JP2002001900A - 平版印刷方法、平版印刷版および平版印刷装置 - Google Patents

平版印刷方法、平版印刷版および平版印刷装置

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JP2002001900A
JP2002001900A JP2000191699A JP2000191699A JP2002001900A JP 2002001900 A JP2002001900 A JP 2002001900A JP 2000191699 A JP2000191699 A JP 2000191699A JP 2000191699 A JP2000191699 A JP 2000191699A JP 2002001900 A JP2002001900 A JP 2002001900A
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JP2000191699A
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Hisao Oishi
尚生 大石
Nobufumi Mori
信文 森
Takashi Nakamura
隆 中村
Takao Nakayama
隆雄 中山
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 現像を必要とせず、像様露光を原板に加える
とによって実質的に印刷面が形成される、しかも印刷時
の着肉性がよく印刷汚れが少なく、かつ耐刷性に優れ
た、さらに印刷用原板を反復使用することも可能な印刷
方法を提示すること。また、印刷版の作製を印刷機上で
行うことができる上記印刷方法用の印刷装置を提示する
こと。 【解決手段】 親水・親油材料を含有する層を有する印
刷用原板に疎水性物質の層を像様に付与して画像領域を
形成させたのち、親水性強化剤の処理を施して非画像領
域の親水性を強化して印刷版面を形成させて印刷を行
い、印刷の終了後、インキ洗浄除去と、熱印加又は光照
射による履歴消去を行って印刷用原板を再使用可能とす
る平版印刷方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は平版印刷に関する。
具体的には、現像することなく製版することが可能な簡
易な平版印刷方法及び印刷版に関する。さらに印刷機上
で直接製版も可能な平版印刷方法及び装置に関する。さ
らに印刷原板を反復して使用できる印刷方法及び印刷装
置にも関する。
【0002】
【従来の技術】活性光の照射によって極性変換が引き起
こされる光触媒性化合物を利用して親水性と疎水性の像
様分布を形成させて印刷インキの像様受容領域をもつ印
刷版を製作する製版方法が簡易で現像不要な製版方法と
して数多く提案されている。この製版方法では、原板上
に像様露光を行うだけで照射領域と非照射領域にインキ
受容性とインキ反発性に別れるに足る極性変化が生じる
のでそのまま印刷にかけることができて、極めて簡易な
印刷・製版方法といえる。したがって、この方法で高品
質あるいは高耐刷性の印刷を行えるように改良の試みが
なされてきている。
【0003】例えば、特開平11−138911号、同
11−138970号公報などでは、光触媒性の金属化
合物薄層を表面に有する印刷用原板に活性光を像様に照
射して照射領域を親水性に変化させて親水性の像様分布
を形成させて印刷版とする製版・印刷方法が開示されて
いる。この方法は、活性光の像様照射だけで製版が可能
なのできわめて簡易ではあるが、非画像部を照射する
(いわゆるネガ書き込み)ので、細線がさらに細くなっ
て飛びやすいことなど画像形成能の不安定性に弱点を持
っている。
【0004】これに対して特開平11−143055
号、同11−105234号公報などでは、光触媒性の
金属化合物薄層を表面に有する印刷用原板に活性光を一
様照射した親水性の表面に疎水性物質による描画を行
い、描画領域にインクを受容領域とする、上記と同様に
簡易な細線描写に不安のない方法が提案されている。こ
の製版・印刷方法は、細線描写に不安のないなど上記の
弱点は解決されているが、画像領域と非画像領域との識
別性は必ずしも十分ではなく、かつ親水性領域が経時的
に疎水性化する現象が起こりやすいという弱点もある。
【0005】一方、特開平11−78271号公報で
は、同様に光触媒性の金属化合物薄層を表面に有する印
刷用原板に対して疎水性の画像形成物質をインクジェッ
ト型の噴霧方式で描画する方法が提案されている。以上
のように、この分野では光触媒性化合物を利用して簡易
性と印刷品質の両立を目指す提案が行われてきている
が、依然として市場の要請に十分に応えるレベルには到
達しておらず、さらなる改良が望まれている。
【0006】一方、光触媒能を有する機能的な印刷原板
は、反復再使用できることが望ましく、この観点から、
特開平11−138970号、同11−143055号
などの公報には使用済み印刷版に活性光を全面照射して
原板として再使用する方法が開示されている。この再使
用可能の原板についても上記の状況から画像部と非画像
部との識別性の改善が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
の背景にもとづくものであって、印刷・製版作業の簡易
性と優れた印刷品質とを併せ備え、かつ原板の再使用が
可能な印刷方法を提示することである。具体的には、現
像を必要とせず、印刷時の着肉性がよく印刷汚れが少な
く、かつ原板を反復して使用できる印刷方法とそれに用
いる印刷版を提示することである。本発明のさらなる課
題は、上記方法の印刷と使用原板の再生とを印刷機上で
行うことができる印刷装置を提示することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題に対して、本
発明者は印刷原板材料として、光触媒性化合物に限らず
光又は熱によって極性が変化しうる物質を広く探索した
結果、疎水性と親水性の両面の性質を内在していて、外
部からの作用に応じてそのいずれかを発現できる物質が
あり、この性質を利用するとその表面に疎水性領域と親
水性領域をそれぞれきわめて強固に形成できることを見
いだし、この特性の印刷・製版への利用を鋭意検討した
結果、本発明に到達した。すなわち本発明は下記の通り
である。
【0009】1.親水・親油材料を含有する層を表面に
有する印刷用原板に(1)疎水性物質の層を像様に付与
して画像領域を形成させたのち、(2)該表面に親水性
強化剤の処理を施して非画像領域の親水性を強化し、
(3)該画像領域がインキを受容し、該非画像領域が湿
し水を受容した版面を形成させて印刷を行い、(4)該
印刷の終了後、インキの洗浄除去と、熱印加又は光照射
による履歴消去とを該版面に施すことによって、該印刷
用原板を再使用可能とすることを特徴とする平版印刷方
法。
【0010】2.親水・親油材料を含有する層を表面に
有する印刷用原板に疎水性物質の層を像様に付与する方
法が、熱ヘッド又はレーザー光による疎水性物質の熱転
写及びインクジェット型噴射から選ばれる方法であるこ
とを特徴とする上記1に記載の平版印刷方法。
【0011】3.親水性強化剤が、脂肪族多価アルコー
ル、ポリ(アルキレングリコール)、ポリエチレングリ
コールアルキルエーテル、アルキルスルホン酸、一価ア
ルコール、水及び界面活性剤から選択されることを特徴
とする上記1又は2に記載の平版印刷方法。
【0012】4.親水性強化剤が、平版印刷用の湿し水
であることを特徴とする上記3に記載の平版印刷方法。
【0013】5.親水・親油材料が、光触媒能を有する
金属化合物、光熱変換性物質、高温親水性発現物質から
選ばれた材料であることを特徴とする上記1〜4のいず
れか1項に記載の平版印刷方法。
【0014】6.親水・親油材料が、TiO2 、RTi
3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x
3-x x 10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、B
はアルカリ土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、
Dは周期律表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じ
く4A族元素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数
値を表す)、SnO2 、Bi2 3 ,ZnO,FeOx
(x=1〜1.5)、MnO2 、ZrO2 、VOx (x
=1〜5)及びCuO並びにAg、Cu、Cr、Ti、
Co、Ge、Si、Sn、Ni、Fe及びMoから選ば
れる金属酸化物又は金属であることを特徴とする上記5
に記載の平版印刷方法。
【0015】7.親水・親油材料を含有する層を表面に
有する印刷用原板に疎水性物質の層を像様に付与したの
ち、該印刷用原板を親水性強化剤によって処理したこと
を特徴とする平版印刷版。
【0016】8.(1)親水・親油材料を含有する層を
表面に有する印刷用原板の装着部と(2)該原板に疎水
性物質の層を像様に付与して画像領域を形成させる疎水
性画像層付与部と、(3)画像領域を形成した該原板に
親水性強化剤を処理して非画像領域の親水性を強化させ
る親水性強化処理部と、(4)該画像領域にインキを供
給し、該非画像領域に湿し水を供給するインキ及び湿し
水供給部と、(5)該画像領域がインキを受容し、該非
画像領域が湿し水を受容してなる印刷面を被印刷面と接
触させて印刷を行う印刷部と、を有することを特徴とす
る平版印刷装置。
【0017】9.印刷済みの版をインキ溶剤で洗浄する
インキ除去部と、熱印加又は一様の光照射による履歴消
去を行う初期化部とを有し、該印刷版を再使用可能の印
刷原板とすることを特徴とする上記8に記載の平版印刷
装置。
【0018】本発明は、基本的には、第一に本明細書に
おいて親水・親油材料と呼んでいる前記の疎水性と親水
性の両面の性質を内在していて状況に応じてそのいずれ
の性質をも具現できる物質を利用したこと、第二に疎水
性(インキ受容性)画像部を形成させるポジ型描画方式
を採ったこと、第三に本明細書において親水性強化剤と
呼んでいる親水性化合物を親水・親油材料に適用したこ
と、第四に親水・親油材料の光触媒性、光熱変換性又は
高温親水性を使用済み刷版の履歴の消去に利用したこと
を特徴とした発明である。親水・親油材料は、疎水層も
親水層も担持させることができる。この材料は、後述す
るように光触媒能、光熱変換能又は高温親水性の少なく
とも一つを有している。
【0019】すなわち、本発明の平版印刷方法は、親水
・親油材料を表面に有する印刷原板を用いており、まず
この印刷原板にたとえば転写などの後述する方法で疎水
性物質の層を像様に付与してインキ受容性の画像領域を
形成させ、つづいて非画像部に親水性強化処理を施して
印刷版とするという単純な方法であるが、第一に疎水性
描画材料の選択の自由度が大きく、インキ受容性に優れ
た高度に疎水性の像様領域を形成できること、第二に親
水性強化剤によって非画像部に高度かつ安定した親水性
を付与できること、第三に疎水性材料による描画である
ので、細線の細りや飛びなどがなく精度の高い印刷画像
が得られること及び第四に使用済みの刷版の履歴を親水
・親油材料の光触媒能、光熱変換能又は高温親水性を利
用して消去して、印刷原板を再生させることができるこ
とが特徴である。したがって、この方法によって、製版
工程そのものの簡易性と、優れた印刷品質と、原板の反
復使用可能にいずれをも満たした印刷版が作られる。
【0020】本発明の印刷原板は、その表面の疎水性物
質の層を像様に付与された部分が疎水性領域となり、付
与されない部分は親水性領域となる必要から、表面には
親水・親油材料を有している。さらにこの表面は、使用
済み印刷版を反復再生するために、光触媒能を有する
金属化合物、光熱変換性物質、高温親水性発現物質
のいずれかであり、したがって親水・親油材料であっ
て、かつ〜のいずれかであることが必要である。親
水・親油材料の中には、〜のいずれか一つの性質を
有するものや、二つあるいは三つの性質を併せ有するも
のがあり、その性質に応じて画像記録手段が活性光の像
様照射あるいは熱の像様適用が選択される。
【0021】本発明の製版過程は、印刷原板に像様に疎
水性物質の層を付与することから始まる。疎水性画像層
の付与は、描画によるか又は画像マスクを通して疎水性
物質を原板表面に担持させることによって行われる。描
画手段としては、疎水性物質を像様に設けることのでき
る公知の任意の方法を利用できるが、好ましい方法とし
ては溶融熱転写や昇華型熱転写方式と、インクジェット
方式の噴射塗布方式が好ましい。溶融熱転写と昇華型熱
転写方式では、レーザー光や赤外線光などのヒートモー
ドの光照射による描画でも、熱ヘッドを用いる接触描画
でもいずれであってもよい。
【0022】疎水性画像層用の物質には、印刷原板に付
着性でかつ疎水性の物質を広く選択できるが、とくに適
している疎水性物質は有機化合物であって、原板面上
に付着し易い液体、溶液状又は分散液状の疎水性物質、
噴射されて付着しやすい粒子化した疎水性物質、原
板面上への凝縮し易い昇華性の疎水性固体や揮発性の疎
水性液体、原板表面に吸着気体状疎水性物質などか
ら、適用する画像層付与手段に合わせて適した物質が選
ばれる。
【0023】本発明者は、親水・親油材料の表面は、通
常時間とともに疎水性の方向に変化してゆくことを発見
しており、これが像様に付与した疎水性領域と非画像部
の親水性領域との識別性を経時とともに弱めており、印
刷品質や耐刷性を低下させている。したがって、本発明
においては、像様疎水性領域が形成されると、比較的短
時間の間に原板表面に親水性強化剤を処理して親水性と
疎水性の識別性を高いレベルに保つ操作を施すことが特
徴である。親水性強化剤は、親水・親油材料の表面に親
水性皮膜層を形成して親水性を強化する物質であって、
その詳細は後に記す。また、平版印刷用の湿し水をこの
目的に用いることができる。
【0024】本発明の印刷方法では、印刷を終了した
後、印刷版上の印刷インキを洗浄除去して印刷原板を再
使用することができる。インキを除去しても、インキ受
容領域であった部分と湿し水受容領域であった部分に
は、インキが洗浄除去されても微妙な履歴が残って十分
に均一な親水・親油性表面ではないことがあるので、表
面のこのような親水・親油性の局部的な履歴を無くす操
作(以下初期化という)を行って、印刷原板の全面にわ
たって、状況に応じて親水性にも親油性にもなりうる親
水・親油性を回復させ、その上で上記した製版・印刷工
程を繰り返す必要がある。初期化の方法としては、親水
・親油材料の種類によって適した方法が採られる。すな
わち親水・親油材料が光触媒能を有する金属化合物であ
る場合には活性光の全面照射によって、光熱変換性物質
である場合には赤外線などの熱線照射により履歴消去温
度への昇温によって、また高温親水性発現物質である場
合には直接の熱源との接触や熱風あるいは赤外線などの
熱線照射による高温親水性発現温度への加熱によって、
一様の親水・親油性表面を回復させることができる。
【0025】熱によって履歴を消去する場合には、親水
・親油材料を含有する層の下から電熱加熱を行って版面
上の画像履歴を確実に消去する方法をとることもでき
る。
【0026】上記した本発明の印刷方法は、印刷原板を
印刷機に装着して印刷機上で上記した製版・印刷工程、
さらに原板再生工程を施すことが可能である。この方法
では、原板を印刷機に装着したまま製版、印刷、原板の
反復使用ができて、本発明の簡易性という特徴を一層発
揮することができる。原板の再生には、原板の画像履歴
消去用の加熱装置を具備した印刷装置が適している。加
熱装置は、版胴の内部に電熱ヒーターを埋め込んだ加熱
部を設けておくと電熱によって簡単に履歴を消去でき、
余分な操作が不要であって好都合である。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態をさら
に詳細に以下の順序によって説明する。はじめに本発明
に用いる印刷用原板、すなわち原板を構成する親水・親
油材料及びそれを担持する支持体について、次いで本発
明の製版過程、すなわち、まず像様疎水性領域の付与方
法及び親水性強化剤とその塗設方法について、続いて印
刷工程と印刷終了後の印刷版の再生工程について、さら
に本発明による印刷装置について順次説明する。
【0028】I 印刷用原板 〔親水・親油材料〕本発明に用いる親水・親油材料と
は、前記したように親水性及び親油性の両方の性質が内
在していて状況に応じていずれの性質をも具現できる材
料を指す。この材料に疎水性物質を適用すると、その物
質を受け入れて表面疎水性の皮膜が形成されて親水・親
油材料本来の疎水性を強化することができる。一方、親
水性物質を適用すると、同様にその物質を受け入れて表
面疎水性の皮膜が形成されて親水・親油材料本来の親水
性を強化することができる。この材料の水に対する接触
角は30〜70度で、多くは40〜60度である。すな
わち通常親水性として印刷に適しているとされる水に対
する接触角が40度以下、多くは30度以下と疎水性と
して印刷に適しているとされる60度以上、多くは70
度以上との中間の接触角を有している。本発明では、こ
の性質を巧みに利用して像様に分布させた疎水性と親水
性の両領域の疎水性と親水性を強化して識別性を高め、
印刷品質と耐刷性の向上に寄与させている。
【0029】親水・親油材料の上記の特性を有する物質
は、(a)光触媒能を有する金属化合物、(b)光熱変
換性物質、(c)高温親水性発現物質に見いだされる
が、その中には、これらのいずれかの一つの性質を有す
るものや、二つあるいは三つの性質を併せ有するものが
ある。 (光触媒能を有する金属化合物)光触媒能を有する化合
物すなわち光触媒性化合物は、活性光の照射を受けると
疎水性から親水性に極性が変化する化合物であり、本発
明に用いられる光触媒性化合物は光触媒性金属酸化物で
ある。
【0030】本発明に用いる光触媒性金属酸化物は、い
ろいろの形態の金属酸化物に見られ、単一の金属酸化
物、複合酸化物のいずれの場合もあり、また後者の場合
は、固溶体、混晶、多結晶体、非晶質固溶体、金属酸化
物微結晶の混合物のいずれからもこの特性を有するもの
が認められる。このような特性をもつ金属酸化物は、経
験的に周期律表の0と VIIA(ハロゲン元素)族を除く
第3〜6周期に属する金属元素の酸化物に見いだされ
る。なお、上記金属及び金属酸化物は、印刷版として使
用する際に湿し水に対して過度に溶解してはならないの
で、水に対する溶解度は、水100ミリリットルについ
て10mg以下、好ましくは5mg以下、より好ましく
は1mg以下である。
【0031】好ましい光触媒性金属酸化物としては、ま
ず酸化チタンと酸化亜鉛を挙げられる。中でも酸化チタ
ンが感度(つまり表面性の光変化の敏感性)などの点で
好ましい。酸化チタンは、イルメナイトやチタンスラグ
の硫酸加熱焼成、あるいは加熱塩素化後酸素酸化など既
知の任意の方法で作られたものを使用できる。あるいは
後述するように金属チタンを用いて印刷版製作段階で真
空蒸着によって酸化物皮膜とする方法も用いることがで
きる。
【0032】酸化チタン又は酸化亜鉛を含有する層を原
板の表面に設けるには、たとえば、酸化チタン微結晶
又は酸化亜鉛微結晶の分散物(必要によって少量の分散
媒すなわちバインダーを含有)を印刷版の原板上に塗設
する方法、塗設したのち焼成してバインダーを減量或
いは除去する方法、印刷原板上に蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティング、CVDなどの方法で酸化チ
タン(又は酸化亜鉛)膜を設ける方法、例えばチタニ
ウムブトキシドのようなチタン有機化合物を原板上に塗
布したのち、焼成酸化を施して酸化チタン層とする方
法、上記金属塩の水溶液を塗設して加熱し、熱分解さ
せる方法など、既知の任意の方法を用いることができ
る。本発明においては、真空蒸着又はスパッタリングに
よる酸化チタン層が特に好ましい。
【0033】上記又はの酸化チタン微結晶を塗設す
る方法には、具体的には無定形酸化チタン微結晶分散物
を塗布したのち、焼成してアナターゼまたはルチル型の
結晶酸化チタン層とする方法、酸化チタンと酸化シリコ
ンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、酸
化チタンとオルガノシロキサンなどとの混合物を塗布し
てシロキサン結合を介して支持体と結合した酸化チタン
層を得る方法、酸化物と混和できるポリマーバインダー
に分散して塗布したのち、焼成して有機成分を除去する
方法などがある。酸化物微粒子のバインダ−には、酸化
チタン微粒子に対して分散性を有し、かつ比較的低温で
焼成除去が可能なポリマーを用いることができる。好ま
しいバインダーの例としては、ポリエチレンなどのポリ
アルキレン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステ
ル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ
蟻酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリ
ビニルアルコール、ポリスチレンなどの疎水性バインダ
ーが好ましく、それらの樹脂を混合して使用してもよ
い。
【0034】上記の酸化チタンの真空蒸着を行うに
は、通常真空蒸着装置内の蒸着用加熱の熱源に金属チタ
ンを置き、真空度10-3〜10-6Paで全ガス圧1.0
〜10 -3Pa、酸素文圧比が30〜90%になるように
しながら、チタン金属を蒸発させると、蒸着面には酸化
チタンの蒸着薄膜が形成される。また、スパッタリング
による場合は、例えばスパッタ装置内にチタン金属ター
ゲットをセットしてAr/O2 比が60/40(モル
比)となるようにガス圧を0.5Paに調整したのち、
RFパワー200Wを投入してスパッタリングを行って
酸化チタン薄膜を基板上に形成させる。
【0035】一方、本発明に酸化亜鉛層を使用する場
合、その酸化亜鉛層は上記した〜など、既知の任意
の方法で作ることができる。とくに金属亜鉛板の表面を
電解酸化して酸化皮膜を形成させる方法と、真空蒸着、
スパッタリング、イオンプレーティング,CVDなどに
よって酸化亜鉛皮膜を形成させる方法が好ましい。酸化
亜鉛の蒸着膜は、上記の酸化チタンの蒸着と同様に金属
亜鉛を酸素ガス存在下で蒸着して酸化膜を形成させる方
法や、酸素のない状態で亜鉛金属膜を形成させたのち、
空気中で温度を約700°Cにあげて酸化させる方法を
用いることができる。そのほか、修酸亜鉛の塗布層やセ
レン化亜鉛の薄層を酸化性気流中で加熱しても得られ
る。
【0036】蒸着膜の厚みは、酸化チタン層、酸化亜鉛
層いずれの場合も0.1〜10000nmがよく、好ま
しくは1〜1000nmである。さらに好ましくは30
0nm以下として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、
光活性化作用を十分に発現させるには厚みが5nm以上
あることが好都合である。
【0037】酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用
できるが、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ま
しい。アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得
る過程の焼成条件を選ぶことによって得られることはよ
く知られている。その場合に無定形の酸化チタンやルチ
ル型酸化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶
が40%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の
理由から好ましい。酸化チタンあるいは酸化亜鉛を主成
分とする層における酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積
率は、それぞれ30〜100vol%であり、好ましく
は50vol%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに
好ましくは酸化物の連続層つまり実質的に100vol
%であるのがよい。しかしながら、表面の親水性/親油
性変化特性は、酸化亜鉛を電子写真感光層に用いるとき
のような著しい純度による影響はないので、100vo
lvol%に近い純度のもの(例えば98vol%)を
さらに高純度化する必要はない。それは、本発明に利用
される物性は、導電性とは関係ない膜表面の親水性/親
油性の性質変化特性、すなわち界面物性の変化特性であ
ることからも理解できることである。
【0038】しかしながら、後述する原板再生使用の際
に重要な、熱により表面親水性が変化する性質を増進さ
せるためにある種の金属をドーピングすることは有効な
場合があり、この目的にはイオン化傾向が小さい金属の
ドーピングが適しており、Pt,Pd,Au,Ag,C
u,Ni,Fe,Co又はCrをドーピングするのが好
ましい。また、これらの好ましい金属を複数ドーピング
してもよい。ドーピングを行った場合も、その注入量は
酸化亜鉛や酸化チタン中の金属成分に対して5モル%以
下である。
【0039】一方、体積率が低いと層の表面の親水性/
親油性の熱応答挙動の敏感度が低下する。したがって、
層中の酸化物の体積率は、30vol%以上であること
が望ましく、とくに実質的に100vol%であること
が好ましい。
【0040】次に、本発明に用いることができる別の光
触媒性金属化合物である一般式RTiO3 で示したチタ
ン酸金属塩について記す。一般式RTiO3 において、
Rはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリ
ウム、ベリリウムなどの周期律表のアルカリ土類元素に
属する金属原子であり、とくにストロンチウムとバリウ
ムが好ましい。また、2種以上のアルカリ土類金属原子
をその合計が上記の式に化学量論的に整合する限り共存
することができる。
【0041】次に、一般式AB2-x x 3-x x 10
で表される化合物について説明する。この一般式におい
て、Aは水素原子及びナトリウム、カリウム、ルビジウ
ム、セシウム、リチウムなどのアルカリ金属原子から選
ばれる1価原子で、その合計が上記の式に化学量論的に
整合する限りそれらの2種以上を共存してもよい。B
は、上記のRと同義のアルカリ土類金属原子又は鉛原子
であり、同様に化学量論的に整合する限り2種以上の原
子が共存してもよい。Cは希土類原子であり、好ましく
は、スカンジウム及びイットリウム並びにランタン、セ
リウム、プラセオジウム、ネオジウム、ホルミウム、ユ
ウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ツリウム、イ
ッテルビウム、ルテチウムなどのランタノイド系元素に
属する原子であり、また、その合計が上記の式に化学量
論的に整合する限りそれらの2種以上を共存してもよ
い。Dは周期律表の5A族元素から選ばれた一種以上の
金属元素で、バナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられ
る。また、化学量論関係を満たす限り、2種以上の5A
族の金属原子が共存してもよい。Eは同じくチタン、ジ
ルコニウム、ハフニウムなどの4A族元素に属する金属
原子であり、また、2種以上の4A族の金属原子が共存
してもよい。xは0〜2の任意の数値を表す。
【0042】RTiO3 、一般式AB2-x x 3-x
x 10で表される上記化合物、SnO2 ,Bi2 3
FeOx (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合
物のいずれの薄膜形成にも、酸化チタン及び酸化亜鉛を
設ける前記の方法を用いることがでる。すなわち、上
記光触媒能を有する熱応答型金属酸化物の微粒子の分散
物を印刷版の原板上に塗設する方法、塗設したのち焼
成してバインダーを減量或いは除去する方法、印刷版
の原板上に上記酸化物を各種の真空薄膜法で膜形成する
方法、例えば金属元素のアルコレートのような有機化
合物を原板上に塗布したのち、加水分解させ、さらに焼
成酸化を施して適当な厚みの金属薄膜とする方法、上
記金属を含む塩酸塩、硝酸塩などの水溶液を加熱スプレ
ーする方法など、既知の任意の方法を用いることができ
る。
【0043】例えば、上記、の塗設方法によってチ
タン酸バリウム微粒子を塗設するには、チタン酸バリウ
ムとシリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させ
る方法、チタン酸バリウムとオルガノポリシロキサンま
たはそのモノマ−との混合物を塗布する方法などがあ
る。また、酸化チタンの項で述べたように、酸化物層の
中に酸化物と共存できるポリマーバインダーに分散して
塗布した後、焼成して酸化物層とすることもできる。酸
化物微粒子のバインダ−として好ましいポリマーの例
は、酸化チタン層の項で述べたものと同じである。この
方法によって、チタン酸バリウム以外にチタン酸マグネ
シウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム
又はそれらの分子間化合物、混合物も同様に薄膜形成可
能である。
【0044】同様にして上記、の塗設方法によって
CsLa2 NbTi2 10微粒子を塗設することも可能
である。CsLa2 NbTi2 10微粒子は、その化学
量論に対応するCs2 CO3,La2 3,NbO5,TiO
2 を乳鉢で微粉砕して、白金るつぼに入れ、130°C
で5時間焼成し、それを冷却してから乳鉢に入れて数ミ
クロン以下の微粒子に粉砕する。このCsLa2 NbT
2 10微粒子を前記のチタン酸バリウムと同様にバイ
ンダーの中に分散し、塗布して薄膜を形成した。この方
法は、CsLa2 NbTi2 10型微粒子に限らず、H
Ca1.5 La0. 5 Nb2.5 Ti0.5 10,HLa2 Nb
Ti2 10など前述のAB2-x x 3- x x 10
(0≦x≦2)に適用される。
【0045】上記の真空薄膜形成法を用いた光触媒性
金属酸化物層の形成方法としては、一般的にはスパッタ
リング法あるいは真空薄膜形成法が用いられる。スパッ
タリング法では、あらかじめ単一もしくは複合型の酸化
物ターゲットを準備する。例えば、チタン酸バリウムタ
ーゲットを用いて蒸着膜用の支持体の温度を450°C
以上に保ち、アルゴン/酸素混合雰囲気中でRFスパッ
タリングを行うことによりチタン酸バリウム結晶薄膜が
得られる。結晶性の制御には必要に応じてポストアニー
リングを300〜900°Cで行えばよい。本方法は前
述のRTiO3(Rはアルカリ土類金属原子)をはじめ
他の前記光触媒能を有する熱応答型金属酸化物にも、結
晶制御に最適な基板温度を調整すれば同様の考え方で薄
膜形成が可能である。例えば酸化錫薄膜を設ける場合に
は基板温度120°C、アルゴン/酸素比50/50の
混合雰囲気中でRFスパッタリングを行うことにより酸
化錫結晶の本目的に沿う薄膜が得られる。
【0046】上記の金属アルコレートを用いる方法
も、バインダーを使用しないで目的の薄膜形成が可能な
方法である。チタン酸バリウムの薄膜を形成するにはバ
リウムエトキシドとチタニウムブトキシドの混合アルコ
ール溶液を表面にSiO2 を有するシリコン基板上に塗
布し、その表面を加水分解したのち、200°C以上に
加熱してチタン酸バリウムの薄膜を形成することが可能
である。本方式の方法も前述した他のRTiO3 (Rは
アルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x 10
(A,B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表
す)、SnO2 ,Bi2 3 及びFeOx (x=1〜
1.5)で示される酸化鉄系の化合物の薄膜形成に適用
することができる。
【0047】上記によって熱応答性機能を発現する金
属酸化物薄膜を形成させる方法も、バインダーを含まな
い系の薄膜の形成が可能である。SnO2 の薄膜を形成
するにはSnCl4 の塩酸水溶液を200°C以上に加
熱した石英又は結晶性ガラス表面に吹きつけて薄膜を生
成することができる。本方式も、SnO2 薄膜のほか,
前述したRTiO3 (Rはアルカリ土類金属原子)、A
2-x x 3-x x10(A,B,C,D,Eはそれ
ぞれ前記の定義の内容を表す)、Bi2 3 及びFeO
x (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合物のい
ずれの薄膜形成にも適用することができる。上記した光
触媒能を有する金属化合物は、特開平11−13897
0号、同11−138971号、同11−143055
号及び同11−174655号公報に開示されている。
【0048】金属酸化物薄膜の厚みは、上記のいずれの
場合も1〜10000nmがよく、好ましくは1〜10
00nmである。さらに好ましくは300nm以下とし
て光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を
十分に発現させるには厚みが5nm以上あることが好都
合である。
【0049】バインダーを使用した場合の上記光触媒能
を有する熱応答型金属酸化物の薄層において、金属酸化
物の体積率は50〜100vol%であり、好ましくは
90vol%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好
ましくは酸化物の連続層つまり実質的に100vol%
であるのがよい。その薄層の厚みは、0.01〜10μ
mがよく、好ましくは0.1〜5μmがよい。
【0050】(光熱変換性物質)光熱変換物質とは、光
を吸収して、吸収エネルギーを熱エネルギーに変換して
放出する物質を指しているが、いうまでもなく、多くの
物質は多少とも光を吸収し、光を吸収すればそれによっ
てその物質のエネルギー準位は励起し、その順位が基底
準位に戻るときに蛍燐光を発しないかぎり熱を放出する
ので、厳密には殆どの物質がたとえ僅かではあっても光
熱変換作用を持っているといえる。したがって、光熱変
換剤という場合には、光熱変換能が目的とする熱変化を
もたらすことができる大きさである場合に限るのが適切
であり、その観点からは、印刷用原板として実用できる
光熱変換剤は、吸光度が少なくとも0.3×103 c
m-1、好ましくは1×103cm -1以上、より好ましくは
1×104cm -1以上であって、かつ吸収光は実質的に蛍
光や燐光に変換されない物質を指すものとすることが実
際的である。また、吸光度が高すぎると、光熱変換作用
が光熱変換剤含有層の上部に偏り、深部の光熱変換作用
が乏しくなって却って画像形成作用を損なうこともある
ので、適切な吸光度は、0.3×108 cm-1以下、好ま
しくは1×107cm -1以下である。なお、吸光度は透過
濃度を厚みで除した値である。
【0051】光熱変換性を示す親水・親油材料は、金属
及び金属化合物の中に見いだされる。金属は周期律表の
Ib族、IIb族、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族及び
VIII族元素であり、金属化合物は、上記金属の酸化物と
遷移金属酸化物、周期律表のII〜VIII族の金属元素の硫
化物及び周期律表のIII 〜VIII族の金属元素の窒化物で
ある。これらの金属及び金属化合物は、微粒子分散物層
又は薄層の形態で用いられ、薄層の場合は表面が粗面化
されていることが好ましい。なお、上記金属及び金属酸
化物は、光触媒性金属化合物について述べたように印刷
版として使用する際に湿し水に対して過度に溶解しては
ならないので、水に対する溶解度は、水100ミリリッ
トルについて10mg以下、好ましくは5mg以下、よ
り好ましくは1mg以下である。
【0052】光熱変換性物質は、光を吸収するとそのエ
ネルギーを熱エネルギーに変換して該物質あるいはその
周辺の温度を上昇させる。温度が履歴消去温度以上に達
すると刷版に残存していた履歴が消去される。好ましい
金属は、Ag、Cu、Cr、Ti、Co、Ni、Fe、
Mo及びWであり、好ましい金属酸化物は、Ag2 O 、
CuO、CuO2 ,Cr2O3 、TiO2、Fe2 3 、M
2O3 、MoO2、TiO2、Fe2O3 、MnO2、PbO、
VOx(x=1〜5)、MnO及びWである。好ましい
遷移金属酸化物は、上記のほかCo,Te,Nb,Y,
Zr及びBiの酸化物が含まれる。これらの中では、F
eO,Fe2 3 ,Fe3 4 ,CoO,Cr2 3
MnO2 ,ZrO2 ,Bi2 3 ,CuO,CuO2
AgO,PbO,PbO2 、VOx (x=1〜5)がと
くに好ましい金属酸化物の例として挙げられる。VOx
には、黒色のVO、V2 3 、VO2 、や褐色のV2
5 がある。さらに、好ましい例には特開平11−254
849号公報に開示された金属及び金属酸化物をあげる
ことができる。
【0053】そのほかの好ましい無機金属酸化物として
は、TiOx (x=1.0〜2.0)、SiOx (x=
0.6〜2.0)、AlOx (x=1.0〜2.0)も
挙げることができる。TiOx (x=1.0〜2.0)
には、黒色のTiO、黒紫色のTi2 3 、結晶形と狭
雑物によって無色から黒色までの種々の色を呈するTi
2 類がある。SiOx (x=0.6〜2.0)には、
SiO、Si3 2 、無色あるいは共存物質によって
紫、青、赤などの色を示すSiO2 が挙げられる。ま
た、AlOx (x=1.5)には、無色あるいは共存物
質によって赤、青、緑などに呈色するコランダムなどが
挙げられる。
【0054】好ましい金属炭酸塩は、Ag2 CO3 、C
uCO3 、TiCO3 、FeCO3、Mn(CO3
2 、Mo(CO3 2 及びMn(CO3 2 である。
【0055】光熱変換性微粒子が金属硫化物からなる場
合、好ましい金属硫化物は、遷移金属などの重金属硫化
物である。中でも好ましい硫化物には鉄、コバルト、ク
ロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、スト
ロンチウム、錫、銅、銀、鉛、カドミウムの硫化物が挙
げられ、とりわけ、硫化銀、硫化第一鉄及び硫化コバル
トが好ましい。
【0056】光熱変換性微粒子が金属窒化物からなる場
合、好ましい金属窒化物は、金属のアジド化合物であ
る。とくに銅、銀及び錫のアジド化物が好ましい。これ
らのアジド化合物は、光分解によって発熱する自己発熱
性化合物でもある。そのほかの好ましい無機金属窒化物
には、TiNx (x=1.0〜2.0)、SiNx (x
=1.0〜2.0)、AlNx (x=1.0〜2.0)
などが挙げられる。TiNx (x=1.0〜2.0)と
しては、青銅色のTiNや褐色のTiNx (x=1.
3)が挙げられる。SiNx (x=1.0〜2.0)と
しては、Si2 3 ,SiN,Si3 4 が挙げられ
る。また、AlNx (x=1.0〜2.0)にはAlN
などを挙げることができる。
【0057】上記の各金属酸化物、硫化物及び窒化物
は、いずれも公知の製造方法によって得られる。また、
チタンブラック、鉄黒、モリブデン赤、エメラルドグリ
ーン、カドミウム赤、コバルト青、紺青、ウルトラマリ
ンなどの名称で市販されているものも多い。
【0058】これら光熱変換性の金属化合物は、光触媒
性金属酸化物の項で述べた蒸着、スパッタリング、C
V,分散物として塗設、塗設後焼結などの公知の方法で
支持体上に薄膜として設けられる。塗設又は塗設後焼結
する場合は、バインダーの量は金属化合物粒子の30%
以下、好ましくは20%以下であり、用いなくても分散
するのであれば用いなくてもよい。金属化合物が粒子の
状態で塗設されたり、塗設後焼結されたりする場合は、
その粒子サイズは、粒子を構成する物質の屈折率や吸光
係数によって最適サイズがことなるが、一般に0.00
5〜5μmであり、好ましくは0.01〜3μmであ
る。
【0059】光熱変換性物質の薄膜の厚みは、上記のい
ずれの場合も0.1〜10000nmがよく、好ましく
は1.0〜1000nmである。さらに好ましくは30
0nm以下として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、
光活性化作用を十分に発現させるには厚みが5nm以上
あることが好都合である。
【0060】光熱変換性物質をバインダーに分散した塗
布層とした場合において、金属酸化物の体積率は50〜
100vol%であり、好ましくは90vol%以上を
酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸化物の連
続層つまり実質的に100vol%であるのがよい。そ
の薄層の厚みは、0.01〜10μmがよく、好ましく
は0.1〜5μmがよい。
【0061】(高温親水性発現物質)本発明者達は、高
温に加熱すると極性が変化して親水性を示す化合物を見
いだして、この性質を有する物質を高温親水性発現物質
と呼び、高温親水性となる温度を高温親水性発現温度と
呼んでいる。高温親水性が現れる温度は、多くは250
°C以上であり、中には200°C以上、さらには17
0°Cにおいて高温親水性となる物質もある。また、高
温親水性発現物質の中には、50〜150°Cの加熱温
度で疎水化し、さらに加熱して高温親水性発現温度に達
すると親水性となる温度挙動をとる物質もある。高温親
水性発現物質でかつ親水・親油性でもある材料は、金属
及び金属化合物に広くみられる。金属は周期律表のIb
族、IIb族、III 族、IV族、VIa族及びVIII族元素であ
り、金属化合物は、それらの金属の不溶性塩類である。
【0062】これらの金属及び金属化合物は、微粒子分
散物層又は薄層の形態で用いられ、薄層の場合は表面が
粗面化されていることが好ましい。なお、上記金属及び
金属酸化物は、光触媒性金属化合物について述べたよう
に印刷版として使用する際に湿し水に対して過度に溶解
してはならないので、水に対する溶解度は、水100ミ
リリットルについて10mg以下、好ましくは5mg以
下、より好ましくは1mg以下である。好ましい金属
は、光熱変換性金属の項で述べたものも重複して記せ
ば、Al、Si、Cd、In、Zn、V、Ni、Ag、
Cu、Cr、Ti、Zr、Fe、Mo及びWである。好
ましい金属酸化物は、光熱変換性金属の項で述べたもの
も重複して記せば、Al2 3 、CdO、ZnO、Ag
2 O 、CuO、Cr2O3 、TiO2、TiO2、Fe2
3 、MoO2、TiO2、Fe2 3 及びWである。好ま
しい金属炭酸塩は、Ag2 CO3 、CuCO3 、Cr
2(CO3)2)3 、Pb(II)CO3 、Tl(I)CO3 、FeC
3 、MoCO3 、TiO2、Fe2(CO3)2) 2(C
3)2 、Mn(CO32 及びZnCO3 である。好ま
しい金属硫化物は、AgS、CuS及びFeSである。
高温親水性発現性の金属化合物の層を支持体上に設ける
方法は、上記の光熱変換性金属化合物の場合と同じであ
る。
【0063】高温親水性発現物質の薄膜の厚み、高温親
水性発現物質をバインダーに分散した塗布層とした場合
の体積率、及びその塗布層の厚みの好ましい範囲は、前
記した光熱変換性物質の場合と同じである。
【0064】〔支持体及び印刷用原板の形態〕次に支持
体について述べるが、本発明においては原板を印刷装置
上の版胴に装着して製版する場合もあるので、それらを
含めて説明する。本発明に係わる印刷原板は、いろいろ
の形態と材料を用いることができる。例えば、親水・親
油材料の薄層を印刷機の版胴の基体表面に蒸着、浸漬あ
るいは塗布するなど上記した方法で直接設ける方法、支
持体に担持された親水・親油材料含有層や、あるいは支
持体を持たない親水・親油材料含有薄層を版胴の基体に
巻き付けて印刷版とする方法などを用いることができ
る。また、勿論版胴上で製版する上記形態以外に、一般
的に行われているように、製版を行った印刷版を輪転式
あるいは平台式印刷機に装着する形態を採ってもよい。
【0065】親水・親油材料を支持体上に設ける場合、
使用される支持体は、寸法的にも安定な板状物であり、
アルミニウム板、SUS鋼板、ニッケル板、銅板などの
金属板が好ましく、特に可撓性(フレキシブル)の金属
板を用いることが好ましい。また、ポリエステル類やセ
ルローズエステル類などのフレキシブルなプラスチック
支持体も用いることができる。また、防水加工紙、ポリ
エチレン積層紙、含浸紙などの支持体も使用することが
できる。
【0066】具体的には、紙、プラスチックシート(例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等のシ
ート)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミ
ニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラスチックフィ
ルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、
プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セ
ルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ
リビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネー
ト、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィ
ルム等が挙げられる。
【0067】好ましい支持体は、ポリエステルフィル
ム、ポリイミドフィルム、アルミニウム、又は印刷版上
で腐食しにくいSUS板であり、その中でも寸法安定性
がよく、比較的安価であるアルミニウム板と、製版工程
における加熱操作に対して安定性の高いポリイミドフィ
ルムは特に好ましい。
【0068】好適なポリイミドフィルムは、ピロメリッ
ト酸無水物とm−フェニレンジアミンを重合させたの
ち、環状イミド化したポリイミド樹脂フィルムであり、
このフィルムは市販されている(例えば、東レ・デュポ
ン社製の「カプトン」)。
【0069】好適なアルミニウム板は、純アルミニウム
板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含
む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしく
は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニ
ウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガ
ン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッ
ケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高
々10質量%以下である。本発明において特に好適なア
ルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋な
アルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅か
に異元素を含有するものでもよい。このように本発明に
適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるも
のではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板
を適宜に利用することができる。本発明で用いられる金
属支持体の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ま
しくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm
〜0.3mmであり、プラスチックや加工紙などその他の
支持体の厚みはおよそ0.1mm〜2.0mm程度、好まし
くは0.2mm〜1.0mmである。
【0070】アルミニウム支持体を用いる場合は、表面
を粗面化して用いることが好ましい。その場合、所望に
より、粗面化に先立って表面の圧延油を除去するため
の、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶
液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表
面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例え
ば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解
粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方
法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨
法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの
公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な
粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または
直流により行うなど公知の方法を利用することができ
る。また、粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じ
てアルカリエッチング処理および中和処理された後、所
望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸
化処理が施される。陽極酸化の電解質の濃度は電解質の
種類によって適宜決められる。
【0071】陽極酸化の処理条件は、用いる電解質によ
り種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電
解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、
電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜
の量が1.0g/m2より少ないと、耐刷性が不十分であっ
たり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印
刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」
が生じ易くなる。
【0072】II 製版過程 〔疎水性物質の画像層の付与〕次に、製版過程について
説明する。支持体上に親水・親油材料を含有する層を有
する上記した印刷用原板の製版過程は、疎水性物質の画
像層の付与から始まる。以下疎水性物質の画像層の付与
の方法について、つぎに疎水性の画像層を付与する物質
について説明する。
【0073】(疎水性物質の画像層付与方法)疎水性物
質の画像層付与方法は、疎水性物質で原板表面に描画を
行うか、又は画像マスクを通して疎水性物質を原板表面
に付着させることによって行う。描画手段としては、疎
水性物質を像様に設けることのできる公知の任意の描画
手段を利用できるが、好ましい方法としてはペンによる
書き込み、熱転写方式及びインクジェット方式などの噴
射ノズル方式が好ましく、その中でも溶融熱転写及び昇
華型熱転写方式と、インクジェット方式が好ましい。溶
融熱転写と昇華型熱転写方式では、レーザー光や赤外線
光などのヒートモードの光照射による描画でも、熱ヘッ
ドを用いる接触描画でもいずれであても好ましい。一
方、画像マスクを通して疎水性物質の像形成層を親水・
親油材料を含む層の上に設けるには、塗り付け処理、ス
プレー処理、気化・凝縮法、気体接触法、浸漬処理など
公知のいずれの方法、方式をも用いることができる。
【0074】<描画方式の画像層付与方法> a.熱転写方式 熱転写方式は、熱により溶融する疎水性画像形成物質を
担持したドナーシートと原板表面を接触させた状態でド
ナーシートの画像部に熱を加えて疎水性画像形成物質を
像様に熱融解させ、ドナーシートから原板表面に転写す
る溶融熱転写方式と、昇華性の疎水性画像形成物質を担
持したドナーシートを原板表面の至近距離に配してドナ
ーシートの画像部に熱を加えて疎水性画像形成物質を像
様に昇華させて、ドナーシートから原板表面に転写する
昇華型熱転写方式がある。以下両方式をまとめて説明す
る。熱を加える方式には、レーザー光や赤外線の像様照
射による光加熱方式(ヒートモード光照射方式)と熱ヘ
ッドなどの像様接触による接触伝熱方式のいずれをも用
いることができる。
【0075】光加熱方式の像様加熱は、好ましくは赤外
線レーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変
調して原板上を走査する方式が行われる。レーザー光源
の例として、近赤外線、赤外線の成分の多い半導体レー
ザー、ガスレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、Y
AGレーザーを挙げることができる。レーザー出力が
0.1〜300Wのレーザーで照射をすることができ
る。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピーク出
力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照
射するのが好ましい。
【0076】接触加熱方式では、公知の任意の接触型熱
記録装置、例えば汎用の熱融解型及び昇華型感熱色素転
写プリンターに用いられる描画用発熱体を装備した熱ヘ
ッドが用いられ、プリンター用の感熱転写用インク(イ
ンクリボンに塗設)も疎水性であるので、転写される疎
水性画像付与物質として用いることもできる。それら
は、単一の熱記録素子を二次元に駆動させる方式、熱記
録素子を線状に配列したアレイを直角方向に走査して描
画する方式あるいは二次元配列した記録素子を用いる高
速描画方式など公知の熱記録素子を用いることができ
る。転写に適した温度に加熱ヘッドへの供給電力を制御
するなどの方法が取られる。
【0077】具体例をしては、たとえばTa-SiO2 発熱抵
抗体上にサイアロン耐磨耗保護層を設けた150μmx
150μmのサーマルヘッドを250μm間隔に並べた
感熱プリンターを用いて、酸化チタンなどの原板表面層
と接触させて画像転写を行うことができる。サーマルヘ
ッドは、20msec通電によって450°Cに達する
程度の加熱能力をもつのが好ましい。その場合は、像形
成物質にもよるが、通常走査速度を400msec/m
程度にすることができる。
【0078】b.インクジェット方式 インクジェット記録方法としては、従来公知のインクジ
ェット記録方式のいずれでもよいが、インク液の代わり
に疎水性像形成物質を用いることから油性インクを用い
る方式の装置を転用するのが好ましく、とくに静電吐出
型インクジェット方式が好ましい方式として挙げられ
る。静電吐出型であるので、静電界の処理上、印刷原板
の支持体は、導電性を有するものであることが好まし
く、少なくともその画像受理層の直下の部分が1010Ω
・cm以下の固有電気抵抗値を有するものであることが好
ましく、原板全体が1010Ω・cm以下であることがより
好ましい。上記の固有電気抵抗値は、さらに好ましく
は、108Ω・cm以下であり、その値は実質的に零であ
ってもよい。
【0079】<画像マスク方式の画像層付与方法> a.塗り付け方式 塗り付け処理は、疎水性像形成物質を透過する領域と透
過しない領域を像様に分布させてある画像マスクを通し
て液体及び固体状の疎水性像形成物質に適用できる疎水
層の付与方法であり、疎水性像形成物質が液体の場合
は、直接塗り付けてもよく、また固体の場合、あるいは
液体であっても場合により、適当な溶剤に溶解あるいは
分散したりして液状として塗り付け処理を行う。塗り付
け処理の方法としては、グラビア塗布、リバース塗布、
ホッパー塗布、スリット塗布などの公知の方法が適用で
きる。また、疎水性像形成物質を担持した媒体を介して
原板上に塗り付け皮膜を形成させるシート処理が好まし
い方式の一つである。この方法には特登2655337
号に記載の方法を挙げることができる。疎水性像形成物
質を担持する媒体には、フェルト、織物、スリットや細
孔を有する金属などを用いることができる。この中でも
特開平8−290088号、同8−290087号、同
9−138493号公報に記載されているスポンジなど
による処理液塗り付けの方法を好ましく適用できる。
【0080】塗り付け処理の好ましい塗り付け量は、疎
水性像形成物質の濃度などによって異なるが、通常10
〜100ml/m2 、好ましくは15〜50ml/m2
である。
【0081】b.スプレー方式 スプレー処理すなわち噴霧処理は、塗り付け処理に記し
たと同様に液状或いは分散液状にした疎水性像形成物質
又は疎水性像形成物質溶液を画像マスクを通して原板表
面に噴霧することによって疎水化を行う方法である。ま
た、噴霧液量を必要供給液量以上として適用表面を流下
する余分の疎水性像形成物質あるいは疎水性像形成物質
溶液を循環させて再利用してもよい。疎水性像形成物質
あるいは疎水性像形成物質溶液の噴霧方法、方式、ノズ
ルの数や形状を問わず、また単一の可動ノズルを移動さ
せながら噴霧しても、複数の固定ノズルを用いて噴霧し
てもよい。また、印刷原板を固定してノズルを移動させ
ながら噴霧しても、ノズルを固定して印刷原板を移動さ
せながら噴霧してもよい。このなかでも特開平8−12
3001号、同9−160208号、同9−17927
2号公報に記載されている疎水性像形成物質あるいは疎
水性像形成物質溶液を噴射する複数のノズル孔が一定の
間隔で原板の搬送方向と交差する方向に沿って直線状に
並べられたノズルとこのノズルを搬送経路上の原板に向
かって変移させるアクチュエーターとを有する疎水性像
形成物質塗り付け装置によって疎水性像形成物質あるい
は疎水性像形成物質溶液を噴霧する方法がとくに好まし
い。
【0082】c.気化・凝縮法 気体接触法は、昇華性の固体疎水性像形成物質あるいは
揮発性の疎水性像形成物質や蒸発しやすい疎水性像形成
物質溶液を加熱して気化し、画像マスクを通して印刷原
板表面に接触させて疎水性像形成物質の皮膜を凝縮形成
させる方法である。この方法に好都合な効果をもつ好ま
しい有機化合物は、温度400℃における蒸気圧が少な
くとも130Paで、かつ蒸気圧が130Paとなる温
度において安定な有機化合物である。つまり、この程度
の蒸気圧を有している有機化合物が加熱雰囲気中に存在
すると親水性と疎水性の識別性の向上が引き起こされ
る。より好ましくは、温度300℃における蒸気圧が少
なくとも130Paで、かつ蒸気圧が130Paとなる
温度において安定な有機化合物である。さらに好ましく
は、沸点が30〜400℃にあって、かつ30〜400
℃の温度範囲で安定な有機化合物であり、中でも好まし
い沸点範囲は50〜350°Cである。
【0083】疎水性像形成物質の気化のための加熱を行
うには、原板表面に接するように設けられた加熱部の外
套内に疎水性像形成物質充填容器を置いて、加熱時間中
に疎水性像形成物質の蒸気を外套内に存在させるのがよ
い。また、有機化合物を含浸させた紙、布、ゼオライ
ト、珪草土などを外套内に挿入して加熱するのもよい。
【0084】d.気体接触法 疎水性像形成物質が気体の場合、とくに前記したフッ素
含有有機化合物の場合には、画像マスクで覆った印刷原
板をこの気体を含んだ雰囲気のなかに置くことによって
高度の疎水化を行うことができる。
【0085】e.浸漬法 通常行われているように浸漬槽を設けて画像マスクで覆
った印刷原板を浸漬する方法も用いることができる。
【0086】(疎水性画像層付与物質)本発明におい
て、「疎水性」とは、親水・親油材料の清浄表面の水滴
接触角よりも大きい水滴接触角を指しており、水滴接触
角が60度以上、好ましくは70度以上であることを意
味する。疎水性像形成物質は、皮膜を形成できる材料で
あり、かつ適用する印刷原板表面を上記の意味の疎水性
にする、広い範囲で選択することができる。本発明の疎
水性像形成物質の目的に適合する化合物は、有機低分子
化合物、有機珪素化合物及び有機高分子化合物の中に見
いだされるが、上記した適用方法によって、それぞれ適
当した性質の疎水性像形成物質が選択される。すなわ
ち、描画用の疎水性物質は、印刷原板に付着性でかつ疎
水性の物質を広く選択できるが、とくに適している疎水
性物質は有機化合物であって、塗り付け塗布用や浸漬
塗布用:原板面上に付着し易い液体、溶液状又は分散液
状の疎水性物質、スプレー塗布用:噴射されて付着し
易く、且つ噴霧装置で粒子化される疎水性物質、気化
・凝縮法:原板面上への凝縮し易い昇華性の疎水性固体
や揮発性の疎水性液体、気化接触法:原板表面に吸着
し易い気体状疎水性物質などから、適用する描画手段に
併せて適した物質形態が選ばれる。これらの疎水性画像
付与物質の具体例は、以下にまとめて記すが、それらの
中からその適用方式にしたがって適切な材料が選択さ
れ、また単独で用いられたり、複数の材料が混合されて
用いられたりする。また、インクジェット方式の疎水性
画像付与に用いる疎水性像形成物質は、静電的な特性な
どの必要条件があるので、その点に関しては、他の方式
用の疎水性像形成物質の説明に続いて別に説明する。
【0087】<画像マスク方式用の疎水性画像付与物質
> 1)有機低分子化合物 疎水性像形成物質として本発明に用いられる有機低分子
化合物は、25℃における水100gへの溶解度が2
g以下であるか、有機概念図における有機性/無機性
の比が0.7以上であるかの少なくともいずれかに相当
する有機低分子化合物であり、その両方を用いることも
好ましい態様である。ここで、低分子化合物と呼んでい
るのは沸点又は融点を有する化合物という意味で用いて
おり、そのような化合物を通常分子量は2000以下、
多くは1000以下である。
【0088】25℃における水100gへの溶解度が2
g以下であることは、印刷版としての要件でもあるが、
疎水性であるための要件でもあることが経験的に判って
いる。
【0089】有機概念図は、化合物の有機性及び無機性
の程度を示すのに実際的で簡便な実用尺度であり、その
詳細については、田中善生著「有機概念図」(三共出版
社、1983年初版刊行)の1〜31頁に詳記されてい
る。有機概念図上の上記の範囲の有機化合物が疎水性化
を促進する作用を持つ理由は不明であるが、この範囲の
化合物は、有機性が比較的大きい化合物であり、複合粒
子近傍を疎水性にする。有機概念図における有機性が1
00以上でその上限についての制約はとくにないが、通
常100〜1200、好ましくは100〜800であ
り、その有機性/無機性の比が0.7〜無限大(すなわ
ち無機性が0)、好ましくは0.9〜10の範囲に入る
有機化合物である。
【0090】この水への溶解度あるいは有機概念図にお
ける有機性/無機性比を有する有機低分子化合物は、具
体的には脂肪族及び芳香族炭化水素、脂肪族及び芳香族
カルボン酸、脂肪族及び芳香族アルコール、脂肪族及び
芳香族エステル、脂肪族及び芳香族エーテル、有機アミ
ン類、有機珪素化合物、また、印刷用インキに添加でき
ることが知られている各種溶剤や可塑剤類の中に見られ
る。
【0091】好ましい脂肪族炭化水素は、炭素数8〜3
0の、より好ましくは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素
であり、好ましい芳香族炭化水素は、炭素数6〜40
の、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素で
ある。好ましい脂肪族アルコールは、炭素数4〜30
の、より好ましくは炭素数6〜18の脂肪族アルコール
であり、好ましい芳香族アルコールは、炭素数6〜30
の、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族アルコール
である。好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数4〜24
の脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは炭素数6〜
20の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数4〜12の脂肪
族ポリカルボン酸であり、また、好ましい芳香族カルボ
ン酸は、炭素数6〜30の、より好ましくは炭素数6〜
18の芳香族カルボン酸である。好ましい脂肪族エステ
ルは、炭素数2〜30の、より好ましくは炭素数2〜1
8の脂肪酸エステルであり、好ましい芳香族エステル
は、炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜18
の芳香族カルボン酸エステルである。好ましい脂肪族エ
ーテルは、炭素数8〜36の、より好ましくは炭素数8
〜18の芳香族エーテルであり、好ましい芳香族エーテ
ルは、炭素数7〜30の、より好ましくは炭素数7〜1
8の芳香族エーテルである。そのほか、炭素数7〜30
の、より好ましくは炭素数7〜18の脂肪族あるいは芳
香族アミドも用いることができる。
【0092】具体例としては、2,2,4−トリメチル
ペンタン(イソオクタン)、n−ノナン、n−デカン、
n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチル
ヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオク
タンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシ
レン、クメン、ナフタレン、アントラセン、スチレンな
どの芳香族炭化水素;ドデシルアルコール、オクチルア
ルコール、n−オクタデシルアルコール、2−オクタノ
ール、ラウリルアルコール1価アルコール;ヘキシレン
グリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコ
ール;ベンジルアルコール、4−ヒドロキシトルエン、
フェネチルアルコール、1−ナフトール、2−ナフトー
ル、カテコール、フェノールなどの芳香族アルコール;
酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、カプリン
酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族1価カルボ
ン酸;安息香酸、2−メチル安息香酸、4−メチル安息
香酸などの芳香族カルボン酸;酢酸エチル、酢酸イソブ
チル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピ
オン酸エチル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、しゅう
酸ジメチル、琥珀酸ジメチル、クロトン酸メチルなどの
脂肪族エステル;安息香酸メチル、2−メチル安息香酸
メチルなどの芳香族カルボン酸エステル;イミダゾー
ル、2,2−ジメチルイミダゾール、4−メチルイミダ
ゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、シクロヘ
キシルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレ
ンテトラミン、オクチルアミン、フェネチルアミンなど
の有機アミン;メチルエチルケトン、メチルイソブチル
ケトン、ベンゾフェノンなどのケトン類、メトキシベン
ゼン、エトキシベンゼン、メトキシトルエン、ラウリル
メチルエーテル、ステアリルメチルエーテルなどのエー
テル及びステアリルアミド、ベンゾイルアミド、アセト
アミドなどのアミド類が挙げられる。そのほか、沸点が
前記の好ましい範囲にあるエチレングリコールモノエチ
ルエーテル、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、セ
ロソルブアセテートなどの有機溶剤も使用することがで
きる。
【0093】また、印刷用インキの成分であるアマニ
油、大豆油、けし油、サフラワー油などの油脂類、燐酸
トリブチル、燐酸トリクレシル、フタール酸ジブチル、
ラウリン酸ブチル、フタール酸ジオクチル、パラフィン
ワックスなどの可塑剤も挙げられる。
【0094】また、長鎖脂肪酸と長鎖一価アルコールの
エステル、すなわちワックスも、疎水性で適当に低融点
であって、光熱変換性の微粒子の近傍で光照射によって
生じた熱によって融解してその領域を疎水性化する好ま
しい低分子有機化合物である。ワックスは、50〜20
0°Cで溶融するものが好ましく、その例としては、原
料などによってカルナバワックス、カスターワックス、
マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、
セラックろう、パームろう、蜜ろう等と呼ばれているい
ずれをも用いることができる。ワックス類のほかに、オ
レイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの固体酸;
ベヘン酸銀、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸マ
グネシウムなどの長鎖脂肪酸の金属塩などの微粒子分散
物も用いることができる。
【0095】有機低分子化合物の中でもペルフルオロ化
合物は、疎水化を効果的に行うので好都合である。好ま
しいペリフルオロ化合物としては、下記の化合物が挙げ
られる。ペルフルオロ酢酸、ペルフルオロ酪酸、ペルフ
ルオロバレリン酸、ペルフルオロカプリン酸、ペルフル
オロヘプタン酸、ペルフルオロカプロン酸、ペルフルオ
ロカプリル酸などのペルフルオロ脂肪族カルボン酸;ペ
ルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフル
オロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミ
ン、ペルフルオロヘキシルエーテル、ペルフルオロドデ
カンなどのペリフルオロ炭化水素;ペルフルオロブタノ
ール、ペルフルオロペンタノール、ペルフルオロヘキサ
ノール、ペルフルオロオクタノール、ペルフルオロドデ
シルアルコールなどのペリフルオロ脂肪族アルコール。
【0096】2)有機珪素化合物 好ましい有機珪素化合物は、印刷原板の親水・親油材料
を含有する層の表面を効果的に疎水化する疎水性像形成
物質である。この目的に用いられる有機珪素化合物とし
ては、オルガノポリシロキサン、オルガノシラン及びフ
ッ素含有珪素化合物を挙げることができる。 a.オルガノポリシロキサン リ オルガノポリシロキサンは、ジメチルシリコーンオ
イル、メチルフェニルシリコーンオイルなどで代表され
る化合物であり、とくに重合度が12以下のオルガノポ
リシロキサン類が好ましい。これらの好ましいオルガノ
ポリシロキサンはシロキサン結合単位当たり1〜2個の
有機基が結合しており、その有機基は、炭素数が1〜1
8のアルキル基及びアルコキシ基、炭素数が2〜18の
アルケニル基及びアルキニル基、炭素数が6〜18のア
リール基、炭素数が7〜18のアラルキル基、炭素数が
5〜20の脂環式基である。また、これらの有機置換基
には、さらにハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキ
シ基が置換してもよい。また、上記のアリール基、アラ
ルキル基、脂環式基には、上記の炭素数の範囲でメチル
基、エチル基又はプロピル基などの低級アルキル基がさ
らに置換していてもよい。
【0097】本発明に使用できる好ましい有機珪素化合
物の具体例は、下記の化合物であるが、本発明はこれら
に限定されるものではない。
【0098】好ましいポリオルガノシロキサン類として
は、炭素数1〜5のアルキル基を有するジアルキルシ
ロキサン基、炭素数1〜5のアルコキシ基を有するジ
アルコキシシロキサン基、炭素数1〜5のアルコキシ
基とフェニル基を有するアルコキシフェニルシロキサン
基及びエトキシメトキシシロキサン基又はメトキシエ
トキシシロキサン基のうち、少なくとも一つを繰り返し
単位として含み、重合度が2〜12、より好ましくは2
〜10のポリオルガノシロキサンである。また、その端
末基は、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、ヒドロ
キシ基、炭素数1〜5のヒドロキアルキル基又は炭素数
1〜5のアルコキシ基である。より好ましい端末基は、
メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル
基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基及びエト
キシ基である。その中でも好ましいシロキサン化合物
は、重合度が2〜10のジメチルポリシロキサン、重合
度が2〜10のジメチルシロキサン−メチルフェニルシ
ロキサン共重合物、重合度が2〜8のジメチルシロキサ
ン−ジフェニルシロキサン共重合物、重合度が2〜8の
ジメチルシロキサン−モノメチルシロキサン共重合物で
これらのポリシロキサン化合物の端末はトリメチルシラ
ン基である。そのほか、1,3−ビス(3−アミノプロ
ピル)テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3−
アミノプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、1,3
−ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサ
ン、1,5−ジブチル−1,1,3,3,5,5−ヘキ
サエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘ
キサエチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、3−
(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,
3,5,5,5−ヘプタメチル−トリシロキサン、デカ
メチルテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0099】特に好ましい汎用化合物として、いわゆる
シリコーンオイルがあり、ジメチルシリコーンオイル
(市販品では、例えばシリコーンKF96(信越化学工
業(株)製)、メチルフェニルシリコーンオイル(市販
品では、例えばシリコーンKF50(信越化学工業
(株)製)、メチルハイドロジェンシリコーンオイル
(市販品では、例えばシリコーンKF99(信越化学工
業(株)製)が挙げられる。
【0100】b.オルガノシラン 疎水性像形成物質として用いることができるオルガノシ
ラン化合物としては、n−デシルトリメトキシシラン、
n−デシルトリ−t−ブトキシシラン、n−オクタデシ
ルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシ
シラン、ジメトキシジエトキシシランなどのシラン化合
物も挙げらることができる。
【0101】c.フッ素含有有機珪素化合物 フッ素含有有機基を置換基として有するシラン、シラノ
ール及びシロキサン化合物も疎水性像形成物質として用
いることができる。好ましいフッ素含有有機珪素化合物
には、ポリフルオロアルキル基(3、3、3−トリフル
オロプロピル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロ
ブチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロペンチ
ル基、3、3、4、4、5、5、6、6、6−ノナフル
オロヘキシル基)、トリフルオロアシロキシ基(トリフ
ルオロアセトキシ基、2、2、2−トリフルオロエトキ
シ基)、トリフルオロアシル基(トリフルオロアセチル
基)、トリフルオロアルキルスルフォン基(トリフルオ
ロメタンスルフォン基、3、3、3−トリフルオロプロ
ピルスルフォン基)を有機置換基として有するシラン、
シラノール及びシロキサン化合物が挙げられる。
【0102】具体例としては、メチル−3、3、3−ト
リフルオロプロピルジクロロシラン、トリメチルシリル
トリフルオロメタンスルフォネート、トリフルオロアセ
トキシトリメチルシラン、3、3、4、4、5、5、
6、6、6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、
ジメトキシメチル−3、3、3−トリフルオロプロピル
シラン、3、3、3−トリフルオロプロピルシラン−ト
リメトキシシラン、3、3、4、4、5、5、6、6、
6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、3−
トリフルオロアセトキシトリメトキシシラン、1、3、
5−トリス(3、3、3−トリフルオロプロピル)−
1、3、5−トリメチルシクロトリシロキサン、1、
3、5、7−テトラキス(3、3、3−トリフルオロプ
ロピル)−1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラ
シロキサン、1、1、3、5、5−ペンタ(3、3、3
−トリフルオロプロピル)−1、3、5−トリメチルト
リシロキサン、1、1、3、5、7、7−ヘキサ(3、
3、3−トリフルオロプロピル)−1、3、5、7−テ
トラメチルテトラシロキサン、メチル−3、3、3−ト
リフルオロプロピルシランジオール、3、3、4、4、
5、5、6、6、6−ノナフルオロヘキシルシラントリ
オール、3、3、4、4、5、5、6、6、6−ノナフ
ルオロヘキシルメチルシランジオール、ペンタフルオロ
エトキシシラントリオール、トリフルオロメチルシラン
トリオール、3、3、3−トリフルオロプロピルオトキ
シシラントリオール。好ましい化合物は、メチル−3、
3、3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、3、
3、4、4、5、5、6、6、6−ノナフルオロヘキシ
ルトリクロロシラン、3、3、3−トリフルオロプロピ
ルシラン−トリメトキシシラン、3、3、4、4、5、
5、6、6、6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロ
シラン、1、3、5−トリス(3、3、3−トリフルオ
ロプロピル)−1、3、5−トリメチルシクロトリシロ
キサン、メチル−3、3、3−トリフルオロプロピルシ
ランジオール、3、3、4、4、5、5、6、6、6−
ノナフルオロヘキシルシラントリオール、3、3、4、
4、5、5、6、6、6−ノナフルオロヘキシルメチル
シランジオール、ペンタフルオロエトキシシラントリオ
ール、トリフルオロメチルシラントリオール、3、3、
3−トリフルオロプロピルオトキシシラントリオール。
これらの有機珪素化合物は、市販されており、たとえば
信越化学工業(株)から入手できる。又は入手したクロ
ロシランを加水分解してシラノールとしたり、あるい
は、加水分解縮合によってポリオルガノシロキンを合成
できる。
【0103】3)有機高分子化合物 上記した溶解度又は吸水性の条件を満たす好ましい有機
高分子化合物は、共存する低分子有機化合物に溶解可能
又はそれ自体が熱可塑性の疎水性高分子化合物であり、
例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリ
ビニルフェノール、ポリビニルハロゲン化フェノール、
ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビ
ニルブチラール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレ
ア、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フ
ェノール、ノボラック、又はレゾールフェノール類とア
ルデヒド又はケトンとの縮合樹脂、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリスチレン、アクリル系共重合樹脂などが挙げら
れる。
【0104】好ましい化合物の一つは、必ずしも熱可塑
性ではないが、有機低分子化合物通うのフェノールノボ
ラック樹脂又はレゾール樹脂であり、フェノール、クレ
ゾール(m−クレゾール、p−クレゾール、m/p混合
クレゾール)、フェノール/クレゾール(m−クレゾー
ル、p−クレゾール、m/p混合クレゾール)、フェノ
ール変性キシレン、tert−ブチルフェノール、オク
チルフェノール、レゾルシノール、ピロガロール、カテ
コール、クロロフェノール(m−Cl、p−Cl)、ブ
ロモフェノール(m−Br、p−Br)、サリチル酸、
フロログルシノールなどのホルムアルデヒドとの縮合の
ノボラック樹脂及びレゾール樹脂、さらに上記フェノー
ル類化合物とアセトンとの縮合樹脂などが挙げられる。
【0105】その他の好適な高分子化合物として以下
(A)〜(L)に示すモノマーをその構成単位とする通
常1万〜20万の分子量を持つ共重合体を挙げることが
できる。 (A)芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタク
リルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エ
ステル類およびヒドロキシスチレン類、例えばN−(4
−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN−(4
−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−
およびp−ヒドロキシスチレン、o−、m−およびp−
ヒドロキシフェニルアクリレートまたはメタクリレー
ト、(B)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類
およびメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキ
シエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタ
クリレート、(C)アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル
酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキ
シル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アク
リル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アク
リル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレー
ト、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置
換)アクリル酸エステル、(D)メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリ
ル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシ
ル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチ
ル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メ
タクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒド
ロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチ
ルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリ
ル酸エステル、
【0106】(E)アクリルアミド、メタクリルアミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメ
タクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチ
ルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N
−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアク
リルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N
−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエ
チルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N
−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルア
ミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェ
ニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルア
ミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミドおよび
N−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアク
リルアミドもしくはメタクリルアミド、
【0107】(F)エチルビニルエーテル、2−クロロ
エチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテ
ル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、
オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなど
のビニルエーテル類、(G)ビニルアセテート、ビニル
クロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル
などのビニルエステル類、(H)スチレン、メチルスチ
レン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類、(I)
メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビ
ニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン
類、(J)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタ
ジエン、イソプレンなどのオレフィン類、
【0108】(K)N−ビニルピロリドン、N−ビニル
カルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリルなど、(L)N−(o−アミノ
スルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミ
ノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−ア
ミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−
(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、
N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドな
どのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフ
ェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニ
ルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスル
ホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−
アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−
(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなど
のメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフ
ェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルア
クリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレー
ト、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)ア
クリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和ス
ルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリ
レート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレー
ト、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1
−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリ
レートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スル
ホンアミド。
【0109】これらの有機高分子化合物は、重量平均子
量が500〜20000、数平均分子量が200〜60
000であることが好ましい。
【0110】疎水性像形成物質は、有機低分子化合物の
み、有機珪素化合物のみ、あるいは高分子有機化合物の
みで構成されていてもよいが、それらの二種あるいは三
種類を含んでいてもよく、さらに両者の親和性を高める
などの目的の第3成分を含んでいてもよい。
【0111】そのほか、疎水性像形成物質の層を設ける
際に、溶液や分散液とするためにエチレングリコールモ
ノエチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルセロソル
ブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、1,4
−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アクリロニトリ
ルなどの有機溶剤も使用することができる。 <描画方式用の疎水性画像付与物質> a.感熱転写方式用の疎水性画像付与物質 感熱転写方式用の疎水性画像付与物質は、上記した高分
子有機化合物と低分子有機化合物を熱転写に好都合な融
点あるいは揮発温度になるように調合して用いられる。
とくにカルナウバワックスなど熱により融解する材料が
溶融熱転写用として好ましい成分である。また、市販の
熱転写方式のプリンター用インクリボンも十分に疎水性
であって本発明の目的に使用することができる。
【0112】b.インクジェット方式用の疎水性画像付
与物質 次に、静電吐出型インクジェット方式に用いる疎水性像
形成物質について述べる。疎水性像形成物質は、好まし
くは電気抵抗109Ω・cm以上かつ誘電率3.5以下の
非水溶媒を分散媒とし、少なくとも常温(15℃〜35
℃)で固体かつ疎水性の樹脂粒子が分散されたものであ
る。このような分散媒を用いることによって、分散液の
電気抵抗が適正に制御されて電界による分散液の吐出が
適正となり画質が向上する。また、上記のような樹脂を
用いることによって印刷原板表面との親和性が増し、耐
刷性が向上する。
【0113】本発明に用いる電気抵抗109Ω・cm以
上、かつ誘電率3.5以下の非水溶媒として好ましくは
直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化木
素、または芳香族炭化水素、およびこれらの炭化水素の
ハロゲン置換体がある。例えばオクタン、イソオクタ
ン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカ
ン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、
シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチ
レン、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、ア
イソパーL(アイソパー;エクソン社の商品名)、シェ
ルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール;シェ
ルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ46
0溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)等を単独あ
るいは混合して用いる。なお、このような非水溶媒の電
気抵抗の上限値は1016Ω・cm程度であり、誘電率の下
限値は1.8程度である。
【0114】用いる非水溶媒の電気抵抗を上記範囲とす
るのは、電気抵抗が低くなると、分散液の電気抵抗が適
正にならず、電界による分散液の吐出が悪くなるからで
あり、誘電率を上記範囲とするのは、誘電率が高くなる
と分散液中で電界が緩和されやすくなり、これにより分
散液の吐出が悪くなりやすくなるからである。
【0115】上記の非水溶媒中に、分散される樹脂粒子
としては、35℃以下の温度で固体で非水溶媒との親和
性のよい疎水性の樹脂の粒子であればよいが、更にその
ガラス転移点が−5℃〜110℃もしくは軟化点33℃
〜140℃の樹脂が好ましく、より好ましくはガラス転
移点10℃〜100℃もしくは軟化点38℃〜120℃
であり、さらに好ましくはガラス転移点15℃〜80
℃、もしくは軟化点38℃〜100℃である。
【0116】このようなガラス転移点もしくは軟化点の
樹脂を用いることによって、印刷原版の画像受理層表面
と樹脂粒子との親和性が増し、また印刷原版上での樹脂
粒子同士の結合が強くなくなるので、画像部と画像受理
層との密着性が向上し、耐刷性が向上する。これに対
し、ガラス転移点もしくは軟化点が低くなっても高くな
っても画像受理層表面と樹脂粒子の親和性が低下した
り、樹脂粒子同士の結合が弱くなってしまう。樹脂の質
量平均分子量Mwは、1×103〜1×105であり、好
ましくは5×103〜8×105、より好ましくは1×1
4〜5×105である。
【0117】このような樹脂として具体的には、オレフ
ィン重合体および共重合体(例えばポリエチレン、ポリ
プロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル
共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン
−メタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共
重合体等)、塩化ビニル共重合体(例えば、ポリ塩化ビ
ニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)、塩化ビニリ
デン共重合体、アルカン酸ビニル重合体および共重合
体、アルカン酸アリル重合体および共重合体、スチレン
およびその誘導体の重合体ならびに共重合体(例えばブ
タジエン−スチレン共重合体、イソプレン−スチレン共
重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、スチレン
−アクリレート共重合体等)、アクリロニトリル共重合
体、メタクリロニトリル共重合体、アルキルビニルエー
テル共重合体、アクリル酸エステル重合体および共重合
体、メタクリル酸エステル重合体および共重合体、イタ
コン酸ジエステル重合体および共重合体、無水マレイン
酸共重合体、アクリルアミド共重合体、メタクリルアミ
ド共重合体、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリカー
ボネート樹脂、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコ
ン樹脂、アミド樹脂、水酸基およびカルボキシル基変性
ポリエスエテル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセ
タール樹脂、ウレタン樹脂、ロジン系樹脂、水素添加ロ
ジン樹脂、石油樹脂、水素添加石油樹脂、マレイン酸樹
脂、テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、クロマン−
インデン樹脂、環化ゴム−メタクリル酸エステル共重合
体、環化ゴム−アクリル酸エステル共重合体、窒素原子
を含有しない複素環を含有する共重合体(複素環として
例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、チオフエン
環、ジオキサン環、ジオキソフラン環、ラクトン環、ベ
ンゾフラン環、ベンソチオフェン環、1,3−ジオキセ
タン環等)、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0118】本発明の油性分散液における分散された樹
脂粒子の含有量は、分散液全体の0.5〜20質量%と
することが好ましい。含有量が少なくなると分散液と印
刷原版の画像受理層との親和性が得られ難くなって良好
な画像が得られなくなったり、耐刷性が低下したりする
などの問題が生じやすくなり、一方、含有量が多くなる
と均一な分散液が得られ難くなったり,吐出へッドでの
分散液の目詰まりが生じやすく、安定な分散液吐出が得
られ難いなどの問題がある。
【0119】通常のインクジェット用のインクとは異な
り、本発明に供される油性分散液中には、着色成分とし
て色材を含有させることは、必ずしも必要ないが、通常
のインクジェット用インクを本発明に利用するなどによ
って色材が添加されていてもよい。色材としては、従来
から油性分散液組成物あるいは静電写真用液体現像剤に
用いられている顔料および染料であればどれでも使用可
能である。
【0120】本発明に用いられる非水系分散樹脂粒子
は、従来公知の機械的粉砕方法または重合造粒方法によ
って製造することができる。機械的粉砕方法としては必
要に応じて、樹脂粒子とする材料を混合し、溶融、混練
を経て従来公知の粉砕機で直接粉砕して、微粒子とし、
分散ポリマーを併用して、更に湿式分散機(例えばボー
ルミル、ペイントシェーカー、ケディミル、ダイノミル
等)で分散する方法、樹脂粒子成分となる材料と、分散
補助ポリマー(または被覆ポリマー)を予め混練して混
練物とした後粉砕し、次に分散ポリマーを共存させて分
散する方法等が挙げられる。具体的には、塗料または静
電写真用液体現像剤の製造方法を利用することができ、
これらについては、例えば、植木憲二監訳「塗料の流動
と顔料分散」共立出版(1971年)、「ソロモン、塗
料の科学」、「Paint and SurfaceCoating and Theory
and Practice」、原崎勇次「コーティング工学」朝倉書
店(1971年)、原崎勇次「コーティングの基礎科
学」槙書店(1977年)等の成書に記載されている。
【0121】〔親水性領域の親水性強化と安定化〕本発
明者は、疎水性の画像層が付与されない非画像領域は通
常時間とともに親水性度が低下してゆき、したがって親
水性領域と疎水性領域の識別性が経時とともに劣化し、
印刷品質や耐刷性を低下させていることを見いだした。
したがって、原板表面の疎水化された親水・親油材料含
有層に親水性像様領域が形成されると、短時間のうちに
親水性強化剤を処理して親水性と疎水性の識別性を高い
レベルに保つ操作が施される。親水性強化剤は、親水性
の像様領域の親水性を強化するとともにそれを安定に持
続させる作用を有している。画像記録から親水性強化処
理までの経過時間は、短いほどよく、通常1時間以内、
好ましくは10分以内、より好ましくは2分以内である
ことがよい。
【0122】(親水性強化剤)親水性強化剤は、親水・
親油材料含有層の親水性領域の表面を覆う層を形成して
親水性を強化する物質であって、主として水からなる。
水には、濡れ性向上剤及び助剤、水溶性高分子化合物、
pH調整剤、湿潤剤、防腐剤、着色剤、消泡剤、等の種
々の添加剤を加えることができる。濡れ性向上剤として
は、エチレングリコール、ポリエチレングリコールアル
キルエーテル(アルキレン基の炭素数は2〜3)、ポリ
エチレングリコール、アルキルスルホン酸(アルキレン
基の炭素数は2〜3)、脂肪族アルコール(炭素数は1
〜3)、水、界面活性剤から選択される。また、平版印
刷用の湿し水をこの目的に用いることができる。
【0123】ポリエチレングリコールアルキルエーテル
は、下記一般式(I)で表される。 一般式(I) R1−(OC24n−OH 一般式(I)において、R1は炭素数1〜3のアルキル
基を表し、nは4〜9の整数を表す。一般式(I)で示
される化合物としては、下記のものが挙げられる。中で
も好ましい化合物は、(I−3)、(I−4)、(I−
5)、(I−9)及び(I−11)である。
【0124】
【化1】
【0125】アルキルスルホン酸およびその塩を用いる
こともできる。好ましいアルキルスルホン酸は、下記一
般式(II)で表される。 一般式(II) R2−SO3M 一般式(II)において、R2は炭素数4〜10のアルキ
ル基を表し、Mはカチオン基を表す。アルキル基は直鎖
であっても分岐していてもよい。また、好ましいカチオ
ン基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3族金
属であり、とくに好ましいのはアルカリ金属であり、そ
のなかでもカリウム及びナトリウムである。
【0126】一般式(II)で示される化合物としては、
下記のものを例示することができる。中でも好ましい化
合物は、(II−3)、(II−4)、(II−5)、(II−
9)、(II−10)及び(II−11)である。
【0127】
【化2】
【0128】本発明に用いられるポリエチレングリコー
ルは、下記一般式(III)に示される。 一般式(III ) H(OC24m−OH 一般式(III )において、mは約500の整数を表す。
上記のポリエチレングリコールは、数平均分子量(以
後、単に平均分子量という)が20000以下のポリエ
チレングリコールであるともいえる。
【0129】平均分子量20000以下のポリエチレン
グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチ
レングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子
量:200、300、400、600、1000、15
40、2000、4000)、好ましくはジエチレング
リコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリ
コール(平均分子量:1000〜2000)などが挙げ
られる。平均分子量としては好ましくは100〜200
0である。また、市販のポリエチレングリコール類とし
て、プルロニックL−31(旭電化(株)製商品名、ポ
リオキシプロピレン分子量950)、プルロニックPE
3100(DuPont社製商品名、ポリオキシプロピ
レン分子量850)、及び竹本油脂(株)製のポリオキ
シプロピレン分子量750、ポリオキシエチレン10質
量%付加物のポリマーなどを使用することができる。
【0130】濡れ性向上剤の助剤として界面活性剤を添
加することができる。例えば、アニオン型界面活性剤と
しては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシア
ルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジア
ルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホ
ン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、ア
ルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシ
ポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキ
シエチレンアルキルスルフェニルエーテル塩類、N−メ
チル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アル
キルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油ス
ルホン酸塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸
アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エ
ステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸
エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩
類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸
エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエ
ーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩
類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸
エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部
分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の
部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮
合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスル
ホ琥珀酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキル
ナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0131】非イオン型界面活性剤としては、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンア
ルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリス
チリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオ
キシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸
部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペ
ンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレン
グリコールモノ脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸部分エス
テル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エス
テル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エ
ステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、
ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチ
レン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪
酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,
N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキ
シエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂
肪酸エステル類、トリアルキルアミンオキシド類などが
挙げられる。その他、弗素系界面活性剤、シリコン系界
面活性剤も使用することができる。その中でもポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエ
チレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類等が
好ましく用いられる。更に、シリコン誘導体又はフッ素
誘導体等の界面活性剤も挙げられる。これらの界面活性
剤の含有量は発泡の点を考慮すると、1.0質量%以
下、好ましくは0.001〜0.5質量%が適当であ
る。また、2種以上併用することもできる。
【0132】水溶性高分子化合物としては、例えばアラ
ビアガム、澱粉誘導体(例えは、デキストリン、酵素分
解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキス
トリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸澱粉、オクテ
ニルコハク化澱粉)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例
えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチル
セルロース、メチルセルロース)等の天然物及びその変
性体、ポリエチレングリコール及びその共重合体、ポリ
ビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリド
ン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリ
ル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マ
レイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合
体、ポリスチレンスルホン酸及びその共重合体の合成物
が挙げられる。水溶性高分子の含有量は、親水性強化剤
溶液に対して0.0001〜0.1質量%が適してお
り、より好ましくは、0.0005〜0.05質量%て
ある。
【0133】pH調整剤としては、水溶性の有機酸及び
/又は無機酸又はそれらの塩が使用でき、これらの化合
物は親水性強化剤溶液のpH調整あるいはpH緩衝、平
版印刷版支持体の適度なエッチング又は防腐食に効果が
ある。好ましい有機酸としては、例えばクエン酸、アス
コルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン
酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、蓚酸、マロン酸、レプリン
酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチ
ン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。無機酸としては
例えば蟻酸、リン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸が挙げら
れる。更にこれら有機酸及び/又は無機酸のアルカリ金
属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有
機アミン塩も好適に用いられ、これらの有機酸、無機酸
及び/又はこれらの塩は単独で使用しても、あるいは2
種以上の混合物として使用してもよい。これらpH調整
剤の本発明の親水性強化剤溶液への添加量は0.001
〜0.3質量%の範囲が好ましく、親水性強化剤溶液の
pH値が3〜7の範囲の酸性領域で用いることが好まし
いが、アルカリ金属水酸化物、リン酸、アルカリ金属
塩、炭酸アルカリ金属塩、ケイ酸塩などを含有したpH
7〜11のアルカリ性領域で用いることもできる。
【0134】湿潤剤の具体例としては、エチレングリコ
ール、ジエチレングリコール、トリエチエングリコー
ル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、
トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキ
シレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグ
リセリン、トリメチロールプロパン等が好適に用いられ
る。これらの湿潤剤は単独でもよいが、2種以上併用し
てもよい。一般に上記湿潤剤は0.01〜3質量%の範
囲で使用できる。
【0135】防腐剤としては、フェノール又はその誘導
体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナ
トリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベン
ズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導
体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグ
アニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導
体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ブロモニト
ロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−
ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−
3−ニトロペンタン、2,4−ジオール等が挙げられ
る。好ましい添加量は細菌、カビ、酵母等に対して、安
定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種
類によっても異なるが、親水性強化剤溶液に対し、0.
001〜1.0質量%の範囲が好ましく、また種々のカ
ビ、細菌、酵母に対して効力のあるような2種以上の防
腐剤を併用することが好ましい。
【0136】着色剤としては、食品用色素等が好ましく
使用できる。例えば、黄色色素としてはCI No.1
9140、15985、赤色色素としてはCI No.
16185、45430、16255、45380、4
5100、紫色色素としてはCI No.42640、
青色色素としてはCI No.42090、7301
5、緑色色素としてはCI No.42095、等が挙
げられる。防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾー
ル、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、
ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。本
発明に使用できる消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ま
しく。その中で乳化分散型及び可溶化型等いずれも使用
することができる。本発明の親水性強化剤溶液は、通常
商業ベースとするときは濃縮化し商品化するのが一般的
である。濃縮液を使用するときは、水道水、井戸水等で
30〜500倍に希釈して用いる方が経済的で好まし
い。
【0137】疎水化剤で処理され、画像記録された印刷
原板の親水・親油材料含有層に親水性強化剤を含む塗布
液の適用方法は、親水性強化剤が液体の場合は直接塗布
してもよく、また好ましくは親水性強化剤を水やメタノ
ールのような親水性の溶媒に溶解して溶液として塗布を
行うのがよい。塗布の方法としては公知の任意の方法を
用いることができるが、疎水化剤の適用方法として前記
した塗り付け塗布、噴霧塗布及び浸漬塗布も好ましい方
法である。その場合の塗布液中の親水性強化剤の含有量
は、均一溶液となる限り制約はないが、1質量%以上、
好ましくは10ル、より好ましくは20質量%以上であ
って親水性強化剤のみで構成されていてもよい。また、
親水性強化剤のみを単独で使用してもよく、二種以上を
併用してもよい。親水性化は、親水性強化剤と非画像領
域が接触すれば直ちに起こるので、処理時間は数秒程度
の短さでよく、したがって例えば毎分1分の速度で回転
する版胴が1回転する間に親水性強化処理部を通過する
時間で十分である。
【0138】〔印刷〕親水・親油材料含有層を有する印
刷原板に疎水性の像様領域を形成させたのち、その領域
の親水性強化処理を施すことによって現像処理すること
なく作成した印刷版は、そのまま平版印刷工程に送るこ
とができる。従って通常の公知の平版印刷法に比較して
簡易性を中心に多くの利点を有する。すなわち上記した
ようにアルカリ現像液による化学処理が不要であり、そ
れに伴うワイピング、ブラッシングの操作も不要であ
り、さらに現像廃液の排出による環境負荷も伴わない。
また、製版工程も上記したように簡易である。
【0139】印刷版の像様親水性領域(非画像部)は、
十分に親水性化しているが、所望により、水洗水、界面
活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導
体を含む不感脂化液で後処理してもよい。その方法とし
ては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、
平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中
に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによ
る塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ
ー、あるいは、スキージーローラーで、その塗布量を均
一にすることは、より好ましい結果を与える。整面液の
塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適
当である。この様な処理によって得られた平版印刷版
は、オフセット印刷機等にかけられ、あるいは印刷機上
で製版され、多数枚の印刷に用いられる。
【0140】〔印刷原板の再生〕次に印刷を終えた印刷
版の再生工程について記す。印刷終了後の印刷版は疎水
性の石油系溶剤を用いて付着しているインキを洗い落と
す。溶剤としては市販の印刷用インキ溶解液として芳香
族炭化水素、例えばケロシン、アイソパ−などがあり、
そのほかベンゾール、トルオール、キシロール、アセト
ン、メチルエチルケトン及びそれらの混合溶剤を用いて
もよい。画像物質が溶解しない場合には、布などを用い
て軽く拭き取る。また、トルエン/ダイクリーンの1/
1混合溶媒を用いるとよいこともある。また、さらに希
酸で版面を処理することも好ましい。希酸の濃度は、通
常0.001〜0.1mol/L、好ましくは0.00
5〜0.05mol/Lであり、酸としては硫酸、硝
酸、塩酸、次亜塩素酸などが用いられる。酸の溶液に
は、0.001〜0.01mol/Lの過酸化水素をさ
らに添加することもある。この処理によって有機溶剤で
は除去しきれない汚れや大半の履歴が除かれる。
【0141】インキを洗浄除去した印刷版は、印刷原板
として前記した製版工程に再使用することができる。そ
の場合、印刷版のインキが除去されていれば原板として
再使用してよいが、インキを除去した上にさらにことに
よって印刷版作成過程の履歴を除去して原板の全面の極
性を使用前の均一な状態に戻しておくことが反復使用の
際の印刷品質確保の上で望ましいことである。この履歴
を除去して原板の全面の極性を使用前の状態に戻し操作
を初期化と呼んでいる。初期化は、親水・親油材料が、
光触媒性金属化合物の場合は、活性光の照射によって行
うことができる。親水・親油材料が、光熱変換性物質や
高温親水性発現物質の場合は、履歴消滅温度への加熱に
よって行うことができ、その加熱はヒートモード光の照
射によっても、光熱変換によらない直接の熱エネルギー
による加熱であってもよい。また、光触媒性金属化合物
の場合もその化合物は同時に高温親水性発現物質でもあ
ることが多いので、その場合にはヒートモード光又は光
熱変換によらない熱エネルギーの利用によって高温親水
性発現温度へ到達させて初期化することもできる。直接
の熱エネルギーの適用加熱の方法としては、送風加熱、
赤外線照射加熱、電磁波(マイクロ波)加熱、電熱加熱
などの方法を選択できる。以下に各親水・親油材料ごと
の好ましい加熱方式について述べる。
【0142】a.親水・親油材料が光触媒性金属酸化物
の場合 親水・親油材料が光触媒性金属酸化物の場合は、初期化
用にその光触媒性金属酸化物の活性光を用いることがで
きる。その光源は、光触媒能を有する物質の感光域の波
長の光、すなわち光吸収域に相当する波長の光を発する
光源である。例えば光触媒能を有する物質が酸化チタン
の場合では、アナターゼ型が387nm以下,ルチル型
が413nm以下、酸化亜鉛は387nm以下に、その
他の多くの金属酸化物の場合も250〜390nmの紫
外部に感光域を有しており、また、酸化亜鉛の場合は、
固有吸収波長域(紫外線領域)のほかに、既知の方法で
分光増感を行って適用できる活性光の波長領域を拡げる
こともでき、したがって使用される光源は、これらの波
長領域の光を発する光源であり、主として紫外線を発す
る光源といえる。活性光の照射を受けた領域は、光触媒
作用によって一様の親水・疎水性の初期状態となる。面
露光方式で活性光の照射を行うのに適した光源は、水銀
灯、タングステンハロゲンランプ、その他のメタルハラ
イドランプ、キセノン放電灯などである。その露光時間
は、上記の露光強度が得られるように露光照度を勘案し
て決定される。
【0143】好ましい照射光の強さは、光触媒型金属酸
化物の画像形成層の性質によって異なり、また活性光の
波長、分光分布及び光触媒能を有する熱応答型物質の光
吸収率によっても異なるが、通常は面露光強度が0.0
5〜100J/cm2 ,好ましくは0.05〜10J/
cm2 ,より好ましくは0.05〜5J/cm2 であ
る。
【0144】走査式露光方式で活性光照射を行うのに適
したレーザー光源は、活性光のビームを発振する公知の
レーザーを用いることができ、描画の場合のようにビー
ム径を絞り込む必要はない。例えば、レーザー光源とし
て発振波長を325nmに有するヘリウムカドミウムレ
ーザー、発振波長を351.1〜363.8nmに有す
る水冷アルゴンレーザー、330〜440nmに有する
硫化亜鉛/カドミウムレーザーなどを用いることができ
る。さらに、紫外線レーザー、近紫外線レーザー発振が
確認されている発振波長を360〜440nmに有する
窒化ガリウム系のInGaN系量子井戸半導体レーザ
ー、及び発振波長を360〜430nmに有する導波路
MgO−LiNb03 反転ドメイン波長変換型のレーザ
ーを使用することもできる。レーザー出力が0.1〜3
00Wのレーザーで照射をすることができる。また、パ
ルスレーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000
W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好
ましい。
【0145】b.親水・親油材料が光熱変換性物質の場
合 親水・親油材料が光熱変換性物質の場合は、初期化を光
照射によるヒートモード加熱によって行うことができる
が、その場合は赤外線を放射する固体レーザー、又は赤
外線域や可視域の光を放射する半導体レーザー、赤外線
灯、キセノン放電灯、大容量コンデンサーからの放電に
よってフラッシュ光を発する光・熱変換描画機構などの
いずれの光加熱方式を用いてもよい。光加熱方式も、面
露光方式、走査方式のいずれも適用できる。前者の場合
は、赤外線照射方式や、キセノン放電灯の高照度の短時
間光を原板上に照射して光・熱変換によって熱を発生さ
せる方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用する
場合には、その照度によっても好ましい露光量は変化す
るが、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が
0.1〜10J/cm2 の範囲であることが好ましく、
0.3〜1J/cm 2 の範囲であることがより好まし
い。その露光時間は、0.01μsec〜10mse
c、好ましくは0.1μsec〜1msecの照射で上
記の露光強度が得られるように露光照度を選択するのが
好ましい。照射時間が長い場合には、熱エネルギーの生
成速度と生成した熱エネルギーの拡散速度の競争関係か
ら露光強度を増加させる必要が生じる。
【0146】走査方式の場合には、赤外線レーザー光源
を使用する方式が行われる。レーザー光源の例として、
近赤外線、赤外線の成分の多い半導体レーザー、ガスレ
ーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー
を挙げることができる。レーザー出力が0.1〜300
Wのレーザーで照射をすることができる。また、パルス
レーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000W、
好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好まし
い。光熱変換物質が熱又は光熱変換性の輻射線によって
初期化される機構は不明であるが、微量に存在する履歴
原因物質が短時間でも強い熱の作用で使用済みの刷版面
から除去されるものと推定している。
【0147】c.親水・親油材料が高温親水性発現物質
の場合は、加熱によって初期化を行う。加熱温度を高温
親水性発現温度の範囲に調節するには、加熱に用いる光
の強度を制御したり、あるいは熱記録用の加熱ヘッドへ
の供給電力を制御するなどの方法が取られる。接触加熱
方式では、公知の任意の接触型熱記録装置、例えば熱融
解型及び昇華型感熱色素転写法の熱記録ヘッドを用いて
もよい。それらは、単一の熱記録素子を二次元に駆動さ
せる方式、熱記録素子を線状に配列したアレイを直角方
向に走査して描画する方式あるいは二次元配列した記録
素子を用いる高速描画方式など公知の熱記録素子を用い
ることができる。
【0148】印刷原板を印刷機の版胴に装着して機上製
版する本発明の態様においては、版胴に埋め込みヒータ
ーを設けた電熱加熱方式が原板を装着したまま、反復再
使用を繰り返すことが可能であって、とくに好ましい初
期化手段である。この履歴除去操作は、印刷インキを洗
浄除去してから次の製版作業において活性光の像様照射
を行うまでの間の任意の時期に行ってもよいが、その原
板を次の製版工程に再使用する際に行うのが原板の保管
中の履歴の影響を排除できる点で好ましい。
【0149】本発明に係わる印刷原板の反復再生可能回
数は、完全に把握できていないが、少なくとも15回以
上であり、おそらく反面の除去不能な汚れ、修復が実際
的でない刷面の傷や、版材の機械的な変形(ひずみ)な
どによって制約されるものと思われる。
【0150】IV. 印刷装置 本発明における印刷原板の構成材料及び製版操作につい
て説明したので、次にこの原板を装着して印刷を行う方
法及び装置を図によって説明する。親水・親油材料含有
層を表面にもつ印刷用原板は、版胴に装着されたままで
製版される態様、版胴に装着されたままで製版され、さ
らに使用済みの印刷版が洗浄されて印刷原板として再使
用される態様、また製版されたのちに版胴に装着される
態様のいずれであってもよい。以下図1以降の説明で
は、本発明の簡易性の典型例である印刷原板が版胴に装
着されたまま製版され、印刷され、印刷後使用済みの版
が印刷原板として反復再使用される例について説明す
る。
【0151】図1は、本発明の上記の典型的実施形態に
よる平版印刷装置の構成を示す図である。図1に示す平
版印刷装置は、親水・親油材料として光触媒性の酸化チ
タンを含有する層を表面に有する原板を装着した版胴1
(装着した原板は版胴と接しているので図示してない)
と、版胴1上の原板に対して疎水性物質の層を像様に付
与する疎水性画像層付与部5と、疎水性物質が像様に付
与された原板表面に親水性強化剤を処理して疎水性像が
付与されない領域の親水性を強化する親水性強化処理部
3aと、疎水性像領域と親水性が強化された非画像領域
とを有する原板にインキおよび湿し水を供給するインキ
・湿し水供給部3bと、印刷終了後に版胴1上の原板に
残存するインキを除去するインキ洗浄部4と、インキを
除去した原板上の残存画像などの履歴を除去する初期化
部2と、版胴1上の刷版に保持されたインキを用紙に転
写するための中間体としてのブランケット6と、ブラン
ケット6とともに給送された用紙を保持する圧胴7とを
備え、これらの部材が本体8内に収容されてなるもので
ある。
【0152】疎水性画像層付与部5は、描画方式や画像
マスク方式の種々の形態をとることができる。図2は、
疎水性物質の層の像様付与が熱転写方式で行われる場合
の熱転写方式の疎水性像付与部の概略を示す模式図であ
る。図2に示す接触加熱方式の疎水性画像層付与部5
は、版胴1の表面に密着して熱の印加による描画を行う
感熱ヘッド51と、印刷原板(版胴)1と感熱ヘッド5
1との間にあって印刷原板に像様に転写される疎水性物
質を担持した疎水性物質担持シート52と、印刷するべ
き画像の編集・レイアウトを行う編集・レイアウトワー
クステーション54と、編集・レイアウトワークステー
ション54によって印刷すべき画像から信号化されて記
録部に入力される画像信号Sに基づいて感熱ヘッド51
を駆動して版胴1の表面に描画を行って疎水性物質の層
を付与する感熱ヘッド駆動部53とからなる。感熱ヘッ
ド51は複数の微細な発熱体が版胴1の回転軸方向にア
レイ状またはマトリクス状に延在しており、1ラインま
たは複数ラインごとに版胴1にヒートモードによる描画
を行うものである。そして、版胴1が回転することによ
り、版胴1の表面にヒートモードによる描画がなされ、
版胴1における描画がなされた部分が疎水性の画像領域
とされ、熱転写されなかった部分が親水性の非画像領域
となる。
【0153】疎水性画像層付与部5の別の構成例は、模
式図として示さないが、図2における感熱ヘッド51を
ヒートモードのレーザー光源に置き換えた方式である。
上記の説明と同じく編集・レイアウトワークステーショ
ンとレーザー光源駆動部により、版胴1の表面が変調さ
れたレーザー光により露光され、版胴1におけるレーザ
ー光が照射されなかった部分が親水性の非画像領域とさ
れ、レーザー光が照射された部分に疎水性物質が熱転写
されて親油性の画像領域とされて、ヒートモードによる
描画がなされるものである。なお、レーザーは、光熱変
換性であれば、必ずしも赤外線レーザーでなくてもよ
い。
【0154】疎水性画像層付与部5のさらに別の構成例
は、図2における感熱ヘッド51と疎水性物質担持シー
ト52を疎水性物質又はその溶液あるいはその分散液を
液滴の形で原板上に像様に噴射するインクジェット型の
液滴噴射方式に置き換えた方式である。図3は、インク
ジェット型の液滴噴射によって疎水性画像層を付与する
疎水性画像層付与部の構成模式図である。図2で述べた
感熱転写方式と同様に編集・レイアウトワークステーシ
ョン54と液滴噴射ノズル駆動部57により、液滴噴射
ノズル56から像様に液滴が版胴1の表面に噴射されて
疎水性画像が付与される。液滴の噴射を受けなかった部
分が親水性の非画像領域となる。
【0155】疎水性像付与部5のさらなる構成例は、マ
スク画像を通して疎水性物質を像様に原板表面に付与す
る方式である。図4は、この方式の一形態に用いる疎水
性物質付与部内の疎水性物質気化・暴露装置である。こ
の加熱手段は、電熱加熱方式が適しているが、電熱同様
の均一な面加熱方式でかつ温度調節も容易な赤外線灯に
よる熱線加熱を採用することもでき、またその他の前記
した加熱方式も採用することができる。この場合に用い
られる疎水性物質は、低分子有機化合物であり、加熱に
よって気化した蒸気がマスクされていない印刷用原板表
面に接触して凝縮し、疎水性の層を像様に形成する。
【0156】図4において、有機低分子化合物(疎水化
剤)蒸気供給手段29では、空気取り入れ口24より空
気が取り入れられて、内径約30mmの分液ろ斗タイプ
の硝子管を横向きに配置した蒸発室26にコック25を
経て導かれる。蒸発室には有機低分子化合物27(斜線
で示す)が容積率が例えば50%になるように満たされ
ていて、有機低分子化合物27の内部及び表面を空気が
通過する間に必要量の有機低分子化合物の蒸発気体を取
り込んでから、版胴1上の原板上の印刷用原板表面に導
かれ、この空気・蒸発気体の混合雰囲気中で描画が行わ
れる構造となっている。
【0157】疎水性画像層付与部5の外套の内部の加熱
領域は、電熱ヒーター31により、蒸発室26は電熱ヒ
ーター30によりそれぞれ加熱され、その加熱温度は加
熱領域及び蒸発室26にそれぞれ配した温度センサー3
2、33と温度制御部34によって所定温度に制御され
る。また、有機低分子化合物27の蒸気の取り込み量
は、温度制御部34において印刷用原板の加熱温度を所
定の疎水性発現温度に設定したときに、その疎水性が強
化されるに足りる量であり、その量になるように蒸発室
26の温度が設定される。蒸発室の温度は、例えば、揮
発し易い低沸点の有機低分子化合物(例えば、イソオク
タン、メチルエチルケトン)の場合は、蒸発室の下部に
有機低分子化合物27を満たすだけで加熱する必要はな
いが、それでは不十分の沸点のやや高い化合物(例え
ば、パラフィン、ワックス、ヘキシレングリコール)の
場合には、空隙率の大きい硅草土、シリカ粒子、沸石粒
子などを有機低分子化合物27とともに蒸発室内に入れ
て取り入れた空気と有機化合物との接触度を高める措置
が取られる。また、有機低分子化合物27がナフタレン
のような固形物の場合は、蒸発室26に適当な空隙率で
充填されるか、又は温度制御部34、電熱ヒーター30
及び温度センサー33によって蒸発室26内部の温度を
蒸発に適した温度に調節できる機構となっている。例え
ば、シリコーンオイルを使用する場合には、シリコーン
オイルを含浸させた珪草土が容積率が50%となるよう
に硝子管の下半分に空気と接するように置かれ、空気の
温度は取り入れ口24では室温で、この管を通過中に例
えば190℃に上昇するように電熱ヒーター30によっ
て加熱される。パラフィンワックスを疎水化剤として用
いる場合も蒸発室の温度を溶融温度以上に設定して液体
とする。なお、図には示してないが、当然のことながら
蒸気を含んだ空気は、屋外排気される。また、必要があ
れば、排気の前に空気浄化も行われる。
【0158】疎水性物質の層が気化しにくい例えば高分
子皮膜であるような場合には、図4の態様ではなく、塗
り付け方式など別の態様が選ばれることはいうまでもな
い。
【0159】図1に戻って、疎水性層付与部5において
疎水性画像の付与が行われた原板には、非画像部の親水
性の強化が行われる。親水性強化処理部3aで親水性強
化剤が塗布されて疎水性層が付与されていない領域の親
水性が強化される。親水性強化処理部3aは、親水性強
化剤の貯留槽とその液面に下半分を浸漬した状態で配さ
れた中間ローラーと中間ローラーと印刷原板表面にそれ
ぞれ面接触を保つように配された塗り付けローラーから
なっており、各ローラーの表面には吸液性のフェルトが
巻かれて、貯留槽の親水性強化剤が中間ローラーに吸蔵
され、塗り付けローラーに転写され、原板に塗布される
構造となっている。
【0160】次いで、第1の実施形態の動作について説
明する。まず、例えば図2〜図4に示した各方式の疎水
性画像層付与部5が、回転しながら通過する版胴1上の
原板の表面部分に疎水性物質の層が像様に付与されて画
像層が形成される。次いで、親水性強化処理部3aにお
いて親水性強化剤が塗布された非画像領域の親水性が強
化され、親水性が経時的に低下することが防止される。
このようにして版胴1上の印刷版表面の親水・親油材料
含有層は疎水性画像物質と親水性強化剤によってインキ
受容性とインキ反発性のいずれもが強化されて識別性、
したがって印刷品質が高められており、この版面にイン
キ・湿し水供給部3bよりインキおよび湿し水が供給さ
れる。これにより、版胴1上の印刷版の親油性の画像領
域にはインキが保持され、親水性の非画像領域にはイン
キで汚染されることなく湿し水が保持される。
【0161】その後、ブランケット6と圧胴7との間に
矢印Aに示すように用紙を供給し、版胴1上の原板に保
持されたインキをブランケット5を介して用紙に転写す
ることにより平版印刷が行われる。
【0162】印刷終了後、インキ洗浄部4により版胴1
上の版面に残存するインキを除去する。その後、版胴1
上の原板を親水・親油材料(本態様では酸化チタン)の
疎水性発現温度すなわち履歴消去温度に設定された初期
化部2を通して原板の全面が初期状態の親水・親油性と
なることにより、版胴1上の原板の像様の親水性領域は
消去されて、製版操作を行う前の状態に戻る。初期化部
2においては、原板上の親水・親油材料のタイプに応じ
て、紫外域を主とする活性光の全面照射により(本実施
形態の場合の酸化チタンのように光触媒性化合物の場
合)、赤外域を主とするヒートモード光の全面照射によ
り(光熱変換物質の場合)、あるいは光以外の熱エネル
ギー、例えば電熱ヒーターや熱風による加熱により(高
温親水性発現物質の場合)初期化が行われる。
【0163】このように、本発明による平版印刷装置に
よれば、疎水性物質の層の像様付与と非画像領域の親水
性強化剤付与のみで版胴1上の原板に識別性の高い印刷
版面を形成することができ、これにより現像が不要でか
つ印刷面の鮮鋭性が保たれた平版印刷を行うことができ
る。また、版胴1上の版面を洗浄して再度全面加熱する
(又は活性光又はヒートモード光を一様照射する)こと
により元の状態に戻すことができるため、版胴1上の原
板を反復使用することができ、これにより印刷物を低コ
ストで提供することができることとなる。さらに、印刷
装置から版胴1上の原板を取り外す必要がないため、従
来のPS版のように印刷装置に組み込む際にゴミなどが
付着することもなくなり、これにより、印刷品質を向上
させることができる。
【0164】また、印刷用原板として版胴1上の原板を
使用し、版胴1上の原板の周囲に疎水性画像層付与部
5、親水性強化部3a、インキ・湿し水供給部3b、イ
ンキ洗浄部4及び初期化部2を配設することにより、単
に版胴1上の原板を回転させるのみで、原板の疎水性層
の付与、照射部の親水性強化およびインキと湿し水の供
給、さらには印刷終了後のインキ洗浄及び履歴除去のた
めの初期化を行うことができるため、装置をコンパクト
に構成することができ、これにより省スペース化を図る
ことができる。
【0165】従来提案された簡易な製版方式の中でも、
疎水性画像層を付与してから非画像部の親水性を強化す
る本発明が、工程がさらに簡単化されていること、
非画像領域の親水性が強化され、安定であること、履
歴に影響されず、再現性がよいこと、使用済み刷版を
光又は熱の作用で初期化して反復使用できることなどの
利点を有している。さらに、画像領域と非画像領域の識
別性の高い印刷版を再現性よく製作することができると
いう利点があり、印刷版の品質を高めることができる。
【0166】
【実施例】以下に本発明の具体的態様を実施例によって
示すが、本発明はこれらに限定されない。 〔実施例1〕本実施例1では、上記実施形態1による具
体例を示す。99.5重量%アルミニウムに、銅を0.
01重量%、チタンを0.03重量%、鉄を0.3重量
%、ケイ素を0.1重量%含有するJISA1050ア
ルミニウム材の厚み0.30mm圧延板を、400メッシ
ュのパミストン(共立窯業製)の20重量%水性懸濁液
と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用
いてその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。こ
れを15重量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム
4.5重量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が
5g/m2になるようにエッチングした後、流水で水洗し
た。更に、1重量%硝酸で中和し、次に0.7重量%硝
酸水溶液(アルミニウム0.5重量%含有)中で、陽極
時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形
波交番波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5
796号公報実施例に記載されている電流波形)を用い
て160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処
理を行った。水洗後、35℃の10重量%水酸化ナトリ
ウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2
になるようにエッチングした後、水洗した。次に、50
℃、30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットし
た後、水洗した。
【0167】さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液
(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用い
て、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密
度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極
酸化皮膜重量2.7g/m2とした。この支持体を水洗後、
70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間
浸漬処理し、水洗乾燥した。以上のようにして得られた
アルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計
で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは
0.58μmであった。
【0168】次いでこのアルミニウム支持体を真空蒸着
装置内に入れて、全圧2.0x10 -2Torrになるように
分圧70%の酸素ガスの条件下でチタン金属片を電熱加
熱して、アルミニウム支持体上に蒸着して酸化チタン薄
膜を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によっ
て無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が1.5/
6.5/2であり、TiO2薄膜の厚さは90nmであっ
た。これを版胴1上の原板の基体に巻き付けて機上印刷
用の原板とした。
【0169】図2に示した態様の溶融型熱転写装置を用
いて、印刷されるべき画像をワークステーション54で
電気的画像信号に変換して感熱ヘッド駆動部53を経て
感熱ヘッド51によって疎水性物質担持シート52上の
インクを原板表面に印画した。疎水性物質担持シート5
2は、市販の感熱プリンター用インクリボン(熱転写リ
ボンカセットEW(黒)、富士通(株)製品)を使用し
た。印画用の感熱プリンターは、Ta−SiO2 発熱低
抗体上にサイアロン耐摩耗保護層を設けた150μm×
150μmの感熱ヘッド(図2の51)を250μm間
隔に並べた感熱プリンターで、感熱ヘッド51は20m
sec通電によって450°Cに達する加熱能力を持っ
ており、走査速度を400msec/mに設定した。疎
水性画像層付与部5を通過時間が1分となる回転速度で
版胴を回転させた。原板表面の疎水性画像部分の水に対
する接触角をContact Angle Meter CA-D(協和界面科学
(株)製)を用いて空中水滴法で表面の水に対する接触
角を測定したところ、いずれの部分も78〜83度の間
にあった。
【0170】次いで、版胴の同じ回転周期内に図1の親
水性強化部3aにおいて親水性強化剤を原板表面に塗り
付け処理した。親水性強化剤として下記の組成の水溶液
を使用した。 組 成 量(g) エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル 300 プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル 250 ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体 (プルロニックL−31、旭電化(株)) 5 ヒドロキシプロピルセルロース 3 リン酸第一アンモン 15 クエン酸第二アンモン 5 N,N−ビスカルボキシメチル−β−アラニンの3ナトリウム塩 3 プロノポール 3 4−イソチアゾリン−3−オン誘導体 3 純水 全量を1000mlとした 処理後の原板表面の非画像領域の水に対する接触角をCo
ntact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用
いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したと
ころ、いずれの照射領域も7〜9度の間にあった。
【0171】この版胴1上の原板をサクライ社製オリバ
ー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3
において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業
社製Newchampion Fグロス85墨を用いて1000枚平
版印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が
得られ、版胴1上の原板の損傷も認められなかった。
【0172】次いで洗浄部4において、版胴1上の原板
の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;
大日本インキ化学工業社)とトルエンの1/1混合液を
ウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去し
た。次いで初期化部2において170℃で加熱を行っ
た。前と同じ方法で接触角を測定した。版表面のどの部
分も48〜55度の間にあった。
【0173】このようにして、版胴上で1サイクルの製
版・印刷及び原板再生工程を終えた原板を版胴に装着し
たまま再び上記の製版過程を行って印刷版を製作した。
この版胴1上の刷版をサクライ社製オリバー52片面印
刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3bにおいて湿
し水を純水、インキに大日本インキ化学工業社製Newcha
mpion Fグロス85墨を供給して1000枚平版印刷を
行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、
版胴1上の原板の損傷も認められなかった。
【0174】以上の繰り返しを5回実施したところ、疎
水性画像領域、非画像領域のそれぞれの水滴接触角の
値、印刷後のインク除去した版面の加熱による接触角の
回復スピード及び印刷面の画像の鮮明さの変化は認めら
れなかった。この結果から、酸化チタン層をアルミニウ
ム支持体上に設けた印刷原板を使用し、実施形態1の印
刷装置を用いて疎水性物質である感熱プリンター用イン
キの像様付与、親水性強化剤の適用による製版・印刷が
可能であり、しかもインキの洗浄除去と履歴除去用加熱
のみで印刷原板を反復再生使用できることが示された。
【0175】〔実施例2〕真空蒸着装置中に100ミク
ロン厚みのSUS板をセットして全圧0.65Paの真
空下でセレン化亜鉛を100nmの厚みに蒸着した。こ
れを空気中600°Cで2時間酸化処理してSUS板の
片面に酸化亜鉛の薄膜を形成させた。
【0176】この酸化亜鉛皮膜付き100ミクロンSU
S板を実施例1と同じく、実施形態1の印刷装置の版胴
1上の原板の基体に巻き付けて機上製版型の原板とし
た。
【0177】一方、厚さ10μmのポリエチレンテレフ
タレートフィルム上に、疎水性画像物質としてカルナウ
バワックス、ヘキシレングリコール及びキシレンの1:
1:2混合液体をローラーコーターによって20μmの
厚みに塗り付け塗布した疎水性画像付与シートを作成し
た。以上の原板構成と疎水性画像付与シートを用い、実
施例1と同じ感熱ヘッドによって原板上に疎水性画像層
を付与した。原板表面の画像層領域の水に対する接触角
をContact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)
を用いて空中水滴法で水に対する接触角を測定したとこ
ろ、76〜80度の間にあった。
【0178】次いで、実施例1と同じユニレックURM
600形式GH60201Xを用いて同じ条件で、現像
済みフィルムを通して原板表面に活性光の像様照射を行
い、つづいてカルボキシメチルセルロース2質量%、イ
ソプロピルアルコール2質量%及びジエチレングリコー
ル5質量%の水溶液を含浸したフェルトによって像様照
射領域当たり500ミリリットル/m2 の塗布量で塗り
付けた。親水性強化処理後の原板表面の光照射領域の水
に対する接触角をContact Angle Meter CA-Dを用いて空
中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、
いずれの照射領域も10〜13度の間にあった。
【0179】この版胴1上の原板をサクライ社製オリバ
ー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3
において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業
社製Newchampion Fグロス85墨を用いて1000枚平
版印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が
得られ、版胴1上の原板の損傷も認められなかった。
【0180】次いで洗浄部(図1の4)において、版胴
1上の原板の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR
(発売元;大日本インキ化学工業社)とトルエンの1/
1混合液をウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキ
を除去した。ついで500W高圧水銀灯(活性光)を用
いて原板表面を1キロルックスの照度で十分間照射して
初期化(履歴除去)を行った。前と同様の方法で接触角
を測定したところ、版表面のどの部分も50〜57度の
間にあった。
【0181】このようにして、版胴上で1サイクルの製
版・印刷、原板再生工程を終えた原板を版胴に装着した
まま再び上記の製版過程を行って印刷版を製作した。こ
の版胴1上の刷版をサクライ社製オリバー52片面印刷
機に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水
を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampio
n Fグロス85墨を用いて1000枚平版印刷を行っ
た。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴
1上の原板の損傷も認められなかった。
【0182】この結果から、酸化亜鉛層をSUS支持体
上に設けた印刷原板を使用し、態様1の印刷装置を用い
て疎水化剤による全面疎水化、活性光にとる全面照射と
親水性強化によって識別性の高い印刷が可能であり、し
かもインキの洗浄除去と活性光の一様照射による初期化
のみで印刷原板を反復再生使用できることが示された。
【0183】〔実施例3〕実施例1と同様にして陽極酸
化処理したアルミニウム支持体をCsLa2 NbTi2
10の化学量論比に相当するセシウムエトキシド、チタ
ンブトキシド、ランタンイソブトキシド、ニオブエトキ
シドを含む20%のエタノール溶液に浸漬して表面を加
水分解したのち280°Cに加熱してアルミニウム支持
体表面にCsLa2 NbTi2 10の厚み1000nm
の薄膜を形成させた。
【0184】この複合金属酸化物薄膜付きアルミニウム
支持体を版胴の基体に巻き付けて原板としたことと、初
期化は図1の初期化部2の代わりに版胴内部に設けた埋
め込みヒーターによる加熱(原板表面で160°C)に
よって行った以外は、実施例1と同じ製版、印刷及びイ
ンキ洗浄除去、再印刷を行った。疎水性画像領域の水に
対する接触角は、1回目及び2回目とも76〜79度で
あり、また、非画像領域の親水性強化剤処理後の接触角
は、10〜14度であった。印刷面の品質も1回目及び
2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別
性も十分であった。
【0185】〔実施例4〕厚み100ミクロンのポリイ
ミド(無水ピロメリット酸・m−フェニレンジアミン共
重合物)フィルム(商品名;カプトン、東レ・デュポン
社製)を支持体として使用し、その上に光熱変換性のコ
ロイド銀微粒子分散物の薄層をロッドコーターによって
塗布して印刷原板を作製した。
【0186】コロイド銀微粒子分散物はつぎのようにし
て調製した。すなわち、クエン酸ナトリウム水溶液(3
2質量%)560mlを約1℃に冷却し、撹拌しなが
ら、硫酸第一鉄水溶液(30質量%)100m1を添加
した。均一に混合した後、激しく撹拌しながら、硝酸銀
水溶液(10質量%)100mlを30秒以内に添加終
了するように添加した。約10分後に撹拌を停止した。
出来上がったコロイド銀微粒子分散物中の不要な塩類を
除去するために、限外濾過装置で蒸留水を加えながら限
外濾過を施した。限外過装置は米国 Amicon 社製のCH
2PRS型を用い、フィルターはSIY30(カットオ
フ分子量30,000)を用いた。水洗は、電導度が約
50μS/cmになるまで行った。水洗後、Ag濃度が
6質量%になるように調整した。コロイド銀微粒子の平
均粒子サイズは8nmであった。実施例1と同じ方法で
疎水性画像層の付与と非画像部の親水性強化処理を施し
た。それぞれの領域の水に対する接触角は、実施例1で
測定した値とそれぞれ実質的に同じであった。また印刷
終了後にインク除去を行い、赤外線レーザー光を一様に
照射したのちの水に対する接触角は、1回目及び2回目
とも42〜46度であった。印刷面の品質も1回目及び
2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別
性も十分であった。
【0187】〔実施例5〕実施例4の光熱変換性コロイ
ド銀微粒子層の代わりにSnとSnSを共蒸着させた厚
さ70nmの金属/金属化合物薄膜層を支持体上に塗設
した原板を用いた以外は、実施例4と同じ試験を行っ
た。薄膜層の支持体上への蒸着は、ポリイミド支持体を
蒸着装置内にセットし、全圧2.0×10-2Torrのアル
ゴン雰囲気の条件下でSnとSnSを加熱して共蒸着薄
膜を形成することによって行った。疎水化処理した表面
の水に対する接触角は実施例1と実質的に同じであり、
また印刷終了後にインク除去を行い、赤外線レーザー光
を一様に照射したのちの水に対する接触角は、1回目及
び2回目とも46〜50度であった。印刷面の品質も1
回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領
域の識別性も十分であった。
【0188】〔実施例6〕実施例1における感熱ヘッド
を用いる疎水性画像層の付与を、インクジェット型の像
様の液滴噴射による画像層の付与に変更した以外は実施
例1と同じ製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行
った。疎水性画像領域の水に対する接触角は、1回目及
び2回目とも80〜85度であり、また、非画像領域の
親水性強化剤処理後の接触角は、14〜18度であっ
た。印刷面の品質も1回目及び2回目とも地汚れはな
く、画像領域と非画像領域の識別性も十分であった。イ
ンクジェット装置には、市販のインクジェット方式のカ
ラープリンターの画像形成部を流用し、インクの代わり
に下記の方法で作製したポリマー分散液を使用した。
【0189】<ポリマー分散液の調製>スチレン60
g、ジビニルベンゼ10g、ヒドロキシエチルメタクリ
レート30g、水200g、界面活性剤XL−102F
(ライオン(株)製)(4.7%水溶液)10gを三ッ
口フラスコに入れ、窒素を導入しながら、80℃に昇温
した。その後約30分攪拌後、K2 2 8 を1g添加
し乳化重合をおこない、粒径約0.2μmの樹脂粒子を
得た。さらに、この樹脂粒子分散液中にメタノールを3
0容量%添加して噴射用の分散液とした。
【0190】〔実施例7〕実施例6におけるインクジェ
ット方式の分散液を下記のマイクロカプセル分散液にに
変更した以外は実施例6と同じ製版、印刷及びインキ洗
浄除去、再印刷を行った。疎水性画像領域の水に対する
接触角は、1回目及び2回目とも65〜69度であり、
また、非画像領域の親水性強化剤処理後の接触角は、1
4〜18度であった。印刷面の品質も1回目及び2回目
とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別性も十
分であった。
【0191】<マイクロカプセル粒子分散液の調製>酢
酸エチル19.0部(以下すべて質量部)、イソプロピ
ルビフェニルを5.9部、グリセロールラウレート5部
およびリン酸トリクレジル2.5部を加熱して均一に混
合した。カプセル壁材(同時の疎水性化前駆体でもあ
る)として、キシリレンジイソシアナート/トリメチロ
ールプロパン付加物(75%酢酸エチル溶液 タケネー
トD110N:武田薬品社の商品名)7.6部をこの溶
液に更に添加し、均一に攪拌した。別途、10質量%ド
デシルスルホン酸ナトリウム水溶液2.0部を加えた6
質量%ゼラチン(MGP−9066:ニッピゼラチン工
業社の商品名)水溶液64部を用意し、ホモジナイザー
にて乳化分散した。
【0192】得られた乳化液に水20部を加え均一化し
た後、攪拌しながら40℃に昇温し、3時間カプセル化
反応を行わせた。この後35℃に液温を下げ、イオン交
換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ社製)6.
5部、アンバーライトIRC50(オルガノ社製)13
部を加え更に一時間攪拌する。この後イオン交換樹脂を
ろ過して目的のカプセル液を得た。カプセルの平均粒径
は0.64μmであった。
【0193】〔実施例8〕図4に示した疎水性画像層付
与部5と同じ装置を使用して次の試験を行った。空気取
り入れ口に内径約30mmの硝子管(分液ろ斗を転用)
を横向きに配置し、疎水性画像層付与部内の空気がこの
硝子管内を通過して疎水性画像層付与部の内部に取り込
まれる構造とした。シリコーンオイル〔商品名シリコー
ンKF99(信越化学工業(株)製〕を含浸させた珪草
土を容積率が50%となるように硝子管の下半分に流し
こんだ。空気取り入れ口の温度は、この管を通過中に室
温から150℃に上昇する。シリコーンKF99は、こ
の温度では少なくとも100Pa以上の蒸気圧を持つの
で、疎水性画像層付与部の内部に取り入れられた空気
は、シリコーンKF99の蒸気を含んでいる。空間部の
内容積が2リットルの蒸発室内の空気交換速度は、毎分
10vol%であった。このオルガノポリシロキサン化
合物の蒸気の雰囲気に印刷原板を曝すことと原板表面に
ネガ画像を担持した孔版をマスクとして設けたこと以外
は、実施例1と同じ原板と同じ装置を使用して、同じ条
件で製版し、この印刷版によって、100枚の平版印刷
を行った。実施例1と同様にスタートから終了まで鮮明
な印刷物が得られた。
【0194】〔実施例9〕実施例2において、印刷終了
後、インキ除去を行った印刷版に活性光の照射に代えて
赤外線レーザー光照射を用いて照射面の温度を酸化亜鉛
の高温親水性発現温度である190〜300°Cとなる
ようにして露光を行った以外は実施例2と同じ操作によ
って試験を繰り返した。印刷面の地汚れのない良好な品
質の印刷を行うことができた。
【0195】〔実施例10〕実施例1で使用したものと
同じ粗面化処理と陽極酸化処理を施したアルミニウム支
持体を使用してチタン酸バリウムを光触媒能を有する金
属酸化物とした原板を作製した。すなわち、上記アルミ
ニウム支持体をスパッタリング装置内にセットし、6.
5×10-5Paまで真空排気する。支持体を200°C
に加熱し、Ar/O2 が90/10(モル比)となるよ
うにガス圧を6.5×10-1Paに設定し、SiO2
ターゲットにRFパワー200Wを投入してSiO2
1μmの薄層を形成した。続いてArのガス圧を6.5
×10-1Paに設定し、SiのターゲットにRFパワー
200Wを投入してSiの1μmの薄膜を形成した。続
いてArのガス圧を6.5×10-1Paに設定し、6イ
ンチφのチタン酸バリウムの焼結ターゲットにRFパワ
ー200Wを投入して膜厚100nmのチタン酸バリウ
ム薄膜を形成した。X線解析法によれば、この薄膜は多
結晶体であった。
【0196】このチタン酸バリウム薄膜付きアルミニウ
ム支持体を版胴の基体に巻き付けて原板として使用した
ことと、赤外線レーザーを使用して高温親水性発現温度
に加熱して初期化を行った以外は、実施例1と同じ製
版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行った。赤外線
レーザー装置は、最大出力500mWの固体赤外線レー
ザー装置で、ビーム幅を100ミクロンにして全面走査
露光によって原板表面の初期化を行った。この場合、照
射した赤外線光をSiが吸収するので、この薄層が光エ
ネルギーを熱エネルギーに変換する役目を果たす。すな
わち、赤外線を照射することで、Si層が発熱するので
チタン酸バリウム層を加熱できる。加熱温度を疎水性発
現温度の範囲(155〜250℃)への調節は、レーザ
ー出力の制御によって行った。赤外線レーザー光照射後
の原板表面の水に対する接触角は、1回目及び2回目と
も49〜56度であった。また、印刷面の品質も1回目
及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の
識別性も十分であった。
【0197】次いで、本発明の第2の実施形態について
説明する。 〔実施形態2〕図5は本発明の第2の実施形態による平
版印刷装置の構成を示す図である。図5に示す平版印刷
装置は、図1に示す平版印刷装置を印刷ユニット11
Y,11M,11C,11Bとして4台直列に本体12
内に配置して構成されるものであり、それぞれ、Y(イ
エロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラッ
ク)のインキを使用してカラー印刷を行うものである。
【0198】各印刷ユニット11Y,11M,11C,
11Bの構成および動作は上述した図1に示す平版印刷
装置と同一であるため、詳細な説明は省略する。第2の
実施形態においては、各印刷ユニット11Y,11M,
11C,11Bのインキ・湿し水供給部において供給さ
れるインキの色が、それぞれ、Y(イエロー)、M(マ
ゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)である点が異
なるものである。
【0199】次いで、第2の実施形態の動作について説
明する。まず、印刷ユニット11Y,11M,11C,
11Bにおいて版胴1上の原板をゆっくり回転させなが
ら疎水性画像層付与部5の構造は図2〜4に説明したの
で省略する。版胴を疎水性画像付与に十分の時間で通過
する速度で回転し、画像領域を形成させた後に、図1の
親水性強化処理部3aによる親水性強化剤の適用が行わ
れる。そして、各印刷ユニット11Y,11M,11
C,11Bのインキ・湿し水供給部からY,M,C,B
それぞれの色のインキを供給して、各印刷ユニット11
Y,11M,11C,11Bの版胴1上の原板にインキ
および湿し水を保持する。その後、図5の矢印Bに示す
ように用紙を供給して、各印刷ユニット11Y,11
M,11C,11Bのインキを用紙に転写する。すなわ
ち、印刷ユニット11YにおいてはYのインキが転写さ
れ、印刷ユニット11MにおいてはMのインキが転写さ
れ、印刷ユニット11CにおいてはCのインキが転写さ
れ、印刷ユニット11BにおいてはBのインキが転写さ
れる。これにより、用紙にはカラー画像がネガ型の方式
で印刷されることとなる。
【0200】印刷終了後、各印刷ユニット11Y,11
M,11C,11Bのインキ洗浄部(図1の4)により
版胴に残存するインキを除去する。その後、版胴1上の
原板をゆっくり回転させながら初期化部2によって履歴
除去を行い、版胴1上の原板をもとの親水・親油性の状
態にして、版胴1上の原板は描画前の状態に戻る。
【0201】
【発明の効果】本発明の光触媒性、光熱変換性及び高温
親水性発現性のいずれかの性質を有する親水・親油材料
を含有する層を原板上に設けた印刷用原板に疎水性物質
の画像層を付与したのち、親水性強化剤処理を行って、
親水性と疎水性の像様分布を形成させて印刷版を作成し
て印刷を行い、印刷終了後、印刷版のインキを除去して
履歴を熱又は光によって除去して印刷原板を再生して反
復使用可能とする印刷方法は、現像処理を必要とせず、
原板の反復再使用もできて、かつ画像領域と非画像領域
の識別性が高い印刷画像が得られて、印刷品質と簡易性
の両方を満たす。また、原板を印刷機の版胴に装着し、
印刷機上で、疎水性画像の付与、親水性強化処理、イン
キ・湿し水供給のもとでの印刷及び印刷後の原板再生を
行う印刷装置を用いて簡易で安価な平版印刷を行うこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による平版印刷装置の
構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による平版印刷装置の
疎水性画像層付与部の一態様の模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による平版印刷装置の
疎水性画像層付与部の別の態様の模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による平版印刷装置の
疎水性画像層付与部のさらに別の態様の模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による平版印刷装置の
構成を示す図である。
【符号の説明】
1 版胴 2 初期化部 3a 親水性強化処理部 3b インキ・湿し水供給部 4 インキ洗浄部 5 疎水性画像層付与部 6 ブランケット 7 圧胴 8 12,15 本体 11Y,11M,11C,11B 印刷ユニット 14Y,14M,14C,14B 印刷ステーション 24 空気取り入れ口 25 コック 26 蒸発室 27 有機化合物 29 有機化合物供給手段 30 電熱ヒーター 31 電熱ヒーター 32 温度センサー 33 温度センサー 34 温度制御部 51 感熱ヘッド 52 疎水性物質担持シート 53 感熱ヘッド駆動部 54 ワークステーション 55 液滴 56 液滴噴射ノズル 57 液滴噴射ノズル駆動部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03F 7/20 501 B41J 3/00 F (72)発明者 中村 隆 神奈川県足柄上郡開成町宮台798番地 富 士写真フイルム株式会社内 (72)発明者 中山 隆雄 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2C062 RA01 2C250 FA03 FB01 2H084 AA13 AA14 AA16 AA36 AA38 AA40 BB13 BB16 CC05 2H097 CA17 FA06 LA03 2H114 AA04 AA21 AA22 BA01 BA06 BA10 DA01 DA05 DA08 DA10 DA11 DA25 DA27 DA28 DA29 DA32 DA38 DA45 DA47 DA50 DA52 DA53 DA56 DA57 DA59 DA60 DA62 EA01 EA03 EA05 EA08 GA01 GA22 GA29 GA38

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水・親油材料を含有する層を表面に有
    する印刷用原板に(1)疎水性物質の層を像様に付与し
    て画像領域を形成させたのち、(2)該表面に親水性強
    化剤の処理を施して非画像領域の親水性を強化し、
    (3)該画像領域がインキを受容し、該非画像領域が湿
    し水を受容した版面を形成させて印刷を行い、(4)該
    印刷の終了後、インキの洗浄除去と、熱印加又は光照射
    による履歴消去とを該版面に施すことによって、該印刷
    用原板を再使用可能とすることを特徴とする平版印刷方
    法。
  2. 【請求項2】 親水・親油材料を含有する層を表面に有
    する印刷用原板に疎水性物質の層を像様に付与する方法
    が、熱ヘッド又はレーザー光による疎水性物質の熱転写
    及びインクジェット型噴射から選ばれる方法であること
    を特徴とする請求項1に記載の平版印刷方法。
  3. 【請求項3】 親水性強化剤が、脂肪族多価アルコー
    ル、ポリ(アルキレングリコール)、ポリエチレングリ
    コールアルキルエーテル、アルキルスルホン酸、一価ア
    ルコール、水及び界面活性剤から選択されることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の平版印刷方法。
  4. 【請求項4】 親水性強化剤が、平版印刷用の湿し水で
    あることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷方法。
  5. 【請求項5】 親水・親油材料が、光触媒能を有する金
    属化合物、光熱変換性物質、高温親水性発現物質から選
    ばれた材料であることを特徴とする請求項1〜4のいず
    れか1項に記載の平版印刷方法。
  6. 【請求項6】 親水・親油材料が、TiO2 、RTiO
    3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x
    x 10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、Bはア
    ルカリ土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、Dは
    周期律表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じく4
    A族元素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数値を
    表す)、SnO2 、Bi2 3 ,ZnO,FeOx (x
    =1〜1.5)、MnO2 、ZrO2 、VOx (x=1
    〜5)及びCuO並びにAg、Cu、Cr、Ti、C
    o、Ge、Si、Sn、Ni、Fe及びMoから選ばれ
    る金属酸化物又は金属であることを特徴とする請求項5
    に記載の平版印刷方法。
  7. 【請求項7】 親水・親油材料を含有する層を表面に有
    する印刷用原板に疎水性物質の層を像様に付与したの
    ち、該印刷用原板を親水性強化剤によって処理したこと
    を特徴とする平版印刷版。
  8. 【請求項8】 (1)親水・親油材料を含有する層を表
    面に有する印刷用原板の装着部と(2)該原板に疎水性
    物質の層を像様に付与して画像領域を形成させる疎水性
    画像層付与部と、(3)画像領域を形成した該原板に親
    水性強化剤を処理して非画像領域の親水性を強化させる
    親水性強化処理部と、(4)該画像領域にインキを供給
    し、該非画像領域に湿し水を供給するインキ及び湿し水
    供給部と、(5)該画像領域がインキを受容し、該非画
    像領域が湿し水を受容してなる印刷面を被印刷面と接触
    させて印刷を行う印刷部と、を有することを特徴とする
    平版印刷装置。
  9. 【請求項9】 印刷済みの版をインキ溶剤で洗浄するイ
    ンキ除去部と、熱印加又は一様の光照射による履歴消去
    を行う初期化部とを有し、該印刷版を再使用可能の印刷
    原板とすることを特徴とする請求項8に記載の平版印刷
    装置。
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