JP4356507B2 - 直描型水なし平版印刷版原版および直描型水なし平版印刷版原版用シリコーンゴム溶液 - Google Patents

直描型水なし平版印刷版原版および直描型水なし平版印刷版原版用シリコーンゴム溶液 Download PDF

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Description

本発明は、水なし平版印刷版原版に関するものであり、特にレーザー光で直接製版出来る直描型水なし平版印刷版原版に関するものである。
製版用フィルムを使用しないで、原稿から直接オフセット印刷版を作製する、いわゆる直描型製版は、熟練度を必要としない簡易性、短時間で印刷版が得られる迅速性、多様なシステムから、品質とコストに応じて選択可能である合理性などの特徴を生かして、軽印刷業界のみでなく、一般オフセット印刷、フレキソ印刷の分野にも進出し始めている。特に最近では、プリプレスシステムやイメージセッター、レーザープリンタなどの出力システムの急激な進歩によって、新しいタイプの各種直描型平版印刷版が開発されている。
これらの直描型平版印刷版を製版方法から分類すると、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでインキ反撥層またはインキ着肉層を形成する方法などが挙げられる。なかでも、レーザー光を用いる方法は解像度、および製版速度の面で他の方式よりも優れており、その種類も多い。
このレーザー光を用いる印刷版はさらに、光反応によるフォトンモードと、光熱変換を行って熱反応を起こさせるヒートモードの2つのタイプに分けられる。特にヒートモードの方式は、明室で取り扱えるといった利点があり、また光源となる半導体レーザーの急激な進歩によって、最近非常に注目を集めており、今後の主流になると言われている。
ヒートモードにおける平版印刷版としては、湿し水を用いずに印刷が出来る直描型水なし平版、湿し水を用いて印刷を行う直描型水あり平版などが開発されている。直描型水なし平版は、高品質な印刷物が得られること、印刷の立ち上がりが早いという長所に加え、有機溶媒による前処理と水存在下でのブラシ擦り現像というシステムで現像できるため、水あり平版を処理したときに生じるアルカリ現像廃液が出ないという長所を持っている。
直描型水なし平版印刷版としては、例えば、レーザー光を光源として用いる直描型水なし平版印刷版原版およびその製版方法が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。さらには、感熱層中に金属キレート化合物と活性水素基含有化合物を含有する直描型水なし平版印刷版が提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。この印刷版は、実用充分な感度、優れた画像再現性、高いインキ反発性、安定した現像性などの非常に良好な性能を有しているものの、直描型水なし平版印刷版原版に縮合重合型シリコーンゴム層を用いた場合、シリコーンゴム層の硬化状態、シリコーンゴム層塗工時に使用されるシリコーンゴム溶液のゲル化といったシリコーンゴム層およびシリコーンゴム溶液の安定性に、版性能が大きく影響を受ける問題があった。
このようなシリコーンゴム溶液の安定性に関わる直描型水なし平版のシリコーンゴム層の改良に関しては、シリコーンゴム溶液の製造方法を工夫し、溶液中に存在する水分量を最大限減らすことで、製造時のバラツキを抑制してポットライフを伸ばす方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、縮合重合型シリコーンゴム層を用いた場合は、水分の存在が原版のシリコーンゴム層の硬化性を良好にする一方で、シリコーンゴム溶液の製造時には水分の存在によりシリコーンゴム溶液がゲル化するため、この方法を用いても、シリコーンゴム層の製造バラツキの低減と原版の版性能との両立の点では未だ実用的に不十分であった。
特開平6−199064号公報(第5−6頁) 特開平9−244228号公報(第2−6頁) 特開平11−334237号公報(第3−6頁) 特開平11−348442号公報(第3−10頁) 特開平2002−128904号公報(第2−11頁)
本発明は、シリコーンゴム層の耐スクラッチ性と画像再現性に優れた直描型水なし平版印刷版原版を提供することを目的とする。また、直描型水なし平版印刷版原版に好適なシリコーンゴム溶液として、製造時におけるゲル化を抑制し、長時間使用可能なシリコーンゴム溶液を提供することを目的とする。
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、上記課題を解決するために次の特徴を有する。すなわち、
「基板上に、少なくとも断熱層、感熱層、シリコーンゴム層をこの順に積層した直描型水なし平版印刷版原版であって、前記シリコーンゴム層が水酸基を有するポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、下記一般式(I)で表されるシラン化合物、縮合重合型活性触媒および付加重合型活性触媒を含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。
(R14-nSiXn (I)
(式中、nは2〜4の整数を示し、R1は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)。」
である。また、本発明の直描型水なし平版印刷版原版用シリコーンゴム溶液は、
「水酸基を有するポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、下記一般式(I)で表されるシラン化合物、縮合重合型活性触媒および付加重合型活性触媒を含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版用シリコーンゴム溶液。
(R14-nSiXn (I)
(式中、nは2〜4の整数を示し、R1は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)」
である。
本発明により、シリコーンゴム層の硬化性が良好で、製造時におけるゲル化が抑制された、直描型水なし平版印刷版原版に好適な縮合重合型シリコーンゴム溶液が得られた。このシリコーンゴム溶液を用いた直描型水なし平版印刷版原版は、画像再現性に優れ、安定した耐スクラッチ性を示した。
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、基板上に、少なくとも断熱層、感熱層、シリコーンゴム層をこの順に積層した直描型水なし平版印刷版原版であって、前記シリコーンゴム層が水酸基を有するポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、下記一般式(I)で表されるシラン化合物、縮合重合型活性触媒および付加重合型活性触媒を含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版である。
(R14-nSiXn (I)
(式中、nは2〜4の整数を示し、R1は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)
水酸基を有するポリジメチルシロキサンは、下記一般式(II)で表される構造を有し、分子末端または主鎖中に水酸基を有することができるが、好ましく用いられるものは分子末端に水酸基を有するものである。
Figure 0004356507
(式中、mは2以上の整数を示し、R2、R3は炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R2、R3の一部が水酸基となっていてもよく、炭素数1〜15のアルキルアルコール基となっていても良い。)
また、式中R2、R3の全体の50%以上、さらには80%以上がメチル基であることが印刷版のインキ反発性の面で好ましい。水酸基を有するポリシロキサンとしては、分子量が数千〜数十万のものが使用できるが、取り扱い性や得られた印刷版のインキ反発性、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜20万のものが好ましく、さらには3万〜15万のものがより好ましい。水酸基を有するポリシロキサンの添加量としては、全シリコーンゴム層組成中の10〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜99重量%である。
シリコーンゴム層に含まれるハイドロジェンシロキサンとは、分子鎖中、または末端にSiH基を有するシロキサンであり、例えば下記一般式(III〜VI)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0004356507
Figure 0004356507
Figure 0004356507
Figure 0004356507
(上記一般式(III)〜(VI)中、nおよびmはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
Figure 0004356507
ハイドロジェンシロキサン中におけるSiH基の量としては、1分子中に2個以上、さらには3個以上であることが好ましい。SiH基が2個以上存在する場合、シリコーンゴム層の硬化性が良好となる。
ハイドロジェンシロキサンの添加量としては、全シリコーンゴム層組成中の0.001〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜20重量%である。ハイドロジェンシロキサンの添加量が0.001重量%以上であればシリコーンゴム層の硬化が不足することがなく、また50重量%以下であればゴムの物性が脆くなり、印刷版の耐傷性などに悪影響を与えることがない。
下記一般式(I)で表されるシラン化合物は、主として縮合重合型シリコーンゴム層の架橋剤としての機能を果たすものであり、本発明においても架橋剤として作用する。下記一般式(I)で表されるシラン化合物としては、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミンシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
(R14-nSiXn (I)
(式中、nは2〜4の整数を示し、R1は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)上記式において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物の具体的な例としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリスイソプロキシシラン、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジイソプロぺノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、シリコーンゴム層の硬化性、接着性、取り扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類が好ましい。
これら好ましい化合物のうち、ケトキシミンシラン類などの窒素原子含有化合物は、接着性付与剤として機能するため、特に好ましい。このような化合物の具体例としては、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジビニルジ(メチルエチルケトキシミン)シランなどが挙げられる。
一般式(I)で表されるシラン化合物の添加量としては、全シリコーンゴム層組成中の0.1〜30重量%であることが好ましく、1〜15重量%がさらに好ましい。さらに、水酸基を有するポリシロキサンの添加量との関係は、一般式(I)の官能基X/ポリシロキサンの水酸基のモル比が1.5〜10.0であることが好ましい。このモル比が1.5以上である場合には、シリコーンゴム溶液のゲル化の心配もなく、10.0以下の場合にはゴムの物性の脆化、印刷版の耐傷性などへの悪影響も生じない。また、必要に応じて一般式(I)で表されるシラン化合物を2種以上添加することも可能である。
本発明のシリコーンゴム層は、活性触媒として縮合重合型活性触媒と付加重合型活性触媒とを含むことを特徴とする。
縮合重合型活性触媒としては、酸類、アルカリ、アミン、金属アルコキシド、金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることが出来る。これらの中では、金属の有機酸塩を添加することが好ましく、特に錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩であることが好ましい。このような化合物の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレートなどを挙げることが出来る。
縮合重合型活性触媒の添加量は、全シリコーンゴム層組成中の0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましい。添加する触媒量を0.001重量%以上とすればシリコーンゴム層の硬化が不十分となることはなく、さらに感熱層との接着性に問題を生じることもない。他方20重量%以下とすればシリコーンゴム溶液のポットライフに悪影響をもたらすこともない。
付加重合型活性触媒としては、通常、VIII族遷移金属化合物が使用され、好ましくは白金化合物である。具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを一例として挙げることができる。
付加重合型活性触媒の添加量は、全シリコーンゴム層組成中の0.01〜20重量%が好ましく0.1〜10重量%がより好ましい。
添加する縮合重合型活性触媒と付加重合型活性触媒の両者の合計量は、シリコーンゴム層組成物中に0.5〜40重量%が好ましい。0.5重量%以上とすればシリコーンゴム層の硬化が不十分となることはなく、さらに感熱層との接着性に問題を生じることもない。他方40重量%以下とすればシリコーンゴム溶液のポットライフに悪影響をもたらすこともない。
また、シリコーンゴム層には、ゴム強度を向上させる目的でシリコーンレジンやシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを含有してもよい。
以上のような原材料からシリコーンゴム層を得る方法としては、水酸基を有するポリシロキサンを溶媒に溶解後、ハイドロジェンシロキサン、一般式(I)で表されるシラン化合物、縮合重合型活性触媒、付加重合型活性触媒や必要に応じてその他添加剤などを加えることによりシリコーンゴム溶液を得た後、それを塗布乾燥する方法が挙げられる。
溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素系の溶媒を用いることが好ましい。具体的には、脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびイソパラフィン類、ノルマルパラフィン類など、芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレンなど、および石油を分留などして得られる混合物などを挙げることができる。石油系の溶媒として好ましく用いられる具体的な商品としては、“ISOPER”(エクソン化学製)、“PEGASOL”(エクソン化学製)、“EXXOL”(エクソン化学製)、“SOLVESSO”(エクソン化学製)、“IPソルベント”(出光興産株式会社製)などを挙げることが出来る。
これらの溶媒は事前に脱水しておくことが好ましい。脱水手段としては、乾燥ガスのバブリング、モレキュラーシーブなどの脱水剤の投入などが考えられるが、溶媒に不純物を持ち込みにくいという点で、乾燥ガスのバブリングが好ましく、特に扱い易さなどから乾燥窒素ガスのバブリングが好ましい。脱水後の溶媒の水分率は、カールフィーッシャー法などにより測定することが可能であるが、好ましくは40ppm以下、さらには20ppm以下に抑えることが好ましい。脱水を十分に行い、水分率を40ppm以下に抑えることで、シリコーンゴム溶液のゲル化や、感熱層との接着性不良などの問題が生じなくなる。さらには、ポットライフの低下を招くこともなくなる。
シリコーンゴム溶液の濃度は、固形分として、3〜40重量%であることが好ましく、さらには塗工性、乾燥性などの点から5〜15重量%がより好ましい。3重量%以上とすることで、ある程度の溶液粘度を確保し塗工性が良好となり、また乾燥効率も向上する。また、40重量%以下とすることで、高粘度化による塗工性悪化を招くこともない。
このようにして得られるシリコーンゴム溶液を、各種塗工方法により塗布、乾燥することでシリコーンゴム層を得ることが出来る。シリコーンゴム層の膜厚は0.5〜20g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜4g/m2である。膜厚を0.5g/m2以上とすれば印刷版のインキ反撥性や耐傷性、耐刷性が低下することがなく、20g/m2以下とすれば経済的見地から有利であるばかりでなく、現像性、インキマイレージが悪くなるという問題も起きない。
次に本発明の直描型水なし平版印刷版原版における感熱層について説明する。本発明における感熱層は、描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層である。本発明の感熱層には、少なくとも(a)光熱変換物質、(b)金属含有有機化合物、(c)活性水素基含有化合物、(d)バインダーポリマーを含むことが好ましい。
本発明の印刷版原版からは、ネガ型の直描型水なし平版印刷版が得られる。すなわち、レーザー光照射部の感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下し、その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。その詳細なメカニズムは未解明であるが、おそらく原版作製時に(b)金属含有有機化合物と(c)活性水素基含有化合物との反応で形成された架橋構造が、レーザー照射により(a)光熱変換物質の作用によって生じた熱で一部分解したものと考えられる。その結果、シリコーンゴム層と感熱層の界面の耐溶剤性が低下し、現像処理によりレーザー照射部のシリコーンゴム層が除去されるものと考えられる。現像によって除去されるのは、シリコーンゴム層だけでも、シリコーンゴム層と感熱層の双方であっても良いが、感熱層は残存した方がインキマイレージが良好になるため好ましい。
(a)光熱変換物質
光熱変換物質としてはレーザー光を吸収するものであれば特に限定されるものではなく、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステンなどの金属酸化物、また、これらの金属の水酸化物、硫酸塩さらにビスマス、鉄、マグネシウム、アルミニウムの金属粉などが挙げられる。
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラックが好ましい。
また上記の物質以外に、赤外線または近赤外線を吸収する染料も、光熱変換物質として好ましく使用される。
これら染料としては400nm〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する全ての染料が使用できるが、好ましい染料としては、エレクトロニクス用、記録用色素であるシアニン系、フタロシアニン系、フタロシアニン金属錯体系、ナフタロシアニン系、ナフタロシアニン金属錯体系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、アントラキノン系、インドフェノール系、インドアニリン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系、フルオレノン系、モノアゾ系、ケトンイミン系、ジズアゾ系、ポリメチン系、オキサジン系、ニグロシン系、ビスアゾ系、ビスアゾスチルベン系、ビスアゾオキサジアゾール系、ビスアゾフルオレノン系、ビスアゾヒドロキシペリノン系、アゾクロム錯塩系、トリスアゾトリフェニルアミン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ニトロソ系、1:2型金属錯塩系、分子間型CT系、キノリン系、キノフタロン系、フルギド系の酸性染料、塩基性染料、色素、油溶性染料や、トリフェニルメタン系ロイコ色素、カチオン染料、アゾ系分散染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、3,9−ジブロモアントアントロン、インダンスロン、フェノールフタレイン、スルホフタレイン、エチルバイオレット、メチルオレンジ、フルオレセイン、メチルビオロゲン、メチレンブルー、ジムロスベタインなどが挙げられる。
これらのなかでも、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜900nmの範囲にある、シアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
さらにこれらの染料のなかでも、モル吸光度係数の大きなものが好ましく使用される。具体的にはεが1×104以上であることが好ましく、より好ましくは1×105以上である。εが1×104以上であると、感度の向上効果が発現しやすいためである。
これらの光熱変換物質は単独でも感度の向上効果はあるが、2種以上を併用して用いることによって、さらに感度を向上させることも可能である。また、吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を併用することにより、2種以上の発信波長の異なるレーザーに対応出来るようにすることも可能である。
これら光熱変換物質の含有量は、全感熱層組成物に対して0.1〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%である。0.1重量%以上とすることでレーザー光に対する感度が向上し、70重量%以下とすることで印刷版の耐刷性が良好となる。
(b)金属含有有機化合物
本発明でいう金属含有有機化合物は、中心金属と有機置換基からなり、中心金属に対して有機置換基が配位結合している錯体化合物、または、中心金属が有機置換基と共有結合している有機金属化合物のことをいう。金属酸化物のような無機化合物はその範疇ではない。これらの金属含有有機化合物は、活性水素基を含有する化合物と置換反応をおこすことが特徴である。
中心金属としては周期表の第2周期から第6周期の金属および半導体原子が挙げられ、なかでも第3周期から第5周期の金属および半導体原子が好ましく、第3周期金属のAl、Si、第4周期金属のTi、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、第5周期金属のIn、Snが特に好ましい。
以上のような金属を中心にして有機置換基との間で金属含有有機化合物が形成されるが、それらの形態としては例えば以下の様な具体例が挙げられる。
(1)金属ジケテネート
ジケトンのエノール水酸基の水素原子が金属原子と置換したもので、中心金属は酸素原子を介して結合している。ジケトンのカルボニルがさらに金属に対して配位結合することができるため、比較的に安定な化合物である。
具体的には、有機置換基が、2,4−ペンタジオネート(アセチルアセトネート)、フルオロペンタジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネート、テノイルトリフルオロアセトネートや1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネートなどである金属ペンタンジオネート(金属アセトネート)類や、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、メタクリルオキシエチルアセトアセテートやアリルアセトアセテートなどである金属アセトアセテート類、サリチルアルデヒド錯塩が挙げられる。
(2)金属アルコキサイド
中心金属に対して、酸素原子を介して有機置換基が結合している化合物である。有機置換基が、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、ブトキサイド、フェノキサイド、アリルオキサイド、メトキシエトキサイド、アミノエトキサイドなどである金属アルコキサイドが挙げられる。
(3)アルキル金属
中心金属に直接有機置換基が結合しているものであり、この場合金属は炭素原子と結合している。有機置換基がジケトンであっても、金属が炭素原子で結合していればこちらに分類される。なかでもアセチルアセトン金属が好ましく用いられる。
(4)金属カルボン酸塩類
酢酸金属塩、乳酸金属塩、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、ステアリン酸金属塩などが挙げられる。
(5)その他
チタンオキサイドアセトネートのような酸化金属キレート化合物、チタノセンフェノキサイドのような金属錯体や、2種以上の金属原子を1分子中に有するヘテロ金属キレート化合物が挙げられる。
以上のような金属含有有機化合物のうち好ましく用いられる金属含有有機化合物の具体例としては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、プロピルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ブチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ヘプチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ヘキシルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、オクチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ノニルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセテートアルミニウムジエチレート、エチルアセテートアルミニウムジブチレート、エチルアセテートアルミニウムジヘプチレート、エチルアセテートアルミニウムジノニレート、ジエチルアセテートアルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ノニルアセトアセテート)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムジアセチルアセトネートエチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスプロピルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスブチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスヘキシルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスプロピルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスブチルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスヘキシルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスノニルアセトアセトネート、アルミニウムジブトキシドモノアセトアセテート、アルミニウムジプロポキシドモノアセトアセテート、アルミニウムジブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドアクリレート、アルミニウムオキシドオクテート、アルミニウムオキシドステアレート、トリスアリザリンアルミニウム、アルミニウム−s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウムフェノキシド、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸アルミニウムなど。
チタンキレート化合物の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリn−ステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルジイソステアロイルクミルフェニルチタネート、イソプロピルジステアロイルメタクリルチタネート、イソプロピルジイソステアロイルアクリルチタネート、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニルジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルトリメタクリルチタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリアクリルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチルエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルオクチル,ブチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウロイルホスファイト)チタネート、ジイソプロピルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)オキシアセテートチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルオキシアセテートチタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジクミルフェノレートオキシアセテートチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(オクチル,ブチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルエチレンチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルエチレンチタネート、ジメタクリルエチレンチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルエチレンチタネート、ジアクリルエチレンチタネート、ジアントラニルエチレンチタネート、ジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンメチルフェノキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)など。
鉄(III)アセチルアセトネート、ジベンゾイルメタン鉄(II)、トロポロン鉄、トリストロポロノ鉄(III)、ヒノキチオール鉄、トリスヒノキチオロ鉄(III)、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネート、サリチルアルデヒド銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、サリチルアルデヒドイミン銅、コウジ酸銅、ビスコウジャト銅(II)、トロポロン銅、ビストロポロノ銅(II)、ビス(5−オキシナフトキノン−1,4)銅、ビス(1−オキシアントラキノン)ニッケル、アセト酢酸エステル銅、サリチルアミン銅、o−オキシアゾベンゼン銅、銅(II)ベンゾイルアセテート、銅(II)エチルアセトアセテート、銅(II)メタクリルオキシエチルアセトアセテート、銅(II)メトキシエトキシエトキサイド、銅(II)2,4−ペンタンジオネート、銅(II)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、亜鉛N,N−ジメチルアミノエトキサイド、亜鉛2,4−ペンタンジオネート、亜鉛2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなども本発明に好ましく用いられる。
その他、サリチルアルデヒドコバルト、o−オキシアセトフェノンニッケル、ビス(1−オキシキサントン)ニッケル、ピロメコン酸ニッケル、サリチルアルデヒドニッケル、アリルトリエチルゲルマン、アリルトリメチルゲルマン、アンモニウムトリス(オキザレート)ゲルマネート、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ゲルマニウム(II)、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキサイド、シクロペンタジエニルトリメチルゲルマン、ジ−n−ブチルジアセトキシゲルマン、ジ−n−ブチルジクロロゲルマン、ジメチルアミノトリメチルゲルマン、ジフェニルゲルマン、ヘキサアリルジゲルマノキサン、ヘキサエチルジゲルマノキサン、ヘキサメチルジゲルマン、ヒドロキシゲルマトラン1水和物、メタクリルオキシメチルトリメチルゲルマン、メタクリルオキシトリエチルゲルマン、テトラアリルゲルマン、テトラ−n−ブチルゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、トリ−n−ブチルゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリフェニルゲルマン、ビニルトリエチルゲルマン、ビス(2,4−ペンタンジオネート)ジクロロスズ、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、カルシウム2,4−ペンタンジオネート、セリウム(III)2,4−ペンタンジオネート、コバルト(II)2,4−ペンタンジオネート、コバルト(III)2,4−ペンタンジオネート、ユーロピウム2,4−ペンタンジオネート、ユーロピウム(III)テノイルトリフルオロアセトネート、インジウム2、4−ペンタンジオネート、マンガン(II)2,4−ペンタンジオネート、マンガン(III)2,4−ペンタンジオネートなども本発明に用いられる。
これらの具体例のうち、特に好ましく用いられる金属含有有機化合物としては、アルミニウム、鉄(III)、チタンのアセチルアセトネート(ペンタンジオネート)、ヘキサンジオネート、ヘプタンジオネート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、テトラメチルヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネートなどが挙げられる。
これら金属含有有機化合物はそれぞれ単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもでき、その含有量は活性水素基含有化合物100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、10〜150重量部がさらに好ましい。含有量が10〜300重量部であれば、画像再現性や耐刷性が良好で、感熱層の物性が低下することもない。
(c)活性水素基含有化合物
本発明の印刷版原版の感熱層は、金属含有有機化合物と架橋構造を形成させるために、活性水素基含有化合物を含むことが好ましい。活性水素基含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物などが挙げられるが、水酸基含有化合物が好ましい。
さらに、水酸基含有化合物としてはフェノール性水酸基含有化合物、アルコール性水酸基含有化合物のいずれも本発明に使用できる。
フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。ヒドロキノン、カテコール、グアヤコール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、ビスフェノール類などが挙げられる。
また、アルコール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、7−オクテン−1,2−ジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリビニルアルコール、セルロースおよびその誘導体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの重合体および共重合体など。
また、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリビニルブチラール樹脂、および公知の方法によって水酸基を導入したポリマーなども本発明に使用可能である。
これら水酸基含有化合物としては、金属含有有機化合物との反応性という観点から特にフェノール性水酸基含有化合物が好ましく用いられる。特に、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂などのフェノール性水酸基含有樹脂がより好ましい。
これら活性水素基含有化合物はそれぞれ単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもでき、その含有量は、全感熱層組成物に対して5〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。含有量を5重量%以上とすることで印刷版の感度が向上し、80重量以下とすることで印刷版の溶剤耐性が良好となる。
(d)バインダーポリマー
本発明の印刷版原版の感熱層は、耐刷性の観点からバインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーとしては、有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能のあるものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下のものが好ましく、さらに好ましくはガラス転移温度が0℃以下のものである。
有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能があり、さらに形態保持の機能をも果たすバインダーポリマーの具体例としては、ビニルポリマー類、未加硫ゴム、ポリオキシド類(ポリエーテル類)、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリアミド類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらのバインダーポリマーの含有量は、全感熱層組成物に対して5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。5〜70重量%であると、耐刷性、感度とも良好となり、優れた画像再現性を示す直描型水なし平版印刷版原版が得られる。
バインダーポリマーは単独で用いてもよいし、また数種のポリマーを混合して使用してもよい。
さらに、本発明において、感熱層には、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤等を必要に応じて添加してもよい。また、断熱層あるいはシリコーンゴム層との接着性を高めるためにシランカップリング剤などの各種カップリング剤を添加することは極めて好ましく行われる。
感熱層の厚さは、被覆層にして0.1〜10g/m2であると、印刷版の耐刷性や、希釈溶剤を揮散し易く生産性に優れる点で好ましく、より好ましくは0.5〜7g/m2である。
次に、本発明の直描型水なし平版印刷版原版における断熱層について説明する。
本発明における断熱層は顔料を含むことが好ましい。顔料を含むことにより、断熱層の光透過率を400〜650nmの全ての波長に対して15%以下とすることが可能となり、これにより、機械読み取りによる検版性が向上する。顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の無機白色顔料や、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー等の無機黄色顔料、有機黄色顔料としては、アセト酢酸アリライド系モノアゾ顔料、アセト酢酸アリライド系ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料等のアゾ顔料やイソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリノン系顔料、金属錯体顔料、アントラピリミジン系顔料、アシルアミノイエロー系顔料、キノフタロン系顔料、フラバントロン系顔料等の多環式顔料を用いることが好ましい。これらの顔料の中で、隠蔽力、着色力の点から酸化チタンが特に好ましい。
酸化チタン粒子としては、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型があるが、安定性の面からルチル型、アナタース型が好ましい。さらに、酸化チタン表面をアルミニウム、シリコン、チタニウム、亜鉛、ジルコニウムなどによって処理しているものを使用しても良い。
酸化チタン粒子の粒子径は、一次粒子径が0.2〜0.3μmであることが好ましい。一次粒子径が0.2μm以上であれば本発明の目的とする隠蔽性能を得ることができ、0.3μm以下であれば自然沈降しにくく、分散が安定した断熱層組成物液が得られ、光沢のある良好な塗膜を得ることができる。
また、本発明においては、酸化チタン粒子表面をチタネート系カップリング剤で処理しても良い。酸化チタン粒子表面をチタネート系カップリング剤で処理することによって、酸化チタン粒子の分散性を向上させ、酸化チタン粒子量を多量に添加することが可能となる。さらには酸化チタン粒子を添加した塗液の分散安定性が良好になる。
酸化チタンの添加量は、断熱層中に2体積%以上、30体積%以下が好ましい。2体積%以上であれば良好な隠蔽性能が得られ、30体積%以下であれば、良好な塗工性能を示す。
本発明の断熱層には活性水素基含有化合物を含有することが望ましい。活性水素基含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物などが挙げられるが、水酸基含有化合物が好ましい。
さらに、水酸基含有化合物としてはフェノール性水酸基含有化合物、アルコール性水酸基含有化合物のいずれも本発明に使用できる。
フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
ヒドロキノン、カテコール、グアヤコール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、ビスフェノール類などが挙げられる。
また、アルコール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、7−オクテン−1,2−ジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリビニルアルコール、セルロースおよびその誘導体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの重合体および共重合体など。
また、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、および公知の方法によって水酸基を導入したポリマーなども本発明に使用可能である。
本発明の断熱層には、成膜性を付与する目的から樹脂を含むことが好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂を単独、あるいは2種以上を混合して用いることが好ましい。
断熱層の好ましい特性は、基板あるいは感熱層と良好な接着性を有し、経時において安定であり、さらに現像液あるいは印刷時に使用する溶剤に対する耐性が高いことである。これらの特性を得るために、断熱層に金属キレート化合物を含むことが好ましい。
本発明で言う金属キレート化合物としては、例えば、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位した有機無機錯塩、および金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類を挙げることができる。
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfが好ましい。着色性の少ない点でAl、Zrが好ましく、さらに反応性の点でAlがより好ましい。
配位子としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(硫黄原子)等をドナー原子として有する以下のような配位基を有する化合物が挙げられる。
配位基の具体例としては、酸素原子をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル)、−N=O(ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物)、−NO2(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SO3H(スルホン酸)、−PO32(亜リン酸)等、窒素原子をドナー原子とするものとしては、−NH2(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO2(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(イミン)等、硫黄原子をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアルデヒド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SHあるいは−C(=S)−OHおよび−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナート、イソチオシアナート)等が挙げられる。
これらの配位基を2個以上含み、金属との間で1個またはそれ以上の環状構造を形成する配位子、具体的には、β−ジケトン類、ケトエステル類、ジエステル類、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類、ケトアルコール類、アミノアルコール類、エノール性活性水素化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
このような配位子の具体的な化合物としては以下のようなものが挙げられる。
(1)β−ジケトン類:2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン等。
(2)ケトエステル類:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸オクチル等。
(3)ジエステル類:マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル等。
(4)ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類:乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、リンゴ酸メチル、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸メチル、酒石酸エチル等。
(5)ケトアルコール類:4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン等。
(6)アミノアルコール類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等。
(7)エノール性活性水素化合物:メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド等。
本発明に使用する金属キレート化合物は上記した配位子を持つことができるが、中でも、アルコール類、エノール類、ジエステル類およびケトエステル類から選ばれる配位子が1つ以上配位したアルミキレート化合物が好ましい。これらのアルミキレート化合物は活性水素含有化合物との間で容易に交換反応を起こすため、加熱時にアルミキレート化合物そのものが昇華、または蒸発することが抑えられる。
また、ケトエステル類が2つ以上配位したアルミキレート化合物を用いることが特に好ましい。このようなアルミキレート化合物を用いることで、湿気の影響を受けにくくなり、また断熱層組成物溶液の貯蔵安定性が飛躍的に改善される。
金属キレート化合物の添加量は、断熱層組成物に対して1〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましい。金属キレート化合物が1重量%以上であれば、基板あるいは感熱層と良好な接着性が得られ、溶剤に対する耐性も高い。一方、金属キレート化合物が30重量%以下であれば、金属キレート化合物が未反応のまま残存し、感熱層組成物溶液を塗布する際に感熱層組成物溶液中に抽出され、印刷版の性能に悪影響を与えることがない。
本発明の断熱層には、塗工性を改良する目的で、アルキルエーテル類(例えばエチルセルロース、メチルセルロースなど)、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、または、ノニオン系界面活性剤を添加することもできる。
さらに、断熱層の柔軟性を向上させる目的で、天然ゴムや合成ゴム、およびポリウレタン等の柔軟性付与剤を添加しても良い。これら柔軟性付与剤の添加量としては、10〜80重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましい。10重量%以上であれば断熱層の柔軟性が向上し、80重量%以下であればエポキシ樹脂と金属キレート化合物の硬化反応の阻害は僅かであり、実質的に無視できる。
断熱層を構成する成分は、好ましくは溶剤を用いて溶解される。断熱層組成物液に用いられる溶剤には、樹脂、金属キレート化合物、その他の添加物を良く溶かす性質を有することが好ましい。溶剤は単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いることもできる。また、顔料を添加する場合には、顔料表面を良く濡らし、良好な顔料分散性が得られる溶剤を選択することが好ましい。
断熱層組成物溶液の作製方法としては、例えば、容器に酸化チタン分散液を入れ、撹拌を開始し、そこに順次樹脂、金属キレート化合物、その他の添加剤を添加し、高濃度の断熱層組成物溶液を得た後、さらに溶剤で任意の濃度まで希釈することで断熱層組成物溶液を得ることができる。
酸化チタン分散液は、例えば、溶剤中に酸化チタンを添加し、ペイントシェイカー、ボールミル等で分散することにより得られる。
本発明における断熱層の厚みは1〜30g/m2が好ましく、より好ましくは2〜20g/m2である。1g/m2以上であれば、隠蔽性が得られ、30g/m2以下であれば、経済的にも有利となる。
本発明は、断熱層の光透過率が、400〜650nmの全ての波長において15%以下であり、10%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5%以下である。
断熱層の光透過率の測定方法は、例えば可視分光光度計を用いて測定できる。基板が透明なものであれば、透過法により、基板が不透明なものであれば、反射法で測定が可能である。このような可視分光光度計としては、日立製作所製U−3210自記分光光度計が挙げられる。
本発明の直描型水なし平版印刷版原版に使用する基板としては、寸法的に安定な板状物であれば公知の金属、フィルム等のいずれも使用することができる。この様な寸法的に安定な板状物としては、従来印刷版の基板として使用されたもの等が好ましく挙げられる。
本発明における直描型水なし平版印刷版原版の製造方法について説明する。
基板上に、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、メーヤバーコーターなどの通常のコーターあるいはホエラーのような回転塗布装置を用い、断熱層組成物溶液を塗布し100〜300℃で数分間加熱あるいは活性光線照射により硬化させた後、感熱層組成物溶液を塗布し100〜180℃で数十秒から数分間加熱乾燥させる。この後、シリコーンゴム溶液を塗布し100〜200℃の温度で数分間熱処理してシリコーンゴム層を得る。
必要に応じて保護フィルムをラミネートするか、あるいは保護層を形成する。保護フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、また各種金属を蒸着したフィルムなどが挙げられる。
次に、直描型水なし平版印刷版原版から、印刷版を製造する製版方法について説明する。製版方法は、通常、少なくとも(1)露光工程、(2)レーザー照射部のシリコーンゴム層と感熱層間の接着力を低下させる「前処理工程」、および(3)レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させる「現像工程」からなる。また、(4)画線部の感熱層を染色液で染色する「後処理工程」、および(5)処理液や染色液を完全に洗い落とす「水洗工程」を加えてもよい。各工程について、詳述する。
(1)露光工程
直描型水なし平版印刷版原版を、保護フィルムを剥離してから、あるいは保護フィルム上からレーザー光で所望の画像状に露光する。
露光工程で用いられるレーザー光源としては、通常、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが用いられるが、これらの中でも近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、明室での版材の取扱い性などの観点から、780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が製版に好ましく用いられる。
レーザー照射により光熱変換物質の作用によって感熱層表面は高温になり、分解物が生じる。一方、感熱層内部では感熱層表面に比べて低い温度に加熱されるため、分解は起こらず、硬化が進むのである。
(2)前処理工程
前処理工程は、所定温度に保持した前処理液中に、一定時間だけ版を浸漬させる工程である。
露光工程におけるレーザーの照射エネルギーが大きければ、前処理工程を経ずに、そのまま現像工程に進んでも、レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させることは可能である。しかし、照射エネルギーが小さい場合には、感熱層の変性が小さいため、現像工程のみでレーザー照射のON/OFFを感知することは難しく、現像不能となりやすい。そこで、レーザー照射のON/OFFの差を増幅し、低エネルギーのレーザー照射部の現像を行うために、前処理液で版を処理する。
前処理工程では、30〜60℃の温度の前処理液に版を10〜100秒浸漬させることが好ましい。30〜60℃の温度の前処理液に版を10〜100℃浸漬させた場合、感熱層の膨潤および溶解が十分であるため、シリコーンゴム層との接着力を低下させることが可能となる。
前処理液中に版を浸漬させると、前処理液はシリコーンゴム層中に浸透し、やがて感熱層まで到達する。照射部の感熱層はその上部において、熱分解物が生じていたり、あるいは前処理液に対する溶解性が増大していたりするので、感熱層上部は前処理液によって膨潤、あるいは一部溶解して、シリコーンゴム層と感熱層との間の接着力が低下する。この状態で印刷版面を軽く擦ると、レーザー照射部のシリコーンゴム層は剥離し、下層の感熱層は露出してインキ着肉層となる。一方、未照射部の感熱層は前処理液に対して不溶あるいは難溶なため、シリコーンゴム層は、感熱層と強力に接着しており、強く擦っても剥がれない。このようにして、未照射部のシリコーンゴム層は現像されることなく、この部分がインキを反発し、水なし平版印刷版の画像形成がなされる。
このような機構によって印刷版の高感度化が行われるため、前処理液の選択は重要である。感熱層の溶解能が高い前処理液を用いると、未照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その度合いによっては感熱層までもが現像されてしまう。その結果、前処理液などを汚染することによって、前処理液の寿命を縮める。一方、感熱層の溶解能が低い前処理液を用いると、照射部のシリコーンゴム層さえも現像することができず、印刷版の高感度化は果たされない。
このような前処理液としては、水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸、アミンなどの極性溶媒を添加したものや、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種類からなる溶媒に極性溶媒を少なくとも1種類添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。さらに、下記一般式(VIII)で示されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましい。
Figure 0004356507
(ここで、R4は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を示し、R5およびR6は水素原子あるいは炭素数1〜15のアルキル基を示し、kは1〜12の整数である。)
概して、グリコール化合物に比べると、グリコールエーテル化合物の方が感熱層に対する溶解能は高い。よって、両者の中で適当な化合物を選択するか、両者を混合することによって、感熱層の硬化具合の異なる版材に対して、最適な選択的溶解性を有する前処理液を得ることができる。前処理液としての効果は、感熱層の選択的溶解性だけでなく、シリコーンゴム層の膨潤能も加味される。シリコーンゴム層が膨潤すると、シリコーンゴム層を剥がしやすくなるため、たとえ感熱層の溶解性が低い前処理液でも現像しやすくなる。ただし、シリコーンゴム層が膨潤しすぎると現像時に擦り傷が付きやすくなる。ゆえに、感熱層の選択的溶解性とシリコーンゴムの膨潤能の両者を考慮して前処理液の設計を行う。
グリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、2,3−ブタンジオール、k=2〜12のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール化合物は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらの中で、選択的溶解性の面から、k=2〜4であるジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールが前処理液として特に好ましく用いられる。
グリコールエーテル化合物として、上記グリコール化合物のモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルが挙げられる。R5やR6のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基が挙げられる。好ましく用いられるグリコールエーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。
上記一般式(VIII)で表されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物の前処理液中の含有量は、50重量%〜100重量%が好ましく、70重量%〜95重量%がより好ましい。50重量%〜100重量%であると、感熱層の選択的溶解性に優れ、画像再現性は良好となる。
また、前処理液には、アミン化合物を共存させることも好ましい。アミン化合物は選択的溶解性には劣るが、感熱層の溶解能が高いため、高感度化の目的で、前処理液中に副成分として加えてもよい。
アミン化合物として、エチレングリコールアミン、ジエチレングリコールアミン、トリエチレングリコールアミン、テトラエチレングリコールアミン、プロピレングリコールアミン、ジプロピレングリコールアミン、トリプロピレングリコールアミンのようなグリコールアミン化合物や、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、o−、またはm−、p−メトキシ、またはメチルベンジルアミン、N,N−ジ(メトキシベンジル)アミン、β−フェニルエチルアミン、γ−フェニルプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、α−またはβ−ナフチルアミン、o−、またはm−、またはp−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸、2−(2−アミノエチル)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
アミン化合物の前処理液中の含有量は、25重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。25重量%以下であると、画像再現性が良好となる。
また前処理液中には、必要に応じて、水、アルコール類、カルボン酸類、エステル類、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなど)、脂肪族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(トリクレンなど)を添加してもよい。また、現像時に版面を擦るときに、傷が入るのを防止するために、前処理液中に硫酸塩、燐酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などの界面活性剤を加えてもよい。
(3)現像工程
前処理により、レーザー照射部では、感熱層表面が膨潤あるいは一部溶解しているため、選択的にシリコーンゴム層が剥がれやすくなっている。そこで、水、その他の溶剤を用いて版面を擦ることにより現像を行う。水による現像が排液の点から最も好ましい。また、前処理液は親水性化合物を主成分とする。したがって、印刷版に浸透している処理液を水で洗い落とすことができるため、水による現像が好ましい。温水や水蒸気を版面に噴射することによっても現像を行ってもよい。現像性を上げるために、水に前処理液を加えたものを用いてもよい。現像液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
(4)後処理工程
現像により形成された画線部の確認を容易にするために、染色液で染色する後処理工程を設けてもよい。染色液に用いられる染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、分散染料、および反応性染料などの中から単独で、あるいは2種以上のものを混合して用いることができる。なかでも、水溶性の塩基性染料および酸性染料が好ましく用いられる。
塩基性染料としては、“クリスタルバイオレット”、“エチルバイオレット”、“ビクトリアピュアブルー”、“ビクトリアブルー”、“メチルバイオレット”、“DIABACIS MAGENTA”(三菱化学(株)製)、“AIZEN BASIC CYANINE 6GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“PRIMOCYANINE BX CONC.”(住友化学(株)製)、“ASTRAZON BLUE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、“DIACRYL SUPRA BRILLIANT 2B”(三菱化学(株)製)、“AIZEN CATHILON TURQUOISE BLUE LH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“AIZEN DIAMOND GREEN GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“AIZEN MALACHITE GREEN”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
酸性染料としては、“ACID VIORET 5B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“KITON BLUE A”(CIBA 製)、“PATENT BLUE AF”(BASF 製)、“RAKUTO BRILLIANT BLUE FCF”(洛東化学工業(株)製)、“BRILLIANT ACID BLUE R”(GEIGY 製)、“KAYANOL CYANINE 6B”(日本化薬(株)製)、“SUPRANOL CYANINE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、“ORIENT SOLUBLE BLUE OBB”(オリエント化学工業(株)製)、“ACID BRILLIANT BLUE 5G”(中外化成(株)製)、“ACID BRILLIANT BLUE FFR”(中外化成(株)製)、“ACID GREEN GBH”(高岡化学工業(株)製)、“ACID BRILLIANT MILLING GREEN B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
これら染料の染色液中の含有量は、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜5重量%がより好ましい。
染色液の溶媒としては、水、アルコール類、グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類が用いられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いられる。グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類は、処理液としての効果を有するので、仮に現像工程でレーザー照射部のインキ反発層が現像できず付着していても、後処理工程で現像させることもできる。
その他、染色助剤、有機酸、無機酸、消泡剤、可塑剤、界面活性剤を任意に添加してもよい。
染色液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。また、現像液中に上記染料を添加しておいて、現像と同時に画像部の染色化を行うこともできる。
(5)水洗工程
版面に前処理液や染色液が浸透したままになっていると、経時により非画線部のシリコーンゴム層が剥離しやすくなる場合があるため、処理液や染色液を版面から完全に洗い落とす水洗工程を設けてもよい。水洗水の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
これまで述べてきた工程による現像方法としては、手による現像でも自動現像装置による現像のどちらでも良い。手による現像では、これらの処理液、現像液および染色液を順次不織布、脱脂綿、布、スポンジなどに含浸させて版面を拭き取ることによって行うことができる。自動現像装置を用いる場合には、前処理部、現像部および後処理部がこの順に設けられているものが好ましい。場合によっては後処理部の後方にさらに水洗部が設けられていてもよい。このような自動現像機としては東レ(株)製の“TWL−1160”、“TWL−650”、あるいは特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている現像装置が挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
<シリコーンゴム層の硬化状態の確認方法>
得られた直描型水なし平版印刷版原版を指で擦り、以下の基準で判定した。○が合格である。
○:擦り跡が見られない。
△:擦り跡が見られ、シリコーンゴム層が失透状態となる。
×:擦り部分がすべて指に付着する。
<画像再現性の評価方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して、2400dpiで、それぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点が設けられた印刷版を作製した。
得られた印刷版をルーペで観察し、それぞれの網点の再現性を調べた。1〜99%の網点の全てが再現できていれば、良好な画像再現性を有すると言える。
<耐スクラッチ性の評価方法>
(株)大栄科学精機製作所製学振型染色物摩擦堅牢度試験機を用いて行った。すなわち、得られた直描型水なし平版印刷版の非画線部分(6cm×6cm)を、前記試験機に取り付け、毛足(ポリエステル製、直径約20μm)の長さ約5mmの起毛パッド(カンボークリエート(株)製、“カペロン”NS5100)(2cm×3cm)を用い、荷重100gで、150往復擦った。その後、上記サンプルを印刷することで、傷の様子を観察し、耐傷性の評価を行った。評価は以下の基準で判定した。3点以上が合格である。
5点:傷、擦り跡とも全く認められない。
4点:傷、擦り跡がわずかに観察される。
3点:傷、擦り跡が観察される。
2点:サンプルの中心部に、ほぼ円形に傷が観察される。
1点:ほぼ全面に傷が観察される。
<シリコーンゴム溶液のゲル化の確認方法>
温度30℃、湿度48%の雰囲気下で、テフロン(商標登録)シャーレ上に6gシリコーンゴム溶液を垂らし、液表面にゲル化物が見えた時間をゲル化時間とした。
15分以上シリコーンゴム溶液のゲル化が確認されない場合は合格である。
<酸化チタン分散液の作製>
N,N−ジメチルホルムアミド10重量部中に、酸化チタン“CR−50”(石原産業(株)製)10重量部を添加して5分間撹拌した。さらに、ガラスビーズ(No.08)を15重量部添加し、20分間激しく撹拌し、その後ガラスビーズを取り去ることで酸化チタン分散液を得た。
<断熱層溶液1の組成>
(a)エポキシ樹脂:エピコート(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):49重量部
(b)ポリウレタン:サンプレン(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):490重量部(ポリウレタン:98重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):11.2重量部
(d)ビニル系重合物:ディスパロン(登録商標)LC951(楠本化成(株)製):0.2重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):84重量部(酸化チタン:42重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:302重量部
(g)メチルエチルケトン:366重量部
<感熱層溶液1の組成>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):16重量部
(b)チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):ナーセム(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):37.5重量部
(c)フェノールノボラック樹脂:スミライトレジン(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):60重量部
(d)ポリウレタン:サンプレン(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):125重量部(ポリウレタン:25重量部)
(e)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15重量部
(f)テトラヒドロフラン:993重量部
(g)エタノール:64重量部
<シリコーンゴム溶液1の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):1重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):3重量部
(e)ジブチル錫ジアセテート:0.03重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1238重量部
<シリコーンゴム溶液2の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−301(MeHSiOのモル%:25〜30%、GELEST Inc.製):3重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):6重量部
(e)ジブチル錫ジアセテート:0.03重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1217重量部
<シリコーンゴム溶液3の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−301(MeHSiOのモル%:25〜30%、GELEST Inc.製):2重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):6重量部
(e)ジブチル錫ジアセテート:0.05重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1228重量部
<シリコーンゴム溶液4の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):1重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)白金触媒:白金−シクロビニルメチルシロキサン(GELEST Inc.製):3重量部
(e)ジブチル錫ジアセテート:0.03重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1184重量部
<シリコーンゴム溶液5の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):1.5重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):4重量部
(e)ジブチル錫ジラウレート:0.01重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1200重量部
<シリコーンゴム溶液6の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):2.5重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)白金触媒:白金−シクロビニルメチルシロキサン(GELEST Inc.製):3重量部
(e)ジブチル錫ジラウレート:0.01重量部
(f)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1200重量部
<シリコーンゴム溶液7の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(c)テトラメチルエチルオキシミンシラン(濃度50%、トルエン溶液、Gelest Inc.製):2重量部
(d)ジブチル錫ジアセテート:0.03重量部
(e)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1184重量部
<シリコーンゴム溶液8の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、ハイドロジェンポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):1重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(d)ジブチル錫ジアセテート:0.03重量部
(e)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1141重量部
<シリコーンゴム溶液9の組成>
(a)α,ω−ジシラノールポリジメチルシロキサンDMS−S45(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:6重量部
(c)白金触媒:白金−シクロビニルメチルシロキサン(GELEST Inc.製):3重量部
(d)ジブチル錫ジアセテート:0.01重量部
(e)アイソパー(登録商標)E(エクソン化学(株)製):1173重量部
(実施例1)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に断熱層溶液1を塗布し、190℃、78秒間乾燥し、膜厚10g/m2の断熱層を設けた。この断熱層の上に前記の感熱層溶液1を塗布し、135℃、105秒間乾燥し、膜厚1.5g/m2の感熱層を設けた。この感熱層上に、シリコーンゴム溶液1を塗布し、132℃、110秒間乾燥し、膜厚2.0g/m2のシリコーンゴム層を設け、直描型水なし平版印刷版原版を得た。さらに、シリコーンゴム層表面に6μmのポリプロピレンフィルムをラミネートした。
塗布前にシリコーンゴム溶液のゲル化試験を行ったところ、90分でゲル化が確認され、良好なポットライフを示すことが確認できた。
直描型水なし平版印刷版原版の作製直後に、カバーフィルムを剥がし、シリコーンゴム層の硬化状態を指擦りにより確認したところ、完全に硬化しており硬化状態は良好であった。
得られた直描型水なし平版印刷版原版を、製版機“GX−3600”(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて照射エネルギー150mJ/cm2で画像露光を行った。ポリプロピレンフィルムを剥離した後、自動現像機“TWL−860KII”(東レ(株)製)を使用し、前処理液“NP−1”(東レ(株)製)で30秒間の浸漬処理後、水洗浄下でブラシ現像し、後処理液“NA−1”(東レ(株)製)で染色した。この一連の操作によって、レーザー照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その部分の露出した感熱層表面が染色されたネガ型の直描型水なし平版印刷版を得た。
得られた印刷版をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、(株)大栄科学精機製作所製学振型染色物摩擦堅牢度試験機を使用し、起毛パッドを用い荷重100gで、150往復擦り、傷をつけた。この印刷版を印刷したところ、4点となり、良好な耐傷性を有することが確認できた。
(実施例2〜6)
表1に示した組成のシリコーンゴム層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
シリコーンゴム層溶液のゲル化試験では、50分以上でゲル化が確認され、良好なポットライフを示すことが確認できた。
直描型水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層の硬化状態を指擦りにより確認したところ、完全に硬化しており硬化状態は良好であった。
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。得られた印刷版の評価結果は、表2のとおりとなった。印刷版をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐スクラッチ性試験を行った結果、印刷物評価で、3点以上となり、良好な耐傷性を有することが確認できた。
(比較例1)
シリコーンゴム溶液1のかわりにシリコーンゴム溶液7を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
シリコーンゴム溶液のゲル化試験では、15分より短い時間でゲル化が確認され、ポットライフは不十分であった。
直描型水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層の硬化状態を指擦りにより確認したところ、指擦りの跡が残り、失透状態であった。
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。得られた印刷版をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐スクラッチ性試験を行った結果、印刷物評価で4点となり、良好な耐傷性を有することが確認できた。
(比較例2)
シリコーンゴム溶液1のかわりにシリコーンゴム溶液8を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
シリコーンゴム溶液のゲル化試験では、15分より短い時間でゲル化が確認され、ポットライフは不十分であった。
得られた直描型水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層の硬化状態は、指擦りで確認したところ、指擦りの跡が残り、失透状態であった。
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。得られた印刷版をルーペで観察したところ、3〜99%の網点を再現しており、画像再現性は不十分であった。印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐スクラッチ性試験を行った結果、印刷物評価で4点となり、良好な耐傷性を有することが確認できた。
(比較例3)
シリコーンゴム溶液1のかわりにシリコーンゴム溶液9を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
シリコーンゴム溶液のゲル化試験では、15分より短い時間でゲル化が確認され、ポットライフは不十分であった。
得られた直描型水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層の硬化状態は、指擦りで確認したところ、指擦りの跡が残り、失透状態であった。
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。得られた印刷版をルーペで観察したところ、3〜99%の網点を再現しており、画像再現性は不十分であった。印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐スクラッチ性試験を行った結果、印刷物評価で4点となり、良好な耐傷性を有することが確認できた。
Figure 0004356507
Figure 0004356507

Claims (2)

  1. 基板上に、少なくとも断熱層、感熱層、シリコーンゴム層をこの順に積層した直描型水なし平版印刷版原版であって、前記シリコーンゴム層が水酸基を有するポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、下記一般式(I)で表されるシラン化合物、縮合重合型活性触媒および付加重合型活性触媒を含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。
    (R14-nSiXn (I)
    (式中、nは2〜4の整数を示し、R1は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)
  2. 水酸基を有するポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、下記一般式(I)で表されるシラン化合物、縮合重合型活性触媒および付加重合型活性触媒を含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版用シリコーンゴム溶液。
    (R14-nSiXn (I)
    (式中、nは2〜4の整数を示し、R1は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基である。)
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