JP2000203144A - オフセット印刷方法及び印刷装置 - Google Patents

オフセット印刷方法及び印刷装置

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JP2000203144A
JP2000203144A JP11009479A JP947999A JP2000203144A JP 2000203144 A JP2000203144 A JP 2000203144A JP 11009479 A JP11009479 A JP 11009479A JP 947999 A JP947999 A JP 947999A JP 2000203144 A JP2000203144 A JP 2000203144A
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Nobufumi Mori
信文 森
Takao Nakayama
隆雄 中山
Takashi Nakamura
隆 中村
Koji Kamiyama
宏二 神山
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アルカリ性現像液を必要とせず、簡易に製版で
きて、かつ印刷面の画像部と非画像部の識別性が高い実
用レベルの印刷画質を有し、さらに印刷用原板を反復使
用することも可能なオフセット印刷方法及び印刷装置を
提供する。 【解決手段】表面が酸化チタン、酸化亜鉛などの光触媒
能を有する熱応答性物質で構成された印刷用原板を、活
性光によって照射して表面を親水性としたのち、疎水性
発現温度(50〜250℃)でヒーモードの描画を施し
て疎水性の画像領域を形成させ、画像領域に印刷用イン
クを受容させて行うオフセット印刷方法及びその装置。
また、印刷済みの印刷版面上に残存するインクを洗浄除
去して、再度その印刷原版を用いる印刷原板の再使用方
法。とくに揮発性の有機化合物の存在下に描画を行うこ
とによって印刷品質を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般軽印刷分野、
とくにオフセット印刷、とりわけ簡易に印刷版を製作で
きる新規なオフセット印刷方法及び印刷原板に関するも
のである。その中でもとくに印刷用原板の反復再生使用
を可能にするオフセット印刷方法、その印刷用原板及び
それらによる印刷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オフセット印刷法は、数多くの印刷方法
の中でも印刷版の製作工程が簡単であるために、とくに
一般的に用いられてきており、現在の主要な印刷手段と
なっている。この印刷技術は、油と水の非混和性に基づ
いており、画像領域には油性材料つまりインキが、非画
像領域には湿し水が選択的に保持される。したがって印
刷される面と直接あるいはブランケットと称する中間体
を介して間接的に接触させると画像部のインキが転写さ
れて印刷が行われる。
【0003】オフセット印刷の主な方法は、アルミニウ
ム基板を支持体としてその上にジアゾ感光層を塗設した
PS板である。PS板においては、支持体であるアルミ
ニウム基板の表面に砂目立て、陽極酸化、その他の諸処
理を施して画像領域のインキ受容能と非画像部のインキ
反発性を強め、耐刷力を向上させ、印刷面の精彩化を図
るなどを行い、その表面に印刷用画像を形成させる。し
たがってオフセット印刷は、簡易性に加えて耐刷力や印
刷面の高精細性などの特性も備わってきている。
【0004】高精細化によってオフセット印刷法の利用
が拡がって一般印刷分野に普及する一方において、オフ
セット印刷法の一層の簡易化が要望され、数多くの簡易
印刷方法が提案されている。
【0005】その代表例がAgfa-Gevaert社から市販され
たCopyrapid オフセット印刷版をはじめ、米国特許35
11656号、特開平7−56351号などでも開示さ
れている銀塩拡散転写法による印刷版作製に基づく印刷
方法であって、この方法は、1工程で転写画像を作るこ
とができて、かつその画像が親油性であるために、その
まま印刷版とすることができるので、簡易な印刷方法と
して実用されている。しかしながら、簡易とはいいなが
らこの方法もアルカリ現像液による拡散転写現像工程を
必要としている。現像液による現像工程を必要としな
い、しかも簡易な印刷方法が要望されている。
【0006】画像露光を行ったのちのアルカリ現像液に
よる現像工程を省略した簡易印刷版の製作方法の開発
は、上記の背景から行われてきた。現像工程を省略でき
ることから無処理刷版とも呼ばれるこの簡易印刷版の技
術分野では、これまでに主として像様露光による画像
記録面上の照射部の熱破壊による像形成、像様露光に
よる照射部の親油性化による画像形成、同じく照射部
の親油性化であるが、光モード硬化によるもの、ジア
ゾ化合物の光分解による表面性質の変化、画像部のヒ
ートモード溶融熱転写などの諸原理に基づく手段が提案
されている。
【0007】上記の簡易オフセット印刷方法として開示
されている技術には、米国特許第3,506,779
号、同第3,549,733号、同第3,574,65
7号、同第3,739,033号、同第3,832,9
48号、同第3,945,318号、同第3,962,
513号、同第3,964,389号、同第4,03
4,183号、同第4,081,572号、同第4,6
93,958号、同第731,317号、同第5,23
8,778号、同第5,353,705号、同第5,3
85,092号、同第5,395,729号等の米国特
許及び欧州特許第1068号などがある。
【0008】これらは、製版に際して現像液を必要とし
ないように考案されているが、親油性領域と親水性領域
との差異が不十分であること、したがって印刷画像の画
質が劣ること、解像力が劣り、鮮鋭度の優れた印刷画面
が得にくいこと、画像面の機械的強度が不十分で傷がつ
きやすいこと、そのために保護膜を設けるなどによって
却って簡易性が損なわれること、長時間の印刷に耐える
耐久性が不十分なことなどのいずれか一つ以上の欠点を
伴っていて、単にアルカリ現像工程を無くすだけでは実
用性は伴わないことを示している。印刷上必要とされる
諸特性を具備し、かつ簡易に印刷版を製作できる印刷版
作成方法への強い要望は、上記の数々の改良にも係わら
ず、いまだに十分に満たされていない。
【0009】上記した無処理型印刷版作成方法の一つに
ジルコニアセラミックが光照射によって親水性化するこ
とを利用した印刷版作製方法が特開平9−169098
号で開示されている。しかし、ジルコニアの光感度は不
十分であり、かつ疎水性から親水性への光変換効果が不
十分のため画像部と非画像部の識別性が不足している。
【0010】上記した現像液を必要としない簡易な印刷
方法とともに、使用済みの印刷用原板を簡単に再生して
再使用できる手段があれば、コストの低減と廃棄物の軽
減の2面から有利である。印刷用原板の再生使用には、
その再生操作の簡易性が実用価値を左右するが、再生操
作の簡易化は難度の高い課題であり、従来殆ど検討され
きておらず、わずかに上記の特開平9−169098号
でジルコニアセラミックという特殊な原板用材料につい
て開示されているに過ぎない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
している課題は、上記事情に鑑みてアルカリ性現像液を
必要とせず、簡易に製版できて、かつ印刷面の画像部と
非画像部の識別性が高く、実用レベルの印刷画質を有
し、さらに印刷用原板を反復して使用することも可能な
オフセット印刷方法を提供することである。本発明の第
2の目的は、上記の印刷方法によって簡易な操作によっ
て実用レベルの印刷品質の印刷を行い、かつ印刷原板を
繰り返して使用することのできる印刷装置を提供するこ
とである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者たちは、上記の
目的を達成するための研究過程において、光触媒能を有
し、かつ加熱すると表面の疎水性/親水性が温度や加熱
条件によって特異な変化挙動をとる物質があることを認
め、この性質を版面上への印刷用画像の形成と印刷終了
後の版面の画像の消去に利用して上記の課題を解決でき
ると考え、この考えに基づいて本発明を完成するに至っ
た。すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0013】1.光触媒能を有する印刷用原板の表面を
活性光の照射によって親水性化し、次いで該原板に疎水
性発現温度でヒーモードの描画を施すことによって疎水
性の画像領域を形成させ、該画像領域を印刷用インキに
接触させることによって画像領域がインキを受け入れた
印刷面を形成させて印刷を行うことを特徴とするオフセ
ット印刷方法。
【0014】2.疎水性発現温度が50〜250℃であ
ることを特徴とする上記1に記載のオフセット印刷方
法。
【0015】3.印刷に使用した印刷版面上に残存する
インキを洗浄除去したのち、その印刷版を印刷用原板と
して上記1又は2に記載の操作を反復して印刷を行うこ
とを特徴とする上記1又は2に記載の印刷方法。
【0016】4.ヒートモードの描画が、感熱転写記録
用ヘッド及び光・熱変換型輻射線から選ばれる描画手段
の一つによって行われることを特徴とする上記1〜3の
いずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
【0017】5.親水性化した印刷用原板に施すヒーモ
ードの描画が、有機化合物の存在下で行うことを特徴と
する上記1〜4のいずれか1項に記載のオフセット印刷
方法。
【0018】6.ヒーモードの描画において存在させる
有機化合物が、温度400℃において少なくとも1mm
Hg以上の蒸気圧を有し、かつ高温親水性発現温度にお
いて安定な有機化合物であることを特徴とする上記5に
記載のオフセット印刷方法。
【0019】7.ヒーモードの描画において存在させる
有機化合物が、沸点が30〜400℃の範囲にある有機
化合物であることを特徴とする上記5又は6に記載のオ
フセット印刷方法。
【0020】8.印刷用原板の表面が、周期律表の第3
〜6周期に属していて、かつ0及びVII A族(ハロゲン
元素)族以外の金属元素から選ばれる金属の酸化物の少
なくとも一つによって形成されていることを特徴とする
上記1〜7のいずれか1項に記載のオフセット印刷方
法。
【0021】9.印刷用原板の表面が、TiO2 、RT
iO3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x
3-x x 10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、B
はアルカリ土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、
Dは周期律表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じ
く4A族元素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数
値を表す)、SnO2 ,Bi2 3 ,ZnO及びFe2
3 から選ばれる金属酸化物の少なくとも一つによって
構成されていることを特徴とする上記1〜8のいずれか
1項に記載のオフセット印刷方法。
【0022】10.上記1〜9項のいずれか1項に記載
の方法に使用するオフセット印刷装置であって、光触媒
能を有する印刷用原板を装着した原板装着部と、該原板
を活性光の照射によってその表面を親水性化する照射手
段と、該原板に疎水性発現温度でヒーモードの描画を施
して疎水性の画像領域を形成させる描画手段と、該画像
領域に印刷用インキを供給して画像領域がインキを受け
入れた印刷面を形成させるインキ供給手段と,該印刷面
を印刷される面と接触させて印刷を行う印刷手段と、を
有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【0023】11.印刷終了後、印刷版に残存するイン
キを除去する手段を有することを特徴とする上記10に
記載のオフセット印刷装置。
【0024】12.少なくとも露光手段、描画手段、イ
ンキ供給手段およびインキ除去手段が、版胴の周囲に配
設されてなることを特徴とする上記10又は11に記載
のオフセット印刷装置。
【0025】13.印刷用原板が版胴の一部を構成して
おり、少なくとも露光手段、描画手段、インキ供給手段
およびインキ除去手段が、前記版胴の周囲に配設されて
なることを特徴とする上記10〜12のいずれか1項に
記載のオフセット印刷装置。
【0026】14.印刷用原板に疎水性発現温度でヒー
トモードの描画を施して疎水性の画像領域を形成させる
描画手段が、該原板の表面に有機化合物の蒸気が接する
ように有機化合物の蒸気供給手段を配していることを特
徴とする上記10〜13のいずれか1項に記載のオフセ
ット印刷装置。
【0027】本発明者は、たとえば酸化チタンなどの特
定の物質の表面が特定波長の光の照射によって親水性に
変化することを認めて、この物質を光触媒能を有する物
質と呼び、上記特定波長の光を活性光と呼んでいる。さ
らに、光触媒能を有する物質の中に表面の性質が特異な
熱応答挙動をする物質があることを見いだした。すなわ
ち、光触媒能を有する特定の物質の清浄な表面は、程度
の差はあっても本来親水性であるが、適度の温度(以
後、「疎水性発現温度」という)で加熱を行うと疎水性
に変化すること、さらに高温度(以後、「高温親水性
発現温度」という)に加熱すると再び親水性となるこ
と、及びこれらの表面の性質の変化には履歴効果があ
ることを発見した。本発明は、光触媒能とこの熱応答挙
動とを効果的に利用してなされたものである。
【0028】この光触媒能と熱応答挙動とを利用すれ
ば、第1段階としてまず活性光の照射を行ってその物質
の表面を親水性とし、第2段階としてその表面を画像状
に疎水性発現温度で加熱して疎水性領域を画像状に形成
し、次いで第3段階として疎水性領域に印刷用インキ
を、親水性領域に湿し水をそれぞれ保持させてオフセッ
ト印刷を行うことが可能である。さらに、印刷の終了後
に使用済みの印刷版のインキを洗浄除去して、その版に
再び活性光の照射を行うと印刷済みの画像が消去される
ので、印刷原板として上記の製版、印刷過程に再び使用
できる。金属酸化物などの光触媒能を有し、かつ前記し
た熱応答性をも有する物質の表面は、本来の親水性、疎
水性の程度には差はあっても、光照射により親水性化さ
れた表面の親水性は、履歴効果によって実用的に十分な
時間その親水性が維持され、その親水性表面を画像様に
疎水性発現温度に加熱した加熱領域の疎水性も、履歴効
果によって室温下においても安定に維持されるので、こ
のようにして得られた疎水性と親水性の画像状分布を印
刷・製版に利用することができる。以下の記述におい
て、熱に対して前記、及びの特性を有する上記物
質を「熱応答型物質」と呼ぶ。上記の熱応答型物質は、
金属酸化物の中に多く認められており、このような金属
酸化物をそれぞれ「熱応答型金属酸化物」と呼ぶことと
する。本発明者は、光触媒能を有する金属酸化物は、熱
応答性を有しており、したがって本発明に特に好ましく
用いることができることを経験的に見いだしている。光
触媒能を有する熱応答型物質と、その熱応答挙動につい
ては、後に詳細に説明する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。はじめに、本発明で用いる「光触媒
能を有する熱応答型物質」について説明する。本発明に
用いられる印刷原板材料は、光触媒能と熱応答性とを併
せ有する物質であり、このような特性を有する物質は、
必ずしも金属酸化物に限定されないが、印刷用原板とし
ての要件なども考慮されると、金属酸化物の中に比較的
多く見られる。また、この物質は、セラミックや半導体
のなかにも見られる。光触媒能を有する熱応答型セラミ
ックは、複合金属酸化物からなっており、光触媒能を有
する熱応答型半導体の多くは、基底順位と伝導体が近い
真正半導体と不純物準位に依存する酸化バナジウムや酸
化銅などの仮性半導体との両方に見られる。これらセラ
ミック及び半導体は、本発明が利用する光触媒能と熱応
答性という型物特性の上では、他の光触媒能と熱応答性
を有する金属酸化物と同様であるので、それらを「光触
媒能を有する熱応答型金属酸化物」に含めて以下にその
順序に説明する。
【0030】本発明に用いることのできる、適度に加熱
によって疎水性が発現し、さらに加熱すると親水性が再
び現れて、かつ履歴現象を示す「熱応答性」と活性光の
照射によって親水性となる「光触媒能」とを併せ有する
金属酸化物は、いろいろの形態の金属酸化物に見られ、
単一の金属酸化物、複合酸化物のいずれの場合もあり、
また後者の場合は、固溶体、混晶、多結晶体、非晶質固
溶体、金属酸化物微結晶の混合物のいずれからもこの特
性を有するものが認められる。このような特性をもつ金
属酸化物は、経験的に周期律表の0と VIIA(ハロゲン
元素)族を除く第3〜6周期に属する金属元素の酸化物
に見いだされる。なお、上記金属及び金属酸化物は、印
刷版として使用する際に湿し水に対して過度に溶解して
はならないので、水に対する溶解度は、水100ミリリ
ットルについて10mg以下、好ましくは5mg以下、
より好ましくは5mg以下である。
【0031】「光触媒能を有する熱応答型金属酸化物」
の中でも、まず、酸化チタンと酸化亜鉛から説明する。
いずれも本発明の感光性を有する印刷版材料として利用
できるが、特に酸化チタンが感度(つまり表面性の光変
化特性)などの点で好ましい。酸化チタンは、イルメナ
イトやチタンスラグの硫酸加熱焼成、あるいは加熱塩素
化後酸素酸化など既知の任意の方法で作られたものを使
用できる。あるいは後述するように金属チタンを用いて
印刷版製作段階で真空蒸着によって酸化物皮膜とする方
法も用いることができる。
【0032】酸化チタン又は酸化亜鉛を含有する層を原
板の表面に設けるには、たとえば、 酸化チタン微結晶又は酸化亜鉛微結晶の分散物を印刷
版の原板上に塗設する方法、塗設したのち焼成してバ
インダーを減量或いは除去する方法、印刷原板上に蒸
着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDな
どの方法で酸化チタン(又は酸化亜鉛)膜を設ける方
法、例えばチタニウムブトキシドのようなチタン有機
化合物を原板上に塗布したのち、焼成酸化を施して酸化
チタン層とする方法など、既知の任意の方法を用いるこ
とができる。本発明においては、真空蒸着又はスパッタ
リングによる酸化チタン層が特に好ましい。
【0033】上記又はの酸化チタン微結晶を塗設す
る方法には、具体的には無定形酸化チタン微結晶分散物
を塗布したのち、焼成してアナターゼまたはルチル型の
結晶酸化チタン層とする方法、酸化チタンと酸化シリコ
ンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、酸
化チタンとオルガノシロキサンなどとの混合物を塗布し
てシロキサン結合を介して支持体と結合した酸化チタン
層を得る方法、酸化物層の中に酸化物と共存するできる
ポリマーバインダーに分散して塗布したのち、焼成して
有機成分を除去する方法などがある。酸化物微粒子のバ
インダ−には、酸化チタン微粒子に対して分散性を有
し、かつ比較的低温で焼成除去が可能なポリマーを用い
ることができる。好ましいバインダーの例としては、ポ
リエチレンなどのポリアルキレン、ポリブタジエン、ポ
リアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポ
リ酢酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコ
ール、部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリスチレンな
どの疎水性バインダーが好ましく、それらの樹脂を混合
して使用してもよい。
【0034】上記の酸化チタンの真空蒸着を行うに
は、通常真空蒸着装置内の蒸着用加熱の熱源に金属チタ
ンを置き、真空度exp(−5〜−8)Torrで全ガ
ス圧exp(−2〜−5)、酸素文圧比が30〜90%
になるようにしながら、チタン金属を蒸発させると、蒸
着面には酸化チタンの蒸着薄膜が形成される。また、ス
パッタリングによる場合は、例えばスパッタ装置内にチ
タン金属ターゲットをセットしてAr/O2 比が60/
40(モル比)となるようにガス圧を510-3Torrに調
整したのち、RFパワー200Wを投入してスパッタリ
ングを行って酸化チタン薄膜を基板上に形成させる。
【0035】一方、本発明に酸化亜鉛層を使用する場
合、その酸化亜鉛層は既知の任意の方法で作ることがで
きる。とくに金属亜鉛板の表面を電解酸化して酸化皮膜
を形成させる方法と、真空蒸着、スパッタリング、イオ
ンプレーティング,CVDなどによって酸化亜鉛皮膜を
形成させる方法が好ましい。酸化亜鉛の蒸着膜は、上記
の酸化チタンの蒸着と同様に金属亜鉛を酸素ガス存在下
で蒸着して酸化膜を形成させる方法や、酸素のない状態
で亜鉛金属膜を形成させたのち、空気中で温度を約70
0°Cにあげて酸化させる方法を用いることができる。
そのほか、修酸亜鉛の塗布層やセレン化亜鉛の薄層を酸
化性気流中で加熱しても得られる。
【0036】蒸着膜の厚みは、酸化チタン層、酸化亜鉛
層いずれの場合も1〜100000オングストロ−ムが
よく、好ましくは10〜10000オングストロ−ムで
ある。さらに好ましくは3000オングストロ−ム以下
として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作
用を十分に発現させるには厚みが50オングストローム
以上あることが好都合である。
【0037】酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用
できるが、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ま
しい。アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得
る過程の焼成条件を選ぶことによって得られることはよ
く知られている。その場合に無定形の酸化チタンやルチ
ル型酸化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶
が40%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の
理由から好ましい。酸化チタンあるいは酸化亜鉛を主成
分とする層における酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積
率は、それぞれ30〜100%であり、好ましくは50
%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸
化物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。
しかしながら、表面の親水性/親油性変化特性は、酸化
亜鉛を電子写真感光層に用いるときのような著しい純度
による影響はないので、100%に近い純度のもの(例
えば98%)をさらに高純度化する必要はない。それ
は、本発明に利用される物性は、導電性とは関係ない膜
表面の親水性/親油性の性質変化特性、すなわち界面物
性の変化特性であることからも理解できることである。
【0038】しかしながら、熱の作用によって表面の親
水性が変化する性質を増進させるためにある種の金属を
ドーピングすることは有効な場合があり、この目的には
イオン化傾向が小さい金属のドーピングが適しており、
Pt,Pd,Au,Ag,Cu,Ni,Fe,Co又は
Crをドーピングするのが好ましい。また、これらの好
ましい金属を複数ドーピングしてもよい。ドーピングを
行った場合も、その注入量は酸化亜鉛や酸化チタン中の
金属成分に対して5モル%以下である。
【0039】一方、体積率が低いと層の表面の親水性/
親油性の熱応答挙動の敏感度が低下する。したがって、
層中の酸化物の体積率は、30%以上であることが望ま
しく、とくに実質的に100%であることが好ましい。
【0040】次に、RTiO3 の一般式で示したチタン
酸金属塩について説明する。一般式RTiO3 におい
て、Rはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、
バリウム、ベリリウムなどの周期律表のアルカリ土類元
素に属する金属原子であり、とくにストロンチウムとバ
リウムが好ましい。また、2種以上のアルカリ土類金属
原子をその合計が上記の式に化学量論的に整合する限り
共存することができる。
【0041】次に、一般式AB2-x x 3-x x 10
で表される化合物について説明する。この一般式におい
て、Aは水素原子及びナトリウム、カリウム、ルビジウ
ム、セシウム、リチウムなどのアルカリ金属原子から選
ばれる1価原子で、その合計が上記の式に化学量論的に
整合する限りそれらの2種以上を共存してもよい。B
は、上記のRと同義のアルカリ土類金属原子又は鉛原子
であり、同様に化学量論的に整合する限り2種以上の原
子が共存してもよい。Cは希土類原子であり、好ましく
は、スカンジウム及びイットリウム並びにランタン、セ
リウム、プラセオジウム、ネオジウム、ホルミウム、ユ
ウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ツリウム、イ
ッテルビウム、ルテチウムなどのランタノイド系元素に
属する原子であり、また、その合計が上記の式に化学量
論的に整合する限りそれらの2種以上を共存してもよ
い。Dは周期律表の5A族元素から選ばれた一種以上
で、バナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられる。ま
た、化学量論関係を満たす限り、2種以上の5A族の金
属原子が共存してもよい。Eは同じくチタン、ジルコニ
ウム、ハフニウムなどの4A族元素に属する金属原子で
あり、また、2種以上の4A族の金属原子が共存しても
よい。xは0〜2の任意の数値を表す。
【0042】RTiO3 や一般式AB2-x x 3-x
x 10で表される上記化合物を原板の表面に設ける場合
も、酸化チタン及び酸化亜鉛を設ける前記の方法を用い
ることが好ましい。すなわち、上記光触媒能を有する
熱応答型金属酸化物の微粒子の分散物を印刷版の原板上
に塗設する方法、塗設したのち焼成してバインダーを
減量或いは除去する方法、印刷版の原板上に上記酸化
物を各種の真空薄膜法で膜形成する方法、例えば金属
元素のアルコレートのような有機化合物を原板上に塗布
したのち、加水分解させ、さらに焼成酸化を施して適当
な厚みの金属薄膜とする方法、上記金属を含む塩酸
塩、硝酸塩などの水溶液を加熱スプレーする方法など、
既知の任意の方法を用いることができる。
【0043】例えば、上記、の塗設方法によってチ
タン酸バリウム微粒子を塗設するには、チタン酸バリウ
ムとシリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させ
る方法、チタン酸バリウムとオルガノポリシロキサンま
たはそのモノマ−との混合物を塗布する方法などがあ
る。また、酸化チタンの項で述べたように、酸化物層の
中に酸化物と共存できるポリマーバインダーに分散して
塗布した後、焼成して酸化物層とすることもできる。酸
化物微粒子のバインダ−として好ましいポリマーの例
は、酸化チタン層の項で述べたものと同じである。この
方法の場合にはチタン酸バリウム以外にチタン酸マグネ
シウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム
又はそれらの分子間化合物、混合物も同様に薄膜形成可
能である。
【0044】同様にして上記、の塗設方法によって
CsLa2 NbTi2 10微粒子を塗設することも可能
である。CsLa2 NbTi2 10微粒子は、その化学
量論に対応するCs2 CO3,La2 3,NbO5,TiO
2 を乳鉢で微粉砕して、白金るつぼに入れ、130°C
で5時間焼成し、それを冷却してから乳鉢に入れて数ミ
クロン以下の微粒子に粉砕する。このCsLa2 NbT
2 10微粒子を前記のチタン酸バリウムと同様にバイ
ンダーの中に分散し、塗布して薄膜を形成した。この方
法は、CsLa2 NbTi2 10型微粒子に限らず、H
Ca1.5 La0. 5 Nb2.5 Ti0.5 10,HLa2 Nb
Ti2 10など前述のAB2-x x 3- x x 10
(0≦x≦2)に適用される。
【0045】上記の真空薄膜形成法を用いた光触媒能
を有する熱応答型金属酸化物層の形成方法としては、一
般的にはスパッタリング法あるいは真空薄膜形成法が用
いられる。スパッタリング法では、あらかじめ単一もし
くは複合型の酸化物ターゲットを準備する。例えば、チ
タン酸バリウムターゲットを用いて蒸着膜用の支持体の
温度を450°C以上に保ち、アルゴン/酸素混合雰囲
気中でRFスパッタリングを行うことによりチタン酸バ
リウム結晶薄膜が得られる。結晶性の制御には必要に応
じてポストアニーリングを300〜900°Cで行えば
よい。本方法は前述のRTiO3 (Rはアルカリ土類金
属原子)をはじめ他の前記光触媒能を有する熱応答型金
属酸化物にも、結晶制御に最適な基板温度を調整すれば
同様の考え方で薄膜形成が可能である。例えば酸化錫薄
膜を設ける場合には基板温度120°C、アルゴン/酸
素比50/50の混合雰囲気中でRFスパッタリングを
行うことにより酸化錫結晶の本目的に沿う薄膜が得られ
る。
【0046】上記の金属アルコレートを用いる方法
も、バインダーを使用しないで目的の薄膜形成が可能な
方法である。チタン酸バリウムの薄膜を形成するにはバ
リウムエトキシドとチタニウムブトキシドの混合アルコ
ール溶液を表面にSiO2 を有するシリコン基板上に塗
布し、その表面を加水分解したのち、200°C以上に
加熱してチタン酸バリウムの薄膜を形成することが可能
である。本方式の方法も前述した他のRTiO3 (Rは
アルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x 10
(A,B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表
す)、SnO2 ,SiO2 ,Bi2 3 及びFe2 3
の薄膜形成に適用することができる。
【0047】上記によって熱応答性機能を発現する金
属酸化物薄膜を形成させる方法も、バインダーを含まな
い系の薄膜の形成が可能である。SnO2 の薄膜を形成
するにはSnCl4 の塩酸水溶液を200°C以上に加
熱した石英又は結晶性ガラス表面に吹きつけて薄膜を生
成することができる。本方式は、SnO2 薄膜のほか,
前述したRTiO3 (Rはアルカリ土類金属原子)、A
2-x x 3-x x10(A,B,C,D,Eはそれ
ぞれ前記の定義の内容を表す)、Bi2 3 及びFe2
3 のいずれの薄膜形成にも適用することができる。
【0048】金属酸化物薄膜の厚みは、上記のいずれの
場合も1〜100000オングストロ−ムがよく、好ま
しくは10〜10000オングストロ−ムである。さら
に好ましくは3000オングストロ−ム以下として光干
渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を十分に
発現させるには厚みが50オングストローム以上あるこ
とが好都合である。
【0049】バインダーを使用した場合の上記光触媒能
を有する熱応答型金属酸化物の薄層において、金属酸化
物の体積率は50〜100%であり、好ましくは90%
以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸化
物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。
【0050】印刷原板の熱応答性を高めるには、断熱層
を画像形成層の下層に設けることが有効である。光熱変
換による描画を行う場合には、その光に対して機能性表
面が透明である場合には下層に光熱変換層を設けてもよ
い。以上で本発明に用いる熱応答型物質、とくにその中
でも好ましい熱応答型金属酸化物についての説明を終わ
る。
【0051】次に本発明に使用する印刷用原板の形態に
ついて述べる。本発明に係わる印刷原板は、いろいろの
形態と材料を用いることができる。例えば、光触媒能を
有する熱応答型物質の薄層を印刷機の版胴の基体表面に
蒸着、浸漬あるいは塗布するなど上記した方法で直接設
ける方法、支持体に担持された熱応答型物質や、あるい
は支持体を持たない熱応答型物質の薄板を版胴の基体に
巻き付けて印刷版とする方法などを用いることができ
る。また、勿論版胴上で製版する上記形態以外に、一般
的に行われているように、製版を行った印刷版を輪転式
あるいは平台式印刷機に装着する形態を採ってもよい。
【0052】光触媒能を有する熱応答型物質が支持体上
に設けられる場合、使用される支持体は、ヒートモード
の画像記録の際の疎水性発現温度でも熱分解せず、寸度
的にも安定な板状物であり、アルミニウム板、SUS鋼
板、ニッケル板、銅板などの金属板が好ましく、特に可
撓性(フレキシブル)の金属板を用いることが好まし
い。また、ポリエステル類やセルローズエステル類など
のフレキシブルなプラスチック支持体も用いることが出
来る。防水加工紙、ポリエチレン積層紙、含浸紙などの
支持体上に酸化物層を設けてもよく、それを印刷版とし
て使用してもよい。
【0053】具体的には、紙、プラスチックシート(例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等のシ
ート)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミ
ニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラスチックフィ
ルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、
プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セ
ルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ
リビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネー
ト、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィ
ルム等が挙げられる。
【0054】好ましい支持体は、ポリエステルフィル
ム、ポリイミドフィルム、アルミニウム、又は印刷版上
で腐食しにくいSUS板であり、その中でも寸法安定性
がよく、比較的安価であるアルミニウム板と、製版工程
におけるヒートモード記録の加熱操作に対して安定性の
高いポリイミドフィルムは特に好ましい。
【0055】好適なポリイミドフィルムは、ピロメリッ
ト酸無水物とm−フェニレンジアミンを重合させたの
ち、環状イミド化したポリイミド樹脂フィルムであり、
このフィルムは市販されている(例えば、東レ・デュポ
ン社製の「カプトン」)。
【0056】好適なアルミニウム板は、純アルミニウム
板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含
む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしく
は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニ
ウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガ
ン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッ
ケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高
々10重量%以下である。本発明において特に好適なア
ルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋な
アルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅か
に異元素を含有するものでもよい。このように本発明に
適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるも
のではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板
を適宜に利用することができる。本発明で用いられる金
属支持体の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ま
しくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm
〜0.3mmであり、プラスチックや加工紙などその他の
支持体の厚みはおよそ0.1mm〜2.0mm程度、好まし
くは0.2mm〜1.0mmである。
【0057】アルミニウム支持体を用いる場合は、表面
を粗面化して用いることが好ましい。その場合、所望に
より、粗面化に先立って表面の圧延油を除去するため
の、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶
液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表
面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例え
ば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解
粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方
法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨
法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの
公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な
粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または
直流により行うなど公知の方法を利用することができ
る。また、粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じ
てアルカリエッチング処理および中和処理された後、所
望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸
化処理が施される。陽極酸化の電解質の濃度は電解質の
種類によって適宜決められる。
【0058】陽極酸化の処理条件は、用いる電解質によ
り種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電
解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、
電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜
の量が1.0g/m2より少ないと、耐刷性が不十分であっ
たり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印
刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」
が生じ易くなる。
【0059】以上で本発明の印刷方法に使用する印刷原
板の構成について説明したので、次に本発明のオフセッ
ト印刷方法及び印刷装置についての具体的態様を図を用
いて述べる。
【0060】はじめに、熱応答型金属酸化物などの熱応
答性物質の表面の熱応答性をさらに説明する。図1は、
前記した〜の熱応答性を説明するための実験結果の
一例を示す図であって、酸化チタンをそれぞれの温度で
5分間加熱したときの酸化チタン表面の水に対する接触
角を協和界面科学(株)製の接触角測定装置CA−Dを
用いて得た測定値を温度に対してプロットして得た温度
・接触角関係を示す。加熱は、室温から200℃までは
小型高温チャンバーST−110(タバイエスペック社
製)によって行い、200℃以上では電気炉KM−10
0((株)東洋製作所製)によって加熱した。
【0061】言うまでもなく、表面が親水性であるか、
疎水性であるかの尺度は、水に対する接触角の大きさに
よって表すことができ、接触角が大きいほど疎水性であ
り、疎水性は親油性又は親インキ性と言い換えることも
できる。図1は、酸化チタンを加熱して行くと、表面接
触角が増加して行き、温度が210°Cのとき極大に達
し、さらに加熱すると接触角が低下することを示してい
る。
【0062】すなわち、酸化チタンの表面温度を高めて
前述の「疎水性発現温度」に至ると疎水性となり、さら
に温度を高めて前述の「高温親水性発現温度」に至ると
再び親水性となる。表面の全面を高温親水性発現温度に
加熱することによって表面は製版に適した清浄で安定な
親水性表面として、この表面に疎水性発現温度のヒート
モード描画を行って印刷版を作製することも可能である
が、本発明においては、表面を高温親水性発現温度に加
熱するのではなく、活性光の全面照射によって表面の親
水性化を行う。光触媒能を活かして活性光を利用するこ
とによって親水性化と描画の両方を加熱操作によって行
う製版方法に比べて、加熱法よりも活性光の照射の方
が均一性の高い親水性表面が得られること、親水性化
のあと冷却に要する時間を考慮せず、直ちにヒートモー
ド描画を行うことが可能でしたがって製版操作が簡単か
つ迅速に行えること及び原板材料の種類にもよるが、
原板の保管中の履歴に影響されず、親水性化の再現性が
よいこと、親水性化のための高温加熱操作がないの
で、原板支持体の耐熱性の制約が少なく、したがって支
持体の選択範囲がひろがることなどの利点を有してい
る。
【0063】また、光触媒能に加えて熱応答性をも有す
る物質を用いる本発明においては、活性光照射で親水性
化したのちに、ヒートモード描画を疎水性発現温度で行
うことによって、その原板の履歴に影響されない、かつ
最適描画がなされる温度で描画を行うことができるの
で、画像領域と非画像領域の識別性の高い印刷版を再現
性よく製作することができるという利点がある。さらな
る利点としては、疎水性発現温度特性に合わせて後述す
る有機化合物を選択して親水性と疎水性の識別効果を高
めて印刷版の品質を高めることができることである。
【0064】光触媒作用によって親水性化を行うための
活性光は、光触媒能を有する熱応答型物質の薄層の感光
域、すなわち光吸収域に相当する波長の光である。例え
ば、熱応答型物質が酸化チタンの場合では、アナターゼ
型が387nm以下,ルチル型が413nm以下、酸化
亜鉛は387nm以下に、その他の多くの金属酸化物の
場合も250〜390nmの紫外部に感光域を有するの
で、水銀灯、タングステンハロゲンランプ、その他のメ
タルハライドランプ、キセノン放電灯などを用いること
が出来る。また、ビーム走査光であっても、走査するビ
ームの間隔が十分に狭い、つまり蜜であれば、均一照射
と実質的に同じ効果が得られるので、レーザービーム光
を用いることもできる。励起光としては、発振波長を3
25nmに有するヘリウムカドミウムレーザーや発振波
長を351.1〜363.8nmに有する水冷アルゴン
レーザーも用いることができる。さらに、330〜44
0nmに有する硫化亜鉛/カドミウムレーザーも適用で
きる。酸化亜鉛の場合は、既知の方法で分光増感を行っ
てもよいが、その場合も上記の光源を使用でき、さらに
分光増感域に分光分布を有する上記以外の例えばタング
ステンランプを使用することもできる。
【0065】好ましい照射光の強さは、光触媒能を有す
る熱応答物質の画像形成層の性質によって異なり、また
活性光の波長、分光分布及び光触媒能を有する熱応答型
物質の光吸収率によっても異なるが、通常は印刷用画像
で変調する前の面露光強度が0.05〜100joul
e/cm2 ,好ましくは0.05〜10joule/c
2 ,より好ましくは0.05〜5joule/cm2
である。また、光触媒反応には相反則が成立することが
多く、例えば10mW/cm2で100秒の露光を行っ
ても、1W/cm2 で1秒の露光を行っても、同じ効果
が得られる場合も多く、このような場合には、活性光を
発光する光源の選択の幅は広くなる。上記の照射光量
は、レーザーによるスキャニング方式あるいはな発散型
光源を用いる面露光方式でも容易に実施できるレベルの
光量である。
【0066】一方、「疎水性発現温度」の領域は、具体
的には接触角の極大値に対してその両側の接触角の低下
が20度以内の領域を指しており、インキを受容する実
用的疎水性の領域に相当する。図1の実験例では、接触
角の極大値は50度で、その両側20度の疎水性発現温
度の領域は、155〜240℃であるが、一般に光触媒
能を有する熱応答型金属酸化物などの熱応答物質の種
類、加熱速度、加熱雰囲気によって異なる。例えば、同
じ加熱速度と同じ加熱雰囲気においても、酸化チタン、
酸化亜鉛、チタン酸バリウムなど金属酸化物によって接
触角の極大値は異なり、その両側20度の範囲に対応す
る温度範囲も異なっている。また加熱速度を速くすると
この温度範囲は変化する。このような多少の相違はある
ものの、一般に疎水性発現温度は、50〜250°Cで
あり、多くは100〜250°Cの温度領域にある。し
たがって、ヒートモードの描画をこの温度領域で行うこ
とによって画像領域と非画像領域の疎水性と親水性の相
違を大きくすることが可能で、したがって画像部と非画
像部との識別性を増大させ、印刷面の品質を向上させる
ことが本発明の特徴である。
【0067】疎水性の画像部を印刷原板上に形成させる
加熱手段には、赤外線を放射する固体レーザー、又は赤
外線域や可視域の光を放射する半導体レーザー、赤外線
灯、キセノン放電灯、大容量コンデンサーからの放電に
よってフラッシュ光を発する光・熱変換描画装置、熱融
解型及び昇華型感熱色素転写などの熱記録ヘッド等によ
る直接画像記録手段が用いられる。上記した疎水性発現
温度の好ましい範囲に加熱温度を調節するには、加熱に
用いる光の強度を制御したり、あるいは熱記録用の加熱
ヘッドへの供給電力を制御するなどの方法が取られる。
【0068】画像の書き込みは、面露光方式、走査方式
のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方式や、
キセノン放電灯の高照度の短時間光をマスク画像を通し
て原板上に照射して光・熱変換によって熱を発生させる
方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用する場合
には、その照度によっても好ましい露光量は変化する
が、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が
0.1〜10J/cm2 の範囲であることが好ましく、0.
3〜1J/cm2 の範囲であることがより好ましい。支持体
が透明である場合は、支持体の裏側から支持体とマスク
画像を通して露光することもできる。その露光時間は、
0.01μsec〜1msec、好ましくは0.1μs
ec〜0.1msecの照射で上記の露光強度が得られ
るように露光照度を選択するのが好ましい。照射時間が
長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生成した熱エ
ネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度を増加させ
る必要が生じる。
【0069】後者の場合には、レーザー光源を使用し
て、レーザービームを画像で変調して原板上を走査する
方式が行われる。レーザー光源の例として、半導体レー
ザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレ
ーザー、YAGレーザーを挙げることができる。レーザ
ー出力が0.1〜300Wのレーザーで照射をすること
ができる。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピ
ーク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザ
ーを照射するのが好ましい。この場合の露光量は、印刷
用画像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm2
の範囲であることが好ましく、0.3〜1J/cm2 の範囲
であることがより好ましい。支持体が透明である場合
は、支持体の裏側から支持体を通して露光することもで
きる。光で加熱する場合は、例えば印刷原板に光熱変換
層を設けて、その層に光エネルギーを吸収させ、熱を発
生させることができる。あるいは、熱応答型物質それ自
体が光を吸収して自ら発熱することにより加熱すること
もできる。
【0070】さらに疎水性発現温度に加熱を行うに際し
て、前記したように有機化合物蒸気を存在させるとる
と、極大接触角の値とその温度及び疎水性発現温度の領
域に影響を与える。とくに注目されるのは、接触角が増
大する現象であって、有機化合物蒸気の存在下のヒート
モード記録によって親水性と疎水性の識別効果を向上さ
せることができる。この作用機構は不明であるが、おそ
らく加熱された原板表面に有機化合物が吸着して疎水性
の皮膜を形成するのではないかと推定している。
【0071】このような、有利な効果をもつ好ましい有
機化合物は、温度400℃における蒸気圧が少なくとも
1mmHgで、かつ蒸気圧が1mmHgとなる温度にお
いて安定な有機化合物である。つまり、この程度の蒸気
圧を有している有機化合物が加熱雰囲気中にあれば、画
像部の接触角が増加がおこる。より好ましくは、温度3
00℃における蒸気圧が少なくとも1mmHgで、かつ
蒸気圧が1mmHgとなる温度において安定な有機化合
物である。さらに好ましくは、沸点が30〜400℃に
あって、かつ30〜400℃の温度範囲で安定な有機化
合物であり、中でも好ましい沸点範囲は50〜350°
Cである。この温度範囲の沸点をもつ有機化合物は、具
体的には脂肪族及び芳香族炭化水素、脂肪族及び芳香族
カルボン酸、脂肪族及び芳香族アルコール、脂肪族及び
芳香族エステル、脂肪族及び芳香族エーテル、有機アミ
ン類、有機珪素化合物、印刷用インキに添加できること
が知られている各種溶剤や可塑剤類の中に見られる。
【0072】好ましい脂肪族炭化水素は、炭素数8〜3
0の、より好ましくは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素
であり、好ましい芳香族炭化水素は、炭素数6〜40
の、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素で
ある。好ましい脂肪族アルコールは、炭素数2〜30
の、より好ましくは炭素数2〜18の脂肪族アルコール
であり、好ましい芳香族アルコールは、炭素数6〜30
の、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族アルコール
である。好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数2〜24
の脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは炭素数2〜
20の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数4〜12の脂肪
族ポリカルボン酸であり、また、好ましい芳香族カルボ
ン酸は、炭素数6〜30の、より好ましくは炭素数6〜
18の芳香族カルボン酸である。好ましい脂肪族エステ
ルは、炭素数2〜30の、より好ましくは炭素数2〜1
8の脂肪酸エステルであり、好ましい芳香族エステル
は、炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜18
の芳香族カルボン酸エステルである。好ましい脂肪族エ
ーテルは、炭素数8〜36の、より好ましくは炭素数8
〜18の芳香族エーテルであり、好ましい芳香族エーテ
ルは、炭素数7〜30の、より好ましくは炭素数7〜1
8の芳香族エーテルである。そのほか、炭素数7〜30
の、より好ましくは炭素数7〜18の脂肪族あるいは芳
香族アミドも用いることができる。
【0073】具体例としては、2,2,4−トリメチル
ペンタン(イソオクタン)、ノナン、デカン、n−ヘキ
サデカン、オクタデカン、エイコサン、メチルヘプタ
ン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタンな
どの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、
クメン、ナフタレン、アントラセン、スチレンなどの芳
香族炭化水素;ドデシルアルコール、オクチルアルコー
ル、n−オクタデシルアルコール、2−オクタノール、
ラウリルアルコールなどの1価アルコール;プロピレン
グリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレン
グリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ジプ
ロピレングリコールなどの多価アルコール;ベンジルア
ルコール、4−ヒドロキシトルエン、フェネチルアルコ
ール、1−ナフトール、2−ナフトール、カテコール、
フェノールなどの芳香族アルコール;酢酸、プロピオン
酸、酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、カプ
リン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族1価カ
ルボン酸;しゅう酸、琥珀酸、アジピン酸、マレイン
酸、グルタール酸などの多価脂肪族カルボン酸;安息香
酸、2−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸などの芳
香族カルボン酸;酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸−
n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチ
ル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、しゅう酸ジメチ
ル、琥珀酸ジメチル、クロトン酸メチルなどの脂肪族エ
ステル;安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチルな
どの芳香族カルボン酸エステル;イミダゾール、トリエ
タノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキシル
アミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレンテト
ラミン、アニリン、オクチルアミン、アニリン、フェネ
チルアミンなどの有機アミン;アセトン、メチルエチル
ケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノンなど
のケトン類、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、メ
トキシトルエン、ラウリルメチルエーテル、ステアリル
メチルエーテルなどのエーテル類及びステアリルアミ
ド、ベンゾイルアミド、アセトアミドなどのアミド類が
挙げられる。
【0074】また、印刷用インキの成分であるアマニ
油、大豆油、けし油、サフラワー油などの油脂類、燐酸
トリブチル、燐酸トリクレシル、フタール酸ジブチル、
ラウリン酸ブチル、フタール酸ジオクチル、パラフィン
ワックスなどの可塑剤も挙げられる。
【0075】そのほか、沸点が前記の好ましい範囲にあ
るエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキ
サノン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソ
ルブアセテート、1,4−ジオキサン、ジメチルホルム
アミド、アクリロニトリルなどの有機溶剤も使用するこ
とができる。
【0076】好ましい有機珪素化合物は、ジメチルシリ
コーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどで
代表されるオルガノポリシロキサン化合物であり、とく
に重合度が12以下のオルガノポリシロキサン類であ
る。これらの好ましいオルガノポリシロキサンはシロキ
サン結合単位当たり1〜2個の有機基が結合しており、
その有機基は炭素数が1〜18のアルキル基及びアルコ
キシ基、炭素数が2〜18のアルケニル基及びアルキニ
ル基、炭素数が6〜18のアリール基、炭素数が7〜1
8のアラルキル基、炭素数が5〜20の脂環式基であ
る。また、これらの有機置換基には、さらにハロゲン原
子、カルボキシル基、ヒドロキシ基が置換してもよい。
また、上記のアリール基、アラルキル基、脂環式基に
は、上記の炭素数の範囲でメチル基、エチル基又はプロ
ピル基などの低級アルキル基がさらに置換していてもよ
い。
【0077】本発明に使用できる好ましい有機珪素化合
物の具体例は、下記の化合物であるが、本発明はこれら
に限定されるものではない。
【0078】好ましいポリオルガノシロキサン類として
は、炭素数1〜5のアルキル基を有するジアルキルシ
ロキサン基、炭素数1〜5のアルコキシ基を有するジ
アルコキシシロキサン基、炭素数1〜5のアルコキシ
基とフェニル基を有するアルコキシフェニルシロキサン
基及びエトキシメトキシシロキサン基又はメトキシエ
トキシシロキサン基のうち、少なくとも一つを繰り返し
単位として含み、重合度が2〜12、より好ましくは2
〜10のポリオルガノシロキサンである。また、その端
末基は、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、ヒドロ
キシ基、炭素数1〜5のヒドロキアルキル基又は炭素数
1〜5のアルコキシ基である。より好ましい端末基は、
メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル
基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基及びエト
キシ基である。その中でも好ましいシロキサン化合物
は、重合度が2〜10のジメチルポリシロキサン、重合
度が2〜10のジメチルシロキサン−メチルフェニルシ
ロキサン共重合物、重合度が2〜8のジメチルシロキサ
ン−ジフェニルシロキサン共重合物、重合度が2〜8の
ジメチルシロキサン−モノメチルシロキサン共重合物で
これらのポリシロキサン化合物の端末はトリメチルシラ
ン基である。そのほか、1,3−ビス(3−アミノプロ
ピル)テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3−
アミノプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、1,3
−ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサ
ン、1,5−ジブチル−1,1,3,3,5,5−ヘキ
サエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘ
キサエチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、3−
(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,
3,5,5,5−ヘプタメチル−トリシロキサン、デカ
メチルテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0079】特に好ましい化合物として、いわゆるシリ
コーンオイルがあり、ジメチルシリコーンオイル(市販
品では、例えばシリコーンKF96(信越化学工業
(株)製)、メチルフェニルシリコーンオイル(市販品
では、例えばシリコーンKF50(信越化学工業(株)
製)、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(市販品
では、例えばシリコーンKF99(信越化学工業(株)
製)が挙げられる。
【0080】そのほか、n−デシルトリメトキシシラ
ン、n−デシルトリ−t−ブトキシシラン、n−オクタ
デシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエト
キシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどのシラン
化合物も挙げらることができる。
【0081】有機化合物の雰囲気のもとで疎水性発現温
度に加熱を行うには、原板表面に接するように設けられ
た加熱部の外套内に有機化合物充填容器を置いて、加熱
時間中に有機化合物の蒸気を外套内に存在させるのがよ
い。また、有機化合物を含浸させた紙、硅草土、ゼオラ
イト、布などを外套内に挿入して加熱するのもよい。
【0082】以上で本発明における印刷原板の光触媒作
用及び熱応答特性並びに光触媒能と熱応答性をもつ物質
について説明した。つぎにこの原板を装着して行う印刷
方法および装置について説明する。
【0083】印刷原板は、光触媒能を有する熱応答型物
質の表面に親油性の画像を付与したのち、現像処理する
ことなく、そのままオフセット印刷工程に送ることがで
きる。従って通常の公知の平版印刷法に比較して簡易性
を中心に多くの利点を有する。すなわち上記したように
アルカリ現像液による化学処理が不要であり、それに伴
うワイピング、ブラッシングの操作も不要であり、さら
に現像廃液の排出による環境負荷も伴わない。
【0084】光触媒能を有する熱応答型物質から得られ
た平版印刷版の非画像部は、十分に親水性化している
が、所望により、水洗水、界面活性剤等を含有するリン
ス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後
処理してもよい。本発明の画像記録材料を印刷用版材と
して使用する場合の後処理としては、これらの処理を種
々組み合わせて用いることができる。その方法として
は、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平
版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に
印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる
塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージー
ローラーでその塗布量を均一にすることによって、より
好ましい結果が得られることもある。整面液の塗布量は
一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当であ
る。この様な処理によって得られた平版印刷版は、オフ
セット印刷機等にかけられ、あるいは印刷機上で製版さ
れ、多数枚の印刷に用いられる。
【0085】次に印刷を終えた印刷版の再生工程につい
て記す。印刷終了後の印刷版は疎水性の石油系溶剤を用
いて付着しているインキを洗い落とす。溶剤としては市
販の印刷用インキ溶解液として芳香族炭化水素、例えば
ケロシン、アイソパ−などがあり、そのほかベンゾー
ル、トルオール、キシロール、アセトン、メチルエチル
ケトン及びそれらの混合溶剤を用いてもよい。画像物質
が溶解しない場合には、布などを用いて軽く拭き取る。
また、トルエン/ダイクリーンの1/1混合溶媒を用い
るとよいこともある。
【0086】インキを洗浄除去した印刷版は、活性光の
照射を行うことによって版面全体にわたって均一に親水
性を回復する。この活性光照射は、印刷インキを洗浄除
去してから次の製版作業においてヒートモードの描画を
行うまでの間の任意の時期におこなってよいが、その原
板を次の製版工程に再使用する際に行うのが原板の保管
中の履歴の影響を排除できる点で好ましい。活性光の照
射条件についてはすでに述べた通りである。
【0087】本発明に係わる印刷原板の反復再生可能回
数は、完全に把握できていないが、少なくとも15回以
上であり、おそらく反面の除去不能な汚れ、修復が実際
的でない刷面の傷や、版材の機械的な変形(ひずみ)な
どによって制約されるものと思われる。
【0088】本発明における印刷原板の構成材料及び製
版操作について説明した。次にこの原板を装着して印刷
を行う方法及び装置を、図によって説明する。光触媒能
を有する熱応答型物質を表面にもつ印刷用原板は、版胴
の構成部材として固定されていてもよく、また着脱自在
であってもよい。以下図2以降の説明では、本発明の簡
易性を顕著に発揮する前者すなわち版胴が印刷原板とな
っている例について説明する。
【0089】図2は、本発明の第1の実施形態によるオ
フセット印刷装置の構成を示す図である。図2に示すよ
うに本発明の第1の実施形態によるオフセット印刷装置
は、酸化チタンや酸化亜鉛など前記した光触媒能を有す
る熱応答型物質を表面に有する版胴1と、版胴1に対し
て活性光を照射して全面親水性とする光照射部2と、全
面親水性化された版胴1に対して疎水性発現温度でヒー
トモードの描画を行うための感熱記録部5と、ヒートモ
ードの描画がなされた版胴1にインキおよび湿し水を供
給するインキ・湿し水供給部3と、印刷終了後に版胴1
に残存するインキを除去するインキ洗浄部4と、版胴1
に保持されたインキを用紙に転写するための中間体とし
てのブランケット6と、ブランケット6とともに給送さ
れた用紙を保持する圧胴7とを備え、これらの部材が本
体8内に収容されてなるものである。
【0090】活性光照射部2は、光源ろして水銀灯を用
いているが、キセノン放電灯、高照度ハロゲン・タング
ステンランプなどの紫外線成分を含む他の光源であって
もよい。版胴の回転方向に対して直角方向に配したスリ
ットによって、版胴の回転に伴ってスリット光による全
面走査露光が施される。スリットの幅は必ずしも狭い必
要はなく、光照射部2を通過中に原板表面の親水性化が
行える受光量が得られるように照度とスリット幅及び版
胴の回転速度がきめられる。スリットの代わりに版胴の
幅に合わせた照射幅をもついわゆるがんどう型のランプ
ハウスを用いてもよい。別の態様としては、光源が紫外
域、可視域又は近赤外域に発振波長をもつ前記したレー
ザー、例えばヘリウムカドミウムレーザーを搭載して、
そのビーム光を用いてもよい。この場合は、ビーム幅を
100ミクロン以上に広げて走査する装置によって全面
照射が可能となる。
【0091】全面が均一に親水化された版胴1に親油性
の画像領域を形成するには、版胴1の表面を感熱記録部
5により画像様に疎水性発現温度に加熱することによっ
て行われる。この画像様に加熱する手段としては、前記
したように、赤外線灯、赤外線レーザー光、接触加熱な
どの方法を選択できる。
【0092】図3は、感熱記録部の典型的な例である感
熱記録ヘッドを用いた感熱記録部の要素構成図である。
図3に示す接触加熱方式の感熱記録部5は、版胴1の表
面に密着してヒートモードによる描画を行う感熱ヘッド
18と、編集・レイアウトW/S20において印刷すべ
き画像から信号化されて記録部に入力される画像信号S
に基づいて、感熱ヘッド18を駆動して版胴1の表面に
ヒートモードによる描画を行うための感熱ヘッド駆動部
19とからなる。感熱ヘッド18は複数の微細な発熱体
が版胴1の回転軸方向にアレイ状またはマトリクス状に
延在しており、1ラインまたは複数ラインごとに版胴1
にヒートモードによる描画を行うものである。そして、
版胴1が回転することにより、版胴1の表面にヒートモ
ードによる描画がなされ、版胴1における描画がなされ
なかった部分が親水性の非画像領域とされ、描画された
部分が親油性の画像領域とされるものである。
【0093】図4Aは、感熱記録部5の別の構成例であ
る。図4Aに示す別の構成例における感熱記録部5は、
レーザー光を出射して版胴1に照射するレーザー光源2
1と、編集・レイアウトW/S20において印刷すべき
画像から信号化されて記録部に入力される画像信号Sに
基づいて、レーザー光源21を駆動してレーザー光を変
調させて版胴1の表面にヒートモードによる描画を行う
ためのレーザー光源駆動部22とからなる。光源21は
出射されるレーザー光を版胴1の回転軸方向に版胴1に
対して相対的に移動して版胴1上を走査するよう構成さ
れており、版胴1が回転することにより、版胴1の表面
が変調されたレーザー光により露光され、版胴1におけ
るレーザー光が照射されなかった部分が親水性の非画像
領域とされ、レーザー光が照射された部分が親油性の画
像領域とされて、ヒートモードによる描画がなされるも
のである。なお、レーザーは、光熱変換機構が付与され
ていれば、必ずしも赤外線レーザーでなくてもよい。
【0094】図4Bは、有機化合物の蒸気を含んだ雰囲
気中に印刷用原板表面を接れさせた状態でヒートモード
描画を行うように、有機化合物蒸気供給手段を設けた感
熱記録部を示す。図4Bの例では、有機化合物蒸気供給
手段は、感熱記録にレーザー光源21と組み合わせて用
いているが、感熱記録に感熱ヘッド18を用いたものに
も同様に適用できる。
【0095】本実施態様における有機化合物蒸気供給手
段29では、空気取り入れ口24より空気が取り入れら
れて、内径約30mmの分液ろ斗タイプの硝子管を横向
きに配置した蒸発室26にコック25を経て導かれる。
蒸発室には有機化合物27(斜線で示す)が容積率が例
えば50%になるように満たされていて、有機化合物2
7の内部及び表面を空気が通過する間に必要量の有機化
合物の蒸発気体を取り込んでから、版胴1上の印刷用原
板表面に導かれ、この空気・蒸発気体の混合雰囲気中で
描画が行われる構造となっている。有機化合物蒸気の取
り込み量は、印刷用原板の表面を疎水性発現温度に設定
したときに、その疎水性が強化されるに足りる量であ
り、揮発し易い低沸点の有機化合物(例えば、メチルエ
チルケトンやメチルセロソルブ)の場合は、蒸発室の下
部に有機化合物を満たすだけで足りるが、それでは不十
分の沸点の比較的高い化合物(例えば、ヘキシレングリ
コール)の場合には、空隙率の大きい硅草土、シリカ粒
子、沸石粒子などを有機化合物とともに蒸発室内に入れ
て取り入れた空気と有機化合物との接触度を高める措置
が取られる。有機化合物27がナフタレンのような固形
物の場合は、蒸発室26に適当な空隙率で充填される。
また、さらに沸点が高い有機化合物の場合には、図示し
ない温度制御部、電熱ヒーター及び温度センサーによっ
て蒸発室26内部の温度を蒸発に適した温度に調節でき
る機構となっている。例えば、シリコーンオイルを使用
する場合には、シリコーンオイルを含浸させた珪草土が
容積率が50%となるように硝子管の下半分に空気と接
するように置かれ、空気の温度は取り入れ口24では室
温で、この管を通過中に190℃に上昇するように図示
しない電熱ヒーターによって加熱される。なお、当然の
ことながら、上記を含んだ空気は、屋外排気される。ま
た、その際必要によって排気の前に空気浄化が行われ
る。
【0096】なお、ここではレーザーを直接変調する方
式を示したが、レーザーと音響光学素子のような外部変
調素子との組み合わせによっても同様に描画できること
はもちろんである。
【0097】また、本発明においては、感熱記録部5と
しては、感熱記録ヘッドや赤外線レーザー光のみではな
く、赤外線灯の光などの熱線を熱線不透過性の画像マス
クを通して照射する光・熱変換加熱方式、大容量コンデ
ンサーを用いる高照度瞬間フラッシュを画像マスクを通
して行う光・熱変換加熱方式も採用することができる。
【0098】次いで、第1の実施形態の動作について説
明する。まず、光照射部2を回転しながら通過する版胴
1の部分は、光照射部2から版胴の全幅にわたる活性光
によって版胴1の光照射部2を通過した全面が照射さ
れ、これにより、版胴1の表面は親油性から親水性に変
化する。全面が親水性化した版胴は、感熱記録部5で、
疎水性発現温度への加熱によってヒートモードによる描
画が行われる。像様の加熱が行われた領域は親油性を有
する画像領域となり、加熱が行われなかった領域は親水
性を有する非画像領域とされる。そして、ヒートモード
による描画が終了すると、次いで、インキ・湿し水供給
部3よりインキおよび湿し水が版胴1に供給される。こ
れにより、版胴1の親油性の画像領域にはインキが保持
され、親水性の非画像領域にはインキが保持されること
なく湿し水が保持される。
【0099】その後、ブランケット6と圧胴7との間に
矢印Aに示すように用紙を供給し、版胴1に保持された
インキをブランケット5を介して用紙に転写することに
よりオフセット印刷が行われる。
【0100】印刷終了後、インキ洗浄部4により版胴1
に残存するインキを除去する。その後、版胴1を光照射
部2を通して親水性化することにより、版胴1の像様の
親油性領域は消去されて、ヒートモードによる描画前の
状態に戻る。
【0101】このように、本発明によるオフセット印刷
装置によれば、全面にわたる活性光照射およびヒートモ
ードによる描画のみで版胴1に印刷画面を形成すること
ができ、これにより現像が不要でかつ印刷面の鮮鋭性が
保たれたオフセット印刷を行うことができる。また、版
胴1を洗浄して再度活性光で照射することにより元の状
態に戻すことができるため、版胴1を反復使用すること
ができ、これにより印刷物を低コストで提供することが
できることとなる。さらに、印刷装置から版胴1を取り
外す必要がないため、従来のPS版のように印刷装置に
組み込む際にゴミなどが付着することもなくなり、これ
により、印刷品質を向上させることができる。
【0102】また、印刷用原板として版胴1を使用し、
版胴1の周囲に光照射部2、インキ・湿し水供給部3、
インキ洗浄部4および感熱記録部5を配設することによ
り、単に版胴1を回転させるのみで、原板の全面親水性
化、ヒートモードによる描画およびインキおよび湿し水
の供給、さらには印刷終了後のインキ洗浄を行うことが
できるため、装置をコンパクトに構成することができ、
これにより省スペース化を図ることができる。
【0103】さらに光照射による全面親水性化とヒート
モード描画を組み合わせた本発明が、親水性化とヒート
モードの両方を加熱によって行う方法に比較して均一
性の高い親水性表面が得られること、親水性化に続い
て直ちにヒートモード描画を行う簡単迅速化が図れるこ
と、履歴に影響されず、再現性がよいこと、原板支
持体の選択範囲がひろがることなどの利点を有してい
る。また、ヒートモード描画を疎水性発現温度で行うこ
とによって、その版の有している履歴に影響されない、
かつ最適描画がなされる温度で描画を行うことができる
ので、画像領域と非画像領域の識別性の高い印刷版を再
現性よく製作することができるという利点がある。さら
なる利点としては、疎水性発現温度特性に合わせて有機
化合物を選択し、親その存在下で描画を行うことによっ
て親水性と疎水性の識別効果を高めて印刷版の品質を高
めることができることである。
【0104】〔実施例1〕上記実施形態1による実施例
を示す。99.5重量%アルミニウムに、銅を0.01
重量%、チタンを0.03重量%、鉄を0.3重量%、
ケイ素を0.1重量%含有するJISA1050アルミ
ニウム材の厚み0.30mm圧延板を、400メッシュの
パミストン(共立窯業製)の20重量%水性懸濁液と、
回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用いて
その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。これを
15重量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム4.
5重量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が5g/
m2になるようにエッチングした後、流水で水洗した。更
に、1重量%硝酸で中和し、次に0.7重量%硝酸水溶
液(アルミニウム0.5重量%含有)中で、陽極時電圧
10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形波交番
波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5796
号公報実施例に記載されている電流波形)を用いて16
0クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行
った。水洗後、35℃の10重量%水酸化ナトリウム水
溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2になる
ようにエッチングした後、水洗した。次に、50℃、3
0重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットした後、
水洗した。
【0105】さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液
(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用い
て、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密
度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極
酸化皮膜重量2.7g/m2とした。この支持体を水洗後、
70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間
浸漬処理し、水洗乾燥した。以上のようにして得られた
アルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計
で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは
0.58μmであった。
【0106】次いでこのアルミニウム支持体を真空蒸着
装置内に入れて、全圧1.5x10 -4Torrになるように
分圧70%の酸素ガスの条件下でチタン金属片を電熱加
熱して、アルミニウム支持体上に蒸着して酸化チタン薄
膜を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によっ
て無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が1.5/
6.5/2であり、TiO2薄膜の厚さは900オングスト
ロームであった。これを版胴1の基体に巻き付けて機上
印刷用の原板とした。
【0107】光照射部2には、US10焼き付け用光源
装置ユニレックURM600形式GH60201X(ウ
シオ電気工業(株)製)を用いて光強度100mW/c
2のもとで通過時間が15秒となる回転速度で版胴を
回転させた。照射後の原板表面の水に対する接触角をCo
ntact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用
いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したと
ころ、いずれの部分も7〜9度の間にあった。
【0108】次に、感熱記録部5のTa-SiO2 発熱抵抗体
上にサイアロン耐磨耗保護層を設けた150μmx15
0μmのサーマルヘッドを250μm間隔に並べた発熱
体アレイを用いて、酸化チタン表面層と接触させて昇温
印字を行った。使用したサーマルヘッドは、5msec
通電によって210°Cに、10msec通電によって
450°Cに達するが、熱伝導度の低い陽極酸化皮膜表
面を2.5m/secで走査しながら連続通電する場合
には、その表面はほぼ210°Cに保たれることを別途
温度測定を行って確認した。記録速度は、2.5m/s
ecで行った。このとき、接触角は、図1に示した実験
例から50度とみなすことができる。
【0109】この版胴1をサクライ社製オリバー52片
面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において
湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newc
hampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット
印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得
られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0110】次いで洗浄部4において、版胴1の表面を
印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本イ
ンキ化学工業社)とトルエンの1/1混合液をウエスに
しみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。再び光
照射部2においてUS10焼き付け用光源装置ユニレッ
クURM600形式GH60201Xによる紫外線照射
を行った。前と同じ方法で接触角を測定した。版表面の
どの部分も7〜9度の間にあった。
【0111】次いで、この版胴1の表面に上記と同一の
条件でサーマルヘッドによって前とは異なる描画を行っ
た。この版胴1をサクライ社製オリバー52片面印刷機
に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水を
純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion
Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行
った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版
胴1の損傷も認められなかった。
【0112】以上の繰り返しを5回実施したところ、活
性光照射後の接触角の値、加熱による接触角の回復スピ
ード及び印刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかっ
た。この結果から、酸化チタン層をアルミニウム支持体
上に設けた印刷原板を使用し、形態1の印刷装置を用い
て活性光照射とヒートモード印字によって印刷が可能で
あり、しかもインキの洗浄除去のみで印刷原板を反復再
生使用できることが示された。
【0113】〔実施例2〕真空蒸着装置中に100ミク
ロン厚みのSUS板をセットして全圧5x10-3Torrの
真空下でセレン化亜鉛を1000オングストロームの厚
みに蒸着した。これを空気中600°Cで2時間酸化処
理してSUS板の片面に酸化亜鉛の薄膜を形成させた。
【0114】この酸化亜鉛皮膜付き100ミクロンSU
S板を実施例1と同じく、実施形態1の印刷装置の版胴
1の基体に巻き付けて機上製版型の原板とした。
【0115】光照射部2は、実施例1と同じくユニレッ
クURM−600形式GH−60201Xを用い、版胴1を
ゆっくり回転させながら、照射を行った。光照射を行っ
た原板表面の水に対する接触角は、協和界面科学株式会
社製CONTACT-ANGLE METER CA-Dを用いて空中水滴法によ
る測定で、いずれの部分も20〜27度の間にあった。
【0116】次に、感熱記録部5のTa-SiO2 発熱抵抗体
上にサイアロン耐磨耗保護層を設けた150μmx15
0μmのサーマルヘッドを250μm間隔に並べた発熱
体アレイを用いて、酸化亜鉛表面層と接触させて昇温印
字を行った。使用したサーマルヘッドは、実施例1に用
いたものと同じであり、走査速度は、2.5m/sec
で行った。この走査速度では、酸化亜鉛表面層と接する
場合の表面温度は200°Cであることが別の測定で判
っている。
【0117】この版胴1をサクライ社製オリバー52片
面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において
湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newc
hampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット
印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得
られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0118】次いで洗浄部4において、版胴1の表面を
印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本イ
ンキ化学工業社)とトルエンの1/1混合液をウエスに
しみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。再び光
照射部5を通電して前と同じ条件で加熱した後、室温ま
で冷えた状態で前と同様の方法で接触角を測定した。版
表面のどの部分も20〜27度の間にあった。
【0119】次いで、この版胴1の表面に上記と同一の
条件でサーマルヘッドによって前とは異なる描画を行っ
た。この版胴1をサクライ社製オリバー52片面印刷機
に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水を
純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion
Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行
った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版
胴1の損傷も認められなかった。
【0120】この結果から、酸化亜鉛層をSUS支持体
上に設けた印刷原板を使用し、態様1の印刷装置を用い
て活性光にとる全面照射とヒートモード印字によって印
刷が可能であり、しかもインキの洗浄除去のみで印刷原
板を反復再生使用できることが示された。
【0121】〔実施例3〕実施例1と同様にして陽極酸
化処理したアルミニウム支持体をCsLa2 NbTi2
10の化学量論比に相当するセシウムエトキシド、チタ
ンブトキシド、ランタンイソブトキシド、ニオブエトキ
シドを含む20%のエタノール溶液に浸漬して表面を加
水分解したのち280°Cに加熱してアルミニウム支持
体表面にCsLa2 NbTi2 10の厚み1000オン
グストロームの薄膜を形成させた。
【0122】この複合金属酸化物薄膜付きアルミニウム
支持体を版胴の基体に巻き付けて原板とした以外は、実
施例1と同じ製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を
行った。活性光照射後の親水性化領域の水に対する接触
角は、1回目及び2回目とも15〜22度であり、ま
た、印刷面の品質も1回目及び2回目とも地汚れはな
く、画像領域と非画像領域の識別性も十分であった。
【0123】〔実施例4〕実施例1で使用したものと同
じ粗面化処理と陽極酸化処理を施したアルミニウム支持
体を使用してチタン酸バリウムを熱応答性金属酸化物と
した原板を作製した。すなわち、上記アルミニウム支持
体をスパッタリング装置内にセットし、5.0×10-7
Torrまで真空排気する。支持体を200°Cに加熱し、
Ar/O 2 が90/10(モル比)となるようにガス圧
を5×10-3Torrに設定し、SiO2 のターゲットにR
Fパワー200Wを投入してSiO2 の1μmの薄層を
形成した。続いてArのガス圧を5×10-3Torrに設定
し、SiのターゲットにRFパワー200Wを投入して
Siの1μmの薄膜を形成した。続いてArのガス圧を
5×10-3Torrに設定し、6インチφのチタン酸バリウ
ムの焼結ターゲットにRFパワー200Wを投入して膜
厚1000Åのチタン酸バリウム薄膜を形成した。X線
解析法によれば、この薄膜は多結晶体であった。
【0124】このチタン酸バリウム薄膜付きアルミニウ
ム支持体を版胴の基体に巻き付けて原板として使用した
ことと、感熱記録部に感熱記録ヘッドの代わりに赤外線
レーザー光記録装置を使用した以外は、実施例1と同じ
製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行った。赤外
線レーザー光記録装置は、出力500mWの固体赤外線
レーザー光をビーム幅45ミクロンに絞って走査露光に
よって描画を行った。この場合、照射した赤外線光をS
iが吸収するので、この薄層が光エネルギーを熱エネル
ギーに変換する役目を果たす。すなわち、赤外線を照射
することで、Si層が発熱するのでチタン酸バリウム層
を加熱できる。なお、感熱ヘッドとの接触によって測定
した試験との比較によって、上記の条件で赤外線レーザ
ー描画を行った時の光照射部のチタン酸バリウム層の温
度は、250℃であることが判っている。紫外線照射に
よる親水性化領域の水に対する接触角は、1回目及び2
回目とも14〜20度であり、また、印刷面の品質も1
回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領
域の識別性も十分であった。
【0125】〔実施例5〕厚み100ミクロンのポリイ
ミド(無水ピロメリット酸・m−フェニレンジアミン共
重合物)フィルム(商品名;カプトン、東レ・デュポン
社製)を使用して実施例4と同様に光熱変換層を設けて
その上に二酸化チタン薄膜を設けた試料を作製した。す
なわち、上記ポリイミドフィルム支持体をスパッタリン
グ装置内にセットし、5.0×10-7Torrまで真空排気
する。支持体を200℃に加熱し、Ar/O2 が90/
10(モル比)となるようにガス圧を5×10-3Torrに
設定し、SiO2 のターゲットにRFパワー200Wを
投入してSiO2 の1μmの薄層を形成した。続いてA
rのガス圧を5×10-3Torrに設定し、Siのターゲッ
トにRFパワー200Wを投入してSiの1μmの薄膜
を形成した。さらに、Ar/O2 が60/40(モル
比)となるようにガス圧を5×10-3Torrに設定し、ガ
ス圧を5×10-3Torrに設定し、チタン金属のターゲッ
トにRFパワー200Wを投入して二酸化チタン薄膜を
蒸着形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によっ
て無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が1.5/
6.5/2であり、二酸化チタン薄膜の厚さは900オ
ングストロームであった。この二酸化チタン薄膜と光熱
変換性のSi薄膜及びSiO2 の断熱層を載せたポリイ
ミド支持体を版胴の基体に巻き付けて原板として使用し
たことと、感熱記録部に感熱記録ヘッドの代わりに赤外
線レーザー光記録装置を使用した以外は、実施例1と同
じ製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行った。赤
外線レーザー光記録装置は、出力500mWの固体赤外
線レーザー光をビーム幅45ミクロンに絞って走査露光
によって描画を行った。高温加熱による親水性化領域の
水に対する接触角は、1回目及び2回目とも11〜17
度であり、また、印刷面の品質も1回目及び2回目とも
地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別性も十分で
あった。
【0126】〔実施例6〕感熱記録部の空気取り入れ口
に内径約30mmの硝子管(分液ろ斗を転用)を横向き
に配置し、室内の空気がこの硝子管内を通過して感熱記
録部の内部に取り込まれる構造とした。シリコーンオイ
ル〔商品名シリコーンKF99(信越化学工業(株)
製〕を含浸させた珪草土を容積率が50%となるように
硝子管の下半分に流しこんだ。空気取り入れ口の温度
は、この管を通過中に室温から150℃に上昇する。シ
リコーンKF99は、この温度では少なくとも1mmH
g以上の蒸気圧を持つので、感熱記録部の内部に取り入
れられた空気は、シリコーンKF99の蒸気を含んでい
る。空間部の内容積が2リットルの管熱記録部における
空気交換速度は、毎分10vol%であった。このオル
ガノポリシロキサン化合物の蒸気を導入する以外は、実
施例1と同じ原板と同じ装置を使用して、同じ条件で製
版し、印刷を行い、使用済みの印刷版を同じ方法で再生
して再度印刷を行った。ヒートモード記録した画像領域
の水に対する極大接触角は、190℃に現れ、その接触
角の値は、77度であった。この結果を実施例1で得た
結果と比較すると、疎水性発現温度での加熱を有機珪素
化合物蒸気の存在下で行うことによって、接触角が極大
となる温度も変化するが、同時に接触角が著しく増加し
て親油性〜親水性の識別性が向上したことが判る。
【0127】ついで、この印刷版を使用して、1000
枚のオフセット印刷を行った。実施例1と同様にスター
トから終了まで鮮明な印刷物が得られたが、さらに印刷
を続けて5000枚の印刷を行ったときには、シリコー
ンKF99を存在させないで印刷した実施例1において
は、目視で認められるインキ汚れが生じたが、シリコー
ンKF99の存在下で印刷を行った実施例6では、イン
キ汚れは認められず、版胴1の損傷も認められなかっ
た。
【0128】〔実施例7〕実施例6におけるシリコーン
KF99を下記〜に記載の有機化合物に変更した以
外は、実施例と同じ方法で管熱記録を行った。その結果
を表1に示す。表1から判るように管熱記録部5に有機
化合物を介在させて描画を行うことによって、画像領域
と非画像領域の疎水性と親油性の差が顕著となり、それ
を反映して耐刷枚数も増加した。表5においてインキ汚
れは、5000枚印刷時点で汚れが認められないものを
○、許容範囲ながら目視で認められるものを△と表示し
た。
【0129】
【表1】
【0130】次いで、本発明の第2の実施形態について
説明する。 〔実施形態2〕図5は本発明の第2の実施形態によるオ
フセット印刷装置の構成を示す図である。図5に示すオ
フセット印刷装置は、図2に示すオフセット印刷装置を
印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bとして4
台直列に本体12内に配置して構成されるものであり、
それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シア
ン)、B(ブラック)のインキを使用してカラー印刷を
行うものである。
【0131】各印刷ユニット11Y,11M,11C,
11Bの構成および動作は、図2に示すオフセット印刷
装置と同一であるため、詳細な説明は省略する。第2の
実施形態においては、各印刷ユニット11Y,11M,
11C,11Bのインキ・湿し水供給部において供給さ
れるインキの色が、それぞれ、Y(イエロー)、M(マ
ゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)である点が異
なるものである。
【0132】次いで、第2の実施形態の動作について説
明する。まず、印刷ユニット11Y,11M,11C,
11Bにおいて版胴1をゆっくり回転させながら光照射
部2のUS10焼き付け用光源装置ユニレックURM6
00形式GH60201Xを点灯して版胴1を回転させ
て、その全面が光照射部を15秒間で通過する速度で走
査し、版胴全面を親水性にした後に、実施例1に記した
感熱ヘッドによる感熱記録により各色を表す画像をヒー
トモードによって描画する。そして、各印刷ユニット1
1Y,11M,11C,11Bのインキ・湿し水供給部
からY,M,C,Bそれぞれの色のインキを供給して、
各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bの版胴
1にインキおよび湿し水を保持する。その後、図5の矢
印Bに示すように用紙を供給して、各印刷ユニット11
Y,11M,11C,11Bのインキを用紙に転写す
る。すなわち、印刷ユニット11YにおいてはYのイン
キが転写され、印刷ユニット11MにおいてはMのイン
キが転写され、印刷ユニット11CにおいてはCのイン
キが転写され、印刷ユニット11BにおいてはBのイン
キが転写される。これにより、用紙にはカラー画像が印
刷されることとなる。
【0133】印刷終了後、各印刷ユニット11Y,11
M,11C,11Bのインキ洗浄部により版胴に残存す
るインキを除去する。その後、版胴1をゆっくり回転さ
せながら光照射部2によって光照射を行い、版胴1の全
面を親水性化して、版胴1はヒートモードによる描画前
の状態に戻る。
【0134】〔実施形態3〕次いで、本発明の第3の実
施形態について説明する。図6は本発明の第3の実施形
態によるオフセット印刷装置の構成を示す図であり、図
7は図6の要部拡大図である。図6に示すオフセット印
刷装置は、図2に示すオフセット印刷装置を印刷ステー
ション14Y,14M,14C,14Bとして本体15
内において圧胴7の周囲に配置して構成されるものであ
り、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C
(シアン)、B(ブラック)のインキを使用してカラー
印刷を行うものである。
【0135】各印刷ステーション14Y,14M,14
C,14Bの構成は同一であり、印刷ステーション14
Yで代表させて図7に示す。図7に示すように、印刷ス
テーション14Yは、第1の実施形態と同様に、酸化チ
タンや酸化亜鉛などの光触媒能を有する熱応答型物質を
主成分とする表面を有する版胴1と、活性光の照射によ
って版胴1の表面を親水性にする光照射部2と、親水性
化された版胴1に対してヒートモードの描画を行うため
の感熱記録部5と、ヒートモードの描画がなされた版胴
1にインキおよび湿し水を供給するインキ・湿し水供給
部3と、印刷終了後に版胴1に残存するインキを除去す
るインキ洗浄部4と、版胴1に保持されたインキを用紙
に転写するための中間体として圧胴7に接触するブラン
ケット6とが設けられている。
【0136】なお、印刷ステーション14Y,14M,
14C,14Bの動作は上述した図2に示すオフセット
印刷装置と同一であるため、詳細な説明は省略する。第
3の実施形態においては、各印刷ステーション14Y,
14M,14C,14Bのインキ・湿し水供給部におい
て供給されるインキの色が、それぞれ、Y(イエロ
ー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)
である点が異なるものである。
【0137】次いで、第3の実施形態の動作について説
明する。まず、印刷ステーション14Y,14M,14
C,14Bにおいて版胴を光照射部で活性光の照射によ
って全面を親水性化したのち、感熱記録部により疎水性
発現温度において各色を表す画像をヒートモードで描画
する。そして、各印刷ステーション14Y,14M,1
4C,14Bのインキ・湿し水供給部からY,M,C,
Bそれぞれの色のインキを供給して、各印刷ステーショ
ン14Y,14M,14C,14Bの版胴1にインキを
保持する。その後、図5の矢印Cに示すように用紙を供
給して、圧胴7の周囲において用紙を搬送し、各印刷ス
テーション14Y,14M,14C,14Bのインキを
用紙に転写する。すなわち、印刷ステーション14Yに
おいてはYのインキが転写され、印刷ステーション14
MにおいてはMのインキが転写され、印刷ステーション
14CにおいてはCのインキが転写され、印刷ステーシ
ョン14BにおいてはBのインキが転写される。これに
より、用紙にはカラー画像が印刷されることとなる。
【0138】印刷終了後、各印刷ステーション14Y,
14M,14C,14Bのインキ洗浄部により版胴に残
存するインキを除去する。その後、版胴を上記と同じ条
件で活性光の照射を行うことにより、版胴はヒートモー
ドによる描画前の状態に戻る。
【0139】なお、上記第2および第3の実施形態にお
いては、4つの印刷ユニット11Y,11M,11C,
11Bあるいは4つの印刷ステーション14Y,14
M,14C,14Bを用いてカラー印刷を行っている
が、5つあるいはそれ以上の印刷ユニットまたは印刷ス
テーションを設けてカラー印刷を行うようにしてもよ
い。
【0140】なお、上記第1〜第3の実施形態において
は、版胴1を使用しているが、これに限定されるのもで
はなく、シート状の印刷用原板を使用してオフセット印
刷を行うものであっても、本発明を適用することができ
るのはもちろんである。
【0141】また、上記第1〜第3の実施形態において
は、光照射部2から時計回りにインキ洗浄部4、インキ
・湿し水供給部3および感熱記録部5を配置している
が、これに限定されるものではなく、任意の順序にて配
置することができる。
【0142】さらに、上記の各実施形態及び実施例は、
本発明がこれらの例に記載された熱応答型物質に限定さ
れるものではなく、前記した任意の光触媒能を有する熱
応答型物質を使用することができる。
【0143】
【発明の効果】本発明の光触媒能を有する熱応答型物質
とくに明細書本文中に記載の光触媒能を有する熱応答型
金属及び金属酸化物を画像形成層とした印刷用原板を活
性光の照射によってその表面を親水性として、その表面
に疎水性発現温度でヒートモードの描画を行って印刷版
を作成する印刷方法は、現像などの処理を必要とせず、
直接印刷版を作成することができ、かつ印刷終了後、印
刷版のインキを除去して印刷原板を再生して反復使用す
ることができる。また、原板を印刷機の版胴に装着し、
印刷機上で、親水性化、ヒートモード描画、インキ・湿
し水供給及び印刷後の原板再生を行う印刷装置を用いて
簡易で安価なオフセット印刷を行うことができる。この
方法及び装置は、高温親水性発現領域に加熱して親水性
とする方法や、描画温度を疎水性発現領域に調整しない
方法に比べて、画像領域と非画像領域との識別性が高
く、印刷品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる酸化チタン表面の温度・接触角
の関係を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるオフセット印刷
装置の構成を示す図である。
【図3】感熱記録部の詳細な構成を示す図である。
【図4】Aは感熱記録部の詳細な構成を示す図であり,
Bは有機化合物蒸気供給手段を設けた感熱記録部の構成
を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態によるオフセット印刷
装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態によるオフセット印刷
装置の構成を示す図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【符号の説明】
1 版胴 2 活性光照射部 3 インキ・湿し水供給部 4 インキ洗浄部 5 感熱記録部 6 ブランケット 7 圧胴 8 12,15 本体 11Y,11M,11C,11B 印刷ユニット 14Y,14M,14C,14B 印刷ステーション 18 感熱ヘッド 19 感熱ヘッド駆動部 20 編集・レイアウトW/S 21 赤外線レーザー光源 22 赤外線レーザー光源駆動部 S 画像信号
フロントページの続き (72)発明者 中村 隆 神奈川県足柄上郡開成町宮台798 富士写 真フイルム株式会社内 (72)発明者 神山 宏二 神奈川県足柄上郡開成町宮台798 富士写 真フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2C034 AA09 BA02 2H084 AA13 AA14 AA16 AA36 AA38 AA40 AE05 BB02 BB13 CC05 2H113 AA01 AA02 BA05 BB02 DA04 DA07 DA66 EA02 FA08 FA42 FA44 FA48 2H114 AA04 AA24 AA27 BA05 BA06 BA10 DA04 DA05 DA07 EA04 GA01 GA29 GA32 GA33

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光触媒能を有する印刷用原板の表面を活
    性光の照射によって親水性化し、次いで該原板に疎水性
    発現温度でヒーモードの描画を施すことによって疎水性
    の画像領域を形成させ、該画像領域を印刷用インキに接
    触させることによって画像領域がインキを受け入れた印
    刷面を形成させて印刷を行うことを特徴とするオフセッ
    ト印刷方法。
  2. 【請求項2】 疎水性発現温度が50〜250℃である
    ことを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷方
    法。
  3. 【請求項3】 印刷に使用した印刷版面上に残存するイ
    ンキを洗浄除去したのち、その印刷版を印刷用原板とし
    て請求項1又は2に記載の操作を反復して印刷を行うこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
  4. 【請求項4】 ヒートモードの描画が、感熱転写記録用
    ヘッド及び光・熱変換型輻射線から選ばれる描画手段の
    一つによって行われることを特徴とする請求項1〜3の
    いずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  5. 【請求項5】 親水性化した印刷用原板に施すヒーモー
    ドの描画が、有機化合物の存在下で行うことを特徴とす
    る請求項1〜4のいずれか1項に記載のオフセット印刷
    方法。
  6. 【請求項6】 ヒーモードの描画において存在させる有
    機化合物が、温度400℃において少なくとも1mmH
    g以上の蒸気圧を有し、かつ高温親水性発現温度におい
    て安定な有機化合物であることを特徴とする請求項5に
    記載のオフセット印刷方法。
  7. 【請求項7】 ヒーモードの描画において存在させる有
    機化合物が、沸点が30〜400℃の範囲にある有機化
    合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載のオ
    フセット印刷方法。
  8. 【請求項8】 印刷用原板の表面が、周期律表の第3〜
    6周期に属していて、かつ0及びVII A族(ハロゲン元
    素)族以外の元素から選ばれる金属の酸化物の少なくと
    も一つによって形成されていることを特徴とする請求項
    1〜7のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  9. 【請求項9】 印刷用原板の表面が、TiO2 、RTi
    3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x
    3-x x 10(Aは水素原子又はアルカリ金属原子、B
    はアルカリ土類金属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、
    Dは周期律表の5A族元素に属する金属原子、Eは同じ
    く4A族元素に属する金属原子、xは0〜2の任意の数
    値を表す)、SnO2 ,Bi2 3 ,ZnO及びFe2
    3 から選ばれる金属酸化物の少なくとも一つによって
    構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれ
    か1項に記載のオフセット印刷方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9項のいずれか1項に記載
    の方法に使用するオフセット印刷装置であって、 光触媒能を有する印刷用原板を装着した原板装着部と、 該原板を活性光の照射によってその表面を親水性化する
    照射手段と、 該原板に疎水性発現温度でヒーモードの描画を施して疎
    水性の画像領域を形成させる描画手段と、 該画像領域に印刷用インキを供給して画像領域がインキ
    を受け入れた印刷面を形成させるインキ供給手段と,該
    印刷面を印刷される面と接触させて印刷を行う印刷手段
    と、を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
  11. 【請求項11】 印刷終了後、印刷版に残存するインキ
    を除去する手段を有することを特徴とする請求項10に
    記載のオフセット印刷装置。
  12. 【請求項12】 少なくとも露光手段、描画手段、イン
    キ供給手段およびインキ除去手段が、版胴の周囲に配設
    されてなることを特徴とする請求項10又は11に記載
    のオフセット印刷装置。
  13. 【請求項13】 印刷用原板が版胴の一部を構成してお
    り、少なくとも露光手段、描画手段、インキ供給手段お
    よびインキ除去手段が、前記版胴の周囲に配設されてな
    ることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に
    記載のオフセット印刷装置。
  14. 【請求項14】 印刷用原板に疎水性発現温度でヒー
    モードの描画を施して疎水性の画像領域を形成させる描
    画手段が、該原板の表面に有機化合物の蒸気が接するよ
    うに有機化合物蒸気供給手段を配していることを特徴と
    する請求項10〜13のいずれか1項に記載のオフセッ
    ト印刷装置。
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