 、RT
iO3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x
3-x x 10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、B
はアルカリ土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、
Dは周期律表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じ
く4A族元素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数
値を表す)、SnO2 ,GeO2 ,SiO2 ,Bi2
3 ,Al2 3 ,ZnO及びFeOx (x=1/0〜
1.5)から選ばれる金属酸化物の少なくとも一つによ
って構成されていることを特徴とする上記1〜3のいず
れか1項に記載のオフセット印刷方法。
【0018】5.印刷用原板の表面が、アルミニウム、
鉄、銅、ゲルマニウム、ニッケル、亜鉛、錫及び珪素か
ら選ばれる金属又はその合金の少なくとも一つによって
構成されていることを特徴とする上記1〜4のいずれか
1項に記載のオフセット印刷方法。
【0019】6.印刷用原板表面を疎水性化するための
該原板と有機化合物との接触が、有機化合物気体含有雰
囲気への原板の暴露あるいは液状有機化合物又は有機化
合物含有液体の原板上への塗布又は噴霧及び原板の浸漬
のいずれかによって行われることを特徴とする上記1〜
5のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
【0020】7.有機化合物が、温度20℃において少
なくとも10mmHg以上の蒸気圧を有する有機化合物
であることを特徴とする上記1〜6にいずれか1項に記
載のオフセット印刷方法。
【0021】8.有機化合物が、温度20℃においてエ
タノール、アセトン、ベンゾール及び2,2,4−トリ
メチルペンタンから選ばれる少なくとも一つの有機溶剤
に少なくとも5wt%溶解する有機化合物であることを
特徴とする上記1〜7のいずれか1項に記載のオフセッ
ト印刷方法。
【0022】9.有機皮膜を形成する電解質水溶液中の
有機皮膜前駆体が、不飽和二重結合を有する付加重合性
モノマーであることを特徴とする上記1〜8のいずれか
1項に記載のオフセット印刷方法。
【0023】10.有機皮膜前駆体が、水溶性又は水分
散性蛋白質、水溶性高分子、ラテックス分散物、界面活
性剤、カルボキシル基を有する脂肪族又は芳香族化合
物、アミノ基を有する脂肪族又は芳香族化合物から選ば
れる化合物であることを特徴とする上記1〜9のいずれ
か1項に記載のオフセット印刷方法。
【0024】11.印刷用原板表面の有機皮膜が形成さ
れない疎水性領域を親水性に変化させる手段が、光によ
る照射、親水性となる温度への加熱及び疎水性領域の洗
浄から選ばれる手段であることを特徴とする上記1〜1
0のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
【0025】12.印刷原板を印刷機に装着された状態
で、該印刷用原板から印刷版を製作して印刷を行うこと
を特徴とする上記1〜11に記載のオフセット印刷方
法。
【0026】本発明では、「光触媒能を有する物質」又
は「高温親水性発現特性を有する物質」を印刷用原板の
材料として使用する。「光触媒能を有する物質」とは、
たとえば酸化チタンのように、その物質の表面に特定波
長の光を照射するとその表面が親水性に変化するという
光物性変化を行う物質である。また、このようなこの光
物性変化を引き起こす特定波長の光を「活性光」と呼ん
でいる。一方、「高温親水性発現特性を有する物質」と
は、ある温度以上に加熱すると親水性となり、この親水
性には履歴作用があって常温に戻しても表面の親水性が
ある程度持続する性質を持つ物質である。物質の中に
は、その清浄な表面が程度の差はあっても本来疎水性で
あるもののほかに、表面が本来親水性であっても、「疎
水性発現温度」と呼んでいる温度に加熱すると親水性か
ら疎水性への変化を示すものがあることを本発明者は見
いだしている。前者を加熱した場合だけでなく後者も疎
水性発現温度を越えてさらに加熱すると疎水性から親水
性となり、かつその親水性に履歴作用が観察される物質
があり、これらが「高温親水性発現特性を有する物質」
である。
【0027】本発明は、光触媒能又は高温親水性発現特
性を有する物質の上記した特性に加えて、室温で親水性
状態の上記物質の表面も有機化合物と接触すると疎水性
となるというさらなる発見をも利用してなされたもので
ある。さらに、原板上に疎水性領域と親水性領域の像様
分布を形成させてこの表面を電解液に接触させて電解を
行うと、親水性領域で選択的に電解反応が起こり、電解
生成物がこの領域に形成されることをも発見している。
本発明は、これらの発見を組み合わせてなされた新規な
考案である。
【0028】本発明の印刷方法は、上記した「光触媒能
を有する物質」又は「高温親水性発現特性を有する物
質」を原板としてこれにつぎの各工程を施すことから成
っている。第1段階は、上記物質の原板の表面の疎水性
化である。この疎水性化は、原板表面を有機化合物の蒸
気に曝すか、表面上に液体又は溶液状態の有機化合物を
噴霧や塗布を行うか、あるいは原板を浸漬するなどを行
うなどの接触方法で行われるほか、原板材料が適度の加
熱によって疎水性となる疎水性発現性の物質の場合は、
疎水性発現温度への加熱によって、その表面を疎水性と
してもよい。第2段階は、疎水性化した原板表面の像様
の親水性化である。この段階では、光触媒能を有する物
質の場合は活性光を像様に照射して、また、高温親水性
発現特性物質の物質の場合は像様に加熱して、その表面
に親水性領域と疎水性領域の像様の分布を形成させる。
第3段階は、親水性領域と疎水性領域の像様分布を形成
した原板上に有機皮膜を像様に設ける工程である。この
段階では、親水性領域を介して有機皮膜先駆体と電解質
を含む電解液を印刷用原板と像様に直接接触させ、印刷
用原板に電圧を印加することによって、親水性領域に有
機皮膜を像様に形成させる。したがって、この時点で親
水性領域はインキ受容性の皮膜で被覆される。第4段階
は、インキ反発性領域の形成である。この段階では、有
機皮膜が設けられていない疎水性領域を活性光の照射、
加熱、あるいは洗浄など後述する方法によって親水性化
する。第5段階は、印刷工程である。印刷用原板をイン
キと接触させることによって像様に分布した有機皮膜が
インキを受け入れた印刷面が形成される。以上の一連の
操作を行うことによって印刷原板から印刷版が作られ、
それを用いて印刷が行われる。
【0029】上記の過程において、金属や金属酸化物な
どの光触媒能又は高温親水性発現特性を有する物質の表
面は、活性光の照射又は高温親水性発現温度での加熱に
よって、表面を疎水性から親水性にすると、その表面
は、室温下においても履歴効果によって実用的に十分な
時間その親水性が維持される。したがって、有機化合物
との接触によって疎水性化を十分に促進させた表面に効
果的な親水性領域が実用的な時間にわたって維持される
ので、上記した疎水性〜親水性の物性変化を利用した現
像不要型の印刷方法が可能となっている。しかも有機化
合物の皮膜を設けて版面を補強して識別性と耐刷性も向
上できていることが本発明の特徴である。
【0030】
〔印刷用原板〕
(原板材料)はじめに、本発明に用いることのできる原
板材料について説明する。本発明で用いる活性光の照射
によって親水性となる「光触媒能を有する物質」は、必
ずしも金属酸化物に限定されないが、印刷用原板として
の要件なども考慮すると、好ましい物質は金属酸化物の
中に多く見られる。また、この物質は、セラミックや半
導体の中にも見られる。光触媒能を有するセラミック
は、複合金属酸化物からなっており、光触媒能を有する
高温親水性発現型半導体の多くは、基底順位と伝導体が
近い真正半導体と不純物準位に依存する酸化バナジウム
や酸化銅などの仮性半導体との両方に見られる。これら
セラミック及び半導体は、本発明が利用する光触媒能の
上では、他の光触媒能を有する金属酸化物と同様である
ので、それらを「光触媒能を有する金属酸化物」に含め
て以下に説明する。
【0031】光触媒能を有する好ましい物質は、周期律
表の第3〜6周期に属していて、かつ0及びVII A族
(ハロゲン元素)族以外の元素から選ばれる金属の酸化
物からなる群の少なくとも一つによって構成されてい
る。その中でもとくに、TiO2 、RTiO3 (Rはア
ルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x
10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、Bはアルカリ
土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、Dは周期律
表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じく4A族元
素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数値を表
す)、SnO2 ,Bi2 3 ,ZnO及びFe2 3
ら選ばれる金属酸化物が好ましい。
【0032】これらの金属酸化物は、いろいろの形態の
金属酸化物に見られ、単一の金属酸化物、複合酸化物の
いずれの場合もあり、また後者の場合は、固溶体、混
晶、多結晶体、非晶質固溶体、金属酸化物微結晶の混合
物のいずれからもこの特性を有するものが認められる。
【0033】つぎに、本発明に用いる高温で加熱すると
親水性となり、かつ履歴現象を示す「高温親水性発現特
性を有する物質」について説明する。この物質は、金属
の中に多く見られるが、必ずしも金属に限定されない。
また、光触媒能と高温親水性発現特性を併せて備えた金
属酸化物もある。好ましい高温親水性発現特性の金属及
び金属酸化物は、周期律表の第3〜6周期に属してい
て、かつ0及びVII A族(ハロゲン元素)族以外の元素
から選ばれる金属及びその金属の酸化物からなる群の少
なくとも一つによって構成されている。
【0034】「高温親水性発現特性」を有する金属は、
単一組成の金属にも、複合組成つまり合金にも見られ
る。合金の場合は、金属固溶体、金属間化合物、金属微
結晶混合物のいずれでもよい。また、ステンレススチー
ル(以下、SUSと記述する)に見られるように、表面
に不働体性の酸化皮膜が生成していてもよい。さらに陽
極酸化のように、積極的に酸化皮膜を形成する処理を施
してもよい。また、単一種の金属や合金の純度に関して
は、特別な制約はなく、通常の一般的な用途に用いられ
ているものであれば、本発明に適用できる。
【0035】好ましい金属は、アルミニウム、鉄、珪
素、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、錫及び銅並びにそ
れらの合金である。とくに好ましい金属は、アルミニウ
ムである。アルミニウムを用いる場合は、後に説明する
原板用支持体であるアルミニウム板を直接使用すること
が好ましく、したがって、機械的な砂目立てや電解粗面
化などによって表面の親水性を強化したり、陽極酸化を
施したりしたアルミニウム板が用いられる。
【0036】高温親水性発現特性を有する金属の使用形
態としては、金属板をそのまま使用することもできる
が、また適当なプラスチックフィルムあるいは他の金属
板を支持体としてその上に電気メッキ、貼り合わせなど
によって設けてもよい。支持体上の金属板の厚みは、支
持体よりも薄い任意の厚みを用いることができるが、好
ましい厚みは、0.01mm〜0.4mm程度、より好まし
くは0.02mm〜0.2mmである。
【0037】また、好ましい高温親水性発現特性を有す
る金属酸化物は、TiO2 、RTiO3 (Rはアルカリ
土類金属原子)、AB2-x x 3-x x 10(A,
B,C,D、Eおよびxのそれぞれの記号の意味は前記
したとおりである)、SnO 2 ,SiO2 ,GeO2
Bi2 3 ,Al2 3 ,ZnO及びFeOx (x=
1.0〜1.5)から選ばれる金属酸化物である。
【0038】高温親水性発現特性を有する金属及び金属
酸化物の多くは、前記したように高温親水性発現温度よ
り低い適度の加熱によって疎水性を示す性質があり、本
発明では疎水性化の手段として、有機化合物と接触させ
る代わりに、適度の加熱を行ってもよい。疎水性発現温
度は、物質によってことなるが、通常50〜250℃で
ある。
【0039】なお、本発明に用いることのできる光触媒
能又は高温親水性発現特性を有する金属及び金属酸化物
は、印刷版として使用する際に湿し水に対して過度に溶
解してはならないので、水に対する溶解度は、水100
ミリリットルについて10mg以下、好ましくは5mg
以下、より好ましくは1mg以下である。
【0040】以上に光触媒能又は高温親水性発現特性、
あるいはその両方を有する個々の金属酸化物について概
説したが、個々の好ましい物質についてさらに説明す
る。金属酸化物の中でも、酸化チタンと酸化亜鉛は好ま
しく、これらについてまず説明する。これらは、いずれ
も本発明の印刷用原板材料として利用できる。特に酸化
チタンが感度(つまり表面性の光変化の敏感性)などの
点で好ましい。酸化チタンは、イルメナイトやチタンス
ラグの硫酸加熱焼成、あるいは加熱塩素化後酸素酸化な
ど既知の任意の方法で作られたものを使用できる。ある
いは後述するように金属チタンを用いて印刷版製作段階
で真空蒸着によって酸化物皮膜とする方法も用いること
ができる。
【0041】酸化チタン又は酸化亜鉛を含有する層を原
板の表面に設けるには、たとえば、酸化チタン微結晶
又は酸化亜鉛微結晶の分散物を印刷版の原板上に塗設す
る方法、塗設したのち焼成してバインダーを減量或い
は除去する方法、印刷原板上に蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティング、CVDなどの方法で酸化チ
タン(又は酸化亜鉛)膜を設ける方法、例えばチタニ
ウムブトキシドのようなチタン有機化合物を原板上に塗
布したのち、焼成酸化を施して酸化チタン層とする方法
など、既知の任意の方法を用いることができる。本発明
においては、真空蒸着又はスパッタリングによる酸化チ
タン層が特に好ましい。
【0042】上記又はの酸化チタン微結晶を塗設す
る方法には、具体的には無定形酸化チタン微結晶分散物
を塗布したのち、焼成してアナターゼまたはルチル型の
結晶酸化チタン層とする方法、酸化チタンと酸化シリコ
ンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、酸
化チタンとオルガノシロキサンなどとの混合物を塗布し
てシロキサン結合を介して支持体と結合した酸化チタン
層を得る方法、酸化物層の中に酸化物と共存するできる
ポリマーバインダーに分散して塗布したのち、焼成して
有機成分を除去する方法などがある。酸化物微粒子のバ
インダ−には、酸化チタン微粒子に対して分散性を有
し、かつ比較的低温で焼成除去が可能なポリマーを用い
ることができる。好ましいバインダーの例としては、ポ
リエチレンなどのポリアルキレン、ポリブタジエン、ポ
リアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポ
リ酢酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコ
ール、部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリスチレンな
どの疎水性バインダーが好ましく、それらの樹脂を混合
して使用してもよい。
【0043】上記の酸化チタンの真空蒸着を行うに
は、通常真空蒸着装置内の蒸着用加熱の熱源に金属チタ
ンを置き、真空度10-5〜10-8Torrで全ガス圧10-2
〜10 -5Torr、酸素文圧比が30〜90%になるように
しながら、チタン金属を蒸発させると、蒸着面には酸化
チタンの蒸着薄膜が形成される。また、スパッタリング
による場合は、例えばスパッタ装置内にチタン金属ター
ゲットをセットしてAr/O2 比が60/40(モル
比)となるようにガス圧を5×10-3Torrに調整したの
ち、RFパワー200Wを投入してスパッタリングを行
って酸化チタン薄膜を基板上に形成させる。
【0044】一方、本発明に酸化亜鉛層を使用する場
合、その酸化亜鉛層は既知の任意の方法で作ることがで
きる。とくに金属亜鉛板の表面を電解酸化して酸化皮膜
を形成させる方法と、真空蒸着、スパッタリング、イオ
ンプレーティング,CVDなどによって酸化亜鉛皮膜を
形成させる方法が好ましい。酸化亜鉛の蒸着膜は、上記
の酸化チタンの蒸着と同様に金属亜鉛を酸素ガス存在下
で蒸着して酸化膜を形成させる方法や、酸素のない状態
で亜鉛金属膜を形成させたのち、空気中で温度を約70
0°Cにあげて酸化させる方法を用いることができる。
そのほか、修酸亜鉛の塗布層やセレン化亜鉛の薄層を酸
化性気流中で加熱しても得られる。
【0045】蒸着膜の厚みは、酸化チタン層、酸化亜鉛
層いずれの場合も1〜100000オングストロ−ムが
よく、好ましくは10〜10000オングストロ−ムで
ある。さらに好ましくは3000オングストロ−ム以下
として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作
用を十分に発現させるには厚みが50オングストローム
以上あることが好都合である。
【0046】酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用
できるが、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ま
しい。アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得
る過程の焼成条件を選ぶことによって得られることはよ
く知られている。その場合に無定形の酸化チタンやルチ
ル型酸化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶
が40%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の
理由から好ましい。酸化チタンあるいは酸化亜鉛を主成
分とする層における酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積
率は、それぞれ30〜100%であり、好ましくは50
%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸
化物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。
しかしながら、表面の親水性/親油性変化特性は、酸化
亜鉛を電子写真感光層に用いるときのような著しい純度
による影響はないので、100%に近い純度のもの(例
えば98%)をさらに高純度化する必要はない。それ
は、本発明に利用される物性は、導電性とは関係ない膜
表面の親水性/親油性の性質変化特性、すなわち界面物
性の変化特性であることからも理解できることである。
【0047】しかしながら、熱の作用によって表面の親
水性が変化する性質を増進させるためにある種の金属を
ドーピングすることは有効な場合があり、この目的には
イオン化傾向が小さい金属のドーピングが適しており、
Pt,Pd,Au,Ag,Cu,Ni,Fe,Co又は
Crをドーピングするのが好ましい。また、これらの好
ましい金属を複数ドーピングしてもよい。ドーピングを
行った場合も、その注入量は酸化亜鉛や酸化チタン中の
金属成分に対して5モル%以下である。
【0048】一方、体積率が低いと層の表面の親水性/
親油性の熱応答挙動の敏感度が低下する。したがって、
層中の酸化物の体積率は、30%以上であることが望ま
しく、とくに実質的に100%であることが好ましい。
【0049】次に、本発明に用いることができる別の化
合物である一般式RTiO3 で示したチタン酸金属塩に
ついて記す。一般式RTiO3 において、Rはマグネシ
ウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリ
ウムなどの周期律表のアルカリ土類元素に属する金属原
子であり、とくにストロンチウムとバリウムが好まし
い。また、2種以上のアルカリ土類金属原子をその合計
が上記の式に化学量論的に整合する限り共存することが
できる。
【0050】次に、一般式AB2-x x 3-x x 10
で表される化合物について説明する。この一般式におい
て、Aは水素原子及びナトリウム、カリウム、ルビジウ
ム、セシウム、リチウムなどのアルカリ金属原子から選
ばれる1価原子で、その合計が上記の式に化学量論的に
整合する限りそれらの2種以上を共存してもよい。B
は、上記のRと同義のアルカリ土類金属原子又は鉛原子
であり、同様に化学量論的に整合する限り2種以上の原
子が共存してもよい。Cは希土類原子であり、好ましく
は、スカンジウム及びイットリウム並びにランタン、セ
リウム、プラセオジウム、ネオジウム、ホルミウム、ユ
ウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ツリウム、イ
ッテルビウム、ルテチウムなどのランタノイド系元素に
属する原子であり、また、その合計が上記の式に化学量
論的に整合する限りそれらの2種以上を共存してもよ
い。Dは周期律表の5A族元素から選ばれた一種以上
で、バナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられる。ま
た、化学量論関係を満たす限り、2種以上の5A族の金
属原子が共存してもよい。Eは同じくチタン、ジルコニ
ウム、ハフニウムなどの4A族元素に属する金属原子で
あり、また、2種以上の4A族の金属原子が共存しても
よい。xは0〜2の任意の数値を表す。
【0051】RTiO3 、一般式AB2-x x 3-x
x 10で表される上記化合物、SnO2 ,Bi2 3
FeOx (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合
物のいずれの薄膜形成にも、酸化チタン及び酸化亜鉛を
設ける前記の方法を用いることがでる。すなわち、金
属酸化物の微粒子の分散物を印刷版の原板上に塗設する
方法、塗設したのち焼成してバインダーを減量或いは
除去する方法、印刷版の原板上に上記酸化物を各種の
真空薄膜法で膜形成する方法、例えば金属元素のアル
コレートのような有機化合物を原板上に塗布したのち、
加水分解させ、さらに焼成酸化を施して適当な厚みの金
属薄膜とする方法、上記金属元素の塩酸塩、硝酸塩な
どの水溶液を加熱スプレーする方法など、既知の任意の
方法を用いることができる。
【0052】例えば、上記、の塗設方法によってチ
タン酸バリウム微粒子を塗設するには、チタン酸バリウ
ムとシリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させ
る方法、チタン酸バリウムとオルガノポリシロキサンま
たはそのモノマ−との混合物を塗布する方法などがあ
る。また、酸化チタンの項で述べたように、酸化物層の
中に酸化物と共存できるポリマーバインダーに分散して
塗布した後、焼成して酸化物層とすることもできる。酸
化物微粒子のバインダ−として好ましいポリマーの例
は、酸化チタン層の項で述べたものと同じである。この
方法によって、チタン酸バリウム以外にチタン酸マグネ
シウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム
又はそれらの分子間化合物、混合物も同様に薄膜形成可
能である。
【0053】同様にして上記、の塗設方法によって
CsLa2 NbTi2 10微粒子を塗設することも可能
である。CsLa2 NbTi2 10微粒子は、その化学
量論に対応するCs2 CO3,La2 3,NbO5,TiO
2 を乳鉢で微粉砕して、白金るつぼに入れ、130°C
で5時間焼成し、それを冷却してから乳鉢に入れて数ミ
クロン以下の微粒子に粉砕する。このCsLa2 NbT
2 10微粒子を前記のチタン酸バリウムと同様にバイ
ンダーの中に分散し、塗布して薄膜を形成した。この方
法は、CsLa2 NbTi2 10型微粒子に限らず、H
Ca1.5 La0. 5 Nb2.5 Ti0.5 10,HLa2 Nb
Ti2 10など前述のAB2-x x 3- x x 10
(0≦x≦2)に適用される。
【0054】上記の真空薄膜形成法を用いた光触媒能
又は高温親水性発現特性を有する金属酸化物層の形成方
法としては、一般的にはスパッタリング法あるいは真空
薄膜形成法が用いられる。スパッタリング法では、あら
かじめ単一もしくは複合型の酸化物ターゲットを準備す
る。例えば、チタン酸バリウムターゲットを用いて蒸着
膜用の支持体の温度を450°C以上に保ち、アルゴン
/酸素混合雰囲気中でRFスパッタリングを行うことに
よりチタン酸バリウム結晶薄膜が得られる。結晶性の制
御には必要に応じてポストアニーリングを300〜90
0°Cで行えばよい。本方法は前述のRTiO3 (Rは
アルカリ土類金属原子)をはじめ他の前記した金属酸化
物にも、結晶制御に最適な基板温度を調整すれば同様の
考え方で薄膜形成が可能である。例えば酸化錫薄膜を設
ける場合には基板温度120°C、アルゴン/酸素比5
0/50の混合雰囲気中でRFスパッタリングを行うこ
とにより酸化錫結晶の本目的に沿う薄膜が得られる。
【0055】上記の金属アルコレートを用いる方法
も、バインダーを使用しないで目的の薄膜形成が可能な
方法である。チタン酸バリウムの薄膜を形成するにはバ
リウムエトキシドとチタニウムブトキシドの混合アルコ
ール溶液を表面にSiO2 を有するシリコン基板上に塗
布し、その表面を加水分解したのち、200°C以上に
加熱してチタン酸バリウムの薄膜を形成することが可能
である。本方式の方法も前述した他のRTiO3 (Rは
アルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x 10
(A,B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表
す)、SnO2 ,SiO2 ,Bi2 3 及びFeO
x (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合物の薄
膜形成に適用することができる。
【0056】上記によって金属酸化物薄膜を形成させ
る方法も、バインダーを含まない系の薄膜の形成が可能
である。SnO2 の薄膜を形成するにはSnCl4 の塩
酸水溶液を200°C以上に加熱した石英又は結晶性ガ
ラス表面に吹きつけて薄膜を生成することができる。本
方式も、SnO2 薄膜のほか,前述したRTiO3 (R
はアルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x
10(A,B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を
表す)、Bi2 3 及びFeOx (x=1〜1.5)で
示される酸化鉄系の化合物のいずれの薄膜形成にも適用
することができる。
【0057】金属酸化物薄膜の厚みは、上記のいずれの
場合も1〜100000オングストロ−ムがよく、好ま
しくは10〜10000オングストロ−ムである。さら
に好ましくは3000オングストロ−ム以下として光干
渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を十分に
発現させるには厚みが50オングストローム以上あるこ
とが好都合である。
【0058】バインダーを使用した場合の上記光触媒能
又は高温親水性発現特性を有する金属酸化物の薄層にお
いて、金属酸化物の体積率は50〜100%であり、好
ましくは90%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに
好ましくは酸化物の連続層つまり実質的に100%であ
るのがよい。
【0059】そのほか、ZnO,TiO2 ,SnO2
Al2 3 ,FeOx (x=1〜1.5)で示される酸
化鉄系の化合物は、それぞれの金属板の表面を陽極酸化
して得ることもできる。とくにZnO,TiO2 ,Al
2 3 は、陽極酸化によって容易に光触媒能又は高温親
水性発現特性或いはその両方をもつ酸化物皮膜として支
持体付きの形で得られる。陽極酸化の方法は、たとえ
ば、特開平6−35174号公報の3〜5頁に詳記され
ている方法、その中に引用されている方法、特開昭52
−37104号公報に記載の方法及び本発明の印刷原板
用のアルミニウム支持体の陽極酸化方法として後述する
方法など、公知の適当な方法や、それに準じた方法で行
われる。陽極酸化によって原板材料を作る場合には、そ
の酸化皮膜の厚みは、上記した厚みでもよいが、さらに
厚くてもよく、2.0ミクロン以下、好ましくは1.0
ミクロン以下で用いられる。
【0060】以上で本発明に用いる光触媒能又は高温親
水性発現特性あるいはその両方を有する物質、とくにそ
の中でも好ましい金属及び金属酸化物についての説明を
終わり、次にこれらの材料を担持した印刷用原板の形態
について述べる。 (印刷用原板の形態)本発明に係わる印刷原板は、いろ
いろの形態と材料を用いることができる。例えば、光触
媒能又は高温親水性発現型物質の薄層を印刷機の版胴の
基体表面に蒸着、浸漬あるいは塗布するなど上記した方
法で直接設ける方法、支持体に担持された高温親水性発
現型物質や、あるいは支持体を持たない上記物質の薄板
を版胴の基体に巻き付けて印刷版とする方法などを用い
ることができる。また、勿論版胴上で製版する上記形態
以外に、一般的に行われているように、製版を行った印
刷版を輪転式あるいは平台式印刷機に装着する形態を採
ってもよい。
【0061】光触媒能又は高温親水性発現特性を有する
画像形成層が支持体上に設けられる場合、使用される支
持体は、高温親水性発現温度でも熱分解せず、寸度的に
も安定な板状物であり、アルミニウム板、SUS鋼板、
ニッケル板、銅板などの金属板が好ましく、特に可撓性
(フレキシブル)の金属板を用いることが好ましい。ま
た、ポリエステル類やセルローズエステル類などのフレ
キシブルなプラスチック支持体も用いることが出来る。
防水加工紙、ポリエチレン積層紙、含浸紙などの支持体
上に酸化物層を設けてもよく、それを印刷版として使用
してもよい。このような支持体は、光触媒能を有する物
質が支持体上に設けられる場合にも、好ましく使用され
る。
【0062】具体的には、紙、プラスチックシート(例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等のシ
ート)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミ
ニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラスチックフィ
ルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、
プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セ
ルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ
リビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネー
ト、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィ
ルム等が挙げられる。
【0063】好ましい支持体は、ポリエステルフィル
ム、ポリイミドフィルム、アルミニウム、又は印刷版上
で腐食しにくいSUS板であり、その中でも寸法安定性
がよく、比較的安価であるアルミニウム板と、製版工程
における加熱操作に対して安定性の高いポリイミドフィ
ルムは特に好ましい。
【0064】好適なポリイミドフィルムは、ピロメリッ
ト酸無水物とm−フェニレンジアミンを重合させたの
ち、環状イミド化したポリイミド樹脂フィルムであり、
このフィルムは市販されている(例えば、東レ・デュポ
ン社製の「カプトン」を挙げることができる)。
【0065】好適なアルミニウム板は、純アルミニウム
板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含
む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしく
は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニ
ウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガ
ン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッ
ケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高
々10重量%以下である。本発明において特に好適なア
ルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋な
アルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅か
に異元素を含有するものでもよい。このように本発明に
適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるも
のではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板
を適宜に利用することができる。本発明で用いられる金
属支持体の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ま
しくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm
〜0.3mmであり、プラスチックや加工紙などその他の
支持体の厚みはおよそ0.1mm〜2.0mm程度、好まし
くは0.2mm〜1.0mmである。
【0066】アルミニウム支持体を用いる場合は、表面
を粗面化して用いることが好ましい。その場合、所望に
より、粗面化に先立って表面の圧延油を除去するため
の、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶
液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表
面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例え
ば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解
粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方
法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨
法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの
公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な
粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または
直流により行うなど公知の方法を利用することができ
る。また、粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じ
てアルカリエッチング処理および中和処理された後、所
望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸
化処理が施される。陽極酸化の電解質の濃度は電解質の
種類によって適宜決められる。
【0067】陽極酸化の処理条件は、用いる電解質によ
り種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電
解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、
電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜
の量が1.0g/m2より少ないと、耐刷性が不十分であっ
たり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印
刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」
が生じ易くなる。
【0068】印刷原板の高温親水性発現特性を高めるに
は、断熱層を画像形成層の下層に設けることが有効であ
る。光熱変換による描画を行う場合には、その光に対し
て機能性表面が透明である場合には下層に光熱変換層を
設けてもよい。
【0069】以上で本発明の印刷方法に使用する光触媒
能又は高温親水性発現特性あるいはその両方を有する物
質を使用したネガ型方式の印刷原板の構成について説明
したので、次に光触媒能又は高温親水性発現特性を有す
る物質の表面の有機化合物との接触又は疎水性発現温度
への加熱による疎水性化について説明する。
【0070】〔全面疎水性化〕全面疎水性化は、前記し
たように有機化合物と接触させるか、疎水性発現温度に
加熱することによって行われる。後者の場合は、有機化
合物が存在すると疎水性化が促進されることを見いだし
ているので、疎水性発現温度で有機化合物を接触させる
ことも好ましい。また、有機化合物との接触も気相接
触、塗布、噴霧、浸漬などの方法を用いることができる
ことも前記した通りである。
【0071】原板と接触することによって、その表面を
疎水性化する効果をもつ好ましい有機化合物は、温度4
00℃における蒸気圧が少なくとも1mmHgで、かつ
蒸気圧が1mmHgとなる温度において安定な有機化合
物である。つまり、この程度の蒸気圧を有している有機
化合物が原板に接触できる状態で存在すると親水性と疎
水性の識別性の向上が引き起こされる。より好ましく
は、温度300℃における蒸気圧が少なくとも1mmH
gで、かつ蒸気圧が1mmHgとなる温度において安定
な有機化合物である。さらに好ましくは、沸点が30〜
400℃にあって、かつ30〜400℃の温度範囲で安
定な有機化合物である。その中でも好ましい沸点範囲は
50〜350°Cである。別の観点からは、20℃にお
いて煤なくとも10mmHgの蒸気圧を持つ有機化合物
が好ましい。また、固体化合物においては、少なくとも
エタノール、アセトン、ベンゾール及び2,2,4−リ
メチルペンタンのいずれかに溶解して溶液状態で印刷用
原板表面に適用できるものがよい。この温度範囲の沸点
をもつ有機化合物は、具体的には脂肪族及び芳香族炭化
水素、脂肪族及び芳香族カルボン酸、脂肪族及び芳香族
アルコール、脂肪族及び芳香族エステル、脂肪族及び芳
香族エーテル、有機アミン類、有機珪素化合物、また、
効果は大きくはないが印刷用インキに添加できることが
知られている各種溶剤や可塑剤類の中に見られる。
【0072】好ましい脂肪族炭化水素は、炭素数8〜3
0の、より好ましくは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素
であり、好ましい芳香族炭化水素は、炭素数6〜40
の、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素で
ある。好ましい脂肪族アルコールは、炭素数2〜30
の、より好ましくは炭素数2〜18の脂肪族アルコール
であり、好ましい芳香族アルコールは、炭素数6〜30
の、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族アルコール
である。好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数2〜24
の脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは炭素数2〜
20の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数4〜12の脂肪
族ポリカルボン酸であり、また、好ましい芳香族カルボ
ン酸は、炭素数6〜30の、より好ましくは炭素数6〜
18の芳香族カルボン酸である。好ましい脂肪族エステ
ルは、炭素数2〜30の、より好ましくは炭素数2〜1
8の脂肪酸エステルであり、好ましい芳香族エステル
は、炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜18
の芳香族カルボン酸エステルである。好ましい脂肪族エ
ーテルは、炭素数8〜36の、より好ましくは炭素数8
〜18の芳香族エーテルであり、好ましい芳香族エーテ
ルは、炭素数7〜30の、より好ましくは炭素数7〜1
8の芳香族エーテルである。そのほか、炭素数7〜30
の、より好ましくは炭素数7〜18の脂肪族あるいは芳
香族アミドも用いることができる。
【0073】具体例としては、2,2,4−トリメチル
ペンタン(イソオクタン)、n−ノナン、n−デカン、
n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチル
ヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオク
タンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシ
レン、クメン、ナフタレン、アントラセン、スチレンな
どの芳香族炭化水素;ドデシルアルコール、オクチルア
ルコール、n−オクタデシルアルコール、2−オクタノ
ール、ラウリルアルコールなどの1価アルコール;プロ
ピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエ
チレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコー
ル、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール;ベ
ンジルアルコール、4−ヒドロキシトルエン、フェネチ
ルアルコール、1−ナフトール、2−ナフトール、カテ
コール、フェノールなどの芳香族アルコール;酢酸、プ
ロピオン酸、酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン
酸、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪
族1価カルボン酸;しゅう酸、琥珀酸、アジピン酸、マ
レイン酸、グルタール酸などの多価脂肪族カルボン酸;
安息香酸、2−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸な
どの芳香族カルボン酸;酢酸エチル、酢酸イソブチル、
酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸
エチル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、しゅう酸ジメ
チル、琥珀酸ジメチル、クロトン酸メチルなどの脂肪族
エステル;安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチル
などの芳香族カルボン酸エステル;イミダゾール、トリ
エタノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキシ
ルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレンテ
トラミン、アニリン、オクチルアミン、アニリン、フェ
ネチルアミンなどの有機アミン;アセトン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノンな
どのケトン類、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、
メトキシトルエン、ラウリルメチルエーテル、ステアリ
ルメチルエーテルなどのエーテル及びステアリルアミ
ド、ベンゾイルアミド、アセトアミドなどのアミド類が
挙げられる。
【0074】また、印刷用インキの成分であるアマニ
油、大豆油、けし油、サフラワー油などの油脂類、燐酸
トリブチル、燐酸トリクレシル、フタール酸ジブチル、
ラウリン酸ブチル、フタール酸ジオクチル、パラフィン
ワックスなどの可塑剤も挙げられる。
【0075】そのほか、沸点が前記の好ましい範囲にあ
るエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキ
サノン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソ
ルブアセテート、1,4−ジオキサン、ジメチルホルム
アミド、アクリロニトリルなどの有機溶剤も使用するこ
とができる。
【0076】好ましい有機珪素化合物は、ジメチルシリ
コーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどで
代表されるオルガノポリシロキサン化合物であり、とく
に重合度が12以下のオルガノポリシロキサン類であ
る。これらの好ましいオルガノポリシロキサンはシロキ
サン結合単位当たり1〜2個の有機基が結合しており、
その有機基は、炭素数が1〜18のアルキル基及びアル
コキシ基、炭素数が2〜18のアルケニル基及びアルキ
ニル基、炭素数が6〜18のアリール基、炭素数が7〜
18のアラルキル基、炭素数が5〜20の脂環式基であ
る。また、これらの有機置換基には、さらにハロゲン原
子、カルボキシル基、ヒドロキシ基が置換してもよい。
また、上記のアリール基、アラルキル基、脂環式基に
は、上記の炭素数の範囲でメチル基、エチル基又はプロ
ピル基などの低級アルキル基がさらに置換していてもよ
い。
【0077】本発明に使用できる好ましい有機珪素化合
物の具体例は、下記の化合物であるが、本発明はこれら
に限定されるものではない。好ましいポリオルガノシロ
キサン類としては、炭素数1〜5のアルキル基を有す
るジアルキルシロキサン基、炭素数1〜5のアルコキ
シ基を有するジアルコキシシロキサン基、炭素数1〜
5のアルコキシ基とフェニル基を有するアルコキシフェ
ニルシロキサン基及びエトキシメトキシシロキサン基
又はメトキシエトキシシロキサン基のうち、少なくとも
一つを繰り返し単位として含み、重合度が2〜12、よ
り好ましくは2〜10のポリオルガノシロキサンであ
る。また、その端末基は、炭素数1〜5のアルキル基、
アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のヒドロキアル
キル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基である。より好
ましい端末基は、メチル基、エチル基、イソプロピル
基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メ
トキシ基及びエトキシ基である。
【0078】その中でも好ましいシロキサン化合物は、
重合度が2〜10のジメチルポリシロキサン、重合度が
2〜10のジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキ
サン共重合物、重合度が2〜8のジメチルシロキサン−
ジフェニルシロキサン共重合物、重合度が2〜8のジメ
チルシロキサン−モノメチルシロキサン共重合物でこれ
らのポリシロキサン化合物の端末はトリメチルシラン基
である。そのほか、1,3−ビス(3−アミノプロピ
ル)テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3−ア
ミノプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、1,3−
ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサ
ン、1,5−ジブチル−1,1,3,3,5,5−ヘキ
サエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘ
キサエチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、3−
(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,
3,5,5,5−ヘプタメチル−トリシロキサン、デカ
メチルテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0079】特に好ましいシロキサン化合物として、市
販のいわゆるシリコーンオイルがあり、ジメチルシリコ
ーンオイル(市販品では、例えばシリコーンKF96
(信越化学工業(株)製)、メチルフェニルシリコーン
オイル(市販品では、例えばシリコーンKF50(信越
化学工業(株)製)、メチルハイドロジェンシリコーン
オイル(市販品では、例えばシリコーンKF99(信越
化学工業(株)製)が挙げられる。
【0080】そのほか、n−デシルトリメトキシシラ
ン、n−デシルトリ−t−ブトキシシラン、n−オクタ
デシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエト
キシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどのシラン
化合物も挙げらることができる。
【0081】上記の有機化合物のうち、とくに好ましい
化合物は、シリコーンオイル、脂肪酸、そのグリセリン
エステル及びそのアミド、及び炭素数6以上の脂肪族ア
ルコールである。また、別の分類観点からは、有機概念
図における有機性が80〜1200(ポリマーの場合は
繰り返し単位当たり)、好ましくは100〜600(ポ
リマーの場合は繰り返し単位当たり)であり、その有機
性/無機性の比が0.8〜無限大(すなわち無機性が
0)、好ましくは1.0〜10の範囲に入る有機化合物
である。有機概念図については、田中善生著「有機概念
図」(三共出版社、1983年初版刊行)の1〜31頁
に詳記されている。有機概念図上の上記の範囲の有機化
合物が疎水性化を促進する作用を持つ理由は不明である
が、この範囲の化合物は中程度の極性を有し、かつ有機
性が比較的大きい化合物であり、その適度の極性が、原
板への吸着力をもたらし、その比較的大きな有機性が原
板表面の吸着面を疎水性にするものと推定している。
【0082】有機化合物を原板表面に接触させる好まし
い方法は、低沸点の有機化合物の場合は、蒸気曝気用の
外套を設けてその中に化合物充填容器を置いて、有機化
合物の蒸気を外套内に存在させて、外套内の原板が蒸気
に曝される状態にするのがよい。また、有機化合物を含
浸させた紙、布、ゼオライト、珪草土などを外套内に挿
入するのもよい。
【0083】有機化合物が液体の場合は、上記の外套の
中に、有機化合物の液体を塗布、噴霧又は浸漬する装置
を設けて原板表面に有機化合物を直接接触させる。ま
た、固体有機化合物の場合は、適当な有機溶剤、たとえ
ばメタノール、アセトン、ベンゾール、2、2、4−ト
リメチルペンタン又は前記した本発明に好ましい有機化
合物から液体のものを選んでその中に溶解して溶液とし
て上記した方法で接触させてもよい。以上で疎水性化の
方法及び操作の説明を終わり、次の段階である疎水性化
した表面への活性光の像様照射又は高温親水性発現温度
での像様加熱による親水性領域の付与について説明す
る。
【0084】〔像様親水性化〕印刷用原板が光触媒能を
有する材料で作られている場合は、その表面に活性光を
像様に照射して親水性領域を形成させる。その光源は、
光触媒能を有する物質の感光域の波長の光、すなわち光
吸収域に相当する波長の光を発する光源である。例えば
光触媒能を有する物質が酸化チタンの場合では、アナタ
ーゼ型が387nm以下,ルチル型が413nm以下、
酸化亜鉛は387nm以下に、その他の多くの金属酸化
物の場合も250〜390nmの紫外部に感光域を有し
ており、また、酸化亜鉛の場合は、固有吸収波長域(紫
外線領域)のほかに、既知の方法で分光増感を行って適
用できる活性光の波長領域を拡げることもでき、したが
って使用される光源は、これらの波長領域の光を発する
光源であり、主として紫外線を発する光源といえる。活
性光の光触媒作用によって親水性領域の像様の分布を形
成させる手段には、面露光方式、走査方式のいずれでも
よい。
【0085】面露光方式の場合は、一様な光をマスク画
像(例えば印刷原稿を現像したリスフィルム)を通して
原板上に照射して、照射領域の表面を親水性化する方式
である。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から
支持体とマスク画像を通して露光することもできる。面
露光方式で活性光の照射を行うのに適した光源は、水銀
灯、タングステンハロゲンランプ、その他のメタルハラ
イドランプ、キセノン放電灯などである。その露光時間
は、上記の露光強度が得られるように露光照度を勘案し
て決定される。
【0086】好ましい照射光の強さは、光触媒型金属酸
化物の画像形成層の性質によって異なり、また活性光の
波長、分光分布及び光触媒能を有する高温親水性発現型
物質の光吸収率によっても異なるが、通常はマスク画像
(例えば現像済みリスフィルム)で変調する前の面露光
強度が0.05〜100joule/cm2 ,好ましく
は0.05〜10joule/cm2 ,より好ましくは
0.05〜5joule/cm2 である。また、光触媒
反応には相反則が成立することが多く、例えば10mW
/cm2で100秒の露光を行っても、1W/cm2
1秒の露光を行っても、同じ効果が得られる場合も多
く、このような場合には、活性光を発光する光源の選択
の幅は広くなる。
【0087】後者、すなわち走査式露光の場合には、画
像マスクを使用する代わりにレーザービームを画像で電
気的に変調して原板上を走査する方式が行われる。レー
ザー光源は、活性光のビームを発振する公知のレーザー
を用いることができる。例えば、励起光として発振波長
を325nmに有するヘリウムカドミウムレーザー、発
振波長を351.1〜363.8nmに有する水冷アル
ゴンレーザー、330〜440nmに有する硫化亜鉛/
カドミウムレーザーなどを用いることができる。さら
に、紫外線レーザー、近紫外線レーザー発振が確認され
ている発振波長を360〜440nmに有する窒化ガリ
ウム系のInGaN系量子井戸半導体レーザー、及び発
振波長を360〜430nmに有する導波路MgO−L
iNb03反転ドメイン波長変換型のレーザーを使用す
ることもできる。レーザー出力が0.1〜300Wのレ
ーザーで照射をすることができる。また、パルスレーザ
ーを用いる場合には、ピーク出力が1000W、好まし
くは2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。支
持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通
して露光することもできる。
【0088】一方、印刷用原板が高温親水性発現特性を
有する材料で作られている場合には、疎水性化した表面
を高温親水性発現温度で像様加熱して親水性領域を付与
する。その加熱手段には、一つには赤外線を放射する固
体レーザー、又は赤外線域や可視域の光を放射する半導
体レーザー、赤外線灯、キセノン放電灯、大容量コンデ
ンサーからの放電によってフラッシュ光を発する光・熱
変換描画機構などの光加熱方式と、他の一つには熱融解
型及び昇華型感熱色素転写による熱記録ヘッド等の接触
加熱方式が用いられる。加熱温度を高温親水性発現温度
の範囲に調節するには、加熱に用いる光の強度を制御し
たり、あるいは熱記録用の加熱ヘッドへの供給電力を制
御するなどの方法が取られる。
【0089】光加熱方式の像様加熱は、面露光方式、走
査方式のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方
式や、キセノン放電灯の高照度の短時間光をマスク画像
を通して原板上に照射して光・熱変換によって熱を発生
させる方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用す
る場合には、その照度によっても好ましい露光量は変化
するが、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度
が0.1〜10J/cm2の範囲であることが好ましく、
0.3〜1J/cm2 の範囲であることがより好ましい。支
持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体とマ
スク画像を通して露光することもできる。その露光時間
は、0.01μsec〜10msec、好ましくは0.
1μsec〜1msecの照射で上記の露光強度が得ら
れるように露光照度を選択するのが好ましい。照射時間
が長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生成した熱
エネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度を増加さ
せる必要が生じる。
【0090】後者、すなわち走査方式の場合には、赤外
線レーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変
調して原板上を走査する方式が行われる。レーザー光源
の例として、近赤外線、赤外線の成分の多い半導体レー
ザー、ガスレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、Y
AGレーザーを挙げることができる。レーザー出力が
0.1〜300Wのレーザーで照射をすることができ
る。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピーク出
力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照
射するのが好ましい。支持体が透明である場合は、支持
体の裏側から支持体を通して露光することもできる。光
で加熱する場合は、例えば印刷原板に光熱変換層を設け
て、その層に光エネルギーを吸収させ、熱を発生させる
ことができる。あるいは、高温親水性発現型物質それ自
体が光を吸収して自ら発熱することにより加熱すること
もできる。
【0091】接触加熱方式では、公知の任意の接触型熱
記録装置、例えば熱融解型及び昇華型感熱色素転写法の
熱記録ヘッドが用いられる。それらは、単一の熱記録素
子を二次元に駆動させる方式、熱記録素子を線状に配列
したアレイを直角方向に走査して描画する方式あるいは
二次元配列した記録素子を用いる高速描画方式など公知
の熱記録素子を用いることができる。なお、本明細書で
感熱記録と加熱記録は、同義でともに像様記録に関して
用いている。
【0092】以上で本発明の印刷方法の操作手順の第2
段階、像様親水性領域の形成、について説明した。第
1、第2段階の操作によって親水性領域と疎水性領域の
像様分布の形成がされたので、この段階でも印刷版とし
て印刷することができるが、本発明においては、印刷工
程に入る前に、さらに次に述べる電解以降の工程を加え
てインキ受容領域に有機物沈析層を設けて、発明の目的
であるインキ受容能の向上(すなわちインク汚れを防
止)と耐刷性の向上を図ることが特徴である。
【0093】〔像様有機皮膜の形成〕第3段階は、疎水
性領域と親水性領域が像様に形成された印刷原板上の親
水性領域に有機皮膜を形成する工程である。図1は、像
様有機皮膜の形成段階の印刷原板、電解液及び対極の配
置などを示した概略図である。図1に示すように、印刷
原板Pの表面の光触媒能又は高温親水性発現特性を有す
る物質表面3に電解液の液膜4が塗布又は流し込みによ
って設けられる。印刷原板が一方の電極(通常陰極)と
なり、液膜を挟んで原板Pと対向する対向電極(通常陰
極)5が設けられてその間に電源装置6から電圧が印加
されて電解反応が行われる。原板Pの表面3には疎水性
と親水性の像様分布が形成されているが、原板の疎水性
領域では表面が一種の界面抵抗層となるので、電解作用
は行われないのに対して、親水性領域では、原板と電解
液との界面の抵抗が少なく、選択的に電解反応が進行
し、その電解反応の結果、電解液中の有機化合物が不溶
解性となって沈析する。したがって親水性領域には有機
物沈析層が形成され、それに伴って電解反応の進行も遅
くなるが、必要な厚みの有機物沈析層が生成した段階で
電解を終える。ただし、電解のさいに必要以上に高い電
圧を印加すると疎水性領域の電解反応が起こる場合があ
る。有機化合物の種類や光触媒能又は高温親水性発現特
性を有する原板材料の種類に応じて適切な印加電圧が決
められる。
【0094】なお、第2段階で述べた親水性化が加熱を
伴わない活性光の照射による場合は、第2段階と第3段
階は並行して進めることができる。つまり、電解液を原
板表面に導入した状態で活性光を照射して親水性化した
表面が直ちに電解反応を受けられるように操作すること
もできる。原板が透明材料で構成されている場合は、活
性光の照射を原板の背面から行ってもよい。電解液の厚
みは、電解液の組成、電流密度及び原板の種類などによ
って異なるが、通常0.1〜20mm、好ましくは0.
3〜5mmである。
【0095】(電解液)電解液には、少なくとも(1)
親水性領域に沈析する有機皮膜の前駆体成分と(2)電
解を促進する電解質及び(3)沈析反応を最適に行うた
めのpH調節剤及び緩衝剤からなっている。
【0096】(1)有機皮膜の前駆体成分 有機皮膜の前駆体成分は、有機皮膜の種類や皮膜形成機
構によってつぎに示すような種々の化合物を用いること
ができる。 水溶性又は水分散性蛋白質 ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、フタール化ゼラチン
などの変性ゼラチン。この群の物質は、天然由来のもの
で、本来は水溶性であり、かつ、両性で酸性雰囲気で溶
解度が低下するか又は金属イオンと結合して不溶性化す
る性質を有している。
【0097】水溶性高分子 水溶性基が電解反応でブロックされたり、脱水和した
り、錯塩形成したりして溶解度が低下する性質を有する
水溶性高分子であれば、本発明に用いることができる。
これらの水溶性高分子としては、アクリル酸、メタクリ
ル酸、アクリルアミド、スチレン、ジビニルベンゼンな
どが共重合体となっているアクリル系樹脂、PVAやそ
の変性ポリマーなどのPVA系樹脂、水溶性ではあって
も溶解度が小さいカルボキシル基含有ポリマー及びオリ
ゴマーなどが挙げられる。 ラテックス分散体 ラテックス分散体としては、表面が水和して安定分散し
ているアクリル・メタクリル・スチレン共重合物などの
公知のラテックスラテックス分散体を本発明に用いるこ
とができる。
【0098】界面活性剤 カルボキシル基又は硫酸基などをもつ長鎖脂肪族あるい
は芳香族界面活性剤、例えばアルキルナフタレンジカル
ボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、それらのオリ
ゴマー、脂肪族カルボン酸、アルキル硫酸など、水溶性
であるが、水溶性基がブロックされると不溶解性となる
界面活性剤を用いることができる。 アクリルアミド 重金属イオンの存在によって触媒的に付加重合を開始す
るエチレン性不飽和基を有する水溶性又は水分散性モノ
マー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドなど。
【0099】(2)電解を促進する電解質 電解を促進する電解質は、水溶性でかつ安定であり、電
極不活性な塩類であれば任意の塩類を用いることができ
る。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化
ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化
カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、、重硫酸ナ
トリウム、重硫酸カリウム、硫酸アンモニウム硝酸ナト
リウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリ
ウムなど水溶性の無機塩類を挙げることができる。
【0100】(3)沈析反応を最適に行うためのpH調
節剤及び緩衝剤 有機皮膜の生成の電解反応が、水素イオンや水酸イオン
の電解生成に伴う前駆体の不溶解化による場合をはじ
め、電解の進行と沈殿生成に好適なpHを具現するため
に電解液には酸剤、アルカリ剤が加えられる。また、p
H緩衝能を必要とする場合もある。従って、電解液には
対象とする皮膜生成反応に応じて適した酸剤、アルカリ
剤およびpH緩衝能の適当な組み合わせが選択される。
これらの酸剤、アルカリ剤およびpH緩衝能には、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水
酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化アンモニウ
ム、炭酸アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二
水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カ
リウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウ
ム、ほう酸、ほう砂、メタほう酸ナトリウム、メタほう
酸カリウムなどが挙げられる。そのほか酢酸、蟻酸、く
えん酸、酒石酸、しゅう酸、リンゴ酸などの低分子有機
酸及びそのナトリウム、カリウム塩なども用いられる。
電解液中には必要によってその他の化合物、たとえばE
DTAやNTAなどの硬水軟化剤も加えられる。
【0101】(4)電解反応の形態 原板の親水性領域は、通電によって、a.金属イオンの
溶出、b.水電解によるプロトンの発生と酸性化又は
c.水酸イオンの発生とアルカリ性化のいずれかが起こ
る。一方、原板の疎水性領域は、電解質水溶液の接触が
ないので、電解は起こらない。したがって、電解反応
は、像様に親水性領域においてのみ起こり、電解反応生
成物として有機皮膜が像様に発生して、親水性領域を被
覆する。有機皮膜生成の電解反応には、つぎの反応形式
(スキーム)が挙げられる。
【0102】スキーム1:酸性化沈降 陽極酸化の結果、水電解が優先的におこり、親水性領域
の表面でプロトンが発生してpHが低下するので、酸性
域で溶解度の低い高分子が沈析して親水性領域を画像状
に被覆するスキームであり、この場合は陽極側の酸性化
が進み易いように酸化されやすいプロトン発生電位より
低い酸化電位を持つイオン種が少なく、かつ緩衝能も低
い電解液を設計する。
【0103】(例1)(メタ)アクリル酸系オリゴマー 電解生成する水素イオンによって起こる程度の酸性化で
溶解度が低下するようにオリゴマー化した(メタ)アク
リル酸系オリゴマーを使用する。オリゴマーには(メ
タ)アクリル酸と共重合する成分を含んでよい。この場
合も、電解液は、オリゴマーのpK付近のpHにあっ
て、かつ緩衝能が乏しいように設計される。 (例2)(メタ)アクリル酸系ラテックス分散物 (メタ)アクリル酸を共重合成分として含み、そのほか
にスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニ
トリル、ジビニルベンゼンなどの不飽和二重結合をもつ
モノマー類から選ばれる共重合成分からなるコポリマー
ラテックス分散物も用いることができる。共重合物の等
電点付近のpHをもつ電解液を使用して、例1と同様、
僅かな電解による水素イオンの僅かな発生でも敏感に溶
解度の変化が起こるように設計して、酸性化により分散
物を不安定化させて凝集沈降させる。
【0104】(例3)ゼラチン水溶液 これも上記と同様に等電点におけるゼラチンの溶解度の
変化を利用したもので、陽極(原板表面)近傍のpHが
4.8以下になるとゼラチンの分子内中和によって水和
数が減少して不溶化する。 (例4)フタール化ゼラチン水溶液 等電点におけるゼラチンの溶解度の変化を利用するとい
う方式では、例えば、フタール化ゼラチンのようなアミ
ノ残基が少ない変性ゼラチンが効果的である。等電点
は、ゼラチンよりも低くなり、疎水性の程度はゼラチン
よりも大きくなる。
【0105】(例5)カゼイン水溶液 上記と同様、等電点におけるゼラチンの溶解度の変化を
利用するという方式であり、水溶性残基が少ないだけゼ
ラチンよりも効果的に沈析する。 (例6)ゼラチン・沈降剤混合水溶液 写真乳剤製造の際に使用するゼラチンの等電点以下でゼ
ラチンを沈降させる沈降剤を溶解させたpHが5以上の
水溶液を使用する。電極近傍でプロトンの発生に伴っ
て、pHがゼラチンの等電点以下となり、沈降剤とゼラ
チンが凝集沈降する。ゼラチン、コラーゲン、カゼイン
などの蛋白質とアルキルナフタレンスルホン酸(アルキ
ル基の炭素数は1〜8)、ナフタレンスルホン酸・ホル
ムアルデヒド縮合物(2乃至5分子縮合物)、ナフタレ
ンスルホン酸などとの混合水溶液が用いられる。
【0106】スキーム2:重合による沈降 このスキームでは、陽極から電解液中に溶けだす鉄イオ
ンによって重合反応が起こり、ポリマーの沈降が起こ
る。 (例1)アクリルアミドの水溶液 アクリルアミドを電解質水溶液に添加して使用する。電
極には酸化第2鉄のような高温親水性発現性の金属酸化
物を使用する。この場合、電解溶出した鉄イオンによっ
て重合が開始され、ポリアキリルアミドの皮膜が親水性
領域に沈析する。
【0107】スキーム3:錯結合生成による沈降 このスキームでは、陽極から電解液中に溶けだす金属イ
オンによってポリマー分子同士の架橋錯結合が起こり、
ポリマーの沈降が起こる。 (例1)電解液としては、アクリル酸オリゴマーの電解
質水溶液又は蛋白質分子の電解質水溶液(分散液のこと
もある)で、原板から溶出する鉄イオンによってカルボ
キシル基などの水溶性基のプロトンが置換されて不溶解
化し、さらに条件を選ぶと多価イオンであるので、分子
同士の架橋によっても沈降が促進され、水和イオンを失
って不溶解化する。
【0108】スキーム4:不溶解性金属塩生成による沈
降 このスキームでは、陽極から電解液中に溶けだす金属イ
オンによって溶解している成分が不溶解性金属塩となっ
て沈降が起こる。 (例1)脂肪族や芳香族の界面活性剤の水溶液と、鉄系
の印刷原板 ベヘン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウム、ステアリン
酸ナトリウムなどの脂肪族長鎖カルボン酸をメタノール
・水混合溶液に溶解した電解液を使用する。原板から溶
出する鉄イオンによってカルボキシル基が鉄イオンと反
応して不溶解性の脂肪族鉄塩を形成して沈降する。
【0109】以上原板上の親水性領域で選択的に進行す
る電解反応に伴う有機皮膜の像様形成が行われる第3段
階について説明した。上記した有機皮膜前駆体、有機皮
膜形成の電解反応及び電解液の組成は、本発明の態様を
具体的に示す例であって、本発明は、これらの例に限定
されない。つぎに第4段階について説明する。
【0110】〔疎水性領域の親水性化〕第4段階は、あ
らかじめ疎水性化されていた領域を洗浄、活性光照射な
どの何らかの手段で親水性化し、インキ反発性とする段
階である。この段階では、第2段階で用いられた親水性
か手段が用いられるが、異なる点は、第2段階では親水
性領域を像様に形成したが、この段階では、有機皮膜の
ない領域を一様に親水性化すればよいので、レーザー描
画や感熱記録用ヘッドなどの走査型照射や加熱方式より
もuv光などの活性光の全面照射や、赤外線灯や電熱に
よる全面加熱高温親水性発現温度への全面加熱が容易で
ある。この加熱によって原板の疎水性領域が親水性に変
化する理由は、不明であるが、表面に吸着して疎水性に
寄与していた有機成分が、活性光がもたらす光励起によ
って、あるいは加熱による分子振動準位の励起によって
脱着するものと推定している。
【0111】別の方法としては、メタノール・水混合溶
液やメタノール・アセトン・水混合溶液などで疎水性領
域を洗浄して、表面の有機化合物の層を除去する方法も
用いることができる。ただし、この目的に使用する有機
・無機混合水溶液は、有機皮膜が溶解しない程度の水溶
性を持つものでなければならない。第4段階を終える
と、当初親水性化された領域が第3段階で有機皮膜をえ
て疎水性つまりインキ受容性となり、当初疎水性化され
た領域が親水性となる。この段階で、印刷用原板は、次
の印刷工程に送ることができる。
【0112】〔印刷〕平版印刷版の非画像部は、十分に
親水性化しているが、所望により、水洗水、界面活性剤
等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含
む不感脂化液で後処理してもよい。本発明の画像記録材
料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、
これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや
脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満た
したバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動
コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した
後でスキージー、あるいは、スキージーローラーで、そ
の塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与え
る。整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾
燥重量)が適当である。この様な処理によって得られた
平版印刷版は、オフセット印刷機等にかけられ、あるい
は印刷機上で製版され、多数枚の印刷に用いられる。
【0113】〔原板の再生使用〕次に印刷を終えた印刷
版の再生工程について記す。印刷終了後の印刷版は疎水
性の石油系溶剤を用いて付着しているインキを洗い落と
す。溶剤としては市販の印刷用インキ溶解液として芳香
族炭化水素、例えばケロシン、アイソパ−などがあり、
そのほかベンゾール、トルオール、キシロール、アセト
ン、メチルエチルケトン及びそれらの混合溶剤を用いて
もよい。画像物質が溶解しない場合には、布などを用い
て軽く拭き取る。また、トルエン/ダイクリーンの1/
1混合溶媒を用いるとよいこともある。
【0114】この過程でも、有機化合物が接触して原板
表面の疎水性化は行われるが、必ずしも十分ではないの
で、疎水性化にはそれに適した有機溶剤を選択して行う
のが好ましい。疎水性化には、有機概念図上の前記した
範囲にある適当な大きさの有機性と有機性/無機性比と
を具備した化合物がよい。インキ洗浄剤に含まれる溶剤
は、アセトンやメタノールのようにそれ自体の無機性の
比率が高すぎて、水への溶解性が高いので、疎水性を発
現しにくい溶剤や、逆にトルオールやケロシンなどのよ
うに有機性の比率が高すぎて、かつ極性が低い(無機性
が低い)溶剤が用いられていて、疎水性化の目的には必
ずしも適切ではない。
【0115】インキを洗浄除去した印刷版は、前記した
方法で疎水性化を行い、版面全体にわたって均一に疎水
性を回復する。この疎水性化操作は、印刷インキを洗浄
除去してから次の製版作業において活性光の像様照射を
行うまでの間の任意の時期に行ってもよいが、その原板
を次の製版工程に再使用する際に行うのが原板の保管中
の履歴の影響を排除できる点で好ましい。
【0116】本発明に係わる印刷原板の反復再生可能回
数は、完全に把握できていないが、少なくとも15回以
上であり、おそらく版面の除去不能な汚れ、修復が実際
的でない刷面の傷や、版材の機械的な変形(ひずみ)な
どによって制約されるものと思われる。
【0117】以上に述べてきたように、有機化合物との
接触によって又は疎水性発現温度で加熱のよって全面疎
水性化してから像様の親水性領域を形成し、さらにその
親水性領域に有機皮膜を設ける本発明は、均一性の高
い疎水性表面が得られること、有機皮膜によって、高
度に疎水性化できること、この皮膜の保護作用によっ
て版面の耐久性が向上していること、履歴に影響され
ず、再現性がよいことなどの利点を有している。その結
果、画像領域と非画像領域の識別性が高く、耐刷性が優
れた印刷版を再現性よく製作することができるという利
点がある。
【0118】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこ
れに限定されるものではない。 〔実施例1〕99.5重量%アルミニウムに、銅を0.
01重量%、チタンを0.03重量%、鉄を0.3重量
%、ケイ素を0.1重量%含有するJISA1050ア
ルミニウム材の厚み0.30mm圧延板を、400メッシ
ュのパミストン(共立窯業製)の20重量%水性懸濁液
と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用
いてその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。こ
れを15重量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム
4.5重量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が
5g/m2になるようにエッチングした後、流水で水洗し
た。更に、1重量%硝酸で中和し、次に0.7重量%硝
酸水溶液(アルミニウム0.5重量%含有)中で、陽極
時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形
波交番波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5
796号公報実施例に記載されている電流波形)を用い
て160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処
理を行った。水洗後、35℃の10重量%水酸化ナトリ
ウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2
になるようにエッチングした後、水洗した。次に、50
℃、30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットし
た後、水洗した。
【0119】さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液
(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用い
て、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密
度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極
酸化皮膜重量2.7g/m2とした。この支持体を水洗後、
70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間
浸漬処理し、水洗乾燥した。以上のようにして得られた
アルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計
で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは
0.58μmであった。
【0120】次いでこのアルミニウム支持体を真空蒸着
装置内に入れて、全圧1.5x10 -4Torrになるように
分圧70%の酸素ガスの条件下でチタン金属片を電熱加
熱して、アルミニウム支持体上に蒸着して酸化チタン薄
膜を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によっ
て無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が1.5/
6.5/2であり、TiO2薄膜の厚さは900オングスト
ロームであった。これを版胴1の基体に巻き付けて機上
印刷用の原板とした。
【0121】続いて、この原板に全面疎水性化処理を施
した。図2は、本実施例に用いた疎水性化処理ユニット
を示したもので、液状有機化合物又は有機化合物を溶解
した溶液を版胴1に巻き付けられた原板表面に塗布して
有機化合物の塗膜を形成させるように組み立てられた疎
水性化処理ユニットである。処理ユニットの外套40の
内部には、有機化合物液体27を満たした容器41、そ
の容器内に充填された液体に下部が浸されて液体を付着
させて取り出すディップローラー42、ディップローラ
ーに対向して取り出された液体を適量だけ受け入れるリ
バースローラー43、リバースローラー43に付着して
いる液体を転着して、それを原板表面に転写塗布するコ
ーティングローラー44から成っている。各ローラーの
表面は、液体を適量保持できるように吸液性の被覆が成
されている。図2の有機化合物用の容器41には有機化
合物液体27としてベンジルアミン(有機概念図におけ
る有機性140、無機性85)を充填して、コーティン
グローラーによって液膜の厚みが10ミクロンになる条
件で原板表面にベンジルアミンを塗布して疎水性表面を
形成させた。原板表面の水に対する接触角をContactAng
le Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて空中
水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、い
ずれの部分も68〜71度の間にあった。
【0122】次いで、US10焼き付け用光源装置ユニ
レックURM600形式GH60201X(ウシオ電気
工業(株)製)を用いて光強度100mW/cm2 のも
とで通過時間が15秒となる回転速度で版胴を回転させ
た。フィルム供給装置10から供給された現像済みフィ
ルムを通して原板表面に像様の活性光露光が行われた。
照射後の原板表面の水に対する接触角をContact Angle
Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて空中水滴
法で表面の水に対する接触角を測定したところ、いずれ
の照射領域も7〜9度の間にあった。
【0123】次に、原板上にラウリル酸5g/リットル
と塩化ナトリウム5g/リットルを含み、酢酸と酢酸ナ
トリウムでpHを4.0に調節した10%メタノール・
水混合溶液を電解液として導入し、その上にステンレス
電極板を設けて液厚みを2mmとした。ステンレス電極
を陰極とし、原板を陽極としてその間に2.5vの電圧
を印加して電流密度10A/dm2 で2分間の電解を行
い、原板の親水性領域から水素イオンを発生させた。電
極表面にはラウリル酸の皮膜の生成が認められた。対向
電極を取り除いた後、電解液を流し去り、塩酸0.05
規定の5%メタノール・水混合溶液で原板表面を洗浄し
た。洗浄したのちの有機皮膜を持たない原板表面の水に
対する接触角をContact Angle Meter CA-D(協和界面科
学(株)製)を用いて空中水滴法で表面の水に対する接
触角を測定したところ、いずれの照射領域も8〜10度
の間にあった。この版胴をサクライ社製オリバー52片
面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において
湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newc
hampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット
印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得
られ、版胴の損傷も認められなかった。
【0124】次いで、版胴の表面を印刷用インキ洗浄液
ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)と
トルエンの1/1混合液をウエスにしみ込ませて丁寧に
洗浄してインキを除去した。再び疎水性化処理ユニット
によりベンジルアミンの液膜を前記と同様にして形成さ
せ、前回と同じ方法で接触角を測定した。版表面のどの
部分も68〜72度の間にあった。
【0125】次いで、この版胴の表面に上記と同一の条
件で像様露光を行った。この版胴1をサクライ社製オリ
バー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部
3において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工
業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて5000枚
オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な
印刷物が得られ、版胴の損傷も認められなかった。
【0126】以上の繰り返しを5回実施したところ、活
性光照射後の接触角の値、加熱による接触角の回復スピ
ード及び印刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかっ
た。
【0127】〔比較例1〕実施例1におけるラウリル酸
と塩化ナトリウム混合溶液を用いた電解処理による有機
皮膜付与工程を省き、そのほかは実施例1と同じ方法で
印刷版を製作して印刷を行った。5000枚の印刷を行
うと印刷汚れを生じた。
【0128】この結果から、酸化チタン層をアルミニウ
ム支持体上に設けた印刷原板を使用し、活性光の像様照
射、有機化合物による疎水性化処理、親水性部分にラウ
リル酸の皮膜形成、疎水性部分のベンジルアミンの洗浄
除去によってネガ方式の製版による印刷が可能であり、
耐刷性も向上し、しかもインキの洗浄除去のみで印刷原
板を反復再生使用できることが示された。
【0129】〔実施例2〕真空蒸着装置中に100ミク
ロン厚みのSUS板をセットして全圧5×10-3Torrの
真空下でSUS板の片面に酸化第2鉄(Fe2 3 )の
薄膜を1000オングストロームの厚みに蒸着した。こ
の酸化第2鉄皮膜付き100ミクロンSUS板を実施例
1と同じく、印刷装置の版胴の基体に巻き付けて機上製
版型の原板とした。
【0130】図3は、実施例2に用いた疎水性化処理ユ
ニットを示したもので、有機化合物の蒸気を発生させ
て、その蒸気を含んだ雰囲気中で印刷用原板表面を疎水
性化を促進できるように、有機化合物蒸気供給手段を設
けた疎水性化処理部である。
【0131】図3において、有機化合物蒸気供給手段2
9では、空気取り入れ口24より空気が取り入れられ
て、内径約30mmの分液ろ斗タイプの硝子管を横向き
に配置した蒸発室26にコック25を経て導かれる。蒸
発室には有機化合物27(斜線で示す)が容積率が例え
ば50%になるように満たされていて、有機化合物27
の内部及び表面を空気が通過する間に必要量の有機化合
物の蒸発気体を取り込んでから、版胴1上の印刷用原板
表面に導かれ、この空気・蒸発気体の混合雰囲気中で描
画が行われる構造となっている。
【0132】疎水性化処理ユニットの外套の内部は、蒸
発室26、蒸発を促進するために必要であれば使用する
ための電熱ヒーター30及び蒸発室26と外套内部空間
にそれぞれ配した温度センサー33、32と外套内部温
度を制御する温度制御部34が配されている。
【0133】図3に示した態様の疎水性化処理部2を使
用し、有機化合物の蒸発室の温度を80℃に設定し、そ
の中にはシクロヘキサノン(有機概念図における有機性
120、無機性65)を容積率50%に充填して、空気
と接触させ、蒸発気体を原板表面に暴気させて疎水性表
面を形成させた。原板表面の水に対する接触角をContac
t Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて
空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したとこ
ろ、いずれの部分も59〜65度の間にあった。
【0134】次いで、実施例1と同じユニレックURM
600形式GH60201Xを用いて同じ条件で、現像
済みフィルムを通して原板表面に活性光の像様照射を行
った。照射後の原板表面の水に対する接触角をContact
Angle Meter CA-Dを用いて空中水滴法で表面の水に対す
る接触角を測定したところ、いずれの照射領域も10〜
13度の間にあった。
【0135】アクリルアミド20g/リットルと炭酸水
素ナトリウム10g/リットルを含んだ電解液を使用し
た。原板上にこの電解液を流し込んでその上にステンレ
ス電極板を設けて液厚みを2mmとした。ステンレス電
極を陰極とし、原板を陽極としてその間に2.5vの電
圧を印加して電流密度10A/dm2 で2分間の電解を
行い、原板から鉄イオンを発生させた。電極表面にはポ
リアクリルアミド皮膜の生成が認められた。原板表面の
水に対する接触角を前記装置を用い測定したところ、有
機皮膜部分は70〜75度の間にあった。対向電極を取
り除いた後、電解液を流し去り、塩酸0.05規定の5
%メタノール・水混合溶液で原板表面を洗浄した。洗浄
したのちの有機皮膜を持たない原板表面の水に対する接
触角をContact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)
製)を用いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測
定したところ、いずれの照射領域も10〜14度の間に
あった。
【0136】この版胴1をサクライ社製オリバー52片
面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において
湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newc
hampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット
印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得
られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0137】次いで、版胴の表面を印刷用インキ洗浄液
ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)と
トルエンの1/1混合液をウエスにしみ込ませて丁寧に
洗浄してインキを除去した。再び疎水性化処理ユニット
において上記と同じ条件で全面疎水性化した後、前と同
様の方法で接触角を測定した。版表面のどの部分も59
〜67度の間にあった。
【0138】次いで、実施例1と同じユニレックURM
600形式GH60201Xを用いて同じ条件で、現像
済みフィルムを通して原板表面に活性光の像様照射を行
った。照射後の原板表面の水に対する接触角をContact
Angle Meter CA-Dを用いて空中水滴法で表面の水に対す
る接触角を測定したところ、いずれの照射領域も10〜
13度の間にあった。
【0139】この版胴をサクライ社製オリバー52片面
印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿
し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newcha
mpion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印
刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得ら
れ、版胴の損傷も認められなかった。
【0140】この結果から、酸化亜鉛層をSUS支持体
上に設けた印刷原板を使用し、原板上に電解によってポ
リアクリルアミド皮膜を設けた本発明の方法によって、
簡易で、印刷汚れもなく、耐刷性も優れた印刷が可能で
あることが示された。
【0141】
【発明の効果】本発明の光触媒能又は高温親水性発現特
性を有する物質、とくに金属及び金属酸化物、を画像形
成層とした印刷用原板に有機化合物を接触させるか又は
原板を疎水性発現温度に加熱して、その表面を疎水性と
して、その表面に活性光を像様照射又は高温親水性発現
温度で像様加熱して、親水性と疎水性の像様分布を形成
させ、さらに有機皮膜の前駆体を含んだ電解液を用いて
電解によって原板上に像様に有機皮膜を設けた印刷版を
作成する印刷方法は、現像などの処理を必要とせず、直
接印刷版を作成することができ、かつ印刷終了後、印刷
版のインキを除去して印刷原板を再生して反復使用する
ことができる。この方法は、有機皮膜によって親水性と
疎水性の識別性と版面上の画像耐久性が強化されるの
で、印刷品質と耐刷性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる印刷原板表面の電解における各
要素の配置を示す概略図である。
【図2】有機化合物の供給・適用手段を設けた疎水性化
処理ユニットの一態様の構成を示す図である。
【図3】有機化合物蒸気の供給・適用手段を設けた疎水
性化処理ユニットの一態様の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 版胴 2 疎水性化処理ユニット 24 空気取り入れ口 25 コック 26 蒸発室 27 有機化合物 29 有機化合物供給手段 30 電熱ヒーター 32 温度センサー 33 温度センサー 34 温度制御部 40 外套 41 容器 42 ディップローラー 43 リバースローラー 44 コーティングローラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 隆 神奈川県足柄上郡開成町宮台798 富士写 真フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2H084 AA11 BB02 BB13 CC05 2H096 AA06 BA01 CA01 EA04 FA05 JA03 LA02 2H114 AA04 AA14 AA22 AA24 BA05 DA04 DA08 DA09 DA32 DA73 EA03 EA04 FA16 GA09 GA27 GA34 GA38

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光照射されるか、もしくは高温に加熱す
    ることで表面が親水性となる特性を有する金属又は金属
    酸化物の板を、有機化合物と接触させるか、又は疎水性
    となる温度に加熱することによって、該原板表面を疎水
    性とし、 次いで該表面を光で像様照射するか又は高温に像様加熱
    することにより該照射部又は加熱部を親水性に変えて、
    疎水性領域と親水性領域の像様分布を形成し、 該像様分布を有する印刷用原板上に少なくとも有機皮膜
    前駆体と電解質を含有する水溶液の層を設けて、該原板
    と該水溶液層を挟んで原板に対向して設けられた極板と
    の間に電圧を印加することによって、該原板上の親水性
    領域に該有機皮膜前駆体の反応による有機皮膜を形成さ
    せ、 さらに、該疎水性領域を親水性化する処理を施し、 該印刷用原板をインキと接触させることによって該有機
    皮膜がインキを受け入れた印刷面を形成させ、 印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法。
  2. 【請求項2】 印刷に使用した印刷版面上に残存するイ
    ンキ及び有機皮膜を洗浄除去したのち、その印刷版を印
    刷用原板として請求項1に記載の操作を反復して印刷を
    行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
  3. 【請求項3】 印刷用原板の表面が、周期律表の第3〜
    6周期に属していて、かつ0及びVII A族(ハロゲン元
    素)族以外の元素から選ばれる金属及び該金属の酸化物
    からなる群の少なくとも一つによって構成されているこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット印刷
    方法。
  4. 【請求項4】 印刷用原板の表面が、TiO2 、RTi
    3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x
    3-x x 10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、B
    はアルカリ土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、
    Dは周期律表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じ
    く4A族元素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数
    値を表す)、SnO2 ,GeO2 ,SiO2 ,Bi2
    3 ,Al 2 3 ,ZnO及びFeOx (x=1/0〜
    1.5)から選ばれる金属酸化物の少なくとも一つによ
    って構成されていることを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  5. 【請求項5】 印刷用原板の表面が、アルミニウム、
    鉄、銅、ゲルマニウム、ニッケル、亜鉛、錫及び珪素か
    ら選ばれる金属又はその合金の少なくとも一つによって
    構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    か1項に記載のオフセット印刷方法。
  6. 【請求項6】 印刷用原板表面を疎水性化するための該
    原板と有機化合物との接触が、有機化合物気体含有雰囲
    気への原板の暴露あるいは液状有機化合物又は有機化合
    物含有液体の原板上への塗布又は噴霧及び原板の浸漬の
    いずれかによって行われることを特徴とする請求項1〜
    5のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  7. 【請求項7】 有機化合物が、温度20℃において少な
    くとも10mmHg以上の蒸気圧を有する有機化合物で
    あることを特徴とする請求項1〜6にいずれか1項に記
    載のオフセット印刷方法。
  8. 【請求項8】 有機化合物が、温度20℃においてエタ
    ノール、アセトン、ベンゾール及び2,2,4−トリメ
    チルペンタンから選ばれる少なくとも一つの有機溶剤に
    少なくとも5wt%溶解する有機化合物であることを特
    徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のオフセッ
    ト印刷方法。
  9. 【請求項9】 有機皮膜を形成する電解質水溶液中の有
    機皮膜前駆体が、不飽和二重結合を有する付加重合性モ
    ノマーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか
    1項に記載のオフセット印刷方法。
  10. 【請求項10】 有機皮膜前駆体が、水溶性又は水分散
    性蛋白質、水溶性高分子、ラテックス分散物、界面活性
    剤、カルボキシル基を有する脂肪族又は芳香族化合物、
    アミノ基を有する脂肪族又は芳香族化合物から選ばれる
    化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか
    1項に記載のオフセット印刷方法。
  11. 【請求項11】 印刷用原板表面の有機皮膜が形成され
    ない疎水性領域を親水性に変化させる手段が、光による
    照射、親水性となる温度への加熱及び疎水性領域の洗浄
    から選ばれる手段であることを特徴とする請求項1〜1
    0のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  12. 【請求項12】 印刷原板を印刷機に装着された状態
    で、該印刷用原板から印刷版を製作して印刷を行うこと
    を特徴とする請求項1〜11に記載のオフセット印刷方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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