JP2001117218A - 平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷方法

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JP2001117218A
JP2001117218A JP29956999A JP29956999A JP2001117218A JP 2001117218 A JP2001117218 A JP 2001117218A JP 29956999 A JP29956999 A JP 29956999A JP 29956999 A JP29956999 A JP 29956999A JP 2001117218 A JP2001117218 A JP 2001117218A
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Takao Nakayama
隆雄 中山
Nobufumi Mori
信文 森
Takashi Nakamura
隆 中村
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ性現像液を必要とせず、簡易に製版
できて、かつ印刷面の画像部と非画像部の識別性が更に
改良された実用レベルの印刷画質及び耐刷性を有し、さ
らに平版印刷版を繰り返し再生して使用しても良好な画
質を提供することのできる印刷方法を提供すること。 【解決手段】金属酸化物層上にフルオロアルキルシリコ
ン化合物を結合させた層を設けた感光性平版印刷版を像
様露光した後、露光部分に水性インキまたは親油性イン
キを接触させることで被印刷物への転写可能なインキ画
像を得ることを特徴とする平版印刷方法。平版印刷後、
版面に残存するインキを洗浄除去した後、さらに加熱も
しくは光照射によって残存したフルオロアルキルシリコ
ン化合物層を除去した後、前記方法を反復することを特
徴とする平版印刷方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般軽印刷分野、
とくに平版印刷、とりわけ簡易に印刷版を製作できる新
規な平版印刷方法に関するものである。その中でもとく
に感光性平版印刷版の反復再生使用を可能にする平版印
刷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】平版印刷法は、数多くの印刷方法の中で
も印刷版の製作工程が簡単であるために、とくに一般的
に用いられてきており、現在の主要な印刷手段となって
いる。この印刷技術は、油と水の非混和性に基づいてお
り、画像領域には油性材料つまりインキが、非画像領域
には湿し水が選択的に保持される。したがって印刷され
る面と直接あるいはブランケットと称する中間体を介し
て間接的に接触させると画像部のインキが転写されて印
刷が行われる。
【0003】平版印刷の主な方法は、アルミニウム基板
を支持体としてその上にジアゾ感光層を塗設したPS板
である。PS板においては、支持体であるアルミニウム
基板の表面に砂目立て、陽極酸化、その他の諸処理を施
して画像領域のインキ受容能と非画像部のインキ反発性
を強め、耐刷力を向上させ、印刷面の精細化を図るなど
を行い、その表面に印刷用画像を形成させる。したがっ
て平版印刷は、簡易性に加えて耐刷力や印刷面の高精細
性などの特性も備わってきている。
【0004】高精細化によって平版印刷法の利用が拡が
って一般印刷分野に普及する一方において、平版印刷法
の一層の簡易化が要望され、数多くの簡易印刷方法が提
案されている。
【0005】上記の背景から、画像露光を行ったのちの
アルカリ現像液による現像工程を省略した簡易印刷版の
製作方法の開発が行われてきた。現像工程を省略できる
ことから無処理刷版とも呼ばれるこの簡易印刷版の技術
分野では、これまでに主として像様露光による画像記
録面上の照射部の熱破壊による像形成、像様露光によ
る照射部の疎水性化による画像形成、同じく照射部の
疎水性化であるが、光モード硬化によるもの、ジアゾ
化合物の光分解による表面性質の変化、画像部のヒー
トモード溶融熱転写などの諸原理に基づく手段が提案さ
れている。
【0006】上記のように、製版に際して現像液を必要
としない簡易な印刷方法が数多く考案されているが、疎
水性領域と親水性領域との差異が不十分であること、し
たがって印刷画像の画質が劣ること、解像力が劣り、鮮
鋭度の優れた印刷画面が得にくいこと、画像面の機械的
強度が不十分で傷がつきやすいこと、そのために保護膜
を設けるなどによって却って簡易性が損なわれること、
長時間の印刷に耐える耐久性が不十分なことなどのいず
れか一つ以上の欠点を伴っていて、単にアルカリ現像工
程を無くすだけでは実用性は伴わないことを示してい
る。印刷上必要とされる諸特性を具備し、かつ簡易に印
刷版を製作できる印刷版作成方法への強い要望は、上記
の数々の改良にも係わらず、いまだに十分に満たされて
いない。
【0007】上記した無処理型印刷版の技術開発の一つ
として、ジルコニアセラミックが光照射によって親水性
化することを利用した印刷版作製方法が特開平9−16
9098号で開示されている。しかし、ジルコニアの光
感度は不十分であり、かつ疎水性から親水性への光変換
効果が不十分のため画像部と非画像部の識別性が不足し
ており、無処理による簡易化の課題を解決するにいたっ
ていない。
【0008】また、現像液を必要としない簡易性の追求
とともに、コストの低減と廃棄物の軽減の2面から、使
用済みの平版印刷版を簡単に再生して再使用できる再生
技術の開発も要望されている。平版印刷版の再生使用に
は、その再生操作の簡易性が実用価値を左右するが、再
生操作の簡易化は難度の高い課題であり、従来殆ど検討
されきておらず、わずかに上記の特開平9−16909
8号でジルコニアセラミックという特殊な平版印刷版用
材料について開示されているに過ぎない。本出願人は、
上記事情に鑑みてアルカリ性現像液を必要とせず、簡易
に製版できて、かつ印刷面の画像部と非画像部の識別性
が改良された実用レベルの印刷画質及び耐刷性を有し、
さらに平版印刷版を繰り返し再生して使用することので
きる印刷方法及びそれを適用した装置を提案した。しか
しながら、上記提案は、以下の点で更に改善の余地を残
している。有機化合物によって平版印刷版の表面を疎水
性化することにより、画像部と非画像部との識別性が向
上したが、該識別性を更に高めるために吸着性のつよい
有機化合物を用いると、親水性領域となる照射部に有機
化合物が残ってしまい湿し水を完全に受け入れていない
場合が起こることがあり、画像品質が常に安定性して得
られない場合が生じたり、再生して平版印刷版を用いる
場合にも有機化合物の除去が完全でなくなり前記と同様
に品質が低下するという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルカリ性
現像液を必要とせず、簡易に製版できて、かつ印刷面の
画像部と非画像部の識別性が更に改良された実用レベル
の印刷画質及び耐刷性を有し、さらに平版印刷版を繰り
返し再生して使用しても良好な画質を提供することので
きる印刷方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者たちは、上記の
目的を達成するために、鋭意検討の結果、感光性平版印
刷版を構成する金属酸化物の表面は、フルオロアルキル
シリコン化合物の作用によって表面を撥水化かつ撥油化
できることを認め、この性質を版面上への印刷用画像の
形成に利用した印刷用画像形成方式に応用できることを
見いだした。さらに、本発明者たちは、上記フルオロア
ルキルシリコン化合物によって撥水化かつ撥油化された
感光性平版印刷版表面を像様露光すると露光部分が効果
的に親水化または親油化することも見いだした。すなわ
ち、本発明は、下記の通りである。
【0011】1 金属酸化物層上にフルオロアルキルシ
リコン化合物を結合させることによりフルオロアルキル
シリコン化合物層を設けた感光性平版印刷版を像様露光
した後、露光部分に水性インキを接触させることで被印
刷物への転写可能なインキ画像を得ることを特徴とする
平版印刷方法。 2 金属酸化物層上にフルオロアルキルシリコン化合物
を結合させた層を設けた感光性平版印刷版を像様露光し
た後、露光部分に親油性インキを接触させることで被印
刷物への転写可能なインキ画像を得ることを特徴とする
平版印刷方法。 3 像様露光後、水洗することで露光部分を更に親油化
することを特徴とする前記1に記載の印刷方法。 4 平版印刷後、版面に残存するインキを洗浄除去した
後、さらに加熱もしくは光照射によって残存したフルオ
ロアルキルシリコン化合物層を除去した後、前記1に記
載の方法を反復することを特徴とする平版印刷方法。 5 平版印刷後、版面に残存するインキを洗浄除去した
後、さらに加熱もしくは光照射によって残存したフルオ
ロアルキルシリコン化合物層を除去した後、前記2に記
載の方法を反復することを特徴とする平版印刷方法。ま
た、本発明は以下の態様が好ましい。
【0012】1 上記フルオロアルキルシリコン化合物
の気体を含有する雰囲気への暴露によって、あるいは液
状フルオロアルキルシリコン化合物又はフルオロアルキ
ルシリコン化合物含有液体の塗布、噴霧又は浸漬によっ
て、感光性平版印刷版を反応性有機化合物と接触させる
ことを特徴とする平版印刷方法。
【0013】2 感光性平版印刷版の表面が、周期律表
の第3〜6周期に属していて、かつ0及びVII A族(ハ
ロゲン元素)族以外の元素から選ばれる金属の酸化物か
らなる群の少なくとも一つによって構成されていること
を特徴とする平版印刷方法。 3 感光性平版印刷版の表面が、TiO2 、RTiO3(R
はアルカリ土類金属原子)、AB2-x Cx D3-x Ex O10(A
は水素原子又はアルカリ金属原子、Bはアルカリ土類金
属原子又は鉛原子、Cは希土類原子、Dは周期律表の5
A族元素に属する金属原子、Eは同じく4A族元素に属
する金属原子、xは0〜2の任意の数値を表す)、Sn
2 ,GeO2 ,SiO2 ,Bi23 ,Al23 ,Z
nO及びFeOx (x=1〜1.5)から選ばれる金属
酸化物の少なくとも一つによって構成されていることを
特徴とする平版印刷方法。
【0014】4 感光性平版印刷版を印刷機に装着され
た状態で、本発明の方法を行うことを特徴とする平版印
刷方法。
【0015】5 フルオロアルキルシリコン化合物が、
下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴と
する平版印刷方法。 GnJM4-n (1) (式中、Gは少なくとも1個のフルオロアルキル基を示
し、JはSiを示し、Mはハロゲン原子、水酸基または
アルコキシ基を示し、nは1〜3の整数を示す。)本発
明に使用される感光性平版印刷版は、「金属酸化物層上
にフルオロアルキルシリコン化合物を結合させた層を設
けたものに像様露光することで露光部分を親水化または
親油化させる特性を有する前記金属酸化物」(以下、
「光触媒能を有する金属酸化物」ともいう。)からなる
層をその表面に担持している。像様露光とは、金属酸化
物を介してフルオロアルキルシリコン化合物を結合させ
た層(以下、「フルオロアルキルシリコン化合物層」と
もいう)の露光部分を親水化または親油化させる特定波
長の光乃至それを含む光を照射する意味である。光触媒
能を有する金属酸化物は、たとえば酸化チタンが挙げら
れ、上述のようにその物質の表面に光照射するとその表
面が親水性または親油性に変化するという光物性変化を
行う物質である。また、このようなこの光物性変化を引
き起こす特定波長の光を「活性光」と呼んでいる。
【0016】本発明は、光触媒能を有する金属酸化物
は、フルオロアルキルシリコン化合物と結合して形成さ
れたフルオロアルキルシリコン化合物層が撥水性かつ撥
油性(以下、「撥水撥油性」ともいう)となるというさ
らなる発見に基づいて行われたものであり、その要諦
は、フルオロアルキルシリコン化合物と結合して撥水化
かつ撥油化(以下、「撥水撥油化」ともいう)した表面
に像様露光を行って露光部分、即ち、照射部分を親水化
または親油化し、その露光部分を水性インクまたは親油
性インク受用性として印刷版とすることである。
【0017】その印刷方法は、第1段階としてまず上記
金属酸化物の表面にフルオロアルキルシリコン化合物を
気相で曝すか、又は液体又は溶液状態で浸漬や塗布など
を行ってその表面にフルオロアルキルシリコン化合物を
結合させた層を設け、第2段階として光触媒能を有する
金属酸化物を像様露光して、その表面に露光部分に対応
する親水性領域または親油性領域と未露光部分に対応す
る撥水撥油性領域の像様の分布を形成させ、次いで第3
段階として親水性領域または親油性領域に印刷用インキ
を保持させて平版印刷を行う方法である。さらに、印刷
の終了後に使用済みの印刷版のインキを洗浄除去した
後、必要により更に加熱によるかもしくは光照射及び更
に水洗によって残存したフルオロアルキルシリコン化合
物層を除去した後、その感光性平版印刷版は、上記した
工程を繰り返して反復して印刷に用いることができる。
【0018】光触媒能を有する金属酸化物の表面は、光
照射によって、表面を撥水撥油性から親水性または親油
性にすると、その表面は、室温下においても履歴効果に
よって実用的に十分な時間その親水性または親油性が維
持される。したがって、フルオロアルキルシリコン化合
物との接触、結合によって撥水撥油化を十分に促進させ
た表面に効果的な親水性領域または親油性領域が実用的
な時間にわたって維持される。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。 〔感光性平版印刷版材料〕はじめに、本発明に用いるこ
とのできる感光性平版印刷版材料について説明する。本
発明で用いる光照射によって親水性または親油性となる
「光触媒能を有する金属酸化物」は、セラミックや半導
体の中にも見られる。光触媒能を有するセラミックは、
複合金属酸化物からなっており、光触媒能を有する半導
体の多くは、基底順位と伝導体が近い真正半導体と不純
物準位に依存する酸化バナジウムや酸化銅などの仮性半
導体との両方に見られる。これらセラミック及び半導体
は、本発明が利用する光触媒能の上では、他の光触媒能
を有する金属酸化物と同様であるので、それらを「光触
媒能を有する金属酸化物」に含めて以下に説明する。
【0020】光触媒能を有する好ましい金属酸化物は、
周期律表の第3〜6周期に属していて、かつ0及びVII
A族(ハロゲン元素)族以外の元素から選ばれる金属の
酸化物からなる群の少なくとも一つによって構成されて
いる。その中でもとくに、TiO2 、RTiO3 (Rはアル
カリ土類金属原子)、AB2-xCx D3-x Ex O10(Aは水素
原子又はアルカリ金属原子、Bはアルカリ土類金属原子
又は鉛原子、Cは希土類原子、Dは周期律表の5A族元
素に属する金属原子、Eは同じく4A族元素に属する金
属原子、xは0〜2の任意の数値を表す)、SnO2
GeO2 ,SiO2 ,Bi23 ,Al23 ,ZnO及
びFeOx(x=1/0〜1.5)から選ばれる金属酸
化物が好ましい。
【0021】これらの金属酸化物は、いろいろの形態の
金属酸化物に見られ、単一の金属酸化物、複合酸化物の
いずれの場合もあり、また後者の場合は、固溶体、混
晶、多結晶体、非晶質固溶体、金属酸化物微結晶の混合
物のいずれからもこの特性を有するものが認められる。
【0022】なお、本発明に用いることのできる光触媒
能を有する金属酸化物は、印刷版として使用する際に湿
し水に対して過度に溶解してはならないので、水に対す
る溶解度は、水100ミリリットルについて10mg以
下、好ましくは5mg以下、より好ましくは1mg以下
である。
【0023】光触媒能を有する個々の金属酸化物につい
て説明する。金属酸化物の中でも、酸化チタンと酸化亜
鉛は好ましく、これらについてまず説明する。これら
は、いずれも本発明の感光性平版印刷版材料として利用
できる。特に酸化チタンが感度(つまり表面の光物性変
化の敏感性)などの点で好ましい。酸化チタンは、イル
メナイトやチタンスラグの硫酸加熱焼成、あるいは加熱
塩素化後酸素酸化など既知の任意の方法で作られたもの
を使用できる。あるいは後述するように金属チタンを用
いて印刷版製作段階で真空蒸着によって酸化物皮膜とす
る方法も用いることができる。
【0024】酸化チタン又は酸化亜鉛を含有する層を表
面に設け感光性平版印刷版とするには、たとえば、酸
化チタン微結晶又は酸化亜鉛微結晶の分散物を平版印刷
版上に塗設する方法、塗設したのち焼成してバインダ
ーを減量或いは除去する方法、平版印刷版上に蒸着、
スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの
方法で酸化チタン(又は酸化亜鉛)膜を設ける方法、
例えばチタニウムブトキシドのようなチタン有機化合物
を平版印刷版上に塗布したのち、焼成酸化を施して酸化
チタン層とする方法など、既知の任意の方法を用いるこ
とができる。本発明においては、真空蒸着又はスパッタ
リングによる酸化チタン層が特に好ましい。
【0025】上記又はの酸化チタン微結晶を塗設す
る方法には、具体的には無定形酸化チタン微結晶分散物
を塗布したのち、焼成してアナターゼまたはルチル型の
結晶酸化チタン層とする方法、酸化チタンと酸化シリコ
ンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、酸
化チタンとオルガノシロキサンなどとの混合物を塗布し
てシロキサン結合を介して支持体と結合した酸化チタン
層を得る方法、酸化物層の中に酸化物と共存するできる
ポリマーバインダーに分散して塗布したのち、焼成して
有機成分を除去する方法などがある。酸化物微粒子のバ
インダ−には、酸化チタン微粒子に対して分散性を有
し、かつ比較的低温で焼成除去が可能なポリマーを用い
ることができる。好ましいバインダーの例としては、ポ
リエチレンなどのポリアルキレン、ポリブタジエン、ポ
リアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポ
リ酢酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコ
ール、部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリスチレンな
どの疎水性バインダーが好ましく、それらの樹脂を混合
して使用してもよい。
【0026】上記の酸化チタンの真空蒸着を行うに
は、通常、真空蒸着装置内の蒸着用加熱の熱源に金属チ
タンを置き、真空度1.33×(10-3〜10-6)P
aで全ガス圧1.33×(1〜10-3)Pa、酸素分
圧比が30〜90%になるようにしながら、チタン金属
を蒸発させると、蒸着面には酸化チタンの蒸着薄膜が形
成される。また、スパッタリングによる場合は、例えば
スパッタ装置内にチタン金属ターゲットをセットしてA
r/O2 比が60/40(モル比)となるようにガス圧
を6.65×10-1Paに調整したのち、RFパワー
200Wを投入してスパッタリングを行って酸化チタン
薄膜を基板上に形成させる。
【0027】一方、本発明に酸化亜鉛層を使用する場
合、その酸化亜鉛層は既知の任意の方法で作ることがで
きる。とくに金属亜鉛板の表面を電解酸化して酸化皮膜
を形成させる方法と、真空蒸着、スパッタリング、イオ
ンプレーティング,CVDなどによって酸化亜鉛皮膜を
形成させる方法が好ましい。酸化亜鉛の蒸着膜は、上記
の酸化チタンの蒸着と同様に金属亜鉛を酸素ガス存在下
で蒸着して酸化膜を形成させる方法や、酸素のない状態
で亜鉛金属膜を形成させたのち、空気中で温度を約70
0℃にあげて酸化させる方法を用いることができる。そ
のほか、蓚酸亜鉛の塗布層やセレン化亜鉛の薄層を酸化
性気流中で加熱しても得られる。
【0028】蒸着膜の厚みは、酸化チタン層、酸化亜鉛
層いずれの場合も1〜100000オングストロ−ムが
よく、好ましくは10〜10000オングストロ−ムで
ある。さらに好ましくは3000オングストロ−ム以下
として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作
用を十分に発現させるには厚みが50オングストローム
以上あることが好都合である。
【0029】酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用
できるが、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ま
しい。アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得
る過程の焼成条件を選ぶことによって得られることはよ
く知られている。その場合に無定形の酸化チタンやルチ
ル型酸化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶
が40%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の
理由から好ましい。酸化チタンあるいは酸化亜鉛を主成
分とする層における酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積
率は、それぞれ30〜100%であり、好ましくは50
%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸
化物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。
しかしながら、表面の撥水撥油性/親水性変化特性また
は撥水撥油性/親油性変化特性は、酸化亜鉛を電子写真
感光層に用いるときのような著しい純度による影響はな
いので、100%に近い純度のもの(例えば98%)を
さらに高純度化する必要はない。それは、本発明に利用
される物性は、導電性とは関係ない膜表面の撥水撥油性
/親水性変化特性または撥水撥油性/親油性変化特性、
すなわち界面物性の変化特性であることからも理解でき
ることである。
【0030】次に、本発明に用いることができる別の化
合物である一般式RTiO3で示したチタン酸金属塩に
ついて記す。一般式RTiO3 において、Rはマグネシ
ウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリ
ウムなどの周期律表のアルカリ土類元素に属する金属原
子であり、とくにストロンチウムとバリウムが好まし
い。また、2種以上のアルカリ土類金属原子をその合計
が上記の式に化学量論的に整合する限り共存することが
できる。
【0031】次に、一般式AB2-x Cx D3-x Ex O10で表さ
れる化合物について説明する。この一般式において、A
は水素原子及びナトリウム、カリウム、ルビジウム、セ
シウム、リチウムなどのアルカリ金属原子から選ばれる
1価原子で、その合計が上記の式に化学量論的に整合す
る限りそれらの2種以上を共存してもよい。Bは、上記
のRと同義のアルカリ土類金属原子又は鉛原子であり、
同様に化学量論的に整合する限り2種以上の原子が共存
してもよい。Cは希土類原子であり、好ましくは、スカ
ンジウム及びイットリウム並びにランタン、セリウム、
プラセオジウム、ネオジウム、ホルミウム、ユウロピウ
ム、ガドリニウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビ
ウム、ルテチウムなどのランタノイド系元素に属する原
子であり、また、その合計が上記の式に化学量論的に整
合する限りそれらの2種以上を共存してもよい。Dは周
期律表の5A族元素から選ばれた一種以上で、バナジウ
ム、ニオブ、タンタルが挙げられる。また、化学量論関
係を満たす限り、2種以上の5A族の金属原子が共存し
てもよい。Eは同じくチタン、ジルコニウム、ハフニウ
ムなどの4A族元素に属する金属原子であり、また、2
種以上の4A族の金属原子が共存してもよい。xは0〜
2の任意の数値を表す。
【0032】RTiO3 、一般式AB2-x Cx D3-x Ex O10で表
される上記化合物、SnO2,Bi23,FeOx (x
=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合物のいずれの
薄膜形成にも、酸化チタン及び酸化亜鉛を設ける前記の
方法を用いることがでる。すなわち、金属酸化物の微
粒子の分散物を印刷版の原板上に塗設する方法、塗設
したのち焼成してバインダーを減量或いは除去する方
法、印刷版の原板上に上記酸化物を各種の真空薄膜法
で膜形成する方法、例えば金属元素のアルコレートの
ような有機化合物を原板上に塗布したのち、加水分解さ
せ、さらに焼成酸化を施して適当な厚みの金属薄膜とす
る方法、上記金属元素の塩酸塩、硝酸塩などの水溶液
を加熱スプレーする方法など、既知の任意の方法を用い
ることができる。
【0033】例えば、上記、の塗設方法によってチ
タン酸バリウム微粒子を塗設するには、チタン酸バリウ
ムとシリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させ
る方法、チタン酸バリウムとオルガノポリシロキサンま
たはそのモノマ−との混合物を塗布する方法などがあ
る。また、酸化チタンの項で述べたように、酸化物層の
中に酸化物と共存できるポリマーバインダーに分散して
塗布した後、焼成して酸化物層とすることもできる。酸
化物微粒子のバインダ−として好ましいポリマーの例
は、酸化チタン層の項で述べたものと同じである。この
方法によって、チタン酸バリウム以外にチタン酸マグネ
シウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム
又はそれらの分子間化合物、混合物も同様に薄膜形成可
能である。
【0034】同様にして上記、の塗設方法によって
CsLa2NbTi210微粒子を塗設することも可能で
ある。CsLa2NbTi210微粒子は、その化学量論
に対応するCs2CO3, La23, NbO5, TiO2
を乳鉢で微粉砕して、白金るつぼに入れ、130℃で5
時間焼成し、それを冷却してから乳鉢に入れて数ミクロ
ン以下の微粒子に粉砕する。このCsLa2NbTi2
10微粒子を前記のチタン酸バリウムと同様にバインダー
の中に分散し、塗布して薄膜を形成した。この方法は、
CsLa2NbTi210型微粒子に限らず、HCa1.5
La0.5Nb2.5Ti0.510,HLa2NbTi210
ど前述のAB2-x Cx D3-x Ex O10(0≦x≦2)に適用さ
れる。
【0035】上記の真空薄膜形成法を用いた光触媒能
を有する金属酸化物層の形成方法としては、一般的には
スパッタリング法あるいは真空薄膜形成法が用いられ
る。スパッタリング法では、あらかじめ単一もしくは複
合型の酸化物ターゲットを準備する。例えば、チタン酸
バリウムターゲットを用いて蒸着膜用の支持体の温度を
450℃以上に保ち、アルゴン/酸素混合雰囲気中でR
Fスパッタリングを行うことによりチタン酸バリウム結
晶薄膜が得られる。結晶性の制御には必要に応じてポス
トアニーリングを300〜900℃で行えばよい。本方
法は前述のRTiO3 (Rはアルカリ土類金属原子)を
はじめ他の前記した金属酸化物にも、結晶制御に最適な
基板温度を調整すれば同様の考え方で薄膜形成が可能で
ある。例えば酸化錫薄膜を設ける場合には基板温度12
0℃、アルゴン/酸素比50/50の混合雰囲気中でR
Fスパッタリングを行うことにより酸化錫結晶の本目的
に沿う薄膜が得られる。
【0036】上記の金属アルコレートを用いる方法
も、バインダーを使用しないで目的の薄膜形成が可能な
方法である。チタン酸バリウムの薄膜を形成するにはバ
リウムエトキシドとチタニウムブトキシドの混合アルコ
ール溶液を表面にSiO2 を有するシリコン基板上に塗
布し、その表面を加水分解したのち、200℃以上に加
熱してチタン酸バリウムの薄膜を形成することが可能で
ある。本方式の方法も前述した他のRTiO3 (Rはア
ルカリ土類金属原子)、AB2-x Cx D3-x Ex O10(A,
B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表す)、
SnO2 ,SiO2,Bi23 及びFeOx(x=1〜
1.5)で示される酸化鉄系の化合物の薄膜形成に適用
することができる。
【0037】上記によって金属酸化物薄膜を形成させ
る方法も、バインダーを含まない系の薄膜の形成が可能
である。SnO2 の薄膜を形成するにはSnCl4 の塩
酸水溶液を200℃以上に加熱した石英又は結晶性ガラ
ス表面に吹きつけて薄膜を生成することができる。本方
式も、SnO2 薄膜のほか,前述したRTiO3 (Rはア
ルカリ土類金属原子)、AB2-x Cx D3-x Ex O10(A,
B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表す)、
Bi23 及びFeOx (x=1〜1.5)で示される
酸化鉄系の化合物のいずれの薄膜形成にも適用すること
ができる。
【0038】金属酸化物薄膜の厚みは、上記のいずれの
場合も1〜100000オングストロ−ムがよく、好ま
しくは10〜10000オングストロ−ムである。さら
に好ましくは3000オングストロ−ム以下として光干
渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を十分に
発現させるには厚みが50オングストローム以上あるこ
とが好都合である。
【0039】バインダーを使用した場合の上記光触媒能
を有する金属酸化物の薄層において、金属酸化物の体積
率は50〜100%であり、好ましくは90%以上を酸
化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸化物の連続
層つまり実質的に100%であるのがよい。
【0040】そのほか、ZnO,TiO2 ,SnO2
Al23 ,FeOx (x=1〜1.5)で示される酸
化鉄系の化合物は、それぞれの金属板の表面を陽極酸化
して得ることもできる。とくにZnO,TiO2 ,Al
23 は、陽極酸化によって容易に光触媒能を有する金
属酸化物の皮膜として支持体付きの形で得られる。陽極
酸化の方法は、たとえば、特開平6−35174号公報
の3〜5頁に詳記されている方法、その中に引用されて
いる方法、特開昭52−37104号公報に記載の方法
及び本発明の感光性平版印刷版用のアルミニウム支持体
の陽極酸化方法として後述する方法など、公知の適当な
方法や、それに準じた方法で行われる。陽極酸化によっ
て感光性平版印刷版を作る場合には、その酸化皮膜の厚
みは、上記した厚みでもよいが、さらに厚くてもよく、
2.0ミクロン以下、好ましくは1.0ミクロン以下で
用いられる。
【0041】以上で本発明に用いる光触媒能を有する金
属酸化物についての説明を終わる。
【0042】〔感光性平版印刷版の形態〕次に本発明に
使用する版刷面が形成される感光性平版印刷版の形態に
ついて述べる。本発明に係わる感光性平版印刷版は、い
ろいろの形態と材料を用いることができる。例えば、光
触媒能を有する金属酸化物の薄層を印刷機の版胴の基体
表面に蒸着、浸漬あるいは塗布するなど上記した方法で
直接設けたもの、光触媒能を有する金属酸化物を担持す
る支持体や、あるいは支持体を持たない光触媒能を有す
る金属酸化物の薄板を版胴の基体に巻き付けて印刷版と
するものなどを用いることができる。また、勿論版胴上
で製版する上記形態以外に、一般的に行われているよう
に、製版を行った印刷版を輪転式あるいは平台式印刷機
に装着する形態を採ってもよい。
【0043】光触媒能を有する金属酸化物が支持体上に
設けられる場合、使用される支持体は、寸度的にも安定
な板状物であり、アルミニウム板、SUS鋼板、ニッケ
ル板、銅板などの金属板が好ましく、特に可撓性(フレ
キシブル)の金属板を用いることが好ましい。また、ポ
リエステル類やセルローズエステル類などのフレキシブ
ルなプラスチック支持体も用いることが出来る。防水加
工紙、ポリエチレン積層紙、含浸紙などの支持体上に酸
化物層を設けてもよく、それを印刷版として使用しても
よい。
【0044】具体的には、紙、プラスチックシート(例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等のシ
ート)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミ
ニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラスチックフィ
ルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、
プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セ
ルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ
リビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネー
ト、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィ
ルム等が挙げられる。
【0045】好ましい支持体は、ポリエステルフィル
ム、ポリイミドフィルム、アルミニウム、又は印刷版上
で腐食しにくいSUS板であり、その中でも寸法安定性
がよく、比較的安価であるアルミニウム板と、製版工程
における加熱操作に対して安定性の高いポリイミドフィ
ルムは特に好ましい。
【0046】好適なポリイミドフィルムは、ピロメリッ
ト酸無水物とm−フェニレンジアミンを重合させたの
ち、環状イミド化したポリイミド樹脂フィルムであり、
このフィルムは市販されている(例えば、東レ・デュポ
ン社製の「カプトン」を挙げることができる)。
【0047】好適なアルミニウム板は、純アルミニウム
板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含
む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしく
は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニ
ウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガ
ン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッ
ケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高
々10重量%以下である。本発明において特に好適なア
ルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋な
アルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅か
に異元素を含有するものでもよい。このように本発明に
適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるも
のではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板
を適宜に利用することができる。本発明で用いられる金
属支持体の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ま
しくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm
〜0.3mmであり、プラスチックや加工紙などその他の
支持体の厚みはおよそ0.1mm〜2.0mm程度、好まし
くは0.2mm〜1.0mmである。
【0048】アルミニウム支持体を用いる場合は、表面
を粗面化して用いることが好ましい。その場合、所望に
より、粗面化に先立って表面の圧延油を除去するため
の、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶
液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表
面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例え
ば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解
粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方
法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨
法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの
公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な
粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または
直流により行うなど公知の方法を利用することができ
る。また、粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じ
てアルカリエッチング処理および中和処理された後、所
望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸
化処理が施される。陽極酸化の電解質の濃度は電解質の
種類によって適宜決められる。
【0049】陽極酸化の処理条件は、用いる電解質によ
り種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電
解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、
電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜
の量が1.0g/m2より少ないと、耐刷性が不十分であっ
たり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印
刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」
が生じ易くなる。
【0050】以上で本発明の印刷方法に使用する光触媒
能を有する金属酸化物を使用した感光性平版印刷版の構
成について説明したので、次に光触媒能を有する金属酸
化物とフルオロアルキルシリコン化合物との結合形成に
よる撥水撥油化について説明する。
【0051】〔全面撥水撥油化〕本発明のフルオロアル
キルシリコン化合物は、感光性平版印刷版の金属酸化物
層と接触するときに金属酸化物表面の水酸基と反応して
結合し、酸素を介して金属酸化物表面に結合し、金属酸
化物層上にフルオロアルキルシリコン化合物残基により
フルオロアルキルシリコン化合物層が形成される。そし
て、フルオロアルキルシリコン化合物層が設けられた金
属酸化物層を像様露光すると露光部分の上記結合乃至フ
ルオロアルキルシリコン化合物残基が光触媒能により分
解されることにより、その露光部分のフルオロアルキル
シリコン化合物層が除去され該露光部分が親水化または
親油化される。
【0052】本発明に使用されるフルオロアルキルシリ
コン化合物としては、上記機能を有するものであれば、
特に制限されるべきものではないが、カップリング剤と
して知られているものを用いることができる。フルオロ
アルキルシリコン化合物としては、好ましくは次ぎの一
般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」
ともいう)が例示される。 GnJM4-n (1) (式中、Gは少なくとも1個のフルオロアルキル基を示
し、JはSiを示し、Mはハロゲン原子、水酸基または
アルコキシ基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【0053】化合物(1)は、上述のように感光性平版
印刷版の金属酸化物層と接触するときにMが空気中の水
により加水分解して水酸化されると共に金属酸化物表面
の水酸基と脱水反応して酸素を介して金属酸化物表面に
結合し、金属酸化物層上にフルオロアルキル基Gによる
フルオロアルキルシリコン化合物層が形成される。そし
て、フルオロアルキルシリコン化合物層が設けられた金
属酸化物層を像様露光すると露光部分のフルオロアルキ
ルシリコン化合物と金属酸化物との結合(即ち、金属酸
化物の金属原子−酸素−Si原子という結合)における
酸素−Si間の結合やあるいはGnJに含まれる結合が
切断されることにより、フルオロアルキルシリコン化合
物のGnJが脱離乃至分解除去され、該露光部分が親水
化または親油化される。
【0054】フルオロアルキル基Gは、アルキル基に少
なくとも一個以上のフッ素原子が置換されたもの意味
し、フルオロアルキルシリコン化合物に上記機能を付与
し得、かつフルオロアルキルシリコン化合物層形成の主
体となる機能を担え得るものであれば特に制限はない。
具体的にはフルオロアルキル基Gとしては、好ましくは
炭素数1〜20の、更に好ましくは炭素数3〜10のフ
ルオロアルキル基が挙げられる。フルオロアルキル基に
おけるフッ素原子の置換数は、上記フルオロアルキルシ
リコン化合物層が形成可能であるように選択されるが、
通常、アルキル基の総水素原子の15〜100原子%、
好ましくは50〜100原子%が置換されたものであ
る。また、フルオロアルキル基は、フッ素原子以外にア
リール基(置換基としてフッ素原子等度が置換されてい
てもよい)、複素環基(置換基としてフッ素原子等度が
置換されていてもよい)等が置換されたものでもよい。
【0055】また、Gはnが2又は3の場合は、全てフ
ルオロアルキル基であっても、一部フルオロアルキル基
以外の基、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素
数6〜14のアリール基等であってもよい。Mは、ハロ
ゲン原子、水酸基またはアルコキシ基を示す。ハロゲン
原子としては、塩素が好ましい。アルコキシ基として
は、炭素数1〜5のものが好ましく、炭素数1〜3のも
のが更に好ましい。nが1又は2の場合、複数のMは互
いに同一または異なるハロゲン原子及び/又はアルコキ
シ基が置換されてもよい。nは1〜3の整数であり、好
ましくは3である。
【0056】上記フルオロアルキルシリコン化合物は、
単独乃至組み合わせて使用される。また、それらは上記
フルオロアルキルシリコン化合物と同様の機能を発揮す
るものであれば、化合物(1)は脱水縮合反応によりオ
リゴマー化されたものでもよい。
【0057】フルオロアルキルシリコン化合物の具体例
としては、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル
ジクロロシラン、3,4,4,4−テトラフルオロブチ
ルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,
6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、ジメ
トキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラ
ン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシ
ラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフル
オロヘキシルメチルジクロロシラン、3,4,4,4−
テトラフルオロブチルトリエトキシシラン、1,3,5
−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,
3,5−トリメチルシクロトリクロロシラン、1,3,
5,7−テトラキス(3,3,3−トリフルオロプロピ
ル)−1,3,5,7−テトラクロロシクロテトラシロ
キサン、1,1,3,5,5−ペンタ(3,3,3−ト
リフルオロプロピル)−1,3,5−トリクロロトリシ
ロキサン、1,1,3,5,7,7−ヘキサ(3,3,
3−トリフルオロプロピル)−1,3,5,7−テトラ
クロロテトラシロキサン、メチル−3,3,3−トリフ
ルオロプロピルジクロロシラン、3,3,4,4,5,
5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラ
ン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオ
ロヘキシルメチルジクロロシラン、ペンタフルオロエチ
ルトリメトキシシラン、フルオロメチルジペンタフルオ
ロエチルクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロ
ピルトリプロポキシシシラン、等が挙げられ、好ましい
化合物は、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル
ジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6
−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、3,3,3
−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、が挙げら
れる。上記フルオロアルキルシリコン化合物は、市販の
ものが使用でき、例えば、信越化学工業(株)、チッソ
(株)等から入手できる。
【0058】フルオロアルキルシリコン化合物を感光性
平版印刷版表面に接触させる好ましい方法は、低沸点の
同化合物の場合は、蒸気曝気用の外套を設けてその中に
同化合物充填容器を置いて、同化合物の蒸気を外套内に
存在させて、外套内の感光性平版印刷版が蒸気に曝され
る状態にするのがよい。また、同化合物を含浸させた
紙、布、ゼオライト、珪藻土などを外套内に挿入するの
もよい。
【0059】フルオロアルキルシリコン化合物が液体の
場合は、上記の外套の中に、同化合物の液体を塗布、噴
霧又は浸漬する装置を設けて感光性平版印刷版表面に同
化合物を直接接触させる。また、固体乃至液体あるいは
気体のフルオロアルキルシリコン化合物の場合は、適当
な有機溶剤、たとえばメタノール、アセトン、ベンゾー
ル、トルエン、2,2,4−トリメチルペンタン又は前
記した本発明に好ましいフルオロアルキルシリコン化合
物から液体のものを選んでその中に溶解して溶液として
上記した方法で接触させてもよい。上記フルオロアルキ
ルシリコン化合物の接触処理は、通常、室温で実施され
るが、その処理系(フルオロアルキルシリコン化合物又
はその溶液、感光性平版印刷版及び環境)の温度は適宜
最適化される。また、光触媒能を有する金属酸化物の表
面に付与されるフルオロアルキルシリコン化合物の量
は、感光性平版印刷版表面にフルオロアルキルシリコン
化合物の単分子層が形成される量が好ましい。この接触
処理により撥水撥油性となった感光性平版印刷版表面の
水に対する接触角は、通常、70〜180度、好ましく
は110〜180度の範囲であり、撥水撥油性となった
感光性平版印刷版表面のヘキサデカンに対する接触角
は、通常、60〜180度、好ましくは120〜180
度の範囲であり、また、この感光性平版印刷版に光照射
して親水化した部分の水に対する接触角は、通常、0〜
25度、好ましくは0〜10度の範囲であり、この感光
性平版印刷版に光照射して親油化した部分のヘキサデカ
ンに対する接触角は、通常、0〜30度、好ましくは0
〜10度の範囲である。尚、感光性平版印刷版表面の水
またはヘキサデカンに対する接触角は、Contact Angle
Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いた空中水滴
法または空中油滴法によるものである。
【0060】以上で撥水撥油化の方法及び操作の説明を
終わり、次の段階である撥水撥油化した感光性平版印刷
版表面への像様露光による像様親水化または像様親油化
について説明する。
【0061】〔像様親水化または像様親油化〕光触媒能
を有する金属酸化物をその表面に有する感光性平版印刷
版に光を像様に照射して親水性領域または親油性領域を
形成させる。本発明は、像様露光における光照射により
金属酸化物に結合したフルオロアルキルシリコン化合物
が露光部分で光分解して親水化または親油化するが、未
露光部分は撥水撥油性が保持されるため、露光部分の水
性インクまたは親油性インク受用性が改善され、識別効
果が高まるという効果を奏する。光照射の光源は、光触
媒能を有する金属酸化物の感光域の波長の光、すなわち
光吸収域に相当する波長を少なくとも含む光を発する光
源である。例えば光触媒能を有する金属酸化物が酸化チ
タンの場合では、アナターゼ型が387nm以下,ルチ
ル型が413nm以下、酸化亜鉛は387nm以下に、
その他の多くの金属酸化物の場合も250〜390nm
の紫外部に感光域を有しており、また、酸化亜鉛の場合
は、固有吸収波長域(紫外線領域)のほかに、既知の方
法で分光増感を行って適用できる光の波長領域を拡げる
こともでき、したがって使用される光源は、これらの波
長領域の光を発する光源であり、主として紫外線を発す
る光源といえる。光触媒能を有する金属酸化物層に像様
分布を形成させるための光の露光手段には、面露光方
式、走査方式のいずれでもよい。
【0062】面露光方式の場合は、一様な光照射をマス
ク画像(例えば印刷原稿を現像したリスフィルム)を通
して感光性平版印刷版上に照射して、照射領域の表面を
親水化する方式である。支持体が透明である場合は、支
持体の裏側から支持体とマスク画像を通して露光するこ
ともできる。面露光方式で光照射を行うのに適した光源
は、水銀灯、タングステンハロゲンランプ、その他のメ
タルハライドランプ、キセノン放電灯などである。その
露光時間は、上記の露光強度が得られるように露光照度
を勘案して決定される。
【0063】好ましい光照射の光の強さは、光触媒能を
有する金属酸化物の性質によって異なり、また光の波
長、分光分布によっても異なるが、通常はマスク画像
(例えば現像済みリスフィルム)で変調する前の面露光
強度が0.05〜100joule/cm2 ,好ましく
は0.05〜10joule/cm2 ,より好ましくは
0.05〜5joule/cm2 である。また、光触媒
反応には相反則が成立することが多く、例えば10mW
/cm2で100秒の露光を行っても、1W/cm2
1秒の露光を行っても、同じ効果が得られる場合も多
く、このような場合には、光を発光する光源の選択の幅
は広くなる。
【0064】後者、すなわち走査式露光の場合には、画
像マスクを使用する代わりにレーザービームを画像で電
気的に変調して感光性平版印刷版上を走査する方式が行
われる。レーザー光源は、光のビームを発振する公知の
レーザーを用いることができる。例えば、励起光として
発振波長を325nmに有するヘリウムカドミウムレー
ザー、発振波長を351.1〜363.8nmに有する
水冷アルゴンレーザー、330〜440nmに有する硫
化亜鉛/カドミウムレーザーなどを用いることができ
る。さらに、紫外線レーザー、近紫外線レーザー発振が
確認されている発振波長を360〜440nmに有する
窒化ガリウム系のInGaN系量子井戸半導体レーザ
ー、及び発振波長を360〜430nmに有する導波路
MgO−LiNb03 反転ドメイン波長変換型のレーザ
ーを使用することもできる。レーザー出力が0.1〜3
00Wのレーザーで照射をすることができる。また、パ
ルスレーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000
W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好
ましい。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から
支持体を通して露光することもできる。
【0065】以上で本発明における感光性平版印刷版の
像様親水性または像様親油性発現挙動並びにそれらを利
用した印刷用画像形成方法について説明した。つぎにこ
の感光性平版印刷版を装着して行う印刷方法および装置
について説明する。
【0066】〔印刷〕感光性平版印刷版は、その表面に
ポジモードの撥水撥油性・親水性、または撥水撥油性・
親油性の画像状分布を形成させたのち、現像処理するこ
となく、そのまま平版印刷工程に送ることができる。従
って通常の公知の平版印刷法に比較して簡易性を中心に
多くの利点を有する。すなわち上記したようにアルカリ
現像液による化学処理が不要であり、それに伴うワイピ
ング、ブラッシングの操作も不要であり、さらに現像廃
液の排出による環境負荷も伴わない。また、上記したよ
うな簡易な画像記録手段から容易に印刷を行うことも利
点である。
【0067】平版印刷版の画像部、即ち、光照射部分
は、十分に親水化または親油化しているが、所望によ
り、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液等で水洗
することにより、更に親水化または親油化、特に親油化
を向上させることができる。この様な処理によって得ら
れた平版印刷版は、平版印刷機等にかけられ、あるいは
印刷機上で製版され、多数枚の印刷に用いられる。
【0068】次に印刷を終えた印刷版の再生工程につい
て記す。 〔感光性平版印刷版の再生〕印刷終了後の印刷版は、水
性インクを使用した場合は、水性溶媒、例えば、水、水
溶性有機溶剤の水溶液(有機溶剤としては、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチル
セロソルブ、エチルセロソルブ等)等により付着してい
るインクを洗い落とす。また、親油性インクを使用した
場合は、通常、親油性の石油系溶剤を用いて付着してい
るインキを洗い落とす。溶剤としては市販の印刷用イン
キ溶解液として芳香族炭化水素、例えばケロシン、アイ
ソパーなどがあり、そのほかベンゾール、トルオール、
キシロール、アセトン、メチルエチルケトン及びそれら
の混合溶剤を用いてもよい。画像物質が溶解しない場合
には、布などを用いて軽く拭き取る。また、トルエン/
ダイクリーンの1/1混合溶媒を用いるとよいこともあ
る。
【0069】この過程のみの感光性平版印刷版の再生で
も、フルオロアルキルシリコン化合物が接触して感光性
平版印刷版表面の撥水撥油化は行われ得るが、必ずしも
十分ではない場合は、印刷に使用した印刷版面上に残存
するインキを洗浄除去したのち、その印刷版に加熱によ
るかもしくは光照射更には水洗によって残存したフルオ
ロアルキルシリコン化合物層を除去した版を感光性平版
印刷版としてフルオロアルキルシリコン化合物による撥
水撥油化を行うのが好ましい。
【0070】上記感光性平版印刷版の再生のための加熱
は、200℃以上が好ましく、350〜600℃、0.
5〜5分の処理が更に好ましい。また、光照射は、感光
性平版印刷版に一様に照射されてよく、光触媒能を有す
る金属酸化物上に残存するフルオロアルキルシリコン化
合物は、光照射により分解され、次いで施される水洗に
より効率的に除去され、感光性平版印刷版の再生品質が
向上する。ここで、水洗とは、水又は水溶性有機溶剤の
水溶液による洗浄を意味し、当該有機溶剤としては、メ
タノール、エタノール、、イソプロパノール、アセト
ン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等があげられ
る。再生された感光性平版印刷版は、前記した方法で撥
水撥油化を行い、版面全体にわたって均一に撥水撥油性
を回復する。この撥水撥油化操作は、印刷インキを洗浄
除去してから次の製版作業において光の像様照射を行う
までの間の任意の時期に行ってもよいが、その感光性平
版印刷版を次の製版工程に再使用する際に行うのが感光
性平版印刷版の保管中の履歴の影響を排除できる点で好
ましい。
【0071】本発明に係わる感光性平版印刷版の反復再
生可能回数は、完全に把握できていないが、少なくとも
15回以上であり、おそらく版面の除去不能な汚れ、修
復が実際的でない刷面の傷や、版材の機械的な変形(ひ
ずみ)などによって制約されるものと思われる。
【0072】〔装置の態様〕本発明における感光性平版
印刷版の構成材料及び製版操作について説明した。次に
この感光性平版印刷版を装着して印刷を行う方法及び装
置を、図によって説明する。光触媒能を有する金属酸化
物を表面にもつ感光性平版印刷版を担持する部材は、上
記したように版胴の構成部材として固定されていてもよ
く、また着脱自在であってもよい。以下、図1以降の説
明では、本発明の簡易性を顕著に発揮する前者を例に、
すなわち版胴上に感光性平版印刷版が固定されている例
について説明する。
【0073】図1は、本発明の第1の実施形態の一例に
よる平版印刷装置の構成を示す図である。図1に示すよ
うに本発明の一つの実施形態による平版印刷装置は、酸
化チタンや酸化亜鉛など前記した光触媒能を有する金属
酸化物を表面に有する版胴1と、版胴1に対してフルオ
ロアルキルシリコン化合物による撥水撥油化処理を行っ
て感光性平版印刷版表面を全面撥水撥油化する撥水撥油
化処理部2と、全面撥水撥油化された版胴1に対して光
の像様照射を行って撥水撥油性・親水性、または撥水撥
油性・親油性の像様分布を形成する光照射部5と、その
版胴1に親水性または親油性のインキを供給するインキ
・湿し水供給部3と、印刷終了後に版胴1に残存するイ
ンキを除去するインキ洗浄部4と、版胴1に保持された
インキを用紙に転写するための中間体として所望により
設けられるブランケット6と、ブランケット6とともに
給送された紙などの被印刷物を保持する圧胴7とを備
え、これらの部材が本体8内に収容されてなるものであ
る。なお、本体8には、後述するように印刷原稿を焼き
付けて現像済みのリスフィルム9を供給するためのフィ
ルム供給部10が設けられている。
【0074】本発明では、上記図1の構成において、ブ
ランケット6を設けずに直接被印刷物にインキ画像を転
写することもできる。また、水性インクを用いる場合
は、インキ・湿し水供給部3からは、好ましくは水性イ
ンキのみが供給される。更に、親油性インキを用いる場
合は、インキ・湿し水供給部3からは親油性インキのみ
が供給されても、親油性インキと湿し水の両者が供給さ
れてもよく、後者の場合、装置の高温化を有効に防止し
得る点でより好ましい。
【0075】図2は、撥水撥油化処理部2の態様の一つ
を示したもので、液状フルオロアルキルシリコン化合物
又はフルオロアルキルシリコン化合物を溶解した溶液
(以下、両者を総称して「フルオロアルキルシリコン化
合物液体」とも記す)を版胴1に巻き付けられた感光性
平版印刷版表面に塗布してフルオロアルキルシリコン化
合物の塗膜を形成させるように組み立てられた撥水撥油
化処理部である。処理部の外套40の内部には、フルオ
ロアルキルシリコン化合物液体27を満たした容器4
1、その容器内に充填された液体に下部が浸されて液体
を付着させて取り出すディップローラー42、ディップ
ローラーに対向して取り出された液体を適量だけ受け入
れるリバースローラー43、リバースローラー43に付
着している液体を転着して、それを感光性平版印刷版表
面に転写塗布するコーティングローラー44から成って
いる。各ローラーの表面は、液体を適量保持できるよう
に吸液性の被覆が成されている。
【0076】図3は、撥水撥油化処理部2の別の態様を
示したもので、フルオロアルキルシリコン化合物の蒸気
を発生させて、その蒸気を含んだ雰囲気中で感光性平版
印刷版表面の撥水撥油化を促進できるように、フルオロ
アルキルシリコン化合物蒸気供給手段を設けた撥水撥油
化処理部である。
【0077】図3において、フルオロアルキルシリコン
化合物蒸気供給手段29では、空気取り入れ口24より
空気が取り入れられて、内径約30mmの分液ろ斗タイ
プの硝子管を横向きに配置した蒸発室26にコック25
を経て導かれる。蒸発室にはフルオロアルキルシリコン
化合物27(斜線で示す)が容積率が例えば50%にな
るように満たされていて、フルオロアルキルシリコン化
合物27の内部及び表面を空気が通過する間に必要量の
フルオロアルキルシリコン化合物の蒸発気体を取り込ん
でから、版胴1上の感光性平版印刷版表面に導かれ、フ
ルオロアルキルシリコン化合物と金属酸化物との反応が
行われ、金属酸化物層上にフルオロアルキルシリコン化
合物層が形成される構造となっている。
【0078】撥水撥油化処理部2の外套の内部は、蒸発
室26、蒸発を促進するために必要であれば使用するた
めの電熱ヒーター30及び蒸発室26と外套内部空間に
それぞれ配した温度センサー33、32と外套内部温度
を室温付近の適温に制御する温度制御部34が配されて
いる。
【0079】フルオロアルキルシリコン化合物27の蒸
気の取り込み量は、感光性平版印刷版の撥水撥油性を確
保できる量であり、その量になるように温度制御部34
によって蒸発室26の温度が設定される。蒸発室の温度
は、例えば、揮発し易い低沸点のフルオロアルキルシリ
コン化合物の場合は、蒸発室の下部にフルオロアルキル
シリコン化合物27を満たすだけで加熱する必要はない
が、それでは不十分の沸点のやや高い化合物の場合に
は、空隙率の大きい珪藻土、シリカ粒子、沸石粒子など
をフルオロアルキルシリコン化合物27とともに蒸発室
内に入れて取り入れた空気とフルオロアルキルシリコン
化合物との接触度を高める措置が取られる。また、フル
オロアルキルシリコン化合物27が昇華性の固形物の場
合は、蒸発室26に適当な空隙率で充填される。さらに
沸点が高いフルオロアルキルシリコン化合物の場合に
は、温度制御部34、電熱ヒーター30及び温度センサ
ー33によって蒸発室26内部の温度を蒸発に適した温
度に調節できる機構となっている。
【0080】なお、図3には示してないが、当然のこと
ながら蒸気を含んだ空気は、屋外排気される。また、必
要があれば、排気の前に空気浄化も行われる。撥水撥油
化処理部2において表面の撥水撥油化が行われた感光性
平版印刷版には、光照射部5で光の像様照射が行われ
る。
【0081】図1に戻って、本形態では光照射部5に光
源として水銀灯を用いているが、キセノン放電灯、高照
度ハロゲン・タングステンランプなどの紫外線成分を含
む他の光源であってもよい。版胴の回転方向に対して直
角方向に配したスリットによって、版胴の回転に伴って
版胴表面に設けた画像マスクすなわちリスフィルム9を
通してスリット光による全面走査露光が施される。スリ
ットの幅は必ずしも狭い必要はなく、光照射部5を通過
中に感光性平版印刷版表面に像様の撥水撥油性・親水
性、または撥水撥油性・親油性分布が形成されるように
照度とスリット幅及び版胴の回転速度がきめられる。ス
リットの代わりに版胴の幅に合わせた照射幅をもついわ
ゆるがんどう型のランプハウスを用いてもよい。
【0082】光照射部5の別の態様としては、図1に示
したフィルム供給部10から供給される現像済みリスフ
ィルム9を画像マスクとして用いる代わりに、画像情報
を担持したレーザー光を光照射する方式も用いられる。
図4は、その例で画像情報を担持したレーザー光による
描画の例の構成例である。光照射部17(図1では、
5)は、レーザー光を出射して版胴1に照射するレーザ
ー光源18と、編集・レイアウトW/S20において印
刷すべき画像から信号化されて記録部に入力される画像
信号Sに基づいて、レーザー光源18を駆動してレーザ
ー光を変調させて版胴1の表面に描画を行うためのレー
ザー光源駆動部19とからなる。光源18は出射される
レーザー光を版胴1の回転軸方向に版胴1に対して相対
的に移動して版胴1上を走査するよう構成されており、
版胴1が回転することにより、版胴1の表面が変調され
たレーザー光により露光され、版胴1におけるレーザー
光が照射されなかった部分が撥水撥油性の非画像領域と
され、レーザー光が照射された部分が親水性または親油
性の画像領域とされて、ポジ型方式による描画がなされ
るものである。
【0083】レーザー光は、紫外域、可視域又は近赤外
域に発振波長をもち、画像信号によって変調されてい
る。本実施形態では、ヘリウムカドミウムレーザーを搭
載して、そのビーム光が直接版胴の表面に照射される。
この光照射による光反応によって表面が親水化または親
油化する。レーザービーム幅は、概略30μm、エネル
ギー強度は10mW〜10Wが望ましい。一般に強度が
強いとそれだけ短時間に照射が終わるので実用的には望
ましい。なお、レーザーは、光を発振するものであれ
ば、半導体レーザー、固体レーザーそのほか任意のレー
ザーを用いることが出来る。
【0084】なお、ここではレーザーを直接変調する方
式を示したが、レーザーと音響光学素子のような外部変
調素子との組み合わせによっても同様に描画できること
はもちろんである。
【0085】次いで、第1の実施形態の動作について像
様の親水化領域または親油化領域の形成を説明する。フ
ルオロアルキルシリコン化合物の接触処理により全面が
撥水撥油化した版胴は、光照射部5で、画像マスクを経
ることにより、又は画像情報で変調させることにより、
像様分布が付与された光照射を受けて、照射を受けた露
光部分が親水性または親油性で、照射を受けなかった未
露光部分は撥水撥油性を有する撥水撥油性・親水性、ま
たは撥水撥油性・親油性の画像状分布が得られる。光照
射による描画が終了すると、インキ・湿し水供給部3よ
り少なくともインキが版胴1に供給される。これによ
り、版胴1の親水性または親油性の露光部分には親水性
または親油性のインキを受け入れる印刷面が形成され、
撥水撥油性の非画像領域には親水性及び/又は親油性の
インキが保持されることはない。
【0086】その後、ブランケット6と圧胴7との間に
矢印Aに示すように用紙等の被印刷物を供給し、版胴1
に保持されたインキをブランケット6を介して(あるい
は直接)被印刷物に転写することにより平版印刷が行わ
れる。
【0087】印刷終了後、インキ洗浄部4により版胴1
に残存するインキを除去する。また、好ましくは加熱に
よるかもしくは光照更には水洗によって残存したフルオ
ロアルキルシリコン化合物層を除去した後、版胴1を撥
水撥油化処理部2を通して撥水撥油化することにより、
版胴1の像様の親水性領域または親油性領域は消去され
て、親水性領域または親油性領域を形成する像様の光照
射を行う前の状態に戻る。
【0088】このように、本発明による平版印刷装置に
よれば、全面撥水撥油性の均一表面の形成と光による像
様照射のみで版胴1にポジ型方式の印刷画面を形成する
ことができ、これにより現像が不要でかつ印刷面の鮮鋭
性が保たれた平版印刷を行うことができる。また、版胴
1を洗浄して再度フルオロアルキルシリコン化合物によ
り接触処理することにより元の状態に戻すことができる
ため、版胴1を反復使用することができ、これにより印
刷物を低コストで提供することができることとなる。さ
らに、印刷装置から版胴1を取り外す必要がないため、
従来のPS版のように印刷装置に組み込む際にゴミなど
が付着することもなくなり、これにより、印刷品質を向
上させることができる。
【0089】また、感光性平版印刷版として版胴1を使
用し、版胴1の周囲に撥水撥油化処理部2、インキ・湿
し水供給部3、インキ洗浄部4および光照射部5を配設
することにより、単に版胴1を回転させるのみで、感光
性平版印刷版の全面撥水撥油化、光による像様照射およ
びインキ、必要により湿し水の供給、さらには印刷終了
後のインキ洗浄を行うことができるため、装置をコンパ
クトに構成することができ、これにより省スペース化を
図ることができる。
【0090】さらに、ポジ型の簡易な製版方式の中で
も、ほぼ室温でフルオロアルキルシリコン化合物によっ
て全面撥水撥油化してから像様の親水性領域または親油
性領域を形成する本発明は、撥水撥油化操作を行わない
で直接、光の像様照射を行う方式に比較して、均一性の
高い撥水撥油性表面が得られ、感光性平版印刷版材料に
適したフルオロアルキルシリコン化合物を選択できて、
高度に撥水撥油化でき、その光分解性により、高度に親
水化または親油化されるため画像領域と非画像領域の識
別性の高い画像が安定して得られると共に全面露光によ
るフルオロアルキルシリコン化合物の除去性が優れるこ
とから、感光性平版印刷版の再生品質が向上するなどの
利点を有している。
【0091】
【実施例】〔実施例1〕99.5重量%アルミニウム
に、銅を0.01重量%、チタンを0.03重量%、鉄
を0.3重量%、ケイ素を0.1重量%含有するJIS
A1050アルミニウム材の厚み0.30mm圧延板を、
400メッシュのパミストン(共立窯業製)の20重量
%水性懸濁液と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイ
ロン)とを用いてその表面を砂目立てした後、よく水で
洗浄した。これを15重量%水酸化ナトリウム水溶液
(アルミニウム4.5重量%含有)に浸漬してアルミニ
ウムの溶解量が5g/m2になるようにエッチングした後、
流水で水洗した。更に、1重量%硝酸で中和し、次に
0.7重量%硝酸水溶液(アルミニウム0.5重量%含
有)中で、陽極時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.
3ボルトの矩形波交番波形電圧(電流比r=0.90、
特公昭58−5796号公報実施例に記載されている電
流波形)を用いて160クーロン/dm2の陽極時電気量
で電解粗面化処理を行った。水洗後、35℃の10重量
%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム
溶解量が1g/m2になるようにエッチングした後、水洗し
た。次に、50℃、30重量%の硫酸水溶液中に浸漬
し、デスマットした後、水洗した。
【0092】さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液
(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用い
て、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密
度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極
酸化皮膜重量2.7g/m2とした。この支持体を水洗後、
70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間
浸漬処理し、水洗乾燥した。以上のようにして得られた
アルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計
で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは
0.58μmであった。
【0093】次いでこのアルミニウム支持体を真空蒸着
装置内に入れて、全圧2x10-2Paになるように分
圧80%の酸素ガスの条件下でチタン金属片を電熱加熱
して、アルミニウム支持体上に蒸着して酸化チタン薄膜
を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によって
無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が1.5/
6.5/2であり、TiO2薄膜の厚さは2000オングス
トロームであった。これを版胴1の基体に巻き付けて機
上印刷用の感光性平版印刷版とした。
【0094】図2に示した態様の撥水撥油化処理部2を
使用し、フルオロアルキルシリコン化合物用の容器には
メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシ
ランの0.1%トルエン溶液を充填して、コーティング
ローラーによって感光性平版印刷版表面にメチル−3,
3,3−トリフルオロプロピルジクロロシランを塗布
し、続いてトルエンにて洗浄して撥水撥油性表面を形成
させた。感光性平版印刷版表面の水に対する接触角をCo
ntact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用
いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したと
ころ、いずれの部分も105〜115度の間にあった。
同様にヘキサデカンに対する接触角を測定したところ、
いずれの部分も95〜110度の間にあった。
【0095】次いで、図4の光照射部5に、US10焼
き付け用光源装置ユニレックURM600形式GH60
201X(ウシオ電気工業(株)製)を用いて光強度1
00mW/cm2 のもとで通過時間が15秒となる回転
速度で版胴を回転させた。フィルム供給装置10から供
給された現像済みフィルムを通して感光性平版印刷版表
面に像様の光露光が行われた。照射後の感光性平版印刷
版表面の水に対する接触角をContact Angle Meter CA-D
(協和界面科学(株)製)を用いて空中水滴法または空
中油滴法で表面の水またはヘキサデカンに対する接触角
を測定したところ、前者ではいずれの照射領域も7〜9
度の間にあり、後者ではいずれの照射領域も8〜12度
の間にあった。
【0096】この版胴1をサクライ社製オリバー52片
面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において
湿し水を純水、親油性インキとして大日本インキ化学工
業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて500枚オ
フセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印
刷物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0097】次いで洗浄部4において、版胴1の表面を
印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本イ
ンキ化学工業社)とトルエンの1/1混合液をウエスに
しみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。次い
で、図4の光照射部5で、像様露光と同じUS10焼き
付け用光源装置ユニレックURM600形式GH602
01X(ウシオ電気工業(株)製)を用いて光強度10
0mW/cm2 のもとで通過時間が30秒となる回転速
度で版胴を回転させた。フイルム供給なしで全面露光が
行われた。照射後の感光性平版印刷版表面のヘキサデカ
ンに対する接触角をContact Angle Meter CA-D(協和界
面科学(株)製)を用いて空中油滴法で表面のヘキサデ
カンに対する接触角を測定したところ、いずれの照射領
域も9〜14度の間にあった。この再生された感光性平
版印刷版に再び撥水撥油化処理部2においてフルオロア
ルキルシリコン化合物であるメチル−3,3,3−トリ
フルオロプロピルジクロロシランを前記と同様に付与
し、前回と同じ方法でヘキサデカンに対する接触角を測
定した。版表面のどの部分も95〜110度の間にあっ
た。
【0098】次いで、この版胴1の表面に上記と同一の
条件で像様露光を行った。この版胴1を上記印刷機に使
用して、インキ・湿し水供給部3において、上記と同様
の親油性インキ及び湿し水を用いて500枚平版印刷を
行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、
版胴1の損傷も認められなかった。
【0099】以上の繰り返しを3回実施したところ、印
刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかった。この結
果から、酸化チタン層をアルミニウム支持体上に設けた
感光性平版印刷版を使用し、上記印刷装置を用いてフル
オロアルキルシリコン化合物による処理と光の像様照射
によってポジ方式の製版による親油性インキによるオフ
セット印刷が可能であり、しかも感光性平版印刷版を反
復再生使用できることが示された。
【0100】〔実施例2〕実施例1と同様の感光性平版
印刷版を保持した版胴1を実施例1と同様の印刷機に使
用して、インキ・湿し水供給部3において、湿し水なし
で水性インキとして大阪印刷インキ製造(株)製フレキ
ソEP印刷用水性タイプインキ(品名:水性はし袋用)
を用いて500枚オフセット印刷を行った。スタートか
ら終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷も認め
られなかった。
【0101】次いで洗浄部4において、版胴1の表面を
印刷用インキ洗浄液として水/エタノール(8/2)混
合液にて洗浄してインキを除去した。次いで、図4の光
照射部5で、像様露光と同じUS10焼き付け用光源装
置ユニレックURM600形式GH60201X(ウシ
オ電気工業(株)製)を用いて光強度100mW/cm
2 のもとで通過時間が30秒となる回転速度で版胴を回
転させた。フイルム供給なしで全面露光が行われた。照
射後の感光性平版印刷版表面の水に対する接触角をCont
act Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用い
て空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したとこ
ろ、いずれの照射領域も7〜9度の間にあった。この再
生された感光性平版印刷版に再び撥水撥油化処理部2に
おいてフルオロアルキルシリコン化合物であるメチル−
3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシランを前
記と同様に付与し、前回と同じ方法で水に対する接触角
を測定した。版表面のどの部分も105〜115度、同
様にヘキサデカンに対する接触角は、95〜115の間
にあった。
【0102】次いで、この版胴1の表面に上記と同一の
条件で像様露光を行った。この版胴1を上記印刷機に使
用して、インキ・湿し水供給部3において、上記と同様
の水性インキを用いて500枚平版印刷を行った。スタ
ートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷
も認められなかった。
【0103】以上の繰り返しを3回実施したところ、印
刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかった。この結
果から、酸化チタン層をアルミニウム支持体上に設けた
感光性平版印刷版を使用し、上記印刷装置を用いてフル
オロアルキルシリコン化合物による処理と光の像様照射
によってポジ方式の製版による水性インクによる印刷が
可能であり、しかも感光性平版印刷版を反復再生使用で
きることが示された。
【0104】〔実施例3〕実施例1における親油性イン
キの洗浄後の印刷例において、親油性インキの洗浄の
後、感光性平版印刷版に一様に光照射して再生する方法
に代えて、300℃、2分の感光性平版印刷版の加熱処理を
施した以外は実施例1と同様に印刷を実施した。この再
生の繰り返しを3回実施したところ、接触角の値、画像
の変化はほとんど認められなかった。
【0105】〔実施例4〕実施例2における水性インキ
の洗浄後の印刷例において、水性インキの洗浄の後、感
光性平版印刷版に一様に光照射して再生する方法に代え
て、300℃、2分の感光性平版印刷版の加熱処理を施した
以外は実施例2と同様に印刷を実施した。この再生の繰
り返しを3回実施したところ、接触角の値、画像の変化
はほとんど認められなかった。
【0106】〔実施例5〕実施例1及び3において、版
胴1をフレキソ印刷機(ニューロング(株)製フレキソ
校正機600FN)に代えて使用し、ブランケットを用
いない装置構成で、かつインキ・湿し水供給部3におい
て湿し水を用いなかった以外は、実施例1及び3と同様
に印刷、再印刷を行った。その結果、実施例1及び3と
同等の品質の画像が得られた。 〔実施例6〕実施例2及び4において、版胴1をフレキ
ソ印刷機(ニューロング(株)製フレキソ校正機600
FN)に代えて使用し、ブランケットを用いない装置構
成としたこと以外は、実施例2及び4と同様に印刷、再
印刷を行った。その結果、実施例2及び4と同等の品質
の画像が得られた。 〔実施例7〕実施例1において使用したフルオロアルキ
ルシリコン化合物の代わりに3,4,4,4−テトラフ
ルオロブチルトリクロロシランを用いた他は、実施例1
と同様にして感光性平版印刷版に撥水撥油性表面を形成
させた。感光性平版印刷版表面のヘキサデカンに対する
接触角を実施例1と同様に測定したところ、いずれの部
分も95〜110度の間にあった。
【0107】次いで、実施例1と同様に像様露光を行い
照射後の感光性平版印刷版表面のヘキサデカンに対する
接触角を同様に測定したところ、いずれの照射領域も9
〜13度の間にあった。
【0108】この版胴1を実施例1と同様に使用して、
親油性インキにより500枚オフセット印刷を行った。
スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の
損傷も認められなかった。
【0109】次いで実施例1と同様に親油性インキを除
去し、次いでフイルム供給なしで全面露光を行い、照射
後の感光性平版印刷版表面のヘキサデカンに対する接触
角を同様に測定したところ、いずれの照射領域も9〜1
3度の間にあった。この再生された感光性平版印刷版に
再び撥水撥油化処理部2において3,4,4,4−テト
ラフルオロブチルトリクロロシランを前記と同様に付与
し、前回と同じ方法でヘキサデカンに対する接触角を測
定した。版表面のどの部分も95〜110度の間にあっ
た。
【0110】次いで、この版胴1の表面に上記と同一の
条件で像様露光を行い、実施例2と同様に500枚オフ
セット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷
物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0111】以上の繰り返しを3回実施したところ、印
刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかった。 〔実施例8〕実施例2において使用したフルオロアルキ
ルシリコン化合物の代わりに3,4,4,4−テトラフ
ルオロブチルトリクロロシランを用いた他は、実施例2
と同様にして感光性平版印刷版に撥水撥油性表面を形成
させた。感光性平版印刷版表面の水に対する接触角を実
施例2と同様に測定したところ、いずれの部分も90〜
110度の間にあった。
【0112】次いで、実施例2と同様に像様露光を行い
照射後の感光性平版印刷版表面の水に対する接触角を同
様に測定したところ、いずれの照射領域も8〜12度の
間にあった。
【0113】この版胴1を実施例2と同様に使用して、
500枚オフセット印刷を行った。スタートから終了ま
で鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷も認められなか
った。
【0114】次いで実施例2と同様にインキを除去し、
次いでフイルム供給なしで全面露光を行い、照射後の感
光性平版印刷版表面の水に対する接触角を同様に測定し
たところ、いずれの照射領域も9〜13度の間にあっ
た。この再生された感光性平版印刷版に再び撥水撥油化
処理部2において3,4,4,4−テトラフルオロブチ
ルトリクロロシランを前記と同様に付与し、前回と同じ
方法で水に対する接触角を測定した。版表面のどの部分
も90〜110度の間にあった。
【0115】次いで、この版胴1の表面に上記と同一の
条件で像様露光を行い、実施例2と同様に500枚オフ
セット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷
物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0116】以上の繰り返しを3回実施したところ、印
刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかった。 〔実施例9〕実施例7における親油性インキの洗浄後の
印刷例において、親油性インキの洗浄の後、感光性平版
印刷版に一様に光照射して再生する方法に代えて、300
℃、2分の感光性平版印刷版の加熱処理を施した以外は
実施例7と同様に印刷を実施した。この再生の繰り返し
を3回実施したところ、接触角の値、画像の変化はほと
んど認められなかった。 〔実施例10〕実施例8における水性インキの洗浄後の
印刷例において、水性インキの洗浄の後、感光性平版印
刷版に一様に光照射して再生する方法に代えて、300
℃、2分の感光性平版印刷版の加熱処理を施した以外は
実施例8と同様に印刷を実施した。この再生の繰り返し
を3回実施したところ、接触角の値、画像の変化はほと
んど認められなかった。 〔実施例11〕実施例7及び9において、版胴1をフレ
キソ印刷機(ニューロング(株)製フレキソ校正機60
0FN)に代えて使用し、ブランケットを用いない装置
構成で、かつインキ・湿し水供給部3において湿し水を
用いなかった以外は、実施例7及び9と同様に印刷、再
印刷を行った。その結果、実施例7及び9と同等の品質
の画像が得られた。 〔実施例12〕実施例8及び10において、版胴1をフ
レキソ印刷機(ニューロング(株)製フレキソ校正機6
00FN)に代えて使用し、ブランケットを用いない装
置構成としたこと以外は、実施例8及び10と同様に印
刷、再印刷を行った。その結果、実施例8及び10と同
等以上の品質の画像が得られた。 〔実施例13〕実施例1のアルミニウム支持体を100
ミクロン厚みのSUS板に代えた以外は、実施例1と同
様に感光性平版印刷版を作成し、実施例1、2、5及び
6と同様に印刷を実施したところ、実施例1、2、5及
び6と同様に鮮明な印刷物が得られた。また、再生され
た感光性平版印刷版も実施例1〜6と同様な性能を示し
た。 〔実施例14〕実施例1と同様にして陽極酸化処理した
アルミニウム支持体をCsLa2NbTi210の化学量
論比に相当するセシウムエトキシド、チタンブトキシ
ド、ランタンイソブトキシド、ニオブエトキシドを含む
20%のエタノール溶液に浸漬して表面を加水分解した
のち280℃に加熱してアルミニウム支持体表面にCs
La2NbTi210の厚み2000オングストロームの
薄膜を形成させた。
【0117】この複合金属酸化物薄膜付きアルミニウム
支持体を版胴の基体に巻き付けて感光性平版印刷版とし
た以外は、実施例1、3及び5と同じ製版、印刷及び親
油性インキ洗浄除去、全面照射または加熱処理、再印刷
を行った。フルオロアルキルシリコン化合物層のヘキサ
デカンに対する接触角は、1回目及び2回目とも95〜
110度であり、また、活性光の照射領域のヘキサデカ
ンに対する接触角は、9〜14度であった。印刷面の品
質も1回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非
画像領域の識別性も十分であった。
【0118】〔実施例15〕実施例14の感光性平版印
刷版を用いた以外は、実施例2、4及び6と同じ製版、
印刷及び水性インキ洗浄除去、全面照射または加熱処
理、再印刷を行った。フルオロアルキルシリコン化合物
層の水に対する接触角は、1回目及び2回目とも85〜
95度であり、また、活性光の照射領域の水に対する接
触角は、10〜15度であった。印刷面の品質も1回目
及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の
識別性も十分であった。
【0119】
【発明の効果】本発明は光触媒能を有する金属酸化物を
画像形成層とした感光性平版印刷版にフルオロアルキル
シリコン化合物を接触させてその表面を撥水撥油性とし
て、その表面に光を像様照射して、親水性または親油性
の像様分布を形成させて各々に水性インキまたは親油性
インキ受容性の印刷版を作成する印刷方法であり、現像
などの処理を必要とせず、直接印刷版を作成することが
でき、かつ印刷終了後、印刷版のインキを除去して、必
要により加熱もしくは一様露光の後、更に水性洗浄する
ことにより感光性平版印刷版を再生して反復使用するこ
とができる。また、感光性平版印刷版を印刷機の版胴に
装着し、印刷機上で、親水化または親油化、インキ供給
及び印刷後の感光性平版印刷版再生を行う印刷装置を用
いて簡易で安価な平版印刷を行うことができる。この方
法及び装置は、ポジ型の製版方式であって、かつフルオ
ロアルキルシリコン化合物は金属酸化物と強固に結合す
るために未露光部分は安定した撥水撥油性が保持され、
かつ画像部である光照射部では金属酸化物の光触媒能に
より効果的に親水化または親油化が安定して形成できる
ので、画像領域と非画像領域との識別性が高く、印刷品
質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の一例による平版印刷
装置の構成を示す図である。
【図2】フルオロアルキルシリコン化合物の供給・適用
手段を設けた撥水撥油化処理部の一態様の構成を示す図
である。
【図3】フルオロアルキルシリコン化合物蒸気の供給・
適用手段を設けた撥水撥油化処理部の一態様の構成を示
す図である。
【図4】光照射部の一態様の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 版胴 2 撥水撥油化処理部 3 インキ・湿し水供給部 4 インキ洗浄部 5 親水性または親油性領域描画部(光照射部) 6 ブランケット 7 圧胴 8 本体 17 光照射部 18 レーザー光源 19 レーザー光源駆動部 20 編集・レイアウトW/S 24 空気取り入れ口 25 コック 26 蒸発室 27 フルオロアルキルシリコン化合物液体またはフ
ルオロアルキルシリコン化合物 29 フルオロアルキルシリコン化合物供給手段 30 電熱ヒーター 32 温度センサー 33 温度センサー 34 温度制御部 40 外套 41 容器 42 ディップローラー 43 リバースローラー 44 コーティングローラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03F 7/42 G03F 7/42 (72)発明者 中村 隆 神奈川県足柄上郡開成町宮台798番地 富 士写真フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2H025 AA00 AA12 AB03 AC01 AC08 AD01 AD03 BF30 BH03 DA37 FA03 FA47 2H096 AA00 AA07 AA08 BA16 BA20 EA02 EA04 GA17 LA06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属酸化物層上にフルオロアルキルシリ
    コン化合物を結合させた層を設けた感光性平版印刷版を
    像様露光した後、露光部分に水性インキを接触させるこ
    とで被印刷物への転写可能なインキ画像を得ることを特
    徴とする平版印刷方法。
  2. 【請求項2】 金属酸化物層上にフルオロアルキルシリ
    コン化合物を結合させた層を設けた感光性平版印刷版を
    像様露光した後、露光部分に親油性インキを接触させる
    ことで被印刷物への転写可能なインキ画像を得ることを
    特徴とする平版印刷方法。
  3. 【請求項3】 像様露光後、水洗することで露光部分を
    更に親油化することを特徴とする請求項2に記載の印刷
    方法。
  4. 【請求項4】 平版印刷後、版面に残存するインキを洗
    浄除去した後、さらに加熱もしくは光照射によって残存
    したフルオロアルキルシリコン化合物層を除去した後、
    請求項1に記載の方法を反復することを特徴とする平版
    印刷方法。
  5. 【請求項5】 平版印刷後、版面に残存するインキを洗
    浄除去した後、さらに加熱もしくは光照射によって残存
    したフルオロアルキルシリコン化合物層を除去した後、
    請求項2に記載の方法を反復することを特徴とする平版
    印刷方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005091070A1 (ja) * 2004-03-19 2005-09-29 Daikin Industries, Ltd. リソグラフィー用基板表面処理剤
US8221231B2 (en) 2005-01-18 2012-07-17 Igt Server based meter model softcount and audit processing for gaming machines

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WO2005091070A1 (ja) * 2004-03-19 2005-09-29 Daikin Industries, Ltd. リソグラフィー用基板表面処理剤
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