JP4876423B2 - 直描型水なし平版印刷版原版の製造方法 - Google Patents

直描型水なし平版印刷版原版の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、湿し水を用いずに印刷が可能な水なし平版印刷版原版の製造方法に関するものであり、特にレーザー光で直接製版できる直描型水なし平版印刷版原版の製造方法に関するものである。
製版用フィルムを使用しないで、原稿から直接オフセット印刷版を作製する、いわゆる直描型製版は、熟練度を必要としない簡易性、短時間で印刷版が得られる迅速性、多様なシステムから品質とコストに応じて選択可能である合理性等の特徴を生かして、軽印刷業界のみでなく、一般オフセット印刷、フレキソ印刷の分野にも進出し始めている。
特に最近では、プリプレスシステムやイメージセッター、レーザープリンター等の出力システムの急激な進歩によって新しいタイプの各種直描型平版印刷版が開発されている。
これらの直描型平版印刷版を製版方法から分類すると、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでシリコーンゴム層またはインキ着肉層を形成する方法等が挙げられる。なかでも、レーザー光を用いる方法は解像度、および製版速度の面で他の方法よりも優れており、その種類も多い。
このレーザー光を用いる方法は、光反応によるフォトンモード方式と、光熱変換を行って熱反応を起こさせるヒートモード方式の2つの方式に分けられる。特にヒートモードの方式は、明室で取り扱えるといった利点とともに、光源となる半導体レーザーの急激な進歩によって、その有用性は大きくなってきている。
ヒートモード方式の直描型水なし平版印刷版としては、これまで以下のような提案がなされている。
例えば、レーザー光を光源として用いる、熱破壊方式の直描型水なし平版印刷版(例えば、特許文献1、2参照)が開示されている。
この印刷版原版の感熱層は、レーザー光吸収化合物として主としてカーボンブラックを用い、熱分解化合物としてニトロセルロースを使用している。そしてこのカーボンブラックがレーザー光を吸収することによって熱エネルギーに変換し、その熱で感熱層が破壊される。そして最終的に、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、画線部となる。
しかしながら、この熱破壊方式の印刷版は、感熱層を破壊して画像を形成することから画線部のセルの深さが深くなり、微小網点でのインキ着肉性が悪く、また、インキマイレージが悪いという問題点があった。さらに、感熱層を熱破壊させ易くするために、架橋構造を形成しており、印刷版の耐刷性が悪いという問題点もあった。さらに、この印刷版は感度が低く、感熱層を破壊させるために高いレーザー光の強度が必要という問題点もあった。
このような問題点を改良する方法として、基板上に、感熱層およびシリコーンゴム層を有し、レーザー光を熱に変換することにより感熱層とシリコーンゴム層との接着性が低下することによって画像が形成できる直描型水なし平版印刷原版が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
この印刷版原版は光熱変換物質および金属キレート化合物を含有し、活性水素基含有化合物およびバインダーポリマーを含有しても良い感熱層によって構成される。感熱層中に予め架橋構造を形成させておいた場合は、ネガ型の直描型水なし平版印刷版が得られる。すなわち、レーザー光照射部の感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下し、その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。そのメカニズムは未解明であるが、原版作製時に形成された架橋構造が、レーザー照射により生じた熱の作用で脱離反応したものと考えられている。その結果、シリコーンゴム層と感熱層の界面の耐溶剤性が変化し、現像処理によりレーザー照射部のシリコーンゴム層が除去されるものである。
このネガ型の直描型水なし平版印刷版原版は感熱層とシリコーンゴム層の接着性が低下することによって画像が形成できるため、画線部のセルの深さが改善され、微小網点でのインキ着肉性およびインキマイレージの問題が少なくなっている。また、感度においても改善が見られる。
しかしながら、これら版材においても感度は十分に高くなっているとは言えず、画像形成のために必要となるレーザー照射エネルギーがさらに少ない版材が求められていた。
特開平6−55723号公報(第2−4頁) 特開平7−164773号公報(第4−5頁) 特開平11−221977号公報(第3−11頁)
本発明は、かかる従来技術の課題を解決し、少ないレーザー照射エネルギーで製版でき、画像再現性が良好な直描型水なし平版印刷版原版の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、基板上に少なくとも光熱変換物質および分子内に活性水素を有するポリマーを含有する感熱層およびシリコーンゴム層をこの順序で設けてなる直描型水なし平版印刷版原版の製造方法において、少なくとも基板上に感熱層組成物溶液を塗布する工程、感熱層組成物を乾燥する工程からなり、さらに、感熱層組成物溶液が溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を含有することを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版の製造方法である。
本発明によれば、少ないレーザー照射エネルギーで製版でき、画像再現性が良好な直描型水なし平版印刷版原版が得られる。さらに、この直描型水なし平版印刷版原版を水または水に界面活性剤を添加した液の存在下で摩擦することによって、有機溶剤を用いずに直描型水なし平版印刷版を製造することも可能となる。
本発明に用いられる感熱層は描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有し、さらに、発生した熱によって感熱層とシリコーンゴム層との接着性が低下する機能を有する層である。この感熱層は、基板上に感熱層組成物溶液を塗布する工程、感熱層組成物を乾燥する工程を含む製造方法によって形成される。
本発明の感熱層には少なくとも光熱変換物質、分子内に活性水素を有するポリマーを含有することが好ましい。さらに、有機錯化合物を含有することが好ましい。
光熱変換物質としては、レーザー光を吸収するものであれば特に限定されるものではなく、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック等の黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステン等の金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩等を挙げることができる。さらにビスマス、鉄、マグネシウム、アルミの金属粉等の添加剤を添加することが好ましい。
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラックが好ましい。
また、赤外線または近赤外線を吸収する染料も光熱変換物質として好ましく使用される。
これら染料としては400nm〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する全ての染料を使用できるが、好ましい染料としては、エレクトロニクス用、記録用色素であるシアニン系、フタロシアニン系、フタロシアニン金属錯体系、ナフタロシアニン系、ナフタロシアニン金属錯体系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、アントラキノン系、インドフェノール系、インドアニリン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系、フルオレノン系、モノアゾ系、ケトンイミン系、ジスアゾ系、ポリメチン系、オキサジン系、ニグロシン系、ビスアゾ系、ビスアゾスチルベン系、ビスアゾオキサジアゾール系、ビスアゾフルオレノン系、ビスアゾヒドロキシペリノン系、アゾクロム錯塩系、トリスアゾトリフェニルアミン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ニトロソ系、1:2型金属錯塩系、分子間型CT系、キノリン系、キノフタロン系、フルギド系の酸性染料、塩基性染料、色素、油溶性染料や、トリフェニルメタン系ロイコ色素、カチオン染料、アゾ系分散染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、3,9−ジブロモアントアントロン、インダンスロン、フェノールフタレイン、スルホフタレイン、エチルバイオレット、メチルオレンジ、フルオレッセイン、メチルビオロゲン、メチレンブルー、ジムロスベタイン等が挙げられる。
これらのなかでも、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜900nmの範囲にある、シアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料等が好ましく使用される。
さらにこれらの染料のなかでも、モル吸光度係数εの大きなものが好ましく使用される。具体的にはεが好ましくは1×10以上であり、より好ましくは1×10以上である。εが1×10以上であれば、感度の向上効果が発現できる。
これらの光熱変換物質は単独で、あるいは、2種以上を併用して用いることが好ましい。吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を併用することにより、2種以上の発信波長の異なるレーザーに対応出来るようにすることも可能である。
これら光熱変換物質の含有量は、感熱層の全固形分の0.1〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%である。0.1重量%以上とすることでレーザー光に対する感度の向上効果が得られ、70重量%以下とすることで印刷版の耐刷性の低下が生じにくい。
本発明に好ましく用いられる分子内に活性水素を有するポリマーとは、例えば、−OH、−SH、−NH、−NH−、−CO−NH、−CO−NH−、−OCO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CS−OH、−CO−SH、−CS−SH、−SOH、−PO、−SO−NH、−SO−NH−、−CO−CH−CO−等の活性水素を有する構造単位を分子内に有するポリマーであり、フィルム形成能を有するポリマーであることが好ましい。このような構造単位を分子内に有するポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を含有するモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、N−アルキルアクリルアミド、アクリルアミドの単独重合体もしくは共重合体、アミン類とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル又はアリルグリシジルとの反応物の単独重合体もしくは共重合体、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコールの単独重合体もしくは共重合体等の活性水素を含有するエチレン性不飽和モノマーの単独重合体もしくは共重合体(共重合モノマー成分としては、活性水素を含有する他のエチレン性不飽和モノマーでも良く、活性水素を含有しないエチレン性不飽和モノマーでも良い。)や、ポリウレタン樹脂類、ポリウレア樹脂類、ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、レゾール樹脂類、セルロース誘導体類等の主鎖に活性水素を有する構造単位を有する縮合体が挙げられる。これらの中で水酸基、カルボキシル基を有するポリマーが好ましく、p−ヒドロキシスチレンの単独重合体もしくは共重合体、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等のフェノール性水酸基を有するポリマーがより好ましい。
これらの分子内に活性水素を有するポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。分子内に活性水素を有するポリマーの含有量は感熱層の全固形分の20重量%〜95重量%、好ましくは50重量%〜90重量%である。
分子内に活性水素を有するポリマーとともに、他のフィルム形成能を有するポリマーを使用することも好ましく行われる。他のフィルム形成能を有するポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、イソプレン、スチレン−ブタジエン等の各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニル等のビニルエステル類の単独重合体もしくは酢酸ビニル−塩化ビニル等の共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート等の縮合系各種ポリマーが挙げられる。他のフィルム形成能を有するポリマー含有量は50重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
また、分子内に活性水素を有するポリマーとともに架橋剤を用いることも好ましい。架橋剤としては架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、多官能イソシアネート、多官能ブロックドイソシアネート、多官能エポキシ化合物、多官能アクリレート化合物、多官能アルデヒド、多官能メルカプト化合物、多官能アルコキシシリル化合物、多官能アミン化合物、多官能カルボン酸、多官能ビニル化合物、多官能ジアゾニウム塩、多官能アジド化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
本発明の感熱層には、有機錯化合物を含有することが好ましい。有機錯化合物は、分子内に活性水素を有するポリマーの架橋剤として、あるいは熱硬化反応の触媒として機能することができる。有機錯化合物が架橋剤的な機能を果たす場合においても、感熱層中に他の前述のような架橋剤を有していてもよいし、有していなくてもよい。
本発明で言う有機錯化合物とは、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位子した有機無機錯塩、および金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類を含む。これらの中でも、配位子が2個以上のドナー原子を有し、金属原子を含む環を形成するような金属キレート化合物が、そのもの自体の安定性や感熱層溶液の安定性等の面から好ましく用いられる。
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Cu(I)、Ag(I)、Hg(I)、Hg(II)、Li、Na、K、Be(II)、B(III)、Zn(II)、Cd(II)、Al(III)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、Ag(II)、Au(III)、Pd(II)、Pt(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Ti(IV)、V(III)、V(IV)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(III)、Pd(IV)、Pt(IV)、Sc(III)、Y(III)、Si(IV)、Sn(II)、Sn(IV)、Pb(IV)、Ru(III)、Rh(III)、Os(III)、Ir(III)、Rb、Cs、Mg、Ni(IV)、Ra、Zr(IV)、Hf(IV)、Mo(IV)、W(IV)、Ge、In、ランタニド、アクチニド等が挙げられる。これらの中でもAl、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfが好ましく、Al、Ti、Fe、Zrがより好ましい。Alは感度向上効果が得られやすい点から特に好ましく、Tiは印刷インキやインキ洗浄溶剤に対する耐性が発現しやすい点から特に好ましい。
また、配位子としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(硫黄原子)等をドナー原子として有する以下のような配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素原子をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル、R:脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SOH(スルホン酸)、−PO(亜リン酸)等、窒素原子をドナー原子とするものとしては、−NH(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、およびケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナト)等、硫黄原子をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SHあるいは−C(=S)−OHおよび−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナト)等が挙げられる。
上記のような金属と配位子から形成される有機錯化合物のうち、好ましく用いられる化合物としては、Al、Ti、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hf等の金属のβ−ジケトン類、アミン類、アルコール類、カルボン酸類との錯体が挙げられ、さらにはAl、Fe、Ti、Zrのアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体等が特に好ましい化合物として挙げられる。
このような化合物の具体例としては例えば以下のような化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ノニルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロペンタジオネート)、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチルー3,5−ヘプタンジオネート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムジアセチルアセトネートエチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスプロピルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスブチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスヘキシルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスプロピルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスブチルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスヘキシルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスノニルアセトアセテート、アルミニウムジブトキシドモノアセトアセトネート、アルミニウムジプロポキシドモノアセトアセトネート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム−s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド等。チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジ−n−ブトキサイド、チタンジイソプロポキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンエチルアセトアセテートトリ−n−ブトキサイド、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンオキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンテトラ(2−エチル−3−ヒドロキシヘキシルオキシド)、ジヒドロキシビス(ラクテート)チタン、(エチレングリコーレート)チタンビス(ジオクチルフォスフェート)等。ジルコニウムジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(ヘキサフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(トリフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリ−n−プロポキサイド、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリグリコラートジルコン酸、トリラクテートジルコン酸等。鉄(III)アセチルアセトネート、ジベンゾイルメタン鉄(II)、トロポロン鉄、トリストロポロノ鉄(III)、ヒノキチオール鉄、トリスヒノキチオロ鉄(III)、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)ジフェニルプロパンジオネート、鉄(III)テトラメチルヘプタンジオネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネート等。
このような有機錯化合物の感熱層中に占める割合としては、感熱層の全固形分の0.5〜50重量%、さらには3〜30重量%であることが好ましい。有機錯化合物の量を0.5重量%以上とすることによって上記のような効果が期待でき、一方、50重量%以下とすることによって印刷版の耐刷性の低下等の問題が生じにくい。
また、本発明の感熱層組成物には必要に応じて各種の添加剤を使用しても良い。塗布性を改良するためにシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤等を添加できる。シリコーンゴム層との接着性を強化するためにシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加することもできる。これら添加剤の使用量はその使用目的によって異なるが、一般には感熱層の全固形分の0.1〜30重量%である。
発明の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法は、少なくとも基板上に前述の感熱層組成物溶液を塗布する工程、感熱層組成物を乾燥する工程からなり、感熱層組成物溶液が溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を含有することを特徴とする。
溶解度パラメーターは、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき、δ=(ΔH/V)1/2により定義される量δをいう。溶解度パラメーターの単位には(MPa)1/2を用いる。溶解度パラメーターの単位としては(cal・cm−31/2も通常よく用いられており、両者の単位間には、δ(MPa)1/2=2.0455×δ(cal・cm−31/2の関係式がある。具体的には、溶解度パラメーター17.0(MPa)1/2は8.3(cal・cm−31/2となる。溶解度パラメ−タ−17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤としては、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類が挙げられる。例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、“アイソパーC”、“アイソパーE”、“アイソパーG”、“アイソパーH”、“アイソパーK”、“アイソパーL”、“アイソパーM”(エクソン化学(株)製)等の脂肪族飽和炭化水素、直鎖状または分岐状のヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等の脂肪族不飽和炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トリフルオロトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル等のエーテル類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。経済性および安全性の点から脂肪族及び脂環族炭化水素が好ましい。これら脂肪族及び脂環族炭化水素の炭素数は4〜20個が好ましく、炭素数6〜15個がより好ましい。
感熱層組成物溶液が溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を含有することによって、少ないレーザー照射エネルギーで製版でき、画像再現性が良好となる。
この詳細なメカニズムは未解明であるが、感熱層組成物溶液を塗布する工程および感熱層組成物を乾燥する工程を含む製造方法によって得られた直描型水なし平版印刷版原版は、感熱層の断面の電子顕微鏡観察において空孔が観察されている。空孔は孔径が0.01〜5μmであった。溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を含有することによって、基板上に感熱層組成物の溶液を塗布する工程、または感熱層組成物を乾燥する工程において、感熱層内に光熱変換物質及び/または分子内に活性水素を有するポリマーの濃度に粗密の分布が生じ、最終的に疎の部分が空孔として残存することによって、感熱層が低密度化し、これにより感熱層の熱伝導率が小さくなり、レーザー照射によって発生した熱の拡散が抑えられるため、レーザー照射部分の感熱層表面付近で起こる化学反応が促進され、レーザー照射部分の感熱層とシリコーンゴム層の接着性が著しく低下し、感度が向上するものであると考えられる。
溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤は感熱層組成物溶液全体の0.5〜50重量%含有することが好ましい。さらに好ましくは、1〜30重量%である。含有量が0.5重量%以上であれば感度向上効果が得られ、含有量が50重量%以下であれば感熱層組成物溶液の塗工性に問題が生じにくい。
また、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤の沸点が50〜250℃であることが好ましい。さらに好ましくは80〜200℃である。
本発明の感熱組成物溶液には、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤に加えて、他の溶剤を使用することができる。この溶剤としては、光熱変換物質、分子内に活性水素を有するポリマー、有機錯化合物等の感熱層構成成分を溶解または分散できるものであれば如何なるものでも使用できる。例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類等の溶剤が挙げられる。それぞれの類について一例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
(アルコール類)メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2,4−ジメチルペンタ−3−オール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、1−デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等。
(エーテル類)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルフェニルエーテル、ジメトキシメタン、ジエテルアセタール、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジメチルジオキサン、トリオキサン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等。
(ケトン類)アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケロン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルペンチルケトン、プロピルブチルケトン、エチルヘキシルケトン、プロピルペンチルケトン、プロピルヘキシルケトン、ブチルペンチルケトン、ブチルヘキシルケトン、ジペンチルケトン、ペンチルヘキシルケトン、ジヘキシルケトン、メチルイソブテニルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルフェニルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン等。
(エステル類)ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、クロトン酸エチル、クロトン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸シクロヘキシル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等。
(アミド類)ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等。
(その他)カルバミド酸メチル、カルバミド酸エチル、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル等。
上記溶剤は一種単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
使用する溶剤の沸点は、30〜250℃が好ましく、50〜200℃がより好ましい。溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤との比較で言えば、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤の沸点以下であることが好ましい。
感熱層組成物の溶液中の全固形分の濃度は、2〜50重量%が好ましい。
上記の感熱層組成物の溶液は公知の塗布技術を用いて基板上に塗布される。塗布装置の例としては、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ディップコーター、カーテンコーター等が挙げられる。塗膜精度や生産性及びコストの面で、スリットダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターが特に好ましい。
塗布された感熱層組成物は、シリコーンゴム層を設ける工程に先立って乾燥される。感熱層組成物の乾燥は非加熱下、または加熱下において実施される。加熱する場合には、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いて、20〜250℃の温度で、30秒〜10分間乾燥することが好ましい。
感熱層組成物の塗布重量は印刷版の耐刷性や希釈溶剤が揮散しやすく生産性で優れる点で乾燥後の重量で0.1〜10g/mの範囲が適当であり、好ましくは0.5〜7g/mの範囲である。
本発明に用いられる基板としては、寸法的に安定な板状物であれば公知の金属、フィルム等のいずれも使用することができる。この様な寸法的に安定な板状物としては、従来印刷版の基板として使用されたもの等が好ましく挙げられる。かかる基板としては、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅等の金属の板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等のプラスチックのフィルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
これらのうち、アルミニウム板は寸法的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用の基板として用いられているポリエチレンテレフタレートフィルムも好ましく使用される。
感熱層との接着性を強固にするとともに、金属等のように熱伝導が比較的高い物質を使用する場合には断熱の目的で、前述の基板の上に断熱層を設けたものを基板として使用することも好ましく行われる。このような断熱層を設けることにより、感熱層が熱反応を起こす際の熱が基板へ拡散するのを防止することができる。
断熱層は、次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、基板と感熱層とをよく接着し、経時において安定であること、さらに現像液、印刷時に使用する溶剤に対する耐溶剤性が高いことである。
このような条件を満たすものとして、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル、ポリアミド、尿素樹脂、ポリビニルブチラール、カゼイン、ゼラチン等を含むものが挙げられる。これらの樹脂は単独であるいは二種以上混合して用いることができる。また、これらの樹脂と類似の組成物を硬化したものを使用してもよい。
これらの中では、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂等を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることが好ましい。
断熱層の耐溶剤性を向上する目的で、感熱層と同様の架橋剤や有機錯化合物を混合することが好ましい。
また、この断熱層中に発泡剤を添加することも好ましく行われる。さらに、顔料、染料等の添加剤を含有させて検版性を向上させることが好ましい。
断熱層の厚さは被覆層にして0.5〜50g/mが基板表面の形態欠陥を防止し、化学的悪影響を遮断する効果や経済性の点から好ましく、より好ましくは1〜10g/mである。
本発明のシリコーンゴム層としては、付加反応型のもの、縮合反応型のものいずれでも用いられる。
付加反応型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、ビニル基含有ポリシロキサン、SiH基含有ポリシロキサン、さらには硬化速度を制御する目的で反応抑制剤、および硬化触媒を含むことが好ましい。
ビニル基含有ポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、分子末端および/もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。
−(SiR−O−)− (I)
(式中、nは2以上の整数を示し、R、Rは炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)上記式中のR、Rは全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、取扱い性や得られた印刷版のインキ反発性、耐傷性等の観点から重量平均分子量は1万〜60万であることが好ましい。
SiH基を有する化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくは、オルガノハイドロジェンシロキサンである。オルガノハイドロジェンは直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリメチルフェニルシロキサン、式:RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が挙げられる。上式中、Rはアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。
ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーとしては、例えば、ジメチルハイドロジェンシリル(メタ)アクレート、ジメチルハイドロジェンシリルプロピル(メタ)アクリレート等のジメチルハイドロジェンシリル基含有アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、酢酸アリル等のモノマーとを共重合したオリゴマーが挙げられる。
SiH基を有する化合物はビニル基含有ポリシロキサン100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、1.5〜15重量部がより好ましい。SiH基を有する化合物が1重量部%以上であればシリコーンゴム層の硬化が不足して膜強度や耐傷性が問題となることがない。また、30重量部%以下であればSiH基を有する化合物が未反応のまま残留して、インキ反発性、画像再現性及び耐傷性に影響することがない。
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコール等が挙げられるが、アセチレン基含有のアルコール等が好ましく用いられる。反応抑制剤の添加量は、ビニル基含有ポリシロキサン100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
硬化触媒は公知のものから選ばれるが、好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体等を一例として挙げることができる。このような硬化触媒の添加量は、ビニル基含有ポリシロキサン100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。添加する触媒量を0.01重量部以上とすることでシリコーンゴム層の硬化が十分となり、また、感熱層との接着性が発現する。一方、20重量部以下とすることでシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらすことがない。
また、これらの組成物の他に、縮合型シリコーンゴム層の組成物である水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカ等の公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類等が好ましく、特にビニル基を有するものや、ケトキシミンシラン類が好ましい。
縮合反応型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、水酸基含有ポリシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型等)、および硬化触媒を含むことが好ましい。
水酸基含有ポリシロキサンも、上記一般式(I)で表される構造を有する。水酸基は分子末端に位置することができるが、好ましく用いられるものは分子両末端に水酸基を有するものである。
一般式中のR、Rについては、同様に全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。その取扱い性や得られた印刷版のインキ反発性、耐傷性等の観点から重量平均分子量は1万〜60万が好ましく、3万〜20万がより好ましい。
縮合反応型のシリコーンゴム層で用いられる架橋剤としては、下記一般式(II)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミンシラン類、アリロキシシラン類等を挙げることができる。
(R4−nSiX(II)
(式中、nは2〜4の整数を示し、Rは炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)上記式において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン、テトラアリロキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中では、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性等の観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類が好ましい。
一般式(II)で表される架橋剤の添加量は、水酸基含有ポリシロキサン100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、1.5〜15重量部がより好ましい。添加量を1重量部以上とすることで十分な硬化速度が得られ、また、30重量部以下とすることでゴムの物性がもろくなったり、印刷版の耐傷性等に悪影響を与えたりしにくい。
硬化触媒としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸等の有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、およびチタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド等の金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシド等の金属ジケテネート、金属の有機酸塩等を挙げることができる。これらの中では、金属の有機酸塩を添加することが好ましく、特に錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩であることが好ましい。このような化合物の具体例の一部としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄等を挙げることができる。このような硬化触媒の添加量は、水酸基含有ポリシロキサン100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。添加する触媒量を0.01重量部以上とすることでシリコーンゴム層の硬化が十分となり、さらに感熱層との接着性が発現する。また、20重量部以下とすることでシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらしにくい。
また、これらの組成物の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカ等の公知の充填剤、さらには公知のシランカップリング剤を含有してもよい。
これらシリコーンゴム層の膜厚は0.5〜20g/mが好ましく、さらに好ましくは1〜4g/mである。膜厚を0.5g/m以上とすることで印刷版のインキ反撥性や耐傷性、耐刷性が十分となり、20g/m以下とすることで経済的見地から不利とならず、現像性、インキマイレージの低下が起こりにくい。
直描型平版印刷版原版には、シリコーンゴム層を保護する目的で保護フィルムをラミネートするかあるいは保護層を形成してもよい。保護フィルムとしてはポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等が挙げられる。このようにして得られた直描型平版印刷版原版を、保護フィルムを剥離してから、あるいは保護フィルム上からレーザー光で画像状に露光する。
本発明の製版露光工程で用いられるレーザー光源としては、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが用いられるが、これらの中でも近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、明室での版材の取扱い性等の観点から、780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が製版に好ましく用いられる。
次に、現像方法について説明する。現像は通常、少なくとも(1)レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させる「現像工程」からなる。また、(1)の工程の前に、(2)レーザー照射部のシリコーンゴム層、感熱層間の接着力を低下させる「前処理工程」を加えたり、(1)の工程の後に、(3)画線部の感熱層を染色液で染色する「後処理工程」、および(4)処理液や染色液を洗い落とす「水洗工程」を加えてもよい。各工程について、詳述する。
(1)現像工程
現像液の存在下もしくは非存在下での摩擦処理により現像がなされる。摩擦処理は、不織布、脱脂綿、布、スポンジ、ブラシ等で版面を擦ることによって、あるいは、現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジ等で版面を拭き取ることによって行うことができる。版面に現像液をシャワーしながらこれらの摩擦処理を行うこともできる。また、高圧の水や温水または水蒸気を版面に噴射することによっても現像を行うことができる。
現像液としては、水や界面活性剤を含んだ水、または後述の前処理液に用いられる溶剤やその水溶液等を挙げることができる。現像液の温度は任意でよいが、10〜50℃が好ましい。中でも、水による現像が安全性や廃液の点から最も好ましい。現像液として界面活性剤を含んだ水を用いる場合、界面活性剤としては公知のものを使用できる。安全性、廃棄する際のコスト等の点から、水溶液にしたときにpHが5〜8になるものが好ましい。界面活性剤の含有量は現像液の10重量%以下であることが好ましい。このような現像液は安全性が高く、廃棄する際のコスト等の経済性の点でも好ましい。
(2)前処理工程
本発明により得られる水なし平版印刷版原版の版材感度は、前処理工程を含まずとも実用上十分であるが、前処理工程を含むことで更に低いレーザー出力での製版が可能となる。前処理工程は、所定温度に保持した前処理液中に、一定時間だけ版を浸漬させる工程である。レーザー照射のON/OFFの差を増幅し、低エネルギーのレーザー照射部の現像を行うために、前処理液で版を処理する。
前処理工程では、30〜60℃の温度の前処理液に版を10〜100秒浸漬させることが好ましい。適正前処理液温度を30℃以上とすることで特別な冷却装置を用いずとも容易に液温を一定に保つことができ、一方、60℃以下とすることで熱による液劣化や構成成分の揮発等が起こりにくい。また、浸漬時間が10秒以上であれば良好な現像性が得られ、一方、100秒以下であれば非画線部となるべき部分のシリコーンゴム層が剥離するといった問題が起こりにくい。
前処理液中に版を浸漬させると、前処理液はシリコーンゴム層中に浸透し、やがて感熱層まで到達する。照射部の感熱層はその上部において、熱分解物が生じていたり、あるいは前処理液に対する溶解性が向上していたりするので、感熱層上部は前処理液によって膨潤するかあるいは一部溶解して、シリコーンゴム層と感熱層との間の接着力が低下する。この状態で印刷版面を軽く擦ると、照射部のシリコーンゴム層は剥離し、下層の感熱層は露出してインキ着肉層となる。一方、未照射部の感熱層は前処理液に対して不溶あるいは難溶なため、シリコーンゴム層は、感熱層と強力に接着しており、強く擦っても剥がれない。このようにして、未照射部のシリコーンゴム層は現像されることなく、この部分がインキを反発し、水なし平版印刷版の画像形成がなされる。
このような機構によって印刷版の高感度化が行われるため、前処理液の選択は重要である。感熱層の溶解能が高い前処理液を用いると、未照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その度合いによっては感熱層までもが剥離してしまう。その結果、前処理液などを汚染することによって、前処理液の寿命を縮める。一方、感熱層の溶解能が低い前処理液を用いると、照射部のシリコーンゴム層さえも現像することができず、印刷版の高感度化は果たされない。
このような前処理液としては、水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸、アミンなどの極性溶媒を添加したものや、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種類からなる溶媒に極性溶媒を少なくとも1種類添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。さらに、下記一般式(III)で示されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましい。
−(−O−CHR−CH−)−O−R (III)
ここで、Rは水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を示し、RおよびRは水素原子あるいは炭素数1〜15のアルキル基を示し、kは1〜12の整数である。
概して、グリコール化合物に比べると、グリコールエーテル化合物の方が感熱層に対する溶解能は高い。よって、両者の中で適当な化合物を選択するか、両者を混合することによって、感熱層の硬化具合の異なる版材に対して、最適な選択的溶解性を有する前処理液を得ることができる。前処理液としての効果は、感熱層の選択的溶解性だけでなく、シリコーンゴム層の膨潤能も加味される。シリコーンゴム層が膨潤すると、シリコーンゴム層を剥がしやすくなるため、たとえ感熱層の溶解性が低い前処理液でも現像しやすくなる。ただし、シリコーンゴム層が膨潤しすぎると現像時に擦り傷が付きやすくなるので、適当な範囲にとどめる必要がある。具体的には、シリコーンゴム層の膨潤率が30%以下のものが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。例えばグリコール化合物によるシリコーンゴムを用いたシリコーンゴム層の膨潤率はほぼ0%であり、ほとんどシリコーンゴム層を膨潤させないので、単に感熱層の選択的溶解性のみが前処理液としての適性に影響する。一方、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどの繰り返し単位が少なく、RやRにある程度長い直鎖の官能基を導入すると、シリコーンゴム層の膨潤能が高くなる。グリコールモノエーテルとグリコールジエーテルとでは、ジエーテルの方が、シリコーンゴムの膨潤能が一般的に高い。このような場合には、感熱層の選択的溶解性とシリコーンゴムの膨潤能の両者を考慮して前処理液の設計を行う。
グリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、2,3−ブタンジオール、k=2〜12のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール化合物は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらの中で、選択的溶解性の面から、k=2〜4であるジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールが前処理液として特に好ましく用いられる。
グリコールエーテル化合物として、上記グリコール化合物のモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルが挙げられる。RやRのアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基が挙げられる。好ましく用いられるグリコールエーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。
上記一般式(III)で表されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物の前処理液中の含有量は、50重量%〜100重量%が好ましく、70重量%〜95重量%がより好ましい。50重量%以上とすることで感熱層の選択的溶解性が優れるため、画像再現性が良好となる。
また、前処理液には、アミン化合物を共存させることも好ましい。アミン化合物は選択的溶解性には劣るが、感熱層の溶解能が高いため、高感度化の目的で、前処理液中に副成分として加えてもよい。
アミン化合物として、エチレングリコールアミン、ジエチレングリコールアミン、トリエチレングリコールアミン、テトラエチレングリコールアミン、プロピレングリコールアミン、ジプロピレングリコールアミン、トリプロピレングリコールアミンのようなグリコールアミン化合物や、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、o−、またはm−、p−メトキシ、またはメチルベンジルアミン、N,N−ジ(メトキシベンジル)アミン、β−フェニルエチルアミン、γ−フェニルプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、αまたはβナフチルアミン、o−、またはm−、またはp−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸、2−(2−アミノエチル)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
アミン化合物の前処理液中の含有量は、25重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。25重量%以下とすることで非画線部となるべき部分のシリコーンゴム層が剥がれるといった問題が起こりにくくなり、画像再現性が良好となる。
また前処理液中には、必要に応じて、水、アルコール類、カルボン酸類、エステル類、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、へプタンなど)、脂肪族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(トリクレンなど)を添加してもよい。また、現像時に版面を擦るときに、傷が入るのを防止するために、前処理液中に硫酸塩、燐酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などの界面活性剤を加えてもよい。
(3)後処理工程
現像により形成された画線部の確認を容易にするために、染色液で染色する後処理工程を設けてもよい。染色液に用いられる染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、分散染料、および反応性染料などの中から単独で、あるいは2種以上のものを混合して用いることができる。なかでも、水溶性の塩基性染料および酸性染料が好ましく用いられる。
塩基性染料としては、“クリスタルバイオレット”、 “エチルバイオレット”、“ビクトリアピュアブルー”、“ビクトリアブルー”、“メチルバイオレット”、 “DIABACIS MAGENTA”(三菱化学(株)製)、“AIZEN BASIC CYANINE 6GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“PRIMOCYANINE BX CONC.”(住友化学(株)製)、“ASTRAZON BLUE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、“DIACRYL SUPRA BRILLIANT 2B”(三菱化学(株)製)、“AIZEN CATHILON TURQUOISE BLUE LH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“AIZEN DIAMOND GREEN GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“AIZEN MALACHITE GREEN”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
酸性染料としては、“ACID VIORET 5B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“KITON BLUE A”(CIBA 製)、“PATENT BLUE AF”(BASF 製)、“RAKUTO BRILLIANT BLUE FCF”(洛東化学工業(株)製)、“BRILLIANT ACID BLUE R”(GEIGY 製)、“KAYANOL CYANINE 6B”(日本化薬(株)製)、“SUPRANOL CYANINE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、“ORIENT SOLUBLE BLUE OBB”(オリエント化学工業(株)製)、”ACID BRILLIANT BLUE 5G”(中外化成(株)製)、“ACID BRILLIANT BLUE FFR”(中外化成(株)製)、“ACID GREEN GBH”(高岡化学工業(株)製)、“ACID BRILLIANT MILLING GREEN B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
これら染料の染色液中の含有量は、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜5重量%がより好ましい。
染色液の溶媒としては、水、アルコール類、グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類が用いられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いられる。グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類は、処理液としての効果を有するので、仮に現像工程でレーザー照射部のシリコーンゴム層が現像できず付着していても、後処理工程で現像させることもできる。
その他、染色助剤、有機酸、無機酸、消泡剤、可塑剤、界面活性剤を任意に添加してもよい。
染色液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。また、現像液中に上記染料を添加しておいて、現像と同時に画像部の染色化を行うこともできる。
(4)水洗工程
版面に前処理液や染色液が浸透したままになっていると、経時により非画線部のシリコーンゴム層が剥離しやすくなる場合があるため、処理液や染色液を版面から洗い落とす水洗工程を設けてもよい。水洗水の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
これまで述べてきた工程による現像方法としては、手による現像でも自動現像装置による現像のどちらでも良い。手による現像では、これらの処理液、現像液および染色液を順次不織布、脱脂綿、布、スポンジなどに含浸させて版面を拭き取ることによって行うことができる。自動現像装置を用いる場合には、前処理部、現像部および後処理部がこの順に設けられているものが好ましい。場合によっては後処理部の後方にさらに水洗部が設けられていてもよい。このような自動現像機としては、自動現像機:TWL−1160、TWL−650(東レ(株)製)、あるいは特開平4−2265号、特開平5−2272号、特開平5−6000号などに開示されている現像装置が挙げられる。
また、以上のように現像処理された印刷版を積み重ねて保管する場合には、印刷版を保護するために合紙を挿入し挟んでおくことが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例1)
(断熱層の形成)厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記の断熱層溶液をスリットダイコーターを用いて塗布し、200℃で1分間乾燥し、膜厚8g/mの断熱層を設けた。
<酸化チタン分散液の作製>
N,N−ジメチルホルムアミド10重量部中に、酸化チタン“CR−50”(石原産業(株)製)10重量部を添加して5分間撹拌した。さらに、ガラスビーズ(No.08,φ=1.5〜2.5mm)を15重量部添加し、20分間激しく撹拌し、その後ガラスビーズを取り去ることで酸化チタン分散液を得た。
<断熱層溶液の組成>
(a)エポキシ樹脂:エピコート(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):18重量部
(b)ポリウレタン:サンプレン(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):285重量部(ポリウレタン:57重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):4重量部
(d)ビニル系重合物:ディスパロン(登録商標)LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):42重量部(酸化チタン:21重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:48重量部
(g)メチルエチルケトン:270重量部。
(感熱層の形成)下記の感熱層溶液を前記断熱層上にスリットダイコーターを用いて塗布し、150℃で80秒間加熱、乾燥することによって、膜厚1.5g/mの感熱層を設けた。
<感熱層溶液の組成>
(a)光熱変換物質(近赤外線吸収染料):“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)有機錯化合物:チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):ナーセム(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):22重量部
(c)活性水素を有するポリマー:フェノールノボラック樹脂:スミライトレジン(登録商標)PR54652(住友デュレズ(株)製):60重量部
(d)アセトン(溶解度パラメーター19.7(MPa)1/2、沸点56.3℃):444重量部
(e)エタノール(溶解度パラメーター26.2(MPa)1/2、沸点78.3℃):40重量部
(f)シクロヘキサン(溶解度パラメーター16.8(MPa)1/2、沸点80.7℃):224重量部(感熱層組成物溶液全体の28重量%)。
(シリコーンゴム層の形成)下記のシリコーンゴム層溶液を前記感熱層上にスリットダイコーターを用いて塗布し、125℃で80秒間加熱、乾燥することによって、膜厚2.0g/mのシリコーンゴム層を設け、直描型水なし平版印刷版原版を得た。さらに、シリコーンゴム層表面に6μmのポリプロピレンフィルムをラミネートした。
<シリコーンゴム層溶液の組成>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンDMS−V52(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、SiH基含有ポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):7重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:3重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製):5重量部
(e)アイソパー(登録商標)E(エッソ化学(株)製):1035重量部。
得られた直描型水なし平版印刷版原版からポリプロピレンフイルムを剥離した後、製版機“GX−3600”(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて照射エネルギー75、100、125、150、175、200および225mJ/cmで画像露光を行い、2400dpiでそれぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点状のレーザー照射部域を作製した。現像には自動現像機“TWL−860KII”(東レ(株)製)を使用し、(i)前処理液:なし、現像液:水道水、後処理液:水道水の条件と、(ii)前処理液:液温度が35℃のテトラエチレングリコール、現像液:水道水、後処理液:現像用後処理液NA−1(東レ(株)製)の各条件で通版速度:80cm/minで現像を行った。この一連の操作によって、レーザー照射部のシリコーンゴム層が剥離したネガ型の直描型水なし平版印刷版を得た。
得られた印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー175mJ/cm、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー100mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
それぞれの印刷版をオフセット印刷機(小森スプリント4色機)に取り付け、“ドライオカラー”(大日本インキ化学工業(株)製)墨、紅、藍、黄インキを用いて、上質紙に印刷を行った。2万枚印刷後も非画線部に汚れがない良好な印刷物が得られた。また、印刷終了後の印刷版を検査した結果、非画線部のシリコーンゴム層がピンホール状に剥離する等の損傷もなく、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
レーザー照射前の直描型水なし平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を調製し、透過型電子顕微鏡H−1700FA型(日立製)を使用して、加速電圧100kV、倍率10,000倍で断面を観察したところ、孔径0.08〜0.32μm(平均孔径0.2μm)の空孔が確認された。
(比較例1)
実施例1の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:668重量部
(e)エタノール:40重量部
実施例1と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー225mJ/cmにおいても網点を再現しておらず、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー175mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現し、感度は不十分であった。
レーザー照射前の印刷版原版の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、空孔は確認されなかった。
(実施例2)
実施例1の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:228重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)シクロヘキサン:440重量部(感熱層組成物溶液全体の55重量%)
得られた直描型水なし平版印刷版原版において感熱層の膜厚にわずかながら不均一な部分が見られ、感熱層組成物溶液の塗工性は十分ではなかった。
実施例1と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー175mJ/cm、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー100mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例3)
実施例1の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:548重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エッソ化学(株)製)(溶解度パラメーター14.5(MPa)1/2、沸点118〜137℃):120重量部(感熱層組成物溶液全体の15重量%)
実施例1と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー175mJ/cm、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー100mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例4)
実施例1の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:652重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)アイソパー(登録商標)H(エッソ化学(株)製)(溶解度パラメーター14.7(MPa)1/2、沸点178〜188℃):16重量部(感熱層組成物溶液全体の2重量%)
実施例1と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー175mJ/cm、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー100mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例5)
実施例1の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:652重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)アイソパー(登録商標)L(エッソ化学(株)製)(溶解度パラメーター14.9(MPa)1/2、沸点189〜207℃):16重量部(感熱層組成物溶液全体の2重量%)
実施例1と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー175mJ/cm、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー100mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例6)
実施例1の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:652重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)アイソパー(登録商標)V(エッソ化学(株)製)(溶解度パラメーター14.7(MPa)1/2、沸点273〜312℃):16重量部(感熱層組成物溶液全体の2重量%)
実施例1と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、(i)水道水のみで現像した印刷版は照射エネルギー200mJ/cm、(ii)前、後処理液を用いて現像した印刷版は照射エネルギー125mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例7)
感熱層を下記の通り作製した以外は、実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(感熱層の形成)下記の感熱層溶液を前記断熱層上にスリットダイコーターを用いて塗布し、150℃で80秒間加熱、乾燥することによって、膜厚1.5g/mの感熱層を設けた。
<感熱層溶液の組成>
(a)光熱変換物質(赤外線吸収染料):“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)有機錯化合物:アルミニウムジ−2−プロポキシドエチルアセトアセテート:“ALCH”(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(c)活性水素を有するポリマー:フェノールノボラック樹脂:スミライトレジン(登録商標)PR50731(住友デュレズ(株)製):60重量部
(d)アセトン:456重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)シクロヘキサン(溶解度パラメーター16.8(MPa)1/2、沸点80.7℃):224重量部(感熱層組成物溶液全体の28重量%)
得られた直描型水なし平版印刷版原版からポリプロピレンフィルムを剥離した後、製版機“GX−3600”(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて照射エネルギー125、150、175、200および225mJ/cmで画像露光を行い、2400dpiでそれぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点状のレーザー照射部域を作製した。現像には自動現像機“TWL−860KII”(東レ(株)製)を使用し、前処理液:なし、現像液:水道水、後処理液:水道水の条件で通版速度:80cm/minで現像を行った。この一連の操作によって、レーザー照射部のシリコーンゴム層が剥離したネガ型の直描型水なし平版印刷版を得た。
得られた印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、照射エネルギー150mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
この印刷版をオフセット印刷機(小森スプリント4色機)に取り付け、“ドライオカラー”(大日本インキ化学工業(株)製)墨、紅、藍、黄インキを用いて、上質紙に印刷を行った。2万枚印刷後も非画線部に汚れがない良好な印刷物が得られた。また、印刷終了後の印刷版を検査した結果、非画線部のシリコーンゴム層がピンホール状に剥離する等の損傷もなく、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
レーザー照射前の印刷版原版の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、孔径0.035〜0.25μm(平均孔径0.14μm)の空孔が確認された。
(比較例2)
実施例7の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:680重量部
(e)エタノール:40重量部
実施例7と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、照射エネルギー225mJ/cm以下においても画像が再現できず感度は不十分であった。
レーザー照射前の印刷版原版の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、空孔は確認されなかった。
(実施例8)
実施例7の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:560重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エッソ化学(株)製)(溶解度パラメーター14.5(MPa)1/2、沸点118〜137℃):120重量部(感熱層組成物溶液全体の15重量%)
実施例7と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、照射エネルギー150mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例9)
実施例7の感熱層組成物溶液の組成において、溶媒組成を以下に変更したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
(d)アセトン:664重量部
(e)エタノール:40重量部
(f)アイソパー(登録商標)H(エッソ化学(株)製)(溶解度パラメーター14.7(MPa)1/2、沸点178〜188℃):16重量部(感熱層組成物溶液全体の2重量%)
実施例7と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、照射エネルギー150mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
(実施例10)
実施例9の感熱層組成物溶液を塗布後、50℃で80秒間加熱、乾燥したこと以外は同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
実施例7と同様にレーザー照射および現像した印刷版を光学顕微鏡で観察したところ、照射エネルギー125mJ/cmにおいて1〜99%の網点を再現しており、良好な感度および画像再現性を有していた。
以上の実施例および比較例の結果を表1、表2に示す。
Figure 0004876423
Figure 0004876423

Claims (7)

  1. 基板上に少なくとも光熱変換物質および分子内に活性水素を有するポリマーを含有する感熱層およびシリコーンゴム層をこの順序で設けてなる直描型水なし平版印刷版原版の製造方法において、少なくとも基板上に感熱層組成物溶液を塗布する工程、感熱層組成物を乾燥する工程からなり、さらに、感熱層組成物溶液が溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を含有することを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
  2. 感熱層組成物溶液が溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を0.5〜50重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
  3. 溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤の沸点が50〜250℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
  4. 感熱層が有機錯化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
  5. 光熱変換物質が赤外線または近赤外線を吸収する染料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
  6. 分子内に活性水素を含有するポリマーが水酸基またはカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
  7. 分子内に活性水素を含有するポリマーがフェノール性水酸基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法。
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